特許拒絶査定不服審判
2021-012485
推定装置、推定方法、および推定プログラム
- 審判番号
- 2021-012485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-230796外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月16日
- 審決日
- 2023年01月05日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤフー株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-WZ (G06Q) / P18 .536-WZ (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-230796「推定装置、推定方法、および推定プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 1日出願公開、特開2021- 99630〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年12月20日の出願であって、以降の手続は、概略、以下のとおりである。
令和3年 4月22日:拒絶理由通知(起案日)
同年 6月23日:意見書、手続補正書の提出
同年 7月 9日:拒絶査定(原査定)(起案日)
同年 9月16日:審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 7月 6日:拒絶理由通知(起案日)
同年 9月 2日:意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和4年9月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載されたとおりの発明であり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 複数のユーザが端末装置にて検索に用いた検索クエリ、および、前記端末装置の位置データに基づいて、位置データが所定地点で共通する複数の対象ユーザの検索クエリのうち、所定回数を超えて検索された検索クエリに基づいて特定された属性を、前記所定地点における当該対象ユーザの属性として特定する特定部と、
前記特定部により特定された属性に基づいて、キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要が満たされているか否かを判定し、需要が満たされていないと判定した場合、前記所定地点において当該所定の対象に対する前記対象ユーザの潜在的需要が存在すると推定する推定部と
を有することを特徴とする推定装置。」
第3 当審における拒絶理由の概要
当審において令和4年7月6日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
1 理由1(明確性)
請求項1の記載では、「推定装置」に入力される情報は、「複数のユーザが端末装置にて検索に用いた検索クエリ」と「前記端末装置の位置データ」のみであるが、これらの情報に基づいて「対象」に対する「潜在的需要」がどのようにして推定されるとするのかが不明であるから、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(当審拒絶理由の理由1(4))
2 理由2(サポート要件)
請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定することができなかった」(【0004】)という技術課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなり、発明の詳細な説明に記載したものでないから、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。(当審拒絶理由の理由2「(2)請求項1-12について」のア、オ)
3 理由3(実施可能要件)
この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(当審拒絶理由の理由3)
4 理由4(委任省令要件)
この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明により、上記技術課題がどのように解決されたかについての記載がされていないから、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(当審拒絶理由の理由4)
第4 本願の発明の詳細な説明の記載
以下の項目「1」から「4」のそれぞれに関して本願の発明の詳細な説明に記載されている事項は以下のとおりである。
1 発明が解決しようとする課題について
【0004】
しかしながら、上述した技術では、ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定することができなかった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、所定地点において、単純な人流データに基づく需要予測ではなく、ユーザの属性やニーズを考慮した潜在的需要を推定することができる技術を提供することを目的とする。
2 課題を解決するための手段について
【0006】
本願に係る推定装置は、複数のユーザが端末装置にて検索に用いた検索クエリ、および/または、前記端末装置の位置データに基づいて、所定地点における前記ユーザの属性を特定する特定部と、前記属性に基づいて、前記所定地点における前記ユーザの潜在的需要を推定する推定部とを有することを特徴とする。
3 発明の効果について
【0007】
実施形態の一態様によれば、ユーザによる直接的な需要検索結果だけでは計りえない需要を推定することができる。
4 発明を実施するための形態について
【0014】
〔2.情報提供システムが実行する処理について〕
そこで、情報提供システム1では、情報提供装置10および端末装置100が、以下の提供処理を実行する。以下の説明では、端末装置100が実行する処理により、閲覧データが利用者に提供される処理の一例について説明するが、以下に説明する提供処理は、一部若しくは全てを情報提供装置10が実現してもよい。
【0015】
例えば、情報提供装置10は、複数のユーザが検索に用いた検索クエリ、および/または、位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの属性を特定する。そして、情報提供装置10は、属性に基づいて、所定地点におけるユーザの潜在的需要を推定する。
【0016】
〔2-1.提供処理の一例について〕
以下、図1を用いて、提供処理の具体例について説明する。なお、以下の説明では、図1を用いて、情報の流れについて説明した後に、図2~図4を用いて、潜在的需要を推定する態様の具体例について説明する。
【0017】
まず、複数のユーザの端末装置100は、端末装置100の位置データを情報提供装置10に定期的に送信する(ステップS11)。そして、情報提供装置10は、検索サーバ20にて実行された端末装置100のユーザの検索データを定期的に受信する(ステップS12)。
【0018】
そして、情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および/または、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの属性を特定する(ステップS13)。そして、情報提供装置10は、ユーザの属性に基づいて、所定地点におけるユーザの潜在的需要を推定する(ステップS14)。
【0019】
そして、情報提供装置10は、潜在的需要に基づいて、マーケティング提案データを潜在的需要に係るサービス提供者の端末装置100に送信する(ステップS15)。そして、サービス提供者の端末装置100は、マーケティング提案データを表示することとなる(ステップS16)。
【0020】
〔2-1-1.需要推定処理の一例について〕
続いて、図2~図4を用いて、需要推定処理の一例について説明する。図2~図4は、実施形態に係る需要推定処理の一例を示す図である。
【0021】
情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、図2に示す工業大学周辺において、多くのユーザが駅前の大学に通う男子大学生というデモグラフィック属性を備えていることを特定する。そして、情報提供装置10は、図2に示す工業大学周辺における牛丼屋の数およびユーザのデモグラフィック属性に基づいて、当該工業大学周辺において牛丼屋に対するユーザの需要が満たされているか否かを判定し、当該需要が満たされていないと判定した場合、牛丼屋に対するユーザの需要が潜在的に存在することを推定する。そして、情報提供装置10は、図2に示す工業大学周辺における牛丼屋の潜在的需要に応じた出店提案データを牛丼屋をフランチャイズ展開するフランチャイザーに提供する。すなわち、情報提供装置10は、図2に示す工業大学周辺において、既に牛丼屋が2軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされているが、当該工業大学周辺において昼間帯に男子大学生が多くなることから、牛丼屋に対する潜在的需要があると推定してもよい。このように、情報提供装置10は、地域特性(例えば、学生が多そうだから牛丼屋がもっと欲しい等)を加味して、牛丼店舗がもうあるから出さないのではなく、もっと許容できるキャパシティがあれば、更なる出店提案をしてもよい。
【0022】
また、情報提供装置10は、端末装置100の位置データに基づいて、図3に示す駅周辺におけるユーザの滞在時間を含む行動属性を特定する。そして、情報提供装置10は、図3に示す駅周辺におけるカフェの座席数等のキャパシティおよびユーザの滞在時間を含む行動属性に基づいて、当該駅周辺においてカフェに対するユーザの需要が満たされているか否かを判定し、需要が満たされていないと判定した場合、当該駅周辺地点においてカフェに対する潜在的需要が存在すると推定する。そして、情報提供装置10は、図3に示す駅周辺におけるカフェの潜在的需要に応じた出店提案データをコーヒーチェーンのフランチャイザーに提供する。すなわち、情報提供装置10は、図3に示す駅周辺において、既にカフェが4店あり、対人口比のキャパシティは満たされている(すなわち、コーヒーを飲む場所としては十分な店舗数である)が、ユーザの行動属性から1時間以上カフェにだらだら滞在するユーザ(図3に示す「ピンポインタ位置アイコン」)が多く検出され、当該ユーザにより占有される座席数を除いた当該カフェの座席数が、カフェに訪れる他ユーザの数より大幅に少ない場合、カフェに対するユーザの需要が満たされていないと判定し、当該駅周辺地点においてカフェに対する潜在的需要が存在すると推定してもよい。一方で、情報提供装置10は、ユーザの行動属性からテイクアウトのユーザがほとんどであると検出され、当該ユーザにより占有される座席数を除いた当該カフェの座席数に余裕がある場合、カフェに対するユーザの需要が満たされていると判定し、カフェに対する潜在的需要が存在しないと推定してもよい。
【0023】
ここで、情報提供装置10は、例えば、地図配信等のサービスを実行する外部サーバ等から、所定地点における店舗の位置を特定するデータを取得してもよい。また、情報提供装置10は、店舗データを管理する外部サーバ(例えば、店舗のウェブサーバ)等から、店舗の規模や席数を収集してもよい。また、情報提供装置10は、例えば、統計データ等を提供する外部サーバ等から、所定地点における人口(例えば、昼間人口等)のデータを取得してもよい。そして、情報提供装置10は、収集した店舗の規模や席数等に基づいて、当該店舗が提供可能な商品やサービスのキャパシティ、すなわち、供給可能な取引対象の量を示す供給可能データを特定してもよい。そして、情報提供装置10は、供給可能データ、および、ユーザの行動属性等に基づく現状のユーザ需要から、所定地点においてユーザ需要を満たしているか否かを判定し、満たしていない場合は、現状の取引対象の量とユーザ需要との差や、この差を満たすための店舗数等を潜在的需要として推定し、潜在的需要を満たすためのマーケティング提案データを提供してもよい。
【0024】
また、図4に示すように、情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、駅周辺において、「カフェ」だけでなく「カラオケ」、「マンガ喫茶」、「本屋」および「(2時間)暇」等の検索クエリが高頻度で検索されることから、暇をつぶせる場所に対するユーザの検索傾向を特定する。そして、情報提供装置10は、図4に示す駅周辺において、既にカフェが5軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされているが、当該駅周辺におけるユーザの検索傾向に基づいて、当該駅周辺におけるユーザの検索クエリとして高頻度で検索される「カラオケ」、「マンガ喫茶」および「本屋」とは異なる対象(例えば、代替可能な対象、または、同一もしくは類似の目的(すなわち、「暇つぶし」)を果たすことができる対象)である「カフェ」に対する潜在的需要を推定する。そして、情報提供装置10は、図4に示す駅周辺におけるカフェの潜在的需要に応じた出店提案データをコーヒーチェーンのフランチャイザーに提供する。このように、情報提供装置10は、時間つぶすものがたくさんあるからカフェはもういらないと判定せずに、具体的なニーズをカテゴライズし、暇つぶし系(例えば、マンガ喫茶、カラオケ、ダーツ等)、飲食系(例えば、イタリアン等に細分化した対象であってもよい)、カフェ系、医療系、本屋およびアパレル等の需要が満たされているかを含めて、カフェの潜在的需要を推定してもよい。
【0025】
また、情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点において、「スポーツジム」だけでなく「サプリ」、「ダイエット」および「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索クエリが高頻度でユーザに検索されている場合、当該所定地点において多くのユーザがモテたいとの感情属性を備えていること、および、モテるための手段に対する検索傾向をもつことを特定する。そして、情報提供装置10は、所定地点において、スポーツジムが1店舗しかない場合、当該所定地点におけるユーザの感情属性および検索傾向に基づいて、当該所定地点におけるスポーツジムに対する潜在的需要を推定する。そして、情報提供装置10は、所定地点におけるスポーツジムの潜在的需要に応じた出店提案データをスポーツジムをフランチャイズ展開するフランチャイザーに提供してもよい。
【0026】
〔3.情報提供装置の構成〕
次に、図5を用いて、実施形態に係る情報提供装置10の機能構成の一例について説明する。図5は、実施形態に係る情報提供装置10の構成例を示す図である。図5に示すように、情報提供装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。
【0027】~【0030】省略
【0031】
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報提供装置10内部の記憶装置に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。図5に示すように、制御部13は、特定部14、推定部15、および提供部16を有する。
【0032】
特定部14は、所定地点におけるユーザの属性を特定する。また、特定部14は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および/または、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの属性を特定してもよい。また、特定部14は、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの行動属性を特定してもよい。また、特定部14は、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの滞在時間を含む行動属性を特定してもよい。
【0033】
推定部15は、所定地点におけるユーザの潜在的需要を推定する。また、推定部15は、所定地点におけるユーザの属性に基づいて、所定地点におけるユーザの潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、所定地点におけるユーザの検索傾向に基づいて、所定地点におけるユーザの検索クエリとは異なる対象に対する潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、ユーザの検索傾向に基づいて、所定地点におけるユーザの検索クエリと代替可能な対象、または、同一もしくは類似の目的を果たすことができる対象に対する潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、所定地点における所定の対象の数量および属性に基づいて、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされていないと判定した場合、所定の対象に対する潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、所定地点におけるユーザの行動属性に基づいて、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされていないと判定した場合、当該所定の対象に対する潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、所定地点における所定の対象のキャパシティおよび行動属性に基づいて、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされていないと判定した場合、当該所定の対象に対する潜在的需要を推定してもよい。また、推定部15は、所定地点における所定の対象の数量および属性に基づいて、所定地点におけるユーザの潜在的需要を推定してもよい。
【0044】
〔5.端末装置100の処理フロー〕
次に、図7を用いて、制御情報を実行した端末装置100と情報提供装置10が実行する表示処理の手順について説明する。図7は、実施形態に係る提供処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
例えば、情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および/または、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点におけるユーザの行動属性および/または検索傾向等を含む属性を特定する(ステップS101)。
【0046】
そして、情報提供装置10は、所定地点における所定の対象のキャパシティ、および、ユーザの属性等に基づいて、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされているか否かを判定し(ステップS102)、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされている場合は(ステップS102:Yes)、提供処理を終了する。一方、情報提供装置10は、所定地点において所定の対象に対するユーザの需要が満たされていない場合は(ステップS102:No)、所定地点における所定の対象に対するユーザの潜在的需要を推定する(ステップS103)。(以下省略)
第5 当審の判断
1 理由1(明確性)について
請求項1の「推定部」は、「複数のユーザが端末装置にて検索に用いた検索クエリ、および、前記端末装置の位置データに基づいて、位置データが所定地点で共通する複数の対象ユーザの検索クエリのうち、所定回数を超えて検索された検索クエリに基づいて特定された属性」に基づいて、「キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要が満たされているか否かを判定」し、「当該所定の対象に対する前記対象ユーザの潜在的需要が存在すると推定する」ものである。
ここで、上記「特定された属性」について、発明の詳細な説明には、「情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、図2に示す工業大学周辺において、多くのユーザが駅前の大学に通う男子大学生というデモグラフィック属性を備えていることを特定する。」(【0021】)、「また、情報提供装置10は、端末装置100の位置データに基づいて、図3に示す駅周辺におけるユーザの滞在時間を含む行動属性を特定する。」(【0022】)、「また、情報提供装置10は、複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、所定地点において、「スポーツジム」だけでなく「サプリ」、「ダイエット」および「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索クエリが高頻度でユーザに検索されている場合、当該所定地点において多くのユーザがモテたいとの感情属性を備えていること、および、モテるための手段に対する検索傾向をもつことを特定する。」(【0025】)と記載されている。
さらに、発明の詳細な説明の記載を踏まえると、上記「デモグラフィック属性」、「行動属性」、「感情属性」のそれぞれに対する「キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要」は、「牛丼屋に対するユーザの需要」(【0021】)、「カフェに対するユーザの需要」(【0022】)、「スポーツジムに対する潜在的需要」(【0025】)であると解される。
しかしながら、「デモグラフィック属性」と「牛丼屋に対するユーザの需要」、「行動属性」と「カフェに対するユーザの需要」、「感情属性」と「スポーツジムに対する潜在的需要」との間に関係性は存在せず、それらの間に関係性があることが、技術常識であること、または、当業者にとって自明な事項であることを推認できる合理的理由もない。
そうすると、発明の詳細な説明を参照しても、請求項1の「推定部」は、「特定された属性」に基づいて、どのような処理を実行することで、「キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要が満たされているか否かを判定」するのかが依然として不明である。
したがって、請求項1の「推定部」により、「需要が満たされていないと判定した場合、前記所定地点において当該所定の対象に対する前記対象ユーザの潜在的需要が存在すると推定する」ことができる理由が依然として不明である。
よって、当審で通知した理由1(当審拒絶理由の理由1(4))は、解消しておらず、この出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 理由2(サポート要件)について
本願発明は、上記「第4」で摘記したとおり、「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定することができなかった」との技術課題を解決するためのものであって、発明の詳細な説明には、上記技術課題を解決するための需要推定処理の例が段落【0021】、【0022】、【0024】及び【0025】にそれぞれ記載されている。このうち、段落【0022】の例は、「端末装置100の位置データに基づいて、図3に示す駅周辺におけるユーザの滞在時間を含む行動属性を特定する」ものであって、行動属性の特定に「端末装置100にて検索に用いた検索クエリ」を用いていないから、請求項1に係る発明に対応するものではない。したがって、以下では、段落【0021】、【0024】及び【0025】の例について検討する。(後述の理由3、理由4についても同様。)
ここで、請求項1には、「推定部」について「前記特定部により特定された属性に基づいて、キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要が満たされているか否かを判定し、需要が満たされていないと判定した場合、前記所定地点において当該所定の対象に対する前記対象ユーザの潜在的需要が存在すると推定する推定部」と特定されている。
一方、発明の詳細な説明には、潜在的需要の推定に関して以下の記載がある。
「情報提供装置10は、図2に示す工業大学周辺において、既に牛丼屋が2軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされているが、当該工業大学周辺において昼間帯に男子大学生が多くなることから、牛丼屋に対する潜在的需要があると推定してもよい。」(【0021】)
「情報提供装置10は、図4に示す駅周辺において、既にカフェが5軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされているが、当該駅周辺におけるユーザの検索傾向に基づいて、当該駅周辺におけるユーザの検索クエリとして高頻度で検索される「カラオケ」、「マンガ喫茶」および「本屋」とは異なる対象(例えば、代替可能な対象、または、同一もしくは類似の目的(すなわち、「暇つぶし」)を果たすことができる対象)である「カフェ」に対する潜在的需要を推定する。」(【0024】)
「情報提供装置10は、所定地点において、スポーツジムが1店舗しかない場合、当該所定地点におけるユーザの感情属性および検索傾向に基づいて、当該所定地点におけるスポーツジムに対する潜在的需要を推定する。」(【0025】)
そうすると、段落【0021】の例では、「牛丼屋」に対する潜在的需要を推定するために、「既に牛丼屋が2軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされている」ことを判断する必要がある。また、段落【0024】の例では、情報提供装置10は、「カフェ」に対する潜在的需要を推定するために、「図4に示す駅周辺において、既にカフェが5軒あり、対人口比のキャパシティとしては満たされている」ことを判断する必要がある。また、段落【0025】の例では、情報提供装置10は、スポーツジムの潜在的需要を判断するために、「所定地点において、スポーツジムが1店舗しかない」ことを判断する必要がある。
しかしながら、請求項1には、これらを判断するための構成、すなわち、必要な情報(例えば、「牛丼屋」の数、「カフェ」の数、「スポーツジム」の数など)を取得し、推定部が必要な情報も用いて推定するための構成が特定されていない。
してみると、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定することができなかった」(段落0004)という発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
よって、当審で通知した理由2(当審拒絶理由の理由2「(2)請求項1-12について」のア、オ)は、解消しておらず、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 理由3(実施可能要件)について
発明の詳細な説明に記載された、上記技術課題を解決するための段落【0021】、【0024】及び【0025】のそれぞれに記載されている例について、以下検討する。
(1)段落【0021】の例について
ア 発明の詳細な説明には、特定部は、いかなる検索クエリを用い、どのような情報処理を実行することにより、「多くのユーザが駅前の大学に通う大学生というデモグラフィック属性を備えていることを特定」するのか、当業者が実施できる程度に記載されていない。
すなわち、【0021】には「複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて、図2に示す工業大学周辺において、多くのユーザが駅前の大学に通う男子大学生というデモグラフィック属性を備えていることを特定する。」と記載されるのみで、「駅前の大学に通う大学生というデモグラフィック属性」がどのような検索クエリから導出できるのか記載されていない。また、「駅前の大学に通う大学生というデモグラフィック属性」を導出するための検索クエリは、自明なものではない。
このため、発明の詳細な説明には「複数のユーザが端末装置100にて検索に用いた検索クエリ、および、端末装置100の位置データに基づいて」、どのような情報処理を行うことで、「多くのユーザが駅前の大学に通う大学生というデモグラフィック属性を備えていることを特定」できるのか、当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。
イ また、【0021】には、「工業大学周辺における牛丼屋の数およびユーザのデモグラフィック属性に基づいて、当該工業大学周辺において牛丼屋に対するユーザの需要が満たされているか否かを判定し、当該需要が満たされていないと判定した場合、牛丼屋に対するユーザの需要が潜在的に存在することを推定する。」と記載されているが、潜在的需要を推定する「牛丼屋」という対象をどのような情報処理により特定するのか、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。
ウ してみると、発明の詳細な説明には、当業者が段落【0021】に記載された需要推定処理の例を実施することができる程度に記載されていない。
(2)段落【0024】の例について
ア 「暇つぶし」の辞書的意味は、「ひまな時間を過ごす手段」、「時間をむだに過ごすこと。」であるところ、どのような情報処理を実行すれば、「「カフェ」だけでなく「カラオケ」、「マンガ喫茶」、「本屋」および「(2時間)暇」等の検索クエリが高頻度で検索されることから、暇をつぶせる場所に対するユーザの検索傾向を特定する」ことができるのか、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。
すなわち、検索クエリとして用いた、カフェ、カラオケ、マンガ喫茶、本屋等の検索ワードが“暇つぶしのため”に利用されるものであるという一義的な関係性を有しているとはいえないから、「カフェ」だけでなく「カラオケ」、「マンガ喫茶」、「本屋」等の検索クエリが高頻度で検索されることと、暇をつぶせる場所に対するユーザの検索傾向を特定することとの関係を特定するためにどのような情報処理を実行すればよいのか当業者が実施できる程度に記載されていない。
イ 仮に、「カラオケ」、「マンガ喫茶」および「本屋」などの検索ワードと“暇つぶしのため”との間に何らかの関係性があることが特定できたとしても、同一もしくは類似の目的(暇つぶし)として利用される対象(場所や施設など)は、カフェ以外にも無数にあると考えられるが、そのうち「カフェ」を対象として特定するためにどのような情報処理を実行すればよいのか、当業者が実施できる程度に記載されていない。
ウ してみると、発明の詳細な説明には、当業者が段落【0024】に記載された需要推定処理の例を実施することができる程度に記載されていない。
(3)段落【0025】の例について
ア どのような情報処理を実行すれば、「「スポーツジム」だけでなく「サプリ」、「ダイエット」および「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索クエリが高頻度でユーザに検索されている場合、当該所定地点において多くのユーザがモテたいとの感情属性を備えていること」が特定できるとするのか、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に記載されているとはいえない。
すなわち、検索クエリとして用いた、「スポーツジム」、「サプリ」、「ダイエット」、「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索ワードが“ユーザがモテたいため”に利用されるという一義的な関係を有しているとはいえないから、「スポーツジム」だけでなく「サプリ」、「ダイエット」、「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索クエリが高頻度で検索されることと、モテたいとの感情属性との関係を特定するためにどのような情報処理を実行すればよいのか当業者が実施できる程度に記載されていない。
イ 仮に、「スポーツジム」、「サプリ」、「ダイエット」、「ファッション通販サイト」および「エステ」等の検索ワードと“ユーザがモテたいため”との間に何らかの関係性があることが特定できたとしても、同一もしくは類似の目的(ユーザがモテたい)として利用される対象(商品、施設、ウェブサイトなど)は、スポーツジム以外にも無数にあると考えられるが、そのうち「スポーツジム」を対象として特定するためにどのような情報処理を実行すればよいのか、当業者が実施できる程度に記載されていない。
ウ してみると、発明の詳細な説明は、当業者が段落【0025】に記載された需要推定処理の例を実施することができる程度に記載されていない。
(4)小括
上記(1)~(3)より、発明の詳細な説明に記載された需要推定処理のいずれの例も、当業者が実施することができる程度に記載されておらず、段落【0032】及び【0033】の「特定部14」並びに「推定部15」についての事項や、段落【0045】及び【0046】の「情報処理装置10」の処理内容を参照しても、上記(1)~(3)の点は特定できないから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
よって、当審で通知した理由3は、依然として解消しておらず、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
4 理由4(委任省令要件)について
発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明は、「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定することができなかった」(【0004】)ことを技術課題とし、「所定地点において、単純な人流データに基づく需要予測ではなく、ユーザの属性やニーズを考慮した潜在的需要を推定することができる技術を提供することを目的とする」(【0005】)発明であるといえる。
一方、請求項1は、「前記特定部により特定された属性に基づいて、キャパシティを有する所定の対象に対する前記対象ユーザの需要が満たされているか否かを判定し、需要が満たされていないと判定した場合、前記所定地点において当該所定の対象に対する前記対象ユーザの潜在的需要が存在すると推定する推定部」を備え、「所定回数を超えて検索された検索クエリ」に基づく対象に対する「潜在的需要を推定する」ものであるから、本願発明の技術課題である「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定する」ものとはいえない。さらに、発明の詳細な説明の段落【0021】の例は、「検索クエリ」と所定の対象である「牛丼屋」との関係が不明であり、段落【0024】の例及び段落【0025】の例は、所定回数を超えて検索された「カフェ」及び「スポーツジム」を対象として潜在的需要を推定するものである。このため、請求項1の上記「推定部」の技術上の意義を理解することができない。
したがって、発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明により、上記技術課題がどのように解決されたかについての記載がされていないから、当審で通知した理由4は解消しておらず、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第6 請求人の意見書による意見について
請求人が令和4年9月2日に提出した意見書(以下「意見書」という。)において、明確性(理由1)については、要件を満たすように補正した旨、サポート要件(理由2)及び実施可能要件(理由3)については、「出願当初明細書の段落0021-0023等の記載に基づき補正」した旨、委任省令要件(理由4)については、「本願は、「ユーザが検索に用いたクエリに対応する対象の直接的な需要検索では計りえない需要を推定する」もの」といえる旨の意見を述べている。
しかしながら、上記「第5」で説示するとおり、いずれの理由も依然として解消していないから、請求人の意見を採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、さらに、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-012485