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特許拒絶査定不服審判

2023-015577

台座付きアクリルスタンド

審判番号
2023-015577
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-106028外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年09月14日
審決日
2024年06月25日
公報発行日
2024年09月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A63H) / P18 .561-Z (A63H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-106028「台座付きアクリルスタンド」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月 9日出願公開、特開2022-169501〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和4年6月30日の出願であって、令和5年2月28日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月10日及び同月13日に刊行物等提出書が提出され、同年6月6日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年6月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月2日付で同年6月23日に提出された手続補正書でした手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和5年9月14日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年9月14日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和5年4月5日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至6を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至4へと補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、 前記第1の透明アクリル板は、片面又は両面にキャラクタ画像がUV印刷され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、 前記第2の透明アクリル板は、一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、 前記溝部は、前記台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、前記アクリルスタンドを前記台座に係合させた時、固定及び保持させるに必要な長さLと残り代Cとを有する、一端が開口され他端が閉塞したスリットであり、前記スリットの根本幅Bはd-Δdに設定され、先端幅Aは前記根本幅Bよりも広く開口され、前記長さLと前記残り代Cとを前記スリットが前記アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定することを特徴とする台座付きアクリルスタンド。 【請求項2】 前記スリットはレーザ加工により形成されることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項3】 前記肉厚dと前記公差±Δdと前記根本幅Bとが、それぞれ3mm、±0.1mm、2.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項4】 前記台座は矩形又は楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項5】 前記アクリルスタンドと前記台座との前記係合は、前記アクリルスタンドの前記スリットの前記一端からの挿入と、前記他端に向かっての摺動とにより行われることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項6】 前記先端幅Aは3.11mm~3.77mmの範囲で根本幅Bよりも広く開口され、前記長さLを21mm~36mm、前記残り代Cを24mm~9mmの範囲で設定することを特徴とする請求項3に記載の台座付きアクリルスタンド。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 押出成形により得られ、肉厚dと公差±Δdとを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、 前記第1の透明アクリル板は、片面又は両面にキャラクタ画像がUV印刷され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、 前記第2の透明アクリル板は、一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、 前記溝部は、前記台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、前記アクリルスタンドを前記台座に係合させた時、固定及び保持させるに必要な長さLと残り代Cとを有する、一端が開口され他端が閉塞したスリットであり、前記肉厚d,前記公差±Δdおよび前記スリットの根本幅Bをそれぞれ3mm,±0.1mmおよび2.8mmに設定し、前記スリットの長さLを15mm~40mmに可変させながら、先端に約5kg重の荷重を印加したときに広がる先端幅Aの大きさと残り代C(=40mm-L)とを測定して前記台座の強度と、板厚が2.9mmと3.1mmの100mm角のアクリル板を前記台座の背端部に挟んで垂直に持ち上げて保持力の有無とをそれぞれ測定し、 前記スリットの先端幅Aを前記アクリルスタンドの前記台座への係合時に3.11mm~3.77mmの範囲で前記根本幅Bよりも広く開口し、 前記長さLを21mm~36mm、前記残り代Cを24mm~9mmの範囲で設定することにより前記スリットが破損に耐える強度を維持しつつ前記アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つことを特徴とする台座付きアクリルスタンド。 【請求項2】 前記スリットはレーザ加工により形成されることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項3】 前記台座は矩形又は楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。 【請求項4】 前記アクリルスタンドと前記台座との前記係合は、前記アクリルスタンドの前記スリットの前記一端からの挿入と、前記他端に向かっての摺動とにより行われることを特徴とする請求項1に記載の台座付きアクリルスタンド。」(下線部は補正箇所であり、審決で付した。) 2 補正の適否 (1)新規事項の追加について ア 本件補正は、 (ア)補正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項6を独立形式に記載し(以下「補正事項1」という。)、 (イ)「『スリットの長さLを15mm~40mmに可変させながら、先端に約5kg重の荷重を印加したときに広がる先端幅Aの大きさと残り代C(=40mm-L)とを測定して前記台座の強度』と、『板厚が2.9mmと3.1mmの100mm角のアクリル板を前記台座の背端部に挟んで垂直に持ち上げて保持力の有無』とをそれぞれ測定し」と台座の強度の測定方法と、台座のスリットの保持力の測定方法を特定し(以下「補正事項2」という。)、 (ウ)スリットの先端幅Aを3.11mm~3.77mmの範囲で前記根本幅Bよりも広く開口するのが、「前記アクリルスタンドの前記台座への係合時」であることを限定し(以下「補正事項3」という。)、 (エ)記長さLを21mm~36mm、前記残り代Cを24mm~9mmの範囲で設定することにより「スリットが破損に耐える強度を維持」する(以下「補正事項4」という。)、 ことを特定したものである。 イ ここで、補正事項2に関連して、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 「【0023】 以下、それらの実験について説明する。 図3は、台座に形成されるスリットに必要とされるスリット長L、根本幅B、先端幅A、保持力の値を定めるために使用したアクリル板を使った実験の説明図である。 図3(a)に示すように台座には肉厚dが3mmで、一辺の長さlが45mmの矩形のアクリル板Pを使用した。 そして、図3(b)に示すように、根本幅Bが2.8mm、公差±0.02のスリットを設ける。 図3(c)は、スリットの長さLを15mm~40mmに可変させながら、先端に約5kg重の荷重で印加したときに広がる先端幅Aの大きさと残り代C(=45mm-L)とを測定した(実験1)。 【0024】 図3(d)は保持力テスト(実験2)を説明するもので、板厚が2.9mmと3.1mmの100mm角のアクリル板Qをアクリル板Pの背端部に挟んで垂直に持ち上げて保持力を調べた。挟んだまま持ち上げ可能であれば保持力有(○)、持ち上げられず落ちてしまう場合は、保持力無(×)と判定した。」 ウ 上記イには、測定対象の残り代Cについて(=45mm-L)であることは記載されているものの、(=40mm-L)とは記載されていなし、示唆もされていない。 エ そうすると、上記補正事項2の「残り代C(=40mm-L)」との構成は、当初明細書等から自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 以上のとおりであるから、上記補正事項2を含む本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 3 まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至6に係る発明は、令和5年4月5日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)本件補正前の特許請求の範囲の【請求項1】に記載のとおりのものである。 第4 原査定における拒絶の理由 原査定の理由とされた、令和5年6月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の理由を含むものである。 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> 1.アクキーが飾れる!アクスタを崩さず飾れる!スーパー便利なアクリル台座作っちゃいました!,YouTube [online][video] ,2021年01月16日,https://www.youtube.com/watch?v=4ZF2UoDevto, [2023年06月06日検索] 2.[新商品のお知らせ]ジェイホビ台座Sに新型UVが登場!?ジェイホビ棒カラーも新登場!特典も盛り沢山!,YouTube [online][video],2021年08月02日,https://www.youtube.com/watch?v=HHOtHKb3MkM, [2023年06月06日検索] 3.特開2016-042947号公報(周知技術を示す文献) 第5 引用例 1 引用例1 本願の出願前である2021年01月16日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「ジェイホビTV!! X,アクキーが飾れる!アクスタを崩さず飾れる!スーパー便利なアクリル台座作っちゃいました!【ジェイホビ台座Sパクパクさん】,YouTube [online][video] ,2021年01月16日,https://www.youtube.com/watch?v=4ZF2UoDevto, [2023年06月06日検索]」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記録されていると認定することができる。 なお、画面の左下部に表示される「○:○○/8:17」は、「再生開始からの経過時間(分秒)/総再生時間(8分17秒)」を表示したものであることは明らかであるところ、以下、各認定事項は、再生開始からの経過時間(分秒)の各時点での静止画に基づき認定する。 また、表示される画像中の絵柄や文字は、ある一定時間表示されるものもあるが、この審決の認定において、必ずしも最初に表示された時点での経過時間に対応させて認定しているものではなく、この動画の内容を表現するにあたり、当審で適切であると認定した時点に対応させて認定したものである。 さらに、認定した事項は、瞬間的な画像の表示内容以外にも、画像の表示内容の変化(時系列を伴うもの)も含まれる。 (1)「あれもこれも飾れる! 崩さず飾れる! アクキーが飾れる! 便利な台座作りました!」(オープニング画面) (2)「アクリル製の台座です」(0:33/8:17) (3)台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、一端が開口され他端が閉塞したスリットが形成された透明な台座が表示されている。(1:37/8:17) (4)「片方を貫通させました」(1:59/8:17) (5)「アクリルキーホルダーを飾りたいということで作ったんですけど」(2:05/8:17) (6)「アクリルキーホルダーって」(2:06/8:17) (7)「割とね底が平らだったりするんですよ」(2:07/8:17) (8)「こういう物も飾れることになりました」(2:22/8:17) (9)片面にキャラクタ画像が表示され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように切断された板状の透明なアクキーを、一方の面上に係合させ、かつ、略垂直に取り付け可能なスリットが形成された台座と、アクキーを台座に係合させた時、台座に対してアクキーが垂直方向に固定及び保持されていることが看取できる。(2:51/8:17~2:56/8:17) (10)「綺麗に飾れますから」(3:07/8:17) (11)「うわ、すごい、普通のアクスタですよ、これ。」「アクスタになっちゃった」(3:11/8:17~3:13/8:17) (12)「この『ジェイホビ台座S』に入れるだけで」(5:26/8:17) (13)引用例1の「アクキー」は、「アクリルキーホルダー」に対応する事項である。 そうすると、上記事項(1)乃至(13)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「板状の透明なアクリルキーホルダー及びアクリル製の透明な台座から構成されるアクスタであって、 アクリルキーホルダーは、片面にキャラクタ画像が表示され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように切断された板状であり、 台座は、周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、一端が開口され他端が閉塞したスリットが形成され、アクリルキーホルダーを一方の面上に係合させ、かつ、略垂直に取り付け可能なスリットが形成され、アクリルキーホルダーを台座に係合させた時、台座に対してアクリルキーホルダーが垂直方向に固定及び保持されている、 アクスタ。」 2 引用例2 本願の出願前である2021年8月2日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「ジェイホビTV!! X,【新商品のお知らせ】ジェイホビ台座Sに新型UVが登場!?ジェイホビ棒カラーも新登場!特典も盛り沢山!,YouTube [online][video],2021年08月02日,https://www.youtube.com/watch?v=HHOtHKb3MkM, [2023年06月06日検索]」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記録されていると認定することができる。 (1)「これが今までのジェイホビ台座S[V]ですね」(0:38/13:35) (2)「例えばちょっと厚めのアクリルをグッと入れてしまった場合に」(1:11/13:35) (3)「ジェイホビ台座S[V] 入口:3.0mm 奥:2.8mm」(2:29/13:35) (4)「だからS[V]よりも ハマりはイイと思います」(2:40/13:35) (5)引用例1と引用例2は同一の作者「ジェイホビTV!! X,」が作成したものであり、引用例1のタイトルにある「ジェイホビ台座S」と引用例2のタイトルにある「ジェイホビ台座S」とは同一物であると推認できるから、引用例2の「ジェイホビ台座S[V]」とは、「板状の透明なアクリルキーホルダー及びアクリル製の透明な台座から構成されるアクスタ」に用いる「アクリル製の透明な台座」といえる。 (6)上記(3)の画像からジェイホビ台座S[V]のスリットが看取できるところからすると、当該スリットの幅が入口:3.0mm、奥:2.8mmであると認められる。 そうすると、上記事項(1)乃至(6)より、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「板状の透明なアクリルキーホルダー及びアクリル製の透明な台座から構成されるアクスタに用いるアクリル製の透明なジェイホビ台座S[V]であって、 スリットの幅が入口:3.0mm、奥:2.8mmである、ジェイホビ台座S[V]。」 第6 対比・判断 1 本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)後者の「板状の透明なアクリルキーホルダー」、「アクリル製の透明な台座」、「キャラクタ画像」、「『スリットが形成され』た『台座』」、「周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、一端が開口され他端が閉塞したスリット」及び「アクスタ」は、前者の「第1の透明アクリル板」、「第2の透明アクリル板」、「キャラクタ画像」、「溝部が形成された台座」、「『前記台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し』た『溝部』及び『一端が開口され他端が閉塞したスリット』」及び「台座付きアクリルスタンド」に相当する。 (2)後者の「アクリルキーホルダー」は、「板状の透明」であり「片面にキャラクタ画像が表示され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように切断された板状」であるから、前者の「第1の透明アクリル板(アクリルスタンド)」と後者の「アクリルキーホルダー」とは、「片面にキャラクタ画像が表示され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように切断された板状」のものとの概念で一致する。 (3)後者の「アクリル製の透明な台座」は、「周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、一端が開口され他端が閉塞したスリットが形成され」、「アクリルキーホルダーを台座に係合させた時、台座に対してアクリルキーホルダーが垂直方向に固定及び保持されている」ものであるから、前者の「第2の透明アクリル板(台座)」と後者の「台座」には、「溝部」が「前記台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状」に「延在し」、「一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された」ものとの概念で一致する。 (4)後者の「台座」には、「一端が開口され他端が閉塞したスリットが形成され」ているから、スリットの閉塞した点と他端との間は前者の「残り代」に相当する。 (5)前者の「透明アクリル板」も後者の「板状の透明なアクリルキーホルダー」及び「アクリル製の透明な台座」も、設計上、特定の厚さに構成されるところ、アクリル板から構成されるものであるから、両者とも、公差(±Δd)が付加された厚さである点で一致する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し,相違点において相違する。 [一致点] 「公差±Δdが付加された厚さを有する第1及び第2の透明アクリル板から構成され、 前記第1の透明アクリル板は、片面にキャラクタ画像が表示され、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように設定した外形線に沿って切断されて板状のアクリルスタンドとなり、 前記第2の透明アクリル板は、一方の面上に前記アクリルスタンドを係合させ、略垂直に取り付け可能な溝部が形成された台座となり、 前記溝部は、前記台座の周辺の一端から内側に向かって他端に直線状に延在し、前記アクリルスタンドを前記台座に係合させた時、残り代Cを有し、一端が開口され他端が閉塞したスリットである台座付きアクリルスタンド。」 [相違点1] 「第1及び第2の透明アクリル板」が、本願発明では、「押出成形により得られ」、ともに「肉厚d」であるのに対し、引用発明1は、成形方法が不明であり、同じ肉厚であるのか否か不明である点。 [相違点2] 「第1及び第2の透明アクリル板」が、本願発明では、「肉厚dと公差±Δdとを有する」ものであるのに対し、引用発明1は、肉厚dと公差が不明である点。 [相違点3] アクリルスタンドを台座に係合させた時、本願発明が、「固定及び保持させるに必要な」長さLを有し、「前記スリットの根本幅Bはd-Δdに設定され、先端幅Aは前記根本幅Bよりも広く開口され、前記長さLと前記残り代Cとを前記スリットが前記アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定」しているのに対し、引用発明1は、スリットの長さ、開口幅、閉塞位置の幅の規定がない点。 [相違点4] 「第1の透明アクリル板」が,本願発明では、キャラクタ画像が「UV印刷され」、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように「設定した外形線」に沿って切断されたものであるのに対し、引用発明1は、片面にキャラクタ画像が「表示」され、「キャラクタ画像の外側を取り囲むように切断」されているものの、前記キャラクタ画像の外側を取り囲むように「設定した外形線」に沿って切断されたか否か定かでない点。 2 上記各違点についての検討 (1)[相違点1]及び[相違点4]について アクリルスタンドの台座及びアクリルキーホルダーを押出成形により形成し、アクリルキーホルダーにUV印刷を行い、像に沿って切り抜き加工することは、アクリルスタンドにおいて一般的に採用されている技術であって、周知の技術手段ともいえる(例えば、特開2016-42947号公報(【0062】、【0063】、【0069】、【0100】参照。)。以下「周知技術」という。)である。 そして、像に沿って切り抜き加工するとは、明示的に外形線がなくとも、切断痕は、キャラクタの画像の外側を囲んだ外形線に等しいことは明らかである。 そうすると、上記相違点1及び相違点4は、アクリルスタンドにおける一般的な技術であるから、引用発明も前記周知技術を採用している蓋然性が高いか、少なくとも、引用発明に前記周知技術を適用することは、当業者が容易になし得るものである。 (2)[相違点2]及び[相違点3]について 引用発明2の「スリットの幅」が「入口:3.0mm、奥:2.8mm」であるから、本願発明の「スリット」と引用発明2の「スリット」とは、「根本幅Bはd(2.9mm)-Δd(0.1mm)に設定され、先端幅A(3.0mm)は前記根本幅Bよりも広く開口され」ている点で共通する。 引用発明2の台座に対し、アクリルキーホルダーがハマることは明らかであるから、引用発明2の「スリット」は、「固定及び保持させるに必要な」長さを有しているといえる。 してみると、スリットに対する残り代は、当然、アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定されているといえる。 引用発明1においても、アクリルキーホルダーを綺麗に飾ることができるのであるから、スリットに対する残り代は、当然、アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定されているといえる。 そうすると、第1及び第2の透明アクリル板の厚さを除き、上記相違点2及び相違点3は引用発明2に示されているといえる。 ここで、「第1及び第2の透明アクリル板の厚さ」について、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の段落【0017】には「出願人は、アクリル板スタンド101と台座141とを通常、肉厚d=3.0mmに設定して作製しているが、その場合の交差Δdは、±0.1mmの範囲におさまる。」と記載されているだけであって、第1及び第2の透明アクリル板を同じ厚さにする技術的な意義は把握できない。 そして、同じ材料を用いて形状の異なる複数の部材を作製するにあたり、当該材料は特定の規格の材料を用いることで、コストを低減できることは、製造上、明らかなことからすると、引用発明1の「『板状の透明なアクリルキーホルダー』及び『アクリル製の透明な台座』」並びに引用発明2の「『板状の透明なアクリルキーホルダー』及び『アクリル製の透明な台座』」を同じ規格の材料を用いて作製し、その結果、同じ厚さに構成することは、当業者が適宜採用し得る設計的事項であるといえる。 そして、引用発明2における「ジェイホビ台座S[V]」は、引用発明1における「アクリル製の透明な台座」と同一物であると推認できるところからすると、上記相違点2及び相違点3に係る構成は、引用発明1の備えていると推認できるから、上記相違点2及び相違点3は、実質的な相違点ではないといえるか、少なくとも、引用発明1に、引用発明2を適用することにより、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明の効果も、引用発明1、上記周知技術及び引用発明2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。 (3)請求人は、令和5年6月23日に提出された意見書において、 「引例1、引例2に開示されているジェイホビ台座S[V]、S[UV]に対しても、保持に必要な長さLと残り代Cとを本願発明のように適切に定めておかないと、アクリルスタンドの係合時に台座が根本部において、割れてしまい、アクリルスタンドを保持出来なくなる。 引例発明2に係るジェイホビ台座S[UV]もS[V]も本願発明で規定している残り代Cの範囲を規定していないので、残り代Cを9mm未満とすると、台座は割れることは明らかである。」と主張する。 しかし、上記第2 1(1)のとおり、本願発明の「残り代」は、「前記長さLと前記残り代Cとを前記スリットが前記アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定する」としか特定されていないところ、上記のとおり、引用発明1も引用発明2も、アクリルキーホルダーを綺麗に飾ることができるのであるから、スリットに対する残り代は、当然、アクリルスタンドの荷重に抗して保持する保持力を保つのに必要な範囲に設定されているといえる。 よって、請求人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1,上記周知技術及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-015577

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