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特許拒絶査定不服審判

2022-016713

画像表示システム

審判番号
2022-016713
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-161467外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年10月19日
審決日
2023年11月15日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (G09G) / P18 .121-Z (G09G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-161467「画像表示システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月 5日出願公開、特開2020- 34742〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年8月30日の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和4年 4月26日付け:拒絶理由通知書

同年 6月20日 :意見書、手続補正書の提出

同年 7月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月26日 :原査定の謄本の送達)

同年10月19日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年10月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和4年10月19日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]

1 補正の内容

令和4年10月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正を含むものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和4年6月20日にされた手続補正後をいう。)の、請求項1の記載を引用する請求項7が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項1及び請求項7

「【請求項1】
行列状に複数配置されることで画像表示装置群を構成する画像表示装置であって、
前記画像表示装置群における前記画像表示装置の配置位置を検出する位置検出回路と、
前記位置検出回路にて検出した前記配置位置に基づき、前記画像表示装置に入力された映像情報の中から前記画像表示装置にて表示すべき映像情報を決定する映像情報決定回路と、
続きを表示(全12行)
複数の表示素子を有し、前記映像情報決定回路にて決定した映像情報を表示する表示回路と、
前記映像情報の入力または出力を行うための4つのコネクタと、
を備え、
前記画像表示装置は、映像表示側から見た場合に長方形状であり、
前記コネクタは、長方形状の前記画像表示装置の2つの長辺および2つの短辺のそれぞれに対応して設けられ、
一方の前記長辺に対応するコネクタおよび一方の前記短辺に対応するコネクタには、前記映像情報が入力可能であり、
他方の前記長辺に対応するコネクタおよび他方の前記短辺に対応するコネクタからは、前記映像情報が出力可能である
画像表示装置。」
「【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の画像表示装置が行列状に複数配置されることで構成された画像表示装置群と、
前記画像表示装置群にて表示すべき映像情報を複数配置された画像表示装置のうちの1つの画像表示装置に送信する映像送信装置と
を備える画像表示システム。」

(2) 本件補正後の請求項1

「【請求項1】
画像表示装置が行列状に複数配置されることで構成された画像表示装置群と、
前記画像表示装置群にて表示すべき映像情報を複数配置された画像表示装置のうちの1つの画像表示装置に送信する映像送信装置と、
を備える画像表示システムであって、
続きを表示(全18行)
複数の前記画像表示装置のそれぞれは、
前記画像表示装置群における前記画像表示装置の配置位置を検出する位置検出回路と、
前記位置検出回路にて検出した前記配置位置に基づき、前記画像表示装置に入力された映像情報の中から前記画像表示装置にて表示すべき映像情報を決定する映像情報決定回路と、
複数の表示素子を有し、前記映像情報決定回路にて決定した映像情報を表示する表示回路と、
前記映像情報の入力または出力を行うための4つのコネクタと、
を備え、
前記画像表示装置は、映像表示側から見た場合に長方形状であり、
前記コネクタは、長方形状の前記画像表示装置の2つの長辺および2つの短辺のそれぞれに対応して設けられ、
一方の前記長辺に対応するコネクタおよび一方の前記短辺に対応するコネクタには、前記映像情報が入力可能であり、
他方の前記長辺に対応するコネクタおよび他方の前記短辺に対応するコネクタからは、前記映像情報が出力可能であり、
前記映像送信装置から送信された前記映像情報は、
(1)前記1つの画像表示装置を起点として1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに順に転送される、または、
(2)前記1つの画像表示装置を起点として1列目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1列目に配置された複数の画像表示装置から、前記1列目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して行方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ行ごとに順に転送される
画像表示システム。」

2 補正の目的

本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項7に対応し、実質的に本件補正前の請求項7に記載された「映像送信装置」から送信された「映像情報」について、

「(1)前記1つの画像表示装置を起点として1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに順に転送される、または、
(2)前記1つの画像表示装置を起点として1列目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1列目に配置された複数の画像表示装置から、前記1列目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して行方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ行ごとに順に転送される」

ものに限定するものである。

そして、本件補正前の請求項7に記載された発明のうち請求項1の記載を引用する部分の発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

3 独立特許要件の判断

前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

(1) 本件補正発明

本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 各引用文献に記載された事項並びに引用発明及び周知技術の認定

ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定

(ア) 引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2009-271424号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体によるものであり、以下同様である。

a 【0001】

「【技術分野】
【0001】
複数のディスプレイ装置を用いて1つの映像を拡大表示するマルチディスプレイシステムおよびマルチディスプレイ表示方法に関する。」

b 【0019】、【0020】、【図1】、【図2】

「【0019】
本発明の第1の実施例にかかるマルチディスプレイシステム1を図1乃至図8を参照して説明する。本発明の第1の実施例にかかるマルチディスプレイシステム1は、図1に示すように、ディスプレイ装置21、ディスプレイ装置22、ディスプレイ装置23、ディスプレイ装置24、ディスプレイ装置25、ディスプレイ装置26、ディスプレイ装置27、ディスプレイ装置28、ディスプレイ装置29(以降、ディスプレイ装置21~29と略す)の9つのディスプレイ装置から構成されており、図1に示すように3行3列のマトリクスに配置されている。
【0020】
ディスプレイ装置21~29は、図2に示すようにディスプレイ装置21、ディスプレイ装置22、ディスプレイ装置23、ディスプレイ装置26、ディスプレイ装置25、ディスプレイ装置24、ディスプレイ装置27、ディスプレイ装置28、ディスプレイ装置29の順にマトリクスとして配置した際にジグザグになるように直列接続されており、外部から入力された映像信号がディスプレイ装置21から接続順に各ディスプレイ装置に同じ映像が伝送される。」
「【図1】
[図:0001406350000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001406350000002.jpg]
」

c 【0021】~【0030】、【図3】

「【0021】
次に、ディスプレイ装置21~29の内部ブロック構成を図3を参照して説明する。図3ではディスプレイ装置21を示すが他のディスプレイ装置も同様である。ディスプレイ装置21は、映像入力2aと、映像処理部2bと、表示部2cと、ディスプレイマイコン2dと、配置方向センサ上2eと、配置方向センサ下2fと、配置方向センサ右2gと、配置方向センサ左2hと、バッファ2iと、映像出力2jと、制御入出力A2kと制御入出力B2mと、を備えている。
【0022】
映像入力手段としての映像入力2aは、外部または隣接するディスプレイ装置(接続順で前のディスプレイ装置)の映像出力2jから映像信号が入力される端子であり、映像入力2aに入力された映像信号は映像処理部2bおよびバッファ2iに入力される。
続きを表示(全20行)
【0023】
切り出し手段としての映像処理部2bは、映像入力2aから入力された映像信号から、後述するディスプレイマイコン2dの指示する領域を切り出して表示部2cに出力する。
【0024】
表示手段としての表示部2cは、例えば液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどで構成され、映像処理部2bから入力された切り出された映像を液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの解像度に合わせて拡大して画面一杯に表示する。
【0025】
配置番号取得手段、全体個数取得手段、終端認識手段、配置位置特定手段、全体個数出力手段、行列数取得手段、行列数算出手段としてのディスプレイマイコン2dは、CPUやメモリを内蔵したマイクロコンピュータである。ディスプレイマイコン2dは、制御入出力A2kから入力される配置番号を自身の配置番号とし、自身の配置番号をインクリメントして制御入出力B2mから出力する。つまり、この配置番号は先頭からの接続順における順番を示す番号である。さらに、配置方向センサ上2e、配置方向センサ下2f、配置方向センサ右2g、配置方向センサ左2h、の検出結果と、ディスプレイ装置21~29の全体個数と自身の配置番号と予め設定された行数、列数およびマトリクスのどの位置が先頭でどういうジグザグの接続になっているかといった接続順(接続方法)から自身の配置位置を特定し、映像処理部2bに切り出す領域の指示を行う。
【0026】
行終端検出手段、検出手段としての配置方向センサ上2e、配置方向センサ下2f、配置方向センサ右2g、配置方向センサ左2hは、接触センサや測距センサまたは接点スイッチなどから構成され、ディスプレイ装置21~29の側面にそれぞれ配置されている。つまり、配置方向センサ上2eはディスプレイ装置21~29の上側の側面に、配置方向センサ下2fはディスプレイ装置21~29の下側の側面に、配置方向センサ右2gはディスプレイ装置21~29の右側の側面に、配置方向センサ左2hはディスプレイ装置21~29の左側の側面に、それぞれ配置されている。そして、これらの配置方向センサは、各センサが配置された側面に、隣接するディスプレイ装置が存在するか否かを検出している。
【0027】
バッファ2iは映像入力2aから入力された映像信号の波形を整形し映像出力2jから隣接するディスプレイ装置(接続順の次のディスプレイ装置)に出力する。
【0028】
映像出力手段としての映像出力2jは、隣接するディスプレイ装置に映像信号を出力する端子である。但し、ディスプレイ装置29は終端であるため何も接続されない。
【0029】
制御入出力A2kは隣接するディスプレイ装置(接続順の前のディスプレイ装置)から配置番号が入力されるとともに、ディスプレイ装置21~29の全体個数を隣接するディスプレイ装置に出力する。制御入出力A2kが接続される隣接するディスプレイ装置は映像入力2aが接続されているディスプレイ装置と同じディスプレイ装置である。したがって、先頭であるディスプレイ装置21の制御入出力A2kには何も接続されない。
【0030】
制御入出力B2mは自身の配置番号インクリメントした値を隣接するディスプレイ装置(接続順の次のディスプレイ装置)に出力するとともに、隣接するディスプレイ装置からディスプレイ装置21~29の全体個数が入力される。制御入出力B2mが接続される隣接するディスプレイ装置は映像出力2jが接続されているディスプレイ装置と同じディスプレイ装置である。したがって、終端であるディスプレイ装置29の制御入出力B2mには何も接続されない。」
「【図3】
[図:0001406350000003.jpg]
」

d 【0031】~【0042】、【図4】

「【0031】
次に、ディスプレイ装置21~29における配置位置の特定および映像の切り出し動作を図4のフローチャートを参照して説明する。図4のフローチャートはディスプレイ装置21~29の各ディスプレイマイコン2dにおいて実行される。本実施例においては、マトリクスの行数および列数や、接続順(左上を先頭として、行を右に進んで右端で1行下がって、行を左に進んで、1行下がるということを繰り返すジグザグ接続方法となっている)は予め各ディスプレイ装置21~29の各ディスプレイマイコン2dに設定されている。
【0032】
まず、ステップS101において、自身が先頭のディスプレイ装置か否かを判断し、先頭のディスプレイ装置である場合(YESの場合)は、ステップS102に進み、先頭のディスプレイ装置でない場合(NOの場合)はステップS103に進む。先頭のディスプレイ装置であることは、制御入出力A2kに何も接続されていないことで判断してもよいし、先頭とするディスプレイ装置の位置(図2の場合画面の左上)であるか否かを配置位置センサ上2e~2hの検出結果に基づいて判断してもよい。
続きを表示(全24行)
【0033】
次に、ステップS102において、自身が先頭のディスプレイ装置であると判明したため自身の配置番号を1に設定してステップS104に進む。
【0034】
ステップS103においては、2番目以降に接続されたディスプレイ装置であると判明したので接続順における前のディスプレイ装置から配置番号を取得し、その配置番号を自身の配置番号に設定してステップS104に進む。
【0035】
次に、ステップS104において、接続順における次のディスプレイ装置に映像信号を出力可能か、つまり、自身の映像出力2jと接続順における次のディスプレイ装置の映像入力2aとが接続されているか否かを判断し、出力可能な場合(接続順における次のディスプレイ装置が接続されている場合)はステップS105に進み、出力可能でない場合(接続順における次のディスプレイ装置が接続されていない場合)は、ステップS109に進む。また、映像出力2jと映像入力2aとの接続関係だけでなく、制御入出力A2kと制御入出力B2mとが接続されているか否かで判断してもよい。
【0036】
次に、ステップS105において、自身の配置番号をインクリメントして接続順における次のディスプレイ装置に出力しステップS106に進む。
【0037】
次に、ステップS106において、ディスプレイ装置21~29の全体個数を接続順における次のディスプレイ装置から取得してステップS107に進む。
【0038】
次に、ステップS107において、自身が先頭のディスプレイ装置か否かを判断し、先頭のディスプレイ装置である場合(YESの場合)は、ステップS111に進み、先頭のディスプレイ装置でない場合(NOの場合)はステップS108に進む。先頭のディスプレイ装置であることは、ステップS101と同様に判断すればよい。
【0039】
次に、ステップS108において、ディスプレイ装置21~29の全体個数を接続順における前のディスプレイ装置に出力してステップS111に進む。
【0040】
ステップS109においては、接続順における次のディスプレイ装置に映像信号を出力可能でない、つまり、接続順における次のディスプレイ装置が接続されていないので、終端のディスプレイ装置と判断してステップS110に進む。
【0041】
次に、ステップS110において、自身の配置番号をディスプレイ装置21~29の全体個数として接続順における前のディスプレイ装置に出力しステップS111に進む。
【0042】
次に、ステップS111において、切り出し領域を特定して終了する。切り出し領域の特定は、予め定められているマトリクスの行数および列数、接続順と、自身の配置番号およびディスプレイ装置21~29の全体個数に基づいて自身の配置位置を特定し、その位置に対応した領域を切り出す。例えば、図2の場合、マトリクスは3行3列でディスプレイ装置21~29の全体個数が9である。このうちディスプレイ装置21は先頭なのでマトリクスにおいては左上が配置位置と特定され、映像は、映像の水平方向を3分割、映像の垂直方向を3分割した9つの領域の左上に相当する領域を切り出して表示する。ディスプレイ装置25は3行3列の5番目なのでマトリクスにおいては中央が配置位置と特定され、映像は、前記9つの領域の中央に相当する領域を切り出して表示する。ディスプレイ装置29の場合は3行3列の終端なのでマトリクスにおいては右下が配置位置と特定され、映像は、前記9つの領域の右下に相当する領域を切り出して表示する。」
「【図4】
[図:0001406350000004.jpg]
」

e 【0043】~【0045】

「【0043】
本実施例によれば、マトリクス状に配置されたマルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイ装置を直列に接続し、予めマトリクスの配置の行数および列数と、接続順を設定する。そして、先頭のディスプレイ装置で配置番号を1に設定してインクリメントした値を接続順における次のディスプレイ装置に出力し、以降、接続順に前のディスプレイ装置から配置番号を取得してインクリメントした値を接続順における次のディスプレイ装置に出力していき、終端のディスプレイ装置は、自身の配置番号をディスプレイ装置21~29の全体個数として接続順における前のディスプレイに出力して、そのディスプレイ装置21~29の全体個数が順次接続順を遡って各ディスプレイ装置に伝達される。各ディスプレイ装置では、マトリクスの行数および列数と、接続順と、配置番号と、ディスプレイ装置21~29の全体個数から入力された映像のうち自身が切り出して表示すべき切り出し領域を特定する。以上のような動作を行っているので、自動的に表示位置を設定することができると共に、配置位置(切り出し位置)の特定処理を簡単にすることができる。
【0044】
また、映像出力2jに接続順における次のディスプレイ装置が接続されていないことによって自身が終端であることを判断しているので、映像出力2j(若しくは制御入出力B2m)の接続または未接続を検出するだけで自身が終端であるか否かを認識することができる。
【0045】
また、配置方向センサ上2e、配置方向センサ下2f、配置方向センサ右2g、配置方向センサ左2hが、ディスプレイ装置21~29の側面に設けられているので、ディスプレイ装置21~29の側面に接触または近くに接近して配置されていることを検出することができ、それによって隣接するディスプレイ装置の有無を検出して先頭や終端のディスプレイ装置を特定することができる。同様に行端に位置するディスプレイ装置と特定することができる。」

(イ) 引用発明の認定

a(a) 引用文献1の段落【0020】には、「ディスプレイ装置21~29は、マトリクスとして配置した際にジグザグになるように直列接続されており、外部から入力された映像信号がディスプレイ装置21から接続順に各ディスプレイ装置に同じ映像が伝送される」と記載されている。

(b) 当該記載から、引用文献1に記載された発明の「マルチディスプレイシステム1」に、ディスプレイ装置21に映像信号を入力する外部の装置が接続されて、一つのシステムを構成していることが読み取れる。

b 引用文献1の【図1】から、ディスプレイ装置21~29が、映像表示側から見た場合に長方形状であることが読み取れる。

c 前記(ア)の記載事項及び前記a及びbの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>

「複数のディスプレイ装置を用いて1つの映像を拡大表示するマルチディスプレイシステムと、ディスプレイ装置21に映像信号を入力する外部の装置とを含むシステムであって、(【0001】、前記aの認定事項)
マルチディスプレイシステム1は、映像表示側から見た場合に長方形状であるディスプレイ装置21~29の9つのディスプレイ装置が3行3列のマトリクスに配置されて構成されており、(【0019】、前記bの認定事項)
ディスプレイ装置21~29は、マトリクスとして配置した際にジグザグになるように直列接続されており、外部から入力された映像信号がディスプレイ装置21から接続順に各ディスプレイ装置に同じ映像が伝送され、(【0020】)
ディスプレイ装置21~29は、映像入力2aと、映像処理部2bと、表示部2cと、ディスプレイマイコン2dと、配置方向センサ上2eと、配置方向センサ下2fと、配置方向センサ右2gと、配置方向センサ左2hと、バッファ2iと、映像出力2jと、制御入出力A2kと制御入出力B2mと、を備え、(【0021】)
続きを表示(全12行)
映像入力手段としての映像入力2aは、外部または隣接するディスプレイ装置(接続順で前のディスプレイ装置)の映像出力2jから映像信号が入力される端子であり、映像入力2aに入力された映像信号は映像処理部2bおよびバッファ2iに入力され、(【0022】)
切り出し手段としての映像処理部2bは、映像入力2aから入力された映像信号から、ディスプレイマイコン2dの指示する領域を切り出して表示部2cに出力し、(【0023】)
表示手段としての表示部2cは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどで構成され、映像処理部2bから入力された切り出された映像を液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの解像度に合わせて拡大して画面一杯に表示し、(【0024】)
ディスプレイマイコン2dは、制御入出力A2kから入力される配置番号を自身の配置番号とし、自身の配置番号をインクリメントして制御入出力B2mから出力し、さらに、配置方向センサ上2e、配置方向センサ下2f、配置方向センサ右2g、配置方向センサ左2h、の検出結果と、ディスプレイ装置21~29の全体個数と自身の配置番号と予め設定された行数、列数およびマトリクスのどの位置が先頭でどういうジグザグの接続になっているかといった接続順(接続方法)から自身の配置位置を特定し、映像処理部2bに切り出す領域の指示を行い、(【0025】)
これらの配置方向センサは、各センサが配置された側面に、隣接するディスプレイ装置が存在するか否かを検出し、(【0026】)
バッファ2iは映像入力2aから入力された映像信号の波形を整形し映像出力2jから隣接するディスプレイ装置(接続順の次のディスプレイ装置)に出力し、(【0027】)
映像出力手段としての映像出力2jは、隣接するディスプレイ装置に映像信号を出力する端子である、(【0028】)
システム。」

イ 引用文献2及び4に記載された事項と周知技術の認定

(ア) 引用文献2に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2009-186539号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 【0013】、【図1】

「【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る表示システム1の概略構成を示す図である。
表示システム1は、表示ユニットとしてのマスタパネルユニット2及びパネルユニット3をつなげて構成され、一つの表示画面として機能する表示装置10と、通信線11を介して表示装置10に接続されたホストコンピュータ4とを含んで構成される。
表示装置10は、少なくとも一つのマスタパネルユニット2と、1以上のパネルユニット3とを連結して構成され、本実施形態では、一つのマスタパネルユニット2と8つのパネルユニット3とを縦3列×横3列に並べて連結し、矩形の表示装置10を構成する場合を例に挙げる。
なお、以下の説明において、マスタパネルユニット2とパネルユニット3を特に区別しない場合は、表示ユニット5と表すものとする。」
「【図1】
[図:0001406350000005.jpg]
」

b 【0014】、【0015】、【図2】

「【0014】
図2は、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の構成を示す外観図であり、図2(A)はマスタパネルユニット2の構成を示し、図2(B)はパネルユニット3の構成を示し、図2(C)はマスタパネルユニット2とパネルユニット3との連結部分の構成を示す。
図2(A)に示すように、マスタパネルユニット2は、矩形の表示パネル27を、この表示パネル27とほぼ同サイズの矩形の筐体28に収めたものであり、マスタパネルユニット2の表面は、ほぼ全体が表示パネル27で覆われる。また、パネルユニット3は、図2(B)に示すように、矩形の表示パネル37を、表示パネル37とほぼ同サイズの矩形の筐体38に収めたものであり、パネルユニット3の表面は、ほぼ全体が表示パネル37で覆われる。筐体28と筐体38の外形形状及びサイズは揃えられているので、マスタパネルユニット2とパネルユニット3とを縦横方向に並べて連結できる。
【0015】
また、図2(A)~(B)に示すように、マスタパネルユニット2は、それぞれ上下左右の各辺の方向を向けて配設された4つのインタフェース26を備えている。パネルユニット3も同様に、それぞれ上下左右の各辺の方向を向けて配設された4つのインタフェース35(接続部)を備えている。マスタパネルユニット2とパネルユニット3とが隣り合う場合は、インタフェース26とインタフェース35とが接続され、パネルユニット3どうしが隣り合う場合はインタフェース35どうしが接続される。
インタフェース26及びインタフェース35の具体的な構成としては、例えば図2(C)に拡大して示すように、凹部と凸部とが並ぶコネクタを備え、対向するコネクタを噛み合わせることで後述するデータバス等が相互に接続される構成が挙げられる。図2(C)の例ではインタフェース26、35が備えるコネクタは同一形状であり、その向きに対して右側に凹部、左側に凸部が位置するよう配設されているので、向かい合うコネクタどうしの凹部と凸部とが常に対向する。図2(C)にはインタフェース26、35を接続する例を示したが、インタフェース35どうしを接続する場合も全く同様である。」
「【図2】
[図:0001406350000006.jpg]
」

c 【0028】~【0033】、【図7】

「【0028】
図7は、表示装置10に画像を表示する処理を説明する図であり、図7(A)は表示装置10に画像を表示した状態を示し、図7(B)は表示用の画像データの送信状態を模式的に示す図である。
表示装置10において表示する画像の画像データは、ホストコンピュータ4が有するCPU41の処理により、表示ユニット5毎に生成される。例えば図7(A)に示すように、ホストコンピュータ4は、表示用の画像Pを、表示装置10を構成するパネルユニットの数に合わせて、例えば9個の部分に分割し、分割した部分毎に表示用の画像データを生成して送信する。これにより、分割された画像が各々のマスタパネルユニット2及びパネルユニット3により表示され、表示装置10全体を使って一つの画像Pが表示される。各画像データには、その画像データを表示するパネルユニットのIDが付加されている。
【0029】
続きを表示(全18行)
ここで、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3が実行する転送機能について説明する。表示装置10において、ホストコンピュータ4はマスタパネルユニット2にのみ接続されているので、マスタパネルユニット2から各パネルユニット3へ画像データを送信したり、パネルユニット3からホストコンピュータ4へ制御情報を送信したりする場合、制御情報や画像データ等を、マスタパネルユニット2やパネルユニット3によって中継(転送)する必要がある。そこで、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3は、制御情報や画像データ等を転送する機能を備えている。
マスタパネルユニット2は、ホストコンピュータ4から通信線11を介して制御情報や画像データ等を受信した場合、受信した制御情報や画像データ等に宛先として付加されたIDを参照する。そして、宛先のIDが自己のIDであれば、この制御情報や画像データをRAM23に一時的に格納し、CPU21によって処理を行い、例えば、受信した画像データに基づく描画処理を実行して表示パネルに画像を表示する。
【0030】
一方、通信線11を介して受信した制御情報や画像データ等に宛先として付加されたIDが自己のIDでない場合、マスタパネルユニット2は、パネルユニット3が接続されている全てのインタフェース26から、上記の制御情報や画像データ等を出力する。
なお、マスタパネルユニット2が、パネルユニット3に付与されているIDと、そのIDを有するパネルユニット3がどのインタフェース26の側に接続されているかを対応づける情報を有しており、パネルユニット3に転送すべき制御情報や画像データ等を受信した場合に、その制御情報や画像データ等を、どのインタフェース26から出力すべきかを特定できるようにしてもよい。
【0031】
パネルユニット3は、いずれかのインタフェース35から入力された制御情報や画像データ等を転送する機能を有する。パネルユニット3は、4つのインタフェース35のうち、マスタパネルユニット2に直接又は他のパネルユニット3を介して接続されたインタフェース35と、次のIDを有するパネルユニット3に接続されたインタフェース35とを特定する情報を、不揮発性メモリ24に記憶している。
いずれかのインタフェース35から制御情報や画像データ等が入力された場合、パネルユニット3は、その宛先のIDを判別する。そして、このIDがマスタパネルユニット2に特有のID(例えば、16進数のFF)であれば、入力された制御情報や画像データ等を、マスタパネルユニット2に接続されたインタフェース35から出力する。
また、宛先のIDが自己以外のパネルユニット3のIDであった場合、パネルユニット3は、入力された制御情報や画像データ等を、次のIDを有するパネルユニット3に接続されたインタフェース35から出力する。入力された制御情報や画像データ等の宛先のIDが自己のIDと一致した場合、パネルユニット3は、入力された制御情報や画像データ等をRAM33に格納して、CPU31によって処理する。
【0032】
このようにして、ホストコンピュータ4からパネルユニット3へ宛てて送信された制御情報や画像データ等は、図7(B)に示すように、マスタパネルユニット2からパネルユニット3へ転送され、IDの順に各々のパネルユニット3により転送され、宛先のパネルユニット3へ届く。また、パネルユニット3からホストコンピュータ4又はマスタパネルユニット2へ宛てて送信された制御情報等は、IDの順とは逆の順で各々のパネルユニット3により転送され、マスタパネルユニット2により受信される。
なお、例えば図7(B)のパネルユニット3(ID=05)は、次のIDを有するパネルユニット3に接続されていない。このようなパネルユニット3は、初期設定動作時に転送先がないことが設定され、自己のIDとは異なる宛先が付加された制御情報や画像データは、転送せず全て破棄する。
【0033】
このように、表示装置10においては、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の間で制御情報や画像データを転送することで、ホストコンピュータ4とマスタパネルユニット2及びパネルユニット3が、個々に画像データや制御情報を送受信できる。この機能を用い、表示システム1においては、表示時におけるマスタパネルユニット2及びパネルユニット3の消費電流に基づいて、マスタパネルユニット2及びパネルユニット3の劣化状態を検出し、検出した劣化状態に基づいて各表示ユニット5が配置される配置場所Bとして適した配置場所Bを特定する機能を有している。」
「【図7】
[図:0001406350000007.jpg]
」

(イ) 引用文献4に記載された事項

当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2001-134254号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 【0019】~【0024】、【図3】、【図4】

「【0019】図3は、他の画像データ表示装置を接続する場合に、着脱できる(詳細構造は省略)上部コネクタカバー50、及び、下部コネクタカバー60を外した状態での表示画面300を図示している。
【0020】そして、図4で、左方に形成されている側面カバーを兼ねた操作部40を後方に180°擺動した状態で示している。
【0021】前記表示画面300の下方と右方に図示されている本体10の一部であるL形状100の左端先方位置は、表示画面300の左端位置より短くしてあって、他の画像データ表示装置との接続時、他機のL形状100の右端と干渉しない位置寸法にしてある。
【0022】前記L形状100上の右側には、雄コネクタ110、下側には、雌コネクタ120が配設されている。
【0023】そして、表示画面300の裏面側の上部にも雄コネクタ130、左側に雌コネクタ140が配設されている。
【0024】前記各コネクタは、同一の構成を有する他の画像データ表示装置との接続時に、当該画像データ表示装置の有する雄と雌のコネクタに嵌合させて、画像データ表示装置間の画像データの送信、及び、転送を可能とするものである。」
「【図3】
[図:0001406350000008.jpg]
」
「【図4】
[図:0001406350000009.jpg]
」

b 【0025】~【0028】、【図5】

「【0025】図5は、画像データ表示装置を4台接続した状態を示している。接続される各画像データ表示装置は上部コネクタカバー50、下部コネクタカバー60を本体10から外し、側面カバーを兼ねた操作部40を後方へ擺動した状態で、第1の画像データ表示装置における表示画面(図において左上に示される。以下、第1表示画面という)300の下端長辺と、第2の画像データ表示装置の表示画面(図において左下に示される。以下、第2表示画面という)300の上端長辺とを合わせながら、第1表示画面300のL形状100と第2表示画面300の裏面とを合掌状態で接続する。
【0026】他の2台の画像データ表示装置(図において右側の上下に示される)についても、ほぼ同様の取付で一体化がなされるが、詳細な説明は省略する。
【0027】前記のような接続作業を行って4台の画像データ表示装置の接続を行うことにより、各装置の表示画面間を密着することができ、各表示画面の表面も同一面となり、さらに、各画像データ表示装置間に分割(後述する)された画像に切れ目を作らずに、見よい画像を表示することができる。
【0028】前記接続時、第1表示画面300の雌コネクタ120と第2表示画面300の雄コネクタ110も結合されて、画像データ表示装置間の画像データの通信、及び、転送が可能となる。」
「【図5】
[図:0001406350000010.jpg]
」

(ウ) 周知技術の認定

前記引用文献2及び4に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる。

<周知技術>

「複数のディスプレイ装置を用いて一つの映像を表示するマルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイ装置の上下左右の箇所に四つのコネクタを設けて、当該コネクタを介してディスプレイ装置間を接続するとともに、当該コネクタを介して各ディスプレイ装置に映像信号を転送すること。」

(3) 対比

ア 対比分析

本件補正発明と引用発明を対比する。

(ア)a 引用発明の「複数のディスプレイ装置を用いて1つの映像を拡大表示するマルチディスプレイシステムと、ディスプレイ装置21に映像信号を入力する外部の装置とを含むシステム」が、画像を表示するシステムであることは明らかである。

b よって、本件補正発明と引用発明は、「画像表示システム」の発明である点において一致する。

(イ)a 引用発明の「ディスプレイ装置21~29」のそれぞれは、本件補正発明の「画像表示装置」に相当する。

b 引用発明の「マルチディスプレイ1」は、ディスプレイ装置21~29の9つのディスプレイ装置が3行3列のマトリクスに配置されて構成されているから、本件補正発明の「画像表示装置が行列状に複数配置されることで構成された画像表示装置群」に相当する。

c よって、本件補正発明と引用発明は、「画像表示装置が行列状に複数配置されることで構成された画像表示装置群」を備える点において一致する。

(ウ)a 引用発明の「ディスプレイ装置21に映像信号を入力する外部の装置」は、本件補正発明の「映像送信装置」に相当する。

b 引用発明において、外部から入力された映像信号がディスプレイ装置21から接続順に各ディスプレイ装置に同じ映像が伝送されているところ、この「外部から入力された映像信号」及び「ディスプレイ装置21」は、それぞれ本件補正発明の「画像表示装置群にて表示すべき映像情報」及び「複数配置された画像表示装置のうちの1つの画像表示装置」に相当する。

c よって、本件補正発明と引用発明は、「画像表示装置群にて表示すべき映像情報を複数配置された画像表示装置のうちの1つの画像表示装置に送信する映像送信装置」を備える点において一致する。

(エ)a 引用発明の「ディスプレイ装置21~29」がそれぞれ備える「ディスプレイマイコン2d」は、制御入出力A2kから入力される配置番号を自身の配置番号とし、自身の配置番号をインクリメントして制御入出力B2mから出力し、さらに、配置方向センサ上2e、配置方向センサ下2f、配置方向センサ右2g、配置方向センサ左2h、の検出結果と、ディスプレイ装置21~29の全体個数と自身の配置番号と予め設定された行数、列数およびマトリクスのどの位置が先頭でどういうジグザグの接続になっているかといった接続順(接続方法)から自身の配置位置を特定しているから、本件補正発明の「前記画像表示装置群における前記画像表示装置の配置位置を検出する位置検出回路」に相当する。

b よって、本件補正発明と引用発明は、「複数の前記画像表示装置のそれぞれ」が、「前記画像表示装置群における前記画像表示装置の配置位置を検出する位置検出回路」を備える点において一致する。

(オ)a 引用発明の「ディスプレイ装置21~29」がそれぞれ備える「映像処理部2b」は、映像入力2aから入力された映像信号から、ディスプレイマイコン2dの指示する領域を切り出して表示部2cに出力している。

b したがって、前記(エ)において示した、引用発明の「ディスプレイマイコン2d」が本件補正発明の「位置検出回路」に相当することも踏まえると、引用発明の「ディスプレイ装置21~29」がそれぞれ備える「映像処理部2b」は、本件補正発明の「前記位置検出回路にて検出した前記配置位置に基づき、前記画像表示装置に入力された映像情報の中から前記画像表示装置にて表示すべき映像情報を決定する映像情報決定回路」に相当する。

c よって、前記a及びbから、本件補正発明と引用発明は、「複数の前記画像表示装置のそれぞれ」が、「前記位置検出回路にて検出した前記配置位置に基づき、前記画像表示装置に入力された映像情報の中から前記画像表示装置にて表示すべき映像情報を決定する映像情報決定回路」を備える点において一致する。

(カ)a 引用発明の「ディスプレイ装置21~29」がそれぞれ備える「表示部2c」は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどで構成され、映像処理部2bから入力された切り出された映像を液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの解像度に合わせて拡大して画面一杯に表示するものである。

b したがって、前記(オ)において示した、引用発明の「映像処理部2b」が本件補正発明の「映像情報決定回路」に相当することも踏まえると、引用発明の「ディスプレイ装置21~29」がそれぞれ備える「表示部2c」は、本件補正発明の「複数の表示素子を有し、前記映像情報決定回路にて決定した映像情報を表示する表示回路」に相当する。

c よって、本件補正発明と引用発明は、「複数の前記画像表示装置のそれぞれ」が、「複数の表示素子を有し、前記映像情報決定回路にて決定した映像情報を表示する表示回路」を備える点において一致する。

(キ)a 引用発明の「映像入力2a」は、外部または隣接するディスプレイ装置(接続順で前のディスプレイ装置)の映像出力2jから映像信号が入力される端子であり、「映像出力2j」は、隣接するディスプレイ装置に映像信号を出力する端子である。

b 前記aを踏まえると、引用発明の「映像入力2a」及び「映像出力2j」と本件補正発明の「前記映像情報の入力または出力を行うための4つのコネクタ」は、「前記映像情報の入力または出力を行うための端子」という点において共通する。

c よって、本件補正発明と引用発明は、「複数の前記画像表示装置のそれぞれ」が、「前記映像情報の入力または出力を行うための端子」を備える点において共通する。

(ク) 引用発明の「ディスプレイ装置21~29」は、映像表示側から見た場合に長方形状であるから、本件補正発明と引用発明は、「前記画像表示装置は、映像表示側から見た場合に長方形状であ[る]」点において一致する。

イ 一致点及び相違点

前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。

(ア) 一致点

画像表示装置が行列状に複数配置されることで構成された画像表示装置群と、

前記画像表示装置群にて表示すべき映像情報を複数配置された画像表示装置のうちの1つの画像表示装置に送信する映像送信装置と、

を備える画像表示システムであって、

複数の前記画像表示装置のそれぞれは、

前記画像表示装置群における前記画像表示装置の配置位置を検出する位置検出回路と、

前記位置検出回路にて検出した前記配置位置に基づき、前記画像表示装置に入力された映像情報の中から前記画像表示装置にて表示すべき映像情報を決定する映像情報決定回路と、

複数の表示素子を有し、前記映像情報決定回路にて決定した映像情報を表示する表示回路と、

前記映像情報の入力または出力を行うための端子と、

を備え、

前記画像表示装置は、映像表示側から見た場合に長方形状である、

画像表示システム、である点。

(イ) 相違点

本件補正発明においては、

「複数の前記画像表示装置のそれぞれ」が備える「前記映像情報の入力または出力を行うための端子」が4つのコネクタであり、

「前記コネクタは、長方形状の前記画像表示装置の2つの長辺および2つの短辺のそれぞれに対応して設けられ、
一方の前記長辺に対応するコネクタおよび一方の前記短辺に対応するコネクタには、前記映像情報が入力可能であり、
他方の前記長辺に対応するコネクタおよび他方の前記短辺に対応するコネクタからは、前記映像情報が出力可能であり、」
「前記映像送信装置から送信された前記映像情報は、
(1)前記1つの画像表示装置を起点として1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに順に転送される、または、
(2)前記1つの画像表示装置を起点として1列目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1列目に配置された複数の画像表示装置から、前記1列目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して行方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ行ごとに順に転送される」

のに対して、

引用発明においては、

ディスプレイ装置21~29のそれぞれが備える、映像情報の入力または出力を行うための端子は、「映像入力2a」及び「映像出力2j」の2つの端子であり、

ディスプレイ装置21~29は、マトリクスとして配置した際にジグザグになるように直列接続されており、外部から入力された映像信号がディスプレイ装置21から接続順に各ディスプレイ装置に同じ映像が伝送されている点。

(4) 当審の判断

ア 相違点について

前記相違点について検討する。

(ア) 4つのコネクタについて

a 前記(2)イ(ウ)において周知技術として示したとおり、複数のディスプレイ装置を用いて一つの映像を表示するマルチディスプレイシステムにおいて、各ディスプレイ装置の上下左右の箇所に四つのコネクタを設けて、当該コネクタを介してディスプレイ装置間を接続するとともに、当該コネクタを介して映像信号を転送することは、本願出願前に周知である。

b よって、引用発明に前記周知技術を適用して、引用発明のディスプレイ装置21~29のそれぞれに対して、上下左右の箇所に四つのコネクタを設けて、当該コネクタを介してディスプレイ装置間を接続するとともに、当該コネクタを介して各ディスプレイ装置に映像信号を転送することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ) 映像情報の転送経路について

a 前記(ア)に示したとおり、引用発明において、ディスプレイ装置21~29のそれぞれに上下左右の四つのコネクタを設けて、当該コネクタを介して各ディスプレイ装置に映像信号を転送することは、当業者が容易に想到し得たことであるところ、その際、どのような経路で映像信号を転送するかは、当業者が適宜に定める設計事項にすぎない。

b 仮にそうでないとしても、後記cに示すとおり、引用発明において、映像信号を「1つの画像表示装置を起点として、1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに転送される」ことは、引用発明及び引用文献2の【0032】、【図7】(B)の記載から、当業者が容易に想到し得たものである。

c(a) すなわち、引用文献2の【0032】、【図7】(B)には、マスタパネルユニット2(ID=FF)から、パネルユニット3(ID=01)を介してパネルユニット3(ID=02)に画像データが転送される経路と、マスタパネルユニット2(ID=FF)から、パネルユニット3(ID=06)及びパネルユニット(ID=7)を介してパネルユニット3(ID=08)に画像データが転送される経路が示されている。

(b) ここで、前記(a)における、マスタパネルユニット2(ID=FF)が本件補正発明の「起点」となる「1つの画像表示装置」に相当し、パネルユニット3(ID=06)が、本件補正発明の「1行目に配置された」「画像表示装置」に相当する。そして、前記(a)における、パネルユニット3(ID=06)から、パネルユニット3(ID=07)を介してパネルユニット3(ID=08)に画像データが転送されることは、本件補正発明の「列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに転送される」ことに相当する。

(c) そして、引用文献2の【0032】、【図7】(B)に示された構成において、必要に応じて一行あたりのパネルユニットの数を増やし、その際にパネルユニット3(ID=06)、パネルユニット3(ID=07)、パネルユニット3(ID=08)の列方向に沿って配置された複数の画像表示装置への転送される順番に倣って、画像データが転送されるようにすること、すなわち、一つの画像表示装置を起点として、同じ行に配置された複数の画像表示装置に転送してから、列方向に沿って列ごとに転送することは、設計事項の範囲内のものにすぎない。

(ウ) 小括

したがって、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 総合検討

前記アにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 請求人の主張について

(ア) 主張1(映像信号の転送時間の短縮について)

a 請求人の主張1の主張内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。

本件補正発明は、「前記映像送信装置から送信された前記映像情報は、(1)前記1つの画像表示装置を起点として1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに順に転送される」という構成を有しているため、映像情報を列ごとに並列に転送することができる。これにより、画像表示システムの全体における映像情報の転送時間を短くすることができる。または、本件補正発明は、「(2)前記1つの画像表示装置を起点として1列目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1列目に配置された複数の画像表示装置から、前記1列目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して行方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ行ごとに順に転送される」という構成を有しているため、映像情報を行ごとに並列に転送することができる。これにより、画像表示システムの全体における映像情報の転送時間を短くすることができる。

本件補正発明と引用発明とでは、上記のように明らかな構成の違いがあり、引用文献1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1の特徴を有する請求項2-7についても同様のことがいえる。

b 請求人の主張1についての検討

折りたたみ中(クリックで表示)

(a) 前記ア(イ)において示したとおり、各ディスプレイ装置に映像信号を転送する際に、どのような経路で映像信号を転送するかは、当業者が適宜に定める設計事項にすぎない。仮にそうでないとしても、一つの画像表示装置を起点として、同じ行に配置された複数の画像表示装置に転送してから、列方向に沿って列ごとに転送することは、引用文献2の【0032】、【図7】(B)に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たことである。

(b) また、映像信号の転送時間についても、前記転送時間は、当業者が前記経路を定めた際に、各経路に接続される画像表示装置の数から容易に予測し得るものであって、前記(a)の経路とした際に、転送時間が短くなる効果を奏することについても、予測し得ない格別顕著な効果であるとは認められない。

よって、請求人の主張1は採用できない。

(イ) 主張2(画像表示装置群における配置位置検出時間の短縮について)

a 請求人の主張2の主張内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。

本件補正発明では、図3の(b)から(a)のように、または、図3の(b)から(c)のように画像表示システムの行列数を変えて、リサイズする時間を短縮することができる。例えば、画像表示システムにおける画像表示装置の行列数が変更された場合であっても、列方向に沿って配置された複数の画像表示装置の複数列の並列処理によって、又は、行方向に沿って配置された複数の画像表示装置の複数行の並列処理によって、画像表示装置群における自身の配置位置を短時間で検出できるので、リサイズの開始から終了までにかかる時間を短縮することができる。

したがって本件補正発明は、引用文献1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、請求項1の特徴を有する請求項2-7についても同様のことがいえる。

【図3】

[図:0001406350000011.jpg]

b 請求人の主張2についての検討

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、画像表示装置群における自身の配置位置を短時間で検出できる効果について主張しているところ、前記効果は、本件補正後の請求項3に係る発明、及び、本願明細書の【0034】~【0039】に記載された構成において奏する効果であると認められ、本件補正発明においては、映像信号の転送経路については特定されているが、自身の配置位置を検出するためのデータ信号の経路については特定されていないから、当該主張は、本件補正発明の構成に基づくものではない。

よって、請求人の主張2は採用できない。

(ウ) 小括

したがって、請求人の主張1及び2はいずれも採用できず、前記イの結論を左右するものではない。

(5) 独立特許要件についてのまとめ

以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 本件補正の適否についてのまとめ

前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項7のうち請求項1の記載を引用するものに係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年6月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項のうち請求項1の記載を引用するもの(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

理由2(進歩性の欠如)

本願発明は、本願の出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>

1.特開2009-271424号公報(主たる引用文献)

2.特開2009-186539号公報(周知技術を示す文献)

3.特開2003-280624号公報(周知技術を示す文献)

3 各引用文献に記載された事項並びに引用発明及び周知技術の認定

引用文献1、2及び4に記載された事項並びに引用発明及び周知技術の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は実質的に、本件補正発明の構成から、

「前記映像送信装置から送信された前記映像情報は、
(1)前記1つの画像表示装置を起点として1行目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1行目に配置された複数の画像表示装置から、前記1行目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して列方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ列ごとに順に転送される、または、
(2)前記1つの画像表示装置を起点として1列目に配置された複数の画像表示装置へ順に転送され、前記1列目に配置された複数の画像表示装置から、前記1列目に配置された複数の画像表示装置のそれぞれに対して行方向に沿って配置された複数の画像表示装置へ行ごとに順に転送される」

という限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)、(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-016713

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