特許拒絶査定不服審判
2024-016896
装置、方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2024-016896
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-073690
- 請求日
- 2024年10月23日
- 審決日
- 2025年06月20日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】小谷 昌崇
- 【請求人代理人】西谷 浩治
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 門 良成
- 分類
- P18 .121-Z (A63H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 73690「装置、方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 7月21日出願公開、特開2023-101501〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月26日に出願した特願2019-33141号の一部を令和5年4月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 5年 4月27日 :上申書の提出
令和 6年 2月 6日付け:拒絶理由通知
同年 4月10日 :意見書の提出
同年 7月23日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年10月23日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
なお、後記第5の対比の議論のために、請求項2の記載を便宜上次のように構成A~E、Xに分説する。
「【請求項2】
(構成X)人間と相互作用する装置を待機させる方法であって、
(構成A)前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報に基づいて、前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定し、
(構成B)駆動機構を制御して、前記決定された待機場所に向けて、前記装置を駆動させ、
(構成C)前記待機場所は、現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日の少なくともいずれか一つに対応する前記接触情報に含まれる場所情報に基づき、決定されたものであり、
(構成D)前記駆動機構を制御して、前記決定された待機場所又は前記待機場所の周辺に、前記装置を待機させ、
(構成E)前記装置を待機させる際に、前記駆動機構を制御して待機に適した所定の方向に前記装置を向ける、
方法。」
第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由1(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2017/169826号(主たる引用例)
第4 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
1 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、前記引用文献1(国際公開第2017/169826号)には、以下の事項が記載されている。下線は、当審において付したものであり、以下同様である。
(1) [0001]
「[0001] 本発明は、内部状態または外部環境に応じて自律的に行動選択するロボット、に関する。」
(2) [0046]~[0049]
「[0046] (ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、駆動機構120および内部センサ128を含む。通信部142は、通信機126(図4参照)に該当し、外部センサ114およびサーバ200との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(図4参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142,内部センサ128,駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
[0047] データ処理部136は、認識部156、移動判断部138および行動判断部140を含む。
駆動機構120は、移動駆動部144と行動駆動部146を含む。移動判断部138は、ロボット100の移動方向を決める。移動駆動部144は、移動判断部138の指示にしたがって車輪102を駆動することで、ロボット100を目標地点に向かわせる。サーバ200のマップ管理部210は、行動マップに基づいて、ロボット100の移動先(目標地点)をリアルタイムで計算する。サーバ200は、目標地点の座標をロボット100に送信し、移動判断部138は目標地点に向けてロボット100を移動させる。
ロボット100の移動方向の大枠を決めるのは行動マップであるが、本実施形態のロボット100はユーザの「お出迎え」や「お見送り」といった特定行動も可能である。これについては後述する。
[0048] 行動判断部140は、ロボット100の仕草(ジェスチャー)を決める。データ格納部148においては、あらかじめ複数の仕草が定義されている。具体的には、車輪102を収容して着座する仕草、手106を持ち上げる仕草、2つの車輪102を逆回転させることで、あるいは、片方の車輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる仕草、車輪102を収納した状態で車輪102を回転させることで震える仕草、などが定義される。
[0049] 行動判断部140は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の手106をもちあげる仕草を実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには車輪102を収容したまま逆回転させることで抱っこをいやがる仕草を表現することもできる。行動駆動部146は、行動判断部140からの指示にしたがって車輪102や手106を駆動することで、ロボット100にさまざまな仕草を表現させる。」
(3) [0051]~[0055]、図6、図7
「[0051] [お出迎え・お見送り機能]
図6は、お出迎えのイメージ図である。
本実施形態においては、玄関のドアが開いてユーザが帰宅するとき、ロボット100は玄関でお出迎えをする。ロボット100は玄関に座り込み、両方の手106を持ち上げて抱っこをせがむ仕草を実行する。また、玄関で回転行動をすることで、ユーザの帰宅を喜ぶ気持ちを表現してもよい。あるいは、ピーピーといった特有の「鳴き声」を内蔵スピーカーから発生させてもよい。」
「[図6]
[図:0001426679000001.jpg]
」
「[0052] ユーザが出かけるときには、ロボット100は玄関にお見送りに向かう。このとき、ロボット100は片方の手106を持ち上げて振動させることで「バイバイ」を表現する。特有の鳴き声を発生させることで、ユーザの外出を寂しがる気持ちを行動表現してもよい。
このように、お出迎え、お見送りに際して、ロボット100は玄関に向かい、あらかじめ定められて人に好意を示す仕草(以下、「愛情仕草」とよぶ)を実行する。」
「[図7]
[図:0001426679000002.jpg]
」
「[0053] 図7は、ロボット100のお出迎え・お見送り行動を説明するための模式図である。
本実施形態においては、玄関152にあらかじめ外部センサ114aが設置されている。外部センサ114aは、その周辺領域である監視エリア150に対して定期的に、たとえば、1秒に1回の頻度でユーザ探索信号を送信する。ユーザが玄関152のドアを開けて監視エリア150に入ると、ユーザの保有するスマートフォンはユーザ探索信号を検知し、ユーザ返答信号を返信する。ユーザ返答信号にはユーザIDが含まれる。外部センサ114aは、ユーザ返答信号を受信すると、これをサーバ200に送信する。本実施形態においては、外部センサ114aとサーバ200は有線接続される。
外部センサ114は、玄関152の扉の解錠音あるいは扉が開く音を検知したあと、監視エリア150へのユーザの進入を検知することで「帰宅」を認識してもよい。
[0054] サーバ200は、ロボット100に出迎えを指示するための制御信号を送信する。制御信号により目標地点の位置座標が指定される。ロボット100の通信部142がサーバ200からこの制御信号を受信すると、移動判断部138は移動駆動部144に玄関152へ向かうように指示する。目標地点は、監視エリア150の内部に目標地点が設定される。ロボット100は内蔵のカメラで障害物を確認しそれらを回避しながら目標地点に向かう。
サーバ200は目標地点だけでなく、ロボット100が現在地点から目標地点に向かうためのルートをロボット100に指定してもよい。
ロボット100の移動判断部138は、サーバ200に指示された位置座標をそのまま目標地点として設定してもよいし、サーバがお出迎えを指示したときには移動判断部138が自ら目標地点を決定してもよい。
[0055] ロボット100が目標地点に到達すると、行動判断部140は愛情仕草を実行する。愛情仕草の一例は、目標地点に着座し、両方の手106を持ち上げて「抱っこ」をせがむかのような仕草である。このような制御により、帰宅したユーザは、ロボット100が自分の帰宅を歓迎していること、自分が外出することはロボット100にとっては淋しいこと、を認識する。このように、ロボット100の人間的・生物的な行動表現を通して、ユーザのロボット100に対する感情移入を強めることができる。」
(4) [0085]
「[0085] 図8は、ロボットシステム300の機能ブロック図の変形例である。
変形例において、ロボット100のデータ処理部136は、瞳制御部406を備える。認識部156は、出入口特定部400、存在判定部402および進路予測部404を含む。変形例におけるロボット100の目110は、瞳画像を表示させるディスプレイである。瞳制御部406は、目110の瞳画像の位置や大きさを変化させる。」
(5) [0093]~[0094]
「[0093] ロボット100の存在判定部402は、マイクロフォンアレイなどの指向性のある音声検出器により、出入口410の方向から音声が検出されたときに出入口410の周辺にユーザが存在すると判定してもよい。マイクロフォンアレイは複数のマイクロフォンを備えるため、音声を検出するだけでなく、発声源の方向を特定することもできる。たとえば、出入口410の開錠音を検出したとき、ロボット100は出入口410の方向に移動してもよい。
[0094] 存在判定部402は、特定のキーワードを音声検出したとき、出入口410の周辺にユーザがいると判定してもよい。特定のキーワードとは、「ただいま」「おかえり」「いってらっしゃい」「バイバイ」「いってきます」「おいで」などの帰宅や出発にともなって発せられる典型的な用語であればよい。ユーザが出かけるとき、または、帰宅したときに本人または周りの人間が発する典型的な言葉を「特定音声」としてサーバ200等のデータベースにあらかじめ登録しておく。特定音声が検出されたとき、ロボット100は特定音声の発声地点に向かうとしてもよい。」
(6) [0099]~[0100]
「[0099] ロボット100またはサーバ200は、ユーザの生活パターンを蓄積する生活パターン蓄積部を備えてもよい。あるいは、ロボット100の通信部142は、外部データベースとして形成される生活パターン蓄積部にアクセスすることにより、ユーザごとの生活パターン情報を適宜取得してもよい。生活パターン蓄積部は、ユーザごとに、起床時刻、出勤等による外出時刻、帰宅時刻および就寝時刻を生活パターン情報として登録する。これらの時刻は通常はばらつきがあるため、それらの平均値や最頻値を代表値として登録してもよい。ユーザごとだけではなく、曜日や季節ごとに、複数種類の生活パターンデータを登録してもよい。
[0100] 存在判定部402は、ユーザの生活パターン情報を参照して、ユーザの帰宅時刻を予測してもよい。移動判断部138は、ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動し、ユーザを前もって「お出迎え」してもよい。このような制御方法によれば、高い精度にてお出迎えを実現しやすくなる。あるいは、帰宅時刻が近づかなければお出迎えをしないとしてもよい。」
(7) [0110]
「[0110] ロボット100が瞳画像をユーザに向ける仕草、いいかえれば、ロボット100がユーザに視線を向ける仕草を「愛情仕草」の一種として定義してもよい。ロボット100が頭部またはボディ104をユーザに向ける仕草を「愛情仕草」の一種として定義してもよい。このように目110やボディ104をユーザに向ける仕草により、ユーザに対してロボット100が興味を持っている旨を表現してもよい。一般的には、人は相手に好意を示すとき、相手に視線を向ける、じっと見つめる、瞳を見開く、向き直る(首や体を向ける)、などの行動をとる。ロボット100においても、瞳画像をユーザに向ける、その状態を所定時間、たとえば、1.0秒以上維持する、瞳画像を拡大させる、頭や体をユーザに向けることで人間と同様の愛情表現が可能であり、このような仕草を人に好意を示す愛情仕草として定義してもよい。」
(8) [0112]
「[0112] 生活パターンはユーザにより設定されてもよい。あるいは、ロボット100がユーザの行動を観察することにより起床時刻等を検出してもよい。たとえば、あるユーザAが寝室から出てくる時刻を生活パターン蓄積部に登録することで、ユーザAの起床時刻を特定してもよい。ロボット100の認識部156は、カメラ等によりユーザAの起床を認識し、通信部142は起床時刻をデータ格納部148または外部データベースに記録することにより、ユーザAの起床時刻を生活パターンとして登録する。」
2 引用発明の認定
前記1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた記載箇所を参考までに括弧内に付してある。以下同様である。)。
<引用発明>
「ユーザが帰宅するとき、ロボット100に玄関でお出迎えをさせる方法であって、([0051])
ロボット100は玄関に座り込み、両方の手106を持ち上げて抱っこをせがむ仕草を実行し、([0051])
お出迎えに際して、ロボット100は玄関に向かい、あらかじめ定められて人に好意を示す仕草(以下、「愛情仕草」とよぶ)を実行し、([0052])
ロボット100がボディ104をユーザに向ける仕草を「愛情仕草」の一種として定義してもよく、([0110])
このように、ロボット100の人間的・生物的な行動表現を通して、ユーザのロボット100に対する感情移入を強めることができ、([0055])
ロボット100は、データ処理部136、駆動機構120を含み、([0046])
データ処理部136は、認識部156、移動判断部138および行動判断部140を含み、([0047])
駆動機構120は、移動駆動部144と行動駆動部146を含み、([0047])
移動判断部138は、ロボット100の移動方向を決め、移動駆動部144は、移動判断部138の指示にしたがって車輪102を駆動することで、ロボット100を目標地点に向かわせ、([0047])
行動駆動部146は、行動判断部140からの指示にしたがって車輪102や手106を駆動することで、ロボット100にさまざまな仕草を表現させ、([0049])
認識部156は、存在判定部402を含み、([0085])
ロボット100は、ユーザの生活パターンを蓄積する生活パターン蓄積部を備えており、生活パターン蓄積部は、ユーザごとに、起床時刻、出勤等による外出時刻、帰宅時刻および就寝時刻を生活パターン情報として登録しており、([0099])
生活パターンは、ロボット100がユーザの行動を観察することにより起床時刻等を検出することによって設定され、([0112])
存在判定部402は、ユーザの生活パターン情報を参照して、ユーザの帰宅時刻を予測し、移動判断部138は、ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動し、ユーザを前もって「お出迎え」する、([0100])
方法。」
第5 対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 構成Xについて
ア 引用発明の「ロボット100」は、「ロボット100の人間的・生物的な行動表現を通して、ユーザのロボット100に対する感情移入を強める」ことを踏まえると、本願発明の「人間と相互作用する装置」に相当する。
イ 引用発明の「ロボット100」においては、「移動判断部138は、ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動し、ユーザを前もって「お出迎え」する」ものであり、ユーザが帰宅するまで、ロボット100を玄関の出入口410で待機させていることになるから、このことは、本願発明の「人間と相互作用する装置を待機させる」ことに相当する。
ウ したがって、本願発明である「人間と相互作用する装置を待機させる方法」と引用発明である「ユーザが帰宅するとき、ロボット100に玄関でお出迎えをさせる方法」は、「人間と相互作用する装置を待機させる方法」の発明である点において一致する。
(2) 構成Aについて
ア(ア) 構成Aの「人間と接触するための待機場所」の「接触」について、本願明細書には、次の記載がある。
「【0014】
以降は、「ユーザがロボットとの関わり合いを持つ行為」を単に「接触」と呼ぶ。具体的には、接触は、呼びかける行為、対話をする行為、撫でる及び抱く等の物理的に触れる行為、アイコンタクト及び微笑み合う等の行為、並びにユーザとロボットとがクイズ、歌、及び読み聞かせ等の遊びコンテンツを実施する行為等である。」
(イ) 上記(ア)によると、本願発明の「接触」とは、「呼びかける行為」や「撫でる及び抱く等の物理的に触れる行為」を含むものと解釈される。
イ(ア) 引用発明の「ロボット100」においては、「存在判定部402は、ユーザの生活パターン情報を参照して、ユーザの帰宅時刻を予測し」、「移動判断部138は、ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動[する]」ものであるから、引用発明の「ロボット100」は、「ユーザの生活パターン情報を参照して」「予測し[た]」「ユーザの帰宅時刻」に現在時刻が近づくと、移動先として「出入口410」を決定していることは明らかである。
(イ) 引用発明の「ロボット100がユーザの行動を観察することにより」「設定され[る]」「ユーザの生活パターン情報」と本願発明の「人間と接触した際の履歴である接触情報」は、「情報」という点において共通する。
(ウ) 上記アを踏まえると、引用発明の「抱っこ」は本願発明の「接触」に相当するから、引用発明の「玄関でお出迎え」をし、「両方の手106を持ち上げて抱っこをせがむ仕草を実行[する]」場所である「出入口410」は、本願発明の「前記人間と接触するための待機場所」に相当する。
(エ) 前記(ウ)を踏まえると、引用発明の「ユーザの生活パターン情報を参照して」、「玄関でお出迎え」をする移動先として「出入口410」を決定することは、本願発明の「前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定[する]」ことに相当する。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、「前記装置が情報に基づいて、前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定[する]」点において共通する。
エ 一方、本願発明と引用発明は、構成Aに関して、次に示す点において相違する。
「前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定[する]」ために基づく「情報」が、
本願発明においては、
「人間と接触した際の履歴である接触情報」であるのに対して、
引用発明においては、
「ロボット100がユーザの行動を観察することにより」「設定され[る]」情報ではあるものの、人間と接触した際の履歴である接触情報であるのか不明な点。
(3) 構成Bについて
ア 前記(2)イに示したとおり、引用発明の「移動判断部138」が、本願発明の「待機場所」に相当する「出入口410」を決定していることを踏まえると、引用発明の「駆動機構120」に含まれる「移動駆動部144」が、「移動判断部138の指示にしたがって車輪102を駆動することで、ロボット100を目標地点に向かわせ[る]」ことは、本願発明の「駆動機構を制御して、前記決定された待機場所に向けて、前記装置を駆動させ[ている]」ことに相当する。
イ したがって、本願発明と引用発明は、「駆動機構を制御して、前記決定された待機場所に向けて、前記装置を駆動させ[ている]」点において一致する。
(4) 構成Cについて
本願発明と引用発明は、構成Cに関して、次に示す点において相違する。
本願発明においては、
「前記待機場所は、現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日の少なくともいずれか一つに対応する前記接触情報に含まれる場所情報に基づき、決定されたものであ[る]」のに対して、
引用発明においては、
「ロボット100がユーザの行動を観察することにより」「設定され[る]」情報に基づいて「出入口410」を決定しているものの、接触情報に含まれる場所情報に基づいて決定されているのか不明な点。
(5) 構成Dについて
前記(2)イ(ウ)に示したとおり、引用発明の「玄関でお出迎え」をする場所である「出入口410」は、本願発明の「前記人間と接触するための待機場所」に相当するから、本願発明と引用発明は、「前記駆動機構を制御して、前記決定された待機場所又は前記待機場所の周辺に、前記装置を待機させ[ている]」点において一致する。
(6) 構成Eについて
ア 前記(5)に示したとおり、引用発明の「玄関でお出迎え」をする場所である「出入口410」は、本願発明の「前記人間と接触するための待機場所」に相当することを踏まえると、引用発明において、「ユーザを前もって「お出迎え」する」「ロボット100」に対して、「お出迎え」をする対象である「ユーザ」の方向は、本願発明の「前記装置を待機させる際に」、「待機に適した所定の方向」に相当する。
イ 前記アを踏まえると、引用発明において、「お出迎えに際して」「ボディ104をユーザに向ける」ことは、本願発明の「前記装置を待機させる際に」、「待機に適した所定の方向に前記装置を向ける」ことに相当する。
ウ そうすると、引用発明において、「お出迎えに際して、ロボット100は玄関に向かい」、「愛情仕草」の一種として定義されている「ロボット100がボディ104をユーザに向ける仕草」を実行することは、引用発明の「駆動機構120」に含まれる「行動駆動部146」が、「ロボット100にさまざまな仕草を表現させる」ものであることを踏まえると、本願発明の「前記装置を待機させる際に、前記駆動機構を制御して待機に適した所定の方向に前記装置を向ける」ことに相当する。
エ したがって、本願発明と引用発明は、「前記装置を待機させる際に、前記駆動機構を制御して待機に適した所定の方向に前記装置を向ける」点において一致する。
2 一致点及び相違点
前記1の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(1) 一致点
(構成X)人間と相互作用する装置を待機させる方法であって、
(構成A’)前記装置が、情報に基づいて、前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定し、
(構成B)駆動機構を制御して、前記決定された待機場所に向けて、前記装置を駆動させ、
(構成D)前記駆動機構を制御して、前記決定された待機場所又は前記待機場所の周辺に、前記装置を待機させ、
(構成E)前記装置を待機させる際に、前記駆動機構を制御して待機に適した所定の方向に前記装置を向ける、
方法、である点。
(2) 相違点(構成A、C)
本願発明においては、
「前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報に基づいて、前記装置が前記人間と接触するための待機場所を決定し」、
「前記待機場所は、現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日の少なくともいずれか一つに対応する前記接触情報に含まれる場所情報に基づき、決定されたものであ[る]」のに対して、
引用発明においては、
「ロボット100がユーザの行動を観察することにより」「設定され[る]」情報に基づいて「出入口410」を決定しているものの、接触情報に含まれる場所情報に基づいて決定されているのか不明な点。
第6 当審の判断
1 相違点についての判断
(1) 引用文献1には、次の記載がある。
「[0093] ロボット100の存在判定部402は、マイクロフォンアレイなどの指向性のある音声検出器により、出入口410の方向から音声が検出されたときに出入口410の周辺にユーザが存在すると判定してもよい。マイクロフォンアレイは複数のマイクロフォンを備えるため、音声を検出するだけでなく、発声源の方向を特定することもできる。たとえば、出入口410の開錠音を検出したとき、ロボット100は出入口410の方向に移動してもよい。
[0094] 存在判定部402は、特定のキーワードを音声検出したとき、出入口410の周辺にユーザがいると判定してもよい。特定のキーワードとは、「ただいま」「おかえり」「いってらっしゃい」「バイバイ」「いってきます」「おいで」などの帰宅や出発にともなって発せられる典型的な用語であればよい。ユーザが出かけるとき、または、帰宅したときに本人または周りの人間が発する典型的な言葉を「特定音声」としてサーバ200等のデータベースにあらかじめ登録しておく。特定音声が検出されたとき、ロボット100は特定音声の発声地点に向かうとしてもよい。」
(2) 引用発明においては、「ユーザごとに、起床時刻、出勤等による外出時刻、帰宅時刻および就寝時刻を生活パターン情報として登録しており」、「生活パターンは、ロボット100がユーザの行動を観察することにより起床時刻等を検出することによって設定され[る]」ものであるところ、上記(1)に示した引用文献1の記載に倣って、「ただいま」などの帰宅にともなって発せられる特定のキーワードを音声検出したときに、その時の時刻を生活パターン情報の帰宅時刻として登録し、発声源の方向から特定した出入口410の位置を出迎えの場所として登録することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)ア その場合、前記第5の1(2)アに示したとおり、本願発明の「接触」は「呼びかける行為」を含むものであるから、「ただいま」などの帰宅にともなって発せられる特定のキーワードを音声検出したときに、その時の時刻を生活パターン情報の帰宅時刻として登録した生活パターン情報が、本願発明の「前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報」に相当することになる。
イ また、前記(2)において帰宅時刻とともに登録した、発声源の方向から特定した出入口410の位置が、本願発明の「現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日の少なくともいずれか一つに対応する前記接触情報に含まれる場所情報」に相当することになる。
(4) したがって、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、概略次の(1)及び(2)を主張しているので、以下、検討する。
(1) 主張1について
ア 請求人の主張1の内容
(ア) 審査官は、拒絶査定において、以下の通り認定した。
「・・・待機場所が「前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報に基づいて決定されたもの」であることは明記されていない。しかしながら、引用文献1には、ロボット100が、ユーザの生活パターン(帰宅時刻等)を蓄積する生活パターン蓄積部を備える点(段落[0099])、ロボット100は玄関でお出迎えをする際、抱っこをせがむ仕草を実行する点(段落[0051])が記載されており、ユーザは帰宅した際に、玄関でお出迎えをしたロボットと接触すると考えられるから、引用文献1に記載された発明において、待機場所を「前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報に基づいて決定されたもの」とすることに格別の困難性はない。」
(イ) しかしながら、拒絶査定においては、「ユーザは帰宅した際に、玄関でお出迎えをしたロボットと接触すると考えられる」ことを理由に本願発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測がされているにすぎない。本願発明が容易想到であると判断するためには、例えば、玄関等での接触があった際に時間及び場所を記録したはずであり、さらに、「現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日」といった時間の概念と対応させながら、人間と「接触」した際の場所の履歴に基づき待機場所を決定したはずであるといえるための示唆等が存在することが必要であるが、このような示唆等は引用文献1には開示されていない。
イ 請求人の主張1についての検討
前記1(2)において示したとおり、引用発明においては、ユーザごとに、帰宅時刻を生活パターン情報として登録しており、生活パターンは、ロボット100がユーザの行動を観察することにより設定されるものである。
そして、前記1(1)に示したとおり、引用文献1には、「ただいま」などの帰宅にともなって発せられる音声を検出したときに発生時点を特定することが記載されており、そのときに得られる情報は、帰宅した時のユーザの行動や場所を示すものといえるから、前記情報をユーザの行動を観察することによって設定される生活パターン情報として登録することに、格別困難性があるものではない。
したがって、請求人の主張1は採用できない。
(2) 主張2について
ア 請求人の主張2の内容
さらに、審査官は、拒絶査定において、以下の通り述べた。
「引用文献1には、上記記載の他にも、ロボットは感情マップにしたがって行動選択する点(段落[0026])、感情マップにおいて、好意地点は、過去にやさしく撫でられたり、触られたりした場所であってもよい点(段落[0027])等の記載があることを鑑みると、人間と接触した履歴に基づいて、待機場所を決定することに格別の困難性はない。」
しかしながら、本願発明が容易想到であると判断するためには、例えば、「過去にやさしく撫でられたり、触られたりした場所」について、その際の時間を記録したはずであり、さらに、「現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日」といった時間の概念と対応させながら、人間と「接触」した際の場所の履歴に基づき待機場所を決定したはずであるといえるための示唆等が存在することが必要だが、このような示唆等は引用文献1には開示されていない。
すなわち、仮に、引用文献1に記載のロボットの行動アルゴリズムを変更して、過去にやさしく撫でられたり、触られたりした時間を記録させ、さらに、その際の場所を記録させ、その時間になるとその場所に向かわせて待機させるようにすると、ロボットの動きは、決まった時間に決まった場所に移動し待機する警備ロボットのように、単調で機械的で予測可能な動きとなり、引用発明の目的である生物的行動をエミュレートすることが困難になる。
このため、引用文献1に接した当業者が、人間と接触した際の時間及び場所の履歴に基づいて、待機場所を決定するように引用文献1に記載の技術を変更しようと動機付けられること、すなわち、本願発明の「前記待機場所は、前記装置が前記人間と接触した際の履歴である接触情報に基づいて決定されたものであり、前記待機場所は、現在の時刻、現在の時間帯、現在の日付、及び現在の曜日の少なくともいずれか一つに対応する前記接触情報に含まれる場所情報に基づき、決定されたものであり」との構成に至ることは困難である。
イ 請求人の主張2についての検討
請求人は、過去にやさしく撫でられたり、触られたりした時間を記録させ、さらに、その際の場所を記録させ、その時間になるとその場所に向かわせて待機させるようにすると、ロボットの動きは、決まった時間に決まった場所に移動し待機する警備ロボットのように、単調で機械的で予測可能な動きとなり、引用発明の目的である生物的行動をエミュレートすることが困難になると主張している。
しかしながら、上記第5の1(2)ないし(6)で検討したとおり、引用発明においては、「ロボット100」は「ユーザの予測された帰宅時刻が近づくと、出入口410の方向に移動し、ユーザを前もって「お出迎え」」をしており、ロボットの動きは、決まった時間に決まった場所に移動し待機し、単調で機械的で予測可能な動きとなるものである。
したがって、請求人の主張2は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-016896