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特許拒絶査定不服審判

2022-011225

模型部品、及び、模型部品の製造方法

審判番号
2022-011225
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-183792外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年07月19日
審決日
2023年08月02日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A63H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-183792「模型部品、及び、模型部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月17日出願公開、特開2022- 73659〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、令和2年11月2日の特許出願であって、令和3年11月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和4年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1乃至7に係る発明は、令和4年3月4日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定され、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有し、
前記第1の材料の融点は、前記第2の材料の融点よりも高く、
前記第1の層は、前記第2の層を通して外部から視認可能であり、
前記第1の材料はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂であって、前記第2の材料はスチレン・ブタジエン・コポリマー(SBC)樹脂である、または前記第1の材料はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂であって、前記第2の材料は熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂である、または前記第1の材料は強化ポリスチレン(KPS)樹脂であって、前記第2の材料は熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂である、模型部品。」

第3 原査定の拒絶の理由

拒絶査定の理由である、令和3年11月1日付け拒絶理由通知の理由は、次の理由を含むものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1乃至4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2020-82527号公報

2.特開2001-150480号公報(周知技術を示す文献)

3.特開平9-174599号公報(周知技術を示す文献)

4.「素材」,プラスチック モデル [online],2018年09月05日,http://web.archive.org/web/20180905034128/https://www.floridanachi.org/material.htm,[2021年10月28日検索](周知技術を示す文献)

第4 当審の判断

1 引用例

(1)引用例1

本願の出願日前に頒布された公開公報である特開2020-82527号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成される、模型部品。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品及び模型部品の製造方法に関する。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、色が段階的に濃くなっていくようなグラデーションを施すには技量が必要であり、品質を安定させるのは困難である。また、塗装用の彩色装置を用いる場合、追加の設備投資や、設備が大型化するという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、安定した品質でグラデーションが施された模型部品及びその製造方法を提供することを目的とする。」
エ 「【0011】
まず、発明の実施形態に対応する模型部品の製造方法を、図1のフローチャートに従って説明する。S101では、模型部品の骨格部分を構成する1次成形層を形成するための1次成形を行う。1次成形層の成形材料(素材)としては、不透明のポリスチレン(PS)または強化ポリスチレン(KPS)を使用することができる。次に、S102では、1次成形層の表面に、1次成形層の半面を覆うように2次成形層を形成するための2次成形を行う。2次成形層の成形材料としては例えば透明または半透明の汎用ポリスチレン(GPPS)を使用することができる。続くS103では、1次成形層の表面の残りの部分に、1次成形層を覆うように3次成形層を形成するための3次成形を行う。2次成形層及び3次成形層は模型部品の外側表面(外皮部)を形成することになるが、2次成形層と3次成形層との厚みに応じて、下側に形成された1次成形層の色が透ける程度が異なるように形成されている。
【0012】
上記の工程において、1次成形層を構成する成形材料は不透明の色(例えば、青、緑、その他の色、例えば、ソリッドカラー、メタリックカラー、パールカラー等)、或いは、透明(半透明を含む)の色(例えば、青、緑、その他の色)を有する一方、2次成形層及び3次成形層の成形材料は、透明または半透明の色を有する。例えば、模型部品が人形の髪の毛のパーツを構成する場合に、表面を構成する2次成形層及び3次成形層はクリアホワイト(半透明の白色)であるのに対して、1次成形層は濃い青、あるいは、濃い緑色などとすることができる。2次成形層及び3次成形層の色と1次成形層の色とは同系色であってもよいし、互いに類似色や反対色であってもよい。本実施形態では、このように1次成形層と、2次成形層及び3次成形層とを異なる色の成形材料で形成し、かつ、2次成形層及び3次成形層をクリア素材、或いは、半透明の素材を使用して形成することで、その下にある色の異なる1次成形層が透けて見えるようにすることで、グラデーションを表現可能にする。
【0013】
また、各成形層の成形材料の材質については、1次成形層、2次成形層及び3次成形層を互いに結合させて一体化させるため、共通の材質とすることができる。上記の例ではPS、KPS、GPPSの性質の違いはあれど、ポリスチレンとして共通の材料を用いている。ポリスチレン以外にも、例えばABS樹脂やポリエチレン(PE)等を共通に用いてもよい。また、一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい。」
オ 「【0025】
骨格部と外皮部との外側表面の形状を比較すると、互いに相似形である部分と、相似形でない部分とを含むように構成されている。相似形の部分は、外皮部の厚みが所定値に保たれる。一方、相似形でない部分は、相似形の部分とは異なる厚みを有するように形成されており、厚みの変化に応じて、外皮部を透過して外側から視覚的に認識できる骨格部の色が変化する。例えば、外皮部が半透明(例えば、クリアホワイト)素材で形成されており、骨格部が青色の素材で形成されている場合、クリアホワイトの外皮部を通して骨格部の青色が白濁して見えることになる。このとき、相似形の部分においては外皮部の厚みが一定に保たれるため、半透明の外皮部を通して見える骨格部の色の白濁の度合いは一定である。しかし、外皮部の厚みがより増してくると、白濁の度合いが強くなってくると共に、骨格部が存在しない部分においては外皮部のみの色が認識されることになる。また、外皮部の厚みが薄くなる場合には白濁の度合いが弱くなって青色が濃くなるため、厚みを変化させることにより濃淡を変化させることができる。さらに、骨格部の外形を先細るように構成することで、髪の毛の色が白濁した青色から白に徐々に変化していく様子を表現することができる。また、本実施形態では、外皮部から骨格部(の色)が視認可能な部分と、骨格部が含まれず骨格部(の色)が視認可能でない部分とが連続するように成形を行うことで、色の変化によるグラデーションを表現することができる。ここで、外皮部が2つ以上の成形層を合体して得られる場合に、少なくとも一方が当該構成を有していればよい。
【0026】
次に、本実施形態に対応する模型部品300の断面構造を説明する。図4(A)は、図3(A)模型部品300のうち、外皮部の厚みが所定値に保たれている部分の断面を例示的に示す断面図である。図4(A)の断面図に示すように、模型部品300の外側の面を構成する外皮部は厚みD1を有しており、全体的な厚みは均一である。このように構成された部分では外側から模型部品300を見た場合の色合いは均一に保たれる。一方、図4(B)は、図3(A)模型部品300のうち、外皮部の厚みが変化している部分の断面を例示的に示す断面図である。図4(B)の断面図に示すように、模型部品300の外側の面を構成する外皮部の一部は厚みD1を有している一方で、他の部分では厚みD2、D3を有しており、厚みの大きさはD1<D2<D3となる。このように構成された部分では、厚みの大きさが大きい部分ほど骨格部の色に対する外皮部の色の混色の度合いが大きくなり、外側から模型部品300を見た場合の色合いの変化が大きくなる。例えば、外皮部がクリアホワイトの素材で形成されている場合、厚みが大きくなるほど白濁の度合いが強くなり、D1よりもD2、D2よりもD3の方が骨格部の色味が薄くなる。
【0027】
このようにして外皮部の厚みを部分的に、または、全体的に変化させることにより、模型部品300を外側から見た場合の色合いを異ならせることができる。このとき、外皮部の厚みが連続的に厚くなる部分においては、骨格部の色に対する外皮部の色の混色の度合いが徐々に大きくなるため、最も濃く骨格部の色が透けて見える個所から、徐々に色が薄くなって外皮部自体の色に遷り変わるので、観察者は模型部品300の表面においてグラデーションを観察することができる。
【0028】
グラデーションの見え方は、外皮部の厚みの変化のさせかたの違いによって異ならせることが可能である。例えば、厚みの変化の度合いを、急峻とするか、あるいは、緩やかとするかによって、濃い色から薄い色への変化の仕方が異なるため、異なるグラデーション表現を実現することができる。また、厚みを減らす方向に変化させてもよい。これにより、薄い色から濃い色へ変化させることもできる。」

そうすると、上記記載事項ア乃至オより、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、前記第1の色とは異なる第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有する模型部品であって、
前記第2の層は、前記第1の層が視認される第1の部分と、前記第1の部分と連続し前記第1の層が視認されない第2の部分とを含むように構成され、
一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい、模型部品。」

(2)引用例2

本願の出願日前に頒布された公開公報である特開2001-150480号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は家庭電気製品,情報機器製品,日用雑貨製品等の合成樹脂部分の本体やそのパーツとして、または意匠部材として利用される透かし模様成形体に関するものである。」
イ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の透かし模様成形体は何れも表面の極薄い層によって、透かし模様を構成するために平面的な表現となり、商品価値や高級感に乏しい。例えば、印刷やフィルム転写又は印刷フィルムのインモールド法においては、印刷インクの偏析により光の透過が不均一になり易く、透かし模様にムラが生じる。また塗装によって透かし模様の成形体を得るためには、マスキング処理した模様部分またはそれ以外の部分を光り透過性の塗料を用いて、コーティングする方法が考えられる。しかし、この場合は印刷と同様、コーティングムラが生じる。
【0004】一方、金型粗面転写による透かし模様成形体では透明樹脂の粗面と非粗面の組合わせ表現に限るため、一元的であり表現の多様性に欠ける課題がある。更に何れの場合においても、透かし模様を配する部分が単純表面に制限されて、複雑な成形体には対応しにくい問題がある。
【0005】これらの方法は、概して生産こそ可能であるが工程が繁雑となり、生産コストが高くなる欠陥がある。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術の欠点を除去し、透かし模様成形体において、表面層のみならず深さ方向に変化させ、透かし模様の自在性と色相濃淡の自由性を表現可能な高意匠,高級感に優れた透かし模様成形体を提案することにある。」
ウ 「【0009】本実施の形態の透し模様成形体は模試的に示す図1平面図(I)断面図(II)に示す様に、有色透明合成樹脂を用いて射出成形法により、凹凸で形成した模様面1を有するベース層となる一次成形層2に、模様面1を覆う表面の滑らかな透明合成樹脂を用いて合成樹脂層となる二次成形層3を一体に形成した2層の合成樹脂成形体である。
【0010】これら成形体を得る手段は射出成形方法による周知のインサート成形、または二色成形によって実施することができる。一次成形層2及び二次成形層を形成する合成樹脂としては、ポリスチレン,アクリロニトリルスチレン,アクリロニトリルブタジエンスチレン,ポリメチルメタアクリルブタジエンスチレン,メチルメタアクリレート,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリ塩化ビニル,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ナイロン,ポリエーテルケトン,ポリサンホン,ポリエーテルサンホン,エチレン酢ビ共重合体,スチレンブタジエンスチレン共重合樹脂,スチレンエチレンスチレン共重合樹脂,ポリブテン,ポリウレタン等の光透過性樹脂が使用できる。
【0011】また、これらの樹脂に着色顔料,着色染料,耐候剤,帯電防止剤,抗菌剤等を光透過性を失われない範囲で添加して用いることができる。次に、一次成形層2および二次成形層3の合成樹脂材質上の組合わせは互いに熱融着性を有するものが良い。更なる好適条件としては二次成形層3を形成する合成樹脂に対し、一次成形層2を形成する合成樹脂の融点や耐熱特性が高い方が良い。即ち、一次成形層2に形成された凹凸模様1に熱溶融された二次成形合成樹脂が射出流入される際、凹凸模様1の溶け出しを抑止する効果がある。」

そうすると、上記記載事項ア乃至ウより、引用例2には、次の技術事項(以下「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「有色透明合成樹脂を用いて射出成形法により、凹凸で形成した模様面1を有するベース層となる一次成形層2に、模様面1を覆う表面の滑らかな透明合成樹脂を用いて合成樹脂層となる二次成形層3を一体に形成した2層の合成樹脂成形体であって、二次成形層3を形成する合成樹脂に対し、一次成形層2を形成する合成樹脂の融点や耐熱特性が高い、合成樹脂成形体。」

(3)引用例3

本願の出願日前に頒布された公開公報である特開平9-174599号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】2色成形機により、1次成形でパネルの周辺部を構成する1次成形部分を不透明色樹脂で射出成形し、その1次成形部分を2次成形型に運び、2次成形でそのパネルの1次成形部分を覆う上層部および中央の表示部を構成する2次成形部分を透明色樹脂を射出して1次成形部分と一体に成形するパネルの2色成形方法において、1次成形キャビ型と前記表示部になる部分に突起部を設けたコア型とで1次成形部分を成形し、次に2次成形部分を一体成形することを特徴としたパネルの2色成形方法。
…
【請求項4】前記2次成形で射出成形する樹脂は、前記1次成形で射出成形する樹脂より融点の低い樹脂である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパネルの2色成形方法。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、AV、OA機器等の表示部に使用されるパネルを、2色成形機により、1次成形でパネルの周辺部を構成する1次成形部分を不透明色樹脂で射出成形し、その1次成形部分を2次成形型に運び、2次成形でその1次成形部分を覆う上層部および中央の表示部を構成する2次成形部分を透明色樹脂を射出して1次成形部分と一体に成形するパネルの2色成形方法に関する。」
ウ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、2次成形の際に不透明色の1次成形部分が、透明色の2次成形部分に溶け込まないパネルの2色成形方法を提供することを目的としている。」
エ 「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】図1および図2には本発明の一実施形態が示されている。図1は1次成形の態様を示しており、コア型3A側には、表示部Dになる部分に突起部3aが1次成形部分1の厚さに相当する高さで対向する1次成形キャビ型4Aに当接して設けられている。このコア型3Aとキャビ型4Aとの空間に不透明色樹脂が射出され、パネル10の中央の表示部Dとなる部分は突起部3aにより除かれた形で1次成形部分1が成形される。
【0013】次に、1次成形部分1は,図2に示すように2次成形キャビ型5Aに送られ、2次成形キャビ型5Aとコア型3Aとで、2次成形部分2Aである表示部Dおよび1次成形品を覆う上層部分とが透明色樹脂で一体に成形され、そして取り出される。
【0014】この発明によれば、2次成形部分2Aは、1次成形部分1を覆う上層部が、中央の表示部Dも同一厚さになっており、図11に符号Kで示した1次成形部分の2次成形部分2Aへの突出がないので、2次成形射出による1次成形部分1の透明色部分への溶け込みが防止される。
【0015】また、図3および図4には、第2の発明の実施形態が示されている。図3に示す1次成形において、コア型3Bの表示部Dになる部分に設けられた突起部3bは、1次成形部分1の厚みより上方までの高さとし、対向する1次キャビ型4Bには凹部が設けられている。そして、図4に示す2次キャビ型5Bではこの表示部は平になっており、したがって、この2次成形部分2Bの表示部Dは、2次成形部分2Bの他の部分より薄い形となって成形される。
【0016】この第2の発明によれば、図11に符号Kで示した1次成形部分は、一層隠された形になり、2次成形時の溶け込みが防止される。
【0017】次に、図5は第3の発明の実施形態を示している。2次成形のキャビ型に設けられた2次成形用のゲート17は、周辺方向に寄せられ、その射出の方向を周辺部Eに向けた位置G1に配設されている。このゲート17から2次成形の射出が行われると、射出方向には表示部Dは無く、したがって、前記の符号Kで示した突出はなく1次成形部分1の溶け込みを生じない。また、例え溶け込みがあっても、不透明色の周辺部であって不具合が生じない。なお、符号G0は、従来のゲートの位置を示している。
【0018】また、2次成形で射出成形する樹脂を、1次成形で射出成形する樹脂より融点の低い樹脂とする。こうして、1次成形の樹脂の融点より低い温度で2次成形射出を行えば、1次成形部分の溶け込みが防止される。
【0019】そして、以上の各発明は、成形する形状・仕様により適宜選択組み合わせて実施することができる。」

そうすると、上記記載事項ア乃至エより、引用例3には、次の技術事項(以下「引用例3記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「2色成形機により、1次成形でパネルの周辺部を構成する1次成形部分を不透明色樹脂で射出成形し、その1次成形部分を2次成形型に運び、2次成形でそのパネルの1次成形部分を覆う上層部および中央の表示部を構成する2次成形部分を透明色樹脂を射出して1次成形部分と一体に成形するパネルの2色成形方法において、1次成形キャビ型と前記表示部になる部分に突起部を設けたコア型とで1次成形部分を成形し、次に2次成形部分を一体成形するパネルの2色成形方法であって、
前記2次成形で射出成形する樹脂は、前記1次成形で射出成形する樹脂より融点の低い樹脂であるパネルの2色成形方法。」

(4)引用例4

本願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「4.「素材」,プラスチック モデル [online],2018年09月05日,http://web.archive.org/web/20180905034128/https://www.floridanachi.org/material.htm

,[2021年10月28日検索](以下「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「素材
…
ABS
アクリロニトリル、ブタジエンゴム、スチレンを混ぜたもの。
配合比率によって物性に差はありますが、ポリスチレンよりも割れにくく磨耗も少ないです。
このため、負荷のかかるキャラクター模型の関節部や動力模型のシャーシ、ミニ四駆や電動RCなどのパーツがABSで成型されることが多いです。
溶融接着には専用の接着剤を必要とし、切削性もポリチスチレンよりも粘り気が強い。 模型用ラッカーで劣化したという事故報告もあります。 このため敬遠するモデラーも少なからずいます。
…
■アサフレックス:スチレン系の合成樹脂。曲げると変形が残る程度の柔軟性で、塗装も接着もできる。」

2 当審の判断

(1)対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

ア 後者の「第1の色の第1の材料で形成された第1の層」、「第2の色の第2の材料からなる第2の層」、及び「模型部品」は、それぞれ、前者の「第1の色の第1の材料で形成された第1の層」、「第2の色の第2の材料からなる第2の層」、及び「模型部品」に相当する。

イ 前者の「第2の層」と後者の「第2の層」とは、第1の層の少なくとも一部を覆うように形成されたものである点で一致する。

ウ 後者の「第1の層」は、第2の層が少なくとも一部を覆うように形成され、当該第2の層の第1の部分から視認されるから、前者の「第1の層」と後者の「第1の層」とは、第2の層を通して外部から視認可能である点で一致する。

(2)本願発明と引用発明1の一致点と相違点について

上記(1)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、下記の各相違点において相違する。

[一致点]

「第1の色の第1の材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の少なくとも一部を覆うように形成された第2の層であって、第2の色の第2の材料からなる第2の層と
を有し、
前記第1の層は、前記第2の層を通して外部から視認可能である、模型部品。」

[相違点1]

本願発明の「第1の材料の融点」は、「第2の材料の融点」よりも高いのに対し、引用発明1の第1の材料の融点と第2の材料の融点の高低関係は不明である点。

[相違点2]

本願発明の「前記第1の材料はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂であって、前記第2の材料はスチレン・ブタジエン・コポリマー(SBC)樹脂である、または前記第1の材料はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂であって、前記第2の材料は熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂である、または前記第1の材料は強化ポリスチレン(KPS)樹脂であって、前記第2の材料は熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂である」のに対し、引用発明1の第1の材料は強化ポリスチレン(KPS)である点。

(3)上記相違点についての検討

ア [相違点1]について

上記引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項からすると、模様面もしくは不透明樹脂からなる層に透明樹脂を積層した合成樹脂の積層体において、模様面もしくは不透明樹脂からなる層の成形後の透明樹脂の成形の際に、模様面もしくは不透明樹脂からなる層が溶け出さないよう融点を高くすることは、周知の技術手段(以下「周知技術1」という。)といえる。

ここで、引用発明1の第2の層は、第1の層が視認される第1の部分を含むものであることからすると、第2の層の形成の際に第1の層が溶融してしまうと、模型部品として完成した際に、第1の層を視認することができなくなってしまうから、引用発明1は、第2の層の形成の際に第1の層が溶融しないようにするという潜在的な動機を持つものである。

そうすると、上記周知技術は、模型部品に特化した技術分野の技術ではないものの、模型部品を構成する合成樹脂の成型技術である点では共通する技術分野といえる。

そして、前述の通り、引用発明1も上記周知技術も積層する合成樹脂が溶融しないようにするという課題を備えている点で共通するから、引用発明1に、前記周知技術を適用する動機付けがあるといえる。

そうすると、引用発明1の第1の材料の融点と第2の材料の融点に対し、上記周知技術を適用し、第1の材料の融点は、第2の材料の融点よりも高くすることは、当業者が容易になし得るものである。

イ [相違点2]について

プラモデルの材料として、ABS樹脂やアサフレックス(SBC樹脂)は引用例4に示されているように、通常用いられている材料であって、模型部品の技術分野において周知の技術手段(以下「周知技術2」という。)といえる。

そして上記アのとおり、引用発明1においても、第2の層の形成の際に第1の層が溶融しないようにするという潜在的な動機を持つものであるのだから、第1の層の第1の材料及び第2の層の第2の材料として、溶融しない材料を選択する動機付けはあるといえる。

ここで、上記のとおり、ABS樹脂やアサフレックス(SBC樹脂)は、通常用いられている材料であるところ、溶融しない材料の組み合わせとして、通常用いられる材料の中から、第1の材料として、ABS樹脂を採用し、第2の材料としてSBC樹脂を採用することは、当業者が適宜採用しうる事項といえる。

そして、引用発明1は、一部の層に異なる材質の素材を用いてもよい模型部品であることから、上記周知技術2を採用することを阻害する要因はないものと認める。

そうすると、引用発明1に上記周知技術2を適用して、模型部品の第1の材料として、ABS樹脂を採用し、第2の材料としてSBC樹脂を採用して、以て上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明の効果も、引用発明1、上記周知技術1及び2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。

ウ 審判請求人の主張について

(ア)審判請求人は、以下のように主張する。

「引用文献2も引用文献3も、一次成形層の材料が溶けて二次成形層の材料に混入することを問題視しているものです。ひいては、このような「溶け出し」や「溶け込み」により、一次成形層の形状が維持されなくなることを問題視しているものです。 これに対し本願発明は、第1の層が第2の層に「溶け出す」或いは「溶け込む」以前の「第1の層の表面の荒れ」を起きにくくすることを目的としており、よりミクロ的な視点において模型部品を外から観察した場合の美的外観を維持することに関わるものです。 即ち、引用文献2及び引用文献3は、本願発明の意図するような「第2の層を通して確認される第1の層の表面の荒れが起きにくい」ようにするという観点で、第1の層の材料の融点と、第2の層の材料の融点とを異ならせるという技術的思想を開示も示唆もしておりません。」(以下「主張1」という。)

「引用文献1においてはポリスチレン系の同種の材料を用いて成形する場合を想定しており、そもそも本願発明が規定する第1の材料と第2の材料との具体的な組み合わせや、それらの組合せにおける表面荒れやはがれにくさについても全く想定されておりません。 従いまして、引用文献1からは、本願発明のような特定の材料の組合せにおける表面荒れやはがれにくさに関する技術的思想が示唆されることはありません。」(以下「主張2」という。)

そこで、以下、各主張について検討する。

(イ)「主張1」について

本願発明における「1次成形層の表面が荒れ」について、願書に添付した明細書には、以下のように記載されている。

「【0013】各成形層の成形材料の材質については、1次成形層と2次成形層とを互いに結合させて一体化させるために共通の材質の材料を用いることができる。例えば、PS、KPS、GPPS等は性質の違いはあれど、ポリスチレンとして材質が共通する材料である。しかし、材料の融点が近い場合、1次成形層の上に2次成形層を形成する際に2次成形層の熱や、射出成型時の摩擦熱により1次成形層が侵食されて1次成形層の表面が荒れてしまうおそれがある。このとき2次成形層が不透明であれば外側から下地層である1次成形層の荒れが確認できないので特段問題とならないが、2次成形層が透明或いは半透明の場合は2次成形層を通して1次成形層の表面が見えるため荒れが問題となる。その一方で、1次成形層と2次成形層とで異なる材質の材料(材質が共通でない材料)を用いる場合には、層間の結合力が弱まるために、成形後に1次成形層から2次成形層がはがれやすくなるという問題がある。」

上記記載からすると、「1次成形層の表面が荒れ」の原因は、1次成形層の上に2次成形層を形成する際に2次成形層の熱や、射出成型時の摩擦熱による1次成形層への侵食であると認められる。そして、1次成形層への侵食とは、すなわち、上記周知技術1における「溶け出し」や「溶け込み」に他ならない。

してみると、上記周知技術1には、「第2の層を通して確認される第1の層の表面の荒れが起きにくい」ようにするという観点においても、第1の層の材料の融点と、第2の層の材料の融点とを異ならせるという技術的思想を開示しているといえる。

よって、上記主張1は採用できない。

(ウ)「主張2」について

上記イで説示したとおり、第1の材料をアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂とし、第2の材料をスチレン・ブタジエン・コポリマー(SBC)樹脂とすることは、当業者が容易になし得るものであるところ、第1の材料をアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂とし、第2の材料を熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂とすること、及び、第1の材料を強化ポリスチレン(KPS)樹脂とし、第2の材料を熱可塑性エラストマー(TPE)樹脂との請求項1で特定された第1の材料と第2の材料とを組み合わせること自体による表面荒れやはがれにくさを改善することについては、願書に添付した明細書の段落【0013】及び【0014】の記載を根拠と推察するが、はがれにくさの改善が、いかなる作用機序に基づくものなのか、材料選択の試行実験の結果に基づくものなのか、それとも、成形時の温度によるものなのか、何ら立証されているわけでもないから、上記主張2については、採用できない。

第5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-011225

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