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特許拒絶査定不服審判

2024-004662

防護構造

審判番号
2024-004662
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-024115
請求日
2024年03月18日
審決日
2025年02月14日
公報発行日
2025年05月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】JFE建材株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人きさ特許商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 殿川 雅也
  • 審判官 道祖土 新吾
  • 審判官 立澤 正樹
分類
P18 .121-Z (E01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 24115「防護構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 2日出願公開、特開2021-127652〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和2年2月17日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和5年 6月26日付け:拒絶理由通知書 同年 8月24日 :意見書、手続補正書の提出 同年10月 2日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年11月21日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月11日付け:補正の却下の決定 同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月19日 :原査定の謄本の送達) 令和6年 3月18日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 4月 4日付け:前置報告書 同年 5月 9日 :上申書の提出 第2 令和6年3月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年3月18日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年3月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年8月24日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。 (1)本件補正前 「 【請求項1】 充填材が充填された土嚢と、 鋼製の直方体形状の籠体と、を備え、 前記籠体は、 内部に前記土嚢が配置され、 前記土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗する、防護構造。 【請求項2】 充填材が充填された土嚢と、 鋼製の籠体と、を備え、 前記籠体は、 平面視又は正面視において台形に形成されており、 内部に前記土嚢が配置される、防護構造。 【請求項3】 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が、長手方向を平行にして複数並べられて形成される、請求項1又は2に記載の防護構造。 【請求項4】 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が上下方向に積み上げられて形成される、請求項1~3の何れか1項に記載の防護構造。 【請求項5】 前記複数の籠体は、 隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されている、請求項3又は4に記載の防護構造。 【請求項6】 前記土嚢は、 少なくとも大きさの異なる第1土嚢及び第2土嚢を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の防護構造。 【請求項7】 前記第1土嚢は、 前記第2土嚢よりも大きい袋体を備える、請求項6に記載の防護構造。 【請求項8】 前記土嚢は、 隣り合う前記土嚢と接触して配置されている、請求項1~7の何れか1項に記載の防護構造。」 (2)本件補正後 「 【請求項1】 充填材が充填された複数の土嚢と、 鋼製の直方体形状の籠体と、を備え、 前記籠体は、 内部に前記複数の土嚢が配置され、 前記複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであり、 前記複数の土嚢同士の接触面積が大きくなるように密着されており、 前記複数の土嚢と前記籠体とが一体となっており、 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が、長手方向を平行にして複数並べられて形成されるものであり、 前記複数の籠体は、 隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されており、 前記連結部材は、 U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成されており、 前記籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する、防護構造。 【請求項2】 充填材が充填された複数の土嚢と、 鋼製の籠体と、を備え、 前記籠体は、 平面視において台形に形成されており、 内部に前記複数の土嚢が配置されており、 前記籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の衝撃力に抵抗する、防護構造。 【請求項3】 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が、長手方向を平行にして複数並べられて形成される、請求項2に記載の防護構造。 【請求項4】 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が上下方向に積み上げられて形成される、請求項2に記載の防護構造。 【請求項5】 前記複数の籠体は、 隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されている、請求項3又は4に記載の防護構造。 【請求項6】 前記土嚢は、 少なくとも大きさの異なる第1土嚢及び第2土嚢を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の防護構造。 【請求項7】 前記第1土嚢は、 前記第2土嚢よりも大きい袋体を備える、請求項6に記載の防護構造。 【請求項8】 前記土嚢は、 隣り合う前記土嚢と接触して配置されている、請求項1~4の何れか1項に記載の防護構造。」 2 補正の目的 (1)本件補正における請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5を独立請求項の形式に書き直し、さらに以下の点を限定するものである。 ア 防護構造に含まれる土嚢が複数からなること、及び「前記複数の土嚢と前記籠体とが一体となっており」、「前記籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する」ものであること。 イ 籠体同士を連結する連結部材が「U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成されて」いるものであること。 (2)そして、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項5に記載される発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 (3)したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、以下に再掲する。 「 【請求項1】 充填材が充填された複数の土嚢と、 鋼製の直方体形状の籠体と、を備え、 前記籠体は、 内部に前記複数の土嚢が配置され、 前記複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであり、 前記複数の土嚢同士の接触面積が大きくなるように密着されており、 前記複数の土嚢と前記籠体とが一体となっており、 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が、長手方向を平行にして複数並べられて形成されるものであり、 前記複数の籠体は、 隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されており、 前記連結部材は、 U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成されており、 前記籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する、防護構造。」 (2)引用文献4の記載事項及び引用発明の認定 ア 引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2006-161408号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当合議体により付した。以下同様。)。 (ア)「【0001】 本発明は、護岸工事や宅地造成工事あるいは法面保護工事等の各種土木工事に使用する地盤補強材に関するものである。」 (イ)「【0013】 図1は本発明に係る地盤補強材1の代表的な一つの実施形態を示すもので、この地盤補強材1は、鉄線篭2の中に複数の重り部材3を積み重ねて収容することにより構成されている。 【0014】 上記鉄線篭2は、図2に示すような菱形金網か、図3に示すような溶接金網、あるいは図示を省略した亀甲金網等によって、縦寸法より横寸法が大きい矩形の箱形に形成したもので、底面網2aと、前後一対の側面網2b,2bと、左右一対の側面網2c,2cと、必要に応じて取り付けられる上面網2dとからなっている。 【0015】 なお、上記菱形金網は、扁平螺旋形に折曲した複数の金属線条5を折曲部5aにおいて順次連繋することにより形成されるもので、菱形の網目5bを有しており、また、上記溶接金網は、縦横に配した金属線条6a,6bの交叉部を電気溶接して格子状に形成されるもので、矩形の網目6cを有しており、更に、亀甲金網は、金属線条を亀甲形すなわち六角形の網目が現れるように編成して形成されるものである。上記鉄線篭2は、これらの金網の何れか一種類だけを使用して形成するのが一般的であるが、複数種類の金網を併用して形成することもできる。例えば、底面網2aと上面網2dとを溶接金網で形成し、前後及び左右の側面網2b,2cを菱形金網で形成したり、前面側の側面網2bを溶接金網で形成し、それ以外の面網を菱形金網で形成することができる。もちろんこれ以外の組合せであっても構わない。 【0016】 上記重り部材3は、図4(a)から分かるように、天然繊維製又は合成繊維製の糸を織成又は編成して形成した布製の柔軟な袋8の中に、土砂及び/又は礫などの、水より比重が大きくかつ鉄線篭2の網目より径の小さい粒状又は微粒状をした硬質の内容物9を収容し、袋8の開口部を紐や金具等の封止具10により封止したもので、一般に「土嚢」と称するものと同様の構成を有するものである。 ・・・(中略)・・・ 【0020】 上記重り部材3は、鉄線篭2の中に必要数収容することによって上記地盤補強材1を構成する。その際、各重り部材3の形状を、内容物9を移動させることによって収容すべき空間形状に合わせて適宜調整することにより、これらの重り部材3を鉄線篭2の中に隙間なく密に収容することができる。この場合、必ずしも重り部材3の形を無理に変えてやる必要はなく、該重り部材3を目的の場所に置くことで、その場所の形状に応じて該重り部材3が自動的に変形し、その場所にフィットして安定するケースもある。また、隣接する重り部材間の隙間に小形の重り部材を配置するなど、大きさの異なる重り部材を併用することにより、各重り部材3を鉄線篭2の中より密に収容することが可能になる。 【0021】 かくして得られた地盤補強材1は、図5に示すように、道路や川岸などの法面に段積して設置したり、造成地に埋設するなど、栗石を詰めた一般の石詰篭と同様の用途に同様の態様で使用される。この場合、上記重り部材3として、袋8内に土砂及び/又は礫などの水より比重が大きい内容物9を収容したものを使用しているため、上記地盤補強材1は、土圧や水圧等に耐え得る十分な重量と強度とを備えており、また、栗石を使用する場合よりはコストも安い。さらに、上記重り部材3が鉄線篭2内に隙間なく収容されるため、隙間の形成による鉄線篭2の変形や地盤沈下といった問題が発生せず、地盤の強化や保護あるいは安定化のために勝れた効果を発揮する。 【0022】 しかも、通常は鉄線篭2内への収容物として使用できない土砂及び/又は礫等を、袋8に入れることによって有効に使用することができるため、土砂しか入手できない現場であっても、その土砂を使用することによって地盤補強材1を確実に設置することができる。また、袋8の大きさや収容量等を変えることによってどのような大きさの重り部材3でも自由に得ることができるため、様々な寸法の鉄線篭2に対して色々な大きさの重り部材3を効率良く確実に収容することができる。 【0023】 更に、上述した重り部材3は、通常は土嚢として個々に積み上げて設置されるものであるため、大きな土圧や水圧等が作用した場合にばらばらに移動して土留機能を消失するケースが多いが、上述したように、複数の重り部材3をまとめて鉄線篭2内に収容し、一つの大きな地盤補強材として機能させることにより、重り部材3の個々の大きさ及び重量は比較的小さくても、複数の重り部材3と鉄線篭2との協同作用によって格段に大きな土留機能を発揮させることができる。 【0024】 なお、図示した実施例では、鉄線篭2の縦横の寸法が異なる例が示されているが、縦横同じ寸法であっても良く、また、円筒形の鉄線篭であっても良い。」 (ウ)図1「 [図:0001422147000001.jpg] 」 (エ)図2「 [図:0001422147000002.jpg] 」 (オ)図3「 [図:0001422147000003.jpg] 」 (カ)図4「 [図:0001422147000004.jpg] 」 (キ)図5「 [図:0001422147000005.jpg] 」 イ 引用文献4の記載から読み取れる事項の認定 (ア)引用文献4の【0014】の「鉄線篭2は・・・(中略)・・・縦寸法より横寸法が大きい矩形の箱状」との記載からみて、鉄線篭2は直方体形状であると認められる。このことは、図1からも直ちに看て取れる。 (イ)引用文献4の【0021】には「かくして得られた地盤補強材1は、図5に示すように、道路や川岸などの法面に段積して設置したり、造成地に埋設するなど、栗石を詰めた一般の石詰篭と同様の用途に同様の態様で使用され」ることが記載されているから、引用発明4には「地盤補強材1」を複数並べた構造が開示されているものと認められる。なおこのことは、図5からも直ちに看て取れる。 ウ 引用発明の認定 前記イにおいて認定した事項及び前記アに摘記した引用文献4の記載事項を総合すると、引用文献4には、発明の実施形態として次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「地盤補強材1は、鉄線篭2の中に複数の重り部材3を積み重ねて収容することにより構成され、(【0013】) 鉄線篭2は直方体形状であり、((2)イ(ア)) 上記重り部材3は布製の柔軟な袋8の中に内容物9を収容した一般に土嚢と称するものと同様の構成を有するものであり、(【0016】) 上記重り部材3を鉄線篭2の中に必要数収容することによって上記地盤補強材1を構成する際、各重り部材3の形状を、内容物9を移動させることによって収容すべき空間形状に合わせて適宜調整することにより、これらの重り部材3を鉄線篭2の中に隙間なく密に収容することができるものであり、(【0020】) 地盤補強材1は、道路や川岸などの法面に段積して設置したり、造成地に埋設するなど、栗石を詰めた一般の石詰篭と同様の用途に同様の態様で使用されるものであり、(【0021】) 複数の重り部材3をまとめて鉄線篭2内に収容し、一つの大きな地盤補強材として機能させることにより、重り部材3の個々の大きさ及び重量は比較的小さくても、複数の重り部材3と鉄線篭2との協同作用によって格段に大きな土留機能を発揮させることができる、(【0023】) 地盤補強材1を複数並べた構造。((2)イ(イ)」 (3)引用文献2、6、10、11、12の記載事項及び周知技術の認定 ア 引用文献10、11に記載された事項及び周知技術1の認定 (ア)引用文献10に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である「鋼製ふとん篭 KSパッケージ」2010年8月(JFE建材株式会社)(URL:https://jfe-kenzai.co.jp/sbp-data/media/2023/01/js-package-catalog.pdf)(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 「従来の篭工は、鉄線の篭に玉石を詰めたものであり、その形状により蛇篭、ふとん篭、だるま篭と呼ばれています。用途としては護岸工、水制工等の河川工事をはじめ、渓間、山腹、道路際の災害復旧工事・軟弱地盤対策工事等に用いられています。 その特長はフレキシブルであり、透水性に優れ、施行が簡単な構造であることです。しかし一方、主部材が鉄線であるため、腐食、摩耗等により鉄線が破断され、中詰材が流出することがありました。 KSパッケージ(鋼製ふとん篭)は、上記のような従来の鋼工の優れた特長を生かしながら、永久構造物としての機能を兼ね備えた製品であります。」(スペースは改行を示す。以下同じ。)(2頁) (イ)引用文献11に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2002-21042号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。 「【0002】【従来の技術】従来、護岸のための一資材として蛇篭(じゃかご)が用いられてきた。蛇篭の素材には竹や鋼線が用いられているが、篭内へ栗石や砕石を充填(当審注:「填」は原文では旧字体。以下同様。)するのが困難であるし、寸法精度、レベル出しが困難、安定性の問題もある。そこで、特開平11-293647号では多孔枠体の蛇篭用ブロックを提案した。」 (ウ)周知技術1の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献10、11の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。 <周知技術1> 「籠体を鋼製とすること。」 イ 引用文献2、10に記載された事項及び周知技術 (ア)引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2015-34449号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 a 「【0001】 本発明は、落石、雪崩、土砂崩壊等による災害を防止する防護体に関する。 ・・・(中略)・・・ 【実施例10】【0108】 図21~図23は、本発明の実施例10を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の防護体は、間隔Kを置いて配置した支持体2,2・・・の前方に、緩衝籠体21を設けている。この緩衝籠体21は、金属製からなる籠状枠体22と、この籠状枠体22内に詰められた中詰め材4とからなり、この中詰め材4としては、石,土砂や石と土砂の混合物が例示される。また、前記籠状枠体22は、縁部を形成する外枠部24と、外枠部24の開口を塞ぐ網部25とを備える。尚、斜め部材が交差する網部25を図示しているが、縦横部材が交差するものでもよい。 【0109】 前記籠状枠体22は、左右方向に長い直方体形状をなし、上下面部23U,23S、左右面部23L,23R、前後側面23F,23Bを備える。籠状枠体22の左右長さは支持体2,2の中心間隔とほぼ等しく、上下寸法より前後寸法が大きく形成されている。 【0110】 前記籠状枠体22は上下に重ね合わせて配置され、下段において、支持体2の前方中央で隣合う緩衝籠体21,21の左右面部23L,23Rを突合せ状態で隣り合わせると共に、連結材(図示せず)により連結し、上段において、支持体2,2のほぼ中央で隣合う緩衝籠体21,21の左右面部23L,23Rを突合せ状態で隣り合わせると共に、連結材により連結している。また、上下の籠状枠体22を連結材により連結する。また、連結材としては針金,バンドやUボルトなどが例示され、隣合う籠状枠体22,23同士を連結する。この場合、針金,バンドを隣り合う籠状枠体22,23に巻き付けるようにして連結したり、Uボルトにより隣り合う籠状枠体22,23の部材同士を挟着したりして連結する。尚、緩衝籠体21は自立して積み重ねることができるから、連結材を用いなくてもよい。 ・・・(中略)・・・ 【0113】 上記のような防護体においては、略同一形状の前記緩衝籠体21を重ね合わせて設け、上下の籠状枠体22を図示しない連結材により連結し、緩衝籠体21に落石を受けると、籠状枠体22が塑性変形すると共に、内部で中詰め材4が移動することにより、その衝撃エネルギーを吸収することができる。また、上下の籠状枠体22を連結して一体化し、複数の籠状枠体21,21・・・と複数の支持体2,2・・・により、落石の力が分散され、衝撃エネルギー吸収効果が向上することができる。 【0114】 このように本実施例では、請求項13に対応して、支持体2の前に、籠状枠体22内に中詰め材4を入れた緩衝籠体21を設けたから、籠状枠体22の塑性変形と中詰め材4の移動によって衝撃エネルギーを吸収し、衝撃エネルギーを効果的に吸収でき、また、重量物である支持体2と緩衝籠体21とを組み合わせることにより、落石衝突時の衝撃エネルギー吸収量が大きくなる。」 b 図21「 [図:0001422147000006.jpg] 」 c 図22「 [図:0001422147000007.jpg] 」 d 図23「 [図:0001422147000008.jpg] 」 (イ)引用文献10に記載された事項 引用文献10には、次の記載が認められる。 「(連結棹) KSパッケージは、横並べ、段重ねが自由ですが、羽根つき連結棹を使うことにより、全体としての連続性を持たせ、さらに機能を向上することができます。」(2頁「構造」の項) 図面「 [図:0001422147000009.jpg] 」 (ウ)周知技術2の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献2、10の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。) <周知技術2> 「複数の籠体を、長手方向を平行にして複数並べて形成し、隣り合う前記籠体同士を連結すること。」 ウ 引用文献6、12に記載された事項及び周知技術3の認定 (ア)引用文献6に記載された事項 令和5年12月11日付け補正の却下の決定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2019-127740号(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 a 「【図面の簡単な説明】 【0020】 【図1】本発明の実施例1を円筒金属籠の斜視図である。 ・・・(中略)・・・ 【図12】同上、分割箇所連結具の分解斜視図である。 【図13】同上、蓋体連結具の分解斜視図である。 【図14】同上、円柱金網籠と土嚢袋と植生部の分解斜視図である。 ・・・(中略)・・・ 【0042】 図14に示すように、前記土嚢袋63は、略円形をなす底面部66と、略円筒形をなす側面部67とを有し、この側面部67は二重のメッシュ生地68,69からなり、その側面部67の上部に円筒状の蓋形成部70が設けられ、この蓋形成部70は外側の前記メッシュ生地68により構成されている。尚、前記側面部67は、メッシュ生地69を用いずにメッシュ生地68のみの場合もある。 【0043】 前記底面部66は、合成樹脂製、例えばポリプロピレン製の黒い布地からなり、通水性を有する。また、前記メッシュ生地68,69は、合成樹脂製、例えば黒のポリプロピレン製であり、通水性を備えると共に、植物の芽が通過可能な網目を有する。さらに、前記植生シート64は、合成樹脂製、例えばポリエチレンネットを基材とし、この基材に、薄綿,水溶紙,植物の種や肥料を付着させたものである。また、植生シート64は、透水性を有し、一方、土砂65を保持するものである。 【0044】 次に、前記円柱金網籠1の組立方法について説明する。図3に示すように、下蓋体5の上に一方の分割金網本体3を乗せ、補強用連結具6により、前記下蓋体5の円形縁線材31と、前記円柱金網本体2の下縁線材12と、前記補強線材15の連結具係合部である折返し部17とを連結し、また、下蓋体5の円形縁線材31と下縁線材12とを複数の連結具8により連結する。 【0045】 この場合、補強用連結具6の連結具本体41は、透孔46側を前側に配置し、後側から透孔46A,46に螺子杆51を挿通すると共に回り止め手段53により回り止め状態とし、前側に突出した雄螺子部51Nにナット52を螺合することにより、円形縁線材31と下縁線材12と折返し部17をスムーズに連結することができる。また、連結具8は雄螺子部57N,57Nが上側になるように配置することにより、雄螺子部57N,57Nへのナット60,60の螺合作業が容易となる。尚、補強用連結具6により、円柱金網本体2の底部に下蓋体5を取り付けた後、即ち、連結部44側の締付手段42を締め付けた後、補強縦線材16の下端側の折返し部17を補強用連結具6に連結することが作業手順の面から好ましい。 【0046】 また、同様に他方の分割金網本体3を下蓋体5に連結固定し、一方と他方の分割金網本体3,3の縦線材14,14同士を、複数の分割箇所連結具7,7・・・により連結し、円柱金網本体2を組み立てる。」 b 図12「 [図:0001422147000010.jpg] 」 c 図14「 [図:0001422147000011.jpg] 」 (イ)引用文献12 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特許第5543009号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の記載がある。 a 「【0034】 上記のような構成の獣類捕獲装置1の使用方法について、以下に説明する。 まず、各ユニットの連結方法について説明する。設置者は、隣接する柵ユニット10,10それぞれの連結鉄筋線10b,10bに各ユニットを連結するための連結部材である連結コイル13を巻き付ける。これにより、連結鉄筋線10b,10bが結束され、当該柵ユニット10,10が連結される(図12を参照)。また、設置者は、隣接する柵ユニット10及び扉ユニット11についても、同様にしてそれぞれの連結鉄筋線10b,110bに連結コイル13を巻き付ける。これにより、連結鉄筋線10b,110bが結束され、当該柵ユニット10及び扉ユニット11が連結される。 ・・・(中略)・・・ 【0047】 また、上述した実施の形態では、柵ユニット10及び扉ユニット11は、連結鉄筋線に連結コイル13を巻き付けることで連結しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各ユニットを連結することができるのであれば、ワイヤークリップ、シャックル、又はクランプ等を用いて連結されていてもよい。ここで、ワイヤークリップ、シャックル、又はクランプ等は取り付ける際にねじ締め等の手順が必要となるが、連結コイルを用いる場合は単純に連結鉄筋線に当該連結コイルを巻き付けるだけでよく、他の方法と比較して、より容易且つ短時間で組み立て又は分解をすることができる。このため、各ユニットを連結するための連結部材としては、連結コイル等のような螺旋状のものを用いることが望ましい。」 (当審注:引用文献12の「シャックル」は、本願明細書【0025】に記載されるように、「U字形状のU字部材・・・と棒状部材・・・とを組み合わせて構成される」ものであると認められる。) b 図12「 [図:0001422147000012.jpg] 」 (ウ)周知技術3の認定 前記(ア)、(イ)に示した引用文献6、12の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術3」という。) <周知技術3> 「連結部材として、U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせたものを用いること」 (4)本件補正発明と引用発明の対比 ア 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 (ア)本件補正発明の防護構造が「充填材が充填された複数の土嚢と、鋼製の直方体形状の籠体と、を備え」る点について 引用発明の「地盤補強材1を複数並べた構造」、「鉄線篭2」は、それぞれ本件補正発明の「防護構造」、「籠体」に相当する。また、引用発明の「重り部材3」は、「布製の柔軟な袋8の中に内容物9を収容した一般に土嚢と称する」ものであるから、本件補正発明の「充填材が充填された」「土嚢」に相当する。 また、引用発明の「鉄線篭2」は「直方体形状」であって、かつ「地盤補強材1」は「鉄線篭2」の中に複数の「重り部材3」を積み重ねて収容するのであるから、本件補正発明の「防護構造」と引用発明の「地盤補強材1」は、「充填材が充填された複数の土嚢と、直方体形状の籠体と、を備える」点で一致する。 一方で、本件補正発明の「籠体」は「鋼製」であるのに対して、引用発明の「鉄線篭2」は「鋼製」ではなく鉄製である点で相違する。 (イ)本件補正発明の「籠体」が「内部に前記複数の土嚢が配置され、前記複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであ」るとの点について 上記(イ)の記載の意味は、「籠体」が以下の要件を満たすことであると認める。 a (要件1)内部に複数の土嚢が配置され、複数の土嚢を内部で拘束して配置されたものであること。 b (要件2)地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであること。 引用発明は、「複数の重り部材3をまとめて鉄線篭2内に収容し、一つの大きな地盤補強材として機能させる」のであるから、引用発明の鉄線篭2は、本件補正発明の「籠体」と同様に「内部に複数の土嚢が配置され、複数の土嚢を内部で拘束して配置された」ものと認められる(要件1)。 また、引用発明は「複数の重り部材3と鉄線篭2との協同作用によって格段に大きな土留機能を発揮させる」ものであって、「道路や川岸などの法面に段積して設置したり、造成地に埋設する」等、地面に設置されることが想定されるものであるから、本件補正発明と同様に、複数の重り部材3がまとめて収容されて一つの大きな地盤補強材として機能する鉄線篭2と、この鉄線篭2が設置された地面との間に摩擦力が発生して衝撃力に対抗する機能を有するものと認められる(要件2)。 したがって、本件補正発明の「籠体」と引用発明の「鉄線篭2」は、「内部に前記複数の土嚢が配置され、前記複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであ」る点で一致する。 (ウ)本件補正発明の「複数の土嚢同士の接触面積が大きくなるように密着されて」いるとの点について 本件補正発明の「複数の土嚢同士」は、何を基準として「接触面積が大きくなる」のかについて、その比較対象は特定されておらず、また本願明細書を参酌しても「接触面積が大きくなる」との用語の定義はされていないが、この特定は単に、土嚢同士の密着度が十分大きいことを表現しているものと認められる。 そして引用発明は、「重り部材3を鉄線篭2の中に必要数収容することによって上記地盤補強材1を構成する際、各重り部材3の形状を、内容物9を移動させることによって収容すべき空間形状に合わせて適宜調整することにより、これらの重り部材3を鉄線篭2の中に隙間なく密に収容することができるものであ」るから、「重り部材3」同士は、本件補正発明の「土嚢」と同様に「接触面積が大きくなるように密着されて」いるものと認められる。 (エ)本件補正発明が「複数の土嚢と前記籠体とが一体となって」いるとの点について 引用発明は、「複数の重り部材3をまとめて鉄線篭2内に収容し、一つの大きな地盤補強材として機能させる」のであるから、本件補正発明の「複数の土嚢と前記籠体とが一体となって」いるとの要件を満たす。 (オ)本件補正発明が「前記籠体は、複数の籠体を含み、前記複数の籠体が、長手方向を平行にして複数並べられて形成されるものであ」る点について a 本件補正発明の「前記籠体は、複数の籠体を含み」との記載は、一見すると、ここでいう「籠体」が上記(ア)、(イ)で検討した単体の「籠体」とは異なり、複数の「籠体」からなる集合体を改めて「籠体」と言い換えているようにもみえる。 しかし、本願明細書の全記載をみても、複数の「籠体」の集合体を「籠体」と記載している箇所はなく、「籠体」と記載した場合は一貫して単体の「籠体」を表現しているものと認められる(「籠体」を連結したものは、「防護構造200」等と表現し、用語を使い分けているものと認められる。)。 そして、当該「前記籠体は」以降の記載をみても、「籠体」との用語を単体と解しても矛盾無く解釈できることから、本件補正発明における「籠体」は一貫して単体の「籠体」を表現しているものと認められる。この点は、「籠体」の前に「前記」との記載があり、ここで記載される「籠体」は上記(ア)、(イ)で検討した「籠体」と同じであることが示唆されていることからも首肯できる。 そうすると、本件「前記籠体は、複数の籠体を含み」のうちの「前記籠体は」との記載は、助詞の「は」が(その後に現れる名詞との同一関係を示す主語を表示するためのものではなく)単に主題を提示する程度の意味であって、すなわち「前記籠体は」との表現は、(本件補正発明のうち)「前記籠体についていえば」程度の意味であると解される。 b 引用発明は「地盤補強材1を複数並べた構造」であるから、「地盤補強材1」を構成する「鉄線篭2」もまた複数並べられた構造となるものと認められる。してみれば、本件補正発明の「防護構造」と引用発明の「地盤補強材1を複数並べた構造」とは、「複数の籠体を含み、複数の籠体が」「複数並べられて形成されるものであ」る点で一致する。 一方、本件補正発明の複数の「籠体」の並べ方は「長手方向を平行に」するのに対し、引用発明の「鉄線篭2」の並べ方は特定されていない点で相違する。 (カ)本件補正発明が「隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されており、前記連結部材は、U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成されて」いるとの点について 引用発明の「鉄線篭2」は複数並べられているものの、当該「鉄線篭2」同士が連結部材により連結されることや連結部材の構造は特定されていない点で相違する。 (キ)本件補正発明が「籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する」との点について 引用発明は、上記(イ)でも検討したように「複数の重り部材3をまとめて鉄線篭2内に収容し、一つの大きな地盤補強材として機能させる」ものであって、かつ「複数の重り部材3と鉄線篭2との協同作用によって格段に大きな土留機能を発揮させる」ものであるから、本件補正発明と同様に、水平方向の衝撃力に抵抗するような機能を有するものと認められる。 してみれば、本件補正発明と引用発明とは、「籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する」点で一致する。 イ 一致点及び相違点 前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点1~3において相違すると認められる。 (ア)一致点 「 充填材が充填された複数の土嚢と、 直方体形状の籠体と、を備え、 前記籠体は、 内部に前記複数の土嚢が配置され、 前記複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであり、 前記複数の土嚢同士の接触面積が大きくなるように密着されており、 前記複数の土嚢と前記籠体とが一体となっており、 前記籠体は、 複数の籠体を含み、 前記複数の籠体が、複数並べられて形成されるものであり、 前記複数の籠体は、 前記籠体により前記複数の土嚢が一体化されることで水平方向の前記衝撃力に抵抗する、防護構造。」 である点。 (イ)相違点 a 相違点1 本件補正発明の籠体は「鋼製」であるのに対し、引用発明の「鉄線篭2」は「鉄製」である点。 b 相違点2 本件補正発明の複数の「籠体」の並べ方は「長手方向を平行に」するのに対し、引用発明の「鉄線篭2」の並べ方は特定されていない点。 c 相違点3 本件補正発明は、「隣り合う前記籠体同士が互いに連結部材により連結されており、前記連結部材は、U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成されて」いるのに対し、本件補正発明の「鉄線篭2」同士が連結部材により連結されることや連結部材の構造は特定されていない点。 (5)判断 ア 相違点1について 「籠体を鋼製とすること」(周知技術1)は周知技術であると認められるところ、引用発明においても「鉄線篭2」を鋼製とすることで、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 イ 相違点2、3について 「複数の籠体を、長手方向を平行にして複数並べて形成し、隣り合う前記籠体同士を連結すること。」(周知技術2)や「連結部材として、U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせたものを用いること」(周知技術3)はいずれも周知技術であるから、引用発明においても、複数の「鉄線篭2」を「長手方向を平行にして」並べることとし、かつ隣合う「鉄線篭2」を「U字形状のU字部材と棒状部材とを組み合わせて構成された連結部材」により連結することは当業者が容易に想到できたことと認められる。 ウ 総合評価 前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 請求人の主張について (ア)請求人の主張1(審判請求書における主張)について a 請求人の主張1の内容 請求人は審判請求書において、引用発明は、以下(a)、(b)の点から、引用発明は水平方向への衝撃力に抵抗し得る構成でない旨主張している。 (a)引用発明は重り部材3と鉄線篭2の中に必ず隙間が生じて、荷重又は衝撃に耐えることができない。 (b)引用発明の地盤補強材1は斜面に沿って配置されるので地盤補強材1に係る荷重の方向は鉛直である。 b 請求人の主張1についての検討 上記(a)の点について検討するに、上記(4)イ(ア)に示したように本件補正発明と引用発明とは「複数の土嚢を前記籠体の内部で拘束して配置された地面との摩擦力により衝撃力に対抗するものであり、前記複数の土嚢同士の接触面積が大きくなるように密着されており、前記複数の土嚢と前記籠体とが一体となって」いる点で一致しており、本件補正発明と引用発明とで、土嚢(重り部材3)と籠体(鉄線篭2)との間に生じる隙間の程度に違いがあるものと認められないから、荷重又は衝撃に耐える程度にもまた差があるものとは認められない。 上記(b)について検討するに、引用発明は「道路や川岸などの法面に段積して設置したり、造成地に埋設するなど、栗石を詰めた一般の石詰篭と同様の用途に同様の態様で使用される」ものであって、必ずしも斜面に配置されるものではない。すなわち、上記引用文献2に記載されるような「落石、雪崩、土砂崩壊等による災害を防止する防護体」としても利用可能であることは明らかであって、特定された「防護体」として備える機能に何ら異なるところはない。さらにいえば、斜面に配置されたとしても、斜面の土砂流失を防ぐ機能に鑑みれば、鉛直方向だけでなく、水平方向への荷重がかかる場合もあるものと認められる。またそもそも、「水平方向の前記衝撃力に抵抗する」との発明特定事項は、「籠体により前記複数の土嚢が一体化されること」によって生じ得る「防護構造」の作用・機能を確認的に記載したものにすぎず、籠体をどこに並べるのか、またどのように並べるのかを特定したものとは認められない。 してみれば、請求人の主張1は採用することができない。 (イ)請求人の主張2(上申書による主張)について a 請求人の主張2の内容 請求人は、令和6年5月9日提出の上申書において、引用発明の地盤補強材1は災害時に使用されるのでなく基礎工事に使用され、恒常的に配置される構成である点を主張している。またそれに併せ、この点を明らかにするために、請求項1の第1行目として「土砂災害を抑制するために用いられるものであって」と加える補正案を提示している。 b 請求人の主張2についての検討 (a)引用発明は「栗石を詰めた一般の石詰篭と同様の用途に同様の態様で使用されるものであ」るところ、上記文献10に「従来の篭工は、鉄線の篭に玉石を詰めたものであり、その形状により蛇篭、ふとん篭、だるま篭と呼ばれています。用途としては護岸工、水制工等の河川工事をはじめ、渓間、山腹、道路際の災害復旧工事・軟弱地盤対策工事等に用いられています。」(3(3)ア(ア))と記載されるように、引用発明の篭体もまた災害時に使用され得ることは、当業者であれば当然に認識できたものと認められる。さらにいえば、仮に本件補正発明と引用発明とで使用のタイミングが異なるとしても、そのことによって物の発明である本件補正発明と引用発明との間に、構造や特性等について相違が生じるものとも認められない。 してみれば、上記請求人の主張2は採用できない。 (b)上申書で提示された補正案について検討するに、「土砂災害を抑制するために用いられるものであって」との発明特定事項により、物の発明である「防護構造」の構造、特性等に何ら変更を加えるものではないし、また上記(a)で検討したことからも明らかなように、引用発明も「土砂災害を抑制するために用い」ることができるものであることを、当業者が認識し得たことは明らかであるから、仮に上申書で提示された補正案のとおり補正されたとしても、このことによって進歩性を獲得するものとも認められない。 オ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由1(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> 1.特開2017-002567号公報 2.特開2015-034449号公報 3.特開2011-084918号公報 4.特開2006-161408号公報 5.堀内晴生 他,「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル,土木技術資料,2013年,55-5,56-59頁(周知技術を示す文献) 6.特開2002-302955号公報(周知技術を示す文献) 7.特開平5-171653号公報(周知技術を示す文献) 3 引用発明の認定等 引用文献4に記載された事項並びに引用発明及び周知技術1~3は、前記第2の3(2)ウ、(3)ア(ウ)、(3)イ(ウ)、(3)ウ(ウ)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明から、前記第2の1(1)の請求項3及び5の限定並びに前記第2の2(1)のア及びイに示した限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)において説示したとおり、引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-004662

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