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特許拒絶査定不服審判

2022-019557

商品陳列用フック

審判番号
2022-019557
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-088481外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年12月02日
審決日
2024年07月17日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A47F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 88481「商品陳列用フック」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月19日出願公開、特開2019-213850〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

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この出願は、令和元年5月8日の出願(優先権主張 平成30年6月6日)であって、令和4年6月24日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年8月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和4年8月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年12月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、当審において、令和5年12月22日付けで拒絶理由が通知され、令和6年2月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明

この出願の請求項に係る発明は、令和6年2月19日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「受け部材と、アームとを備え、受け部材は基部と軸とを有し、アームは軸受け部を有し、軸受け部が軸に回動自在に支持されており、
軸受け部は、軸を挟んで左右の縁部が連続または近接していて、左右の縁部は後方から前方に向けて傾斜する下向きの下り傾斜面を有し、
受け部材は、基部と軸との間に位置し軸の外周方向の一部の区間に設けた当接部を有し、当接部が左右の縁部の下り傾斜面の上端部に位置するとき、アームは前後方向を向いており、
当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が上ってアームが側方を向く位置へ移動したときに、アームの自重で当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が下ってアームが前後方向を向く位置に戻るように回動自在であることを特徴とする商品陳列用フック。」

第3 拒絶の理由

令和5年12月22日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、理由3(進歩性)において、請求項2に係る発明に対して通知したものの概略は、次のとおりである。

この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:実願平2-123278号(実開平4-79557号)のマイクロフィルム

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1

(1)引用文献1の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。

ア「〔産業上の利用分野〕

この考案は、各種商品を吊り下げて陳列するために用いる吊り掛け具に関する。」(明細書第1ページ第12~14行)

イ「また、第9図に示した後者の吊り掛け具においては、商品Aを正面から見て傾斜状の配置で吊り下げるため、第10図の如く、商品Aの正面から見た幅W’は狭くなり、その分だけ並列間隔を狭くできるので陳列棚1の一列当りの陳列点数を多くできるという利点がある反面、商品Aは傾斜状になるため、正面側からの確認が困難になるという問題がある。

そこで、第9図に示したタイプの吊り掛け具において、吊り掛け具2を水平に回動自在とし、回動変位により商品を正面向きにして確認できるようにすることも考えられるが、商品を見たり抜き出したい商品を抜き出した後、吊り掛け部は元の位置には戻らず、乱雑な陳列状態になり、人力によらない限り一定間隔に整列させる事ができないという問題がある。

この考案は、上記のような問題点を解決するため、商品を回動自在に吊り下げ保持すると共に、回動変位後に元の位置へ自動的に復帰し、常に整列状態が得られる吊り掛け具を提供することを課題としている。

〔課題を解決するための手段〕

上記のような課題を解決するため、この考案は、円柱軸に外嵌固定した支持パイプの上端面と、前記円柱軸に対してこの支持パイプよりも上部の位置に回動自在となるように外嵌挿した上部パイプの下端面とを対応する傾斜面に形成し、前記上部パイプに吊り掛け部を固定した構成を採用したものである。

〔作用〕

吊り掛け部を設けた上部パイプを回動させると、支持パイプの上端傾斜面上を上部パイプの下端傾斜面における下端部が摺回動し、支持パイプの傾斜面に沿って上昇動する。

回動位置で上部パイプをフリーにすると上部パイプは自重によりその傾斜面の下端部が支持パイプの傾斜面上を傾斜下り側に向けて滑動し、従って上部パイプは回動しながら下降し、両者の傾斜面が適合する位置にまで戻り、従って上部パイプは左右何れの方向に回動させても自動的に元の位置に復帰することになる。」(明細書第2ページ第16行~第4ページ第16行)

ウ「図示のように、吊り掛け具11は、円柱軸12と、この円柱軸12の下部に外嵌固定した支持パイプ13と、円柱軸12の上部に回動と上下動が自在となるよう外嵌挿した上部パイプ14と、上部パイプ14に固定した吊り掛け部15と、前記支持パイプ13に固定した取付金具16との組合せからなり、取付金具16は陳列棚17に外嵌する下向きコ字状に形成され、背面側に螺装した蝶ナット18の締付けで固定化するようになっている。」(明細書第4ページ第20行~第5ページ第9行)

エ「上記支持パイプ13の上端面と上部パイプ14の下端面とは互に対応する傾斜面19、20に形成され、円柱軸12に挿入した上部パイプ14はその下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19で支持されることになる。」(明細書第5ページ第15~19行)

オ「上記上部パイプ14に固定した吊り掛け部15は、円軸材料を用い、上部パイプ14の前面に斜前方へ水平状態で突出するよう固定され、その先端側が直角に折れ曲り、商品Aの吊り下げ部15aになっている。

この考案の吊り掛け具11は上記のような構成であり、取付金具16で陳列棚17に固定した状態において、第2図乃至第5図のように、上部パイプ14はその下端傾斜面20全面が支持パイプ13の上端傾斜面19に重なり合って支持され、これが上部パイプ14の元位置となり、吊り掛け部15は第3図実線で示すように斜め前方に突出し、吊り下げ部15aに対して商品Aを正面から見て斜に吊り下げた陳列状となる。

上記のように吊り下げた商品Aを取り出したり正面から見るために、吊り掛け部15を第3図一点鎖線で示すように回動させると、上部パイプ14は円柱軸12の軸心を中心に回動し、第6図の如く、上部パイプ14の傾斜面20における下端部20aが支持パイプ13の傾斜面19上を滑動する。

これによって上部パイプ14は、回動と同時に支持パイプ13の傾斜面19に沿って上昇動する。

商品を確認したり取り出した後に吊り掛け部15をフリーにすると、上部パイプ14は自重によって傾斜面20の下端部20aが支持パイプ13の傾斜面19上を傾斜下り側に滑り、これによって上部パイプ14は回動しながら下降し、下端傾斜面20が支持パイプ13の傾斜面19に全面重なり合う状態で上部パイプ14は停止する。」(明細書第6ページ第4行~第7ページ第13行)

カ 第1~6、9~10図には、次の事項が図示されている。

「
[図:0001414575000001.jpg]
[図:0001414575000002.jpg]
[図:0001414575000003.jpg]
[図:0001414575000004.jpg]
[図:0001414575000005.jpg]
[図:0001414575000006.jpg]
[図:0001414575000007.jpg]
[図:0001414575000008.jpg]
」

キ 前記ア及びウの記載から、吊り掛け具11は、各種商品を吊り下げて陳列するために用いるものといえる。

ク 前記ウには、円柱軸12と、円柱軸12の下部に外嵌固定した支持パイプ13と、支持パイプ13に固定した取付金具16が記載されており、第1図(前記カ参照)の図示内容も踏まえると、円柱軸12、支持パイプ13及び取付金具16は一体的に構成されているといえる。

ケ 前記ウには、円柱軸12の上部に回動と上下動が自在となるよう外嵌挿した上部パイプ14と、上部パイプ14に固定した吊り掛け部15が記載されており、第1図(前記カ参照)の図示内容も踏まえると、上部パイプ14及び吊り掛け部15は一体的に構成されているといえる。

コ 第1~2図(前記カ参照)からは、上部パイプ14は、円柱軸12を挟んで左右の縁部が連続していて、左右の縁部は後方から前方に向けて傾斜する下向きの下端傾斜面20を有することが看取される。

サ 前記オには、吊り掛け部15を第3図一点鎖線で示すように回動させると、上部パイプ14は円柱軸12の軸心を中心に回動し、第6図の如く、上部パイプ14の下端傾斜面20における下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を滑動し、これによって上部パイプ14は、回動と同時に支持パイプ13の上端傾斜面19に沿って上昇動し、吊り掛け部15をフリーにすると、上部パイプ14は自重によって下端傾斜面20の下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を傾斜下り側に滑り、これによって上部パイプ14は回動しながら下降し、下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で上部パイプ14は停止することが記載されている。また、第3図(前記カ参照)からは、吊り掛け部15が、一点鎖線で示される側方を向く位置から、実線で示される斜前方を向く位置まで回動していることが看取される。

(2)引用発明

引用文献1の前記(1)ア~サの記載及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「円柱軸12と、円柱軸12の下部に外嵌固定した支持パイプ13と、支持パイプ13に固定した取付金具16と、上部パイプ14と、上部パイプ14に固定した吊り掛け部15とを備え、取付金具16、円柱軸12及び支持パイプ13と、上部パイプ14及び吊り掛け部15は、それぞれ一体的に構成され、上部パイプ14が円柱軸12の上部に回動と上下動が自在となるよう外嵌挿されており、
上部パイプ14は、円柱軸12を挟んで左右の縁部が連続していて、左右の縁部は後方から前方に向けて傾斜する下向きの下端傾斜面20を有し、
支持パイプ13は、上端傾斜面19を有し、吊り掛け部15は、上部パイプ14の下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で、斜前方に向いており、
吊り掛け部15を回動させると、上部パイプ14は円柱軸12の軸心を中心に回動し、上部パイプ14の下端傾斜面20における下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を滑動し、これによって上部パイプ14は、回動と同時に支持パイプ13の上端傾斜面19に沿って上昇動するとともに吊り掛け部15が側方を向き、吊り掛け部15をフリーにすると、上部パイプ14は自重によって下端傾斜面20の下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を傾斜下り側に滑り、これによって上部パイプ14は回動しながら下降し、下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で上部パイプ14は停止するとともに吊り掛け部15が斜前方を向く、各種商品を吊り下げて陳列するために用いる吊り掛け具11。」

2 引用文献2

(1)引用文献2の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-303036号公報(「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

ア「【0009】

【発明の実施の形態】以下に本発明に係る扉開閉装置の実施の形態について図1ないし図3を参照してより詳細に説明する。本発明に係る扉開閉装置1は図1に示すように壁等の固定体2と扉体3に固着された一対の蝶番4を備えている。蝶番4は、固定体2に固着された蝶番片5の軸受部5aと扉体3に固着された蝶番片6の軸受部6aとがヒンジ軸7に軸支されて回転自在に係止されている。扉体3に固着された蝶番片6の軸受部6aは固定体2に固着された蝶番片5の軸受部5aの上方に配置されている。また、蝶番片5の軸受部5aと蝶番片6の軸受部6aとのそれぞれの接合面5b、6bは扉体3が閉止状態のときに同方向に所定の角度傾斜して接した状態となっている

【0010】上記の扉開閉装置1は次のように作用する。扉体3が固定体2に閉止している状態から扉体3を所定の角度開放すると図3に示すように、扉体3に固着された蝶番6がヒンジ軸7を中心として軸受部6aの接合面6bが傾斜した角度にしたがって接合面5bに沿って移動しながらズレ上がる。すなわち、蝶番片6がヒンジ軸7を中心にして回転しながら上方にズレ上がり、軸受部5aの接合面5bと軸受部6aの接合面6bとの間に隙間Sを形成する。なお、図3は表示の関係で固定体2、扉体3、蝶番片5は省略してある。蝶番片6が上方にズレ上がるとともに蝶番片6が取付られた扉体3も上方にズレ上がる。扉体3が上方にズレ上がった状態で扉体3を開放すると、蝶番4には扉体3の自重が加わる。扉体3からの荷重は蝶番4に対して下方への回転力を与えるので、扉体3はその回転力により自動的に元の位置に戻るように回転して軸受部5aの接合面5bと軸受部6aの接合面6bが接した状態に戻って閉止する。」

イ 図1~3には、次の事項が図示されている。

「【図1】
[図:0001414575000009.jpg]
【図2】
[図:0001414575000010.jpg]
【図3】
[図:0001414575000011.jpg]
」

(2)引用文献2に記載された事項

図2には、所定角度傾斜して接する接合面5b、6bとして、傾斜面が環状である構成が図示されている。したがって、前記(1)ア~イの記載から、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。

「扉体3に固着された蝶番4に対して扉体3の荷重による下方への回転力が与えられると、扉体3はその回転力により自動的に元の位置に戻るように回転して、軸受部5aの環状の傾斜面である接合面5bと軸受部6aの環状の傾斜面である接合面6bが接した状態に戻る扉開閉装置1。」

3 引用文献3

(1)引用文献3の記載

新たに引用する、この出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭51-071746号(実開昭52-161935号)のマイクロフィルム(「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

ア「この考案は戸や扉等を回動自在に支持し、かつ自然に元の位置にもどす扉用ヒンジに関する。」(明細書第1ページ第16~17行)

イ「カム(1)の外周壁(8)に適合する内周壁(9)を有する外筒(10)を回転自在にかつ摺動自在にカム(1)と嵌合させ、この外筒(10)の一端は底板(11)を連接してある。この内周壁(9)と底板(11)により形成される円柱状の空間部(12)に前記外筒(10)と同軸心上に段付丸棒状の回動往復棒(13)が大径部(14)を奥にして挿入されて上記底板(11)と密着している。次に、回動往復棒(13)の小径部(15)の外周壁(16)に突出する突起(17)を連接して、この突起(17)を金具(A)の摺動案内面(2)と摺接させる。」(明細書第3ページ第16行~第4ページ第5行)

ウ「ここで、人が扉(26)を押して第1図のRの方向に回転したとすれば、突起(17)はカム(1)の摺動案内面(2)を摺動して凸部側(30)に近づく。そのために、扉(26)はR方向に回転しつつU方向に上昇することになる。人が扉(26)から手を離せば、扉(26)の自重により下方向に運動せんとして、突起(17)は摺動案内面(2)の凸部側(30)附近から摺動案内面(2)を摺動しつつ凹部側(29)までRとは逆方向に回転しながら下方向(L方向)に降りて来る。このようにして、扉(26)は元の位置に復元するのである。次に、人がRと逆方向に回転するように押した場合も同様である。」(明細書第5ページ第10~20行)

エ「なお、本考案においては、金具(A)(B)の取付材(4)(25)は図に限定されず取付場所により任意の形状に変形可能なのは勿論扉への取付位置も扉の下部、上部、中間部いずれも可能である。また、カム(1)および回動往復棒(13)の軸心を鉛直に保持しておれば、第1図において、金具(A)を扉(26)側に、そして金具(B)を固定部材(5)に取付けて金具(A)と金具(B)の上下を逆にすれば同様の作用をなすことは明らかであり、このように取付けてもよいのである。また、第5図のθの値を所定値に定めて、回動往復棒(13)と外筒(10)とを溶接等で一体に製作することも可能である。」(明細書第7ページ第6~17行)

オ 第1~4図には、次の事項が図示されている。

「
[図:0001414575000012.jpg]
[図:0001414575000013.jpg]
[図:0001414575000014.jpg]
」

(2)引用文献3に記載された事項

前記(1)ア~オの記載から、引用文献3には、以下の事項が記載されていると認められる。

「扉(26)の自重により、回動往復棒(13)の小径部(15)の外周壁(16)に突出する突起(17)は金具(A)の摺動案内面(2)の凸部側(30)附近から摺動案内面(2)を摺動しつつ凹部側(29)まで回転しながら下方向に降り、扉(26)は元の位置に復元する扉用ヒンジ。」

4 引用文献4

(1)引用文献4の記載

新たに引用する、この出願の優先日前に頒布された刊行物である実公昭33-13979号公報(「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

ア「第1図は本案扉開閉金具の正面図但し閉塞状態を示す、第2図は開放状態を示す側面図、第3図は下部金具のみを示す縦断正面図である。」(第1ページ左欄第2~4行)

イ「本案は扉1の蝶着部下隅に埋設し取付ける枠体2に縦軸3と、この縦軸3と直角状を保ち転子4とを設け、而して枠体2と対向位置の柱8に埋設し、取付ける取付金具5に短筒6を設け、この短筒6内に枠体2の縦軸3を緩かに嵌装すると共に短筒6の上部を斜面7となし、該斜面7に転子4を接触させ、又扉1の蝶着部上端に埋設し取付ける金属条板10に短杆11を設けこの短杆11を対向位置の柱取付金具12に設けた孔13に緩かに嵌装したものである。

なお図面において転子4を軸架せる軸9は枠体2と縦軸3との間に架設し取付ける。」(第1ページ左欄第6~17行)

ウ「本案は前記のような構成にして、扉1の蝶着部下隅に埋設し取付けた枠体2の縦軸3を、柱に埋設し取付けた取付金具5の短筒6に嵌装すると共に、短筒6の斜面7に枠体に設けた転子4を接触させ、又上部は扉1に取付けた条板10の短杆11を柱取付金具12の孔13に緩かに嵌装し、而も金具12の上面と金具13の水平片下面との間に短筒6に設けた斜面7の高さ丈の間隔をおくもので、扉1を開けるとこれに取付けた枠体2の転子4が短筒6の斜面7上を下位より上位に向け転動しつゝ上昇するからこれに伴い扉1は上昇しつゝ開くので扉の上位に伴い条板10の短杆11は上昇する。

而して扉1の開放を放つと扉の自重により転子は斜面を降下するから扉は自動的に閉塞する。」(第1ページ左欄第23行~同ページ右欄第9行)

エ 第1~2図には、次の事項が図示されている。

「
[図:0001414575000015.jpg]
」

(2)引用文献4に記載された事項

前記(1)ア~エの記載から、引用文献4には、以下の事項が記載されていると認められる。

「扉1を開けると枠体2の転子4が短筒6の斜面7上を下位より上位に向け転動しつつ上昇し、扉1の開放を放つと扉1の自重により転子4は斜面7を降下し扉1は自動的に閉塞する扉開閉金具。」

第5 対比・判断

1 対比

以下、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「取付金具16」、「円柱軸12」及び「上部パイプ14」は、それぞれ本願発明の「基部」、「軸」及び「軸受け部」に相当する。そして、引用発明の「取付金具16、円柱軸12及び支持パイプ13」を合わせたものは、本願発明の「受け部材」に相当し、引用発明の「上部パイプ14及び吊り掛け部15」を合わせたものは、本願発明の「アーム」に相当する。すると、引用発明の「円柱軸12と、円柱軸12の下部に外嵌固定した支持パイプ13と、支持パイプ13に固定した取付金具16と、上部パイプ14と、上部パイプ14に固定した吊り掛け部15とを備え、取付金具16、円柱軸12及び支持パイプ13と、上部パイプ14及び吊り掛け部15は、それぞれ一体的に構成され」は、本願発明の「受け部材と、アームとを備え、受け部材は基部と軸とを有し、アームは軸受け部を有し」に相当する。

また、引用発明の「上部パイプ14が円柱軸12の上部に回動と上下動が自在となるよう外嵌挿されており」は、本願発明の「軸受け部が軸に回動自在に支持されており」に相当する。

(2)引用発明の「下端傾斜面20」は、本願発明の「下り傾斜面」に相当する。

(3)引用発明の「上端傾斜面19」は、上部パイプ14の下端傾斜面20が全面重なり合う、ないし、下端部20aが滑動するものであるから、本願発明の「基部と軸との間に位置し軸の外周方向の一部の区間に設けた当接部」と、軸の外周方向に設けた当接部である点で共通する。また、引用発明の「上端傾斜面19」と「下端傾斜面20」の位置関係からみて、引用発明の「上部パイプ14の下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で」は、上端傾斜面19は、下端傾斜面20の上端部にも当接しているといえる。すると、引用発明の「吊り掛け部15は、上部パイプ14の下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で、斜前方に向いており」は、本願発明の「当接部が左右の縁部の下り傾斜面の上端部に位置するとき、アームは前後方向を向いており」と、当接部が左右の縁部の下り傾斜面の上端部に当接するとき、アームは所定の方向を向いている点で共通する。

(4)引用発明の「吊り掛け部15を回動させると、上部パイプ14は円柱軸12の軸心を中心に回動し、上部パイプ14の下端傾斜面20における下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を滑動し、これによって上部パイプ14は、回動と同時に支持パイプ13の上端傾斜面19に沿って上昇動するとともに吊り掛け部15が側方を向き、吊り掛け部15をフリーにすると、上部パイプ14は自重によって下端傾斜面20の下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を傾斜下り側に滑り、これによって上部パイプ14は回動しながら下降し、下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で上部パイプ14は停止するとともに吊り掛け部15が斜前方を向く」は、その作用からみて、本願発明の「当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が上ってアームが側方を向く位置へ移動したときに、アームの自重で当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が下ってアームが前後方向を向く位置に戻るように回動自在である」と、当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が上ってアームが側方を向く位置へ移動したときに、アームの自重で当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が下ってアームが所定の方向を向く元の位置に戻るように回動自在である点で共通する。

(5)引用発明の「各種商品を吊り下げて陳列するために用いる吊り掛け具11」は、本願発明の「商品陳列用フック」に相当する。

(6)そうすると、本願発明と引用発明とは、

「受け部材と、アームとを備え、受け部材は基部と軸とを有し、アームは軸受け部を有し、軸受け部が軸に回動自在に支持されており、
軸受け部は、軸を挟んで左右の縁部が連続していて、左右の縁部は後方から前方に向けて傾斜する下向きの下り傾斜面を有し、
受け部材は、軸の外周方向に設けた当接部を有し、当接部が左右の縁部の下り傾斜面の上端部に当接するとき、アームは所定の方向を向いており、
当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が上ってアームが側方を向く位置へ移動したときに、アームの自重で当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が下ってアームが所定の方向を向く元の位置に戻るように回動自在である商品陳列用フック。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

当接部について、本願発明は、「基部と軸との間に位置し軸の外周方向の一部の区間に設けた」ものであり、下り傾斜面の上端部に「位置」するときがあるのに対し、引用発明は、上端傾斜面19であり、円柱軸12の外周方向の一部の区間に設けたものではなく、また、下端傾斜面20に全面重なり合う状態があるものの、下端傾斜面20の上端部に位置するときがあるとはいえない点。

<相違点2>

当接部が左右の縁部の下り傾斜面の上端部に当接するとき、及びアームの自重で当接部に対して軸受け部の下り傾斜面が下ってアームが元の位置に戻るときにおけるアームの所定の方向について、本願発明は、「前後方向」であるのに対し、引用発明は、斜前方である点。

2 判断

(1)相違点について

以下、<相違点1>及び<相違点2>について検討する。

ア <相違点1>について

(ア)引用発明は、「商品を回動自在に吊り下げ保持すると共に、回動変位後に元の位置へ自動的に復帰し、常に整列状態が得られる吊り掛け具を提供する」ことを課題としており(第4 1(1)イ参照)、その課題を解決する手段として「下端傾斜面20」と「上端傾斜面19」とを備えることにより、「吊り掛け部15をフリーにすると、上部パイプ14は自重によって下端傾斜面20の下端部20aが支持パイプ13の上端傾斜面19上を傾斜下り側に滑り、これによって上部パイプ14は回動しながら下降し、下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態で上部パイプ14は停止」する作用を奏するものである。すなわち、「下端傾斜面20」と「上端傾斜面19」からなるカム機構を用いて、自重により元の位置に戻るように回動自在かつ上下動自在としたものと解される。

(イ)また、軸受け部側又は軸側の一方が他方に対して自重で元の位置に戻るように回動自在、かつ上下動自在である、環状の傾斜面を利用したカム機構において、環状の傾斜面と当接する部分も環状に設けること、及びこの当接する部分を環状の一部の区間にのみ設けることは、それぞれ本願の優先日前に周知の技術的事項であったものである(例えば、前者については、引用文献2(前記第4 2(2))、後者については、引用文献3(前記第4 3(2))、引用文献4(前記第4 4(2))参照。以下、「周知技術」という。)。

(ウ)そして、この周知技術を知る当業者であれば、引用発明の機構が前記(ア)の作用を奏する上で、下端傾斜面20における少なくとも一部(下端部20a等)が上端傾斜面19上を滑動すること、あるいは下端傾斜面20が、上端傾斜面19の少なくとも一部(上端部等)上を滑動すれば足りることを把握できるから、材料コストの低減、軽量化等を考慮の上、下端傾斜面20上の一部(下端部20a等)のみを残し、上端傾斜面19上を滑動させること、あるいは上端傾斜面19の一部(上端部等)のみを残し、その上に下端傾斜面20を滑動させることは容易に想到できたといえる。

(エ)また、前記(ウ)に示した2つの態様のうち、後者を採用するとともに、上端傾斜面19の一部として、取付金具16と円柱軸12との固定にも寄与する上端部近傍の区間を残し、本願発明の相違点1に係る構成とすることに格別の困難性はない。

イ <相違点2>について

(ア)引用発明の吊り掛け部15は、斜前方を向くとき、側方を向いた状態に対して相対的に前後方向を向いているといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に相違するとしても、引用発明は、引用文献1の第9図に示される従来例(前記第4 1(1)イ及びカ参照)と同様、商品を正面から見て傾斜状の配置で吊り下げるため、商品の正面から見た幅は狭くなり、その分だけ並列間隔を狭くできるので陳列棚の一列当りの陳列点数を多くできるものと解され、上部パイプ14の下端傾斜面20が支持パイプ13の上端傾斜面19に全面重なり合う状態における吊り掛け部15の方向は、所望の並列間隔と商品の見やすさに応じて決定されるものといえる。してみれば、引用発明において、当該方向を前後方向とし、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(2)本願発明の作用効果について

本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)審判請求人の主張について

審判請求人は、令和6年2月19日に提出した意見書の【意見の内容】4.(2)(イ)~(オ)において、「本願発明は構成Cにより、当接部50は、軸の外周方向の一部の区間であり基部110と軸40との間に形成するだけでよいので、簡単な構成とすることができ、製造も容易です。また、使用する材料を少なくすることができるため、材料費と全体重量の軽減を図ることができます。」、「これに対し、引用文献1の支持パイプ13は、円柱軸12の外周方向の全部の区間に形成された断面円形状のパイプであり、構成Cの「基部と軸との間に位置し軸の外周方向の一部の区間に設けた」ものではないことは明らかです。」、「そして、引用文献1が、構成Cの当接部を開示していない以上、その当接部を用いてアームの自重でアームを元に戻す構成Dに想到することもできません。引用文献1の支持パイプ13は、円柱軸12を取り囲むように形成されていることから、使用する材料が多く、材料費の増大化と重量化を伴います。」、「このように、請求項2に係る発明は、引用文献1に何ら開示も示唆もされていない構成C及び構成Dを有しているため、引用文献1と同一ではなく、引用文献1から容易に発明できたものでもなく、新規性及び進歩性を有しております。」と主張している。

しかしながら、前記(1)ア(ウ)で述べたように、材料コストの低減、軽量化、すなわち材料費と全体重量の軽減を図ることは、当業者ならば、当然、考慮する事項であり、引用発明の構成から、その作用・機能を奏する上で、必要な構成のみを抽出することは容易に想到できたことである。

したがって、審判請求人の前記主張は採用できない。

3 まとめ

そうすると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-019557

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