特許拒絶査定不服審判
2022-009539
積層体およびそれを備える包装袋
- 審判番号
- 2022-009539
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-028014外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年06月21日
- 審決日
- 2023年10月17日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (B32B) / P18 .121-Z (B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-28014「積層体およびそれを備える包装袋」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月29日出願公開、特開2019-142091〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年10月 4日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和4年 4月 1日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 6月21日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年6月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年6月21日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1に係る補正は以下のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
少なくとも、第1基材層と、透明蒸着層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層が、ポリアミドを含み、
前記シーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、
前記シーラント層の厚みが、80μm以上150μm以下であり、
前記第1基材層が酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ前処理面を有し、前記プラズマ前処理面上に前記透明蒸着層を備え、
前記混合ガスにおいて前記酸素ガスの混合比率が前記不活性ガスの混合比率よりも大きい、積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
少なくとも、第1基材層と、透明蒸着層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層が、ポリアミドを含み、
前記シーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、
前記シーラント層の厚みが、80μm以上150μm以下であり、
前記第1基材層がプラズマ前処理面を有し、前記プラズマ前処理面上に前記透明蒸着層を備える、積層体。」
2 本件補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「プラズマ前処理面」について、「前記酸素ガスの混合比率が前記不活性ガスの混合比率よりも大きい」「酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス」によるものであることを特定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1に記載された事項、発明
ア 原査定の理由に引用された文献である特開2015-36208号(以下「引用文献1」という。)には、「積層フィルム」に関して、次の記載がある(以下「・・・」は省略を示す。)。
「【請求項1】
基材層と、前記基材層の少なくとも一方に設けられた蒸着層と、前記蒸着層の前記基材層側とは反対側の面に設けられたガスバリア性塗布膜とを備えたバリア性フィルムであって、
前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、
前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールを含んでなり、
前記ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸からなり、
前記蒸着層が物理気相成長法によるアルミニウム酸化物からなり、前記蒸着層の厚みが30~100Åであることを特徴とする、バリア性フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が石化燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して50~95質量%含有する、請求項1に記載のバリア性フィルム。
【請求項3】
前記ジカルボン酸がテレフタル酸を含む、請求項1または2に記載のバリア性フィルム。
【請求項4】
・・・
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のバリア性フィルムと、
前記バリア性フィルムの少なくとも一方の面側に設けられたシーラント層と、
を備えた、積層フィルム。
【請求項6】
支持体をさらに備え、
前記支持体が、前記バリア性フィルムと前記シーラント層との間、または、前記バリア性フィルムの基材層側に設けられてなる、請求項5に記載の積層フィルム。」
「【0001】
本発明は、バリア性フィルムに関し、特に、バイオマス由来のポリエステル樹脂を基材フィルム材料として用いたバリア性フィルム、ならびにそれを用いた積層フィルムおよび包装体に関する。」
「【0008】
したがって、本発明の目的は、優れたガスバリア性を有するバイオマス由来のポリエステルを主成分として含む樹脂組成物を用いたバリア性フィルム、ならびにそれを用いた積層フィルムおよび包装体を提供することである。」
「【0063】
蒸着層12は、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)で形成されている。蒸着層12としては、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することが好ましい。具体的には、蒸着層12は、式AlOX(式中、Xは、0.5~1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜である。蒸着層12は、膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することができる。酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜は、式AlOX(式中、Xは、0.5~1.5の範囲の数を表す。)で表され、その薄膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加していることが好ましい。なお、本実施形態においては、上記の式中のXの値としては、基本的には、X=0.5以上のものを使用することができるが、本実施形態においては、X=1.0未満になると、着色が激しく、かつ、透明性に劣ることから、X=1.0以上のものを使用することが好ましい。・・・」
「【0069】
また、コロナ放電処理、フレーム処理以外に、基材層11の表面に、予め、不活性ガスによるプラズマ処理を施しておいてもよい。これにより、基材層11の表面に蒸着層12を形成すると、基材層11と蒸着層12との接着性などを向上させ、基材層11および蒸着層12を強固に密着させて、その層間剥離(デラミネーション)などの発生を抑制することができる。・・・
【0070】
プラズマ処理方法としては、・・・。具体的には、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、その他などの不活性ガスをプラズマガスとして使用し、プラズマ表面処理法で基材層11の表面をプラズマ処理することができる。なお、プラズマガスとしては、上記の不活性ガスに、さらに酸素ガスを添加した混合ガスを使用してもよい。」
「【0108】
シーラント層21を形成する材料としては、熱によって相互に融着し得る樹脂であれば、特に限定されず、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、または、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他などの樹脂などが挙げられる。これらは、単独でも二種以上の混合物として使用してもよい。・・・
【0109】
シーラント層21を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合、その原料として、化石燃料から得られるエチレンの他に、バイオマス由来のエチレンを重合したものを用いてもよい。」
「【0124】
シーラント層21の厚さとしては、20~200μmが好ましく、30~130μmがより好ましい。」
「【0134】
(支持体)
支持体33は、延伸ポリエステル系樹脂層、延伸ポリアミド系樹脂層、延伸ポリオレフィン系樹脂層、紙基材(紙層)など、上記した本実施形態の積層フィルムを支持し、側面シート31の強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いて形成することができる。・・・」
「【0195】
<実施例1>
[バイオマス由来のポリエステルの合成]
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、次いで、その重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行い、ポリマーを合成した。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。得られたペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC-60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のPETと同等であった。また、得られたバイオマス由来のPETの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。」
イ 上記アの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「基材層と、前記基材層の少なくとも一方に設けられた蒸着層と、前記蒸着層の前記基材層側とは反対側の面に設けられたガスバリア性塗布膜とを備えたバリア性フィルムであって、
前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物が、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が石化燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して50~95質量%含有し、
前記ジカルボン酸がテレフタル酸を含み、
前記蒸着層が物理気相成長法によるアルミニウム酸化物からなり、前記蒸着層の厚みが30~100Åであるバリア性フィルムと、
前記バリア性フィルムのガスバリア性塗布膜側の面に設けられたシーラント層と、を備え、
前記バリア性フィルムと前記シーラント層との間に支持体が設けられてなる、積層フィルム。」
(3)引用文献2に記載された事項
ア 原査定の理由に引用された文献である特開2013-176951号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも基材フィルムとシーラントフィルムとからなる積層フィルムであって、
該基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリ乳酸フィルムであり、
該シーラントフィルムは、
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるポリエチレンフィルムであることを特徴とする、
上記積層フィルム。」
「【0002】
・・・
例えば、シーラントフィルム等のポリエチレン系樹脂フィルムにおいて、原料の一部を植物由来のポリオレフィン系樹脂に変えると、その配合率が高くなるにつれて、シーラントフィルムとして使用する場合の手切れ性及び耐衝撃性が低下することが分かった。
・・・
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決し、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、フィルム全体として少なくとも20%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減された積層フィルムを提供することを目的とする。」
イ 上記アの記載から、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「少なくとも基材フィルムとシーラントフィルムとからなる積層フィルムであって、
該基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
該シーラントフィルムは、
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるポリエチレンフィルムとすることにより、
原料の一部を植物由来のポリオレフィン系樹脂に変えた積層フィルム。」
(4)周知技術
ア 周知例1
特開平11-262970号公報には以下の記載がある。
「【0023】
【実施例】実施例1
巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、その片面に、放電プラズマ発生装置を用いて、プラズマ出力20kW、酸素(O2):アルゴン(Ar)=19:1からなる混合ガスを使用し、その混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度600mm/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を蒸着前にインラインで行い、次いで、アルミニウムを蒸着源に用いてエレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、膜厚150Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成して、本発明にかかる透明バリア性フィルムを製造した。」
イ 周知例2
特開2001-138430号公報には以下の記載がある。
「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のような問題点を解決すべく種々研究の結果、蒸着膜形成直前のポリエステル系樹脂フィルムあるいはポリアミド系樹脂フィルム等の基材フィルムの表面に、酸素ガスによるプラズマ処理、または、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスによるプラズマ処理を行い酸素プラズマ処理面を形成し、次いで、その酸素プラズマ処理面の面に、無機酸化物の蒸着膜を形成し、更にまた、該無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマー剤層とラミネート用接着剤層とを介して、少なくとも、ヒートシール性樹脂層を積層して積層包装材を製造し、而して、該積層包装材を使用して包装用袋等を製造し、更に、該包装用袋内に内容物を充填包装して包装半製品を製造し、しかる後、該包装半製品にボイルあるいはレトルト処理等を施して殺菌ないし滅菌処理した包装製品を製造したところ、基材フィルムの表面に、緻密で、柔軟性に富む無機酸化物の蒸着膜を形成することができると共にポリエステル系樹脂フィルムあるいはポリアミド系樹脂フィルム等の基材フィルムと無機酸化物の蒸着膜との密接着性に優れ、・・・。」
「【0014】・・・本発明において、プラズマ処理としては、具体的には、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスを使用することが望ましく、そして、その酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの混合ガスのガス圧としては、1×10-1~1×10-10Torr位、より好ましくは、1×10-4~1×10-8Torr位が望ましく、また、酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガスまたはヘリウムガス=100:0~30:70位、より好ましくは、90:10~70:30位が望ましく、・・・。上記の酸素ガスとアルゴンガスまたはヘリウムガスとの分圧比において、アルゴンガスまたはヘリウムガス分圧が高くなると、プラズマで活性化される酸素分子が少なくなり、アルゴンガスまたはヘリウムガスが還元性ガスとしてポリエステル系樹脂フィルム等の基材フィルムと反応し、ポリエステル系樹脂フィルム等の基材フィルムの酸化による酸化被膜の形成、あるいは、水酸基等の導入が阻害されることから好ましくないものである。・・・」
ウ 上記ア及びイの記載から、以下の技術的事項は周知(以下「周知技術」という。)であるといえる。
「ポリエステル系樹脂フィルムの表面に蒸着膜を形成する前に、前記表面に酸素ガスと非活性ガスの混合ガスによるプラズマ処理を行う際、酸素ガスの混合比率を非活性ガスの混合比率よりも大きくすること。」
(5)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「基材層」は本件補正発明の「第1基材層」に相当する。
引用発明の「物理気相成長法によるアルミニウム酸化物からな」る「蒸着層」と本件補正発明の「透明蒸着層」は、「蒸着層」である限りにおいて一致する。
引用発明の「支持体」と本件補正発明の「ポリアミドを含」む「第2基材層」は、「第2基材層」である限りにおいて一致する。
引用発明の「シーラント層」と本件補正発明の「直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、」「厚みが、80μm以上150μm以下であ」る「シーラント層」は、「シーラント層」である限りにおいて一致する。
引用発明の「積層フィルム」は本件補正発明の「積層体」に相当する。
引用発明の「前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、前記ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が石化燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して50~95質量%含有し、」「前記ジカルボン酸がテレフタル酸を含」むことは、本件補正発明の「前記第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」むことに相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「少なくとも、第1基材層と、蒸着層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む、積層体。」
[相違点1]
蒸着層について、本件補正発明では「透明蒸着層」であるのに対し、引用発明では「物理気相成長法によるアルミニウム酸化物からな」る「蒸着層」である点。
[相違点2]
第2基材層が、本件補正発明では「ポリアミドを含」むのに対し、引用発明では材料が特定されていない点。
[相違点3]
シーラント層について、本件補正発明では「直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含」むのに対し、引用発明では材料が特定されていない点。
[相違点4]
シーラント層について、本件補正発明では「厚みが、80μm以上150μm以下であ」るのに対し、引用発明では厚みが特定されていない点。
[相違点5]
本件補正発明では、第1基材層が「酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによるプラズマ前処理面を有し、前記プラズマ前処理面上に前記透明蒸着層を備え、前記混合ガスにおいて前記酸素ガスの混合比率が前記不活性ガスの混合比率よりも大きい」のに対し、引用発明では、基材層の蒸着層が設けられる側の面がプラズマ前処理面を有しない点。
(6)判断
ア 相違点1について
引用文献1の「蒸着層12は、式AlOX・・・で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜である。・・・X=1.0未満になると、着色が激しく、かつ、透明性に劣ることから、X=1.0以上のものを使用することが好ましい」(【0063】)との記載から、引用発明のアルミニウム酸化物からなる蒸着層は、透明蒸着層といえる。
そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。
また、引用発明の蒸着層を透明とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
引用文献1には、支持体の材料として、積層フィルムを支持し、強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、「延伸ポリアミド系樹脂層」を用いることが記載されている(【0134】)。
そうすると、引用発明に基づき相違点2に係る本件補正発明の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3について
引用文献2記載事項は、「基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムであり」、「シーラントフィルム」は、(a)「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン」、(b)「非植物由来の低密度ポリエチレン」、(c)「非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン」並びに(d)「添加剤」からなるものである(上記(3)イ)。
他方、引用発明も引用文献2記載事項と同様に、基材層がバイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含有するものであり、加えて、引用文献1にはシーラント層の材料としてバイオマス由来のポリエチレンを用いてもよいことが記載されており(【0109】)、シーラント層の材料として種々のポリエチレンの混合物を使用してもよいことも記載されている(【0108】)。
そうすると、引用発明と引用文献2記載事項は、植物由来ポリエチレンテレフタレートフィルムとシーラントフィルムを備える積層フィルムの技術である点で共通するものであり、引用文献1のシーラント層に用いる材料の示唆に対応する引用文献2記載事項を参酌し、引用発明のシーラント層の材料として、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含むようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
引用文献1には、シーラント層の厚みについて「30~130μmがより好ましい」(【0124】)ことが記載されている。
そうすると、引用発明に基づき相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
オ 相違点5について
引用文献1には、「基材層11の表面に、予め、不活性ガスによるプラズマ処理を施しておいてもよい。これにより、・・・基材層11と蒸着層12との接着性などを向上させ」(【0069】)ることに加えて、「プラズマ処理方法としては、・・・不活性ガスをプラズマガスとして使用し、プラズマ表面処理法で基材層11の表面をプラズマ処理することができる。なお、プラズマガスとしては、上記の不活性ガスに、さらに酸素ガスを添加した混合ガスを使用してもよい。」(【0070】)と記載されている。
そうすると、引用発明において、基材層と蒸着層の密着性を向上させるために、基材層の蒸着層が設けられる面に不活性ガスと酸素ガスの混合ガスによるプラズマ前処理を行うことに、当業者にとって格別の創意は要しない。
そして、当該プラズマ前処理の具体的な態様として、ポリエステル系樹脂の表面に蒸着膜を形成する前のプラズマ前処理に用いる混合ガスにおいて、酸素ガスの割合を不活性ガスの割合よりも大きくするという周知技術(上記(4)ウ)を参考にして、相違点5に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
カ さらに、相違点1~5を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
キ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年12月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2015-36208号公報
引用文献2:特開2013-176951号公報
3 引用文献
原査定の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明並びに引用文献2記載事項は、上記第2[理由]2(2)及び(3)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]1(1)において示した本件補正発明から、「プラズマ前処理面」が「前記酸素ガスの混合比率が前記不活性ガスの混合比率よりも大きい」「酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス」によるものであるとの限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2(6)で記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記第2[理由]2(5)に記載した相違点1~5のうち、周知技術に関係する相違点5の一部の事項が相違しないこととなる本願発明も、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-009539