特許拒絶査定不服審判
2022-010814
推定装置、推定方法および推定プログラム
- 審判番号
- 2022-010814
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-050473外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年07月11日
- 審決日
- 2023年06月26日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤフー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .536-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 50473「推定装置、推定方法および推定プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-154473〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年3月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 6月 1日付け:拒絶査定
令和 4年 7月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 3月 6日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 4月26日 :意見書(以下「意見書」という。)、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~9に係る発明は、令和5年4月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。下線部は補正箇所を示す。
「 満足度の推定対象となる推定対象者の行動履歴であって将来の対象日時より前の行動履歴を取得する取得部と、
所定の時点における所定のサービスに対する利用者の満足度と、当該所定の時点より前の行動履歴との関係性を学習したモデルであって当該所定の時点からの期間に応じた行動履歴と当該所定の時点における当該利用者の満足度との関係性を学習した当該モデルに、前記取得部により取得された行動履歴を入力することで、前記推定対象者が当該所定のサービスに対して有する前記将来の対象日時の満足度であって前記取得部により取得された行動履歴に基づく前記将来の対象日時からの期間に応じた満足度を推定する推定部と、
を有することを特徴とする推定装置。」
第3 当審において通知した拒絶理由
当審が通知した、令和5年3月6日付けの拒絶理由の概要は、次のとおりである。
この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
モデルの学習に使用される行動履歴は、特定行動を行った時点から所定の期間前の時点(以下、「前の時点」という。)から特定行動を行った時点(以下、「後の時点」という。)までの行動履歴であって、かかる行動履歴に対応する特定行動の時点は、後の時点であるから、所定のスコアに対して、モデルが対応付けた時点は、あくまで、後の時点である。
かかるモデルの生成処理を行った後に、「推定装置100」は、推定対象者の行動履歴として、現日時から前1月分の行動履歴、前2月分の行動履歴、等を収集し、モデルに入力するものとなっている。よって、かかる行動履歴に対して、モデルが出力するスコアの時点は、行動履歴の後の時点である、現日時であって、現日時から1月後、現日時から2月後の時点に対応するものとなっていない。
したがって、「推定装置100は、現日時からn月前(nは任意の整数)までの行動履歴を収集して、モデルに入力し」たとしても、推定される満足度は、現日時のものであって、「現日時からn月後の満足度を各々推定する」ことは不可能である。
よって、本願の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1~9に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
第4 当審の判断
発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすかを、以下に検討する。
1 特許請求の範囲の請求項1の記載について
特許請求の範囲の請求項1には、「推定部」について、「所定の時点における所定のサービスに対する利用者の満足度と、当該所定の時点より前の行動履歴との関係性を学習したモデルであって当該所定の時点からの期間に応じた行動履歴と当該所定の時点における当該利用者の満足度との関係性を学習した当該モデルに、前記取得部により取得された行動履歴を入力することで、前記推定対象者が当該所定のサービスに対して有する前記将来の対象日時の満足度であって前記取得部により取得された行動履歴に基づく前記将来の対象日時からの期間に応じた満足度を推定する」
と、記載されている。なお、下線は、当審において付与した。
この記載によれば、本願発明において、「推定部」は、「モデルに、取得部により取得された行動履歴を入力することで、将来の対象日時の満足度(将来の対象日時からの期間に応じた満足度)を推定」することを特定するものである。
2 本願明細書の発明の詳細な説明の記載事項
明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。
「 【0013】
まず、図1を用いて、推定装置100が所定の利用者の行動履歴と満足度との関係性を示すモデルを生成する処理について説明する。推定装置100は、特定行動を行った利用者の行動履歴を収集する(ステップS101)。ここで、特定行動を行った利用者とは、例えば、退会した利用者や、上級会員となった利用者である。また、以下実施形態では、利用者が退会した時点や、利用者が上級会員となった時点を処理日時とする。なお、実施形態に係る利用者は複数であってもよい。すなわち、推定装置100は、複数の行動履歴を収集してもよい。図1に示す例では、推定装置100が、特定行動を行った複数の行動履歴を収集する場合を示す。
・・・
【0015】
続いて、推定装置100は、特定行動を行った利用者の行動履歴から、期間ごとの行動履歴を特定する(ステップS102)。例えば、推定装置100は、特定行動を行った利用者の行動履歴から、予め定められた期間ごとの行動履歴を特定する。具体的には、推定装置100は、特定行動が退会である場合には、退会直前に利用者が行った行動履歴を特定する。具体的な例を挙げると、推定装置100は、退会1月前から退会までの期間に利用者が行った行動履歴を特定してもよいし、退会2月前から退会までの期間に利用者が行った行動履歴を特定してもよい。
【0016】
図1に示すように、推定装置100は、利用者の行動履歴を記憶する行動履歴記憶部121を有する。ここで、推定装置100が収集した利用者の行動履歴を記憶する行動履歴記憶部121について説明する。図1に、実施形態に係る行動履歴記憶部121の一例を示す。図1に示すように、行動履歴記憶部121は、「利用者ID」、「特定行動」、「第1期間行動」、「第2期間行動」といった項目を有する。
【0017】
「利用者ID」は、利用者を識別するための識別情報を示す。「特定行動」は、利用者が行った特定行動を示す。図1に示す例では、利用者ID「U1」により識別される利用者が退会したことを示す。また、図1は、利用者ID「U2」により識別される利用者が上級会員となったことを示す。「特定行動日時」は、利用者が特定行動を行った日時(処理日時)を示す。図1に示す例では、「特定行動日時」に「日時#U1」や「日時#U2」といった概念的な情報が格納される例を示したが、実際には、日時を示す情報が格納される。「日時#U1」は、利用者ID「U1」により識別される利用者が特定日時を行った日時を示す。なお、「特定行動日時」には、日時を示す情報であればどのような情報が格納されてもよい。例えば、「特定行動日時」には、時分に限られず、秒まで含んだ日時を示す情報が格納されてもよいし、別の表現の日時を示す情報が格納されてもよい。
【0018】
「第1期間行動」は、所定の日時から利用者が特定行動を行った日時に至るまでの期間内の行動を示す行動ログを示す。ここで、期間行動とは、所定の期間における行動履歴を示す。例えば、第1期間行動とは、第1期間内における行動履歴を示す。例えば、第2期間行動とは、第2期間内における行動履歴を示す。例えば、「第1期間行動」には、利用者が退会した1月前の所定の日時から退会した日時に至るまでの期間内の行動履歴を示す。図1に示す例では、「第1期間行動」に「行動#U1-1」や「行動#U2-1」といった概念的な情報が格納される例を示したが、実際には、行動履歴を示す情報が格納される。「行動#U1-1」は、利用者ID「U1」により識別される利用者が、特定行動日時「日時#U1」により示される日時から特定行動を行った日時に至るまでの期間内の行動履歴を示す。なお、「第1期間行動」には、行動を示す情報であればどのような情報が格納されてもよい。また、「第2期間行動」は、「第1期間行動」と同様の情報を示す。すなわち、「第2期間行動」には、「第1期間行動」と同様の情報が格納される。以下同様である。
【0019】
続いて、推定装置100が特定した期間ごとの行動履歴を用いてモデルを生成する処理について説明する。推定装置100は、各期間の行動履歴を入力した際に、特定行動と対応するスコアを各期間に対応するスコアとして出力するようにモデルの学習を行う(ステップS103)。以下、具体的な例を用いて説明する。
【0020】
推定装置100は、例えば、退会する前1月分、2月分、3月分、6月分の行動履歴を収集し、退会する利用者の学習データとして記憶する。そして、推定装置100は、1月後、2月後、3月後、6月後の各々について満足度「0」を出力するように学習する。具体的には、推定装置100は、処理日時よりも1月前の行動履歴を入力した際に、1月以内に退会する可能性を示すスコアとして「0」を出力するようにモデルの学習を行う。この場合、推定装置100は、処理日時よりも1月前の行動履歴を入力した際に、1月以内の満足度を示すスコアとして「0」を出力するようにモデルの学習を行う。同様に、推定装置100は、処理日時よりも2月前の行動履歴を入力した際に、2月以内に退会する可能性を示すスコアとして「0」を出力するようにモデルの学習を行う。
【0021】
推定装置100は、例えば、上級会員となる前1月分、2月分、3月分、6月分の行動履歴を収集し、上級会員となる利用者の学習データとして記憶する。そして、推定装置100は、1月後、2月後、3月後、6月後の各々について満足度「100」を出力するように学習する。具体的には、推定装置100は、処理日時よりも1月前の行動履歴を入力した際に、1月以内に上級会員となる可能性を示すスコアとして「100」を出力するようにモデルの学習を行う。この場合、推定装置100は、処理日時よりも1月前の行動履歴を入力した際に、1月以内の満足度を示すスコアとして「100」を出力するようにモデルの学習を行う。同様に、推定装置100は、処理日時よりも2月前の行動履歴を入力した際に、2月以内に上級会員となる可能性を示すスコアとして「0」(当審注:前後の記載から、「0」は「100」の誤記である。)を出力するようにモデルの学習を行う。
【0022】
なお、図1の例では、「第1期間行動」や「第2期間行動」等が、上述した前1月分や2月分等の行動履歴に対応する。すなわち、推定装置100は、「第n期間行動」(nは任意の整数)までの行動履歴を収集し、モデルの学習を行う。このように、推定装置100は、各期間の行動履歴を入力した際に、特定行動と対応するスコアを各期間に対応するスコアとして出力するようにモデルの学習を行うことで、利用者の過去の行動から、所定の期間後における利用者の満足度を推定するモデルを生成する。
【0023】
次に、図1を用いて、生成したモデルを用いて、推定装置100が推定対象者の満足度を推定する処理について説明する。推定装置100は、推定対象者の行動履歴を収集する(ステップS104)。なお、実施形態では、推定装置100が行動履歴を収集した時点を現日時とする。また、推定対象者の行動履歴とは、上述した利用者の行動履歴と同様の情報である。また、推定装置100は、推定対象者の満足度の推定処理後に推定対象者が特定行動を行った場合には、推定対象者を利用者として、推定対象者の行動履歴を行動履歴記憶部121に格納してもよい。そして、推定装置100は、推定対象者の行動履歴を含めて、モデルの学習を行ってもよい。
【0024】
推定装置100は、推定対象者の各期間の行動履歴を入力し、各期間が経過した際の推定対象者の満足度を推定する(ステップS105)。以下、具体的な例を用いて説明する。推定装置100は、推定対象者の推定時より、例えば、前1月分、2月分、3月分、6月分の行動履歴を収集し、モデルに入力する。そして、推定装置100は、1月後、2月後、3月後、6月後の各々について満足度を算出する。具体的には、推定装置100は、現日時よりも1月前の行動履歴を収集して、モデルに入力し、現日時から1月後の満足度を推定する。同様に、推定装置100は、現日時よりも2月前の行動履歴を収集して、モデルに入力し、現日時から2月後の満足度を推定する。図1の例では、「第1期間スコア」や「第2期間スコア」等が、上述した1月後の満足度や2月後の満足度に対応する。すなわち、推定装置100は、現日時からn月前(nは任意の整数)までの行動履歴を収集して、モデルに入力し、現日時からn月後の満足度を各々推定する。
・・・
【0054】
取得部131は、行動履歴を取得する。取得部131は、利用者の行動履歴を取得する。例えば、取得部131は、特定行動を行った利用者の行動履歴を取得する。例えば、取得部131は、所定の日時から特定行動を行った日時に至るまでの行動履歴を取得する。取得部131は、推定対象者の行動履歴を取得する。取得部131は、満足度の推定対象となる推定対象者の行動履歴を取得する。
・・・
【0059】
特定部132は、行動履歴を特定する。特定部132は、期間ごとの行動履歴を特定する。特定部132は、特定行動を行った利用者の行動履歴から期間ごとの行動履歴を特定する。具体的な例を挙げると、特定部132は、特定行動を行った前1月分、2月分、3月分、6月分等の各々の行動履歴を特定する。
・・・
【0064】
生成部133は、モデルを生成する。生成部133は、指標値を出力するよう、コンピュータを機能させるためのモデルを生成する。生成部133は、特定行動を行った利用者の過去の行動履歴から、所定の期間後における利用者の満足度 を示す指標値を出力するよう、コンピュータを機能させるためのモデルを生成する。
【0065】
生成部133は、各期間の行動履歴を入力した際に、特定行動と対応するスコアを各期間に対応するスコアとして出力するように学習されたモデルを生成する。例えば、生成部133は、所定の特定行動を入力した場合に、所定の特定行動と対応するスコアとして「0」を出力するように学習されたモデルを生成する。例えば、入力した所定の特定行動がネガティブな行動として予め定められている場合である。具体的な例を挙げると、生成部133は、利用者が退会した処理日時よりもn月間(nは任意の整数)の行動履歴を入力した際に、n月以内に退会する可能性を示すスコアとして「0」を出力するように学習されたモデルを生成する。また、生成部133は、所定の特定行動を入力した場合に、所定の特定行動と対応するスコアとして「100」を出力するように学習されたモデルを生成する。例えば、入力した所定の特定行動がポジティブな行動として予め定められている場合である。具体的な例を挙げると、生成部133は、利用者が上級会員となった処理日時よりもn月間(nは任意の整数)の行動履歴を入力した際に、n月以内に上級会員となる可能性を示すスコアとして「100」を出力するように学習されたモデルを生成する。
・・・
【0070】
推定部134は、推定対象者が所定のサービスに対して有する将来の満足度を推定する。推定部134は、推定対象者の行動履歴から推定対象者が所定のサービスに対して有する将来の満足度を推定する。推定部134は、所定の時点における利用者の満足度と、所定の時点より前の行動履歴との関係性を学習したモデルを用いて推定する。推定部134は、所定のサービスに対する利用者の満足度であって、所定の時点における利用者の満足度と、所定の時点より前の行動履歴との関係性を学習したモデルを用いて推定する。」
3 判断
上記2の明細書の発明の詳細な説明の記載によると、以下のことがいえる。
まず、請求項1の特定事項と、発明の詳細な説明に記載した事項の対応関係を検討すると、請求項1の「推定装置」、「取得部」、「モデル」及び「推定部」はそれぞれ、発明の詳細な説明の「推定装置100」、「取得部131」、「モデル」及び「推定部134」に対応する。
(1)「モデル」について
「推定装置100」は、所定の利用者の行動履歴と満足度との関係性を示すモデルを生成する処理について(【0013】)、特定行動を行った利用者の行動履歴を取得し(【0013】、【0054】)、取得した行動履歴から、特定行動を行った時点から所定の期間前の時点から特定行動を行った時点までの行動履歴を特定する(【0015】、【0059】)。例えば、特定行動が退会である場合、退会1月前から退会までの期間を「第1期間行動」、退会2月前から退会までの期間を「第2期間行動」等として特定し(【0015】、【0018】)、これらの「第1期間行動」、「第2期間行動」等をそれぞれ、前1月分の行動履歴、前2月分の行動履歴とし(【0022】)、学習データとして記憶する(【0020】、【0021】)。
次に、「推定装置100」は、前1月分の行動履歴を入力した際に、1月以内に特定行動を行う可能性を示すスコアとして、所定のスコアを出力するようにモデルの学習を行う(【0020】、【0021】)。例えば、特定行動が退会である場合は、所定のスコアは「0」であり(【0020】)、特定行動が上級会員となることである場合は、所定のスコアは「100」であり(【0021】)、前2月分の行動履歴を入力した際には、2月以内に特定行動を行う可能性を示すスコアとして、前3月分の行動履歴を入力した際には、3月以内に特定行動を行う可能性を示すスコアとして、所定のスコアを出力するようにモデルの学習を行うものとなっている(【0020】、【0021】)。
具体例として、退会する前1月分、2月分、3月分、6月分の行動履歴を収集し、退会する利用者の学習データとして記憶し、推定装置100は、1月以内、2月以内、3月以内、6月以内の各々について満足度「0」を出力するように学習する(【0020】)こと、上級会員となる前1月分、2月分、3月分、6月分の行動履歴を収集し、上級会員となる利用者の学習データとして記憶し、推定装置100は、1月以内、2月以内、3月以内、6月以内の各々について満足度「100」を出力するように学習する(【0021】)ことが挙げられている。
すなわち、モデルの学習に使用される行動履歴は、特定行動を行った時点から所定の期間前の時点(以下「第1時点」という。)から、特定行動を行った時点(以下「第2時点」という。)までの行動履歴であり、かかる行動履歴に対応する特定行動の時点は、第2時点であることから、所定のスコアは第2時点における満足度を表すものである。例えば、退会前3月前から退会するまでの3月分の行動履歴に対して、行動履歴の最初から3月後の退会時に「0」を出力するように学習するのであるから、スコア「0」は、退会時の時点(第2時点)の満足度を表すスコアである。
よって、かかる学習データを基に学習を行ったモデルは、推定対象者の第1時点から第2時点までの行動履歴が入力された場合、推定対象者が第2時点において特定行動を行う可能性を示すスコアを出力するものとなっている。
(2)「モデル」を用いた推定処理について
「推定装置100」は、推定対象者の行動履歴として、現日時(【0023】)から前1月分の行動履歴(現日時より1月前の時点(第1時点)から現日時(第2時点)までの行動履歴)、前2月分の行動履歴(現日時より2月前の時点(第1時点)から現日時(第2時点)までの行動履歴)等を収集し、モデルに入力し、満足度を推定する(【0024】)ものとなっている。そして、【0054】に「取得部131」が「推定対象者の行動履歴を取得する」と記載されており、【0070】に「推定部134」が「所定の時点における利用者の満足度と、所定の時点より前の行動履歴との関係性を学習したモデルを用いて推定する」と記載されていることから、【0023】記載の推定対象者の行動履歴の収集は、推定装置100の取得部131が行う動作であること、【0024】記載のモデルを用いた満足度の推定は、推定装置100の推定部134が行う動作であることを理解できる。よって、「推定装置100」の「取得部131」は、「モデル」を用いた推定処理に用いる推定対象者の行動履歴として、現日時よりn月前(nは任意の整数)の時点(第1時点)から現日時(第2時点)までの行動履歴を取得するものであり、「推定装置100」の「推定部134」は、かかる推定対象者の行動履歴を、モデルの入力として、推定対象者の満足度を推定するものである。
ここで、上記(1)の「モデル」の入出力の関係に鑑みれば、推定対象者の、現日時よりn月前(nは任意の整数)の時点(第1時点)から現日時(第2時点)までの行動履歴をモデルに入力すると、モデルが出力するスコアは、現日時(第2時点)のものであって、将来の対象日時のものではない。
したがって、「推定装置100」の「推定部134」は、「現日時からn月前(nは任意の整数)までの行動履歴を収集して、モデルに入力し」たとしても、現日時(第2時点)の満足度を推定することしかできないから、当該モデルにより、「将来の対象日時の満足度(将来の対象日時からの期間に応じた満足度)を推定する」ことは不可能である。
そうすると、当業者であっても、将来の対象日時の満足度(将来の対象日時からの期間に応じた満足度)を推定することを実現するためには、発明の詳細な説明の記載では十分ではなく、構成の追加や変更が必要であることは明らかである。また、このような構成の追加や変更が本願出願時の技術常識であるともいえない。
4 請求人の主張について
請求人は意見書において、「モデルを用いて推定される満足度は現日時(所定の日時)のものとなるため、拒絶の理由1は解消される」と主張する。
しかしながら、上記したとおり、特許請求の範囲の請求項1には「前記推定対象者が当該所定のサービスに対して有する前記将来の対象日時の満足度であって前記取得部により取得された行動履歴に基づく前記将来の対象日時からの期間に応じた満足度を推定する」と記載されていることから、請求人の主張は、請求項の記載に基づかないものであって、請求人の主張は採用の限りでない。
5 まとめ
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-010814