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特許拒絶査定不服審判

2022-016391

武装した複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス

審判番号
2022-016391
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-555425外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年10月13日
審決日
2025年02月03日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-555425「武装した複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/118967、令和 2年 2月13日特許出願公表、特表2020-504767〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年(平成29年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月21日 米国、2017年11月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 (日付は、当審合議体による起案を除き、書類の受付日である。) 令和元年8月21日 :翻訳文提出 令和元年9月26日 :手続補正書の提出 令和3年10月28日付け :拒絶理由通知 令和4年5月9日 :意見書の提出 令和4年6月7日付け :拒絶査定 令和4年10月13日 :審判請求書の提出 令和6年6月25日付け :拒絶理由通知 令和6年10月2日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という) 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 がんの治療に使用するための組成物であって、 アデノウイルスゲノムの非必須領域に挿入された異種核酸を含有する複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルスを含み、 前記核酸が、転写制御エレメントに作動可能に連結するCD40アゴニストをコードする配列を含み、 前記複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルスが、Delta-24-RGDアデノウイルスであり、 前記転写制御エレメントに作動可能に連結する前記CD40アゴニストをコードする配列を含む前記核酸が、E3遺伝子領域に挿入され、前記E3遺伝子は一部または全部が欠失され、 前記CD40アゴニストが、ISF35(MEM40)(配列番号6に示される核酸配列でコードされるタンパク質)であるCD40リガンド(CD40L)である ことを特徴とするがんの治療に使用するための組成物。」 第3 拒絶の理由 令和6年6月25日付けの拒絶理由通知書で当審が通知した拒絶理由のうち理由2は、概略、次のとおりのものである。 (進歩性) この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献6に記載された発明及び引用文献1,3,6に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2015/077624号 3.Viruses, 2015, Vol.7, pp.5780-5791 6.特表2005-537785号公報 第4 当審の判断 1.引用文献の記載事項 (1) 引用文献6の記載事項 当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に発行された引用文献6(特表2005-537785号公報)には、以下の記載がある(下線は当審合議体が付した。以下、他の箇所で引用文献について記載する場合も同様である。)。 ア 【請求項1】 「【請求項1】 キメラCD154をコードする単離ポリヌクレオチド配列であって、ヒトCD154の切断部位を置換する非ヒトCD154細胞外サブドメインをコードする第1のヌクレオチド配列と、ヒトCD154受容体に結合するヒトCD154細胞外サブドメインをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む単離ポリヌクレオチド配列。」 イ 【請求項15】 「【請求項15】 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12からなる群から選択された配列である、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド配列。」 ウ 【請求項33】 「【請求項33】 請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。」 エ 【請求項40】~【請求項42】 「【請求項40】 ウイルスDNA、又は細菌DNAをさらに含む請求項33に記載の発現ベクター。 【請求項41】 前記ウイルスDNAが、アデノウイルスDNA、又はレトロウイルスDNAからなる群から選択された、請求項40に記載の発現ベクター。 【請求項42】 少なくとも一部がアデノウイルスDNAを含む請求項41に記載の発現ベクター。」 オ 【請求項56】 「【請求項56】 患者の腫瘍を治療する方法であって、請求項1に記載の、キメラCD154をコードする単離ポリヌクレオチド配列を、腫瘍細胞内に導入して、前記キメラCD154を前記細胞の表面に発現することを含む方法。」 カ 【0001】段落 「【0001】 ・・・本発明は、細胞表面に発現された際に、対応する自然リガンドより安定であるが、自然リガンドの受容体結合機能を保持し、かつ免疫原性がない新規キメラリガンドに関する。」 キ 【0005】~【0008】段落 「【0005】 I)CD154の生物活性 CD154(CD40リガンドとしても知られている)と、その同族受容体であるCD40との相互作用は、免疫認識において肝要である。(・・・)。CD154は、MHCクラスII分子を介した、抗原提示細胞のT細胞受容体への結合に続き、CD4+T細胞で一時的に発現される。(・・・)。これによって、次に、B細胞、樹枝状細胞、単球、及びマクロファージを含む、CD40発現性抗原提示細胞(APC)の活性化が引き起こされうる。(・・・)。そのようなCD40活性化細胞は、ウイルス又は腫瘍などの、外来抗原に対する、特異的かつ有効な免疫応答を導く、免疫活性化イベントのカスケードを引き起こすことができる。・・・ 【0007】 免疫療法におけるCD154使用の可能性が活発に調査されている。CD154は強力な免疫賦活剤であるため、主として、癌治療薬としてのCD154に研究の焦点が集められているが、これは腫瘍細胞の抗原提示性が通常弱く、活発な抗腫瘍反応を活性化することができないためである。例えば、複製欠陥をもつアデノウイルスベクターを用いて、CD154を発現するように改変された、慢性リンパ球性白血病(CLL)B細胞は、CLL抗原提示性を増進し、無改変のCLL B細胞に対して、自家T細胞細胞傷害性を誘導することができる。(Kato K.ら、J.Clin.Invest.、101:1133~1141、1998年)。加えて、Ad-CD154で改変されたCLL B細胞を用いた第一相臨床試験は、有望な治療結果を示した。(Wierda W.G.ら、Blood、96:2917~2924、2000年)。同様に、動物モデルにおいて、CD154を発現するように、様々な腫瘍型を改変することで、有効な抗腫瘍免疫応答を誘導できることが他の研究によって示された。 【0008】 B細胞及び他の腫瘍を操作する研究は、CLL及びB細胞リンパ腫の場合のように、腫瘍細胞自体の抗原提示性を促進することによって、又は、CD40陰性腫瘍の場合のように、抗腫瘍免疫応答を開始することができる樹枝状細胞など、バイスタンダー(bystander)抗原提示細胞を活性化することによって行われる。しかし、別の研究では、ある種の腫瘍、特に乳癌に対する直接的増殖阻害効果が、CD154にあるかもしれないとも示唆されている。(・・・)。加えて、ある種のリンパ腫の増殖を、CD40のライゲーションによって直接阻害することができるという証拠がある。(・・・)。従って、CD154免疫療法は、広範囲の腫瘍に対して効果をもつはずである。」 ク 【0014】~【0015】段落 「【0014】 興味深いことに、マウスCD154(mCD154)は自然なヒトCD154よりも、またrsCD154よりも治療適用に有利のようである。マウスCD154は、ヒトCD154に比べて、タンパク質分解による切断に対して、比較的強い抵抗性を有する。そのうえ、mCD154は、ヒトCD154の発現を阻止するB細胞由来の細胞(しばしばCD40+細胞と呼ばれる)を含めたほとんどの細胞型で発現される(同上)。・・・ 【0015】 それでもなお、ヒトでmCD154を用いることには、それに固有な問題がある。・・・CD154に対する抗体の結合及び中和の形成を測定するアッセイによって、Ad-mCD154で形質導入されたCLL細胞を反復注射した際、3回目の注射までに、抗マウスCD154抗体が生じていることが示された。・・・。」 ケ 【0017】段落 「【0017】 本発明は、ヒトCD154及びマウスCD154の最も有益な特性をもち、従って、疾患治療に安全かつ有効である新規キメラCD154ポリペプチドに関する。具体的には、このキメラCD154は、B細胞を含めた様々な細胞型で発現できるであろう。このキメラCD154は、細胞膜上に発現された際に、タンパク質分解に対する耐性が低下し、従って、より安定であろう。さらに、このキメラCD154は免疫原性がないであろうと考えられ、従って抗CD154抗体による中和を受けないであろう。最後に、このキメラCD154は、ヒトCD154の受容体結合能を保持するであろうと考えられ、従って、ヒトにおいて、ヒトCD154と同じタイプの免疫応答を引き起こすであろう。」 コ 【0082】段落 「【0082】 本明細書で使用する際、「発現ベクター」という用語は、組換えヌクレオチド配列を発現する核酸であって、細胞を感染させ、さらにこの細胞中でそれ自体を複製することができる核酸のことをいう。典型的な発現ベクターには、組換えDNA技法において用いられるプラスミド、及び細菌又は動物細胞中で複製可能な様々なウイルスが含まれる。多数の発現ベクターが文献に記載されている。・・・」 サ 【0121】段落 「【0121】 腫瘍を治療する方法 本発明は、腫瘍を治療する方法も目的としており、この方法は、本発明のポリヌクレオチド配列を腫瘍細胞に挿入して、コードされているキメラCD154が腫瘍細胞の表面に発現されるようにすることを含む。本発明では、ヒト腫瘍の生体内における治療、及びエクスビボにおける治療の両方が考慮される。」 シ 【実施例1】 「【0123】 1.ヒトHeLa細胞及びCLL細胞におけるキメラアクセサリー分子リガンドの発現 a.キメラアクセサリー分子リガンドの遺伝子を含む遺伝子構築体及び遺伝子療法ベクターの構築 配列番号1~配列番号12のキメラアクセサリー分子リガンド遺伝子(別名、ISF 30~ISF41)は以下の通り調製され、さらにクローニングされた。 ・・・ 【0124】 ii.アデノウイルス合成 キメラISF-pcDNA3プラスミドを、制限酵素のNrul及びSma Iで消化し、pCDNA3からのCMVプロモーター、キメラCD154遺伝子、及びpCDNA3からのポリアデニル化シグナルを含むDNA断片を切り出した。消化したDNAを1%のアガロースゲルで分離にすることにより、この断片をゲル精製した後、アデノウイルスシャトルベクターMCS(SK)pXCX2のEcoRV部位に、このDNA断片を挿入、連結した。このプラスミドは、pBluescriptのポリリンカー配列がE1領域にクローニングされている、プラスミドpXCX2の改変プラスミドである(J.R.Tozer、UCSD、未公開データ、1993年9月)。キメラISF-MCS(SK)pXCX2プラスミドを精製した後、プロメガ(Promega)のリン酸カルシウムProfectionキットを用い、製造会社の指示に従って、このシャトルプラスミド5μgと、JM17プラスミドの5μgとを、293AC2細胞に同時導入した。形質移入に続き、これらの細胞を5日間培養して、相同組換及びウイルス合成を行わせた。その後、全細胞及び上清を採取し、凍結融解を3回行って、細胞随伴アデノウイルスの放出を行った。」 ス 【0137】段落 「・・・ 【図7】 mCD154、ISF32、及びISF35を含むアデノウイルスベクターで感染させた後の、CLL B細胞による、本発明の選択されたCD154ポリペプチド(ISF32及びISF35)の発現を、マウスCD154(mCD154)及び非感染細胞と比較して示す一連のFACSヒストグラムである。陰影がついた領域は、感染させられていないCLL B細胞の発現を示し、陰影がついていない領域は、上記のアデノウイルスベクターで感染されたCLL B細胞の発現を示す。 【図8】 本発明の選択されたCD154ポリペプチド(ISF32及びISF35)を発現するHeLa細胞と、同時培養されたCLL B細胞の活性化を、マウスCD154(mCD154)と比較して示す一連のFACSヒストグラムである。この活性化は、細胞表面表現型マーカーであるCD80、CD70、CD86、CD95、CD54、及びCD27の発現における、CD40活性化に特有な変化を検出することによって測定した。陰影がついた領域は、活性化されていないCLL B細胞の細胞表面マーカーの発現を示し、細線下の陰影がついていない領域は、CD154を含まない対照アデノウイルスAD-LacZで形質移入されたHeLa細胞と同時培養したCLL B細胞の活性化を示す。また、太線下の陰影がついていない領域は、mCD154、ISF23、及びISF35で形質移入されたHeLaと同時培養されたCLL B細胞の活性化を示す。 ・・・ 【図10】 本発明の選択されたCD154ポリペプチド(ISF35)及びヒトCD154を有するアデノウイルスで、HeLa細胞を感染させた2日後に生成された可溶性リガンドの量を示す棒グラフである。・・・このグラフは、ISF35が、可溶性ISF35を生む切断に対して耐性をもつことを、可溶性CD154を生むヒトCD154の切断、及び非感染細胞における可溶性CD154の不在と比較して示す。ISF35は、切断に対して、有意に強い抵抗性をもち、可溶性ISF35を全く生成しない。対照的に、ヒトCD154は容易に可溶性CD154に切断され、その濃度が>120ng/mlに達している。」 セ 図7 「 [図:0001423816000001.jpg] 」 ソ 図8 「 [図:0001423816000002.jpg] 」 タ 図10 「 [図:0001423816000003.jpg] 」 チ 配列番号6 「 [図:0001423816000004.jpg] 」 (2) 引用文献1の記載事項 当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に発行された引用文献1(国際公開第2015/077624号)には、以下の記載がある(原文が英文のため訳文にて示す。)。 ア 請求項1 「1. アデノウイルスゲノムの非必須領域中に挿入された異種核酸を含む、複製コンピテントな腫瘍溶解性ウイルスであって、前記核酸は、転写制御エレメントに作動可能に連結したOX40(CD134)アゴニストをコードする配列を含む、複製コンピテントな腫瘍溶解性ウイルス。」 イ 請求項3 「3. 前記アデノウイルスが、E3遺伝子領域の一部または全部の欠失を含む、請求項2に記載の複製コンピテントな腫瘍溶解性アデノウイルス。」 ウ 請求項9 「9. 前記アデノウイルスが、デルタ-24またはデルタ-24-RGDである、請求項8に記載の複製コンピテントな腫瘍溶解性アデノウイルス。」 エ 請求項18 「18. がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、請求項1から14のいずれかに記載の複製コンピテントな腫瘍溶解性アデノウイルスまたは請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物を、前記患者に投与するステップを含む、方法。」 オ 請求項 19 「19. 前記患者が、原発性または転移性の脳がん、黒色腫、腺癌、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がんおよび膵臓がんから選択されるがんを有する、請求項18に記載の方法。」 カ 請求項21 「21. 前記アデノウイルスが、腫瘍内、血管内に投与されるか、または神経幹細胞担体もしくは間葉系幹細胞担体において投与される、請求項18から20のいずれかに記載の方法。」 キ [012]段落 「[012] ・・・一つの特に好ましい実施形態では、複製コンピテントな腫瘍溶解性ウイルスは、OX40Lをコードする異種核酸を含むアデノウイルスである。・・・過去10年にわたる研究は、OX40アゴニストが、免疫原性腫瘍を使用する前臨床モデルにおいて抗腫瘍免疫を増強することを実証している;しかし、免疫原性の乏しい腫瘍の処置は、あまり成功してこなかった。腫瘍特異的T細胞をプライムする戦略をOX40シグナル伝達と組み合わせることで、治療的抗腫瘍免疫応答を生成および維持することができた。」 ク [024]段落 「[024] 用語「複製コンピテントな」とは、特定の細胞または組織におけるウイルス複製に必要とされるいずれの遺伝子機能においても欠損していない、任意のウイルスベクターを指す。ベクターは、複製し、パッケージングされることが可能でなければならないが、特定の細胞または組織において条件付きでのみ複製し得る。本発明の複製コンピテントなアデノウイルスベクターは、特定の腫瘍疾患細胞型において効率的に複製するその能力を保持しつつ、正常細胞において複製するそれらの能力を低減または排除するように、本明細書に記載されるように操作される。典型的には、複製コンピテントなアデノウイルスは、そのアデノウイルスが、エレメントをトランスで供給する必要なく、複製し、パッケージングされることが可能であるのに十分なE1、E2およびE4領域を含む。」 ケ [058]段落 「[058] 一つの特に好ましい実施形態では、複製コンピテントな腫瘍溶解性アデノウイルスは、デルタ-24またはデルタ-24-RGDである。デルタ-24は、その各々が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20030138405号および米国特許出願公開第20060147420号に記載されている。デルタ-24アデノウイルスは、アデノウイルス5型(Ad-5)由来であり、コードされたE1Aタンパク質中のアミノ酸122~129に対応する、Rbタンパク質に結合することに関与する領域を包含するE1A遺伝子のCR2部分内に24塩基対の欠失(ヌクレオチド923~946)を含む(Fueyo Jら、Oncogene、19巻:2~12頁(2000年))。デルタ-24-RGDはさらに、ファイバーknobタンパク質のH1ループへのRGD-4C配列(αvβ3インテグリンおよびαvβ5インテグリンに強く結合する)の挿入を含む(Pasqualini R.ら、Nat Biotechnol、15巻:542~546頁(1997年))。E1A欠失は、がん細胞に対するウイルスの選択性を増大させる;RGD-4C配列は、神経膠腫におけるウイルスの感染性を増加させる。」 コ 実施例1 「デルタ-24-RGDOXの構築および特徴付け 【0104】 CMVプロモーターを有するマウスOX40L発現カセットで、ヒトアデノウイルス5型ゲノムのE3領域を置き換えた。Rbタンパク質に結合することに関与するE1A遺伝子のCR2部分内の24-bp配列(コードされたE1Aタンパク質中のアミノ酸122~129に対応する)を欠失させた。RGD-4Cモチーフコード配列が、ファイバータンパク質のHIループに挿入されている。図1を参照のこと。」 サ 図1 「 [図:0001423816000005.jpg] 」 シ 実施例2 「D24-RGDOXによって誘導される増強された治療効果 [0110] 神経膠腫がんモデルの生存に対するD24-RGDOXの影響を評価し、別々にまたは一緒に投与したD24-RGDおよびOX86(OX40アゴニスト)の影響と比較した。GL261細胞(5×104細胞)を、C57BL/6マウスおよび胸腺欠損マウスに頭蓋内注射した。D24-RGDOXもしくはD24-RGD(5×107pfu)および/またはα-マウスOX40抗体OX86(25μg、MDACCのMonoclonal Antibody Core Facilityによって提供された)を、腫瘍移植後3日目、6日目および8日目に、腫瘍内注射した(ウイルスは、GL261細胞におけるウイルスの低い複製を部分的に補償するために、3回注射した)。PBSを、陰性対照として使用した。処置群(PBS;D24-RGD;OX86;OX86+D24RGD;D24-RGDOX;各群においてn=10)の間での生存を、ログランク検定(両側)を使用して比較した。図7Aおよび7Bは、それぞれ、C57BL/6マウスまたは胸腺欠損マウスにおける示した処置群(各群n=10)の全生存のKaplan-Meier曲線を示す。この動物生存試験は、D24-RGD自体は、各注射について5×107pfu/マウスのウイルス用量で効果を示さなかったが(p=0.08)、D24-RGDとOX86との組合せは、マウスの生存を顕著に延長させた(生存中央値24日間対17日間、p=0.0002)ことを実証した。重要なことに、D24-RGDOXは、D24-RGDと比較して、生存期間中央値を28.5日間までさらに延長させた(p<0.0001)。」 ス 図7 「 [図:0001423816000006.jpg] 」 (3) 引用文献3の記載事項 当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に発行された引用文献3(Viruses, 2015, Vol.7, pp.5780-5791)には、以下の記載がある(原文が英文のため訳文にて示す。)。 ア p5781-5782 2. 免疫刺激性遺伝子治療 「免疫賦活性遺伝子治療は、免疫賦活性タンパク質をコードする遺伝子を腫瘍領域に導入し、腫瘍免疫を誘導することを目的としている。・・・例えば、CD40リガンド(CD40L)のマウス遺伝子は、遺伝子導入手段としてレトロウイルスを用いてマウス神経芽腫腫瘍細胞に導入された。CD40Lは樹状細胞(DC)の最も強力な刺激因子の一つであり、Tヘルパー1(Th1)型免疫応答の形成とそれに続くCTLの活性化を促進する。腫瘍細胞によるCD40Lの発現により、腫瘍細胞は高い免疫原性を示し、野生型の腫瘍細胞を注射した場合と比較して、改変腫瘍細胞を注射した後のマウスの生存率が有意に増加した。・・・従って、遺伝子ビークルを腫瘍環境に局所投与することは、全身の抗腫瘍免疫の活性化につながる。これは、遺伝子矯正治療に焦点を当てた以前のがん遺伝子治療とは対照的である。したがって、腫瘍を根絶するためには、すべての腫瘍細胞を遺伝子ビークルの標的とする必要があった。」 イ p5784 第1段落 「・・・GM-CSF、CD40L、IL2を産生する遺伝子操作細胞ワクチンは、メラノーマ、腎細胞癌、様々な血液悪性腫瘍に使用されている。・・・マウス/ヒトキメラCD40L(Ad-ISF35)を用いた研究では、15人の慢性リンパ性白血病(CLL)患者が局所注射で治療された。3人の患者に部分奏効がみられたが、6人もの患者はウイルス注射後6ヵ月以上追加治療を受けなかった。」 ウ p5785 2.4. 免疫賦活遺伝子ビークルとしての腫瘍溶解性アデノウイルス 「治療的免疫刺激遺伝子は、多種多様なビヒクルを用いて腫瘍に導入される。複製欠損アデノウイルスは、大きな導入遺伝子カセットを運ぶことができるので、一般的に使用されてきた。残念ながら、アデノウイルスは宿主細胞ゲノムに統合されないので、導入遺伝子の発現期間は限られている。しかし、統合されないため、宿主細胞に突然変異を起こす危険性が低く、安全性が高まる。さらに、ヒトはアデノウイルス感染に対処する能力を十分に備えている。例えば、ほとんどの人はアデノウイルスによる上気道感染症にかかったことがあり、いくつかの血清型に対する抗体や、すべての血清型に交差反応するTリンパ球をあらかじめ持っている。免疫刺激性遺伝子治療の場合、ウイルスの免疫刺激作用は、腫瘍抗原を負荷したDC(合議体注:樹状細胞を意味する)上のTLR(合議体注:Toll様受容体を意味する)を活性化することにより、抗腫瘍応答の形成を助ける可能性がある。さらに、腫瘍溶解による細胞死は、高移動度群ボックス1(HMGB1)などのダメージ関連分子パターン(DAMP)の放出を介して、DCにさらなる刺激を与える免疫原性の細胞死と考えられている。腫瘍内投与では、ウイルスは注射針跡にある細胞に感染するが、導入遺伝子の発現を延長するためにウイルス感染を増加させる必要がある。これは、遺伝子導入ビークルとして腫瘍溶解性ウイルスを使用することで達成できるかもしれない。免疫刺激性遺伝子治療の開発と並行して、腫瘍と闘うために複製ウイルスを使用する新しい分野が出現した。ある種のウイルスは細胞に感染し、増殖し、新しいビリオンを放出する際に溶菌して細胞を死滅させる能力があるため、がん治療薬として利用できる。・・・遠くの腫瘍への全身的なウイルス拡散は免疫系によって制限される可能性があるため、より免疫原性の低い腫瘍溶解ウイルスの開発が試みられている。しかし、腫瘍溶解ウイルスの免疫原性を低下させる代わりに、腫瘍溶解ウイルスのゲノムに免疫刺激遺伝子を組み込むことによって、ウイルスが本来持っている免疫刺激能力を利用し、高めるというアプローチもある。それゆえ、免疫刺激遺伝子治療と腫瘍溶解性ウイルス治療の分野は融合した。・・・ 免疫原性が高く、その免疫原性が抗腫瘍反応をさらに高めることから、遺伝子導入ビヒクルとして腫瘍溶解性アデノウイルスを用いる進歩がある。しかし、腫瘍溶解と免疫刺激の組み合わせの完全な有効性と毒性をマウスモデルで決定することは困難である。腫瘍溶解はマウス細胞では限定的であり、免疫刺激効果は免疫不全マウスのヒト腫瘍細胞を用いた異種移植モデルでは評価できないからである。しかしながら、GM-CSFまたはCD40Lを発現する腫瘍溶解性アデノウイルスは臨床評価に至り、腫瘍内または全身への投与で実行可能性と安全性の両方が証明されている。・・・」 2.引用文献6に記載された発明 引用文献6には、タンパク質分解に対して安定であり、免疫原性の低いヒト/マウスキメラCD154をコードするポリヌクレオチド配列及び当該ポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが記載され、当該発現ベクターとしてアデノウイルスDNAを含むベクターを用いることも記載されている(上記1.(1)ア、ウ、エ、カ、ク、ケ)。そして、実施例では、CMVプロモーター、キメラCD154遺伝子(ISF35遺伝子)、及びpCDNA3からのポリアデニル化シグナルを含むDNA断片を挿入・連結して合成したアデノウイルス(Ad-ISF35)を用いて感染させたCLL-B細胞では、ISF35が発現されたこと(上記1.(1)シ、ス、セ)、CLL-B細胞を活性化できたこと(上記1.(1)ス、ソ)、切断に強い抵抗性のあるISF35が発現されたこと(上記1.(1)ス、タ)が実験データの裏付けをもって記載されている。 また、上記1.(1)チから、ISF35遺伝子は配列番号6で示される核酸配列を含むDNAである。 そうすると、引用文献6には、以下の発明が記載されていると認められる。 「CMVプロモーター及びISF35遺伝子(配列番号6で示される核酸配列を含むDNA)を含むDNA断片を導入したアデノウイルス」(以下「引用発明6」という。) 3.本願発明1と引用文献6に記載された発明との対比・判断 (1) 対比 上記1.(1)スからISF35はCD154ポリペプチドの一種であって、上記1.(1)キ、チから、CD154はCD40リガンドを意味するものであり、また、引用文献6に記載の配列番号6に示される核酸配列は、本願発明1の配列番号6で示される核酸配列と一致するものであるから、引用発明6の「ISF35遺伝子」は、本願発明1の「CD40アゴニストをコードする配列を含」む、「核酸」であって、「前記CD40アゴニストが、ISF35(MEM40)(配列番号6に示される核酸配列でコードされるタンパク質)であるCD40リガンド(CD40L)である」「核酸」に相当する。そして、「ISF35遺伝子」がアデノウイルスに対して「異種核酸」であることは明らかである。 また、本願出願当初の請求項10、11、及び本願明細書【0059】、【0060】から、本願発明1の「転写制御エレメント」はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むものであるから、引用発明6の「CMVプロモーター」は本願発明1の「転写制御エレメント」に相当する。 さらに、引用発明6は、「CMVプロモーター及びISF35遺伝子を含むDNA断片を導入したアデノウイルス」であるところ、当該アデノウイルスを感染させた細胞は、ISF35を発現していることから(上記1.(1)シ)、引用発明6の「CMVプロモーター」はISF35遺伝子に「作動可能に連結」されたものである。 そして、引用発明6の「CMVプロモーター及びISF35遺伝子を含むDNA断片」は、アデノウイルスゲノムに挿入されていることは技術常識からみて明らかである。 そうすると、本願発明1と引用発明6との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「アデノウイルスゲノムに挿入された異種核酸を含有するアデノウイルスであって、前記核酸が、転写制御エレメントに作動可能に連結するCD40アゴニストをコードする配列を含み、前記CD40アゴニストが、ISF35(MEM40)(配列番号6に示される核酸配列でコードされるタンパク質)であるCD40リガンド(CD40L)である、アデノウイルス。」 <相違点1> 本願発明1は、「アデノウイルスを含」む「がんの治療に使用するための組成物」と特定されているのに対し、引用発明6ではそのような特定がない点。 <相違点2> アデノウイルスについて、本願発明1は「複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルス」であって、「Delta-24-RGDアデノウイルス」と特定されているのに対し、引用発明6ではそのように特定されていない点。 <相違点3> 異種核酸について、本願発明1は「アデノウイルスゲノムの非必須領域に挿入された」ものであり、かつ、「E3遺伝子領域に挿入され、前記E3遺伝子は一部または全部が欠失され」たものであることが特定されているのに対し、引用発明6ではそのように特定されていない点。 (2) 判断 ア 相違点1について 上記1.(1)キによれば、引用発明6は、CD154は強力な免疫賦活剤であるため、主として、がん治療薬としてのCD154に研究の焦点が集められており、CD154免疫療法は、広範囲の腫瘍に対して効果をもつはずであるという技術認識のもとなされた発明であって、上記1.(1)オ、サによると、引用文献6には、ISF35であるキメラCD154をコードする核酸配列を腫瘍細胞に導入してキメラCD154を腫瘍細胞の表面に発現することで腫瘍、すなわちがんを治療することが記載されているから、引用発明6に係る「アデノウイルス」を含む「組成物」の用途を「がんの治療に使用するための」ものとすることは当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 引用文献6には、発現ベクターとして、動物細胞中で複製可能な様々なウイルスが含まれる旨が記載されている(上記1.(1)コ)。 ここで、核酸医薬の分野において、有効成分である核酸を治療部位へ効率的に送達しつつ目的タンパク質を発現させることが可能なベクターを模索することは当業者が通常課題としていることであるが、上記1.(3)ウを踏まえると、本願優先日当時、免疫刺激遺伝子の腫瘍への導入にあたって複製欠損アデノウイルスは一般的に使用されてきたものの、アデノウイルスは宿主細胞ゲノムに統合されないので、発現期間が限られているという問題が知られていたところ、ウイルスによる免疫刺激作用や腫瘍溶解が免疫を刺激し、免疫刺激遺伝子治療における抗腫瘍応答の形成を助ける可能性があること、及び導入遺伝子の発現を延長するためにウイルス感染を増加させる必要性が認識されおり、腫瘍治療の分野において、免疫原性の高く、複製可能な腫瘍溶解性ウイルスが遺伝子導入ベクターとして有用であることは技術常識であったと認められる。 そして、引用文献1には、複製コンピテント、すなわち複製可能な腫瘍溶解性アデノウイルスを、抗腫瘍免疫を増強可能なOX40アゴニストに組み合わせることで、治療的抗腫瘍免疫応答を生成・維持することが記載され(上記1.(2)ア、キ、ク)、具体的には、腫瘍溶解性アデノウイルスとしてデルタ-24-RGDを用いることで、がん細胞に対するウイルス選択性の増大、神経膠腫におけるウイルス感染性増加が可能であることも記載されている(上記1.(2)ウ、ケ)。また、CMVプロモーターを有するマウスOX40L発現カセットでヒトアデノウイルス5型ゲノムのE3領域を置き換え、さらにE1A遺伝子におけるCR2部分内の24塩基配列の欠失、RGD-4Cモチーフコード配列のHIループへの挿入を行ったデルタ-24-RGDOXが、腫瘍移植マウスにおいて生存を延長できたことが記載されている(上記1.(2)コ~ス)。 そうすると、アデノウイルスは宿主細胞ゲノムに統合されないので、発現期間が限られているという問題があるところ、免疫原性の高く、複製可能な腫瘍溶解性ウイルスが遺伝子導入ベクターとして有用であるという技術常識を知る当業者は、アデノウイルスに係る発明である引用発明6において、引用文献6にも動物細胞中で複製可能な様々なウイルスが使用できる旨の記載も踏まえて、遺伝子発現ベクターとして、腫瘍溶解性ウイルスを使用してみることは十分に動機付けられる。 そして、引用発明6と同様、アデノウイルスベクターを用いた免疫刺激遺伝子の導入によってがんを治療する技術分野に属する引用文献1には、腫瘍溶解性アデノウイルスとしてデルタ-24-RGDを用いることで、がん細胞に対するウイルス選択性の増大、神経膠腫におけるウイルス感染性増加が可能である旨記載されており、このような引用文献1の記載に接した当業者であれば、引用発明6において腫瘍溶解性ウイルスを使用する際、ISF35をコードする遺伝子の腫瘍での感染増加や免疫刺激効果の増大を期待して、遺伝子発現ベクターとしてデルタ-24-RGDアデノウイルスを採用してみることは、容易に想到し得たことである。 ウ 相違点3について 引用文献1には、デルタ-24-RGDアデノウイルスの非必須領域のE3遺伝子領域に標的遺伝子を置換した、すなわちE3遺伝子を一部または全部が欠失するように導入したことが記載されているから(1.(2)コ)、当該記載に沿って、引用発明6において、「CMVプロモーター及びISF35遺伝子(配列番号6で示される核酸配列を含むDNA)を含むDNA断片」をアデノウイルスゲノムの非必須領域であるE3遺伝子領域にE3遺伝子が一部または全部が欠失するように挿入すること、すなわち相違点3に係る構成に至ることは当業者が容易に想到し得たことである。 エ 効果について 本願発明1の構成により奏される効果についてみると、本願明細書には【0093】段落に「少なくとも1つのキメラヒト/マウスCD40リガンドを含む腫瘍溶解性アデノウイルスは、二重の作用機序:1)がん細胞における腫瘍溶解性アデノウイルスの選択的ウイルス複製による腫瘍細胞の殺傷と、2)ウイルス免疫誘導とCD40リガンド免疫活性化の両方により生じる全身性抗腫瘍免疫の誘導とを有し得る」と説明されている。 しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスは感染した細胞を死滅させるものであって(前記1.(3)ウ)、その中でもデルタ-24-RGDはがん細胞に対するウイルス選択性の増大、神経膠腫におけるウイルス感染性増加が可能であること(前記1.(2)ケ、シ、ス)、及びウイルス感染や細胞溶解が免疫を刺激し(前記1.(3)ウ)、CD40リガンド(CD154)であるISF35も免疫活性化作用を有すること(前記1.(1)キ、ソ)は上記引用文献に記載されていることから、本願発明1の効果は引用文献1、3、6に記載された事項から当業者が予測し得るものである。 そして、本願明細書には実施例を参照しても当該効果について実験データが何ら示されていないのであるから、本願発明1の構成により奏される効果が引用発明と比較して格別顕著なものとすることはできない。 そうすると、本願発明1は、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものとはいえない。 (3)請求人の主張について 審判請求人は、令和6年10月2日受付の意見書において、以下のとおり主張している。 「引用文献6は、主にCD4細胞によってのみネイティブに発現され、APCおよび他の細胞上のCD40に結合するCD154を提供し、B細胞、樹状細胞、単球、およびマクロファージを含むAPCの不十分な活性の問題を解決するものであるのに対し、引用文献1は、OX40Lを使用することでCD4(ヘルパーT細胞)および CD8(細胞傷害性)T細胞応答を増強するが、OX40Lのリガンドは、休止状態のナイーブT細胞によって構成的に発現されず、CD4およびCD8T細胞の活性が不十分であるという問題を解決するものである。 従い、関連記載はあるものの、引用文献6が解決する課題は、引用文献1、3が解決する課題とは異なるので、当業者が引用文献6を引用文献1、3に適用するには難がある」 審判請求人の主張を検討すると、たしかに、引用文献6と引用文献1について、それぞれに記載されたCD154及びOX40Lは、別異のタンパク質であり、発現される免疫細胞も相違する。しかしながら、そうであるからといって、引用文献6に記載の発明において、引用文献1,3に記載の遺伝子導入ベクターに係る技術を採用できないということにはならない。すなわち、両者は、いずれも、免疫活性化によるがん治療効果を目的として用いられているものであるから(前記1.(1)ケ、サ、(2)エ、キ)、両文献を全体として見れば、いずれも免疫刺激遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いて腫瘍細胞へ導入することによってがんを治療するという技術分野に属するものである(前記(2)イ)。そして、遺伝子導入ベクターについて、引用文献6には、「動物細胞中で複製可能な様々なウイルスが含まれる。多数の発現ベクターが文献に記載されている。」(前記1.(3)コ)と記載されていることから、引用発明6において公知の発現ベクターを選択可能であることは明らかであるところ、この発現ベクターはがんの治療のために免疫刺激遺伝子を腫瘍細胞へと導入するためのものであるから、効率的に遺伝子を腫瘍細胞へと導入でき、優れたがん治療効果を奏するものが好ましいことは当業者にとり自明であるが、前記(2)イで説示したように、本願優先日当時、腫瘍溶解性ウイルスは免疫原性が高く、抗腫瘍反応を高めることができ、遺伝子導入ビークルとして有用であって、CD40L(CD154)の導入にも用いられることは既に技術常識となっており、さらに、引用文献1には、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターであるデルタ-24-RGDが、がん細胞に対するウイルス選択性の増大、神経膠腫におけるウイルス感染性増加効果を有していることが記載されているのだから、当業者が、腫瘍での感染増加や免疫刺激効果の増大を期待して引用文献6と引用文献1を組み合わせることは、むしろ自然に動機付けられることである。 また、引用文献3は、本願優先日当時における技術常識を示すために引用したものであるから、引用文献6と引用文献3の課題が異なるから、引用文献6に引用文献3を適用できない旨の請求人による主張は当を得ないものである。そして、引用文献3に示される技術常識を参酌すれば、引用発明6において、遺伝子発現ベクターとして、腫瘍溶解性ウイルスを使用する動機付けが十分あることは、上記(2)イで説示したとおりである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明6、並びに引用文献1に記載された事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-016391

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