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特許拒絶査定不服審判

2024-010853

歯ブラシ

審判番号
2024-010853
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-208456
請求日
2024年07月01日
審決日
2026年02月18日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】花王株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 川口 真一
  • 審判官 関口 哲生
  • 審判官 芝井 隆
分類
P18 .121-WZ (A46B) / P18 .537-WZ (A46B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-208456「歯ブラシ」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月27日出願公開、特開2021-78714〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、令和元年11月19日の出願であって、その手続の経緯は、概ね以下のとおりである。 令和5年 5月 2日付け 拒絶理由通知書 令和5年 7月 5日 意見書、手続補正書の提出 令和5年 9月 1日付け 拒絶理由通知書(最後) 令和5年12月20日 意見書、手続補正書の提出 令和6年 3月21日付け 補正の却下の決定(令和5年12月20日提出の手続補正書でした手続補正の却下) 令和6年 3月21日付け 拒絶査定 令和6年 7月 1日 審判請求書、手続補正書の提出 令和7年10月29日付け 拒絶理由通知書 令和7年12月18日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1~7に係る発明は、令和7年12月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、把持部と、該把持部と前記植毛台とを連結するネック部とを含む歯ブラシ本体を備える歯ブラシであって、 前記把持部の前記ネック部側の端部分には、前記植毛台の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備えるつまみ部が設けられており、 前記つまみ部は、その両側面が、当該歯ブラシの正面又は背面からみたときに、その周囲との間に段差を生じている略凹形状の領域となっていると共に、前記把持部の延びる方向に沿う長さが、該把持部の延びる方向に直交する長さよりも長い横長の側面形状を備えており、 且つ前記つまみ部の全体が、前記植毛台の植毛面に沿った仮想延長線よりも、毛束が立設する側に配置されている、歯ブラシ。」 第3 拒絶の理由 令和7年10月29日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうち、理由2~3は、次の理由を含むものである。 1 理由2(進歩性)について 本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 理由3(明確性要件)について この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項1に「前記把持部の前記ネック部側の端部分には、前記植毛台の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備えるつまみ部が設けられており」という事項が記載されているところ、請求項1に記載された発明には、「前記植毛台は、該植毛台の植毛面に沿う仮想延長線が、前記把持部の軸に沿う仮想延長線から、毛束が立設する側に傾斜するように配置されている」ような、本願図面の図3に示される実施例も含むものと理解される。 そうすると、本願図面の図3に示される実施例も含む、請求項1の上記事項により、どのような構成を特定しようとしているのか不明であり、請求項1の上記事項について、その技術的な範囲が不明確である。 3 引用文献 引用文献1:特開2019-10455号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 (1)当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付加した。以下、同様である。) ア 「【0001】 本発明は歯ブラシに関する。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 歯ブラシを用いたブラッシングの効果はブラッシング時における歯ブラシの握り方の影響を受ける。適切な歯ブラシの握り方はブラシを当てる対象の歯の位置や歯の部位に応じて異なる。ブラッシングの効果を高めるためにユーザが鏡等を用いて歯面へのブラシの当たり方を確認しながらブラッシングすることも考えられるが、ブラッシングが日常生活の一部として実施されるという側面を考慮すると、簡易な方法でブラシの向きを認識でき、かつ、持ち方を容易に修正できることが好ましい。」 ウ 「【0015】 本発明に関する歯ブラシによれば、簡易な方法でブラシの向きを認識でき、かつ、持ち方を容易に修正できる。 【図面の簡単な説明】 【0016】 ・・・ 【図12】第2実施形態の歯ブラシの正面側の斜視図。 【図13】図12の歯ブラシの背面側の斜視図。 【図14】図12の歯ブラシの左側面図。 【図15】図12の歯ブラシの正面図。 【図16】図12の歯ブラシの背面図。 【図17】図12の歯ブラシの底面図。 【図18】図12の歯ブラシの平面図。 【図19】図15のD19-D19線に沿う断面図。 【図20】図15のD20-D20線に沿う断面図。 【図21】図17のD21-D21線に沿う断面図。 ・・・」 エ 「【0036】 歯ブラシ1の厚さ方向におけるグリップ部30に対するヘッド部80の位置は任意である。図3等に示される第1例では、ヘッド部80の中心軸C2がグリップ部30の中心軸C1よりも下方となるようにヘッド部80が設けられる。第2例では、ヘッド部80の中心軸C2がグリップ部30の中心軸C1よりも上方となるようにヘッド部80が設けられる。第3例では、歯ブラシ1の厚さ方向において、ヘッド部80の中心軸C2とグリップ部30の中心軸C1とが一致するようにヘッド部80が設けられる。なお、第1例および第2例では中心軸C1と中心軸C2とが平行であることが好ましい。」 オ 「【0042】 (第2実施形態) 図12~図21に示される第2実施形態の歯ブラシ1は、以下に説明する点において第1実施形態の歯ブラシ1と相違し、その他の点において第1実施形態の歯ブラシ1と実質的に同じ構成を備える。なお、第2実施形態の歯ブラシ1の右側面図は図14に示される歯ブラシ1の左側面図と対称に表れるため図示を省略する。また、各図において薄墨を施した部分は歯ブラシ本体10のうちの第2触感付与部60が設けられた部分、すなわち、歯ブラシ本体10のうちのシボ加工が施された部分である。また、第2実施形態の歯ブラシ1は第1実施形態の歯ブラシ1と同様に、ネック部70、ヘッド部80、および、フィラメント束100は任意の形態を取り得る。図12~図16、図18、および、図21においては、第1実施形態の歯ブラシ1からの主要な変更点であるグリップ部30の構成を強調するために、ヘッド部80およびフィラメント束100を破線で示している。 【0043】 図12~図15に示されるように、第2実施形態の歯ブラシ1では、被覆部材51が第1部分31の背面30B、および、各側面30Cに設けられており、第1部分31の正面30Aには設けられていない。具体的には、第1部分31の背面30Bにおけるネック部70側の部分、および、第1部分31の各側面30Cのおおよそ全体に被覆部材51が設けられている。 【0044】 第1部分31の正面30Aには、正面30Aから突出した複数の突起45が設けられている。各突起45は歯ブラシ1がパームグリップにより手200で握られた場合に、手200に対する歯ブラシ1の位置がずれることを妨げるために設けられている。各突起45は歯ブラシ1の長手方向に並んでいる。歯ブラシ1の長手方向における各突起45の寸法は任意である。第1例では、歯ブラシ1の長手方向における各突起45の寸法は互いに等しい。第2例では、歯ブラシ1の長手方向において、複数の突起45のうちの少なくとも一つの寸法が他の突起45の寸法と異なる。歯ブラシ1の幅方向における各突起45の寸法は任意である。第1例では、歯ブラシ1の幅方向における各突起45の寸法は互いに等しい。第2例では、歯ブラシ1の幅方向において、複数の突起45のうちの少なくとも一つの寸法が他の突起45の寸法と異なる。 【0045】 図21に示されるように、第1部分31には歯ブラシ1の厚さ方向に括れた括れ部37が設けられている。括れ部37は第1部分31の背面30Bが正面30A側に凹んだ部分である。歯ブラシ1の厚さ方向に沿う第1部分31の断面形状(図19参照)、および、歯ブラシ1の厚さ方向に沿う第2部分32の断面形状(図20参照)は六角形に類似する形状である。」 カ 「【0047】 各実施例および各比較例の試料に関する諸元は次のとおりである。歯ブラシ1の長さは180mmである。歯ブラシ1の最大の幅は11.2mmである。歯ブラシ1の最大の厚さは13mmである。歯ブラシ本体10を構成する材料はポリエチレンテレフタレートである。」 キ 「【図12】 [図:0001434689000001.jpg] 【図13】 [図:0001434689000002.jpg] 【図14】 [図:0001434689000003.jpg] 【図15】 [図:0001434689000004.jpg] 【図16】 [図:0001434689000005.jpg] 【図17】 【図18】 [図:0001434689000006.jpg] 【図19】 【図20】 [図:0001434689000007.jpg] 【図21】 [図:0001434689000008.jpg] 」 ク 上記キに示した、引用文献1の図12、13、15の記載及び歯ブラシの技術常識から、ヘッド部80にフィラメント束100が植設される複数の植毛孔が設けられていることは明らかである。 ケ 上記キに示した、引用文献1の図12~14、18、19の記載から、ヘッド部80の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備える第1部分31が設けられていることが看取される。 コ 上記キに示した、引用文献1の図15、16の記載から、第1部分31は、その両側面が、歯ブラシ1の正面又は背面からみたときに略凹形状の領域となっていることが、また、引用文献1の図12~14の記載から、第1部分31は、グリップ部30の延びる方向に沿う長さが、該グリップ部30の延びる方向に直交する長さよりも長い横長の側面形状を備えていることが看取される。 サ 上記キに示した、引用文献1の図14、17、18、21の記載から、第1部分31の全体が、ヘッド部80の植毛面に沿った仮想延長線よりも、フィラメント束100が立設する側に配置されていることが看取される。 2 引用発明 引用文献1の前記ア~サの内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「フィラメント束100が植設される複数の植毛孔が形成されているヘッド部80と、グリップ部30と、該グリップ部30と前記ヘッド部80とを連結するネック部70とを含む歯ブラシ本体10を備える歯ブラシ1であって、 前記グリップ部30の前記ネック部70側の端部分には、前記ヘッド部80の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備える第1部分31が設けられており、 前記第1部分31は、その両側面が、当該歯ブラシ1の正面又は背面からみたときに略凹形状の領域となっていると共に、前記グリップ部30の延びる方向に沿う長さが、該グリップ部30の延びる方向に直交する長さよりも長い横長の側面形状を備えており、 且つ前記第1部分31の全体が、前記ヘッド部80の植毛面に沿った仮想延長線よりも、フィラメント束100が立設する側に配置されている、歯ブラシ1。」 第5 対比及び判断 1 理由2(進歩性)について (1)対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する ア 引用発明の「フィラメント束100」は、その作用、機能からみて、本願発明の「毛束」に相当し、同様に、「ヘッド部80」は「植毛台」に、「グリップ部30」は「把持部」に、「ネック部70」は「ネック部」に、「歯ブラシ本体10」は「歯ブラシ本体」に、「歯ブラシ1」は「歯ブラシ」に、「第1部分31」は「つまみ部」に、それぞれ相当する。 イ そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、把持部と、該把持部と前記植毛台とを連結するネック部とを含む歯ブラシ本体を備える歯ブラシであって、 前記把持部の前記ネック部側の端部分には、前記植毛台の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備えるつまみ部が設けられており、 前記つまみ部は、その両側面が、当該歯ブラシの正面又は背面からみたときに、略凹形状の領域となっていると共に、前記把持部の延びる方向に沿う長さが、該把持部の延びる方向に直交する長さよりも長い横長の側面形状を備えており、 且つ前記つまみ部の全体が、前記植毛台の植毛面に沿った仮想延長線よりも、毛束が立設する側に配置されている、歯ブラシ。」 <相違点> つまみ部に関して、本願発明は、「その周囲との間に段差を生じている」略凹形状の領域となっているのに対し、 引用発明は、略凹形状の領域が、そのように構成されていない点。 (2)判断 以下、上記相違点について検討する。 歯ブラシにおいて、指で把持する範囲の境界に段差をつけて、把持する範囲を構成することは、当業者にとって従来周知の技術(例えば、特開2019-25028号公報の段落0055~0056、図1、4、5に示される溝部45A、45Bで囲まれる範囲を、また、特開平9-38115号公報の段落0005~0006、0009、0013~0014、0016、0018、図1、3、10に示される段部15が形成されたフラット面11を参照)にすぎないことに鑑みると、指で把持する範囲である、略凹形状となった領域の境界に段差が生じるように構成することは、当業者が適宜設定し得た設計事項にすぎない。 そうすると、引用発明において、略凹形状となった領域の境界に段差が生じるように構成し、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果は、引用発明に基づき、当業者が予測できる範囲のものであって、格別顕著なものではない。 (3)小括 以上によれば、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 2 理由3(明確性要件)について あらためて検討しても、前記「第3の2」の内容に誤りはなく、当審拒絶理由の理由3(明確性要件)が解消していないことは明らかである。 ところで、審判請求人は、令和7年12月18日提出の意見書において、同日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、「前記植毛台は、該植毛台の植毛面に沿う仮想延長線が、前記把持部の軸に沿う仮想延長線から、毛束が立設する側に傾斜するように配置されている」ことを特定した、請求項1を引用する請求項5を削除したことで、理由3(明確性要件)が解消した旨主張している。 しかしながら、請求項1を引用する請求項5を削除しても、請求項1に記載された事項から、「前記植毛台は、該植毛台の植毛面に沿う仮想延長線が、前記把持部の軸に沿う仮想延長線から、毛束が立設する側に傾斜するように配置されている」ものが除かれることにはならない。 また、本件補正により、請求項1に係る発明において、「その周囲との間に段差を生じている(略凹形状の領域)」という特定事項が更に特定されたところ、上記特定事項により、「前記植毛台は、該植毛台の植毛面に沿う仮想延長線が、前記把持部の軸に沿う仮想延長線から、毛束が立設する側に傾斜するように配置されている」ものが除かれたとは解されない。 さらに、発明の詳細な説明の、例えば、段落0025をみても、「前記植毛台は、該植毛台の植毛面に沿う仮想延長線が、前記把持部の軸に沿う仮想延長線から、毛束が立設する側に傾斜するように配置されている」、本願図面の図3に示されるものも、本願発明の実施形態として示されている。そして、本願図面の図3に示されるものも含まれると、つまみ部の幅方向Yの幅が厚み方向Zの厚みより小さいものだけでなく、つまみ部の幅方向Yの幅が厚み方向Zの厚み以上のものも含み得るものとなり、「前記把持部の前記ネック部側の端部分には、前記植毛台の植毛面と平行な横方向の幅よりも、該方向と垂直な縦方向の幅の方が長くなった縦長の断面形状を備えるつまみ部が設けられており」という事項により特定される技術的範囲が不明となり、発明が不明確である。 よって、審判請求人の主張を採用することはできない。 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、依然として明確でない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、この出願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-010853

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