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特許訂正審判

2021-390145

映写黒板およびその製造方法

審判番号
2021-390145
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2006-195970外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
4771880
請求日
2021年08月30日
審決日
2022年02月08日
公報発行日
2022年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P141 .853-Z (B43L) / P141 .841-Z (B43L) / P141 .855-Z (B43L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法126条1項特許法126条6項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第4771880号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 6項目
理 由

第1 手続の経緯

特許第4771880号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、平成18年7月18日の特許出願であって、平成23年7月1日にその特許権の設定登録がなされ、その後、令和3年8月30日に訂正審判の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年10月27日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年11月30日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求の趣旨

特許第4771880号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。

第3 訂正の適否

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)

願書に添付した明細書の段落【0018】及び【0041】に「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」とあるのを、「標準白板(完全拡散板)」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無について

(1)訂正の目的について

本件訂正は、訂正前の明細書の段落【0018】及び【0041】の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」との記載において、「硫酸マグネシウム」、「焼き付け」及び「純白板」のそれぞれの記載は、その技術的な意味が一般に知られていることからして、不明瞭な記載であるとする理由はない。

また、「硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板」との記載は、上記のとおり、各記載の技術的な意味を以てすれば、その文言どおりに理解できることから、不明瞭な記載であるとする理由はない。

そうすると、本件訂正は、特許法126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものとはいえない。

また、本件訂正が、特許法126条第1項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げるいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

審判請求人は、

「「標準白板(完全拡散板)」は、「純白板」であるべきところ、「硫酸マグネシウムを焼き付けた板」は「純白板」とならず、くすんだ色調の板となります。…添付資料2は、「b)均等拡散反射面に近い拡散反射特性があり、…c)分校立体各反射率が0.9以上」との記載があり、「標準白板(完全拡散板)」として使用できるものは、上記した条件を満たす高い反射率を有する材料のみであります。
…
添付資料3には、「硫酸マグネシウム」は用途として、製紙工業の充てん剤や、染色の媒染材等が例示されているだけで、白色顔料となることについての記載はありません。「硫酸マグネシウム」は,高い反射率(反射率:0.9以上)を有する材料となるとは考えられず、…「標準白板(完全拡散板)」として要求される特性を満足するとはいえないのです。
…
「硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板」という記載は、合理的に矛盾が生じていることになり、「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」との記載をそのまま詳細な説明に残すことは、本件特許出願時の当業者の技術常識に反することとなり、明瞭でない記載であるといえます。」

と主張する。

審判請求人の主張するとおり、添付資料1乃至3の何れにも、「硫酸マグネシウム」を「標準白板(完全拡散板)」に用いることの記載はないものの、「硫酸マグネシウム」を「標準白板(完全拡散板)」に用いることを否定する記載も見当たらない。

また、審判請求人は、「硫酸マグネシウム」が添付資料2に記載されている条件を満たさない材料であると主張するものの、「硫酸マグネシウム」が添付資料2に記載された条件を満たしていないことを客観的に立証していない。

そうすると、上記審判請求人の主張は採用できるものではない。

(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か

ア 本件特許請求の範囲の請求項1には、

「【請求項1】
金属基板上に、少なくとも1層の琺瑯層を有する黒板であって、前記琺瑯層のうち最外層の表面琺瑯層が、JISZ8721-1993に規定される明度Vが3.0~7.0である色調と、JISB0601-2001に規定される表面粗さRzが5~25μmである表面特性と、ピークゲインが0.28以上である反射特性と、を有することを特徴とする映写黒板。」

と記載されている。

そして、本件特許明細書には、以下の通り記載されている。

「【0018】
本発明の映写黒板においては、表面琺瑯層が上記した色調と表面特性を有し、優れた黒板機能を維持するとともに、さらにピークゲインが0.28以上で、好ましくはハーフゲインが13以上である反射特性を有する。
被測定板の反射特性は、例えば、図2に示すように、被測定板Sの中心に垂直方向に光源10から入射光1を照射し、中心点から同一円弧上を左右に各75°の範囲で5°ずつ移動したポイントでの反射光2の大きさ(反射輝度)を輝度計11で測定して得られた反射特性曲線(図1参照)により求めるものとする。本発明でいう「ピークゲイン」とは、標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)に光を当てたときの反射輝度に対する、同一条件で測定した被測定黒板の反射輝度の比率をいうが、この場合、通常、視野角5°での反射輝度を用いる。また、本発明でいう「ハーフゲイン」は、反射特性曲線における反射輝度がピークの1/2となった場合の視野角幅(度)をいう。
【0019】
ピークゲインが0.28未満では、投影した映像が暗く、映像認識性に劣ることになり、映写黒板としての要求を満足することができなくなるため、0.28をピークゲインの下限値とした。なお、ピークゲインは好ましくは0.35~1.0、より好ましくは0.35~0.60である。また、広い視野角を得るために、ハーフゲインを13以上とすることが好ましい。このため、本発明では、0.28以上のピークゲインと、好ましくは13以上のハーフゲインを有する反射特性の表面琺瑯層とする。」

以上の記載からすると、「ピークゲイン」とは、標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)に光を当てたときの反射輝度に対する、同一条件で測定した被測定黒板の反射輝度の比率であって、標準白板の材質及び表面処理が異なれば、その材質に応じて光を当てたときの反射輝度は異なることは、技術常識といえるところからすると、本件訂正前の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」と、本件訂正後の焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」もしくは、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」とで、同一条件の光を当てたときの反射輝度が必ずしも同じ反射輝度を示すとは限らないことは明らかである。

そうすると、上記のとおり、本件訂正前の標準白板に光を当てたときの反射輝度と、本件訂正後の標準白板に光を当てたときの反射輝度とが必ずしも同じ反射輝度を示すとは限らないのであるから、同じ被測定黒板に対して同一条件で光を当てたとしても、本件訂正前の「ピークゲイン」と本件訂正による「ピークゲイン」とが、必ずしも同じ値を示すことになるとは限らないこととなる。

してみると、本件訂正により、本件特許請求の範囲の請求項1の「ピークゲインが0.28以上である反射特性」を有する「映写黒板」が、訂正の前後で必ずしも同じものが包含されるとは限らないこととなるのであるから、本件訂正は、本件特許請求の範囲の請求項1の範囲を実質的に変更するものというほかない。

よって、本件訂正は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たさない。

審判請求人は、

「「標準白板(完全拡散板)」は、一定以上の優れた反射特性を満足する材料を特定するものであって、焼き付け物質によって、「標準白板(完全拡散板)」としての反射輝度が大きく異なることはありません。」

と主張する。

しかし、「標準白板(完全拡散板)」の反射輝度が一定値以上のものであるといえるものの、特定の値であるとはいえないのであるから、本件訂正前の「標準白板(完全拡散板:硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板)」と、本件訂正後の焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」もしくは、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」とで、同一条件の光を当てたときの反射輝度が必ずしも同じ反射輝度を示すとは限らないことは明らかである。

してみると、上記のとおり、本件訂正前の標準白板に光を当てたときの反射輝度と、本件訂正の標準白板に光を当てたときの反射輝度とが必ずしも同じ反射輝度を示すとは限らないのであるから、同じ被測定黒板に対して同一条件で光を当てたとしても、本件訂正前の「ピークゲイン」と本件訂正による「ピークゲイン」とが、必ずしも同じ値を示すことになるとは限らないこととなり、本件訂正は、本件特許請求の範囲の請求項1の範囲を実質的に変更するものというほかない。

そうすると、上記審判請求人の主張は採用できない。

(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か

本件訂正が、本件特許明細書、本件特許請求の範囲又は本件特許図面(以下、これらをまとめて「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内でするものか否かについて検討する。

上記(2)で検討した通り、本件訂正により、訂正後の本件特許明細書の「標準白板(完全拡散板)」には、「硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板」のみならず、焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」や、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」が包含されることとなった。

これに対し、本件特許明細書等の【0018】及び【0041】からすると、「標準白板(完全拡散板)」として、「硫酸マグネシウムを焼き付けた純白板」は記載されているものの、焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」や、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」までは記載も示唆もされていない。

そうすると、本件訂正は、明細書に記載のない、焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」や、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」という技術的事項を新たに導入した点で、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項の追加であり、特許法第126条第5項の要件を満たさない。

審判請求人は、

「本件出願時の技術常識として、本件審判請求書に添付した、添付資料1、添付資料2に記載されているように、「標準白板(完全拡散板)」となりうる材料は限定されております。
…
「標準白板(完全拡散板)」となりうる材料は限定されており、用いた「標準白板(完全拡散板)」は限定され、そのため、「標準白板(完全拡散板)」と訂正しても、訂正前の明細書に記載された「標準白板(完全拡散板)」の範囲を超えることはありません。」

と主張する。

しかし、添付資料1~3には、「標準白板(完全拡散板)」となりうる材料が例示されているものの、「標準白板(完全拡散板)」となりうる材料が特定の材料に限定されることまでは記載されていない。

してみると、「標準白板(完全拡散板)」と訂正することは、本件訂正は、明細書に記載のない、焼き付け物質を特定しない「標準白板(完全拡散板)」や、何ら焼き付けもしない「標準白板(完全拡散板)」という技術的事項を新たに導入するものであるから、新規事項の追加と言わざるを得ない。

そうすると、上記審判請求人の主張は採用できない。

第4 むすび

以上のとおりであって、令和3年8月30日に特許権者が行った本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの目的にも該当せず、本件特許請求の範囲の請求項1の範囲を実質的に変更するものであり、かつ、本件特許明細書において、新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法第126条第1項ただし書各号、第5項及び第6項に適合するものではないから、本件訂正は認められない。

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