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特許拒絶査定不服審判

2022-009796

複数のプロセス制御通信プロトコルに対して構成された携帯型フィールド保守ツール

審判番号
2022-009796
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-140769外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月27日
審決日
2023年08月22日
公報発行日
2024年02月22日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (G05B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-140769「複数のプロセス制御通信プロトコルに対して構成された携帯型フィールド保守ツール」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月25日出願公開、特開2018-14103〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

第1 手続の経緯

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本件審判に係る出願は、平成29年7月20日(優先権主張 2016年(平成28年)7月22日 (US)アメリカ合衆国)にされた特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和2年 7月20日 :手続補正書の提出
令和3年 5月 6日付け:拒絶理由の通知
令和3年 8月 5日 :意見書・手続補正書の提出
令和3年11月 8日付け:拒絶理由の通知
令和4年 2月 9日 :意見書の提出
令和4年 3月 3日付け:拒絶査定
令和4年 6月27日 :拒絶査定不服審判の請求

拒絶査定不服審判の請求と同時:手続補正書の提出

令和5年 3月22日付け:当審による拒絶理由の通知
令和5年 6月 7日 :意見書・手続補正書の提出

第2 本件発明

本件の請求項1~20に係る発明は、令和5年6月7日に提出の手続補正書により補正(以下、当該補正を「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下に記載のとおりである。

「 【請求項1】
携帯型フィールド保守ツールであって、
(A)筐体と、
(B)前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、前記携帯型フィールド保守ツールが(i)電力信号及び通信信号を含む合成信号を供給する第1の信号モード、又は(ii)前記通信信号を供給する第2の信号モードのいずれかで作動することを決定するよう構成され、前記筐体に配置された通信インターフェースと、
続きを表示(全12行)
(C)第1のプロトコルに従って通信し、さらに第2のプロトコルに従って通信するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ、前記通信インターフェースの前記内部部分に電気的に接続された、複数の通信回路と、
(D)前記携帯型フィールド保守ツールが前記第1の信号モードで作動する場合、前記第1のプロトコルに従って電力を供給するよう、さらに、前記第2のプロトコルに従って電力を供給するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ前記通信インターフェースの前記内部部分に電気的に接続された、1つ以上の電源と、
を備え、
前記通信インターフェースが、
(i)(1)前記携帯型フィールド保守ツールが前記第1の信号モードで作動する場合、第1のフィールドデバイスが、前記第1のプロトコルに従って前記1つ以上の電源から前記第1のフィールドデバイスに電力を供給するよう、かつ前記第1のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された、第1の電力信号と第1の通信信号を含む第1の合成信号を受信し、及び(2)前記携帯型フィールド保守ツールが前記第2の信号モードで作動する場合、前記第1のフィールドデバイスが、前記第1の通信信号を受信するよう、前記第1のフィールドデバイスに接続可能であり、
(ii)(1)前記携帯型フィールド保守ツールが前記第1の信号モードで作動する場合、第2のフィールドデバイスが、前記第2のプロトコルに従って前記1つ以上の電源から前記第2のフィールドデバイスに電力を供給するよう、かつ前記第2のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された、第2の電力信号と第2の通信信号を含む第2の合成信号を受信し、及び(2)前記第2のフィールドデバイスが、前記携帯型フィールド保守ツールが前記第2の信号モードで作動する場合、前記第2の通信信号を受信するよう、前記第2のフィールドデバイスに接続可能である、1つ以上の端子をさらに含み、
前記第1の電力信号は、前記第1のプロトコルに関連付けられた第1の電流の大きさを有し、前記第2の電力信号は、前記第2のプロトコルに関連付けられた、前記第1の電流の大きさとは異なる第2の電流の大きさを有する、
携帯型フィールド保守ツール。」(下線は、本件補正の際に請求人が付したものである。また、請求人が分説した発明特定事項を「構成(A)」、「構成(i)」などということがある。)

第3 当審拒絶理由

当審が、令和5年3月22日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本件補正前の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対する理由3(進歩性)の概要は、以下のとおりである。

補正前発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2005-512219号公報
引用文献2:特表2011-528478号公報

第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明等

1 引用発明1

(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

ア 特許請求の範囲

「【請求項7】
固有安全性を備えた現場保守ツールにおいて、
プロセス産業の標準通信プロトコルをもつプロセス通信ループに選択的接続可能な端子と、
前記端子に接続された第1と第2の媒体アクセスユニットであって、該第1の媒体アクセスユニットは第1のプロセス産業標準通信プロトコルに従って通信を行えるよう設定され、該第2の媒体アクセスユニットは第2のプロセス産業標準通信プロトコルに従って通信を行えるよう設定されており、
続きを表示(全11行)
前記第1と第2の媒体アクセスユニットに接続されたプロセッサと、
ユーザ入力を受信するため前記プロセッサに接続されたキーパッドと、
データを表示するため前記プロセッサに接続された表示器と、
主基板に実装されたコネクタ経由で前記プロセッサに接続された拡張メモリモジュールとからなる固有安全性を備えた現場保守ツール。
・・・
【請求項10】
前記拡張メモリモジュールが、複数の装置記述に関するデータを内蔵しており、その複数の装置記述のうちの第1の装置記述が、フィールドバス装置の記述であり、第2の装置記述がHART仕様装置の記述である、請求項7記載のツール。」

イ 発明の詳細な説明

「【技術分野】
【0001】
固有安全性を備えた現場保守ツールは、周知のツールである。そのようなツールは、所定のプロセス施設において、操作者が、適宜に現場装置との通信および/またはそれに問い合わせができるよう、プロセスの制御や計測の分野にて広く利用されている。そのようなプロセス施設の例として、石油産業、化学工業、製紙産業、その他のプロセス施設があげられる。プロセス施設でのプロセスの制御や計測のネットワークには、数十さらには数百の多様な現場装置が備わっており、その現場装置が適切に機能、および/または、較正が行われるのを確認するために、定期的な保守作業が必要である。しかも、そのプロセスの制御や計測の施設において1つまたはそれ以上の数のエラーが発見されると、本質的に安全な手動操作できる現場保守ツールを使って、技術者は直ちにエラーを現場にて診断するのである。
【背景技術】
続きを表示(全49行)
・・・
【0003】
HART(登録商標)プロトコルは、標準の4~20mAのアナログ信号に重畳されるデジタル通信信号であるハイブリッド物理階層を備えている。そのデータ送信速度は、約1.2キロバイト/秒である。HART(登録商標)通信法は、プロセス産業における標準通信プロトコルの1つである。
【0004】
別の主要なプロセス産業通信プロトコルとして、FOUNDATION(商標)フィールドバス通信プロトコルが知られている。そのプロトコルは、ISA基準[米国計測学会(the Instrument Society of Amerika)によって1992年に公布されたISA―S50.01―1992]に準拠している。その実際のツールは、フィールドバスFOUNDATION(FF)で特定されている。FOUNDATION(商標)フィールドバスは、約31.25キロバイト/秒の送信速度をもつ全デジタル式の通信プロトコルである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の周知の固有安全性を備えた現場保守ツールは、複数のプロセス産業標準プロトコルを用いて効果的に通信することができない。そのため、複数のプロセス産業標準プロトコルで通信でき、かつ、プロトコル仕様の較正や構造変更を効果的に行えるような能力をもつ装置を提供できれば、本分野における重要な進歩となろう。
・・・
【発明を実施するための最良の形態】
・・・
【0009】
図1には、本発明の実施例が利用可能なシステム例が図示されている。システム10は、コントローラ12、I/Oおよび制御サブシステム14、固有安全(IS)バリヤ16、プロセス通信ループ18、および現場装置20とからなる。コントローラ12は、イーサネット(登録商標)信号プロトコルやその他の適当なプロトコルで作動するローカルエリアネットワーク(LAN)などの適切なリンク回線であるリンク21経由で、I/Oおよび制御サブシステム14に接続されている。I/Oおよび制御サブシステム14は、エネルギ通過を制限するような方法で、プロセス通信ループ18とI/Oおよび制御サブシステム14との間でデータ通信が行えるよう、プロセス通信ループ18に接続された固有安全バリヤ16に接続している。
【0010】
本実施例では、プロセス通信つまりプロセス制御ループ18は、FOUNDATION(商標)フィールドバスのプロセス通信ループであって、図ではマルチドロップ形状で並列に接続された現場装置20に接続されている。プロセス通信ループの別例として(図示しない)、HART(登録商標)プロセス通信ループを利用することもできる。図1に示すマルチドロップ形状の配線は、星形状トポロジーなどのその他の形状のトポロジーに比べて、システムの配線が簡略化できる。マルチドロップ式のHART(登録商標)配線は最大で15個の装置を接続でき、一方マルチドロップ式のFOUNDATION(商標)フィールドバス配線は最大で32個の装置を接続できる。
【0011】
図1に示すように、固有安全性を備えた現場保守ツール22も、ループ18に接続されている。図のようにプロセス制御ループに接続すると、ツール22は複数の通信や診断の機能を実行することができる。ツール22は、従来のHART(登録商標)モデル275通信装置と全く同じように、HART(登録商標)プロセス通信ループに接続して相互動作できるのである。
【0012】
図2Aには、HART(登録商標)互換装置20に端子24経由で接続されたツール22が図示されている。別の例として、図2Bに示すように、ツール22は、装置24などのプロセス計測通信ループ上のHART(登録商標)互換性装置と、そのループを経由して通信することができる。
【0013】
図3は、本発明の別の実施例による現場保守ツール22の概略ブロック図である。図示のように、ツール22は、3つの通信端子26、28、および30を備えるのが好ましく、それら端子により、少なくとも2種類のプロセス産業標準プロトコル仕様のプロセス通信ループおよび/または装置へのツール22の接続が簡略化できる。例えば、第1のプロセス産業標準プロトコルのループにツール22を接続する場合、端子26と共通端子28とを使って接続する。従って、その第1のプロセス産業標準プロトコル仕様のプロセス通信ループと相互動作できるよう設定された媒体アクセス部32を経由した接続が成立する。加えて、第2のプロセス産業標準プロトコルに従って動作するプロセス制御計測ループにツール22を接続する場合は、共通端子28と端子30とを経て接続される。それゆえ、その第2のプロセス産業標準プロトコル仕様のプロセス通信ループと相互動作できるよう設定された第2の媒体アクセス部34を経由した接続が成立する。両方の媒体アクセス部32、34はともに、媒体アクセス部の一つからデータを受信して、そのデータをインタープリタ処理するためのプロセッサ36に接続されている。
・・・
【0016】
前記のプロセッサ36には、端子/インタフェース46を経由して脱着可能メモリモジュール44が脱着可能に接続されている。脱着可能メモリモジュール44は、プロセッサ36の主要アプリケーションソフトに代わって実行するための複数のソフトを蓄積できるように設定されている。例えば、所定のプロセスバルブの統合診断を行うため、HART(登録商標)やFOUDATION フィールドバスの通信端子を使うアプリケーションソフトを、メモリモジュール44に蓄積できる。加えて、メモリモジュール44に、特定の装置の較正や配置の支援をするアプリケーションソフトを記憶しても構わない。また、新規または更新した主要装置アプリケーションソフトのためのソフト画像をメモリモジュール44に蓄積しておいて、その更新ソフトを実行するため、プロセッサ36の不揮発性メモリへ転送することもできる。さらにまた、メモリモジュール44は、現場保守作業者がかなり多量の関係する装置データを獲得して、便宜的に蓄積し、または、モジュール44を取り外してそれらデータを転送できるようにするための脱着可能なメモリ蓄積を提供する。
・・・
【0018】
ツール22には、そのツール22の主回路基板に載置されたコネクタ50経由でプロセッサ36に接続された拡張メモリモジュール48を装備することもできる。拡張メモリモジュール48は、第1および第2の業界標準プロトコルのDDソフトを備えている。また、複数のプロトコルに関連したツール22の機能を決めるライセンスコードを、モジュール48に備えることも可能である。例えば、モジュール48内に記憶されたデータにより、ツール22がHART(登録商標)プロトコルなどの一つのプロセス産業標準モードでのみ動作できるよう認可されていることを表示できる。別の例として、モジュール48内のデータ設定を変えて、ツール22が2つおよびそれ以上の数の業界標準プロトコルにて動作できるよう認可されていることを表示しても構わない。モジュール48は、主基板上のコネクタ50に挿入装備されているのが好ましく、実際には、アクセス端子50のバッテリーパックを取り外すなど、ツール22を部分的分解が必要となるだけである。
【0019】
上記に記述のように、改良型の固有安全性を備えた現場保守ツールにより、以下に詳細に説明する改良フィールドバス、または、HART(登録商標)による診断を簡略化することができる。
【0020】
図4は、本発明の実施例である改良型の固有安全性を備えた現場保守ツールを使って実行可能な第1のFOUNDATRIONフィールドバス仕様の診断方法のフローチャート図である。特に、ブロック60に示すように、ツール22は、H1セグメント(対巻線式通信線)に接続されると同時に、そのセグメントに接続された装置全部を認識する。この認識動作は、「ライブリスト(live list)」から独立して行われる。ここでいう「ライブリスト」とは、主装置がネットワーク上で認識されたノード点のリストであって、ネットワークの主装置間を循環するリストである。つまり、ツール22の随意ソフトにより、ユーザが、ブロック60で実行される全アドレスのポーリングを省略して、従来のライブリストを採用するようツール22に命令できるよう設定するのが好ましい。接続された装置の全部の認識が完了すると、ブロック62で示すように、H1セグメントにおける実際の装置とライブリストの装置の違いをみつけるため、認識された接続装置のリストは「ライブリスト」と比較される。この比較動作は、ブロック64で示すように、診断出力を作成するのに利用することができる。オンディマンドのその診断は、現場保守作業者によりキーパッド(図示しない)からの命令で行うのが好ましい。
【0021】
図5は、本発明の実施例で実行可能な第2のFOUNDATION(商標)フィールドバス仕様の診断方法のフローチャート図である。図5の方法を開始すると、ツール22は、ブロック70で示すように、H1セグメントで認識された装置のそれぞれと直ちに通信を始める。通信プロトコルの規則に従って、ツール22はできるだけ多くのメッセージを各装置に送信する。ブロック72においては、ツール22により、H1セグメントの各ノード点で発生した全部の通信エラーが記録される。そしてブロック74では、ツール22は、それに示すように、H1セグメントで発生したエラーの記録を発信する。その発信方法としては、制御室に所定の情報を送信する形態を取るか、あるいは、ツール22のユーザインタフェース画面上にその記録情報を単に表示する形態を取ることができる。通信エラーが平均値より多いH1セグメントにおける装置は、関連する断続的な故障を起こしやすい。一般的な故障とは、接続不良、端子の欠陥、電子的故障、および/または、トポロジー関連である。ツール22に通信エラーを審問させるには、現場保守ユーザが個別のノード点を選択できるような随意ソフトを採用するのが好ましい。
【0022】
ツール22は、さらにまた、そのツールが接続されているFOUNDATION(商標)フィールドバス仕様のセグメントの追加特性を測定することもできる。特に、フィールドバス仕様のセグメントのノイズレベルを測定するのに、ツール22を使うとよい。その場合、選定周波数帯域内の信号の振幅値を測定するのに、1つまたはそれ以上の数の周波数フィルターをツール22に装備するのが望ましい。例えば、フィールドバス仕様セグメントに存在するノイズの低周波数成分を摘出するためには、ローパスフィルターを装備したツール22を利用する。そのパラメータから、現場保守作業者は貴重な問題解決のための情報を得ることができる。特に、供給電力不良に起因する問題が、見つけられる。加えて、メッセージ信号間の時間内におけるFOUNDATION(商標)フィールドバスの信号の周波数前後のノイズ情報を摘出するためには、所定のバンドパスフィルターをツール22に備えてもよい。FOUNDATION(商標)フィールドバスの信号の周波数付近のノイズは、FOUNDATION(商標)フィールドバスの実信号に影響を与えやすいため、そのパラメータから、現場保守作業者は貴重な問題解決のための情報を得ることができる。さらにまた、FOUNDATION(商標)フィールドバスのセグメント内のキャパシタンス容量を測定するのに、ツール22を使うことも可能である。キャパシタンス容量の情報からは、絶縁や接地の不備が検出できる。
【0023】
前記の改良型の固有安全性を備えた現場保守ツールは、HART(登録商標)仕様の複数の診断を行うのにも利用が可能である。例えば、HART(登録商標)仕様信号の2つの異電圧レベル値を使った通信を行えるように、ツール22を設定する。まず、前記のHART(登録商標)仕様に合致した、第1のHART(登録商標)通信の電圧レベル(通常モード)を選定する。しかしながら、第2のHART(登録商標)電圧レベルは、HART(登録商標)仕様よりも大きな信号をツール22が発生する場合や、HART(登録商標)仕様における通常の信号よりも弱い信号レベルをツール22が受信または対応する場合などの、特別通信モードにおけるツール22の通信動作のためのものである。HART(登録商標)仕様ネットワーク診断法では、通常モードにてHART(登録商標)命令ゼロ信号をHART(登録商標)ネットワークのそれぞれのアドレスへ送る動作も含めるのが望ましい。ツール22が所望のHART(登録商標)アドレスに発信するたびに、送信メッセージのカウントが増加される。ツール22がエラーなしという返信を受け取ると、その診断プロセスにてアドレスからの問題なし返信の数をカウントアップして、次のアドレスへの発信を行う。しかしながら、選択されたネットワークアドレスからの返信にエラーがある場合や、全く返信がなかった場合には、ツール22の動作は特別通信モードへと変わる。特別通信モードでは、HART(登録商標)仕様での通常の信号振幅値を越えるような高い振幅値のHART(登録商標)通信信号を作成できるよう、高い電圧レベルを使用する。選択されたネットワークアドレスからエラーなしの返信を特別通信モードで受信した場合、ネットワークアドレスの弱い返信数をカウントアップする。そして、ツール22の動作は次のネットワークアドレスへの発信に移り、現場保守作業者がツール22動作を終了するまで、あるいは、設定した自動停止により停止するまで、ネットワークアドレスへの審問が継続される。そのため、ツール22内のソフトでは、ポーリングされるHART(登録商標)ネットワークアドレスを現場保守作業者が選択できる設定であるのが好ましい。さらに、ネットワークアドレスをグループ単位で選択可能にすることもできる。それにより、現場保守作業者は、例えば、アドレス0、1、4などを選択的に入力すればよいのである。
【0024】
図6は、本発明の実施例による表示器80上のHART(登録商標)仕様ネットワーク診断の結果に関するデータ情報を示した表示画面のレイアウト図である。表示器80は、一例として、HART(登録商標)仕様セグメントの全部で16個のアドレスに関するデータを表示する。しかしながら、表示画面を簡略化するため、全部で16個のアドレスを表示するのに1つまたはそれ以上の数のスクリーンを使う設定にしても構わない。また、表示器80には、ループでのDC電圧に関する情報を表示する部分82を備えるのが望ましい。部分84は、テスト対象の装置のHART(登録商標)仕様アドレスを示しており、走査できるよう設定されたHART(登録商標)仕様装置のみを表示するのが好ましい。「メッセージ送信」部分86は、特定のアドレスの装置へ発信したHART(登録商標)メッセージの総数を示している。ただし、部分内で表示可能な範囲を越える数値になると、「***」と表示されるように設定されている。そのように表示された場合には、現場保守作業者が選択した装置のアドレスのための「詳細(detail)」画面選択用の部分88を操作することにより、メッセージ総数は詳細画面から読みとれる。「問題なし返信(Good Reply)」部分90および「弱い返信(Weak Reply)」部分92は、それぞれ、通常モードおよび特別モードにおける返信の総数を表示するものである。ネットワーク品質部分94は、特定のアドレスでの通信品質のワード精度を表示している。好適例としてのレベルと名称は、以下のとおりである。
・・・
【0031】
上記の結論として、改良型の固有安全性を備えた現場保守ツールを使えば、複数のハード的長所だけでなく、業界のプロトコル仕様ネットワーク診断も改善できる。つまり、改良型の固有安全性を備えた現場保守ツールは、複数の業界標準通信プロトコルをもつプロセス通信測定ループにおける有効活用が可能である。それゆえ、現場保守作業者が複数の異なるタイプの携帯装置を現場で持ち歩く必要がなくなり、複数のプロセス産業の標準通信ループで相互動作可能な単一のツール利用ができるのである。
【0032】
本発明の上記の説明は好適実施例に基づいているが、本発明の精神や範囲を逸脱することなく、形状やその他の詳細部位の変更が可能なのは当業者には明白に理解できるであろう。」

ウ 図面

「【図1】
[図:0001406223000001.jpg]
【図2A】
[図:0001406223000002.jpg]
【図3】
[図:0001406223000003.jpg]
」

(2)上記(1)から、引用文献1には以下の事項が記載されていると理解することができる。

ア 上記(1)イの段落【0001】、【0009】~【0013】の記載及び(1)ウの【図1】~【図2A】から、引用文献1には、プロセス施設の現場装置20の保守作業のために通信可能に接続される「現場保守ツール22」についての発明が記載されていることがわかる。

イ 上記(1)ウの【図1】~【図2A】から、引用文献1に記載された現場保守ツール22は「筐体」を備えることを理解できる。

ウ 上記(1)イの段落【0013】の記載及び(1)ウの【図3】から、引用文献1に記載された現場保守ツール22は「通信端子26、28、30」を備えることを理解できる。当該「通信端子26、28、30」は、当然に上記イの「筐体」に配置され、当該「筐体」内の媒体アクセス部32、34やプロセッサ36にアクセス可能な内部部分を含む、といえる。

エ 上記(1)イの段落【0013】の記載及び(1)ウの【図3】から、引用文献1に記載された現場保守ツール22は「媒体アクセス部32、34」を備えることを理解できる。

そして、上記(1)アの【請求項7】及び(1)イの段落【0013】の記載から、当該「媒体アクセス部32、34」のうち、「媒体アクセス部32」は、第1のプロセス産業標準プロトコル仕様のプロセス通信ループと相互動作できるよう設定され、端子26と共通端子28とを使って、第1のプロセス産業標準プロトコルのループとの接続が成立する、すなわち、第1のプロセス産業標準プロトコルに従って通信を行うものであることがわかる。また、「媒体アクセス部34」は、第2のプロセス産業標準プロトコル仕様のプロセス通信ループと相互動作できるよう設定され、端子30と共通端子28とを使って、第2のプロセス産業標準プロトコルのループとの接続が成立する、すなわち、第2のプロセス産業標準プロトコルに従って通信を行うものであることがわかる。

さらに、上記(1)アの【請求項7】の記載及び(1)ウの【図3】から、当該「媒体アクセス部32、34」は、当然に上記イの「筐体」に配置され、上記ウの「通信端子26、28、30」の内部部分に電気的に接続される、といえる。

オ 上記(1)イの段落【0010】、【0016】、【0019】~【0024】の記載から、引用文献1に記載された「第1のプロセス産業標準プロトコル」及び「第2のプロセス産業標準プロトコル」として、「FOUNDATION(商標)フィールドバスプロトコル」及び「HART(登録商標)プロトコル」が例示されるところ、上記(1)アの【請求項10】、(1)イの段落【0002】~【0005】、【0031】の記載から、引用文献1に記載された「現場保守ツール22」は、「第1のプロセス産業標準プロトコル」としての「FOUNDATION(商標)フィールドバスプロトコル」であるループ18の現場装置20に、「第2のプロセス産業標準プロトコル」としての「HART(登録商標)プロトコル」であるループ18の現場装置20に、相互動作可能な単一のツールであることを理解できる。

カ 上記エ~オ、並びに、上記(1)イの段落【0012】~【0013】、【0020】~【0024】の記載及び(1)ウの【図2A】、【図3】から、

引用文献1に記載された「通信端子26、28、30」のうち「通信端子26、28」は、上記ウの内部部分のほか、

(i)前記第1のプロセス産業標準プロトコル(FOUNDATION(商標)フィールドバスプロトコル)のループ18に接続された現場装置20(以下「第1現場装置20-1」という。)が、前記第1のプロセス産業標準プロトコルに従って前記第1現場装置20-1を媒体アクセス部32、34のうち媒体アクセス部32に通信可能に接続するよう構成された、第1のプロセス産業標準プロトコルによる信号(以下「第1通信信号」という。)を受信するよう、第1現場装置20-1に接続可能であり、

引用文献1に記載された「通信端子26、28、30」のうち「通信端子28、30」は、上記ウの内部部分のほか、

(ii)第2のプロセス産業標準プロトコル(HART(登録商標)プロトコル)のループ18に接続された現場装置20(以下「第2現場装置20-2」という。)が、前記第2のプロセス産業標準プロトコルに従って前記第2現場装置20-2を媒体アクセス部32、34のうち媒体アクセス部34に通信可能に接続するよう構成された、第2のプロセス産業標準プロトコルによる信号(以下「第2通信信号」という。)を受信するよう、前記第2現場装置20-2に接続可能である部分(以下、第1現場装置20-1又は第2現場装置20-2に接続可能である部分をまとめて「現場装置接続部分」という。)をさらに含む、といえる。

(3)上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「現場保守ツール22であって、
(A)筐体と、
(B)前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、前記筐体に配置された通信端子26、28、30と、
(C)第1のプロセス産業標準プロトコルである「FOUNDATION(商標)フィールドバスプロトコル」に従って通信し、さらに第2のプロセス産業標準プロトコルである「HART(登録商標)プロトコル」に従って通信するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ、前記通信端子26、28、30の前記内部部分に電気的に接続された、媒体アクセス部32、34と、
を備え、
前記通信端子26、28、30が、
(i)第1現場装置20-1が、前記第1のプロセス産業標準プロトコルに従って前記第1現場装置20-1を前記媒体アクセス部32に通信可能に接続するよう構成された、第1通信信号を受信するよう、前記第1現場装置20-1に接続可能であり、
(ii)第2現場装置20-2が、前記第2のプロセス産業標準プロトコルに従って前記第2現場装置20-2を前記媒体アクセス部34に通信可能に接続するよう構成された、第2通信信号を受信するよう、前記第2現場装置20-2に接続可能である、1つ以上の現場装置接続部分をさらに含む、
現場保守ツール22。」(本件発明と同様に、引用発明1において分説した構成について、「構成(A)」、「構成(i)」などということがある。)

2 引用文献2記載の技術的事項

(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明

「【技術分野】
【0001】
背景技術
工業界において、フィールド装置を用いて、たとえば精油所のプロセスの動作を制御する。フィールド装置、たとえばプロセス変数トランスミッタは、通常はプロセス通信ループの一部であり、フィールドに位置付けられて、プロセス変数、たとえば圧力、流れ又は温度を測定して、たとえば制御室機器に送信する。フィールド装置、たとえばバルブポジショナもまた、プロセス通信ループの一部であり、プロセス制御ループを通じて受け取られるか、又は内部で生成される制御信号に基づいて、バルブの位置を制御することができる。他のタイプのコントローラは、たとえば電気モータ又はソレノイドを制御する。また、制御室機器をプロセス通信ループの一部にして、制御室の操作者又はコンピュータが、フィールド内のトランスミッタから受け取られるプロセス変数に基づいてプロセスをモニタして、適切な制御装置に制御信号を送ることによって応答的にプロセスを制御することが可能である。多くの場合、ポータブル通信機を用いて、プロセス通信ループと結合されたフィールド装置を構成する。本明細書で用いられる用語「プロセス通信ループ」は、接続が実際のループを形成するかどうかに関係なく、プロセス信号を伝送する任意の物理的接続および媒体(ワイヤレスプロセス通信ループを含む)を意味することを意図する。このように、そのようなセグメントが厳密にはループと見なされない場合であっても、プロセス通信ループはHART(登録商標)またはFOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)セグメントであることができる。
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・・・
【0003】
そのようなマイクロプロセッサベースのフィールド装置の有効性に、劇的な向上があった。そのようなフィールド装置は、「スマート」又は「インテリジェント」と呼ばれることがある。また、これらのスマートフィールド装置を構成し、試験し、診断するために用いられるソフトウェア・アプリケーションの有効性に、劇的な向上があった。汎用コンピュータ装置、たとえばPC又はポータブルラップトップコンピュータの接続は、通常、コンピュータ装置とインテリジェントフィールド装置との間に通信可能に結合されるモデムを用いて達成される。きわめて多くのプロセス通信プロトコル、たとえばHART(登録商標)、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)及びプロフィバス(Profibus)プロトコル)があり、さまざまなプロセス制御タスクを支援している。さらに、全く同じプロセス設備で、いくつもの通信プロトコルが用いられているのが見られることは一般的である。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、汎用コンピュータ装置14(ラップトップコンピュータとして図示)にフィールド装置12を通信可能に結合するフィールド装置インターフェイス10の線図である。インターフェイス10とフィールド装置12との間の結合は、直接接続を介して、たとえばフィールド装置内部の配線端末(図4Aに示される)を介して、又はプロセス通信ループ16(図4Bに示される)を通して行われてもよい。インターフェイス10は、プロセス通信ループ16に結合するように構成されたネットワーク接続回路18と、汎用コンピュータ装置14に結合するように構成されたコネクタモジュール20とを含む。コネクタモジュール20は、コンピュータ14に接続するための任意の好適な形状コネクタを含んでもよい。好適な例は、ユニバーサルシリアルバス(USB)接続、DB9又はDB25コネクタ等を使用する標準のシリアル接続、パラレル接続、PCMCIA接続、PCI接続、及びファイヤワイヤ接続を含むが、これらに限定されない。コネクタモジュール20が汎用コンピュータ装置14へのワイヤード接続を含む本発明の実施形態では、インターフェイス10がワイヤード通信インターフェイスを通して電力供給されることが好ましい。また、本発明の実施形態は、インターフェイスモジュール10と汎用コンピュータ装置14との間のデータ通信がワイヤレス接続である場合にも実施されることができる。好適なワイヤレス接続の例は、赤外線通信、Bluetooth通信、及びWIFI通信(たとえばIEEE 802.11b又はIEEE 802.11g)を含む。さらに、汎用コンピュータ装置の技術の進歩に従い、現在公知であるか又は後に開発されるかに関わらず、汎用コンピュータを適応させるための任意の好適なデータ通信技術を用いて、本発明の実施形態を実施することができる。
【0007】
図2は、本発明の実施形態の、フィールド装置インターフェイス10の線図である。フィールド装置インターフェイス10は、コネクタモジュール20に結合されたマイクロプロセッサ38を含み、これは汎用コンピュータ14(図1に示される)に結合可能である。フィールド装置インターフェイス10は、好ましくは、マイクロプロセッサ38に結合されたアナログ・ディジタル変換器36を含む。変換器36は、制御ロジック34を介して、測定回路32に結合する。また、マイクロプロセッサ38は、外部データバス40に結合され、それを通してリードオンリーメモリ42及びランダムアクセスメモリ44と相互に作用する。また、マイクロプロセッサ38は、データバス40を通して、プロトコルインターフェイスモジュール26及び任意の第2のプロトコルインターフェイスモジュール28と相互に作用して、それぞれのプロセス通信ループを通じて通信することが可能である。複数のプロトコルインターフェイスモジュールを含む実施形態では、各々のモジュールは、異なる標準のプロセス通信プロトコルに従って通信するように設計されている。たとえば、プロトコルインターフェイスモジュール26はHART(登録商標)プロトコルに従って通信するように構成されてもよく、一方で任意の第2のプロトコルインターフェイスモジュール28がFOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って通信するように構成されてもよい。加えて、図2は一対のモジュールを図示するが、本発明の実施形態は、1を含む任意の好適な数のそのようなモジュールを使用することによって実施されることができる。加えて、インターフェイスモジュール26、28は、ともに端末50、52に結合して示されているが、ワイヤレスプロトコルインターフェイスモジュールを端末50、52に結合させる必要はなく、代わりに好適なアンテナに結合させる。
【0008】
本発明の実施形態によれば、マイクロプロセッサ38は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれの組合せによって、測定回路32及び/又はアナログ・ディジタル変換器36を使用して端末50、52間の電圧を試験して、取り付けられたプロセス通信ループが電力供給されているか、及び/又はループを通じた通信が可能にされてもよいかを決定するように構成される。
【0009】
インターフェイスモジュール10は、図2に図示されたような、インターフェイスモジュール10の構成要素全てに動作可能に結合された電力モジュール30を含む。インターフェイスモジュール10がワイヤード接続(例えばUSB接続)を通してコンピュータ14に結合する実施形態において、電力モジュール30は、コンピュータ14から入手可能な電力を、インターフェイスモジュール10内部の回路に好適なレベルに調整及び/又は変換するように構成される。加えて、インターフェイスモジュール10がコンピュータ14に物理的に配線されない実施形態では、電力モジュール30は電力記憶機器、たとえばバッテリ又はスーパーキャパシタを含み、電力源に結合されることなく電力供給され続けることができる。加えて、電力モジュール30は、端末50、52に結合するプロセス通信ループ又はフィールド装置に選択的に電力を提供するように構成される。さらに、電力モジュール30はまた、好ましくは、インピーダンスを変更してフィールド装置通信を支援するように構成される。たとえば、HART(登録商標)通信を使用する実施形態では、電力モジュール30は、好ましくは250オームのレジスタを含む。しかし、他のネットワーク及びプロセス通信プロトコルは、他の回路を必要とする場合がある。
【0010】
多くのスマート計測器(フィールド装置)は2線式装置であり、両方の電力が装置に提供され、デジタル通信が同じ2線式に起こる。これらの装置は、極性を区別しないか、あるいは逆極性保護を有する。
【0011】
本発明の実施形態によって、一般に、技術者のタスクが、フィールド内の、又は技術者の作業台上の電力供給された装置で実行されることが可能になる。フィールド装置インターフェイス10は、単に通信(たとえばフィールド内の電力供給された装置との)を可能してもよく、又は実際に装置に電力供給すると同時に、通信(たとえば作業台上の装置の初期設定中に)を可能にしてもよい。フィールド装置インターフェイスの設計の1つの重要な重要な点は、フィールド装置と通信して電力供給することを可能にできるが、技術者が電力をプラント内のすでに電力供給されたフィールド装置に引き続き電力を与えることを防止し、及び/又は自動的にフィールド装置極性を決定することが可能であるということである。
【0012】
本発明の実施形態によれば、インターフェイス10が含むフィールド装置10は、内蔵電源モジュール30を含み、これにより技術者は、別個の電源装置を担持して結合する必要なく、フィールド装置に電力供給して、それと通信することが可能になる。しかし、作動中の制御ループ上のすでに給電されたフィールド装置にさらなる電力を与えることは、制御システムに提供されるフィールド装置信号及び情報を妨げ、場合によっては深刻な問題を伴う。具体的には、本願明細書に開示される実施形態は、好ましくは電力を検出して、接続された装置がすでに電力供給されている場合には、電力が使用可能にされることを防止する。フィールド装置インターフェイスがフィールド装置に給電し、リード線が、フィールド装置から意図的に、あるいは意図的でなく切り離される場合、フィールド装置インターフェイスモジュールからの有効な電力は遮断される。また、フィールド装置の極性は測定回路32を用いて決定されることができ、技術者が接続の極性を懸念する必要はない。前述のように、フィールド装置インターフェイスモジュールを用いて、フィールド装置における電力を自動的に検出し、場合によってはフィールド装置に電力を提供することができる。
・・・
【0014】
図3は、本発明に実施形態のフィールド装置インターフェイスモジュールを用いて、フィールド装置に汎用コンピュータを結合させる方法のフロー図である。方法100はブロック102から開始し、ここで技術者は、フィールド装置インターフェイスモジュール(モデム)に、取付けられたフィールド装置に電力供給することを要求する。フィールド装置インターフェイス、モジュールがフィールド装置に最初に接続されると、フィールド装置インターフェイスモジュールによって、取付けられたフィールド装置に電力が提供されないデフォルト動作が行われる。フィールド装置インターフェイスモジュールは、内蔵型電源30の起動を要求して、取付けられたフィールド装置に電力供給する方法を有する。これは、たとえば、ソフトウェアの要求、又は物理的な押しボタンもしくはスイッチであることができる。ブロック102において、技術者は、端末50、52に電力を与えることを、ソフトウェア又は物理的なスイッチを介して実際に要求する。そして、制御はブロック104に移り、フィールド装置インターフェイスモジュール、たとえばモジュール10が、端末50、52両端の直流電圧を、好ましくは測定回路32を用いて測定する。測定された電圧が、電力供給されたネットワークの最低レベルを上回る場合、電力は有効にされない。ブロック106で示されるように、フィールド装置インターフェイスモジュールは、取付けられたフィールド装置がすでに電力供給され、電力が与えられないという表示を、技術者に提供する。しかし、測定された直流電圧が、電力供給されたフィールド装置の最低レベルを下回る場合、制御はブロック108に移り、端末50、52に電流制限電圧が与えられる。電流制限及び電圧は、ネットワークタイプに適切であるように設定される。電流の流れは常にモニタされ、フィールド装置は、定義された予想起動時間内で最小量の電流を引き出すことが予測される。したがって、方法100は、最大フィールド装置起動時間が経過するまでブロック110で待ち、その後制御はブロック112に移る。ブロック112で、方法100は、取付けられたフィールド装置が、最小を上回る電流を引き出しているかを判定する。フィールド装置が最小を上回る電流レベルを引き出している場合、制御はその後、ライン116を介してブロック114に移り、ここでフィールド装置電流を継続的にモニタして、規定最小値を上回るかを判定する。取付けられたフィールド装置が最小値を上回る電流を引き出す間、ブロック114は基本的にループし、それによってフィールド装置電流を継続的にモニタする。フィールド装置が最小を上回る電流の引き出しを中断する場合、制御はブロック118に移り、電流制限電圧が遮断され、技術者に電力がオフになっていることが通知される。」

イ 図面

「【図1】
[図:0001406223000004.jpg]
【図2】
[図:0001406223000005.jpg]
【図3】
[図:0001406223000006.jpg]
」

(2)上記(1)から、引用文献2には以下の事項が記載されていると理解することができる。

ア 上記(1)アの段落【0001】、【0003】、【0006】の記載及び(1)イの【図1】~【図2】から、引用文献2には、プロセスの動作を制御するフィールド装置12と通信可能に結合される「フィールド装置インターフェイスモジュール10」についての技術的事項が記載されていることがわかる。

イ 上記(1)イの【図1】~【図2】及び技術常識から、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は「筐体」を備えることを理解できる。

ウ 上記イ、並びに、上記(1)アの段落【0007】~【0008】の記載及び(1)イの【図2】から、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は、「端末50,52」を備えることを理解できる。当該「端末50,52」は、当然に上記イの「筐体」に配置され、当該「筐体」内のプロトコルインターフェイスモジュール26、28等にアクセス可能な内部部分を含む、といえる。

また、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は、端末50、52間の電圧を試験して、取り付けられたループが電力供給されているかを決定し(段落【0008】、【0014】、【図3】のブロック104)、ループからフィールド装置12にすでに電力供給されている場合には、フィールド装置インターフェイスモジュール10からの電力供給を遮断する(段落【0012】、【0014】、【図3】のブロック106)ものであることがわかる。

そして、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は、たとえば初期設定中にフィールド装置12に電力供給すると同時に通信を可能とするモード(以下「第1モード」という。)、又は、たとえば電力供給されたフィールド装置12に単に通信を可能とするモード(以下「第2モード」という。)、のいずれかで作動する(段落【0011】、【0014】)ことがわかり、その決定は、上述のとおり、端末50、52間で試験された電圧によるように構成されていることを理解できる。

ここで、第1モードでは、電力供給と通信とを同時に行うことから、電力信号と通信信号とは重畳された合成信号として送受信され、第2モードでは、単に通信信号のみが送受信されることが技術常識である。

エ 上記(1)アの段落【0007】の記載及び(1)イの【図2】から、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は、HART(登録商標)プロトコルに従って通信する「プロトコルインターフェイスモジュール26」、及び、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って通信する「第2のプロトコルインターフェイスモジュール28」を備えることを理解できる。

また、上記(1)ウの【図2】から、当該「プロトコルインターフェイスモジュール26、28」は、当然に上記イの「筐体」に配置されているといえ、上記ウの「端末50、52」の内部部分に電気的に接続されることがわかる。

オ 上記(1)アの段落【0009】の記載及び(1)イの【図2】から、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10は、「電力モジュール30」を備えることを理解できる。

また、上記(1)ウの【図2】から、当該「電力モジュール30」は、当然に上記イの「筐体」に配置されているといえ、上記ウの「端末50、52」の内部部分に電気的に接続されることがわかる。

さらに、当該「電力モジュール30」は、端末50、52に結合するプロセス通信ループ又はフィールド装置に選択的に電力を提供するように構成され(段落【0009】)、上記ウ及び上記(1)アの段落【0012】に記載のとおり、端末50、52間の電力を検出した結果、接続された装置がすでに電力供給されている場合には、電源モジュール30からの電力供給を行わないものであるから、引用文献2に記載されたフィールド装置インターフェイスモジュール10が第1モードで作動する場合、電力を供給するよう構成されたものであるといえる。

そして、上記(1)アの段落【0009】に「HART(登録商標)通信を使用する実施形態では、電力モジュール30は、好ましくは250オームのレジスタを含む。しかし、他のネットワーク及びプロセス通信プロトコルは、他の回路を必要とする場合がある。」と記載され、また、段落【0014】に「電流制限及び電圧は、ネットワークタイプに適切であるように設定される。」と記載されることからみて、引用文献2に記載された「電力モジュール30」は、HART(登録商標)プロトコルか、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルかに従って、それぞれに適切な電力を供給するものであることがわかる。

カ 上記ウ~オ、及び、上記(1)アの段落【0006】~【0011】の記載から、引用文献2に記載された「端末50、52」は、上記ウの内部部分のほか、

(ア)フィールド装置インターフェイスモジュール10が第1モードで作動する場合、HART(登録商標)プロトコルに対応するフィールド装置12(以下「第1フィールド装置12-1」という。)が、HART(登録商標)プロトコルに従って電力モジュール30から第1フィールド装置12-1に電力を供給するよう構成された電力信号(以下「第1電力信号」という。)、かつ第1フィールド装置12-1をプロトコルインターフェイスモジュール26に通信可能に接続するよう構成された通信信号(以下「第1通信信号」という。)を含む合成信号(以下「第1合成信号」という。)を受信するよう、第1フィールド装置12-1に、

(イ)フィールド装置インターフェイスモジュール10が第2モードで作動する場合、第1フィールド装置12-1が、第1通信信号を受信するよう、第1フィールド装置12-1に、

(ウ)フィールド装置インターフェイスモジュール10が第1モードで作動する場合、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに対応するフィールド装置12(以下「第2フィールド装置12-2」という。)が、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って電力モジュール30から第2フィールド装置12-2に電力を供給するよう構成された電力信号(以下「第2電力信号」という。)、かつ第2フィールド装置12-2を第2のプロトコルインターフェイスモジュール28に通信可能に接続するよう構成された通信信号(以下「第2通信信号」という。)を含む合成信号(以下「第2合成信号」という。)を受信するよう、第2フィールド装置12-2に、又は、

(エ)フィールド装置インターフェイスモジュール10が第2モードで作動する場合、第2フィールド装置12-2が、第2通信信号を受信するよう、第2フィールド装置12-2に、

接続可能な部分(以下「フィールド装置接続部分」という。)を、さらに含むことがわかる。

(3)上記(1)及び(2)から、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「フィールド装置インターフェイスモジュール10であって、
(A)筐体と、
(B)前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が(i)電力信号及び通信信号を含む合成信号を供給する第1モード、又は(ii)前記通信信号を供給する第2モードのいずれかで作動することを決定するよう構成され、前記筐体に配置された端末50、52と、
(C)HART(登録商標)プロトコルに従って通信し、さらにFOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って通信するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ、前記端末50、52の前記内部部分に電気的に接続された、プロトコルインターフェイスモジュール26及び第2のプロトコルインターフェイスモジュール28と、
(D)前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が前記第1モードで作動する場合、前記HART(登録商標)プロトコルに従って電力を供給するよう、さらに、前記FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って電力を供給するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ前記端末50、52の前記内部部分に電気的に接続された、電力モジュール30と、
を備え、
前記端末50、52が、
(i)(1)前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が前記第1モードで作動する場合、第1フィールド装置12-1が、前記HART(登録商標)プロトコルに従って前記電力モジュール30から前記第1フィールド装置12-1に電力を供給するよう、かつ前記第1フィールド装置12-1を前記プロトコルインターフェイスモジュール26に通信可能に接続するよう構成された、第1電力信号と第1通信信号を含む第1合成信号を受信し、及び(2)前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が前記第2モードで作動する場合、前記第1通信信号を受信するよう、前記第1フィールド装置12-1に接続可能であり、
(ii)(1)前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が前記第1モードで作動する場合、第2フィールド装置12-2が、前記FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って前記電力モジュール30から前記第2フィールド装置12-2に電力を供給するよう、かつ前記第2フィールド装置12-2を前記第2のプロトコルインターフェイスモジュール28に通信可能に接続するよう構成された、第2電力信号と第2通信信号を含む第2合成信号を受信し、及び(2)前記フィールド装置インターフェイスモジュール10が前記第2モードで作動する場合、前記第2通信信号を受信するよう、前記第2フィールド装置12-2に接続可能である、フィールド装置接続部分をさらに含むこと。」(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)

3 本件の優先日当時の技術常識

(1)文献3記載の技術的事項

本件の優先日当時の技術常識を参酌するために、例えば、新たに示す特開2010-134752号公報(以下「文献3」という。)には、次の技術的事項が記載されている。

「【背景技術】
【0002】
通常、フィールド機器ではその出力形態に応じたハードウェア設計がなされている。例えば、出力が消費電流に比例する2線式フィールド機器と、FOUNDATION Fieldbus(FF;商標名)やProfibus PAに代表される双方向ディジタル通信可能な機器とでは、そのハードウェア構成は大きく異なる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0004】
さらに、機器交換などの際に2線式フィールド機器ではなく、誤ってフィールドバス機器を接続した場合に、システムに影響を与える可能性がある。例えば、フィールドバス機器の消費電流は常時10-15mAであるため、4-20mA信号であると誤認される可能性があり、システムに与える影響が懸念される。
【0005】
すなわち、フィールドバス機器では、4-20mA型の2線式伝送器において信号線に重畳される通信速度(1200bps)とは大幅に異なり、通信速度が31.25kbpsと高速であるため、通常10mA以上の消費電流を要する。一方、HARTなどの従来の4-20mA型の2線式伝送器では4mA未満の消費電流で動作させる必要があり、消費電流についても両者は基本設計を異にしているという事情がある。」

(2)技術常識

上記(1)から、次の事項は技術常識であるといえる。

「フィールドバスプロトコルに接続されるフィールドデバイスの消費電流(10mA以上)と、HARTプロトコルに接続されるフィールドデバイスの消費電流(4mA未満)とは、その大きさが異なること。」

第5 本件発明と引用発明1との対比

1 本件発明と引用発明1との相当関係

本件発明(上記第2)と、引用発明1(上記第4の1(3))とを対比すると、以下の関係にある。

(1)引用発明1における「現場保守ツール22」は、プロセス施設の現場装置20の保守作業のために通信可能に接続されるツールであるとの機能、及び、上記第4の1(1)ウの【図1】、【図2A】から看取される構造からみて、本件発明における「携帯型フィールド保守ツール」に相当する。

(2)構成(B)について、引用発明1における「前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、前記筐体に配置された通信端子26、28、30」は、通信を行う接続部分といえるから、本件発明における「前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、」「前記筐体に配置された通信インターフェース」に相当する。

(3)構成(C)について、引用発明1における「第1のプロセス産業標準プロトコル」及び「第2のプロセス産業標準プロトコル」は、その機能からみて、本件発明における「第1のプロトコル」及び「第2のプロトコル」にそれぞれ相当し、また、引用発明1における「媒体アクセス部32、34」は、プロセス通信ループと相互動作できるよう設定され、媒体アクセス部を経由した接続を成立させる(段落【0013】)ものであるから、本件発明における「複数の通信回路」に相当する。

(4)

ア 構成(i)について、本件発明の構成(i)(2)の「第1の通信信号」は、構成(i)(1)の「第1の通信信号」と同様に、「前記第1のプロトコルに従って」「前記第1のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された」ものであるといえる。これを踏まえると、引用発明1における「第1現場装置20-1」及び「第1通信信号」は、第1のプロセス産業標準プロトコル(第1のプロトコル)に従うものであることから、本件発明における構成(i)(2)の「第1のフィールドデバイス」及び「第1の通信信号」に相当する。

イ 同様に、構成(ii)について、本件発明の構成(ii)(2)の「第2の通信信号」は、構成(ii)(1)の「第2の通信信号」と同様に、「前記第2のプロトコルに従って」「前記第2のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された」ものであるといえる。これを踏まえると、引用発明1における「第2現場装置20-2」及び「第2通信信号」は、第2のプロセス産業標準プロトコル(第2のプロトコル)に従うものであることから、本件発明における構成(ii)(2)の「第2のフィールドデバイス」及び「第2の通信信号」に相当する。また、引用発明1における「現場装置接続部分」は、現場装置(フィールドデバイス)に接続可能となる部分であることから、本件発明における「端子」に相当する。

ウ さらに、構成(i)及び(ii)について、引用発明1の「媒体アクセス部32」及び「媒体アクセス部34」は、それぞれ「第1のプロセス産業標準プロトコル」及び「第2のプロセス産業標準プロトコル」に従って通信可能に接続されるものであって、上記(3)のとおり、引用発明1の「媒体アクセス部32」及び「媒体アクセス部34」が、本件発明の「複数の通信回路」を構成するものである。

エ してみると、引用発明1における構成(i)及び(ii)は、「(i)第1のフィールドデバイスが、前記第1のプロトコルに従って前記第1のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された第1の通信信号を受信するよう、前記第1のフィールドデバイスに接続可能であり、

(ii)第2のフィールドデバイスが、前記第2のプロトコルに従って前記第2のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された第2の通信信号を受信するよう、前記第2のフィールドデバイスに接続可能である、1つ以上の端子をさらに含」む限りにおいて、本件発明における構成(i)及び(ii)に相当する。

2 本件発明と引用発明1との一致点

上記1を踏まえると、本件発明と引用発明1とは以下の<一致点>にて一致する。

<一致点>

「携帯型フィールド保守ツールであって、
(A)筐体と、
(B)前記筐体内にアクセス可能な内部部分を含み、前記筐体に配置された通信インターフェースと、
(C)第1のプロトコルに従って通信し、さらに第2のプロトコルに従って通信するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ、前記通信インターフェースの前記内部部分に電気的に接続された、複数の通信回路と、
を備え、
前記通信インターフェースが、
(i)第1のフィールドデバイスが、前記第1のプロトコルに従って前記第1のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された第1の通信信号を受信するよう、前記第1のフィールドデバイスに接続可能であり、
(ii)第2のフィールドデバイスが、前記第2のプロトコルに従って前記第2のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された第2の通信信号を受信するよう、前記第2のフィールドデバイスに接続可能である、1つ以上の端子をさらに含む、
携帯型フィールド保守ツール。」

3 本件発明と引用発明1との相違点

他方、本件発明と引用発明1とは、以下の<相違点>で相違する。

<相違点>

本件発明においては、携帯型フィールド保守ツールが、「(i)電力信号及び通信信号を含む合成信号を供給する第1の信号モード、又は(ii)前記通信信号を供給する第2の信号モードのいずれかで作動する」(構成(B))ものであって、

通信インターフェースが、「第1の信号モード」又は「第2の信号モード」のいずれかを「決定するよう構成」(構成(B))されており、

携帯型フィールド保守ツールが、「前記携帯型フィールド保守ツールが前記第1の信号モードで作動する場合、前記第1のプロトコルに従って電力を供給するよう、さらに、前記第2のプロトコルに従って電力を供給するよう構成された、前記筐体内に配置され、かつ前記通信インターフェースの前記内部部分に電気的に接続された、1つ以上の電源」(構成D)を備えており、さらに、

「通信インターフェース」の「1つ以上の端子」が、

携帯型フィールド保守ツールが第1の信号モードで作動する場合、「第1のフィールドデバイスが、前記第1のプロトコルに従って前記1つ以上の電源から前記第1のフィールドデバイスに電力を供給するよう、かつ前記第1のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された、第1の電力信号と第1の通信信号を含む第1の合成信号を受信」(構成(i)(1))するように第1のフィールドデバイスに接続可能であり、「第2のフィールドデバイスが、前記第2のプロトコルに従って前記1つ以上の電源から前記第2のフィールドデバイスに電力を供給するよう、かつ前記第2のフィールドデバイスを前記複数の通信回路に通信可能に接続するよう構成された、第2の電力信号と第2の通信信号を含む第2の合成信号を受信」(構成(ii)(1))するように第2のフィールドデバイスに接続可能であるとともに、

「前記第1の電力信号は、前記第1のプロトコルに関連付けられた第1の電流の大きさを有し、前記第2の電力信号は、前記第2のプロトコルに関連付けられた、前記第1の電流の大きさとは異なる第2の電流の大きさを有する」のに対し、

引用発明1においては、現場保守ツール22(携帯型フィールド保守ツール)が、本件発明の「第2の信号モード」に相当するモードで作動するのみであり、本件発明の「第1の信号モード」に相当するモードを備えていないため、

「通信端子26、28、30(通信インターフェース)」が「第1の信号モード」と「第2の信号モード」とのいずれかを決定するよう構成されておらず、

現場保守ツール22が「1つ以上の電源」に相当する電源を備えておらず、また、「通信端子26、28、30(通信インターフェース)」の「1つ以上の現場装置接続部分(端子)」が、第1の合成信号及び第2の合成信号に相当する信号を受信するものではなく、さらに、第1の電力信号及び第2の電力信号に相当する信号を受信するものでもない点。

第6 相違点に対する当審の判断

上記相違点に係る本件発明を想到することは、本件の優先日当時の技術常識を踏まえた当業者であれば、以下のとおり、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することで、容易になし得たことである。

1 引用文献2記載の技術的事項

上記第4の2(2)~(3)に示したように、引用文献2記載の技術的事項における「フィールド装置インターフェイスモジュール10」は、プロセスの動作を制御するフィールド装置12と通信可能に結合されるものであって、本件発明における「第1の信号モード」及び「第2の信号モード」にそれぞれ相当する「第1モード」及び「第2モード」のいずれかで作動するものである。

また、引用文献2記載の技術的事項における「フィールド装置インターフェイスモジュール10」は、端末間で試験された電圧により、「第1モード」又は「第2モード」のいずれかで作動することを決定するよう構成される「端末50、52」、及び、「フィールド装置インターフェイスモジュール10」が第1モードで作動する場合に「HART(登録商標)プロトコル」に従って電力を供給するよう、さらに、「FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコル」に従って電力を供給するよう構成された、「電力モジュール30」を備えるものである。

そして、引用文献2記載の技術的事項における「端末50、52」は、「フィールド装置インターフェイスモジュール10が第1モードで作動する場合」、「第1フィールド装置12-1が、HART(登録商標)プロトコルに従って電力モジュール30から第1フィールド装置12-1に電力を供給するよう、かつ第1フィールド装置12-1をプロトコルインターフェイスモジュール26に通信可能に接続するよう構成された、第1電力信号と第1通信信号を含む第1合成信号を受信」するよう、第1フィールド装置12-1に接続可能であり、「第2フィールド装置12-2が、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルに従って電力モジュール30から第2フィールド装置12-2に電力を供給するよう、かつ第2フィールド装置12-2を第2のプロトコルインターフェイスモジュール28に通信可能に接続するよう構成された、第2電力信号と第2通信信号を含む第2合成信号を受信」するよう、第2フィールド装置12-2に接続可能である、「フィールド装置接続部分」をさらに含むものである。

2 引用発明1と引用文献2記載の技術的事項が技術的に共通すること

引用発明1と引用文献2記載の技術的事項とは、いずれも、フィールドデバイスの保守のための装置である点で技術分野が関連する。また、フィールドデバイスの複数のプロトコル(HART(登録商標)プロトコル、及び、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコル)に対応するよう、端子を含む通信インターフェース及び複数の通信回路を備える点で、課題及び作用・機能が共通する。さらに、引用文献1の段落【0031】には、「現場保守作業者が複数の異なるタイプの携帯装置を現場で持ち歩く必要がなくなり、複数のプロセス産業の標準通信ループで相互動作可能な単一のツール利用ができる」と記載されるとともに、引用文献2の段落【0012】には、「フィールド装置10は、内蔵電源モジュール30を含み、これにより技術者は、別個の電源装置を担持して結合する必要なく、フィールド装置に電力供給して、それと通信することが可能になる」と記載されるように、現場保守作業者が持ち歩く装置の数を減らすとの技術思想が共通している。

3 引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することの容易想到性

してみると、引用発明1の現場保守ツール22は、本件発明の「第2の信号モード」に相当するモードでのみ作動するところ、保守作業者が持ち歩く装置の数を減らすために、引用文献2記載の技術的事項のように、「第1モード(第1の信号モード)」または「第2モード(第2の信号モード)」のいずれかにて作動する技術思想、及び、構造・機能を適用し、

(1)引用発明1においても、引用文献2記載の「1つ以上の電力モジュール30(電源)」を備えたうえで、

(2)引用発明1の「通信端子26、28、30(通信インターフェース)」を、「通信端子26、28」間又は「通信端子28、30」間にて電圧を試験することで、「第1モード(第1の信号モード)」と「第2モード(第2の信号モード)」とのいずれかで作動することを決定するよう構成し、

(3)さらに、「通信端子26、28、30(通信インターフェース)」に含まれる「現場装置接続部分(端子)」を、「現場保守ツール22が第1モード(第1の信号モード)で作動する場合」、第1電力信号と第1通信信号を含む第1合成信号(第1の合成信号)や第2電力信号と第2通信信号を含む第2合成信号(第2の合成信号)を受信する、

ようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

4 また、本件発明の「前記第1の電力信号は、前記第1のプロトコルに関連付けられた第1の電流の大きさを有し、前記第2の電力信号は、前記第2のプロトコルに関連付けられた、前記第1の電流の大きさとは異なる第2の電流の大きさを有する」点(以下「電流の大きさに関する事項」という。)に関し、

(1)上記第4の2(2)オに示したように、引用文献2には「HART(登録商標)通信を使用する実施形態では、電力モジュール30は、好ましくは250オームのレジスタを含む。しかし、他のネットワーク及びプロセス通信プロトコルは、他の回路を必要とする場合がある。」(段落【0009】)、「電流制限及び電圧は、ネットワークタイプに適切であるように設定される。」(段落【0014】)と記載されるように、引用文献2に記載された「電力モジュール30」は、HART(登録商標)プロトコルか、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルかに従って、それぞれに適切な電力を供給するものである。

(2)そして、上記第4の3(2)に示したように、「フィールドバスプロトコルに接続されるフィールドデバイスの消費電流(10mA以上)と、HARTプロトコルに接続されるフィールドデバイスの消費電流(4mA未満)とは、その大きさが異なること」は、本件の優先日当時の技術常識である。

(3)してみると、引用文献2記載の技術的事項においても、「電力モジュール30」が、HART(登録商標)プロトコルか、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルかに従って、それぞれに適切な電力を供給するにあたり、第1電力信号による電流の大きさと第2電力信号による電流の大きさとは、上記(2)の技術常識からみて、当然に異なるものであるといえる。

(4)よって、電流の大きさに関する事項は、本件の優先日当時の技術常識を踏まえれば、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用して、異なるプロトコルに従って、それぞれに適切な電力を供給する際に、当然に考慮する程度の事項にすぎない。

5 小括

以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、本件優先日当時の技術常識を踏まえた当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 請求人の意見書での主張に対する当審の見解

1 本件審判請求人(以下単に「請求人」という。)は、令和5年6月7日に提出の意見書(以下単に「意見書」という。)の7.において、以下の主張をする。

(1)本件発明は、第1の特徴的な構成(第1及び第2の信号モードに係る構成)に加えて、上記第6の4に示した電流の大きさに関する事項という第2の特徴的な構成を有するものの、引用文献1には、第1の特徴的な構成及び第2の特徴的な構成が、記載も示唆もされておらず、引用文献2にも、第2の特徴的な構成について記載も示唆もされていない。

(2)第2の特徴的な構成は、第1の特徴的な構成を前提としているので、当業者が、引用文献1に記載の発明から出発し、第2の特徴的な構成に至るためには、2段階の思考過程を経る必要がある。そうすると、当業者が、本件発明の構成に至ることは、格別な努力を要するものといえ、当業者にとって容易であったということはできない。

2 上記1(1)~(2)の請求人の主張に対する当審の見解は、以下のとおりである。

(1)についてみると、上記第6の4(1)に記載したように、引用文献2に記載された「電力モジュール30」は、HART(登録商標)プロトコルか、FOUNDATION(商標)フィールドバス(Fieldbus)プロトコルかに従って、それぞれに適切な電力を供給するものである。そして、上記第6の4(2)に示した本件優先日当時の技術常識を踏まえれば、上記第6の4(3)に示したように、引用文献2記載の技術的事項においても、第1電力信号による電流の大きさと第2電力信号による電流の大きさとは、当然に異なるものであるといえる。

したがって、請求人の上記1(1)の主張は採用できない。

(2)また、引用文献2記載の技術的事項には、上記(1)の点が実質的に内在するものといえることから、多段階の思考過程を経ることなく、本件優先日当時の技術常識を踏まえた当業者が本件発明を容易に想到し得たというべきである。

したがって、請求人の上記1(2)の主張も採用できない。

第8 むすび

以上のとおり、本件発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項に基づいて、本件優先日当時の技術常識を踏まえた当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-009796

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