特許拒絶査定不服審判
2022-012239
歯科診療システム
- 審判番号
- 2022-012239
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-201071外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年08月05日
- 審決日
- 2023年09月12日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社吉田製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (A61C) / P18 .537-WZ (A61C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-201071「歯科診療システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月15日出願公開、特開2022- 88930〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和 2年12月 3日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 1月27日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 4月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 4月28日付け:拒絶査定
令和 4年 8月 5日 :審判請求書及び同時に手続補正書の提出
令和 5年 1月17日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月17日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和 5年 3月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「表示結像位置及び表示操作位置が同一面となる空中操作表示装置と、
前記空中操作表示装置を操作者によって前記表示操作位置が操作可能な位置に配置可能かつ感染予防可能なハンドルと、
前記空中操作表示装置が一体的に設けられる診療用テーブル、インスツルメントハンガー又は無影灯と、
患者用椅子と、
を備え、
前記ハンドルは、表面が抗菌素材又は交換可能な部材によって感染予防可能に構成されており、
前記操作者は、歯科医師又は補助者であり、
平面視で、前記患者用椅子に座った又は寝た患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合に、
前記空中操作表示装置は、前記ハンドルを用いた移動によって、前記表示結像位置に結像される画像を、前記時計の9時から1時の範囲に位置する前記操作者及び前記患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な水平方向の視野角の範囲、かつ、当該操作者によって操作可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において12時~1時側を向くように配置可能であり、
結像される前記画像が正面である0度から見たときと同様に見える前記画像に対する視認角度の範囲である前記視野角は、-45度から45度の範囲である
ことを特徴とする歯科診療システム。」
第3 拒絶の理由
当審が令和 5年 1月17日付けで通知した拒絶理由は、次の理由1、2を含むものである。
1 理由1
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に例示される周知の技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2001-327559号公報
引用文献2:特開2011-130857号公報
引用文献3:特許第5927366号公報
2 理由2
本願発明の「表示結像位置に結像される画像」について、「9時から1時の範囲に位置する前記操作者及び前記患者用椅子に位置する患者の両方によって視認可能な視野角の範囲に、…配置可能であり」との特定では、当該画像が、歯科診療システムが配置される領域内のどこに位置しているのか明確でない。
また、このことに関連して、「9時」や「1時」と特定される方向の中心となる位置からみて、画像の位置、操作者・患者の位置がそれぞれどのような距離にあるのかによっても画像の見え方が変わるし、顔の向きによっても変わると考えられるから、この点からも明確でない。
よって、特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 理由1(進歩性)についての当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
上記引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科治療台における患者もしくはドクターへの歯科治療情報を確認するためのモニターの設置に関する。」
イ「【0003】この際に患者もしくはドクターへの情報を確認する手段としてモニターなどが使用され、最近では液晶モニター等がドクターもしくは患者の確認できる位置に配備されている。」
ウ「【0006】本発明は、前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、液晶モニターやビュワー等をドクターテーブルと患者が着座する歯科用椅子との中間位置に設け、患者の歯科治療情報を確認しながら、歯科用椅子の背凭れが立設した状態でのコンサルティングが可能で歯科用椅子が寝た仰臥状態での治療位置状態のいずれにおいてもドクターが画面上の情報を見ながら治療することができるように歯科用モニター付ドクターテーブルを提供せんとするものである。」
エ「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の歯科用モニター付ドクターテーブルは前記した目的を達成せんとするもので、その手段は、基台に軸支されるアームと、下端部で前記アームに支持され且つ電気的諸装置が組み込まれる縦型ボックスと、該縦型ボックス上部の一端に支持杆により支持されるドクターテーブルと、該縦型ボックス上部の他端にはモニターが設けられる。」
オ「【0010】図1は歯科治療台全体を示す背面図、図2は歯科治療台全体を示す側面図、図3は患者とドクターとがコンサルティングする状態を示す平面図、図4はドクターがモニターを見ながら治療をする状態を示す平面図、図5はモニターの支持杆の構造を示す断面図、図6はモニターの支持杆の構造を示す拡大断面図である。」
カ「【0011】Aは患者、Bはドクターを示す。1は基台、2は前記基台1に回動自在に軸支されるアームであり、2aは前記アーム2の回転軸カバーである。3は前記アーム2に支持され、ハンドピースなどの歯科用器具や椅子等を制御するための電気的諸装置が組み込まれる縦型に形成される縦型ボックスである。
【0012】4は前記縦型ボックス3の上部一端に設けられる支持杆であり、上部には歯科用器具や薬品などを載置するための天板を有するドクター用のテーブルであり、前記支持杆4に対して回動自在に設けられている。
【0013】また前記テーブル4の前方下部には、歯科用器具等が係止または載置することのできるホルダー6が支持杆6aに支持されている。7は前記テーブルを移動させる際に掴む取っ手であり、適宜位置に位置させることができるようになっている。
【0014】8は前記電気的諸装置が組み込まれる縦型ボックス3の上部他端に設けられる支持杆であり、9は特に液晶モニターやビューワーなどの薄型画面で形成されるモニターである。10は椅子昇降部、11は椅子本体であり、11aはシート部、11bは背凭れ(当審注:【0016】、【0017】及び図2の記載に照らして、正しくは「11bはシート部、11aは背凭れ」と解される。)である。
【0015】12は患者がうがいなどをするためのボールユニット、13は歯科治療を行なう際に患者の歯の治療部位を照射するための歯科用照明具であり、アーム14で水平移動且つ上下動自在に支持されている。
【0016】以上の構成から、図3および図4によって使用状態を説明する。治療を行なう前に患者に対して、治療の状況やX線写真などにより充分にコンサルティングを行なうが、その際の位置関係について図3で説明すると、患者Aは椅子シート11bに着座した状態の位置で、ドクターBは椅子の横に位置し前記モニター9が患者Aの方向に向くように位置させることができ、ドクターBはモニター9を見ながら患者Aに説明等を行なうようになっている。」
キ「【0018】その際、図示するように、モニター9はドクターBの方向を向くように位置させ、歯科治療情報を確認しながら治療等を施すことができるようになっている。以上のように、モニター9が支持されるアーム2とドクターテーブル5との間に設けられているため、患者BおよびドクターAが視認し易い位置に適宜移動できるようになっている。」
ク「【0024】
【発明の効果】本発明は前記したように、歯科治療を行なう際、患者へのコンサルタント時には、モニターをドクターと患者の略中間位置に簡易に位置させることができ、モニターを確認しながら治療状況などの情報またはX線写真などに基づき患者にコンサルティングできるようになる。」
ケ「
[図:0001404249000001.jpg]
」
コ「
[図:0001404249000002.jpg]
」
サ 図2から、ドクターテーブル5に、モニター9が縦型ボックス3及び支持杆8を介して一体的に設けられる点が看取される。
シ「
[図:0001404249000003.jpg]
」
ス 【0006】、【0016】及び【0024】を参照すると、図3の平面図から、平面視で、歯科用椅子11に着座した患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合に、モニター9は、表示される画像を、ドクター及び歯科用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、当該ドクターによって視認可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲に配置可能である点が看取できる。
セ 上記カの「7は前記テーブルを移動させる際に掴む取っ手であり、適宜位置に位置させることができるようになっている。」、「ドクターBは・・・前記モニター9が患者Aの方向に向くように位置させることができ」、上記エの「基台に軸支されるアームと、下端部で前記アームに支持され且つ電気的諸装置が組み込まれる縦型ボックスと、該縦型ボックス上部の一端に支持杆により支持されるドクターテーブルと、該縦型ボックス上部の他端にはモニターが設けられる。」及び上記キの「モニター9が支持されるアーム2とドクターテーブル5との間に設けられているため、患者BおよびドクターAが視認し易い位置に適宜移動できるようになっている。」との各記載から、縦型ボックス3の上部の一端に支持杆4を介して支持されるドクターテーブル5と、当該縦型ボックス3の上部の他端に設けられるモニター9との構造的関係を踏まえると、ドクターBが取っ手7を用いてドクターテーブル5を移動させることにより、その移動に連れてモニター9も移動することが明らかであるから、モニター9は、取っ手7を用い、ドクターテーブル5を介した移動ができるようになっている。
(2)引用発明
上記(1)の事項ア~セを総合し、特に、患者とドクターとがコンサルティングする状態を示す図3の平面図に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「患者AもしくはドクターBへの歯科治療情報を確認するためのモニター9が設置された歯科治療台であって、
基台1と、
アーム2と、
アーム2に支持され、ハンドピースなどの歯科用器具や椅子等を制御するための電気的諸装置が組み込まれる縦型に形成される縦型ボックス3と、
縦型ボックス3の上部一端に設けられる支持杆4と、
モニター9と、
支持杆4の上部に支持杆4に対して回動自在に設けられ、歯科用器具や薬品などを載置するための天板を有し、縦型ボックス3及び支持杆8を介してモニター9が一体的に設けられるドクターテーブル5と、
ドクターテーブル5の前方下部に支持され、歯科用器具等を係止または載置することのできるホルダー6と、
ドクターテーブル5を適宜位置に位置させることができる取っ手7と、
背凭れ11aとシート部11bとからなる歯科用椅子11と、
アーム14で水平移動且つ上下動自在に支持され、歯科治療を行なう際に患者の歯の治療部位を照射するための歯科用照明具13と、
を備え、
モニター9を、ドクターBもしくは患者Aの確認できる位置として、ドクターテーブル5と患者Aが着座する歯科用椅子11との中間位置に設けるようにして、患者AおよびドクターBが視認し易い位置に適宜移動できるようになっており、
患者Aの歯科治療情報を確認しながら、歯科用椅子11の背凭れ11aが立設した状態でのコンサルティングが可能であるようにし、
平面視で、歯科用椅子11に着座した患者Aの頭を中心として、当該患者Aの脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合に、モニター9は、取っ手7を用い、ドクターテーブル5を介した移動によって、表示される画像を、患者Aがシート部11bに着座した状態の位置でドクターBは歯科用椅子11の横に位置している状態で、ドクターB及び歯科用椅子に位置する患者Aの両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、ドクターBによって視認可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において、モニター9が患者Aの方向に向くように位置させ、
ドクターBはモニター9を見ながら患者Aに説明等を行なうことで、
モニター9をドクターBと患者Aの略中間位置に簡易に位置させて、モニター9を確認しながら治療状況などの情報またはX線写真などに基づき患者Aにコンサルティングできるようになっている、
歯科治療台。」
(3)引用文献2の記載
上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
この発明は、例えば歯科診療等の診療する際に用いる医療用診療装置に関し、より詳しくは、直接触れることなく椅子やインスツルメント等の診療機器やコンピュータの操作入力することのできるインフェクション・コントロール(病院内での感染防止対策)を重視した医療用診療装置に関する。」
イ「【0003】
しかし、このような医療用診療装置において、患者を触診する手でコンピュータも操作するため、インスツルメンツ等の診療機器はオートクレーブ等によって殺菌できるものの、形状や構成的に容易に殺菌することのできないコンピュータのキーボード等を介してバクテリアやウイルスなどの細菌が患者に伝播される可能性があり、衛生上の問題があった。そこで、従来から、様々なインフェクション・コントロール(病院内での感染防止対策)が提案されている。」
ウ「【0061】
このように、診療設備1及びタッチレスモーション操作システム10を構成することによって、図4に示すように、PC表示装置91の表示画面92に、コンピュータ9で管理・処理する各種情報と、診療椅子4及びインスツルメント20の操作・設定情報である操作内容を表示することができる。
【0062】
詳しくは、表示画面92の左側画面92aには、コンピュータ9の上記記憶装置に記憶した患者ごとに管理された電子カルテや、レントゲン画像等の各種情報を、制御装置の制御に基づいて表示している。
【0063】
また、表示画面92の右側画面92bには、LAN回線110を介して接続された本体装置8のCPU81の制御に基づいて、診療椅子4及びインスツルメント20の操作・設定情報等の操作内容についての操作画面を表示することができる。
なお、図4における右側画面92bには、インスツルメント20の選択操作画面を表示している。このように、インスツルメント20の選択操作画面は、インスツルメント20(20A~20E)の操作を選択するように、選択アイコン93(93a~93g)が行列配置され、その下方に、操作切り替えボタン94(94a~94c)を表示している。そして、図4において、選択アイコン93aや操作切り替えボタン94aで示すように、選択されたアイコンや選択されたボタンをハイライト表示して目視確認できるように表示する。
【0064】
なお、上記選択アイコン93によって所望のインスツルメント20を選択すると、当該インスツルメント20の駆動のON/OFF、さらには駆動状態の調整等を行うことのできる操作入力画面を右側画面92bに表示させることができる。
【0065】
このように右側画面92bにインスツルメント20の選択操作画面が表示された状態で、図5に示すように、PC表示装置91の前で、術者が手指200をXYZ方向に移動させることにより、選択アイコン93の選択を移動することができ、所望の選択アイコン93を選択した状態でフートコントローラ5の操作手段50を押下して、上記選択を決定することができる。
【0066】
詳述すると、PC表示装置91のフレーム枠91aに配した3つの発光素子71(71a、71b、71c)から発光された検知光S(S1~S3)は、手指200で反射し、それぞれの反射光R(R1~R3)として受光センサ72で受光する。
【0067】
光位相差式センサ手段7の受光センサ72で反射光Rを受光した本体装置8のCPU81は、3つの反射光Rの位相差から手指200の移動を検出し、LAN回線110を介してコンピュータ9に、選択アイコン93の選択を移動させる制御を実行する。
【0068】
このように、診療設備1のタッチレスモーション操作システム10は、相互に接続された診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9を備えた診療設備1において、タッチレスモーションによる操作入力を検知する光位相差式センサ手段7と、該光位相差式センサ手段7が検知したタッチレスモーションに応じて、診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9を選択的に操作制御する本体装置8のCPU81とを備えたことにより、直接触れることのないタッチレスモーションによって、診療椅子4、インスツルメント20及び電子カルテ等を管理・処理するコンピュータ9を選択的に操作制御できる。したがって、十分なインフェクション・コントロールを確保できる診療設備1を得ることができる。
【0069】
詳しくは、タッチレスモーションによる操作入力を検知する光位相差式センサ手段7を備えたことによって、術者は例えば、キーボードやマウス等の通常の入力装置や、消毒しやすいタッチパネル等に直接接触することなく、タッチレスモーションで操作入力することができる。
【0070】
また、光位相差式センサ手段7が検知したタッチレスモーションに応じて、診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9を選択的に操作制御する本体装置8のCPU81を備えたことにより、術者は、診療環境内を移動することなく、非接触動作であるタッチレスモーションにより操作入力することによって、診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9を選択的に操作制御することができる。
【0071】
したがって、本発明の診療設備1は、容易に滅菌処理のできるインスツルメント20以外に触れることなく、診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9を選択的に操作制御しながら診療できるため、診療椅子4、インスツルメント20及びコンピュータ9に触れることによって細菌が患者に伝播されるという衛生上のリスクを回避でき、十分なインフェクション・コントロールを実現することができる。」
エ「
[図:0001404249000004.jpg]
」
オ「
[図:0001404249000005.jpg]
」
(4)引用文献3の記載
上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア「【0001】
本発明の実施形態は、医療システムに関し、特に、空中に虚像のディスプレイ画面を表示可能な医療システムに関する。」
イ「【0007】
さらに、当該操作パネルにドレープを取り付け、術者が自ら操作パネルと操作することも考えられるが、タッチパネルである操作パネル自体に意図しない物理的な接触が生じ、誤動作が発生する虞がある。また、操作パネル自体により視界が遮られることもあり、手術進行の妨げになってしまうという課題もある。」
ウ「【0009】
上述した特開2005-040613号公報に記載された技術と再公表2009-131128号公報に記載された技術(空中に虚像ディスプレイを表出する技術)を組み合わせることにより、手術室における所定の空間位置に恰もタッチパネルと同様なGUI機能を備えた虚像の空中ディスプレイを表出することが可能となる。」
エ「【0015】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、タッチパネルの如き入力操作機能を備えた虚像空中ディスプレイを、手術室における的確な空間位置に表出可能とする医療システムを提供することを目的とする。」
オ「【0036】
空中ディスプレイ用モニタ11は、入力操作機能(GUI機能)を備えた前記虚像空中ディスプレイ15(図1参照)の元画像を表示するモニタであって、図1に示すように、天井16から移動式ロボットアーム13を介して配設される。
【0037】
この空中ディスプレイ用モニタ11に表示される、前記虚像空中ディスプレイ15のための「元画像」は、表示I/F33を介してシステムコントローラ3における制御部31に制御されるようになっている。なお、この「元画像」は、たとえばタッチパネルである前記操作パネル4に表示されるような操作パネル画面である。」
カ「【0056】
上述したように操作者の手指の座標位置と虚像空中ディスプレイ15の表示面とのキャリブレーションが継続的に実行されている状態においては、例えば、操作者の手指が虚像空中ディスプレイ15の操作画像に重ね配置され、ジェスチャセンサ14が、操作者の手指である手のひら51における特徴点51aの座標位置を検知することにより、操作者は、手術室の空間に表出されている虚像空中ディスプレイ15における表示面に表示されている操作パネル画面(GUI画面)をあたかもその場に存在するタッチパネルのように操作することが可能となる。すなわち、これにより虚像空中ディスプレイ15は、入力操作機能(GUI機能)を備えることとなる。」
キ「【0067】
本実施形態においては、上述したように操作者の手指の座標位置と虚像空中ディスプレイ15の表示面とのキャリブレーションを継続的に実行し、これにより、操作者は、手術室の空間に表出されている虚像空中ディスプレイ15における表示面に表示されている操作パネル画面(GUI画面)をあたかもその場に存在するタッチパネルのように操作することが可能となる。」
ク「
[図:0001404249000006.jpg]
」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「取っ手7」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「ハンドル」に相当し、以下同様に、
「歯科用椅子11」は、「患者用椅子」に、
「歯科治療台」は、「歯科診療システム」に、
「患者A」は、「患者」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明の「ドクターテーブル5」は、その機能及び構造からみて、本願発明の「診療用テーブル」に相当する。
また、引用発明の「モニター9」と、本願発明の「表示結像位置に結像される画像」を有し、「表示結像位置及び表示操作位置が同一面となる空中操作表示装置」とは、画像を有する表示装置である限りで一致する。
そうすると、引用発明の「モニター9が一体的に設けられるドクターテーブル5」と、本願発明の「前記空中操作表示装置が一体的に設けられる診療用テーブル、インスツルメントハンガー又は無影灯」とは、前記表示装置が一体的に設けられる診療用テーブルである限りで一致するとともに、前記表示装置が一体的に設けられる診療用テーブル、インスツルメントハンガー又は無影灯である限りで一致する。
(3)引用発明の「歯科用椅子11に着座した患者A」は、本願発明の「前記患者用椅子に座った」「患者」及び「前記患者用椅子に座った又は寝た患者」に相当する。
(4)引用発明の、表示装置を「視認」する「ドクターB」と、本願発明の、表示装置を「操作」する「操作者」とは、表示装置を使用する使用者である限りで一致する。
そして、引用発明の、使用者である「患者Aの歯科治療情報を確認する」「ドクターB」は、本願発明の、使用者である「歯科医師」及び使用者である「歯科医師又は補助者」に相当する。
(5)引用発明において、「ドクターB」が「取っ手7」により、「ドクターテーブル5を適宜位置に位置させる」のは、当該ドクターテーブル5に一体的に設けられるモニター9を「ドクターBが視認し易い位置に適宜移動」するためであることを踏まえれば、引用発明の、「ドクターB」が「取っ手7」により、「ドクターテーブル5を適宜位置に位置させる」ことで、モニター9を「ドクターBが視認し易い位置に適宜移動」することと、本願発明の、「操作者」が「ハンドル」により、「前記空中操作表示装置を」「前記表示操作位置が操作可能な位置に配置可能」とすることとは、使用者が、ハンドルにより、画像を有する表示装置が使用可能な位置に配置可能とする限りで一致する。
(6)平面視で前記患者用椅子に座った患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合について、引用発明において、「モニター9は、取っ手7を用い、ドクターテーブル5を介した移動によって、表示される画像を、患者Aがシート部11bに着座した状態の位置でドクターBは歯科用椅子11の横に位置している状態で、ドクターB及び歯科用椅子に位置する患者Aの両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、ドクターBによって視認可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において、モニター9が患者Aの方向に向くように位置させ」ることと、本願発明において、「前記空中操作表示装置は、前記ハンドルを用いた移動によって、前記表示結像位置に結像される画像を、前記時計の9時から1時の範囲に位置する前記操作者及び前記患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な水平方向の視野角の範囲、かつ、当該操作者によって操作可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において12時~1時側を向くように配置可能であ」ることとは、前記画像を有する表示装置は、前記ハンドルを用いた移動によって、表示される画像を、前記時計における所定の範囲に位置する使用者及び患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、当該使用者によって使用可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において所定の方向を向くように配置可能である限りで一致する。
そうすると、両者は、
「画像を有する表示装置と、
前記表示装置を使用者によって表示装置が使用可能な位置に配置可能なハンドルと、
前記表示装置が一体的に設けられる診療用テーブル、インスツルメントハンガー又は無影灯と、
患者用椅子と、
を備え、
前記使用者は、歯科医師又は補助者であり、
平面視で、前記患者用椅子に座った又は寝た患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合に、
前記表示装置は、前記ハンドルを用いた移動によって、表示される画像を、前記時計における所定の範囲に位置する前記使用者及び前記患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、当該使用者によって使用可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において所定の方向を向くように配置可能である、
歯科診療システム。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。
[相違点1]
ハンドルについて、本願発明は、表面が抗菌素材又は交換可能な部材によって感染予防可能に構成されているのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は、「結像される前記画像が正面である0度から見たときと同様に見える前記画像に対する視認角度の範囲である前記視野角は、-45度から45度の範囲である」のに対して、引用発明は、表示される画像について、そのように特定されていない点。
[相違点3]
画像を有する表示装置について、本願発明は、「表示結像位置に結像される画像」を有し、「表示結像位置及び表示操作位置が同一面となる空中操作表示装置」であるのに対して、引用発明は、「モニター9」であり、
また、本願発明は、使用者が「操作者」であって「前記空中操作表示装置を」「前記表示操作位置が操作可能な位置に配置可能」であるのに対して、引用発明は、表示装置を「視認」する「ドクターB」であって、
平面視で前記患者用椅子に座った又は寝た患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合について、画像を有する表示装置は、ハンドルを用いた移動によって、表示される画像を、前記時計における所定の範囲に位置する使用者及び患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、当該使用者によって使用可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において所定の方向を向くように配置可能であることに関して、本願発明は、「前記空中操作表示装置」は、前記ハンドルを用いた移動によって、「前記表示結像位置に結像される画像」を、「前記時計の9時から1時の範囲に位置する」「前記操作者」及び前記患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な「水平方向の視野角」の範囲、かつ、「当該操作者によって操作可能な」範囲である前記時計の6時~8時の範囲において「12時~1時側」を向くように配置可能であるのに対して、引用発明は、モニター9は、取っ手7を用い、ドクターテーブル5を介した移動によって、表示される画像を、患者Aがシート部11bに着座した状態の位置でドクターBは歯科用椅子11の横に位置している状態で、ドクターB及び歯科用椅子に位置する患者Aの両方が首を振ることによって視認可能な範囲、かつ、ドクターBによって視認可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において、モニター9が患者Aの方向に向くように位置させる点。
3 判断
上記相違点1~3について検討する。
なお、後記第5において示すように、本願発明は、表示結像位置に結像される画像について、時計の6時~8時の範囲において12時~1時側を向くという配置が一義的に定まらないものであるが、ここでは、仮に、患者、操作者と画像とが通常の位置関係に位置していると理解して、以下判断する。
(1)相違点1について
感染予防対策を行うことは、当該分野において当然のことであるから、引用発明の取っ手を、従来周知である表面を抗菌素材又は交換可能な部材とすることで、上記相違点1に係る本願発明の事項とする程度のことは、当業者であれば容易になし得たことである。
(2)相違点2について
表示装置に備わる表示能力のひとつとしての、画像が当該表示装置の正面である0度から見たときと同様に見える前記画像に対する視認角度の範囲である、「水平方向の視野角」は、表示装置により結像させる画像の光信号には所定の指向性が存在することから、自ずと所定の範囲内に限られるものであるところ、視認の実用に供することなどを踏まえて当該視野角を-45度から45度の範囲に設定したものは、本願出願前周知である。
そして、引用発明において例えば引用文献3に開示されるような虚像の空中ディスプレイを用いるに際して、その結像される画像が正面である0度から見たときと同様に見える前記画像に対する視認角度の範囲である視野角を上記周知の範囲に設定することで、上記相違点2に係る本願発明の事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
例えば上記引用文献2(上記第4の1(3)ア、イ参照。)に記載されているように、歯科診療等の診察の際に用いる医療用診察装置は、患者を触診する手でコンピュータも操作することから、コンピュータのキーボード等を介してバクテリアやウイルスが患者に伝播される可能性があることが知られており、このことは、同じく歯科診療用の診察装置(歯科診療台)である引用発明においても内在する課題である。
そして、上記引用文献2には、感染防止対策として、PC表示装置91の操作画面92に対する非接触操作の技術が開示されている(同ウ~オ参照。)ところ、医療分野における同様の非接触操作技術の一例として、上記引用文献3に開示されるような、所定の空間位置にGUI機能を備えた虚像の空中ディスプレイを表出することで、操作者が、虚像空中ディスプレイにおける表示面に表示される操作パネル画面をあたかもその場に存在するタッチパネルのように操作することが可能な医療システムは、周知の技術事項である(上記1(4)参照。)。
したがって、引用発明は、コンサルティング時に画像の切換え等を行う表示操作が当然に必要であるから、引用発明において上記の課題を踏まえ、非接触操作技術として上記周知の技術事項を適用すること、すなわち、モニター9に代えて結像画像を有する空中操作表示装置を用いることは、当業者が容易になし得たことである。
その場合に、仮定した時計における歯科診療台の各構成要素やその使用者等の具体的配置として、患者Aがシート部11bに着座した状態の位置でドクターBは歯科用椅子11の横に位置する患者AとドクターBの位置関係において具体的に、ドクターBを前記時計の9時から1時の範囲に位置するようにさせ、かつ、モニター9が患者Aの方向に向くようにする画像の向きを具体的に、前記時計の12時~1時側を向くように配置可能とすることは、引用発明の発明特定事項及び上記1(1)シの記載を踏まえれば、当業者が適宜なし得たことというべきである。
なお、上記相違点2で検討したとおり、結像される画像が正面である0度から見たときと同様に見える前記画像に対する視認角度の範囲である視野角が-45度から45度の範囲であるものは従来周知であることを踏まえれば、引用発明のモニター9を従来周知の虚像空中ディスプレイに置き換えたものにおいても、画像が、ドクターB及び患者Aの両方が首を振ることによって視認可能な水平方向の視野角を有する範囲とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである(上記1(1)シ参照。)。
(4)効果について
そして、上記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知の技術事項の奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(5)小活
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第5 理由2(明確性)についての当審の判断
本件出願の特許請求の範囲の請求項1には、「平面視で、前記患者用椅子に座った又は寝た患者の頭を中心として、当該患者の脚側を6時、右側を3時、左側を9時とする時計を仮定した場合に、前記空中操作表示装置は、前記ハンドルを用いた移動によって、前記表示結像位置に結像される画像を、前記時計の9時から1時の範囲に位置する前記操作者及び前記患者用椅子に位置する患者の両方が首を振ることによって視認可能な水平方向の視野角の範囲、かつ、当該操作者によって操作可能な範囲である前記時計の6時~8時の範囲において12時~1時側を向くように配置可能であり」と記載されている。
しかし、歯科診療システムの表示装置やその操作者が、上記のように仮定した時計の盤上において、時計の中心から具体的にどの距離にあるのかが規定されていないから、表示装置の位置と操作者の位置の範囲が実質的に特定されていない。
例えば、表示装置の画像が、「前記時計の6時~8時の範囲において12時~1時側を向くように配置可能であ」ることは、表示装置の画像が、6時~8時のうちの7時を超え8時までの範囲に配置され、そのように配置された画像の正面である0度の視認角度を表す仮想線が、12時側や1時側に向かうように方向付けられる場合について検討すると、画像の上記仮想線が12時側を向いている、とは、時計の中心から12時の地点までの具体的な距離が特定されていないから、当該地点を指向する仮想線は、一義的に定まることがなく、当該地点が時計の中心から具体的にどの距離に位置しているかによって変わり得るものとなる。
同様に、画像の上記仮想線が1時側を向いている、とは、当該仮想線が時計の盤上の1時としてどの地点を指向していることであるのか、明確でない。
したがって、表示装置の画像が12時~1時側を向くように配置可能である、とは、画像がその左右方向においてどの向きからどの向きまでの間であるように配置可能であることを意味するのか、一義的に把握することができない。
そして、このような画像の向きの範囲は、上記地点が時計の中心からどの距離にあるかということのみならず、表示装置の画像が時計の盤上においてその中心から具体的にどの距離にあるかによっても変わり得るものであり、当該記載の範囲は一義的に決まらない。
よって、上記記載は、画像の向くべき方向をその位置する範囲である6時~8時のすべてにおいて明確に定めたものとはいえず、特許権として設定登録された場合に第三者に不測の不利益をもたらすことになり得るものである。
以上のとおり、本件出願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012239