特許拒絶査定不服審判
2022-008127
多段階ポリマー生成の生成を効果的に制御するための装置及び方法
- 審判番号
- 2022-008127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-511938外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月31日
- 審決日
- 2025年05月26日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヨコガワ フルエンス アナリティクス, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】小西 富雅
- 分類
- P18 .121-WZ (C08F) / P18 .537-WZ (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-511938「多段階ポリマー生成の生成を効果的に制御するための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 8日国際公開、WO2018/045231、令和 1年10月17日国内公表、特表2019-529610〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)8月31日(パリ条約による優先権主張 2016年(平成28年)8月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 4月24日 翻訳文の提出
令和2年 8月24日 上申書及び手続補正書の提出
令和3年 6月28日付け 拒絶理由通知書
同年12月 6日 意見書及び手続補正書の提出
令和4年 1月24日付け 拒絶査定
同年 5月31日 拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の 提出
同年 7月 6日付け 前置報告書
令和6年 2月29日付け 拒絶理由通知書
同年 5月31日 意見書及び手続補正書の提出
同年10月17日付け 拒絶理由通知書(最後)
令和7年 1月14日 意見書及び手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年1月14日にされた手続補正を却下する。
[理由]
令和7年1月14日にされた手続補正を、以下、「本件補正」という。
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法であって、
少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成することであって、前記少なくとも2つの段階の第1の段階及び第2の段階はそれぞれ第1のモード及び第2のモードのポリマーを生じ、前記第1のモード及び第2のモードの各モードのポリマーは独自の特性を有し、前記ポリマー反応は連続反応器を含む単一の反応容器で起こる前記生成すること、
前記第1の段階において前記第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること、
前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、第1の目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されること、
前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御すること、
前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること、
前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御すること
を含む前記方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年5月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法であって、
少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成することであって、前記少なくとも2つの段階は第1のモード及び第2のモードのポリマーを生じ、前記第1のモード及び第2のモードの各モードのポリマーは独自の特性を有し、前記ポリマー反応は単一の反応容器で起こる前記生成すること、
少なくとも1つの段階において前記第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること、
前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、第1の目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されること、
前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて、前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御すること、
第2のモードに関連する第2の目標軌道を判定すること、
前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御すること
を含む前記方法。」
2 本件補正の適否について
本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
(補正事項)
請求項1の「単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法」において、「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること」をさらに限定するように補正する。
上記補正事項は、マルチモーダルポリマーを生成する方法において、特定の工程を直列的に付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する
3 独立特許要件について
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2016/054138号(以下「引1」という。)、特表2009-508995号公報(以下「引2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)引1に記載された事項及び引1に記載された発明
ア 引1に記載された事項
引1は英文であるから、摘記に際して、当審合議体による抄訳を示す。また、原文にない下線は、当審合議体による。
「【請求項1】
重合反応プロセスの1つ以上の内容物を収容するための反応器(reactor)と、
該反応器から1つ以上の内容物のある量を自動的かつ連続的に抽出する手段と、
ストリーム中で前記1つ以上の抽出された化学成分を希釈及び/又は調整する手段と、
前記ストリームの中で連続的又は離散的な間隔で前記1つ以上の抽出された内容物の1つ以上のプロセス特性を測定及び計算する手段と、及び
1つ以上のプロセス制御変数の変化を指示して、重合反応プロセスの軌道を変更して目的特性を達成するプロセスコントローラと、を備える、装置。
【請求項2】
1つ以上の反応器、抽出する手段、希釈手段及び/又は調整する手段、並びに測定及び計算する手段が、重合の自動連続オンラインモニタリング(ACOMP)装置に組み込まれている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセスコントローラは支配的な速度論的及び関連する方程式を用いてプロセス変数の変更に起因するプロセス特性への影響を演算する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセスコントローラは前記1つ以上のプロセス制御変数を能動的に手動制御するためのインターフェースを備え、該インターフェースは1つ以上の操作可能な制御部を含み、各制御部は1つ以上のプロセス制御変数を制御するように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項5】
重合反応又は一連の重合反応を能動的に制御することができる請求項1に記載の装置。
【請求項6】
1つ以上のプロセス制御変数の変化に応答して、1つ以上の重合反応プロセス特性に関する1つ以上の所定の反応軌道に沿って制御が行われる請求項1に記載の装置。
・・・
【請求項8】
前記1つ以上の所定の反応軌道は計算された軌道を使用して決定される請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記1つ以上のプロセス変数は連続的又は離散的に試剤又は化学成分を反応器へ制御して添加すること、温度の変化、圧力の変化、又はそれらの任意の組合せを含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記重合反応プロセスのターゲット特性が、予め定められた反応プロセス軌道、ポリマー分子量、固有粘度、分子量分布、固有粘度分布、還元粘度分布、組成分布、反応速度、モノマーの変換率、コモノマーの変換率、コモノマーの組成、コモノマーのドリフト、微粒子の存在、又はそれらの任意の組み合わせを含む請求項1に記載の装置。
・・・
【請求項16】
プロセス特性が、製造されたポリマーのモル質量に直接関係する請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセス特性のモル質量は累積重量平均モル質量、累積重量平均還元粘度、累積重量平均固有粘度、瞬時重量平均分子量Mw、瞬時重量平均還元粘度、瞬時重量平均固有粘度、分子量分布、還元粘度分布、及び固有粘度分布のいずれかを含む請求項16に記載の装置。
【請求項18】
反応容器(reactor vessel)内で重合反応プロセスを実施し、
前記反応容器から、単位時間当たりに重合反応プロセスの内容物の規定量を連続的に抽出し、
前記重合反応プロセスの抽出された内容物を希釈及び/又は調整し、
前記重合反応プロセスの希釈及び/又は調整された、抽出された内容物の1つ以上の特性を、連続的に又は間欠的に、測定し、及び
手動又は自動コントローラを介して、前記1つ以上の測定された特性に応じて1つ以上のプロセス変数を変更して、前記重合反応プロセスの軌道を変更して目的特性を達成する、方法。
【請求項19】
ステップの1つ以上がACOMPシステムを使用して実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
能動的制御を用いて、1つ以上の重合反応プロセス特性のための1つ以上の所定の反応軌道に沿って反応が実行される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
プロセス変数を変更することによって測定された特性がどのように変化しうるかを決定するために、手動又は自動コントローラ内で計算が行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
1つ以上のプロセス制御変数の変化が、モデルに依存しない手動能動的アプローチのもとで生じる、請求項18に記載の方法。
・・・
【請求項24】
1つ以上のプロセス制御変数における変化が、モデルに依存しない自動アプローチのもとで生じる、請求項18に記載の方法。
・・・
【請求項26】
プロセス特性が、製造されているポリマーのモル質量に直接関係する、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記モル質量が、累積重量平均モル質量、累積重量平還元粘度、累積重量平均固有粘度、瞬時重量平均モル質量Mw、瞬時重量平均還元粘度、瞬時重量平均固有粘度、分子量分布、還元粘度分布、及び固有粘度分布のいずれかを含む、請求項26に記載の方法。」
「[0026]
ポリマー反応及びプロセスをほぼリアルタイムで監視するために、過去17年間にわたって重合反応の自動連続オンラインモニタリング(ACOMP)のためのシステム及び方法が開発されている。非常に広い範囲の重合反応、反応器及びプロセスが、ACOMPの方法及びシステムで首尾よく監視されている。・・・ACOMPシステム及び本明細書に開示される主題が適用され得るポリマーの種類の例には、以下の化学及び誘導体が含まれるが、これらに限定されない:ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリレート、メタクリレート、エタクリレートなど、ポリ(スチレン)、ポリカーボネート、ポリ(ビニルアルコール)、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどのホモポリマー及びコポリマー)、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアミン、ポリ塩化ビニル並びにグアー、キサンタン、アラビアゴム、アルギン酸塩、シゾフィランなどの天然物、更には酵素を含むタンパク質、並びにコラーゲン、アクチン、及びミオシンなどの構造タンパク質が挙げられる。
[0027]
現在開示されている主題の特に重要な適用分野は、「スマートポリマー」とも呼ばれる刺激応答性ポリマーの成長分野である。スマートポリマーは、熱、光及び他の放射線、圧力、並びにpH、イオン強度、特定のイオン及び他の分子の存在、コロイド又はポリマーなどの溶液条件などの刺激に応答するポリマーである。刺激に対する例示的な応答は、ミセル化、乳化、相変化、コンフォメーション変化、自己回復、導体から半導体への遷移、及び刺激に対する他の同様の応答であり得るが、これらに限定されない。スマートポリマーは目的にあった方法で薬物を捕捉及び放出するために使用することができる。これはまた、他の医薬品やナノ医薬品の用途や、刺激応答性のコーティングの形成、又は当業者が想定できるその他適切な用途に使用できる。刺激応答性のコーティングはガラス、光学、電子機器、光電子、海洋用途、油の封入に適用できる。開発されているスマートポリマー及びオリゴマーのタイプには次のものが含まれる。即ち、デンドリマー、スターポリマー、高度に網目状及び超分岐ポリマー、キャビタンド、非共有結合ポリマー、コポリマー及びブロックコポリマー、ポリマー、コポリマー又はナノ粒子、ポリマー、コポリマーがグラフトされるブロックコポリマーである。更には、生物学的ポリマー又はナノコンポジットに結合したブロックコポリマー等である。このような刺激応答ポリマー及びオリゴマーに使用される重合プロセスは、従来のポリマーに比べてしばしば非常に複雑である。現在開示されている発明の対象は刺激応答性ポリマーの合成プロセスのアクティブコントロールに使用でき、その結果、重合反応の工業的規模へのスケールアップを可能にする。21世紀以降の新素材の多くは、刺激応答性ポリマーを使用し、このポリマーは広大な世界のポリマー製造業界のシェアを獲得することが想定される。」
「[0033]
予測制御のためのACOMP法の上述の使用は、受動的反応制御のための新しい可能性を開拓したが、反応の能動的フィードバック制御のためのこのようなシステム及び方法の使用については詳しく述べられていない。
[0034]
この技術の目的は、ACOMP法及びそのシステムと組み合わせられたモデルフリー及びモデル依存の方法を含む手動又は自動方法のいずれかを使用して、重合反応の軌跡を能動的に制御することにある。これにより最終製品の品質及び特性を制御する。プロセス制御のために開発された経験的及び化学的モデルの数多くのものとは異なり、この技術では、反応及びポリマー特性に関する連続的なACOMPデータを重合プロセス軌道に直接関連付けることによって、反応及びプロセス制御が行われる。ACOMP法又はこのシステムを用いた重合反応の手動による能動的制御又は自動的な能動的制御のいずれの前例もない。」
「[0037]
「プロセス特性」とはプロセス容器中の試剤の瞬時濃度などの特性をいい、試剤にはモノマー、コモノマー、ポリマー、開始剤、分枝及び架橋剤、触媒、などが含まれ(これに限定されるものではない)、またプロセスや反応の進行程度や完成度も指す。「プロセス特性」はまた重合依存特性も意味する。即ち、重量平均分子量Mwの平均、累積及び瞬時値、還元及び固有粘度としてのηr及び[η]、コポリマー組成及び分子量分布の累積値(MWD)、MWDの多分散指数(polydispersity indices)、還元粘度又は固有粘度分布、分岐及び架橋指数を含む。このプロセスの究極の目標は、所望の又は目標とされた「最終製品の特性」を作り出すことである。最終製品の特性は、上記の特性の全てに適用されるが、これに限定されない。本発明の文脈において、プロセス特性は、プロセス容器からの連続希釈されたサンプル流を測定する検出器によって得られる。これらの特性は、検出器から直接得ることができ、例えば、これに限定されるものではないが、連続又はデジタル出力電圧、散乱、吸収、圧力などに関する符号化されたデータであり、場合によっては、特性を得るため検出された情報はコンピューティングデバイスに送られて自動的にコンピュータ処理される。実施例では、限定するものではないが、光散乱強度検出を用いてポリマーのMwを得ている。この光散乱強度検出は、電磁波吸収(紫外、可視、赤外線、マイクロ波)、屈折率測定、導電率、及び偏光測定(これに限定するものではないが)を介した濃度検出を伴っている。濃度検出器からのデータは差圧変換器又は他の装置に送られる。これらの装置は、流動下の流体粘度を測定でき、その結果、ポリマーの還元粘度又は固有粘度を得ることができる。
[0038]
「プロセス軌道(process trajectory)」は、プロセス特性の時間的進行過程(time course)である。例えば、限定するものではないが、Mw対時間のプロットは、プロセスのMwの軌道である。時間に対するモノマー又はコモノマーの変換率のプロットも、プロセスの軌跡の例である。生成物の蓄積は一般にプロセスの時間経過とともに増加するので、時間の代わりに変換率の軌跡又は生成物の量を独立変数として使用することも可能である。そのような場合には、例えば、限定されないが、Mw対変換率、又はMw対生成物の量若しくは濃度をプロットすることが可能である。したがって、制御決定は、時間依存軌道だけでなく、変換率依存軌道、最終生成物濃度軌道などに基づいてもよい。
[0039]
「プロセス変数」は、反応の進行に影響を及ぼすことができる条件又は反応物質である。プロセス「変数」には、これに限定されるものではないが、温度、圧力、撹拌のタイプ及び速度、並びにモノマー、コモノマー、開始剤、触媒、連鎖移動剤、架橋剤、分枝剤、緩和剤(quenching agent)、界面活性剤、塩、pH、イオン強度、クエンチング剤、コロイド成分、ガス、溶媒などの量及び濃度が挙げられる。「プロセス変数」は、しばしば「プロセスパラメータ」と同義語として使用され、また、「制御変数」として使用されることもある。
[0040]
ここでの「制御」とは、プロセス変数(又はプロセスパラメータ又は制御変数)を変更することによって反応の軌道を変更することを意味する。これは、例えば、ポンプやガス流等を使って、これに限定されるものではないが、反応物質を反応器に導入すること、温度や圧力を変化させること、その他により行われる。
[0041]
「能動的制御」は、連続的な反応器の抽出及び希釈に基づくモニタリングから得られた情報に基づいて、プロセス軌道及びプロセス特性の好ましい変化を引き起こすために、プロセス中にプロセスの制御変数を変更することを指す。」
「[0047]
本開示の主題を適用することができる3つの主な反応器(リアクタ)の種類がある。 3つの主な反応器の種類は、バッチ式反応器、セミバッチ式反応器、及び連続反応器である。
・・・
[0051]
連続反応器では定常状態に達し、この定常状態では時間に対してMWDや固有粘度分布などのポリマーの定常特性が一定になる。定常状態では、ポリマーに対するモノマーの比は通常は一定であり、触媒、開始剤、及び分枝剤などの他の試薬(これに限定されない)に対しても同じである。現在記載されている主題は定常状態での操作をより確実にできるものであり、これは、プロセス特性からのズレに応じて試剤の供給を修正することにより行われる。例えばこのプロセス特性のズレとして、以下に限定されるものではないが、Mw、MWD、還元又は固有の粘度、モノマーのレベル若しくはコモノマーの変換率におけるこれらの定常状態操作中の定常状態からのズレが挙げられる。さらに、本発明は、1つの定常状態から別の定常状態に変化するときに、より効率的に定常状態を確立するために使用することができる。ポリマー製造業界では、定常状態条件は通常、ある生成物を生産し、別の定常状態への切替えは、通常、別のタイプ又はグレードの生成物への切替えに対応する。このような切替えは、通常数時間から数十時間かかる。次のプロセスの段階が準備されているときには、プロセス容器の内容物は、限定されるものではないが、ポンプによって他のプロセス容器へ移すことができる。次のプロセス段階が生じるポンプによって、他のプロセス容器に移されてもよい。
[0052]
重合反応プロセスを能動的に制御するために使用される手順の説明は、以下に概説され、7つの工程を含むことができる。以下の手順は、バッチ式、セミバッチ式及び連続式の反応器に適用されることに留意されたい。バッチ式反応器の場合、温度及び緩和剤のみが主要なプロセス制御変数である。他の場合には、撹拌又は撹拌速度が、追加の又は独立したプロセス制御変数であり得る。セミバッチ式反応器では、試剤の添加がプロセス制御変数となり得、更には、温度、緩和剤、及び撹拌又は撹拌の速度もなり得る。重合反応プロセスを能動的に制御する手順は、以下の通りである:
[0053]
最初に、所望のポリマー生成物特性を得るために、それぞれの関連する重合プロセス特性についての反応及びプロセス軌道が確立される。この軌道の確立は各軌道の予備計算、軌道の非計算的推定によりなされ、更には、既知の、確立された手順の、「レシピ」の、類似の反応軌道の履歴知識による、又は許容されるポリマー生成物を生じさせる反応の軌道の知識によりなされる。この工程では、所望の最終生成物を製造するのに必要な重合のプロセス工程に最終的に所望されるポリマー特性を関連付けるための多くのオフライン法が存在する。マスバランスと速度方程式は、速度論的連鎖長、連鎖移動反応、及び他のプロセスの式とともに数値的に解かれてプロセス経路と最終製品を示す。重合プロセスにおける最終工程の所望のポリマー特性をプロセス工程に関連付けるための市販のソフトウェア製品もある。例えば、GPROMS(登録商標)(http://www.psenterprise.com/gproms.html)及びAspentech (http//aspentech.com/)である。
[0054]
定常状態の連続反応器の場合、各プロセス特性の軌道は特に単純であり、すなわち、各特性は時間的に一定である(すなわち、時間に対して軌道は水平線である)。1つの定常状態から別の定常状態への変化がある場合、各プロセス特性を第1定常状態から次の定常状態にする時間依存軌道が存在する。このような軌跡は、様々な計算方法によってオフラインで最適化され、1つの定常状態から別の定常状態に変化する際の時間及び原料消費量において最も効率的な軌道を提供する。
[0055]
第2に、反応の各瞬間、又は反応中の規定された間隔で、関連する反応及びプロセス特性が、ACOMP法を用いて測定される。当該関連する反応及びプロセス特性は、例えば、Mw、MWD、モノマー変換、瞬間平均コモノマー組成、固有粘度、及びモノマー中の数百又は数百ppm以下の残留モノマーである。典型的なACOMPサンプリングレートは、通常、ポイントごとに連続的かつ微分可能であると考えられるほど滑らかなデータを生成する。連続型データを生成するために必要な実際のサンプリング速度は、観察対象変数における測定可能な差異の間に複数のサンプル点が存在することを必要とする。例えば、モノマーの分別転化率(fractional monomer conversion)は0~1の範囲であり、その結果、例えば1,000ポイントが通常連続型データに提供される。1000秒間持続する反応では、1Hzのサンプリングレートでこの分解能が得られる。サンプリングをどれくらい速く、遅くするかという基本的な制限はないが、サンプリングは通常、ミリ秒から1分当たりの範囲である。現在開示されている主題において、データは連続型である必要はなく、連続型データがしばしば好ましいことがあるが、断続的データも制御の目的で使用できることを強調することが重要である。
[0056]
第3に、反応及びプロセス特性の値は、確立された理想的な軌道(1つの重合プロセス特性を制御するもの)及び軌道群(1又はそれ以上の重合プロセス特性を制御する場合)に従って得られるべきものと比較される。
[0057]
第4に、理想的な軌道と実際のACOMP観察軌道との間に差異がある場合、手動又は自動アプローチが利用されるかどうかに応じて、以下のステップが取られる。
i)モデルフリー、又はモデルに依存した、手動の能動的なアプローチ。
現在の軌道を理想的な軌道又は所望の軌道に近づけることが知られているプロセス変数の1つ又は複数の変更又は増分が行われる。変更又は増分は、経験的に(モデルフリー)又はモデルによって(モデルに依存して)行うことができる。プロセス変数の変更はヒトによるコントロールで行うことができ、このプロセス変数として、例えば、これに限定されるものではないが、処理容器内に試剤又は他の化学成分を移したり、温度、撹拌又は圧力を変化させることが挙げられる。
ii)モデルフリーの自動アプローチ。
現在の軌道又は軌道を所望の軌道に近づけることが知られているプロセス変数の1つ又は複数の変化又は増分が行われる。自動的に変更又は増分される変更又は増分の大きさは、及び変更若しくは増分の対象は、選択アルゴリズムに従って決定され、自動機構によって実行される。プロセス変数の変化は経験的自動コントローラで行うことができ、このプロセス変数として、例えば、これに限定されるものではないが、プロセス容器内に試剤又は他の化学成分を移したり、温度、攪拌又は圧力を変化させたりすることが挙げられる。
iii)モデルに依存した自動アプローチ。
反応の支配的方程式やポリマー特性を使用して計算装置によって分析計算が行われ、1つ又は複数の制御可能なプロセスパラメータに対してどのような変化(単数又は複数)が行われなければならないかが決定され、現在の軌道と次の時間間隔にわたる理想的又は所望の軌道との差が修正される。プロセスが分析的関数で既述されるとき、この計算は、数値的に、又は解析的に実行される。必要なプロセスパラメータの変更の計算が行われると、1つ又は複数のプロセスパラメータの変更が自動化されたメカニズムによって実行される。変更は、プロセスコントローラでプロセス変数を変更することによって行うことができ、このプロセス変数として、これに限定されるものではないが、プロセス容器内に試剤又は他の化学成分を移したり、温度、攪拌又は圧力を変化させたりすることが挙げられる。
iv)手順は、i)~iii)のいずれかが完了した後にステップ5に進む。
[0058]
第5に、軌道変化の効果が所定の時間間隔に渡って観測され、1つ又は複数のプロセス特性の変化が現在の軌道を理想的なそれに収束させているか否かを評価する。
[0059]
第6に、反応が理想的な又は所望の軌道に近い状態になるように維持し、かつ反応が所望の完了状態に達するまで上記ステップ1~5が繰り返される。その後、反応は終了する。
[0060]
最後に、手動によるか、経験的自動化によるか、又はモデル依存性計算アプローチによるかに関係なく、観測されかつ制御されたそれぞれの反応につき、反応経路、変更されたプロセス変数、及び他の全ての関連するACOMP及び反応パラメータが保存されて使用される。これによりインテリジェントな機械学習アルゴリズムが訓練される。このアルゴリズムは、以前に実行された反応又は実質的に類似な反応のインテリジェントで最適化され、かつ自動化された制御を提供するシナリオやアプローチの組合せを、ひとりでに、使うことができる。
[0061]
上記手順において、プロセス変数の「変化」(例えば、添加された試剤の量、又は温度又は圧力)は、任意の大きさであり得るが、「増加」は、プロセス変数が確立されそしてそれが現在の値から増えるように変化していることを指す。増加は連続的であってもよい。例えば、試剤は、反応プロセス特性軌道で起こる変化に対応する時間にわたって連続的に流すことができ、又は反応プロセス特性軌道で起こる変化に対応する時間にわたって連続的に温度を変化させることができる。あるいは、増加は離散的であってもよい。例えば、一定量の試剤を短時間に若しくは迅速に反応器へ添加することができる。例えば反応器に試薬を迅速に注入することなどによる。」
「[00106]
別の例では、所望の分子量分布(MWD)を生成するために時間の経過とともにMw(t)を変化させることが望ましい場合がある。いくつかのポリマーでは、顕著な多分散性を有することが望ましい。すなわち、いくつかのポリマーは、押出及び加工性、又は機械的特性などの特性に好都合に影響し得る分子量の範囲を示すことが望ましい。場合によっては、バイモーダル又はマルチモーダルのMWDが望ましい。どのMWDが望まれようとも、反応が始まる前に、軌道Mw(t)が計算される。計算されたMw(t)軌跡は所望のMWDを生じ、Mw(t)軌道を達成するための近似スキームを確立することができる。これにより、モノマー及び/又は開始剤の時間依存流速を制御する。反応が進むにつれて、Mw(t)軌道から指定量を超える偏差があるときはいつでも、既述のモード(モデルフリー又はモデル依存能動的手動モード、又はモデル依存能動的自動モード)のいずれかがその理想的な軌道又は所望の軌道に向けてMw(t)を調整するために使用される。指定された偏差は、例えば最大5%であり得る。あるいは、指定された偏差は、0.1%以下、あるいは1%以下、あるいは2.5%以下、あるいは10%以下であってもよい。モデル依存モードでは、目標軌道に向かって軌道を変更するためにプロセス変数のどの増分が必要であるかを決定する計算が行われる。」
「[00110]
図4は、例示的な重合反応プロセス制御システム400を示す模式図である。制御システム400は、ACOMP反応器制御インターフェース401及びACOMP分析制御インターフェース402を含む。少なくとも1つの実施形態では、ACOMP反応器制御インターフェース401及びACOMP分析制御インターフェース402は、コンピューティングデバイス(図示せず)に結合されたプログラマブルロジックコントローラ(PLC)制御システム(図示せず)によって制御される。PLC制御システムは、例えば、Allen Bradley / Rockwell ControlLogix PLC制御システム(Rockwell Automation、Inc.、Milwaukee、WI、USA)とすることができる。コンピューティングデバイスは、デスクトップ又はラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット、又は他の同様のデバイスであってもよい。コンピューティングデバイスは、プロセス制御変数及び制御システム400のコンポーネントの視覚化及び制御を可能にすることができる。
[00111]
ACOMP反応器制御インターフェース401は、制御システム400の様々な構成要素を制御することができる。1つのコンポーネントは、反応器410である。反応器410は、1.5Lm 316Lステンレス鋼ジャケット付き反応器とすることができ、6ポートのボルト・オン・リッドを有し、このリッド(蓋)は取り付けたものにモノマー、開始剤又は連鎖移動剤のようなプロセス供給材料の供給を可能とする。反応器の内容物の温度を正確に監視し制御することができるように、水中ステンレス鋼温度プローブ(図示せず)を反応器の蓋の上部を通して取り付けることができる。この反応器の蓋はミキサ440を取付けることができる。ミキサ440は反応器410の外側に配置される。このミキサ440として、例えば、IKAユーロスターオーバーヘッドミキサー(IKA(登録商標)Works、Inc.、Wilmingtion、NC、USA)を用いることができる。」
「[00124]
ACOMPシステムは、Advanced Polymer Monitoring Technologies、Inc.(New Orleans、Louisiana)により図4に実質的に記載されているように設計され、構築された。」
「実施例4 -連続反応制御
[00144]
本発明は、連続反応器に適用することができる。これを説明するために、Grassl and Reedの「Online polymerization monitoring in a continuous tank reactor」、Macromolecular Chemistry and Physics、Vol.203、pp.586-597、2002を参照されたい。そしてその内容は参照により本明細書に組み込まれる。図13は、水中のフリーラジカル反応によってポリアクリルアミドを製造する連続実験室規模の反応器の分別モノマー転化率f(左手y軸)及び重量平均分子量Mw(右手y軸)を示す図である。10000秒(図では1×104秒と記載)で、fとMwの両方が定常状態になり、これらのプロセス特性のそれぞれが一定であり、時間に対して水平線として測定されたことを意味する。10,000~17,000秒の間に、温度変動が反応器に導入された。温度変動は、一番上のバーの温度低下として見ることができる。温度変化の影響は、f及びMwに直ちに見られる。上述したように、フリーラジカルを生成する開始剤の減衰速度は、温度kd= ae-bTに指数関数的に敏感である。したがって、反応速度が遅くなり、fが減少し、フリーラジカルに対するモノマーの比である速度論的鎖長が増加しなければならない。fにおけるそれぞれの減少及びMwにおける増加は、図13に見ることができる。17,000~24,500秒の間に、開始剤の濃度を、開始剤の量を増加させることによって変化させる。結果としてフリーラジカル濃度が増加することにより、fは増加し、Mwは減少する。
[00145]
現在開示されている主題が利用可能になればその時点で、温度、開始剤供給、及びモノマー濃度を積極的に制御することによって、元の定常状態からの逸脱を回避できる。この回避は、これらの制御変数を使用して反応を定常状態に戻すことによって手動で達成することができるか、又は上記の開示された式を使用して達成できる。f及びMwの増分変化はプロセス変数の増分変化に対応するとみなされる。このプロセス変数の増分変化は重合反応プロセスを定常状態にするために必要であり、この定常状態では理想的な若しくは求められる反応軌道となる。これらの計算された値は、プロセス変数の変化を手動又は自動で行うために使用される。」
「
[図:0001428397000001.jpg]
」
「
[図:0001428397000002.jpg]
」
イ 引1の実施例4に記載された論文に記載された事項
Bruno Grassl, Wayne F. Reed, “Online polymerization monitoring in a continuous tank reactor”, Macromolecular Chemistry and Physics, Vol. 203, pp.586-597,2002
「
[図:0001428397000003.jpg]
(当審抄訳:
オンライン監視技術により、重合反応中にモノマー変換率f、重量平均分子量Mw、及び還元粘度ηrを継続的に監視できるものであり、これを均一連続撹拌タンク反応器(HCSTR)に採用してフロー及び動的パラメータの機能としてf、Mw、ηrに関する定量予測を検証し、動的パラメータ自体を決定し、反応器内の混合の理想状態を確認し、供給及び反応器の変動の影響を評価し、完全な連続した管状型反応器となりうる。)」(第586頁)
ウ 引1に記載された発明
引1の請求項18における「特性」、請求項26における「プロセス特性」において、請求項26では「プロセス特性」が「製造されているポリマーのモル質量に直接関係する」ものであり、その例として重量平均分子量などの重合依存特性が挙げられている([0037])から、上記「特性」が重量平均分子量Mwであるときには、上記「特性」と上記「プロセス特性」とは同義であるといえる。
このことを踏まえて、引1の請求項26における方法に着目し、ポリマーの製造方法として整理すると、引1には、以下の発明が記載されていると認める。
「反応容器内で重合反応プロセスを実施し、
前記反応容器から、単位時間当たりに重合反応プロセスの内容物の規定量を連続的に抽出し、
前記重合反応プロセスの抽出された内容物を希釈及び/又は調整し、
前記重合反応プロセスの希釈及び/又は調整された、抽出された内容物の1つ以上のプロセス特性を、連続的に又は間欠的に、測定し、及び
手動又は自動コントローラを介して、前記1つ以上の測定されたプロセス特性に応じて1つ以上のプロセス変数を変更して、前記重合反応プロセスの軌道を変更して目的特性を達成し、
前記プロセス特性が、製造されているポリマーのモル質量に直接関係する、ポリマーの製造方法。」(以下、「引1発明」という。)
(2)引2に記載された事項(下線は当審合議体による。)
「【0035】バイモダルポリマーも以下の例11に示されるように、本発明に有益であるが、ここでの例は、本発明が、バイモダルポリエチレンで実施することのできる方法に限定されるものではない。「バイモダル」は、その一方が相対的に低分子量であり、その他方が相対的に高分子量である少なくとも2つの成分を含むポリマーを一般的に指す。このようなバイモダル樹脂は、異なる分子量の2種のポリマーをブレンドすることにより製造されてもよく若しくは代替として、通常多段階製造プロセスによりなされてもよい。例えば、このようなバイモダルポリマーは、触媒系或いは2以上の異なる触媒部位を有する混合物を使用する単一の反応器で、又は段階的プロセスでの多段階反応器により製造される。樹脂特性を調製するために、コモノマーがバイモダルポリエチレンに添加されることもある。コモノマーは、低分子量成分若しくは高分子量成分に添加することができる。最少量のコモノマーが、低分子量成分に添加することが望ましいこともある。」
(3)本件補正発明と引1発明との対比
本件補正発明の「連続反応器を含む単一の反応容器」は、その後段において「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替え」」との記載があることから、「連続反応器」は反応器としての特性を示している(バッチ式反応器とは異なる)といえる。それゆえ、上記「連続反応器を含む単一の反応容器」を「連続反応器である単一の反応容器」と解して、以下に検討する。
ア 引1発明の「反応容器」は、本件補正発明の「反応容器」に相当する。
イ 引1発明の「反応容器内で重合反応プロセスを実施」する「ポリマーの製造方法」と、本件補正発明の「単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法」とは、「反応容器でポリマーを生成する方法」である限りにおいて一致する。
ウ 引1発明の「プロセス特性」は、「製造されているポリマーのモル質量に直接関係する」ものであり、本件補正発明の「反応特性」が分子量等を意図するものである(本願明細書の段落【0024】)から、引1発明の「プロセス特性」は、本件補正発明の「反応特性」に相当する。
エ 引1発明の「前記反応容器から、単位時間当たりに重合反応プロセスの内容物の規定量を連続的に抽出し、前記重合反応プロセスの抽出された内容物を希釈及び/又は調整し、前記重合反応プロセスの希釈された及び/又は調整された、抽出された内容物の1つ以上のプロセス特性を、連続的に又は間欠的に、測定」することにおいて、上記「プロセス特性」は監視対象である。
そうすると、引1発明の「前記反応容器から、単位時間当たりに重合反応プロセスの内容物の規定量を連続的に抽出し、前記重合反応プロセスの抽出された内容物を希釈及び/又は調整し、前記重合反応プロセスの希釈された及び/又は調整された、抽出された内容物の1つ以上のプロセス特性を、連続的に又は間欠的に、測定」することと、本件補正発明の「第1の段階において」「第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視する」こととは、「ポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視する」限りにおいて一致する。
オ 引1発明の「プロセス変数」は、引1の段落[0039]によると、反応の進行に影響を及ぼすことができる条件又は反応物質であって、温度、連鎖移動剤、開始剤等を意図しており、本件補正発明の「プロセス制御変数」は、本願明細書の段落【0024】によると、分子量等の反応特性の軌道の制御において、温度、連鎖移動剤、触媒等の少なくとも1つを反応器に混合する、「反応制御変数」とも呼ばれる「プロセス制御変数」によって制御できることが示されていることから、引1発明の「プロセス変数」は、本件補正発明の「プロセス制御変数」に相当する。
カ 引1には、連続反応器に適用される重合反応プロセスを能動的に制御するために使用される手順があり、その手順には、反応及びプロセス特性の値が確立された理想的な軌道(1つの重合プロセス特性を制御するもの)及び軌道群(1又はそれ以上の重合プロセス特性を制御する場合)に従って得られるものと比較し、理想的な軌道と実際のACOMP観察軌道との間に差異がある場合、手動又は自動アプローチでプロセス変数を変更し、軌道変化の効果が所定の時間間隔に渡って観測され、1つ又は複数のプロセス特性の変化が現在の軌道を理想的な軌道に収束しているかを評価することが記載されている([0052]~[0060])。
これらの手順を踏まえると、引1発明の「手動又は自動コントローラを介して、前記1つ以上の測定されたプロセス特性に応じて1つ以上のプロセス変数を変更して、前記重合反応プロセスの軌道を変更して目的特性を達成」することは、重合反応プロセスを能動的に制御するものといえるから、ポリマー反応中の「1つ以上の測定されたプロセス特性」の監視を通して、「重合反応プロセスの軌道」が予定どおりであるか否かを判定し、「1つ以上のプロセス変数」を変更して、「重合反応プロセスの軌道」を修正して、「目的特性」となるように積極的に調整するものである。
そうすると、引1発明の「手動又は自動コントローラを介して、前記1つ以上の測定されたプロセス特性に応じて1つ以上のプロセス変数を変更して、前記重合反応プロセスの軌道を変更して目的特性を達成」することと、本件補正発明の「前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、第1の目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されること、前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御する」こととは、「少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されること」、「少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって」「ポリマーの発展を能動的に制御する」限りにおいて一致する。
以上から、本件補正発明と引1発明とは、
「反応容器でポリマーを生成する方法であって、
前記ポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること、
前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されること、
少なくとも1つでのポリマー反応の間に、前記少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって前記ポリマーの発展を能動的に制御すること、
を含む前記方法。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件補正発明は、「連続反応器を含む単一の反応容器」「でマルチモーダルポリマーを生成する方法」であり、「少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成する」方法であるのに対し、引1発明は、そのような特定がない点
<相違点2>
本件補正発明は、「前記少なくとも2つの段階の第1の段階及び第2の段階はそれぞれ第1のモード及び第2のモードのポリマーを生じ、前記第1のモード及び第2のモードの各モードのポリマーは独自の特性を有」するのに対し、引1発明は、そのような特定がない点
<相違点3>
ポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視することに関し、本件補正発明は、「第1の段階において」「第1のモードのポリマー」を監視するのに対し、引1発明は、「重合反応プロセスの希釈及び/又は調整された、抽出された内容物」を監視する点
<相違点4>
少なくとも1つの監視された反応特性に基づいて反応軌道を判定することであって、複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正されることに関し、本件補正発明は、「複数のプロセス制御変数の少なくとも1つが、第1の目標軌道をたどるために前記反応軌道に基づいて修正される」ものであり、「少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に」、「プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御する」のに対し、引1発明は、そのような特定がない点
<相違点5>
本件補正発明は、「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御する」ことを含むのに対し、引1発明は、そのような特定がない点
(4)検討
ア 相違点1及び相違点2について
相違点1及び相違点2は、連続反応器である単一の反応容器を用いて、多段階でポリマー反応を行うものであるから、併せて検討する。
(ア)引1には、いくつかのポリマーでは、顕著な多分散性を有することが望ましく、押出及び加工性、又は機械的特性などの特性に好都合に影響し得る分子量の範囲を示すことが望ましいこと、場合によっては、バイモーダル又はマルチモーダルのMWD(分子量分布)が望ましいこと、どのMWDが望まれようとも、反応が始まる前に、軌道Mw(t)が計算され、計算されたMw(t)軌跡は所望のMWDを生じ、Mw(t)軌道を達成するための近似スキームを確立することができることにより、モノマー及び/又は開始剤の時間依存流速を制御すること([00106])、ステップの1つ以上がACOMPシステムを使用して実施されること(請求項19)、能動的制御を用いて、1つ以上の重合反応プロセス特性のための1つ以上の所定の反応軌道に沿って反応が実行されること(請求項20)、ポリマー反応及びプロセスをほぼリアルタイムで監視するために、重合反応の自動連続オンラインモニタリング(ACOMP)のためのシステム及び方法であって、非常に広い範囲の重合反応及びプロセスがACOMPの方法及びシステムで首尾よく監視されること([0026])、ACOMP法及びそのシステムと組み合わせられたモデルフリー及びモデル依存の方法を含む手動又は自動方法のいずれかを使用して、重合反応の軌跡を能動的に制御すること([0034])、図4には、ACOMPシステムとして1つの反応容器と複数の制御すべき要素が示されており、図13には、温度、開始剤を変化させると、モノマー転化率fやMwが直ちに影響を受けることが示されている。この図13からは、温度や開始剤によって影響を受けた後には、見かけ上ではあるものの、バイモーダル又はマルチモーダルポリマーの状態となっていることが読み取れる。
そして、引1には、反応器の種類として連続反応器が挙げられること([0047])、連続反応器を1つの定常状態から別の定常状態に変化するときに、より効率的に定常状態を確立するために使用できること([0051])、定常状態の連続反応器の場合、1つの定常状態から別の定常状態への変化がある場合、各プロセス特性を第1定常状態から次の定常状態にする時間依存軌道が存在すること([0054])が記載されている。
さらに、引1の実施例4には、連続反応制御と題して、連続反応器に適用することが記載され、Reed(当審注:本願の発明者である。)らの論文の内容を組み込むことが記載されている。上記論文(上記(1)イ)には、オンライン監視技術により、重合反応中にモノマー変換率f、重量平均分子量Mw、及び還元粘度ηrを継続的に監視できるものであり、これを均一連続撹拌タンク反応器(HCSTR)に採用してフロー及び動的パラメータの機能としてf、Mw、ηrに関する定量予測を検証し、動的パラメータ自体を決定し、反応器内の混合の理想状態を確認し、供給及び反応器の変動の影響を評価し、完全な連続した管状型反応器となりうることが記載され、HCSTR及びオンライン監視システムの概略図が示されている(第586頁)。上記概略図は、オンラインで監視をしつつ、連続反応器である単一の反応容器を用いて重合反応を行うものであることが示されており、これは、引1の実施例4で用いた連続反応器のことであると解されるところ、この連続反応器は、引1の請求項19、20、段落[0026]からみて、ACOMPシステムに該当しうるものといえる。
そうすると、これらの記載及び開示によれば、ポリマー反応及びプロセスをほぼリアルタイムで監視するために、重合反応の自動連続オンラインモニタリング(ACOMP)というシステム及び方法があり、該ACOMPは、モノマー、開始剤又は連鎖移動剤等を供給可能な単一の反応容器を有するものであって、バイモーダル又はマルチモーダルポリマーのような、多分散性を有するMWDとなるように、モノマー及び開始剤の投入量を調整できること(言い換えると「バイモーダル又はマルチモーダルポリマーを、多段階で、単一の反応容器を用いて製造すること」)、重合反応には「連続反応器」を用いることができ、該連続反応器において1つの定常状態から別の定常状態へ能動的に制御できることが把握できる。
また、引2においても、バイモダルポリマー(「バイモーダルポリマー」と同義)を多段階製造プロセスにより得ること、例えば、このようなバイモーダルポリマーは、触媒系あるいは2以上の異なる触媒部位を有する混合物を使用する単一の反応器で製造されることが記載されていること(【0035】)を考慮すると、引1に記載された「バイモーダルポリマーを、多段階で、単一の反応容器を用いて製造すること」は、当業者が通常行っていた事項であったものといえる。
してみると、引1発明において、引1に記載されたACOMPシステムを用いて、「反応容器」を連続反応器である単一の反応容器とし、1つの定常状態から別の定常状態へ能動的に反応を制御することにより、多段階(すなわち「少なくとも2つの段階」)で、バイモーダルポリマー(本件補正発明の「マルチモーダルポリマー」に相当。本願明細書の段落【0017】参照)を製造し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
(イ)そして、上記「1つの定常状態から別の定常状態へ能動的に制御」することにより、1つの定常状態(第1の段階)において生成されるポリマー(第1のモードのポリマー)と、別の定常状態(第2の段階)において生成されるポリマー(第2のモードのポリマー)とは異なるポリマーとなり、プロセス特性がモル質量に直接関係するものであるから、「第1の段階」により生じた「第1のモードのポリマー」、「第2の段階」により生じた「第2のモードのポリマー」は、それぞれ独自の特性(モル質量)を有することになり、相違点2に係る本件補正発明の構成を有するものとなる。
(ウ)したがって、相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成は、引1発明並びに引1及び引2の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3~5について
相違点3~5は、連続反応器である単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法に関する一連の手順であるから、併せて検討する。
(ア)上記アのとおり、引1発明において、引1に記載されたACOMPシステムを用いて、「反応容器」を、連続反応器である単一の反応容器とし、1つの定常状態から別の定常状態へ能動的に反応を制御することにより、多段階で、バイモーダルポリマー(「第1のモードのポリマー」と「第2のモードのポリマー」)を製造し、相違点1に係る本件補正発明の構成とすれば、引1発明の「重合反応プロセスの希釈及び/又は調整された、抽出された内容物」を監視することは、おのずと、「第1の段階において」「第1のモードのポリマー」を監視すること(相違点3)となる。
(イ)そして、引1に記載されたACOMPシステムは、能動的制御として、連続反応器の抽出及び希釈に基づくモニタリングから得られた情報に基づいて、プロセス軌道及びプロセス特性の好ましい変化を引き起こすためにプロセス中にプロセス制御変数を変更すること([0041])、ACOMPシステムは図4に記載された構造を有し([00124])、反応器410に、モノマー、開始剤又は連鎖移動剤のようなプロセス供給材料の供給が可能であること([00111])が引1に記載されている。
したがって、上記アのとおり、引1発明において、引1に記載されたACOMPシステムを用いれば、「連続反応器の抽出及び希釈に基づくモニタリングから得られた情報」(本件補正発明の「反応軌道」に相当)に基づいて、「プロセス軌道及びプロセス特性の好ましい変化」(本件補正発明の「目標軌道」に相当)を引き起こすために、「能動制御として」「プロセス中にプロセスの制御変数を変更すること」(本件補正発明の「少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に」「プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御する」に相当)(相違点4)となる。
(ウ)さらに、引1には、ACOMPシステムに関し、定常状態の連続反応器の場合、1つの定常状態から別の定常状態への変化がある場合、各プロセス特性を第1定常状態から次の定常状態にする時間依存軌道が存在し、このような軌跡が様々な計算方法によってオフラインで最適化され、1つの定常状態から別の定常状態に変化する際の時間及び原料消費量において最も効率的な軌道を提供すること([0054])が記載されており、1つの定常状態(第1のモード)から別の定常状態(第2のモード)に変化するとき、プロセス特性の変化に追従するように軌道を最適化することが理解できる。
他方、本件補正発明の「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること」は、本件明細書の段落【0027】によると、連続反応器で、ある定常状態(第1の段階)から別の状態(第2の段階)へ移行(切替え)するとき、最適なクロスオーバーの目標軌道を判定することを意味していると認められる。
そうすると、引1の上記[0054]の記載から理解できる、「1つの定常状態(第1のモード)から別の定常状態(第2のモード)に変化するとき、プロセス特性の変化に追従するように軌道を最適化すること」は、実質的に、本件補正発明の「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること」を意味するものと解される。
してみると、上記アのとおり、引1発明において、引1に記載されたACOMPシステムを用いることにより、「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること、前記プロセス制御変数の前記少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御する」こと(相違点5)を、当業者であれば容易に想到し得ることができたものといえる。
(エ)したがって、相違点3~5は、引1発明並びに引1及び引2の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
(5)令和7年1月14日提出の意見書について
審判請求人は、令和7年1月14日提出の意見書において、引1及び引2には、「前記第1のモード(第1の段階での第1のモード)の前記発展から前記第2のモード(第2の段階での第2のモード)への前記連続反応器(連続反応器を含む)における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること(相違点5)」に関する記載も示唆もなく、引1の段落[0051]から、「連続反応器」における「切替え」の課題が認識できたとしても、上記相違点5に見られるような、本件補正発明の課題を解決する手段、即ち、本件補正発明の技術思想については記載も示唆もされていないことを意見する。
そこで検討する。
上記(4)イ(ウ)に示したように、引1の段落[0054]には、本願明細書(【0027】)と同様に、1つの定常状態から別の定常状態に変化する際に、オフラインで最適化され、最も効率的な軌道を提供することが記載されているから、本件補正発明の「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること」は実質的に記載又は示唆されていたものといえ、当該意見は妥当でない。
したがって、審判請求人の意見は採用できない。
(6)小括
よって、本件補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、請求項1~20に係る発明は、令和6年5月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(2)に記載のとおりのものである。
2 令和6年10月17日付け拒絶理由通知(最後)について
●理由1(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
具体的な理由の概要は以下のとおり。
(1)請求項1において、「少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成することであって、前記少なくとも2つの段階は第1のモード及び第2のモードのポリマーを生じ」、「少なくとも1つの段階において前記第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること」、「前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、・・・、前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御すること」、「第2のモードに関連する第2の目標軌道を判定すること」、「前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御すること」が特定されているところ、これらの特定における「段階」と「モード」の関係が定かでない。
(2)請求項1において、「単一の反応容器でマルチモーダルポリマーを生成する方法」であることが特定されている。
上記請求項1を引用する請求項18では、「制御要素によって、前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの連続反応器の切替えに関連する最適なクロスオーバーの目標軌道を判定する」ことが特定されている。
ここで、本願明細書には、「連続反応器は通常一定の等級のポリマー、すなわち規定された物理的及び化学的特性を有するポリマーを連続的に生成するために定常状態で動作する。」こと(【0027】)が記載されていることからすれば、該「連続反応器」でユニモーダルポリマーを製造していると解されるから、請求項18の「連続反応器」が、請求項1の「単一の反応容器」に該当するのか否か定かでない。
●理由2(進歩性)この出願の請求項1~20に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
引用文献1 国際公開第2016/054138号
引用文献2 特表2009-508995号公報
上記引用文献1、引用文献2は、上記第2 3における「引1」、「引2」と同じものであり、同様に「引1」、「引2」という。
3 判断
(1)理由1(明確性)について
上記「●理由1」のうち、本願発明に関係する(1)について検討する。
本願発明において、「少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成することであって、前記少なくとも2つの段階は第1のモード及び第2のモードのポリマーを生じ」、「少なくとも1つの段階において前記第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること」、「前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、・・・、前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御すること」、「第2のモードに関連する第2の目標軌道を判定すること」、「前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することにより前記第2のモードの前記発展を能動的に制御すること」が特定されている。
そして、本願発明は、さらに「少なくとも1つの段階において前記第1のモードのポリマーの少なくとも1つの反応特性を監視すること」との特定があることによって、「少なくとも2つの段階でポリマー反応を生起することによってマルチモーダルポリマーを生成することであって、・・・」中の「少なくとも2つの段階」を構成する各「段階」のいずれもが、「第1のモードのポリマー」と「第2のモードのポリマー」を生成することを意味しているとも、本来「第2モードのポリマー」を生成する「段階」に、「第1のモードのポリマー」を生成することを含みうるとも、種々解釈しえるものになっている。
このことは、上記「前記少なくとも2つの段階の少なくとも1つでの前記ポリマー反応の間に、・・・、前記プロセス制御変数の少なくとも1つを修正することによって前記第1のモードのポリマーの発展を能動的に制御すること」についても同様に、「前記第1のモードのポリマー」が「前記少なくとも2つの段階」のいずれの「段階」で「ポリマー」の「発展」が行われているのか不明である。
そうすると、本願発明における「段階」と「モード」の関係が定かでないものである。
よって、本願発明は明確でない。
(2)理由2(進歩性)について
ア 引1に記載された事項、引1に記載された発明及び引2に記載された事項
引1に記載された事項、引1に記載された発明(引1発明)及び引2に記載された事項は、は、上記第2 3(1)及び(2)に記載したとおりである。
イ 対比・判断
本願発明の「2つの段階」は、上記(1)に示したように明確ではないが、「第1のモードのポリマーを製造する(第1の)段階」、「第2のモードのポリマーを製造する(第2の)段階」であると解して、以下に検討する。
本願発明は、本件補正発明から見ると、「連続反応器を含む」という発明特定事項を削除し、また、「前記第1のモードの前記発展から前記第2のモードへの前記連続反応器における切替えに関連するクロスオーバーの第2の目標軌道を判定すること」から、「第2のモードに関連する第2の目標軌道を判定すること」へと上位概念化するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2 3(4)に記載したとおり、引1に記載された発明並びに引1及び引2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、引1に記載された発明並びに引1及び引2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の請求項1の発明は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について、又は他の拒絶理由について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-008127