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特許拒絶査定不服審判

2022-021099

情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム

審判番号
2022-021099
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-085592外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月26日
審決日
2024年02月07日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (G06Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021- 85592「情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年12月 2日出願公開、特開2022-178643〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、令和3年5月20日に出願された特願2021-85592号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和4年 4月20日 拒絶理由通知(起案日)

令和4年 6月24日 意見書・手続補正書の提出

令和4年 9月16日 拒絶査定(起案日)

令和4年12月26日 審判請求書・手続補正書の提出

令和5年10月19日 拒絶理由通知(起案日)

令和5年12月25日 意見書・手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年12月25日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。なお、令和5年12月25日提出の手続補正書でする補正を、以下、「本件補正」という。

「【請求項1】
所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する生成部と、
前記生成部により生成された、前記素性の組み合わせごとの複数のモデルに関する情報を、所望者に提供する提供部と、
前記提供部により提供された複数のモデルを用いて算出された前記所望者が収集した所定の条件を満たすユーザ情報に基づくスコアであって、当該複数のモデルの各々から算出されたスコアと、各ユーザのコンバージョン結果とに基づいて、前記素性を評価する評価部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

第3 当審の拒絶の理由の概要

当審の令和5年10月19日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。

「1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」

第4 当審の判断

1 実施可能要件について

特許法第36条第4項第1号が実施可能要件を定める趣旨は、明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には、発明が公開されていないことに帰し、発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。

そして、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(同法第2条第3項第1号)、物の発明について上記の実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。

このため、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるか否かについて、検討する。

2 発明の詳細な説明に記載された事項

本件補正後の請求項1の「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する生成部」について、発明の詳細な説明には次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与した。

「【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る情報処理装置は、所定事業者が収集したユーザ情報に基づいて、対象とする素性が異なる複数のモデルを生成する生成部と、前記生成部により生成されたモデルに関する情報を、所望者に提供する提供部と、前記提供部により提供されたモデルを用いて算出された前記所望者が収集したユーザ情報に基づくスコアと、各ユーザのコンバージョン結果とに基づいて前記素性を評価する評価部と、を有することを特徴とする。」
「【0015】
ここで、所望者サーバ10の所望者側が運営する所定のサービス(以下、適宜、「第1サービス」とする)と、情報処理装置100及び所定事業者サーバ200の所定事業者側が運営する所定のサービス(以下、適宜、「第2サービス」とする)とは異なり、所定事業者側は、第1サービスとは異なるサービスを提供するものとする。また、第1サービス及び第2サービスのユーザに関する情報とは、例えば、検索、ショッピング、決済等の各種ユーザの履歴に関する情報である。なお、第2サービスのユーザの履歴のほうが、第1サービスのユーザの履歴よりも多くの種類、及び、多くのユーザに関する情報が含まれるものとする。」
「【0017】
図2は、実施形態に係る情報処理システム1の情報処理の一例を示す図である。情報処理装置100は、事業者U11が所望するモデルに関する情報を取得する(ステップS101)。例えば、情報処理装置100は、事業者U11から指定されたモデルに関する情報を取得する。情報処理装置100は、例えば、事業者U11が、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとしたい場合には、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとする旨の情報を取得する。情報処理装置100は、モデルに関する情報として、例えば、事業者U11がモデルを所望する目的に関する情報や、モデルの名称に関する情報を取得する。
【0018】
情報処理装置100は、モデルの生成に用いる属性に関する情報を取得する。例えば、情報処理装置100は、事業者U11から指定された属性に関する情報を取得する。例えば、事業者U11が、デモグラフィック情報を属性として指定した場合には、情報処理装置100は、デモグラフィック情報を取得する。なお、デモグラフィック情報には、例えば、年齢や性別等、複数種別の属性を示す情報が含まれるものとする。情報処理装置100は、事業者U11から年齢と性別とが指定された場合には、年齢と性別とに基づくデモグラフィック情報を取得する。そして、情報処理装置100は、複数種別の属性について、それぞれ所定の条件を満たすか否かに基づいて、ワンホットエンコーディングを実行する。これにより、情報処理装置100は、指定された属性で、ユーザごとにワンホットエンコーディングを行うことができるため、ユーザのターゲティングを適切に行うことができる。
【0019】
情報処理装置100は、取得された情報に基づいて、指定された属性を素性の対象とするモデルであって、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとするためのモデルを生成する(ステップS102)。ここで、情報処理装置100は、所定事業者サーバ200から送信されたユーザ情報に基づいて、モデルを生成する。具体的には、情報処理装置100は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報のうち、事業者U11が所望するモデルに関する情報に基づいて特定された、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報に基づいて、モデルを生成する。また、情報処理装置100は、指定された属性に基づいて異なるモデルを生成する。例えば、事業者U11が、デモグラフィック情報と、位置情報とを指定した場合には、情報処理装置100は、デモグラフィック情報と位置情報とを素性の対象とするモデルを生成する。なお、生成されたモデルを用いて所定事業者側のデータに基づいて算出されるスコアが、ターゲットエンコーディングのスコアである。
【0020】
ここで、情報処理装置100は、例えば、事業者U11により3以上の複数の属性が指定された場合には、属性の組み合わせごとに異なる複数のモデルを生成してもよい。例えば、事業者U11により、素性1乃至3が指定されたものとする。この場合、情報処理装置100は、素性1及び2に基づくモデルと、素性2及び3に基づくモデルとを生成してもよい。
【0021】
情報処理装置100は、生成されたモデルに関する情報を所望者サーバ10に送信する(ステップS103)。そして、所望者サーバ10は、生成された各モデルを用いて各ユーザのスコアを算出する(ステップS11)。具体的には、所望者サーバ10は、所望者サーバから提供された情報に基づいて、各モデルに入力することにより各ユーザのスコアを算出する。例えば、生成されたモデルがモデルA及びBであり、ユーザA乃至Cに対してスコアを算出した場合の一例が、「ユーザA:モデルAスコア0.8、モデルBスコア0.6」、「ユーザB:モデルAスコア0.7、モデルBスコア0.5」、「ユーザC:モデルAスコア0.8、モデルBスコア0.9」である。また、所望者サーバ10は、各ユーザのコンバージョン結果を判定する(ステップS12)。例えば、ユーザA乃至Cが、コンバージョンに至ったか否かを判定する。ここでは、モデルが、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとすることから、ユーザA乃至Cが、冷蔵庫を購入したか否かを判定する。このように、情報処理装置100は、冷蔵庫を購入したか否か、車を手放したか否か、富裕層のユーザであったか否かといった、所定の行動又は状態などに関するユーザ情報に対するコンバージョン結果を判定する。なお、判定は、例えば、所定の期間内に購入されたか否かに基づいて行われてもよい。」
「【0050】
(生成部132)
生成部132は、対象とする素性が異なる複数のモデルを生成する。例えば、生成部132は、所望者により指定された属性を素性の対象とするモデルを生成する。例えば、生成部132は、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとしたい旨の情報を受け付けた場合には、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとするためのモデルを生成する。例えば、生成部132は、所定事業者サーバ200から提供された情報に基づいて特定された、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報に基づいて、モデルを生成する。」
「【0069】
〔7.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置100は、生成部132と、提供部133と、評価部135とを有する。生成部132は、所定事業者が収集したユーザ情報に基づいて、対象とする素性が異なる複数のモデルを生成する。提供部133は、生成部132により生成されたモデルに関する情報を、所望者に提供する。評価部135は、提供部133により提供されたモデルを用いて算出された所望者が収集したユーザ情報に基づくスコアと、各ユーザのコンバージョン結果とに基づいて、素性を評価する。」
「
[図:0001408623000001.jpg]
」(【図4】)

3 検討

(1)発明の詳細な説明の上記2の記載から、次の事項が把握できる。

すなわち、本願の発明の詳細な説明には、

情報処理装置100は、モデルに関する情報として、事業者U11がモデルを所望する目的に関する情報や、モデルの名称に関する情報を取得し、

情報処理装置100は、事業者U11から指定された属性に関する情報を取得し、

情報処理装置100は、複数種別の属性について、それぞれ所定の条件を満たすか否かに基づいて、ワンホットエンコーディングを実行し、

情報処理装置100(の生成部132)は、取得された情報に基づいて、指定された属性を素性の対象とするモデルであって、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとするためのモデルを生成ことであって、情報処理装置100(の生成部132)は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報のうち、事業者U11が所望するモデルに関する情報に基づいて特定された、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報に基づいて、モデルを生成すること、

が記載されている。

(2)このうち、本件補正後の請求項1の「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する生成部」における、生成部が「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて」、「モデルを生成する」ことに対応するものとして、発明の詳細な説明には、生成部132は、「情報処理装置100(の生成部132)は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報」のうち、「事業者U11がモデルを所望する目的に関する情報や、モデルの名称に関する情報」である「事業者U11が所望するモデルに関する情報」に基づいて特定された、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」に基づいてモデルを生成することが記載される。

すなわち、事業者U11から、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとする旨の情報を取得」した場合、「情報処理装置100(の生成部132)は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報のうち」から、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」を、何らかの基準で特定した上で、特定されたユーザ情報を利用してモデルを生成する必要がある。

(3)しかしながら、発明の詳細な説明には、モデルを生成するためのユーザ情報について、「情報処理装置100(の生成部132)は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報」のうちから、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」をどのようにして特定するのか記載されていない。

すなわち、発明の詳細な説明には、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」について、冷蔵庫を購入する「可能性が高い」とする程度についての定義や、どの程度のものであれば冷蔵庫を購入する「可能性が高い」とされる判断目安について説明されていない。

このため、「所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報」のうちから、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」を特定できないため、モデルを生成することはできない。

そうすると、本件補正後の請求項1の「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する生成部」について、発明の詳細な説明の記載では、「所定の条件」がどのような条件であるのか理解できず、さらに、「所定の条件を満たす」とは、技術的にどのような状況・状態を意味するのか理解できないため、当業者が実施することはできない。

(4)このように、生成部132によりモデルを生成するために用いられるユーザ情報をどのようにして特定するかについて、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することとなる。

よって、本件補正後の請求項1の「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する生成部」に対応する発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

(5)審判請求人の意見書における主張について

ア 審判請求人は、令和5年12月25日提出の意見書で、次のように主張する。

「 例えば、段落0019には、「ここで、情報処理装置100は、所定事業者サーバ200から送信されたユーザ情報に基づいて、モデルを生成する。具体的には、情報処理装置100は、所定事業者サーバ200を管理する所定事業者が収集したユーザ情報のうち、事業者U11が所望するモデルに関する情報に基づいて特定された、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報に基づいて、モデルを生成する。」といった記載があります。このような記載から、「所定事業者が、把握しているユーザ、すなわち、冷蔵庫を購入したユーザ(言い換えると、所定の条件を満たすユーザ)のユーザ情報を提供し、このようなユーザ情報に基づき、モデルを生成する」といった、補正後の請求項1に関する処理を、当業者は直接的かつ当然に導き出すことができるものであると考えます。」

「 補正後の請求項1における「生成部」は、「所定事業者が収集した所定の条件を満たすユーザのユーザ情報に基づいて、所定事業者により指定された素性の組み合わせごとに、異なる複数のモデルを生成する」点が明確です。
また、上述しましたように、本願明細書において、「所定事業者が、把握している冷蔵庫を購入したユーザ(言い換えると、所定の条件を満たすユーザ)のユーザ情報を提供し、このようなユーザ情報に基づき、モデルを生成する」という処理が記載されていることは、当業者であれば、直接的に理解することができます。」

イ 審判請求人の上記主張について検討をする。

発明の詳細な説明の【0019】の「生成されたモデルを用いて所定事業者側のデータに基づいて算出されるスコアが、ターゲットエンコーディングのスコアである」、【0021】の「モデルが、冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザをターゲットとする」との記載から、生成されたモデルの「スコア」は、冷蔵庫を購入する可能性が高いかどうかを示すものであり、仮に、冷蔵庫を購入したユーザのユーザ情報に基づきモデルを生成する場合、このモデルの生成には、冷蔵庫を購入したことを示す情報を含むユーザ情報のみを用いることになり、学習時(トレーニング時)において、モデルは、不均衡データによる学習が行われて、必ず冷蔵庫を購入したことを示すスコアを出力するように調整(フィードバック)されることになるから、適切なモデルが生成できないことは技術常識である。また、発明の詳細な説明には、「冷蔵庫を購入する可能性が高いユーザのユーザ情報」として「冷蔵庫を購入したユーザのユーザ情報」に基づき、モデルを生成するという、審判請求人が主張する構成に関する記載はない。

したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

4 結論

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

第5 むすび

以上のことから、この出願の発明は、詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-021099

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