特許拒絶査定不服審判
2022-011326
ユーザに情報を表示するためのシステム
- 審判番号
- 2022-011326
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-547080
- 請求日
- 2022年07月21日
- 審決日
- 2023年07月07日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 中塚 直樹
- 審判官 後藤 慎平
- 分類
- P18 .121-Z (G09G) / P18 .575-Z (G09G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-547080「ユーザに情報を表示するためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日国際公開、WO2019/170250、令和 3年 6月24日国内公表、特表2021-515915〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月9日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和2年11月 5日 :翻訳文の提出
同月10日 :手続補正書の提出
令和3年11月 4日付け :拒絶理由通知書
令和4年 2月15日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 5月 6日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月21日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年10月12日付け :前置報告書
同月27日 :上申書の提出
令和5年 1月24日 :上申書の提出
第2 令和4年7月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年7月21日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和4年7月21日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された放出デバイス(12、112)であって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイス(12、112)と、
パネルを備えた選択的観視デバイス(16、116)であって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイス(12、112)によって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有する、選択的観視デバイス(16、116)と
を備え、
前記システムが、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイス(12、112)と前記選択的観視デバイス(16、116)とを同期させるように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が、デューティサイクルが1/20以下のパルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイス(116)が、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイス(12、112)が、コンピュータスクリーンとして、モバイル電話で、ラップトップコンピュータで、タブレットコンピュータで、デジタルカメラ上で、ナビゲーションシステムでおよび/またはテレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に、2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出するように適合され、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する、
システム。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された放出デバイス(12、112)であって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイス(12、112)と、
パネルを備えた選択的観視デバイス(16、116)であって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイス(12、112)によって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有し、高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い、選択的観視デバイス(16、116)と
を備え、
前記システムが、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイス(12、112)と前記選択的観視デバイス(16、116)とを同期させるように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が、デューティサイクルが1/20以下のパルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイス(116)が、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイス(12、112)が、コンピュータスクリーンとして、モバイル電話で、ラップトップコンピュータで、タブレットコンピュータで、デジタルカメラ上で、ナビゲーションシステムでおよび/またはテレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に、2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出するように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する、
システム。」
2 本件補正の目的について
本件補正による請求項1についての補正は、本件補正前の「選択的観視デバイス」について「高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い」と限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件について
本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献並びに引用発明及び周知技術の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2016-65929号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様である。)
a 【請求項6】
「【請求項6】
表示パネルに映像を表示する電子機器と前記表示パネルに表示される映像を視聴するための眼鏡装置とを有する映像システムにおいて、
前記電子機器は、
背面から前記表示パネルを照明するバックライトと、
前記映像を1フレーム毎に前記表示パネルに表示するための垂直同期期間を示す同期信号に応じたバックライト制御信号または前記バックライト制御信号に同期して眼鏡装置に設けたシャッタを開閉制御するためのシャッタ制御信号を生成する同期処理部と、
前記同期処理部により生成されたバックライト制御信号を受けて前記垂直同期期間の所定期間に前記バックライトを消点灯させるバックライト駆動部と、
前記シャッタ制御信号または前記バックライト制御信号を外部へ送信する送信部とを備え、
前記眼鏡装置は、
前記表示パネルに表示される映像の光を受光するための光学系と、
前記光学系に設けられ、電気的または機械的に開閉制御されることで前記光学系を通過する光を遮蔽および透過させるシャッタと、
前記シャッタ開閉制御信号または前記バックライト制御信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記シャッタ制御信号または前記バックライト制御信号から生成したシャッタ制御信号に従い、前記バックライトが点消灯するタイミグに合わせて前記シャッタを開閉制御するシャッタ駆動部と
を備える映像システム。」
b 段落【0001】~【0008】
「【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、映像システムおよび眼鏡装置に関する。
…(中略)…
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、明るい周囲環境において画面に表示される映像が見やすく、また省力効果も期待できる電子機器、映像システムおよび眼鏡装置を提供することにある。」
c 段落【0012】~【0055】、【図1】~【図4】
「【0012】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の映像システムを示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の映像システムは、映像表示装置1と眼鏡装置としての液晶シャッタ付きグラス2とを備える。
【0013】
映像表示装置1は、例えば地上デジタルテレビジョン放送を受信し表示する機能を有するものであり、例えばリビングルームなどの室内に配置されるものとする。映像表示装置1は、映像処理部11、表示制御部12、X-ドライバおよびY-ドライバを有する液晶駆動部13、液晶パネル14、信号生成部としての同期処理部15、LEDドライバ16、LEDバックライト17、通信部としてのIR通信部18などを有する。
…(中略)…
【0019】
LEDドライバ16は、LEDバックライト17の点消灯を制御するための制御信号(この例では点灯信号P)をLEDバックライト17へ出力する。すなわちこのLEDドライバ16は、同期処理部15により生成された点灯信号Pを受けて垂直同期期間の所定期間(点灯期間T(図2および図3参照))にLEDバックライト17を点消灯させるバックライト駆動部である。
【0020】
LEDドライバ16は、液晶パネル14の開口動作に合わせてLEDバックライト17を点灯させる。LEDドライバ16は、液晶シャッタ24の閉口動作に合わせてLEDバックライト17を消灯させる。
【0021】
LEDバックライト17は、複数のLEDを列設した板状の部材を液晶パネル14の裏面に配置したものであり、点灯信号Pに従いLEDを点灯させることで液晶パネル14を明るくし映像を視聴可能とする。つまりLEDバックライト17は、表示パネル14を背面から照明するものである。
…(中略)…
【0027】
液晶シャッタ付きグラス2は、信号通信部としてのIR通信部21、駆動部22、光学系23、調光部26を有する。
【0028】
IR通信部21は、映像表示装置1からIR通信により送信された開放信号Sを受信し駆動部22に渡す。
【0029】
駆動部22は、IR通信部21により受信された開放信号Sに従い、LEDバックライト17が点消灯するタイミグ(当合議体注:「タイミング」の誤記)に合わせて液晶シャッタ24を開閉制御する。つまり駆動部22は、IR通信部21から渡された開放信号Sにて液晶シャッタ24を駆動し液晶シャッタ24を開口する。
…(中略)…
【0032】
液晶シャッタ24は、液晶層を2枚の偏光板で挟んで構成したものであり、光学系23に一体的に設けられており、電気的または機械的に開閉制御されることで光学系23を通過する光を遮蔽および透過させる。ここに示した液晶シャッタ24は、一例であり、高速に開閉可能なものであれば、機械式のシャッタであってもよい。
…(中略)…
【0038】調光部26は、液晶シャッタ24の開閉の調光幅を調整するためのものであり、光センサを備える。光センサが周囲の光量を検出して、その光量に応じて光学系23に入る受光量を調整する。調光部26は、周囲の明るさが明るいほど受光量を絞り、調光サングラスとしての効果を奏する。
…(中略)…
【0043】
ここで、図3を参照してLEDバックライト17の点灯タイミングと電流との関係について説明する。
【0044】
図3に示すように、1画面分の映像を描画する期間である1フレームの期間が、例えば1/60secとすると、同期処理部15は、その1フレームの期間のうちの次のフレームに隣接する一部の期間、例えば1/180secの期間だけ点灯信号Pを出力し、LEDバックライト17を点灯させる。
【0045】
その前の2/180secの期間はLEDバックライト17を消灯させる。つまりLEDバックライト17を点灯させる期間を、1フレーム分の垂直同期期間のうちの次の垂直同期信号Vがくる直前の位置から一定の期間(duty33%の場合は1/180secまたはduty40%の場合は1/150secなど)としている。
…(中略)…
【0051】
そこで、図4に示すように、次のフレームの直前のタイミングを終端位置としてLEDバックライト17の点灯信号のオン・オフ期間であるduty(点灯期間T)と液晶シャッタの開口期間とが同期するように互いのタイミングを設定する。
【0052】
ここで、液晶シャッタ24の開閉動作でシャッタが完全に開口するまでに遅延が生じることから、開放信号Sの幅は、LEDバックライト17の点灯期間Tよりも広くとるものとする。
【0053】
なお、dutyは任意とするが、dutyが小さいほどコントラスト効果は大きくなる。
【0054】
また、dutyを絞ることにより、LEDバックライト17のLEDがonする時間が減少するので、LEDバックライト17の消費電力を低減することができる。
【0055】
換言すると、LEDバックライト17を点灯させない分、LEDバックライト17に流す電流を増加することが可能となるので、液晶パネル14(TV画面)の輝度を増すことができ、結果として液晶パネル14周囲とのコントラストが向上するともいえる。」
「【図1】
[図:0001404232000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001404232000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001404232000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001404232000004.jpg]
」
d 段落【0070】~【0072】、【図7】
「【0070】
(第3実施形態)
図7は第2実施形態の映像システムを示す図である。
図7に示すように、第3実施形態の映像システムは、第1実施形態の変形例であり、室内に配置して使用する固定型の映像表示装置1の代わりに、屋外などに携帯して持ち出して利用する電子機器の一つであるスマートフォン60(携帯端末)と、上記各実施形態の液晶シャッタ付きグラス2とを組み合わせた例である。電子機器としては、スマートフォン60以外に、タブレット端末やノート型のコンピュータなどであってもよい。
【0071】
太陽光が降りそそぐ環境下でスマートフォン60を使用する場合、明るい太陽光の影響で画面が暗く見にくくなるが、上記実施形態で開示した偏光機能(偏光板)、波長制御機能(カラーフィルタ25)および液晶シャッタ24の開閉タイミングの制御機能を有する液晶シャッタ付きグラス2(図2や図6)を用いることで、コントラストが改善されるので、屋外でもスマートフォン60の映像を視聴しやすくなる。
【0072】
このようにこの第3実施形態の映像システムによれば、屋外環境においても液晶パネル14に表示される映像の視認性を改善することができ、スマートフォン60の画面に映し出される映像を視聴し易くできる。」
「【図7】
[図:0001404232000005.jpg]
」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「地上デジタルテレビジョン放送を受信し表示する機能を有し、リビングルームなどの室内に配置される映像表示装置1と、表示される映像を視聴するための眼鏡装置としての液晶シャッタ付きグラス2とを備える映像システムであって、(【請求項6】、【0012】、【0013】)
映像表示装置1は、映像処理部11、表示制御部12、X-ドライバおよびY-ドライバを有する液晶駆動部13、液晶パネル14、信号生成部としての同期処理部15、LEDドライバ16、LEDバックライト17、通信部としてのIR通信部18などを有し、(【0013】)
LEDバックライト17は、点灯信号Pに従いLEDを点灯させることで液晶パネル14を明るくし映像を視聴可能とするものであって、(【0020】)
LEDドライバ16は、垂直同期期間の所定期間にLEDバックライト17を点消灯駆動させるバックライト駆動部であり、(【0019】)
液晶シャッタ付きグラス2は、信号通信部としてのIR通信部21、駆動部22、光学系23、調光部26を有し、(【0027】)
駆動部22は、IR通信部21により受信された開放信号Sに従い、LEDバックライト17が点消灯するタイミングに合わせて液晶シャッタ24を開閉制御し、(【0029】)
液晶シャッタ24は、光学系23に一体的に設けられており、電気的または機械的に開閉制御されることで光学系23を通過する光を遮蔽および透過させ、(【0032】)
調光部26は、液晶シャッタ24の開閉の調光幅を調整するためのものであり、光センサを備え、該光センサが周囲の光量を検出して、その光量に応じて光学系23に入る受光量を調整し、(【0038】)
LEDバックライト17を点灯させる期間は、1フレーム分の垂直同期期間のうちの次の垂直同期信号Vがくる直前の位置から一定の期間(duty33%)とされ、(【0045】)
LEDバックライト17の点灯信号のオン・オフ期間であるduty(点灯期間T)と液晶シャッタの開口期間とが同期するように互いのタイミングが設定され、(【0051】)
dutyが小さいほどコントラスト効果は大きく、LEDバックライト17の消費電力が低減され、(【0053】、【0054】)
LEDバックライト17を点灯させない分、LEDバックライト17に流す電流を増加することが可能となるので、液晶パネル14(TV画面)の輝度を増すことができ、結果として液晶パネル14周囲とのコントラストが向上する、(【0055】)
映像システム。(【0012】)」
イ 引用文献5の記載事項及び周知技術の認定
(ア) 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された特表平05-506109号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
a 3ページ右上欄5行~12行
「背景技術 この発明は、コントラストを改善した表示器に関する。 表示器のコントラスト比は、表示器表面からの散乱光によって減じられる。この効果は、すべてのタイプの表示器、バック光、反射または投影の表示器、および、表示器のイメージが受動(つまり、例えばLCDのごとき、表示が外部光に依存する)または自己発光(例えばCRT)に関係なく起きる。コントラストを改善するためには、好ましくは表示器の像の明るさを大きく減じることなく、外部反射を減じるか排除するのが望ましい。」
b 4ページ左下欄4行~18行
「好ましい実施例の開示
一般に、本発明の実施例においては、イメージは、観察者に例えば1:10のデューティサイクルでもって間欠的に表示され、このデューティサイクルとは、1の時間長に対してイメージが表示され、他の10の時間長に対して暗状態であることを意味する。イメージが表示されるスクリーンは、デューティサイクルに同期した切り替えでもって切り替え可能であり、イメージが現れた時、スクリーンはイメージを観察者へ透過させるが、イメージが現れていない時は、例えば、スクリーンを暗くし、光吸収を高くすることにより、スクリーンは、外部光が大幅に減じられる状態に切り替えられる。これとは別に、光透過状態と光吸収状態を有するシャッターまたは重ね材が、観察者とスクリーンとの間に設置され、そして同様に同期化されてもよい。デューティ比1:10に対しては、外部反射は10の減衰率で低減され、一方、イメージの明るさは影響しない。デューティサイクルは好ましくは1:5ないし1:200の範囲である。サイクルの周波数は、表示器のサイズおよび明るさに対する固有の臨界ちらつき周波数以上である。一般に、少なくとも50ヘルツ、より好ましくは60ヘルツである。」
(イ) 周知技術1の認定
前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
[周知技術1]
「バックライトを有し、外部反射を減じることによりコントラストを改善するようにしたLCD表示器において、表示のデューティサイクルは好ましくは1:5ないし1:200の範囲であること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「映像システム」は、「地上デジタルテレビジョン放送を受信し表示する機能を有し、リビングルームなどの室内に配置される映像表示装置1と、表示される映像を視聴するための眼鏡装置としての液晶シャッタ付きグラス2」を備えるものであり、当該眼鏡装置を装着するユーザが地上デジタルテレビジョン放送の映像を視聴するためのシステムであるから、「ユーザに情報を表示するためのシステム」であるといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「ユーザに情報を表示するためのシステム」の発明である点において一致する。
(イ) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した次の本件補正発明の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
LEDバックライト17 放出デバイス
液晶シャッタ24 パネル
液晶シャッタ付きグラス2 パネルを備えた選択的観視デバイス
映像システム システム
(ウ)a 引用発明の「LEDバックライト17」が「点灯信号Pに従いLEDを点灯させることで液晶パネル14を明るくし映像を視聴可能とするもの」であることは、本件補正発明において「放出デバイス」が「ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された」ものであることに相当する。
b 引用発明の「LEDバックライト17」は「LEDドライバ16により垂直同期期間の所定期間に点消灯駆動され[る]」ものである。当該点灯駆動においてバックライト光の強度が高値となり、当該消灯駆動において低値となることは明らかであり、また当該点消灯駆動が「垂直同期期間の所定期間に」行われるのであるから、バックライト光の放出がパルス状となることも明らかといえる。
c 前記a及びbをまとめると、本件補正発明と引用発明は次の点において一致する。
「ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された放出デバイスであって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイス」を備える点。
(エ)a 引用発明の「液晶シャッタ24」は「表示される映像を視聴するための眼鏡装置としての液晶シャッタ付きグラス2」に設けられたものであるから、前記(ウ)を踏まえると、当該眼鏡装置を装着するユーザが「LEDバックライト17」の放出する光を「液晶シャッタ24」を通じて認識することによって映像を視聴できるように構成されていることは明らかであり、このことは、本件補正発明において「前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイスによって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され[た]」ものであることに相当する。
b 引用発明の「液晶シャッタ24」が「光学系23に一体的に設けられており、電気的または機械的に開閉制御されることで光学系23を通過する光を遮蔽および透過させ[る]」ものであることは、本件補正発明において「前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有[する]」ものであることに相当する。
c 前記a及びbをまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「パネルを備えた選択的観視デバイスであって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイスによって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有する選択的観視デバイス」を備える点。
(オ)a 引用発明の「液晶シャッタ付きグラス2」の「駆動部22は、IR通信部21により受信された開放信号Sに従い、LEDバックライト17が点消灯するタイミングに合わせて液晶シャッタ24を開閉制御」するものであるから、「LEDバックライト17」の点灯状態と「液晶シャッタ24」の開状態が時間的にオーバーラップするように駆動部による同期制御が行われていることは明らかである。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「前記システムが、前記放出デバイスが光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイスの前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイスと前記選択的観視デバイスとを同期させるように適合される」点。
(カ) 前記(ウ)b及び(オ)を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次のa及びbの点において一致する。
a 「前記放出デバイスが、パルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイスの前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合される」点。
b 「前記放出デバイスが光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する」点。
(キ) 引用発明の「液晶シャッタ付きグラス2」は「眼鏡装置」であるから、本件補正発明と引用発明は、「前記選択的観視デバイスが、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であ[る]」点において一致する。
(ク) 引用発明の「映像表示装置1」は「地上デジタルテレビジョン放送を受信し表示する機能を有[する]」ものであって、テレビ受像機としてのスクリーン構造を備えていることは明らかである。
したがって、前記(ウ)bを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点において共通する。
「前記放出デバイスが、」「テレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に放出するように適合される」点。
イ 一致点及び相違点の認定
上記アの対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の「(ア)一致点」において示す点において一致し、後記の「(イ)相違点」において示す相違点1~相違点3において相違する。
(ア) 一致点
「ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された放出デバイスであって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイスと、
パネルを備えた選択的観視デバイスであって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイスによって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有する選択的観視デバイスと
を備え、
前記システムが、前記放出デバイスが光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイスの前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイスと前記選択的観視デバイスとを同期させるように適合され、
前記放出デバイスが、パルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイスの前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイスが、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイスが、テレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に放出するように適合され、
前記放出デバイスが光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する、
システム。」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
パネルの透過率について、
本件補正発明は、「高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い」と限定されているのに対し、
引用発明の「液晶シャッタ24」は、通過する光を遮蔽及び透過させるものではあるものの、その光遮蔽時と光透過時の透過率の比は不明である点。
b 相違点2
デューティサイクルについて、
本件補正発明においては、放出デバイスの「デューティサイクルが1/20以下」であると限定されているのに対して、
引用発明においては、「LEDバックライト17を点灯させる期間は、1フレーム分の垂直同期期間のうちの次の垂直同期信号Vがくる直前の位置から一定の期間(duty33%)とされ[る]」点。
c 相違点3
放出デバイスのスクリーンの放出光強度について、
本件補正発明においては、「2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出する」と限定されているのに対して、
引用発明の「映像表示装置1」からの放出光強度は不明である点。
(4) 判断
ア 相違点について
(ア) 相違点1について
引用発明の「光学系23を通過する光を遮蔽および透過」する「液晶シャッタ24」について、コントラストを高めるためには「遮蔽」制御される場合に光透過率を可能な限り0に近づくようにすべきことは、当業者には自明の設計指針にすぎない。
そして、低透過率状態における透過率が0に近づくと、高透過率状態の低透過率状態に対する光の透過の比率は、非常に大きな値となり、「高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い」という相違点1に係る条件を満たすこととなる。
したがって、「高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い」と限定した点は、設計事項であって格別のものではなく、引用発明において相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 相違点2について
引用発明においては、「dutyが小さいほどコントラスト効果は大きく、LEDバックライト17の消費電力が低減され、」「LEDバックライト17を点灯させない分、LEDバックライト17に流す電流を増加することが可能となるので、液晶パネル14(TV画面)の輝度を増すことができ、結果として液晶パネル14周囲とのコントラストが向上する」ことが認識されており、デューティサイクルをどの程度とするかは、所望の消費電力やコントラストなどの特性に応じて当業者が適宜選択すべき設計事項である。
しかも、前記(2)イ(イ)において認定したように「バックライトを有し、外部反射を減じることによりコントラストを改善するようにしたLCD表示器において、表示のデューティサイクルは好ましくは1:5ないし1:200の範囲であること。」は周知(周知技術1)であるところ、デューティサイクルの「1/20」を含む、「1/5」から「1/200」の数値範囲は、このような当業者が通常検討すべき数値の範囲内ものにすぎない。
したがって、相違点2は格別のものではなく、引用発明において相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、設計事項にすぎず、当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ) 相違点3について
映像表示装置の放出光強度が強ければ強いほど、映像表示装置の周囲の光(外光)の強度が高い環境の元でもコントラスト比が高いことは自明のことであり、コントラストを高めるために、放出デバイスの周囲の光の強度よりも大きな十分に強い放出光強度とすべきことは、自明な設計指針にすぎない。
特に引用発明が「リビングルームなどの室内に配置され[て]」「映像を視聴するための」映像システムであることを考慮すれば、その放出光強度を、明るめの室内の照度に相当する「2000ルクス」よりも大きくすることは、当業者が当然に考慮すべき事項の範囲内のものといえる。
したがって、「2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出する」と限定した点は、設計事項であって格別のものではなく、引用発明において相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(エ) 総合評価
相違点1~相違点3を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、当業者が当該構成のものとしては予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
a 審判請求書の主張
審判請求書において、請求人は概略次のように主張している。
本願の請求項に記載の発明は、パネルが可変透過率を有することを特徴としているが、引用文献1は、液晶シャッタを開閉するものである。
調光部26を備えているものの、調光部26はグラス全体として明るさを変えるものであり、シャッタ開閉時の明るさを変えるものではないため、本願で述べる透過率とは異なり、本願の発明に容易に想到することはできない。
b 上申書の主張
令和5年1月24日提出の上申書において、請求人は、請求項1に関して次の補正案1から補正案3の三つの補正案を示し、補正する機会を希望している。
(a) 補正案1
「ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成され、投影デバイスの形態をとる、眼鏡に組み込まれるかまたは取り付けられた放出デバイス(12、112)であって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合され、情報を周囲の現実環境における画像上に投影する、放出デバイス(12、112)と、
パネルを備えた選択的観視デバイス(16、116)であって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイス(12、112)によって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有し、高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い、選択的観視デバイス(16、116)と
を備え、
前記システムが、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイス(12、112)と前記選択的観視デバイス(16、116)とを同期させるように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が、デューティサイクルが1/20以下のパルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイス(116)が、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイス(12、112)が、コンピュータスクリーンとして、モバイル電話で、ラップトップコンピュータで、タブレットコンピュータで、デジタルカメラ上で、ナビゲーションシステムでおよび/またはテレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に、2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出するように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する、
システム。」(下線は補正箇所を示す。以下同様)
(b) 補正案2
「ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成され眼鏡に組み込まれるかまたは取り付けられた放出デバイス(12、112)であって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイス(12、112)と、
パネルを備えた選択的観視デバイス(16、116)であって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイス(12、112)によって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有し、高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い、選択的観視デバイス(16、116)と
を備え、
前記システムが、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイス(12、112)と前記選択的観視デバイス(16、116)とを同期させるように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が、デューティサイクルが1/20以下のパルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイス(116)が、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイス(12、112)が、舗道に情報を投影するように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生する、
システム。」
(c) 補正案3
「ユーザに情報を表示するためのシステムであって、
ユーザに情報を表示するために光を放出するように構成された放出デバイス(12、112)であって、前記光の強度が高値と低値との間で変化するように前記光をパルス状に放出するように適合された、放出デバイス(12、112)と、
パネルを備えた選択的観視デバイス(16、116)であって、前記パネルが、前記ユーザが前記放出デバイス(12、112)によって放出される前記光をそのパネルを通じて観視し、それによって、表示されている前記情報を視覚的に知覚することができるように適合され、前記パネルが、高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率を有し、高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い、選択的観視デバイス(16、116)と
を備え、
前記システムが、前記放出デバイス(12、112)が光を高強度値で放出する状態と前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルの高透過率状態とが時間的にオーバーラップするように、前記放出デバイス(12、112)と前記選択的観視デバイス(16、116)とを同期させるように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が、デューティサイクルが1/20以下のパルス状に前記光が放出されるように適合され、前記選択的観視デバイス(16、116)の前記パネルが、基本的に同じデューティサイクルで動作するように適合され、
前記選択的観視デバイス(116)が、眼鏡の形態を有し、前記パネルが、前記眼鏡のガラスのうちの1つまたは複数であり、
前記放出デバイス(12、112)が、コンピュータスクリーンとして、モバイル電話で、ラップトップコンピュータで、タブレットコンピュータで、デジタルカメラ上で、ナビゲーションシステムでおよび/またはテレビ受像機で使用するのに適したスクリーンを備え、前記スクリーンが、前記光をパルス状に、2000ルクスよりも大きく、かつ前記放出デバイスの周囲の光の強度と等しいかそれよりも大きいピーク照度で放出するように適合され、
前記放出デバイス(12、112)が光を高強度で放出する状態が、前記選択的観視デバイスが高透過率を有する時間期間と同時発生し、
前記システムが、外部に設けられたクロック、具体的にはラジオの時報と同期する、
システム。」
(イ) 請求人の主張についての検討
a 審判請求書の主張について
(a) 請求人は、本願のパネルが可変透過率を有することを特徴としており、液晶シャッタを開閉する引用発明とは異なるものであって、また調光部26もグラス全体として明るさを変えるものであり、シャッタ開閉時の明るさを変えるものではなく、本願で述べる透過率とは異なる旨を主張している。
(b) しかしながら、本願の請求項1において、「可変透過率」は「高透過率状態と低透過率状態との間で変化することのできる可変透過率」と定義されており、シャッタの開閉(おおよそ透過率100%から0%への変化)による透過率変化を含まないとはいえず、請求人の主張は請求項の記載に基づかないものであって、採用することはできない。
なお、本願の明細書の段落【0020】に、本発明の実際的な実施形態としてLCDシャッタガラスを用いることが記載されているとおり、引用発明の液晶シャッタと構成が相違しないことは明らかである。
(c) また、仮に本件補正発明の「可変透過率」が段階的な変化のものであるとしても、本件補正発明は「液晶シャッタ24の開閉の調光幅を調整する」「調光部26」を有しており、これにより透過率の段階的な制御がなされることは明らかである。
請求人は、「調光部26」はグラス全体として明るさを変えるものであり、シャッタ開閉時の明るさを変えるものではないと主張しているが、「調光部26」により液晶シャッタを開制御した際の透過率は変更されるのであるから、これをシャッタ開閉時の明るさを変えるものではないとする主張は受け入れられない。
(d) 以上のとおりであるから、審判請求書の前記主張は、採用することができない。
b 上申書の主張について
(a) 補正案1について
情報表示装置として、「投影デバイスの形態をとる、眼鏡に組み込まれるかまたは取り付けられた放出デバイス」を用いて「情報を周囲の現実環境における画像上に投影する」ようにしたものは、例えばヘッドアップディスプレイの一形態として、特に例を示すまでもなく周知の技術である。
引用発明において、当該周知技術である情報表示装置を採用することは、当業者が容易になし得たものであるから、補正案1の請求項1は、特許可能なものとして受け入れることができない。
(b) 補正案2について
補正案2の補正は、「放出デバイス」が「眼鏡に組み込まれるかまたは取り付けられた」ものであって、しかも「舗道に情報を投影するように適合され[た]」ものとする補正である。
しかしながら、令和5年1月24日提出の上申書において、請求人が補正案2の補正の根拠であると説明する本願明細書の段落【0065】の「図5は、本発明のさらなる一実施形態を示す。その環境では、投影デバイス112が眼鏡110のフレームに取り付けられている。さらに、変化することのできる透過率を有する選択的観視デバイスとしての働きをするガラス116が設けられている。放出デバイスとしての働きをする投影デバイス112が、この場合には、舗道120上に表示されるいくらかの情報の一例としての矢印122(例えばナビゲーションシステムの視覚刺激)を投影する。」という記載から見て、補正案2の補正は、眼鏡型のナビゲーションシステムを実現するという新たな課題を解決するための構成を付加するものであって、特許法17条の2第5項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものには該当しない。
したがって、方針2の補正は認められない。
(c) 補正案3について
機器の制御一般において、同期制御に用いるクロック信号として外部の信号源を利用することは、特に例を示すまでもなく周知な技術であって、これを引用発明に採用することは、当業者が容易になし得たものであるから、補正案3の請求項1は、特許可能なものとして受け入れることができない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は、令和4年2月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に係る拒絶の理由1の概略は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明又は下記の引用文献2に記載された発明及び下記の引用文献3~5に記載された技術事項又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2016-065929号公報
引用文献2.特開2011-249930号公報
引用文献3.米国特許出願公開第2012/0194657号明細書
引用文献4.特開2014-153694号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特表平05-506109号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献に記載された事項等
前記引用文献1には、前記第2の3(2)イにおいて認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「選択的観視デバイス」において「高透過率状態は低透過率状態より光の透過が50倍以上多い」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、当該構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3において説示したとおり、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-011326