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特許拒絶査定不服審判

2022-019651

筋肉の質及び/又は筋量のためのオレウロペイン又はクルクミンを使用する組成物及び方法

審判番号
2022-019651
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-521994外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月05日
審決日
2024年02月29日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-521994「筋肉の質及び/又は筋量のためのオレウロペイン又はクルクミンを使用する組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月31日国際公開、WO2019/101700、令和 3年 2月15日国内公表、特表2021-503878〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、2018年(平成30年)11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年11月21日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は次のとおりである。

令和4年 5月20日付け:拒絶理由通知
令和4年 7月29日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年 8月 5日付け:拒絶査定
令和4年12月 5日 :審判請求書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和4年7月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
(i)個体における筋肉の質若しくは筋量のうちの少なくとも1つの低下を軽減すること、(iv)個体における筋肉の質若しくは筋量のうちの少なくとも1つを向上させること、又は(v)個体における筋萎縮後の筋肉の質若しくは筋量のうちの少なくとも1つの回復を改善することのうちの少なくとも1つについての治療有効量で、オレウロペイン及びクルクミンを含む、組成物。」

第3 原査定の理由

原査定の理由は、令和4年5月20日付け拒絶理由通知に記載した理由2及び3によるものであり、概略、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>

引用文献1.国際公開第2017/085190号

第4 当審の判断

当審は、原査定の理由3のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。

理由は以下のとおりである。

1 引用文献1の記載事項

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原査定の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。なお、引用文献1に対応する国際出願のファミリー出願の公表公報である特表2018-534278号の記載を邦訳文として示す。

記載(1)

「【請求項1】
個体の筋機能の低下を軽減する、個体の筋機能を向上させる、及び/又は個体の筋萎縮後の筋機能の回復を改善する方法であって、前記個体にポリフェノールを含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ポリフェノールが、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
続きを表示(全12行)
……
【請求項10】
前記個体がサルコペニアを有する、又は移動能力障害若しくは筋力低下を有する高齢者である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること、(ii)個体のサルコペニアを予防すること、(iii)個体の筋機能の低下を軽減すること、(iv)個体の筋機能を向上させること、又は(v)個体の筋萎縮又は筋損傷後の筋機能の回復を改善することのうちの少なくとも1つに関して治療的に有効な量のポリフェノールを含む組成物。
【請求項12】
前記ポリフェノールが、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
……」

記載(2)

「[0001]本開示は、概して、骨格筋の健康の向上又は維持のため1種以上のポリフェノールを使用する組成物及び方法に関する。より詳細には、本開示は、サルコペニアの進行の治療、予防、若しくは軽減;筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)低下の軽減;筋機能の向上、及び/又は筋萎縮若しくは筋損傷後の筋機能の回復の改善のため、1種以上のポリフェノールを含む組成物を投与することに関する。
[0002]筋力低下は、サルコペニアなどの生命を脅かすいくつかの疾患において顕在化する。萎縮(減少)と肥大(増大)とのバランスが、骨格筋量維持の鍵となる。しかしながら骨格筋は最終分化を起こしているため、この可塑性を可能とする機序を理解することが長期の健康及び生存の要となる。
[0003]サルコペニアは、加齢に伴う筋量及び筋機能(筋力及び歩行速度を含む)の低下として定義される。筋機能及び身体能力は筋量の低下に伴い衰える。……。」

記載(3)

「[0016]別の実施形態では、本開示は、(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること、(ii)個体のサルコペニアを予防すること、(iii)個体の筋機能の低下を軽減すること、(iv)個体の筋機能を向上させること、又は(v)個体の筋萎縮後の筋機能の回復を改善することのうちの少なくとも1つに関して治療的に有効である栄養学的な量でポリフェノールを含む組成物を提供する。
[0017]一実施形態では、ポリフェノールは、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。」

記載(4)

「[0048]「動物」としては、齧歯類、水生哺乳類、イヌ及びネコ等の飼育動物、ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマ等の家畜、並びにヒトを含むがこれらに限定されない哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳類」、又はこれらの複数形が用いられる場合、これらの用語には、本節の文脈により効果が示され得る、又は示されるように意図され得るあらゆる動物が当てはまる。本明細書で使用するとき、用語「患者」は、本明細書において定義されるとおりの治療を受ける又は治療を受けることが意図される動物、特に哺乳類、及び更にはヒトを含むものと理解される。用語「個体」及び「患者」は、本明細書で使用するとき、多くの場合、ヒトを指して使用されるが、本開示はヒトに限定されはしない。したがって、用語「個体」及び「患者」は、治療により効果を得ることのできる任意の動物、哺乳類又はヒトを指す。」

記載(5)

「[0059]筋萎縮は、サルコペニア障害、即ち加齢に起因する筋肉の量、サイズ、及び機能の低下を引き起こし得る。……。加齢に伴うサルコペニアの治療又は予防に関わる機序は、若年者の筋機能低下の治療又は予防とは異なる。」

記載(6)

「[0061]2種以上のポリフェノールなど、ポリフェノールの混合物が用いられてもよい。」

記載(7)

「[0089]以下の非限定的な例は、1種以上のポリフェノールを含む組成物を投与して、組成物を投与された個体におけるサルコペニアを治療する、サルコペニアを予防する、筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の低下を軽減する、筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)を向上させる、及び/又は筋機能(例えば、筋力、歩行速度など)の回復を改善するという概念を展開しかつ支持する科学的データを示す。
[0090]マウスC2C12筋芽細胞株(大腿筋由来のサテライト細胞)は、筋萎縮及び肥大の良好な説明となる。C2C12細胞は、多核化筋管に分化する。筋芽細胞の分化、ひいては筋管形成は、C2C12細胞におけるクレアチンキナーゼ(CK)活性を測定することにより生化学的に観察される。
[0091]実施例1:本発明者らが使用するモデルにおいて、C2C12細胞を2種類のポリフェノール、すなわちオレウロペイン(オリーブ葉由来)及びケルセチン(アグリコン形態のルチン)で処理した。腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、多くの状態及び加齢における筋消耗のメディエーターとして関係付られている多面発現性のサイトカインであり、これを筋萎縮の対照として使用した。TNF-αの存在下又は非存在下でポリフェノール治療を行った。更に、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)を肥大の対照として使用した(図1)。
[0092]結果として、1μMでのオレウロペインは筋管の分化(肥大)を向上可能であったことが示された。
続きを表示(全17行)
[0093]実施例2:本発明者らにより使用されるモデルにおいて、TNF-α(10ng/mL)の存在下又は非存在下で4日間、C2C12筋芽細胞をオレウロペイン(1.5μM)で処理した。TNF-α(腫瘍壊死因子-α)は、多くの状態及び加齢における筋消耗のメディエーターとして関係付られている多面発現性のサイトカインであり、これを筋萎縮の対照として使用した。TNF-αも使用して、C2C12に炎症状態を誘導した。第3日目及び第4日目では、オレウロペインにより、非炎症状態において、筋管分化についてのマーカーであるミオゲニンD(MyoD)(図2)及びMyoG(図3)が増加したことから、筋肥大の刺激が示唆される。炎症状態(TNF-αによる)において、特定の筋炎症性サイトカイン、C-X-Cモチーフリガンド1(CXCL-1)(図4)及びC-Cモチーフリガンド5(CCL-5)(図5)の発現は、第4日目にオレウロペインにより減少したことから、筋肉細胞の炎症応答の低下が示唆される。その他の筋特異性ではない炎症性サイトカイン(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー、すなわちNFK-B(図7)、シクロオキシゲナーゼ-2、すなわちCox-2(図8)及びインターロイキン-6、すなわちIL-6(図9)が減少していたことから、オレウロペインの抗炎症特性が示される。最終的に、トロンボスポンジンモチーフ4を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS-4)(図6)もオレウロペインにより減少した。我々のモデルにおいて、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)を測定することにより筋タンパク質の分解を評価したところ(図10)、3日目と4日目でオレウロペインにより減少していた。
[0094]図1は、1.0μMでのオレウロペイン(OLP)のクレアチンキナーゼ活性(CK)に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。タンパク質含量についてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。ベースライン:増殖培地中で分化させた非分化細胞についての基礎対照。対照:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照(DM)。TNFa 10ng/mL:DM(萎縮症の対照)中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。IGF-1 10nM:DM(肥大の対照)中10nMの濃度のインスリン様増殖因子1。OLP 1μM:DM中1.0μM濃度のオレウロペイン。
[0095]図2は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のMyoD発現に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0096]図3は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のミオゲニン(MyoG)の発現に対する効果を示す。オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0097]図4は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)のケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL-1)発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0098]図5は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、RANTES(活性化制御で、発現、分泌される正常T細胞)としても知られるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL-15)の発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0099]図6は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、トロンボスポンジンモチーフ4を有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ(ADAMTS-4)の発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。
[0100]DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0101]図7は、1.5μMオレウロペイン(OLP)のNF-κB(活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー)の発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0102]図8は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)としても知られるプロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ2の発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFa 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0103]図9は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、インターロイキン-6(IL-6)発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFa 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFα 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0104]図10は、1.5μMでのオレウロペイン(OLP)の、フォークヘッドボックスO3(FOXO3)発現に対する効果を示す。TNF-α刺激(10ng/mL)の存在下又は非存在下、オレウロペインを添加又は非添加で、マウス筋芽細胞(C2C12)を4日間単層培養した。GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)のmRNAレベルについてデータを正規化し、結果を平均±標準誤差で表した。DM:分化培地(2%ウマ血清、1%ペニシリンストレプトマイシン、DMEM高グルコース)についての基礎対照。TNFα 10ng/mL:DM中10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α。OLP 1.5μM:DM中1.5μM濃度のオレウロペイン。TNFα 10ng/mL+OLP 1.5μM:DM中、10ng/mLの濃度の腫瘍壊死因子α及び1.5μM濃度のオレウロペイン。
[0105]これらの結果を併せて、オレウロペインは、炎症経路を介した炎症の影響を抑えてタンパク質分解を制限し、筋肥大を刺激することが示唆された。」

2 引用文献1に記載された発明

上記1の記載(1)(特に、請求項12)、記載(3)、及び記載(4)の記載を中心に整理すると、引用文献1には、次の発明が記載されていると認める。

「(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること、(ii)個体のサルコペニアを予防すること、(iii)個体の筋機能の低下を軽減すること、(iv)個体の筋機能を向上させること、又は(v)個体の筋萎縮又は筋損傷後の筋機能の回復を改善することのうちの少なくとも1つに関して、治療的に有効な量で、オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリフェノールを含む組成物。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比・判断

(1)対比

引用発明にいう「サルコペニア」について、引用文献1には、

「[0003]サルコペニアは、加齢に伴う筋量及び筋機能(筋力及び歩行速度を含む)の低下として定義される。」(記載(2))との記載、及び

「[0059]筋萎縮は、サルコペニア障害、即ち加齢に起因する筋肉の量、サイズ、及び機能の低下を引き起こし得る。」(記載(5))との記載により、

「サルコペニア」には筋量の低下があることが示されていることから、引用発明の「(i)サルコペニアを有する個体のサルコペニアを治療すること」は、本願発明の「(i)個体における…筋量…の低下を軽減すること」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは次の一致点及び相違点を有する。

一致点:

「個体における筋量の低下を軽減することについての治療有効量で、特定成分を含む、組成物。」である点。

相違点:

上記一致点にいう「特定成分」が、

本願発明では「オレウロペイン及びクルクミン」であるのに対し、

引用発明では「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリフェノール」である点。

(2)相違点についての検討

引用文献1には、

「[0061]2種以上のポリフェノールなど、ポリフェノールの混合物が用いられてもよい。」との記載があり(記載(6))、実施例1ではオレウロペインとケルセチンを組み合わせたもの、実施例2ではオレウロペイン単独のものの検討がなされている(記載(7))ことからすると、引用発明における「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリフェノール」として想定される選択肢の中から、特に、オレウロペインと他のポリフェノールの組み合わせのひとつである「オレウロペイン及びクルクミン」を含む組み合わせを選択して採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)発明の効果について

引用文献1の記載(1)(特に、請求項12)、記載(3)、及び記載(4)には、引用発明の投与によりサルコペニアを治療することが記載されるとともに、記載(7)には、引用発明における「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリフェノール」としてオレウロペインを投与した場合の効果が具体的に示されている。

一方、本願明細書又は図面には、オレウロペイン又はクルクミンをそれぞれ単独で投与した場合の効果は実施例により具体的に示されている(段落0058~0062、図3A、及び図3B)ものの、本願発明に係る「オレウロペイン及びクルクミン」を含む組成物を投与した場合の効果は示されておらず、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌しても、本願発明に係る「オレウロペイン及びクルクミン」を含む組成物を投与した場合の効果が、当業者の予想し得ない顕著な効果であると認めることはできない。

(4)審判請求人の主張について

ア 審判請求人は,審判請求書(特に、[請求の理由](3)(3-2))において、概略、以下の主張をしている。

「引用文献1には、サルコペニアを治療するという、本願と同一の目的が記載されています。……。
…、本願の明細書では、引用文献1で列挙されている「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン」のうち、老齢ラットを用いた実験においてルチンの補給では筋肉の質に効果がなく、オレウロペインとクルクミンの補給が効果が高いことが確かめられています(図3A,図3B)。オレウロペインとクルクミンを同時に用いた実験はありませんが、それぞれ単独での結果がルチンに対する優位性を示しているため、これらを組み合わせて補給することにより一層の高い効果が期待されます。
本願発明は、引用文献1に開示されている「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン」のなかでもオレウロペインとクルクミンが筋肉の質改善にとって特に有効であることを見出し、これらを組み合わせた発明に当たります。これらの組み合わせのなかでも特にオレウロペインとクルクミンが有効であること、及び、これらを組み合わせることは引用文献1には記載がなく、引用文献1に接した当業者が容易に想到することができたことであるともいえません。(なお引用文献1の実施例では、ルチンはn-3脂肪酸とともに投与されています。)
以上のことから、本願発明は引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえません。請求項1を引用する請求項2に係る発明、及び、本願発明と同様の発明特定事項を備える請求項3に係る発明についても同様です。」

イ 検討

引用発明における「オレウロペイン、ルチン、ケルセチン、クルクミン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリフェノール」として想定される選択肢の中から、2種のポリフェノールである「オレウロペイン及びクルクミン」を含む組み合わせを選択して採用することが、当業者が容易に想到し得たことであることは、上記(2)に示したとおりである。そして、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌しても、本願発明に係る「オレウロペイン及びクルクミン」を含む組成物を投与した場合の効果が、当業者の予想し得ない顕著な効果であると認めることができないことは、上記(3)に示したとおりである。

したがって、審判請求人の上記主張を受け入れることはできない。

(5)まとめ

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-019651

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