特許拒絶査定不服審判
2022-016460
武装した腫瘍溶解性ウイルス
- 審判番号
- 2022-016460
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-555423外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月14日
- 審決日
- 2024年08月28日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メムゲン,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】新保 斉
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-555423「武装した腫瘍溶解性ウイルス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日国際公開、WO2018/118819、令和 2年 4月23日国内公表、特表2020-512392〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年12月15日 米国、2016年12月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
(日付は、当審合議体による起案を除き、書類の受付日である。)
令和元年8月21日 :翻訳文提出
令和元年9月26日 :手続補正書の提出
令和3年10月28日付け:拒絶理由通知
令和4年5月9日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年6月7日付け :拒絶査定
令和4年10月14日 :審判請求書の提出
令和6年3月25日付け :拒絶理由通知
令和6年6月26日 :意見書、手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という)
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
腫瘍の治療に使用するための組成物であって、
腫瘍溶解性ウイルスゲノムに挿入された異種核酸を含む腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記核酸が、転写制御エレメントに作動可能に連結するキメラヒト/マウスCD40リガンドをコードする配列を含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、治療タンパク質をコードする異種遺伝子をさらに含み、
前記異種遺伝子が、ヒトGM-CSFをコードする遺伝子であり、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、MEM40とヒトGM-CSFの両方を発現する単純ヘルペスウイルスであり、
前記MEM40と前記ヒトGM-CSFの挿入は、
前記ヒトGM-CSF発現カセットの一方のICP34.5コード領域への挿入と、前記MEM40発現カセットの他方のICP34.5遺伝子コード領域への挿入であるか、
または、
前記ヒトGM-CSF発現カセット及び前記MEM40発現カセットの両ICP34.5遺伝子コード領域への挿入であるか、
または、
前記ヒトGM-CSF及び前記MEM40が、内部リボソーム侵入部位により分離され、同一の発現カセットの一部である挿入であり、単一のCMVプロモーターを介して各タンパク質を同時発現させる
ことを特徴とする腫瘍の治療に使用するための組成物。」
第3 拒絶の理由
令和6年3月25日付けの拒絶理由通知書で当審が通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。
なお、当該拒絶理由通知書の<引用文献一覧>では、引用文献7が、
「7.J. Exp. Med., 1999年, Vol. 190, No. 1」
と記載されている。
しかしながら、拒絶理由の具体的な説明の3(2)イにおいて、「・・・また、引用文献7には、GM-CSF及びCD40Lの両遺伝子を、ウイルスベクターを用いて導入した腫瘍細胞を接種したマウスの40%は腫瘍を形成せず、初期に形成された腫瘍の一部は退縮し、最終的に70%のマウスの腫瘍がなくなったこと(図1、第127頁右欄第8~20行)、GM-CSFが腫瘍細胞の免疫原性を増強し、主にCD40LがCD40との相互作用を通じて免疫応答を誘導すること、すなわち、樹状細胞を腫瘍に集積、活性化することが記載されているから(第131頁左欄第25行、第35~37行、右欄第16~18行)、・・・」と記載されていることから、引用文献7は上記下線部の頁を含む以下の文献であることは明らかである。
「7.J. Exp. Med., 1999年, Vol. 190, No. 1, pp.125-133」
このため、当該拒絶理由通知書における引用文献一覧の誤記を正した上で、拒絶理由の概要を示す。
(進歩性) この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献6に記載された発明及び引用文献6,1,2,7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.Viruses, 2015年, Vol. 7, pp. 5780-5791
2.Cancer Res., 2012年, Vol. 72, No. 12, pp. 2937-2948
6.特表2003-520789号公報
7.J. Exp. Med., 1999年, Vol. 190, No. 1, pp.125-133
第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1) 引用文献6の記載事項
当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献6(特表2003-520789号公報)には、以下の記載がある(下線は当審合議体が付した。以下、他の箇所で引用文献について記載する場合も同様である。)。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】 改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株の、癌の腫瘍崩壊治療用の医薬品の製造における使用。
・・・
【請求項4】 非実験室ウイルス株が、ヘルペスウイルス株…である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】 非実験室ウイルス株がヘルペスウイルス株である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】 非実験室ウイルス株が単純ヘルペスウイルス(HSV)株である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】 HSV株がHSV1またはHSV2株である、請求項6に記載の使用。
・・・
【請求項9】 前記株がHSV株であり、かつ該ウイルスは機能的ICP34.5コード遺伝子を欠損していることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】 ウイルスが機能的ICP47遺伝子をさらに欠損していることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】 非実験室ウイルス株が異種遺伝子をさらに含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】 異種遺伝子が免疫応答を改変可能な遺伝子である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】 免疫応答を改変可能な異種遺伝子が、免疫応答を改変可能な免疫刺激ポリペプチドもしくは他の遺伝子産物…であることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】 免疫刺激ポリペプチドが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、他のサイトカインもしくはケモカイン、RANTES、B7.1もしくはB7.2、またはIL-12である…ことを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】 非実験室株がHSV株であり、かつ請求項2に規定する対照の株が該非実験室株と同等な改変を有するHSV1 17+株、HSV1 F株またはHSV1 KOS株である、請求項2~14のいずれか1項に記載の使用。
・・・
【請求項31】 請求項1~15のいずれか1項に規定する改変された腫瘍崩壊性株への改変に対する非実験室ウイルス株の適合性を決定する方法であって:
(i) 場合によっては非実験室ウイルス株を宿主から単離し;
(ii) 1種以上の型の腫瘍細胞におけるウイルスの増殖を評価し;そして場合によっては、
(iii) 高増殖率を有するウイルス株を改変のために選択する;
ことを含む前記方法。
・・・
【請求項33】 改変された腫瘍崩壊性株への改変に対する非実験室ウイルス株の適合性を決定する方法であって:
(i) 1種の非実験室ウイルス株、場合によっては請求項31または32のステップ(ii)に記載の方法によって選択された株を用意し;
(ii) 腫瘍崩壊性となるように前記株を改変し;そして、
(iii) 前記改変された腫瘍崩壊性非実験室株の腫瘍細胞を死滅させる能力を評価し、そして場合によっては;
(iv) さらなる改変のために高い腫瘍細胞死滅能力を示す株を選択し、そして場合によっては、
(v) さらなる改変を実施する;
ことを含む前記方法。
・・・
【請求項38】 遺伝子がウイルスの抗腫瘍効果を増強するか否かを決定する方法であって:
(i) 請求項1~15のいずれか1項に規定する改変された腫瘍崩壊性非実験室株を用意し;
(ii) 前記遺伝子を異種遺伝子として前記ウイルスに挿入し;そして、
(iii)前記改変された腫瘍崩壊性非実験室株の腫瘍細胞を死滅させる能力を、ステップ(i)で用意した前駆株の該能力と比較して評価する;
ことを含む前記方法。
【請求項39】 改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株を産生する方法であって:
(i) 非実験室ウイルス株を宿主から単離し;
(ii) 場合によっては請求項33の記載に従って改変に対する前記ウイルス株の適合性を決定し;そして、
(iii) 前記ウイルス株を腫瘍崩壊性にするために改変し;そして場合によっては、
(iv) さらなる改変を実施する;
ことを含む前記方法。」
イ 【0064】段落
「HSVの場合、選択的な腫瘍崩壊活性を可能にするこのような突然変異には、ICP34.5、ICP6および/またはチミジンキナーゼ(TK)、好ましくはICP34.5をコードする遺伝子に対する突然変異が含まれる。HSVの実験室株におけるICP34.5コード遺伝子に対するこのような突然変異は、Chouら 1990、Macleanら 1991に記載されているが、ICP34.5が非機能的となる突然変異のいずれも用いることができる。」
ウ 【0069】段落
「…免疫刺激ポリペプチド、例えばCD40L、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、別のサイトカインもしくはケモカイン(例えばRANTES)、B7.1もしくはB7.2、またはIL12をコードするものである。…」
エ 【0087】段落
「1以上の異種遺伝子は、例えばHSV配列に挟まれた1以上の異種遺伝子を有するプラスミドベクターを用いてHSV株に相同的組換えを行うことによりウイルスゲノム中に挿入することができる。1以上の異種遺伝子は、当技術分野で周知であるクローニング技法を用いてヘルペスウイルス配列を含む好適なプラスミドベクター中に導入することができる。1以上の異種遺伝子は、ウイルスが増殖可能である限り、ウイルスゲノム中のいずれの位置にも挿入することができる。1以上の異種遺伝子は必須遺伝子中に挿入されることが好ましい。異種遺伝子は、ウイルスゲノム内の複数の部位に挿入することができる。」
オ 【0088】段落
「1以上の異種遺伝子の転写される配列は、好ましくは、哺乳動物細胞(好ましくは腫瘍細胞または中枢神経系細胞)内でのその1以上の異種遺伝子の発現を可能とする制御配列と機能的に連結されている。「機能的に連結される」という用語は、記載された構成要素が、その意図する機能を果たすことができるような関係にある並置を意味する。コード配列に「機能的に連結された」制御配列は、そのコード配列の発現がその制御配列に適合した条件下で達成されるように連結されている。」
カ 【0089】段落
「制御配列は、1以上の異種遺伝子の発現を可能とするプロモーターおよび転写終結シグナルを含む。…」
キ 【0090】段落
「1以上の異種遺伝子と制御配列を含む発現カセットおよび他の好適な構築物は、当業者に公知である慣例なクローニング技法を用いて作製することができる(…)。」
ク 【0094】段落
「遺伝子治療および他の治療的用途は、おそらくは複数の遺伝子の投与を必要であろう。複数の遺伝子の発現は、種々の症状の治療において有利であり得る。ヘルペスウイルスは、他のウイルスベクター系のパッケージング能力が制限されていないので、特に適切なものである。従って、複数の異種遺伝子をそのゲノム内に収容することができる。例えば、2~5つの遺伝子をゲノムに挿入することができる。」
ケ 【0095】段落
「例えば、これを達成可能な方法は少なくとも2つある。例えば2以上の異種遺伝子および関連する制御配列を特定のHSV株の中の、そのウイルスゲノムの1つの部位または複数の部位に導入することができる。また、お互いから反対方向を向いているプロモーター対(同じまたは異なるプロモーター)を用いることも可能であり、これらのプロモーターの各々は、上記のように異種遺伝子(同じまたは異なる異種遺伝子)の発現を駆動する。」
コ 【0106】段落
「以下の実施例は本発明を説明するものである。
実施例
神経毒性因子(neurovirulence factor)ICP34.5が不活化されている単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)は、in vitroおよびin vivoの双方で腫瘍モデルにおいて腫瘍特異的細胞溶解を指令することが既に示されている。またこのようなウイルスは、神経膠腫末期患者に直接脳内注入することによる第1段階臨床試験において安全であることも示されている。」
サ 【0108】段落
「…本発明者らは、HSV1臨床単離株からICP34.5を欠失させ、多くのヒト腫瘍細胞型における複製および溶解潜在能力について、HSV1 17+株(標準的な実験室株)と比較した。」
シ 【0109】段落
「ウイルス構築(図1を参照されたい)
用いるウイルスは、HSV1 17+株(標準的な実験室株)またはHSV1を頻繁に再発する個体(re-activator)からの口辺ヘルペスに由来する2種の臨床単離株に基づいた。これらの株は、BL1およびJS1と名付けられた。ICP34.5を17+株およびJS1株から完全に欠失させるとともにCMV-GFPカセットを挿入した。またJS1をさらに操作して、ICP34.5遺伝子に置き換わるようにヒトもしくはマウスGM-CSFを挿入した。従って、BL1およびJS1は、臨床単離株、すなわち「非実験室」株である。本明細書で考察したJS1の誘導株もまた非実験室株、すなわち本発明の改変された非実験室株である。」
ス 【0110】段落
「腫瘍細胞におけるウイルス増殖(図2を参照されたい)
JS1およびBL1は、72時間にわたって試験した場合、ICP34.5を欠失したHSV1 17+株と比較して幾つかのヒト腫瘍細胞における増殖の増強を示した(図2)。JS1をさらなる研究のために選択し、上記の改変(図1および上記を参照されたい)をJS1に行った。」
セ 【0111】段落
「ウイルスの溶解能力(図3を参照されたい)
溶解(細胞死滅)能力は、試験した全ての腫瘍細胞系において、JS1に由来する(非実験室株に由来する)ウイルスで増強されていた。より詳細には、図3を参照すると、JS1/34.5-ウイルス(すなわち、ICP34.5が欠失によって除去されたJS1)により、HT29結腸直腸腺癌細胞、LNCaP.FGC前立腺腺癌細胞、MDA-MB-231乳腺腺癌細胞、SK-MEL-28悪性黒色腫細胞およびU-87 MG神経グリア芽細胞腫・神経膠星状細胞腫細胞における溶解能力の増強が示された。」
ソ 【0115】段落
「さらに増強された抗腫瘍活性
またこれらのウイルスを用いて抗腫瘍活性を有する遺伝子を送達する場合には、さらに増強された活性を期待することができる。このような遺伝子としては、プロドラッグアクチベーターまたは免疫刺激タンパク質をコードするものが挙げられる。」
タ 【0116】段落
「この目的のために、本発明者らは、ICP34.5を欠失し、かつ強力な免疫刺激因子であるヒトもしくはマウスGM-CSFを発現するHSV1の臨床単離株を、JS1から産生した。このウイルスは、腫瘍内注入に続く抗腫瘍免疫応答を増強するために設計される。」
チ 図1
「
[図:0001418453000001.jpg]
」
(2) 引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(Viruses, 2015年, Vol. 7, pp. 5780-5791)には、以下の記載がある(原文が英文のため訳文にて示す。)。
ア 第5781頁第2段落
「2. 免疫刺激性遺伝子治療
免疫賦活性遺伝子治療は、免疫賦活性タンパク質をコードする遺伝子を腫瘍領域に導入し、腫瘍免疫を誘導することを目的としている。実験モデルにおける免疫刺激性遺伝子治療を用いた最初の研究は90年代後半に発表され、有望な結果が得られている。例えば、CD40リガンド(CD40L)のマウス遺伝子が、遺伝子導入手段としてレトロウイルスを用いてマウス神経芽腫腫瘍細胞に導入された。CD40Lは樹状細胞(DC)の最も強力な刺激因子の一つであり、Tヘルパー1(Th1)型免疫応答の形成とそれに続くCTLの活性化を促進する。」
イ 第5784頁第12~19行
「高リスクだが限局性の膀胱癌患者には、根治的膀胱摘出術または切除術の前に、CD40Lを有するアデノウイルス(AdCD40L)を3回膀胱に注入した。これら8人の患者のうち4人は膀胱壁に腫瘍が残存していなかったが、そのうちの1人は尿管に腫瘍が残存していた。しかしながら、腫瘍が残存しなかった患者は根治的膀胱切除術を受けているため、長期的な結果は得られていない。マウス/ヒトキメラCD40L(Ad-ISF35)を用いた研究では、15人の慢性リンパ性白血病(CLL)患者が局所注射で治療された。3人の患者に部分奏効がみられたが、6人もの患者はウイルス注射後6ヵ月以上追加治療を受けなかった。」
(3) 引用文献2の記載事項
当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(Cancer Res., 2012年, Vol. 72, No. 12, pp. 2937-2948)には、以下の記載がある(原文が英文のため訳文にて示す。)。
ア 第2937頁要約
「慢性リンパ性白血病(CLL)に対する新しい治療法、特に残存病変を根絶し、抗CLL免疫応答を惹起する治療法が必要とされている。キメラCD154(Ad-ISF35)をコードするアデノウイルスを用いてCLL細胞上のCD40をライゲーションすることにより、抗原提示細胞としての機能が強化され、免疫-エフェクター機構によるクリアランスに対する感受性が向上する。本研究では、毒性、安全性、忍容性を評価するため、CLL患者を対象としたAd-ISF35の結節内直接注射(IDI)の第1相臨床試験の結果を報告する。15人の患者が、1×1010から33×1010個のAd-ISF35ウイルス粒子(vp)の単回IDIを受け、最大耐容量は1×1011 vpと定義された。最も一般的な有害事象は、注射部位の一過性のグレード1~2の疼痛およびIDI後のインフルエンザ様症状であったが、最高用量を投与された患者の中には、一過性の無症候性グレード3~4の低リン血症、好中球減少症、または高トランスアミナーゼ血症を認めた者もいた。細胞死受容体、免疫共刺激性分子、Ad-ISF35ベクターDNAの発現増加が循環CLL細胞で検出された。注目すべきは、白血病細胞数、リンパ節腫脹、脾腫の減少を含む予備的な臨床効果も観察されたことである。6人の患者は6ヵ月以上追加治療を必要とせず、3人は部分寛解を達成した。結論として、Ad-ISF35 IDIはCLL患者に安全に投与され、全身性の生物学的および臨床的反応を誘導した。これらの結果は、CLL、リンパ腫、CD40発現固形癌における第II相試験の根拠となる。」
イ 第2938頁第2段落
「われわれは以前、このアプローチの安全性と臨床活性を評価する臨床試験を行った。これらの臨床試験では、患者は白血球除去術を受け、その後CLL細胞はマウスCD154またはキメラヒト化CD154をコードするAdベクター(Ad-ISF35と呼ばれる)を用いて生体外で形質導入された。Ad-ISF35はマウスCD154に対する免疫の発生を緩和し、膜の安定性を改善するために開発された。CLL細胞をAd-CD154またはAd-ISF35で形質導入すると、CD154を持つ細胞との接触によって活性化されたCLL細胞の表現型の特徴を持つ形質導入CLL細胞が生じた。さらに、これらの形質転換CLL細胞はCD40のリガンドを発現するため、バイスタンダーな非形質転換CLL細胞を活性化し、そのような表現型の変化を起こさせることもできた。 臨床研究では、Ad-CD154またはAd-ISF35で形質転換された自己CLL細胞のi.v.輸注は、許容できない毒性や長期毒性を引き起こさず、CD154-/ISF35保有細胞との接触によって達成されるのと同様の「バイスタンダー」非形質転換CLL細胞の活性化を誘導し、ほとんど必ず白血病細胞の血球数、リンパ節腫脹、脾腫の急性減少をもたらし、抗白血病免疫応答を誘導できることが示された。」
(4) 引用文献7の記載事項
当審の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献7(J. Exp. Med., 1999年, Vol. 190, No. 1, pp.125-133)には、以下の記載がある(原文が英文のため訳文にて示す。)。
ア 第125頁要約
「我々は、BALB/c由来C-26結腸癌細胞に顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD40リガンド(CD40L)遺伝子を導入し、これらの細胞と宿主樹状細胞(DC)との相互作用を促進し、したがってクロスプライミングを促進した。共導入された細胞は、腫瘍形成能の減少を示し、一部のマウスでは腫瘍形成に続いて腫瘍が退縮した。In vivoの腫瘍にはDCが多量に浸潤しており、これらのDCを単離し、表現型を決定し、in vitroで腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の刺激について試験した。BALB/c C-26癌細胞は、腫瘍関連抗原として内因性マウス白血病ウイルス(MuLV)env遺伝子を発現している。この抗原はBALB/cマウスとC57BL/6マウスの固形腫瘍で共有されており、2つのエピトープ、AH-1とKSPを含み、それぞれ主要組織適合性複合体クラスI分子H-2LdとH-2Kbの文脈で認識される。(BALB/c3× C57BL/6)F1マウス(H-2d×b)で増殖させたC-26/GM/CD40L腫瘍から単離したDCは、抗AH-1およびKSP CTLsの両方によるインターフェロンγ産生を刺激したが、BALB/cマウスの腫瘍浸潤DC(TIDCs)は抗AH-1 CTLのみを刺激した。さらに、TIDCsは足蹠に注射して2日後にはナイーブマウスにCTL活性のプライミングを行ったが、二重導入された腫瘍細胞はプライミングに少なくとも5日を要した。この違いは、DCの直接的なプライミングと腫瘍細胞の間接的なプライミングを反映しているのかもしれない。免疫組織化学的染色は、腫瘍におけるDCとアポトーシス小体の共局在を示した。これらのデータは、GM-CSFとCD40Lを産生する腫瘍に浸潤したDCは、おそらくアポトーシス小体の取り込みを通して細胞抗原を捕捉し、その場で抗原提示に適した段階まで成熟できることを示している。従って、宿主DCとの相互作用を促進するように設計された腫瘍細胞ベースのワクチンが考えられる。」
イ 第127頁右欄第8~20行
「腫瘍増殖に対するGM-CSFおよび/またはCD40L導入の効果を評価するために、BALB/cマウスに導入または親C-26細胞を皮下注射した。C-26またはC-26/GM細胞を注射されたすべてのマウスは、急速に成長する腫瘍を発生し、最初の苦痛の徴候で3週以内に殺されたが、C-26/CD40LおよびC-26/GM/CD40L細胞をそれぞれ注射された動物の22および40%は、全観察期間(3ヶ月)腫瘍のないままであった。二重形質転換された腫瘍の一部は初期に成長した後に退縮し、最終的に70%が腫瘍のないマウスとなった(図1)。特異的抗体による細胞枯渇は、CD8+ T細胞とGR1+ PMNの両方が腫瘍拒絶反応に必要であることを示していた(データは示さず)。」
ウ 図1
「
[図:0001418453000002.jpg]
」
脚注の訳
「図1 C-26細胞および遺伝子組み換え変異体のin vivoでの腫瘍形成性。細胞(5×104)を雌性BALB/cマウス(n=35)の左脇腹に皮下注射した。○,C-26;□,C-26/GM;●,C-26/CD40L;■,C-26/GM/CD40L,*P <0.01; **P <0.05、Mann-Whitney検定を用いて、形質導入細胞株と親C-26細胞を比較して決定した。」
エ 第131頁左欄第25行
「我々の予備実験によると、GM-CSFは腫瘍の免疫原性を増強し、形質導入細胞の増殖を損なうことなく、その後の生きた親C-26腫瘍細胞によるチャレンジからマウスを保護した(未発表結果)。」
オ 第131頁左欄第35~37行
「我々の二重形質移入細胞ワクチンのもう一つの成分であるCD40Lは、CD40との相互作用を通して免疫反応を誘導する上で中心的な役割を果たすことが示されている。」
カ 第131頁右欄第16~18行
「我々のモデルでは、GM-CSFとCD40LはDCのリクルートを促進し、腫瘍部位でDCを活性化するのに必要かつ十分であると思われる。」
2.引用文献6に記載された発明
引用文献6には、前記1.(1)アの下線部のとおり、請求項1を引用する請求項11に、「改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株の、癌の腫瘍崩壊治療用の医薬品の製造における使用」に関し、「非実験室ウイルス株が異種遺伝子をさらに含む」ことが記載されている。そして、これを具現化した実施例には、前記1.(1)コ~タの下線部のとおり、「改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株」として、「単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)」の「臨床単離株、すなわち「非実験室」株である」「JS1株」について、「ICP34.5を…JS1株から完全に欠失させるとともにCMV-GFPカセットを挿入した」ものが記載され、当該「改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株」が「腫瘍細胞においてウイルス増殖」を示し、腫瘍に対して「溶解(細胞死滅)能力」を有することが、実験データの裏付けをもって記載されている。
引用文献6には、くわえて、前記1.(1)シ、タ、チの下線部のとおり、上記「改変された腫瘍崩壊性非実験室ウイルス株」を「腫瘍内注入に続く抗腫瘍免疫応答を増強するために設計され」た「JS1をさらに操作して、ICP34.5遺伝子に置き換わるようにヒトもしくはマウスGM-CSFを挿入」することにより作製したことが具体的に記載されている。なおここで、「GM-CSFを挿入」することが、「GM-CSFをコードする遺伝子を挿入」することであることは技術常識に照らし明らかである。
そうすると、引用文献6には、
「単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)のICP34.5遺伝子に置き換わるようにヒト又はマウスGM-CSFをコードする遺伝子が挿入された、改変された腫瘍崩壊性非実験室単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)を含む、癌の腫瘍崩壊治療用の医薬品」(以下「引用発明6」という。)が記載されているといえる。
3.本願発明1と引用発明6との対比
本願発明1と引用発明6を対比する。
引用発明6の「癌の腫瘍崩壊治療用の医薬品」は、本願発明1の「腫瘍の治療に使用するための組成物」に相当する。
引用発明6の「腫瘍崩壊性非実験室単純ヘルペスウイルスI型(HSV1)」は、本願発明1の「腫瘍溶解性ウイルス」である「単純ヘルペスウイルス」に相当する。
引用発明6の「単純ヘルペスウイルスのICP34.5遺伝子に置き換わるように」「挿入され」は、本願発明1の「腫瘍溶解性ウイルスゲノムに挿入され」に相当する。
引用発明6の「ヒト又はマウスGM-CSFをコードする遺伝子」は、GM-CSFが、その生理活性からみて「治療タンパク質」であって、ヒト又はマウスが単純ヘルペスウイルスからみて「異種」であることに照らせば、本願発明1の「治療タンパク質をコードする異種遺伝子」であって、「異種遺伝子が、ヒトGM-CSFをコードする遺伝子であ」るものに相当する。
そうすると、両者は、
「腫瘍の治療に使用するための組成物であって、
腫瘍溶解性ウイルスゲノムに挿入された異種核酸を含む腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、治療タンパク質をコードする異種遺伝子を含み、
前記異種遺伝子が、ヒトGM-CSFをコードする遺伝子であり、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ヒトGM-CSFを発現する単純ヘルペスウイルスである、腫瘍の治療に使用するための組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1においては、腫瘍溶解性ウイルスが、ゲノムに挿入された異種核酸として、ヒトGM-CSFをコードする遺伝子とともに、「前記核酸が、転写制御エレメントに作動可能に連結するキメラヒト/マウスCD40リガンドをコードする配列を含み」、「MEM40とヒトGM-CSFの両方を発現する」ものであるのに対し、引用発明6においては、腫瘍溶解性ウイルスのゲノムが転写制御エレメントに作動可能に連結するキメラヒト/マウスCD40リガンドをコードする配列を含む核酸を含むことについても、MEM40とヒトGM-CSFの両方を発現することについても特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1においては、「前記MEM40と前記ヒトGM-CSF」の挿入が「前記ヒトGM-CSF発現カセットの一方のICP34.5コード領域への挿入と、前記MEM40発現カセットの他方のICP34.5遺伝子コード領域への挿入であるか、または、前記ヒトGM-CSF発現カセット及び前記MEM40発現カセットの両ICP34.5遺伝子コード領域への挿入であるか、または、前記ヒトGM-CSF及び前記MEM40が、内部リボソーム侵入部位により分離され、同一の発現カセットの一部である挿入」であり、「単一のCMVプロモーターを介して各タンパク質を同時発現させる」ことが特定されているのに対し、引用発明6においては、そのような特定はされていない点。
4.判断
(1)相違点について
相違点1について検討する。
引用文献6には、前記1.(1)アのとおり、特許請求の範囲には、「非実験室ウイルス株が異種遺伝子をさらに含むこと」(請求項11)、「異種遺伝子が免疫応答を改変可能な遺伝子であ」り(請求項12)、「免疫応答を改変可能な異種遺伝子が、免疫応答を改変可能な免疫刺激ポリペプチド」であってよく(請求項13)、「免疫刺激ポリペプチドが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)」等であってよいと記載されているところ(請求項14)、発明の詳細な説明には、「免疫刺激ポリペプチド、例えばCD40L、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)…をコードするものである」(前記1.(1)ウ)と記載され、「遺伝子治療および他の治療的用途は、おそらくは複数の遺伝子の投与を必要であろう。複数の遺伝子の発現は、種々の症状の治療において有利であり得る。ヘルペスウイルスは、他のウイルスベクター系のパッケージング能力が制限されていないので、特に適切なものである。従って、複数の異種遺伝子をそのゲノム内に収容することができる。例えば、2~5つの遺伝子をゲノムに挿入することができる。」(前記1.(1)ク)と記載されている。
ここで、癌の免疫療法において、免疫機能の向上は当業者が通常、課題としているものであることから、引用発明6の改変された腫瘍崩壊性非実験室単純ヘルペスウイルスにおいて、免疫機能を向上させるべく、GM-CSFに加えて、これと並んで記載された免疫刺激ポリペプチドであるCD40Lの発現を駆動するように、制御配列と共にCD40Lをコードする核酸をウイルスゲノムに導入すること、すなわち、引用発明6の改変された腫瘍崩壊性非実験室単純ヘルペスウイルスゲノムが異種核酸を含み、前記核酸が、転写制御エレメントに作動可能に連結するCD40リガンドをコードする核酸を含み、前記腫瘍崩壊性単純ヘルペスウイルスが更にCD40リガンドを発現するようにすることは当業者が容易に着想し得たことであって、その際、引用文献1,2に示されるとおり周知のCD40リガンドである、キメラマウス/ヒトCD40リガンド「ISF35」(前記1.(2)ア、イ、前記1.(3)ア、イ)、すなわち本願発明1に係る「MEM40」を採用することに、格別の技術的困難性を見い出せない。
次に相違点2について検討する。
異種遺伝子のウイルスゲノムへの挿入方法につき、引用文献6には、GM-CSF発現カセットを両ICP34.5遺伝子コード領域へ挿入することが具体的に記載されているところ(前記1.(1)チ)、複数異種遺伝子の挿入についても、前記1.(1)ケのとおり、「例えば、これを達成可能な方法は少なくとも2つあ」り、「例えば2以上の異種遺伝子および関連する制御配列を特定のHSV株の中の、そのウイルスゲノムの1つの部位または複数の部位に導入することができる。」、「また、お互いから反対方向を向いているプロモーター対(同じまたは異なるプロモーター)を用いることも可能であり、これらのプロモーターの各々は、上記のように異種遺伝子(同じまたは異なる異種遺伝子)の発現を駆動する。」との記載がされている。
そうするとこれらの記載に接した当業者であれば、MEM40発現カセットを、GM-CSF発現カセットとともに両ICP34.5遺伝子コード領域へ挿入すること、又はヒトGM-CSF発現カセットを一方のICP34.5コード領域へ挿入し、MEM40発現カセットを他方のICP34.5遺伝子コード領域へ挿入して、相違点2に係る構成に至ることは、当然に適宜なし得たことである。
(2) 効果について
本願明細書の発明の詳細な説明には、GM-CSF及びCD40Lの両遺伝子を発現させることにより、腫瘍溶解性ウイルスを殺傷効果が向上したことを示す具体的な薬理試験等の開示は何らされておらず、本願発明1の構成により奏される効果が格別顕著なものであるとはいえない。
かえって、引用文献7には、GM-CSF及びCD40Lの両遺伝子を、ウイルスベクターを用いて導入した腫瘍細胞を接種したマウスの40%は腫瘍を形成せず、初期に形成された腫瘍の一部は退縮し、最終的に70%のマウスの腫瘍がなくなったこと(前記1.(4)イ、ウ)、GM-CSFが腫瘍細胞の免疫原性を増強し、主にCD40LがCD40との相互作用を通じて免疫応答を誘導すること、そして、GM-CSFとCD40Lが樹状細胞を腫瘍に集積、活性化することが記載されているから(前記1.(4)エ~カ)、本願発明1の腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスについても、前記ウイルスが感染した細胞内でMEM40遺伝子及びGM-CSF遺伝子が転写、翻訳され、これらのタンパク質が発現すれば、一定の抗腫瘍効果が得られることは引用文献7の記載からみても当業者が容易に予測できたことである。
(3)請求人の主張について
審判請求人は、令和6年6月26日受付の意見書において、以下のとおり主張している。
「引用文献6には、腫瘍溶解性ウイルスのゲノムが転写制御エレメントに作動可能に連結するキメラヒト/マウスCD40リガンドをコードする配列を含む核酸を含む点と、腫瘍溶解性ウイルスがMEM40を発現する点とについては言及がない。
ここで、引用文献7には、GM-CSF及びCD40Lの両遺伝子をウイルスベクターを用いて導入した腫瘍細胞を接種したマウスの抗腫瘍効果と、GM-CSFが腫瘍細胞の免疫原性を増強し、CD40LがCD40との相互作用を通じて免疫応答を誘導することは記載されているが、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスについては言及や示唆はない。
また、引用文献6の【0094】-【0095】における記載「・・・」は、【0086】-【0087】における記載「・・・」と同様に、一般的な緒言にとどまっていて、実際の個々のケースに機械的に適用できるわけではない。
そのため、腫瘍の治療を目的として、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスを採用し、MEM40とGM-CSFの両方を発現させるようにすることについては、容易には想到しないものと思料する。MEM40とヒトGM-CSFの両方を発現する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスの具体的な設計については、いずれの引用文献にも言及や示唆がない。
そこで、図2-4、【0064】-【0066】における記載「・・・」を根拠に、MEM40とヒトGM-CSFの両方を発現する腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスの具体的な設計を特定する補正を請求項1に行う。」
たしかに、引用文献6には、腫瘍溶解性ウイルスのゲノムが転写制御エレメントに作動可能に連結するキメラヒト/マウスCD40リガンドをコードする配列を含む核酸を含む点と、腫瘍溶解性ウイルスがMEM40を発現する点とについては言及がないが、前記4.(1)で説示したとおり、引用文献6には腫瘍溶解性ウイルスへ組み込む異種遺伝子の免疫刺激ポリペプチドとしてCD40リガンドが、まず第一に例示されており、CD40リガンドとしては、本願優先日当時、MEM40と呼ばれるキメラマウス/ヒトCD40リガンド「ISF35」が、ウイルスベクターを用いた癌の免疫賦活遺伝子治療で既に用いられ、その有効性が確認されていたのであるから、引用発明6において、免疫賦活効果の向上を期待して、腫瘍溶解性ウイルスへCD40リガンドとしてMEM40を採用することは、当業者にとり、むしろ自然に動機付けられることである。
そして、MEM40とGM-CSFの両方を腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスで発現させるための具体的な設計については、前記1.(1)カ~ケにある複数異種遺伝子発現に関する開示に加え、前記1.(1)チのGM-CSFを両ICP34.5遺伝子コード領域へ挿入する具体的な設計に関する開示を踏まえれば、当業者が、HSV1に2リピートあるICP34.5遺伝子コード領域に着目し、両ICP34.5遺伝子コード領域でGM-CSF及びMEM40を、又は一方のICP34.5遺伝子コード領域でGM-CSFを、他方のICP34.5遺伝子コード領域でMEM40を発現するように設計することは、通常の創作能力の発揮にすぎない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
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2022-016460