2022-015087
符号化装置
- 審判番号
- 2022-015087
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-096225外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2023年08月01日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
- 【請求人代理人】新居 広守
- 【請求人代理人】寺谷 英作
- 【請求人代理人】道坂 伸一
- 分類
- P18 .121-WY (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 17項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)5月23日(パリ条約による優先権主張 2016年5月27日、米国)を国際出願日とする特願2018-519545号の一部を令和3年6月8日に新たに特願2021-96225号として出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
同年 7月27日付け:拒絶理由通知書
同年11月 2日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月 2日付け:拒絶理由通知書
同年 5月17日付け:拒絶査定
同年 9月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月24日 :意見書の提出
同年 6月16日 :審判請求人との面接
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、令和4年9月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。(符号は合議体が付したものであり、以下、「構成A」~「構成D」等という。以下、同じ。)
「【請求項1】A 処理回路と、B 前記処理回路に接続されたメモリとを備え、C 前記処理回路は、前記メモリを用いて、続きを表示(全11行)C1 複数の画像を繋ぎ合せる繋ぎ合わせ処理を行うことで、繋ぎ合わせ画像を生成し、C2 前記繋ぎ合わせ画像中の、前記繋ぎ合わせ処理によって生成される空き領域を特定するパラメータを取得し、C3 前記繋ぎ合わせ画像について、画面間予測処理を行い、C4 前記パラメータをビットストリームに書き込み、C31 前記画面間予測処理は、前記空き領域内の画素の値を前記繋ぎ合わせ画像中の前記空き領域ではない他の領域の値で置換するパディング処理を含み、C311 前記他の領域の値は、前記空き領域から最も近い画素の値である、D 符号化装置。」
第3 令和5年2月27日付け拒絶理由通知の概要
令和5年2月27日付け拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という)の理由の概要は以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1に記載された発明に引用文献1に記載の技術事項及び周知の技術事項を適用することで、本願の請求項1に係る発明を想到することは当業者ならば容易になしえたものである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開2004/004363号(拒絶査定における引用文献2)
2.特開2004-207862号公報(拒絶査定における引用文献3、周知技術を示す文献)
3.特開2004-40575号公報(拒絶査定における引用文献4、周知技術を示す文献)
第4 本願発明と引用発明との対比および判断
1 引用発明、引用文献記載事項の認定
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(1)当審拒絶理由通知に引用した引用文献1である、国際公開2004/004363号には、以下の記載がある。
ア 「図1に示すように、本発明における第1の実施の形態は、パノラマ画像を符号化する符号化装置(A)、符号化データを蓄積する蓄積装置(D)と、蓄積された符号化データの一部を取り出し、受信装置に送信する送信装置(B)と、送信装置(B)に対してパノラマ画像の表示位置を指定し、送信装置からの符号化データを受信して復号・表示する受信装置(C)とから成るパノラマ画像送受信システムである。図1において符号(E)は有線あるいは無線のネットワークである。」(明細書第6頁第12行から第17行)
イ 「図2は第1の実施の形態の符号化装置(A)を示すブロック図である。図2の符号化装置(A)は、パノラマ画像を撮影・デジタル化し、パノラマ画像を入力する入力部(画像入力手段)10と、入力されたパノラマ画像を該パノラマ画像の全体よりも小さい矩形等の領域であって複数画素からなる小画面の画像(以下「タイル」という)に分割するタイル分割部(分割手段)12と、分割された各タイルを符号化する符号化部(符号化手段)14と、各タイルへのアクセスおよびタイル内の指定時間へのランダムアクセスを行うための管理情報を、符号化データに付加する管理情報付加部(管理情報付加手段)16とを有して構成される。」(明細書第6頁第18行から第26行)
ウ 「図3は図2のタイル分割部12でパノラマ画像を分割した例を示す。ここで、Lは左目用パノラマ画像、Rは右目用パノラマ画像とし、それぞれが5個のタイルに分割されたものとする。分割されたタイルの番号を0,1,2,3,4とし、左目用パノラマ画像のタイルにLT0~LT4、右目用パノラマ画像のタイルにRT0~RT4と記号を付ける。各パノラマ画像のサイズが6000×480画素の場合、各タイルの大きさは1200×480画素となる。なお、ここでは各パノラマ画像を水平5個×垂直1個のタイルに分割したが、タイル分割の方法はこれに限るものではなく、例えば水平10個×垂直3個のようにより細かく分割しても良いし、各タイルの大きさを可変としても良い。図2の符号化部14は各タイルを圧縮符号化する部分である。符号化方式として、パノラマ画像が静止画の場合はJPEG,JPEG2000など静止画用の国際標準方式、パノラマ画像が動画(パノラマ動画像)の場合はMPEG-2,MPEG-4など動画用の国際標準方式が用いられる。もちろん、国際標準方式以外の独自方式を用いても良い。また、前記パノラマ動画像の場合、図3の各タイルは1枚の画像ではなく所定時間間隔で表示する複数のフレームからなる。図4に、パノラマ動画像の左目用画像(左目用パノラマ動画像)をタイル分割した例を示す。f0,f1,f2,・・・は動画の各フレームを示し、例えばタイルLT1はLT1f0,LT1f1,LT1f2,・・・のように時間的に連続した複数のフレームから構成される。パノラマ動画像をMPEG-4で符号化する場合の例を図5に示す。MPEG-4ではコマ落しを用いることが出来るため、符号化されるフレームはLT1f0,LT1f3,LT1f5,LT1f10のようにフレーム番号が飛び飛びになっている。また、この例ではLT1f0をフレーム内符号化フレーム(Iフレーム)、LT1f10をLT1f0の復号フレームから予測符号化するフレーム(Pフレーム)、LT1f3,LT1f5をLTf0,LTf10の復号フレームから両方向予測符号化するフレーム(Bフレーム)として符号化している。このような符号化方式で符号化されたデータにランダムアクセスする場合、後で述べるように、アクセスしたいフレームの近傍(直前または直後)のIフレームから復号を行う。」(明細書第7頁第1行から第8頁第3行)
エ 「[第4の実施の形態]第1の実施の形態で説明した送信装置では、一般に表示位置・サイズに対応したタイルが複数あるため、伝送データに無駄が発生する。本発明の第4の実施の形態では図19の送信装置のように、復号部30で復号したデータを切り出し部32で表示位置・サイズの部分を切り出して合成部(合成手段)34で合成画像を作成する。そして、再符号化部(再符号化手段)36で合成画像を再符号化して送信部28により送信する。このように必要な部分の復号画像を切り出し合成し再符号化して送信し、データ量を最少にする。合成画像には、例えば、図20に示すように左目用と右目用の切り出し画像を左右くっ付けた状態の1フレームの合成画像にすることができる。また、図21に示すように、全体画像が確認できるように縮小したパノラマ画像も、切り出した左右の画像の上側に付けるなどした1フレームの合成画像とすることができる。また、図22に示すように、縮小パノラマ画像を左右の切り出し画像の先頭に付けるようにした合成画像にしても良い。さらに、図23に示すように、左右の切り出し画像と縮小パノラマ画像の3つの画像を合成したとき、一般には余りの領域が生じる。余りの部分についてはパディングによってデータ(ダミーデータ)を埋め、全体として矩形の画像を作成する。いずれの場合にも、合成した画像を受信装置で分離するための情報を符号化データのヘッダ部分などに付加することとなる。あるいは、このような情報はヘッダ部分ではなく管理情報に含めるようにしても良い。」(明細書第16頁第16行から第17頁第11行)
オ 上記ア、イ、エから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。(記号a~c41は合議体が付した。以下、構成a~c41等という。また、記号(ア)(イ)(エ)は上記ア、イ、エにおいて引用した引用文献1の記載に対応して合議体が付した。)
「a パノラマ画像を符号化する符号化装置と、符号化データを蓄積する蓄積装置と、蓄積された符号化データの一部を取り出し、受信装置に送信する送信装置と、送信装置に対してパノラマ画像の表示位置を指定し、送信装置からの符号化データを受信して復号・表示する受信装置とから成るパノラマ画像送受信システムにおける送信装置であって、(ア)符号化装置は、入力されたパノラマ画像を該パノラマ画像の全体よりも小さい矩形等の領域からなる小画面の画像(タイル)に分割し、分割された各タイルを符号化するものであり、(イ)c1 送信装置では復号したデータを切り出し部で表示位置・サイズの部分を切り出して合成部で合成画像を作成し、(エ)c4 再符号化部で合成画像を再符号化するものであって、(エ)c11 合成画像には、左目用と右目用の切り出し画像である左右の切り出し画像と全体画像が確認できるように縮小したパノラマ画像の3つの画像を合成したとき、余りの領域が生じることから、余りの部分についてはパディングによってデータを埋め、全体として矩形の画像を作成するものであり、(エ)c41 合成した画像を受信装置で分離するための情報を符号化データのヘッダ部分などに付加する、(エ)a 送信装置。(ア)」
カ また、上記ウから、引用文献1には、以下の事項が記載されているものと認められる(以下、これを「引用文献1記載事項」という。)。
「符号化方式として、パノラマ画像が動画(パノラマ動画像)の場合はMPEG-4が用いられ、パノラマ動画像をMPEG-4で符号化する場合、復号フレームから予測符号化するPフレーム、ないし復号フレームから両方向予測符号化するBフレームとして符号化すること」
(2)次に、当審拒絶理由通知において引用した引用文献2である特開2004-207862号公報には、以下の記載がある。
「【0002】【従来の技術】一般に映像をブロックベースの符号化方式で符号化する場合、符号化領域のサイズを符号化処理ブロックサイズの倍数となるようにする制限から、適当な数のライン、または画素を付加して符号化することが行なわれる。たとえば、一般的な映像フォーマットとして、1080iフォーマット(特許文献1を参照)がある。このフォーマットは毎秒29.97又は30フレームのインタレース映像で、総走査線数1125本、有効画素領域が水平方向1920画素、垂直方向1080画素(ライン)の映像信号である。この映像信号の有効画素領域をMPEG-2(特許文献2を参照)で符号化する場合、符号化領域の垂直方向サイズを32の倍数の画素(ライン)数とするという制限から、1920画素×1080画素の映像の下端に8ライン分適当なデータを付加し1920画素×1088画素の映像を作り、これを符号化する方法が一般的である。続きを表示(全15行)このとき、画面上端、画面左右端は有効画素領域境界とマクロブロック境界が一致しているが、画面下端は有効画素領域境界とマクロブロック境界が一致していない。・・・【0004】このように、映像フォーマット規格で規定されている有効画素領域とは別に、本来の映像パターンの画素データが配置されている画素領域を、以下、有意な画素の領域、または有意画素領域と呼ぶことにする。このような映像信号をMPEG-2で符号化する場合、画面左右端は本来有意な画素の領域の境界とマクロブロック境界が一致しているが、画面上端、画面下端はともに本来有意な画素の領域境界マクロブロック境界と一致していない。有意な画素の領域境界の外側のデータが黒一色や制御用データなど、画像内容と特に相関のない信号であった場合には、上記のような、本来の有意な画素の領域境界とマクロブロック境界と一致していない有意な画素の領域境界付近において、符号化劣化によってその領域境界がぼやけ、有意な画素の領域外のパターンが有意な画素の領域に侵食したような復号映像になる場合がある。・・・【0006】一方、近年HDTVを超える解像度をもつ大画面映像の撮像システムや、表示システムが開発されている。このような撮像システムにおいては、1つの大画面映像を複数の矩形の領域に分割し、それぞれの分割領域の映像を既存の映像フォーマット信号にのせて出力するものが多い。また、表示システムについても、大画面映像の各分割領域の映像信号がのった既存の映像フォーマットの分割映像信号を表示システムに入力し、分割映像を繋ぎ合わせて1つの大画面映像を表示するものが多い。・・・【0007】しかしこの際に、前述のように、各分割映像において有意な画素の領域境界とマクロブロック境界が一致していない部分が存在した場合、有意な画素領域外のパターンが有意な画素領域に侵食したような符号化劣化が発生する。そして、その領域境界が大画面映像を構成する他の分割映像との境界であった場合、分割映像を繋ぎ合わせて大画面映像を表示した際に、その劣化が画面内の分割境界に沿って非常に良く目立つという問題が発生する。」
という記載を前提として、
「【0008】このような問題を解決する本発明とは異なる手段としては、パディングによる方法がある。符号化対象領域内の有意画素領域以外の非有意画素領域の各画素について、その画素から最も近い有意画素領域の画素の画素値をコピーする方法があり、このような方法をパディングという。」
また、当審拒絶理由通知において引用した引用文献3である特開2004-40575号公報には、以下の記載がある。
「【0004】ところで、MPEG4ビジュアル圧縮符号化規格では、矩形形状のVOPに対して符号化を行う場合、動きベクトルにより特定される参照画像が、VOPの領域外にあってもよいとされている。例えば、図12のAに示すように参照画像の一部又は全部のピクセルがVOPの水平方向の領域外となっていてもよいし、図12のBに示すように参照画像の一部又は全部のピクセルがVOPの垂直方向の領域外となっていてもよいし、図12のCに示すように参照画像の全部のピクセルがVOPの水平及び垂直方向ともに領域外となっていてもよい。【0005】しかしながら、参照画像の一部又は全部のピクセルがVOPの領域外となっている場合、その領域外となっている部分にはデータが存在していないので、このままでは、復号時にマクロブロックに対する動き補償処理を行うことができない。そのため、MPEG4ビジュアル圧縮符号化規格では、参照画像の一部又は全部のピクセルがVOPの領域外にある場合には、復号時に、領域外に位置するピクセル(領域外ピクセル)のデータを生成する必要がある。MPEG4ビジュアル圧縮符号化規格では、領域外ピクセルのデータを生成する処理を、パディング処理と呼んでいる。」という記載を前提として、
「【0007】一般に、領域外ピクセルのもっとも近傍にあるVOP内のピクセルデータを、領域外ピクセルにコピーすることにより、参照画像のパディング処理が行われる。【0008】・・・VOPの水平方向の領域外に領域外ピクセルがある場合には、VOP内の水平方向の境界に位置するピクセルであって且つ領域外ピクセルに最も近いピクセルのデータを、その領域外ピクセルにコピーすることによりパディング処理が行われる。・・・VOPの垂直方向の領域外に領域外ピクセルがある場合には、VOP内の垂直方向の境界に位置するピクセルであって且つ領域外ピクセルに最も近いピクセルのデータを、領域外ピクセルにコピーすることによりパディング処理が行われる。・・・VOPの水平方向及び垂直方向ともに領域外に領域外ピクセルがある場合には、VOP内の水平方向及び垂直方向の境界に位置するピクセル(コーナー部分のピクセル)であって且つ領域外ピクセルに最も近いピクセルのデータを、領域外ピクセルにコピーすることによりパディング処理が行われる。」
という記載がある。
そうすると、上記引用文献2に示される、有意画素領域と黒一色のような空き領域である非有意画素領域を合わせて構成される有効画素領域を符号化することを前提とする、空き領域であったり、引用文献3に示される、VOPに領域外の部分を含めた画像をフレームメモリに格納して符号化処理を行うことを前提とする、VOPの領域外を含む、非有意画素領域や領域外と呼ばれる領域である、データの存在しない空き領域の画素(ピクセル)を、有意領域やVOP内の領域である空き領域ではない他の領域であって、空き領域から最も近い画素の値で置換する技術は、空き領域をパディングする処理における周知技術であるものと認められる。
2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア-1 引用発明における構成aの「送信装置」は、符号化装置によりパノラマ画像を符号化して得られた符号化データを復号部で復号し、最終的に再符号化を行うことから、全体として符号化処理を行うといえ、本願発明の構成Dと同様に「符号化装置」であり、本願発明の構成A、Cの「処理回路」に対応する構成を備えているといえる。
ア-2 ただし、本願発明は、構成A、B、Cにおいて、「処理回路と、前記処理回路に接続されたメモリを備え、前記処理回路はメモリを用い」て処理を行うのに対して、引用発明は、これらの特定がなされていない点で相違する。
イ-1 引用発明の構成c1のように「復号したデータを切り出し部で表示位置・サイズの部分を切り出して合成部で合成画像を作成」することであって、構成c11のように「合成画像には、左目用と右目用の切り出し画像である左右の切り出し画像と全体画像が確認できるように縮小したパノラマ画像の3つの画像を合成」することは、本願発明の構成C1同様に「複数の画像を繋ぎ合わせる繋ぎ合わせ処理を行うことで、繋ぎ合わせ画像を生成」するものといえる。
イ-2 また、このような合成画像を作成する処理を行うための構成c1の「合成部」は、本願発明の構成A、Cの「処理回路」の一部の処理を行うものといえる。
イ-3 次に、引用発明の構成c1の「合成部」において、構成c11のように「パノラマ画像の3つの画像を合成したとき、余りの領域が生じることから、余りの部分についてはパディングによってデータを埋め、全体として矩形の画像を作成」した後、構成c41のように「合成した画像を受信装置で分離するための情報を符号化データのヘッダ部分などに付加する」ことを行うにあたっては、パノラマ画像の3つの画像を分離することや、余りの領域を分離するために、パノラマ画像を構成する個々の画像や、余りの領域を特定するための情報を取得する必要があることは明らかである。
そして、このうち、余りの領域を特定するための情報を取得することは、本願発明の構成C2の「前記繋ぎ合わせ画像中の、前記繋ぎ合わせ処理によって生成される空き領域を特定するパラメータを取得」することに相当する。
イ-4 また、引用発明において、構成c4のように「合成画像を再符号化する」場合、余りの領域を特定するための情報を構成c41のように「符号化データのヘッダ部分などに付加する」ことは、本願発明の構成C4の「前記パラメータをビットストリームに書き込」むことに相当する。
また、引用発明において、上記「符号化データのヘッダ部分などに付加する」処理は、構成c4の「再符号化部」において行われるものといえるが、この「再符号化部」は本願発明の構成A、Cの「処理回路」の一部の処理を行うものといえる。
イ-5 ただし、イ-2、イ-4に関して、本願発明は構成A、Cの「処理回路」において「複数の画像を繋ぎ合わせる繋ぎ合わせ処理」や「パラメータをビットストリームに書き込」む処理を行うのに対して、引用発明は「合成部」や「再符号化部」において「合成画像を作成」する処理や「情報を符号化データのヘッダ部分などに付加する」処理を行う点で相違する。
ウ-1 引用発明の送信装置では、構成c11に特定されるように、「パノラマ画像の3つの画像を合成したとき、余りの部分についてはパディングでデータを埋め、全体として矩形の画像」が「作成」された後、構成c4に特定されるように、この合成画像を「再符号化部」で再符号化するものといえる。
そうすると、引用発明の送信装置は、本願発明の構成C3、C31、C311のうち「繋ぎ合わせ画像」について符号化処理を行う点、符号化処理に関連して、「空き領域の画素の値を」「パディング処理」する点で共通する。
ウ-2 また、引用発明の「送信装置」において、パノラマ画像の3つの画像の合成及びパディングによって全体として矩形の画像を作成すること、及びこの画像を再符号化するという処理を行う部分であって、構成c1の「合成部」及び構成c4の「再符号化部」を含む部分は、本願発明の構成A、Cの「処理回路」の一部の処理を行うものといえる。
ウ-3 一方、本願発明は構成C3のように「繋ぎ合わせ画像について、画面間予測処理を行」うものであり、構成C31のように、パディング処理は、「画面内予測処理」に含まれるものであって「前記繋ぎ合わせ画像中の前記空き領域ではない他の領域の値で置換する」ものであり、構成C311のように「他の領域の値は、前記空き領域から最も近い画素の値である」のに対して、
引用発明の送信装置は、パディング処理及び合成画像の符号化を行うものの、画面内予測処理を行うことを特定するものではなく、パディング処理は構成c1の「合成部」で構成c1、c11のように「合成画像を作成」する処理において行われるものであって、「画面間予測処理」に含まれるものではなく、また、パディング処理の内容は「前記繋ぎ合わせ画像中の前記空き領域ではない他の領域の値で置換する」ものであって、「他の領域の値は、前記空き領域から最も近い画素の値である」とは特定されていない点で相違する。
そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A’B’C’ 符号化処理を行うための構成を備え、
C1 複数の画像を繋ぎ合せる繋ぎ合わせ処理を行うことで、繋ぎ合わせ画像を生成し、
C2 前記繋ぎ合わせ画像中の、前記繋ぎ合わせ処理によって生成される空き領域を特定するパラメータを取得し、
C4 前記パラメータをビットストリームに書き込み、
C31’ 前記繋ぎ合わせ処理を行うことで、繋ぎ合わせ画像を生成する時に、前記空き領域内の画素の値についてのパディング処理を含む、
D 符号化装置。
(相違点1)
複数の画像を繋ぎ合わせすることで、繋ぎ合わせ画像を生成し、繋ぎ合わせ画像中の、前記繋ぎ合わせ処理によって生成される空き領域を特定するパラメータを取得し、前記繋ぎ合わせ画像について符号化処理を行い、前記パラメータをビットストリームに書き込み、前記符号化処理に関連して、空き領域内の画素の値をパディング処理するにあたって、
本願発明は、処理回路と、処理回路に接続されたメモリとを備え、これらの処理を行うにあたり、処理回路はメモリを用いて行うのに対して、
引用発明の「合成部」及び「再符号化部」を含む「送信装置」は、これらの処理を行うものの、処理回路と、処理回路に接続されたメモリとを備え、処理回路はメモリを用いて行うとは特定されていない点。
((ア-2)、(イ-5)、(ウ-2)、(ウ-3)より)
(相違点2)
「繋ぎ合わせ画像について」符号化処理を行うにあたり、本願発明は、「画面間予測を行」うものであって、「画面間予測処理」は「パディング処理を含」むのに対して、引用発明は「繋ぎ合わせ画像について」符号化処理を行うにあたり、「画面間予測を行う」ことを特定するものではなく、また、「画面間予測処理は」「パディング処理を含」むとは特定されていない点。
((ウ-3)より)
(相違点3)
パディング処理について、本願発明は「前記繋ぎ合わせ画像中の前記空き領域ではない他の領域の値で置換する」ものであり、「他の領域の値は、前記空き領域から最も近い画素の値である」のに対して、引用発明は、「前記繋ぎ合わせ画像中の前記空き領域ではない他の領域の値で置換する」ものであり、「他の領域の値は、前記空き領域から最も近い画素の値である」とは特定されていない点。
((ウ-3)より)
3 相違点に対する判断
事案に鑑み、最初に相違点2について検討する。
(相違点2について)
引用発明は、上記のとおり構成c1の「合成画像を作成」する「合成部」によってパディング処理を行うものである。
また、引用発明は「合成画像を再符号化する」「再符号化部」を具備すること、上記1(1)カのとおり、引用文献1には「符号化方式として、パノラマ画像が動画(パノラマ動画像)の場合はMPEG-4が用いられ、パノラマ動画像をMPEG-4で符号化する場合、復号フレームから予測符号化するPフレーム、ないし復号フレームから両方向予測符号化するBフレームとして符号化すること」が記載されていることから、上記「再符号化部」において画面間予測処理を行うように構成することは当業者ならば容易になしえたものといえる。
しかしながら、引用文献1記載の事項や上記周知技術には、パディング処理を「再符号化部」における「画面間予測処理」において行うことは示されていない。
さらに、引用発明において、パディング処理を「合成部」における「合成画像」の作成時点ではなく、「再符号化部」における「画面間予測処理」において行うように変更することの動機付けはない。
そうすると、相違点1、3について検討するまでもなく、引用発明に引用文献1記載事項及び上記周知技術を適用することによっては、当業者といえども本願発明を想到することは容易になしえたものであるとはいえない。
4 小括
以上から、引用発明に引用文献1記載事項及び上記周知技術を適用することによっては、当業者といえども本願発明を想到することは容易になしえたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないとはいえない。
第5 原査定についての判断
1.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
本願の請求項1~3に記載された発明は、引用文献1~4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
<引用文献等一覧>
1.Adeel Abbas, "GoPro test sequences for Virtual Reality video coding", Joint Video Exploration Team (JVET), 2016-05-26, [JVET-C0021] (version 4)
2.国際公開第2004/004363号
3.特開2004-207862号公報
4.特開2004-40575号公報
2.原査定の引用文献の記載
上記1.の引用文献2ないし引用文献4は、上記第3、第4における引用文献1ないし引用文献3である。
また、上記1.の引用文献1には以下の記載がある。(下線は合議体が付した。)
ア 「1.2 Cubic Format・・・A simple conversion tool [3] was shared that transforms video from equirectangular layout to cubic layout. The layout generated by this tool outputs six faces of the cube in the following format:[図:0001401364000001.jpg]We will refer to this layout as Cubic-3x2 layout.」(第2頁の最終パラグラフから第3頁第1行)
(仮訳:1.2キュービックフォーマット
・・・正矩円筒レイアウトからキュービックレイアウトに変換する簡易変換ツール[3]が公開された。このツールで生成されたレイアウトは,以下のフォーマットで立方体の6面を出力する。このレイアウトをCubic-3x2レイアウトと呼ぶことにする。)
イ 「Since the image in the above format does not have any continuity across cube boundaries, we felt the need to rearrange cube faces in a layout that preserves continuity, as shown below:[図:0001401364000002.jpg]We are calling this layout as Cubic-4x3 layout. An example image in this layout is shown below:・・・We feel that majority of the tools in existing video compression standards like HEVC and AVC will work well in compressing images in Cube-4x3 format. Ideally, the areas marked in black region will not be encoded and since there is continuity across faces, we expect it to perform better (when compared against Cube-3x2) in a single tile or slice formulation.」(第3頁第4行から第4頁第5行)
(仮訳:上記フォーマットの画像は、キューブの境界をまたぐ連続性がないため、以下のように、連続性を保つようにキューブ面をレイアウトし直す必要性を感じた。このレイアウトをCubic-4x3レイアウトと呼んでいる。このレイアウトでの画像例を以下に示す。・・・
HEVCやAVCのような既存の映像圧縮規格のツールの大半は、Cube-4x3形式の画像を圧縮する際にうまく機能すると考えている。理想的には、黒い領域でマークされた領域はエンコードされず、面全体に連続性があるため、単一のタイルまたはスライス形式で(Cube-3x2に対して比較した場合)より良いパフォーマンスを示すと予想している。)
ウ 「It would be interesting to make following changes to the reference software to observe further bitrate savings:1) Do not encode black areas.2) Fill black area with rotated top and bottom faces to align with side faces. Do not encode these regions, but use this new picture for motion estimation (and motion compensation for the decoder). This way motion of an object going from a side face to top or bottom face will be captured.」(第5頁第7行から第13行)
(仮訳:リファレンスソフトに以下のような変更を加えて、さらなるビットレート削減を観察してみるのも面白いかもしれない。
1)黒い部分をエンコードしない。
2)黒い領域を回転した上下の面で埋め、側面と一致させる。これらの領域はエンコードせず、この新しい画像を動き推定(およびデコーダの動き補償)に使用する。こうすることで、側面から上面や下面に向かう物体の動きが捕捉される。)
上記アからウの記載から、引用文献1には、正矩円筒レイアウトからキュービックレイアウトに変換する場合、連続性を保つようにレイアウトし直したCubic-4x3形式の画像における黒い領域について、黒い領域を回転した上下の面で埋めることで側面と一致させ、これらの領域はエンコードしないようにして、このようにして得られた画像を動き推定(およびデコーダの動き補償)に使用することが示されているといえる。
そうすると、引用文献1には、上記相違点2のうち、連続性を保つようにレイアウトし直したCubic-4x3形式の画像、すなわち、「繋ぎ合わせ画像について」符号化処理を行うことに関連して、黒い領域を回転した上下の面で埋めるという「パディング処理」を行い、その後で、動き推定や動き補償を含む「画面間予測処理」を行うことはいえるものの、「画面間予測処理」は「パディング処理」を含むものではなく、上記相違点2に関する事項を導くことはできない。
したがって、原査定の引用文献1によっては、少なくとも上記相違点2の事項を導くことはできず、上記第4の3 相違点に対する判断と同様に、原査定の理由における引用文献1ないし引用文献4の記載に基づいては、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1記載の事項及び周知技術に基づいては、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015087