2022-015894
エレクトロクロミック調光部材、光透過性導電ガラスフィルムおよびエレクトロクロミック調光素子
- 審判番号
- 2022-015894
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-544468外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月05日
- 審決日
- 2024年02月08日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)8月31日(優先権主張 平成29年9月29日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
書」という。)
第2 本願発明
本願の請求項1~6に係る発明は、令和5年10月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
<本願発明>
「樹脂フィルム付きのガラス基材と、光透過性導電層と、エレクトロクロミック調光層とをこの順に備え、該光透過性導電層が、第1インジウム系導電性酸化物層と、金属層と、第2インジウム系導電性酸化物層とを、該樹脂フィルム付きのガラス基材側からこの順に備え、該樹脂フィルム付きのガラス基材が、ガラスフィルムに樹脂フィルムを積層して構成され、該ガラスフィルムの厚みが、20μm~200μmである、エレクトロクロミック調光部材。」
第3 当審拒絶理由通知書における拒絶の理由
本件補正前の本願の請求項1に係る発明に対する上記拒絶の理由は、以下の内容を含むものである。
(進歩性)本件補正前の本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開2015-172666号公報
2.特表2006-526176号公報
3.特開2008-70900号公報
4.実願平3-71959号(実開平5-23487号)のCD-ROM
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由通知書で引用された引用文献1(特開2015-172666号公報、以下、単に「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【請求項1】作用電極シート、対極シート、エレクトロクロミック化合物および電解質を含むエレクトロクロミック素子であって、前記作用電極シートが、厚み200μm以下のガラスシートと、前記ガラスシートの上に成膜された透明導電性酸化物膜を備えることを特徴とするエレクトロクロミック素子。」
「【請求項7】請求項1~6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子を含むことを特徴とする表示装置。」
「【技術分野】【0001】本発明は、エレクトロクロミック素子および表示装置に関する。【背景技術】【0002】近年、携帯情報端末や高度情報通信網などの発達に伴い、薄型かつ軽量で、携帯性に優れた表示装置の開発に注目が集まっている。なかでも、電界により光学的吸収特性や光学的反射特性を変化させて像表示を行い、紙と同様なフレキシビリティと電子情報を容易に書き換えることが可能な機能を有する表示装置、いわゆる電子ペーパー、ペーパーライクディスプレイ、デジタルペーパーなどと呼ばれる表示装置への期待が高まっている。」
「【0017】図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の模式的断面図である。なお、このエレクトロクロミック素子の表示は図1中の矢印方向から観察することになる。【0018】図1に示されるように、エレクトロクロミック素子1は、作用電極シート10を有する。作用電極シート10は、シート状基板10aと、作用電極10bとを備えている。作用電極シート10の下方には、対極シート11が配されている。対極シート11は、シート状基板11aと、対極11bとを備えている。対極シート11は、対極11bが作用電極10bに対向するように配されている。作用電極シート10の周縁部と、対極シート11の周縁部とは、封止部12によって封止されている。作用電極10bと対極11bとの間には、エレクトロクロミック化合物を含むエレクトロクロミック層13と電解質14が配されている。続きを表示(全32行)【0019】本実施形態では、シート状基板10aは、厚み200μm以下のガラスシートにより構成されている。ガラスシートは、電解質に対する耐性が高い。また、ガラスシートの厚みが200μm以下であるため、エレクトロクロミック素子のフレキシブル化が可能となる。ガラスシートの厚みは、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。【0020】ガラスシートの組成は、特に限定されない。ガラスシートは、例えば、アルカリ金属を含んでいてもよいが、無アルカリガラスシートからなることが好ましい。なかでも、ガラスシートが、質量%で、SiO2 50~70%、Al2O3 10~20%、B2O3 3~15%及びMgO+CaO+SrO+BaO 10~18%を含有する無アルカリガラスシートからなることがより好ましい。このような組成を有するガラスとしては、例えば、日本電気硝子株式会社社製ガラスシート(OA-10G)等が挙げられる。【0021】ここで、「無アルカリガラスシート」とは、アルカリ金属を実質的に含まないガラスシートのことをいう。【0022】「アルカリ金属を実質的に含まない」とは、アルカリ金属を意図的に添加していないことを意味する。従って、無アルカリガラスシートは、不可避不純物としてのアルカリ金属を含み得る。通常、無アルカリガラスシートにおいて、アルカリ金属の含有量は、0.2質量%以下である。【0023】作用電極10bは、透明導電性酸化物膜により構成されている。具体的には、作用電極10bは、インジウムスズ酸化物(ITO)膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜またはアンチモンドープ酸化スズ(ATO)膜が挙げられる。なかでも、作用電極10bの抵抗率を低くする観点から、作用電極10bが、ITO膜であることが好ましく、結晶性ITO膜であることがより好ましい。ここで、「インジウムスズ酸化物(ITO)膜」とは、インジウムスズ酸化物を主成分とする膜をいう。インジウムスズ酸化物は、具体的には、スズがドープされたインジウム酸化物である。【0024】ここで、「結晶性ITO膜」とは、XRD(X‐ray diffraction)チャートにおいて結晶性回折ピークを有するITO膜のことをいい、具体的には、空間群Ia-3に属する立方晶系結晶に帰属される結晶性回折ピークを有するITO膜のことをいう。【0025】結晶性ITO膜は、例えば、スパッタリング法や化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等により、ガラスシートを150℃以上といった高温で保持して、形成することができる。結晶性ITO膜の形成温度は、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。【0026】作用電極10bの厚みは、特に限定されない。作用電極10bの厚みは、例えば、10nm~300nm程度とすることができる。【0027】作用電極10bのシート抵抗は、200Ω/□以下であることが好ましく、100μΩ/□以下であることがより好ましい。同様に、作用電極10bの抵抗率は、250Ωcm以下であることが好ましく、200μΩcm以下であることがより好ましい。【0028】シート状基板11aは、金属シートまたは厚み200μm以下のガラスシートにより構成されている。ガラスシートは、シート状基板10aと同じものを使用してもよい。シート状基板11aの厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。【0029】対極11bは、金属膜または透明導電性酸化物膜により構成されている。金属膜は、具体的には、Ag膜、Au膜、Pt膜、Al膜またはCu膜が挙げられる。透明導電性酸化物膜は、作用電極10bと同様のものが挙げられる。対極11bの厚みは、特に限定されない。作用電極10bの厚みは、例えば、10nm~300nm程度とすることができる。対極11bのシート抵抗は、200Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましい。同様に、対極11bの抵抗率は、250μΩcm以下であることが好ましく、200μΩcm以下であることがより好ましい。【0030】エレクトロクロミック層13に含まれるエレクトロクロミック化合物は、作用電極10bと対極11bとの間に印加される電圧が変化したときに、発色したり、消色したり、色調が変化したりする化合物であれば、周知のものを使用することができる。【0031】電解質14は、電子伝導性が低く、イオン伝導性が高いものであれば、周知のものを使用することができる。【0032】本発明の表示装置は、前記いずれかに記載のエレクトロクロミック素子を含むことを特徴とする。長期の使用に対して、輝度や色調が変化しにくく、信頼性に優れる。」
「【0034】(実施例1)厚みが100μmである、100mm×300mmのガラスシート(日本電気硝子株式会社社製OA-10G)の一主面の上に、スパッタリング法により、以下の条件で膜厚が150nmのITO膜を形成して、作用電極シート及び対極シートを得た。【0035】続きを表示(全11行)成膜チャンバの圧力:0.7Pa成膜時のガラスシートの保持温度:250℃図2に、実施例1において形成した作用電極シートのXRDチャートを示す。図2に示されるXRDチャートから、空間群Ia-3に属する立方晶系結晶に帰属される結晶性回折ピークが確認された。したがって、実施例1において形成したITO膜は、結晶性ITO膜であることが分かる。【0036】実施例1において形成したITO膜のシート抵抗は9.6Ω/□であり、抵抗率は144Ωcmであった。【0037】実施例1において形成した作用電極シートおよび対極シートを用いて、エレクトロクロミック素子を作製した。得られたエレクトロクロミック素子を、1週間、所定の電圧を印加し続けたあと、エレクトロクロミック素子を分解し、作用電極シートのITO膜のシート抵抗を測ると、9.8Ω/□とほとんど変わらなかった。」
2 引用文献1の記載に基づいて当業者が把握できる事項
【0018】、【0019】及び【0023】を参照しつつ、図1を見ると、厚み200μm以下のガラスシートにより構成されているシート状基板10aと透明導電性酸化物膜で構成される作用電極10bとを備える作用電極シート10と、エレクトロクロミック層13及び電解質14からなる層と、対極11bと厚み200μm以下のガラスシートにより構成されているシート状基板11aとを備える対極シート11とを、この順に備えるエレクトロクロミック素子1が、当業者にとって把握できる。
[図:0001408477000001.jpg]
3 引用発明の認定
上記1及び2によれば、引用文献には、表示装置に含まれるエレクトロクロミック素子(請求項1及び請求項7)であって、図1に係るエレクトロクロミック素子について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載に係る段落番号等を括弧内に付してある。
<引用発明>
「作用電極シート、対極シート、エレクトロクロミック化合物および電解質を含むエレクトロクロミック素子であって、前記作用電極シートが、厚み200μm以下のガラスシートと、前記ガラスシートの上に成膜された透明導電性酸化物膜を備えるものであり、(請求項1)厚み200μm以下のガラスシートにより構成されているシート状基板と透明導電性酸化物膜で構成される作用電極とを備える作用電極シートと、エレクトロクロミック層及び電解質からなる層と、対極と厚み200μm以下のガラスシートにより構成されているシート状基板とを備える対極シートとを、この順に備え、(上記2)ガラスシートの厚みが200μm以下であるため、エレクトロクロミック素子のフレキシブル化が可能となるものであり、(【0019】)エレクトロクロミック層に含まれるエレクトロクロミック化合物は、作用電極と対極との間に印加される電圧が変化したときに、発色したり、消色したり、色調が変化したりする化合物である(【0030】)表示装置に含まれるエレクトロクロミック素子。(請求項1及び請求項7)」
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比、一致点及び相違点の認定
(1)本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりである。
ア 引用発明の「ガラスシート」は、本願発明の「ガラスフィルム」に、
引用発明の「透明導電性酸化物膜」は、本願発明の「光透過性導電層」に、
それぞれ相当する。
イ 引用発明は、「エレクトロクロミック層に含まれるエレクトロクロミック化合物は、作用電極と対極との間に印加される電圧が変化したときに、発色したり、消色したり、色調が変化したりする化合物である」ものであるから、当該エレクトロクロミック化合物は、調光をするものといえるとともに、それを含む当該エレクトロクロミック層は、調光の機能を備えるといえる。そして、本願発明の「エレクトロクロミック調光層」は、電解質層を含んでいてもよい(本願の発明の詳細な説明の[0056]の記載を参照)とされている。
したがって、引用発明の「エレクトロクロミック層及び電解質からなる層」は、本願発明の「エレクトロクロミック調光層」に、
引用発明の「エレクトロクロミック化合物」「を含むエレクトロクロミック素子」は、本願発明の「エレクトロクロミック調光部材」に、それぞれ相当する。
ウ 本願発明の「樹脂フィルム付きのガラス基材と、光透過性導電層と、エレクトロクロミック調光層とをこの順に備え、該光透過性導電層が、第1インジウム系導電性酸化物層と、金属層と、第2インジウム系導電性酸化物層とを、該樹脂フィルム付きのガラス基材側からこの順に備え、該樹脂フィルム付きのガラス基材が、ガラスフィルムに樹脂フィルムを積層して構成され、」との特定事項について
引用発明の「ガラスシート」は、本願発明の「樹脂フィルム付きのガラス基材」とは、ガラス含有部材である点で一致する。そして、本願発明と引用発明とは、ガラス含有部材がガラスフィルムを含んで構成されている点で一致する。
引用発明の「エレクトロクロミック化合物」「を含むエレクトロクロミック素子」(本願発明の「エレクトロクロミック調光部材」に相当。)は、「厚み200μm以下のガラスシートにより構成されているシート状基板と、透明導電性酸化物膜で構成される作用電極とを備える作用電極シートと、エレクトロクロミック層及び電解質とからなる層と」「をこの順に備える」ものであることから、上記ア及びイにも照らせば、ガラス含有部材と、「光透過性導電層と、エレクトロクロミック調光層とをこの順に備え」るものといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、ガラス含有部材と、「光透過性導電層と、エレクトロクロミック調光層とをこの順に備え、」該ガラス含有部材が「ガラスフィルム」を含んで構成されている点で一致するが、ガラス含有部材が、本願発明は、「樹脂フィルム付きのガラス基材」であって、「ガラスフィルムに樹脂フィルムを積層して構成され」たものであるのに対し、引用発明は、「ガラスシート」であり、また、「光透過性導電層」が、本願発明は、「第1インジウム系導電性酸化物層と、金属層と、第2インジウム系導電性酸化物層とを、」該ガラス含有部材「側からこの順に備え」るものであるのに対し、引用発明は、「透明導電性酸化物膜」である。
エ 本願発明の「該ガラスフィルムの厚みが、20μm~200μmである」の特定事項について
本願発明の「該ガラスフィルムの厚みが、20μm~200μmである」ことと引用発明の「厚み200μm以下のガラスシート」の「厚み」が「200μm以下」であることとは、「該ガラスフィルムの厚みが、」所定の厚さである点で一致する。
(2)以上によれば、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で一応相違するか、又は相違する。
【一致点】
「ガラス含有部材と、光透過性導電層と、エレクトロクロミック調光層とをこの順に備え、ガラス含有部材が、ガラスフィルムを含み、該ガラスフィルムの厚みが、所定の厚さである、エレクトロクロミック調光部材。」
【相違点1】
ガラス含有部材が、本願発明は、「樹脂フィルム付きのガラス基材」であるのに対し、引用発明は、ガラスシートである点。
【相違点2】
光透過性導電層が、本願発明は、「第1インジウム系導電性酸化物層と、金属層と、第2インジウム系導電性酸化物層とを、」該ガラス含有部材「側からこの順に備え」るものであるのに対し、引用発明は、「透明導電性酸化物膜」である点。
【相違点3】
ガラスフィルムの厚みの所定の厚さが、本願発明は、「20μm~200μm」であるのに対し、引用発明は、「200μm以下」である点。
2 判断
(1)相違点1について
引用発明の「エレクトロクロミック素子」は、表示装置に用いるものであるところ、それに含まれる「ガラスシート」は、厚み200μm以下という薄いものである。しかるに、このような薄いガラスが脆く、破損しやすいことは当然の課題であり、引用発明に接した当業者も当該課題を認識できるといえる。
そして、表示装置に関する技術分野において、薄いガラス基板を破損しにくくするために樹脂フィルムを積層させることは、周知技術(必要ならば、特開2003-337549号公報(【0025】~【0027】及び【0047】)、特開2009-79205号公報(【0015】、【0083】及び【0084】)及び特開2015-78252号公報(【0025】、【0132】及び【0133】)を参照。)である。
そうすると、引用発明から出発した当業者であれば、上記の当然の課題を解決するために、上記周知技術を採用することは容易に想到し得たことであり、このようにして、当業者は、相違点1に係る本願発明の構成に至る。
(2)相違点2について
引用発明の「透明導電性酸化物膜」がいわゆる透明電極として用いられることは明らかであるところ、透明電極のシート抵抗が低いのが望ましいことも、当業者にとって明らかである。
そして、表示装置の技術分野において、シート抵抗が低い透明導電体としてIMIと呼ばれるITO/金属/ITOからなる構造を用いることが、周知技術(必要ならば、当審拒絶理由通知書で提示した特表2006-526176号公報(【0044】及び図3Bには、透明な基板とエレクトロクロミック媒体との間に、シート抵抗が低い透明導電体としてITO/銀/ITO又はITO/銀合金/ITOを設けることが記載されている。)及び特開2008-70900号公報(【0038】及び図1には、基板とエレクトロクロミック媒体との間に、ITO/金属/ITOを設けることが記載されている。)を参照。)であるところ、金属が、ITOに比べて、導電率が高いことは、技術常識である。そうすると、当業者は、このようなIMIが、、ITOに比べて、導電率が高いことを認識できるのであり、このことは、同じく表示装置の技術分野において、IMIが、ITOと比べて、透過性が高く、導電性も高い透明電極であることが周知(必要ならば、当審拒絶理由通知書で提示した実願平3-71959号(実開平5-23487号)のCD-ROM(【0005】には、透明性および導電性から銀薄膜を酸化インジウムまたはITOではさみこんだ積層体が望ましい旨記載されている。)のほか、実願平3-73137号(実開平5-25689号)のCD-ROM(【0005】には、上記と同様のことが記載されている。)を参照。)であることからも裏付けられる。
以上によれば、引用発明から出発した当業者は、透明電極のシート抵抗を低くするために、引用発明の「透明導電性酸化物膜」に代えて、上記周知のIMI構造を採用することは容易に想到し得たものであり、このようにして、当業者は、相違点2に係る本願発明の構成に至る。
(3)相違点3について
引用発明の「ガラスシート」(本願発明の「ガラスフィルム」に相当。)の厚さは、「200μm以下」であるところ、引用発明を開示する引用文献の実施例1(【0034】)では、100μmのガラスシートを用いている。
そうすると、引用発明から出発した当業者であれば、相違点3に係る本願発明の構成に適宜至ることができるといえるし、このことは、上記(1)のように、樹脂フィルムを積層させたことをもって左右されることもない。
(4)本願発明の効果について
上記各相違点を総合的に勘案しても、本願発明の作用効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明及び上記各周知技術の奏する作用効果に基づいて予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということもできない。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、引用発明から出発した当業者が、相違点1に係る本願発明の「樹脂フィルム付きのガラス基材」という構成に至らない旨主張し、その根拠として、引用文献1その他の文献には、ガラスシートに樹脂フィルムを積層することは記載されていないことを挙げるが、上記(1)で説示したとおりである。
イ 請求人は、本願発明は、相違点1に係る構成である「樹脂フィルム付きのガラス基材」を用いたことにより、(i)強度に優れ、ロールトゥロール方式のプロセスにより好適であるという点で有利となること、(ii)光透過性導電層を低抵抗・薄膜化することによりフレキシブル性が向上するという本願発明の効果がより好ましく発揮され、低抵抗及びフレキシブル性に顕著に優れるエレクトロクロミック調光部材を得ることができること、を主張する。
しかしながら、(i)のうち、強度が優れる点については、引用発明の「ガラスシート」に周知の樹脂フィルムを積層する以上、当業者は、そのことを当然に予測できる。また、ロールトゥロール方式のプロセスにより好適であるという点については、本願発明の特定事項に基づく主張ではない。
(ii)については、請求人の主張するところが判然としないが、「樹脂フィルム付きのガラス基材」を用いることによってフレキシブルという効果が得られるということであれば、引用発明の「ガラスシート」は「ガラスシートの厚みが200μm以下であるため、エレクトロクロミック素子のフレキシブル化が可能となるものであ」ることから、樹脂フィルムを積層させても、フレキシブルという効果が得られることは、当業者が予測できるといえる。さらに言えば、樹脂フィルム付きのガラス基材を用いると、なぜ、光透過性導電層を低抵抗・薄膜化することによりフレキシブル性が向上するという本願発明の効果がより好ましく発揮され、低抵抗およびフレキシブル性に顕著に優れるエレクトロクロミック調光部材を得ることになるのか、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載並びに技術常識に照らして不明であることから、請求人の主張する効果は、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載に基づくものともいえない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(6)小括
以上によれば、本願発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
上記のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-015894