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特許拒絶査定不服審判

2022-007790

測定素子およびこれを具備する測定機器

審判番号
2022-007790
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-555817外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年05月24日
審決日
2023年02月09日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-555817「測定素子およびこれを具備する測定機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月21日国際公開、WO2019/222598、令和 3年 7月29日国内公表、特表2021-517969〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 8項目
理 由

理 由

第1 手続の経緯

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本願は、令和元年5月17日を国際出願日とする外国語特許出願(パリ条約による優先権主張、2018年5月17日、中国)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、2018年5月17日を以下「優先日」という。

令和2年10月12日 :翻訳文の提出
令和3年 9月13日付け :拒絶理由通知書
同年11月30日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年 1月28日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同年 2月 2日 :原査定の謄本の送達)

同年 5月24日 :審判請求書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~17に係る発明は、令和4年5月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
基体(1)と、
前記基体(1)との間に封止空洞(3)が画定された状態で周囲をTIG溶接によって前記基体(1)に固定して連結するとともに、抵抗シーム溶接によって前記基体(1)に固定して連結することで、前記TIG溶接の溶接領域の半径方向内側に位置する前記抵抗シーム溶接による溶接領域が形成されたダイヤフラム(2)と、
前記封止空洞(3)に面する前記ダイヤフラム(2)の内側面(21)に配設されて、前記ダイヤフラム(2)の前記内側面(21)に連続して、少なくとも前記ダイヤフラム(2)と前記基体(1)との溶接領域を越えて延びている耐透過性層と、を具備し、
前記ダイヤフラム(2)の、前記基体(1)に対して連結する連結領域の内周に沿った第1溶接部と、
前記ダイヤフラム(2)の、前記基体(1)に対して連結する連結領域の外周に沿った第2溶接部と、を含む
ことを特徴とする測定素子。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由のうち、本願発明(原査定の時点の請求項10に係る発明)に係る拒絶の理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

本願発明は、本願の優先日前に発行された下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1.特開2013-257225号公報

引用文献2.米国特許第6120033号明細書

第4 当審の判断

1 引用文献の記載事項並びに引用発明の認定等

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(1) 引用文献1

ア 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由において引用する特開2013-257225号公報(前記引用文献1)には、次の事項が記載されている。(下線は当合議体が付した。以下同様である。)

(ア) 【0001】~【0012】、【図5】及び【図6】

「【0001】
本発明は、圧力伝送器に関し、詳しくは、ダイアフラムにおける水素阻止効果の改善に関する。
【0002】
圧力伝送器の一種に、ダイアフラムシール付差圧伝送器がある。ダイアフラムシール付差圧伝送器は、差圧伝送器の受圧部の高圧側および低圧側に、それぞれシール液が封入されたキャピラリを介して接液部が連結されたものであって、差圧伝送器の受圧部に被測定流体が直接導入されては困る場合に使用される。
続きを表示(全22行)
【0003】
図5は、このようなダイアフラムシール付差圧伝送器を用いたタンク液位測定系の接続例図である。図5において、差圧伝送器10の受圧部の高圧側11にはシール液が封入されたキャピラリ21を介して高圧側接液部30が連結され、受圧部の低圧側12にはシール液が封入されたキャピラリ22を介して低圧側接液部40が連結されている。
【0004】 図6は、高圧側接液部30の一例を示す構成説明図である。金属ブロック31の一方の面には、ダイアフラム32がたとえば電子ビーム溶接によりリング33とともに気密に固定されている。
【0005】 金属ブロック31とダイアフラム32との間に形成される空間部34はキャピラリ21に連通しており、ダイアフラム32で受けた圧力を差圧伝送器10の受圧部の高圧側11に伝達するためにシール液が封入されている。
【0006】
図6のように構成される高圧側接液部30はタンク50の下部に設置され、低圧側接液部40はタンク50の上部に設置される。
【0007】
そして、差圧伝送器10の差圧測定値に基づきタンク50内部の液位が測定される。
【0008】
ところで、図5において、タンク50内に水素ガスが充満している場合、ダイアフラム32はステンレス鋼やニッケル合金など耐食性に優れた厚さの薄い板で製作されていることから、水素は容易にダイアフラム32を透過することになる。この水素透過率は、温度が高いほど大きくなる。
【0009】
水素がダイアフラム32を透過すると、シール液中に気泡が形成される。気泡が形成されるとシール液を介しての正確な圧力伝達が行われなくなり、差圧伝送器10の出力誤差を引き起こすことになる。
【0010】
そこで、このような差圧伝送器10の出力誤差対策として、金やセラミックスなど水素透過率の低い材料を水素阻止膜としてダイアフラム32にコーティングすることが行われている。
【0011】
ここで、水素阻止膜のコーティングは、ダイアフラム32のシール液側に施す。ダイアフラム32のタンク液との接液側にコーティングすると、タンク液中に含まれる固形物によってコーティング膜が摩耗あるいは剥離するためである。
【0012】
タンク50内の水素はダイアフラム32に侵入するが、水素阻止膜コーティングによって、シール液側には透過しない。ただし、金やセラミックスなどのコーティング膜は電子ビーム溶接を阻害するため、図7(当審注:図9の誤記である。)に示すように溶接径の内側にだけコーティングを施す。」
「【図5】
[図:0001398972000001.jpg]
」
「【図6】
[図:0001398972000002.jpg]
」

(イ) 【0015】~【0017】、【図7】~【図9】

「【0015】
図7に示すコーティング済みのダイアフラム32を、図8に示すようにリング33とともにブロック31に溶接すると、ダイアフラム32の溶接径の外側には、図9の溶接部分の拡大構成説明図に示すように、コーティング領域の外側の非コーティング部分が残る。
【0016】
この結果、図5に示すタンク30内に存在する水素ガスは、ダイアフラム32の表面に吸着した後に溶解し、拡散現象により薄いダイアフラム32内に広がる。そして、ダイアフラム32の非コーティング部分に達すると、図9に破線Aで示すように、ダイアフラム32を透過してシール液中に気泡を形成することになる。
【0017】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、水素阻止膜のコーティングを施したダイアフラムの固定構造を工夫することで水素阻止効果をより高め、水素透過の影響を低減した圧力伝送器を提供することにある。」
「【図7】
[図:0001398972000003.jpg]
」
「【図8】
[図:0001398972000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001398972000005.jpg]
」

(ウ) 【0024】~【0031】、【図1】~【図3】

「【0024】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図6の相違点は、以下の通りである。
【0025】
1)ダイアフラム32の外周平坦部分の幅が図6に比べて狭い
続きを表示(全21行)
2)リング33のダイアフラム32との対向面にダイアフラム32を溶接固着するためのダイアフラム32の板厚と等しい段差部を設ける
3)リング33の段差部にダイアフラム32を溶接固着する
4)ダイアフラム32が溶接固着されたリング33の所定範囲に水素阻止膜コーティングを設ける
5)水素阻止膜コーティングを施したリング33を金属ブロック31に溶接する
【0026】
図1において、金属ブロック31の寸法形状は図6と同一である。ダイアフラム32とリング33については、図2と図3を用いて説明する。
【0027】
図2は、図1で用いるダイアフラム32とリング33の個別構成説明図である。
ダイアフラム32の材質および湾曲形状などは図6と同様であるが、外周平坦部分の幅が図6ではリング33の幅と等しく形成されていたのに対して、リング33に新たに設けられた段差部33aに嵌め合うように狭く形成されている。
【0028】
リング33に新たに設けられた段差部33aの寸法は、ダイアフラム32を隙間なく装着できる内径と、ダイアフラム32の板厚と等しい深さになるように設計されている。
【0029】
図3は、図1におけるダイアフラム32とリング33の組立構成説明図である。ダイアフラム32をリング33の段差部33aに嵌め合わせ、シール液側から電子ビーム溶接またはレーザー溶接で気密に固着する。これを第1の溶接とする。
【0030】
その後、溶接固着されたダイアフラム32とリング33のシール液側に、第1の溶接の直径よりも広く金属ブロック31との溶接固着に干渉しない範囲で、水素阻止膜をコーティングする。
【0031】
溶接固着され水素阻止膜がコーティングされたダイアフラム32とリング33を、コーティングした面が金属ブロック31と対向するように反転させて金属ブロック31に組み付け、コーティング範囲にかからない直径でリング33を電子ビーム溶接またはレーザー溶接で気密に固定する。これを第2の溶接とする。」
「【図1】
[図:0001398972000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001398972000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001398972000008.jpg]
」

イ 図1から認定できる事項

段落【0029】~【0031】の記載を踏まえて図1を見れば、「第2の溶接」の溶接領域の半径方向内側に「第1の溶接」による溶接領域が形成されていることが読み取れる。

ウ 段落【0002】~【0007】の記載事項について

引用文献1の段落【0005】に記載された「金属ブロック31とダイアフラム32との間に」「空間部34」が形成されて「シール液が封入され[る]」という構成の説明は、従来の技術を示す図6に関するものであるが、同段落【0024】において「図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。」と記載されていることからみて、図1に記載された符号31、32、34の示す構成は前記段落【0005】に記載された構成と同様のものであると認められる。

また、同段落【0002】、【0007】に記載された「差圧伝送器の受圧部の高圧側および低圧側に、それぞれシール液が封入されたキャピラリを介して接液部が連結され」、「差圧伝送器の差圧測定値に基づき液位が測定される」「ダイアフラムシール付差圧伝送器」という技術事項は差圧伝送器の用途、使用形態に関するものであって、同段落【0024】~【0031】及び図1~図3に記載された発明においても共通するものであると認められる。

エ 引用発明1の認定

前記アの引用文献1の記載事項及び前記イ、ウの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]

「金属ブロック31と(【0026】、【図1】)、
金属ブロック31との間に空間部34が形成され、シール液が封入されるダイアフラム32であって(前記ウの認定事項)、ダイアフラム32は第1の溶接でリング33に気密に固着されるとともに(【0029】)、第2の溶接でリング33が金属ブロック31に気密に固定され(【0031】)、前記第2の溶接の溶接領域の半径方向内側に前記第1の溶接による溶接領域が形成される(前記イの認定事項)、ダイアフラム32と、
ダイアフラム32とリング33のシール液側に、第1の溶接の直径よりも広くコーティングされる水素阻止膜と(【0030】)、
を有する、差圧伝送器の受圧部の高圧側および低圧側に、それぞれシール液が封入されたキャピラリを介して接液部が連結され、差圧伝送器の差圧測定値に基づき液位が測定されるダイアフラムシール付差圧伝送器(前記ウの認定事項)。」

(2) 引用文献2

ア 引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由において引用する米国特許第6120033号明細書(前記引用文献2)には、次の事項が記載されている。(括弧内の日本語翻訳文は当合議体による。)

(ア) 2欄34行~40行

「FIG. 1 shows an embodiment of process diaphragm seal 100 of the present invention having body 108 and coupled to transmitter assembly 10 for sensing pressures of process fluid 12, which can be a liquid, gas, or slurry, in process container 20. Cavity 116 defined by diaphragm 102 includes a fill fluid and couples to capillary tube 26 which fluidically couples to transmitter diaphragm 30.」

(日本語訳:図1は、本体108を有し、プロセス容器20内の液体、気体又はスラリーであり得るプロセス流体12の圧力を感知するためのトランスミッターアセンブリ10に結合された、本発明のプロセスダイヤフラムシール100の実施形態を示す。ダイヤフラム102によって画定される空洞116は、充填流体を含み、トランスミッターダイヤフラム30に流体的に結合する毛細管26に結合する。)

(イ) [Fig.1]

「
[図:0001398972000009.jpg]
」

(ウ) 2欄58行~3欄18行

「FIGS. 2, 3 and 8 are a perspective view of a partially cut-away section, a cross-section view, and an exploded view, respectively, of a process diaphragm seal 100 of the present invention. Process diaphragm seal 100 includes diaphragm seal body 108 having a seal body ring portion 114 surrounding cavity 116. Seal body ring portion 114 includes seal body ring inner portion 115 near cavity 116 and seal body ring outer portion 117 farther away from cavity 116.
Process diaphragm seal 100 also includes diaphragm 102, which has an active area 106 that operates over cavity 116 and that is surrounded by a diaphragm ring portion 104, sized to correspond to seal body ring portion 114. Diaphragm ring portion 104 includes diaphragm ring inner portion 105 that corresponds to seal body ring inner portion 115, and diaphragm ring outer portion 107 that corresponds to seal body ring outer portion 117. Diaphragm ring portion 104 also includes diaphragm ring back surface 109 for contacting seal body ring portion 114.
A first weld 110 of diaphragm ring outer portion 107 to seal body ring outer portion 117 forms a closed path around seal body ring portion 114. A second weld 112 of diaphragm ring inner portion 105 to seal body ring inner portion 115 forms a closed path around the cavity. The diaphragm ring back surface 109 between first weld 110 and second weld 112 is in substantially continuous contact with seal body ring portion 114. One example of substantially continuous contact is when the diaphragm ring back surface directly interfaces with the seal body ring.」

(日本語訳:図2、図3及び図8は、それぞれ、本発明のプロセスダイヤフラムシール100の部分的に切り取られた断面の斜視図、断面図及び分解図である。プロセスダイヤフラムシール100は、空洞116を取り囲むシール本体リング部分114を有するダイヤフラムシール本体108を含む。シール本体リング部分114は、空洞116の近くのシール本体リング内側部分115と、空洞116から、より離れたシール本体リング外側部分117とを含む。

プロセスダイヤフラムシール100は、また、ダイヤフラム102を含み、これは空洞116の上で動作し、シール本体リング部分114に対応するようにサイズ決めされたダイヤフラムリング部分104によって囲まれたアクティブ領域106を有する。ダイヤフラムリング部分104は、シール本体リング内側部分115に対応するダイヤフラムリング内側部分105と、シール本体リング外側部分117に対応するダイヤフラムリング外側部分107を含む。ダイヤフラムリング部分104は、また、シール本体リング部分114に接触するためのダイヤフラムリング背面109を含む。

ダイヤフラムリング外側部分107のシール本体リング外側部分117への第1の溶接部110は、シール本体リング部分114の周りに閉路を形成する。シール本体リング内側部分115へのダイヤフラムリング内側部分105の第2の溶接部112は、空洞の周りに閉路を形成する。第1の溶接部110と第2の溶接部112の間のダイヤフラムリング背面109は、シール本体リング部分114と実質的に連続的に接触している。実質的に連続的な接触の一例は、ダイヤフラムリングの背面がシール本体リングと直接接合する場合である。)

(エ) [Fig.2]

「
[図:0001398972000010.jpg]
」

(オ) 3欄26行~30行

「In two embodiments of the present invention, shown in cross-section in FIGS. 3 and 4, seal body ring portions 114 and 154 are parts of the same single material unit as the remainder of their respective diaphragm seal bodies 108 and 152.」

(日本語訳:図3及び図4に断面で示す本発明の二つの実施形態においては、シール本体リング部分114及び154は、それぞれのダイヤフラムシール本体108及び152の残りの部分と同じ単一材料ユニットの一部である。)

(カ) 4欄60行~5欄5行

「In the embodiments of FIGS. 3, 4 and 5, first welds 110, 164, and 202 of diaphragm ring outer portions 107, 169, and 212, to seal body ring outer portions 117, 171, and 213, respectively, form closed paths around seal body ring portions 114, 154, and 186. Second welds 112, 166, and 196 of, respectively, diaphragm ring inner portions 105, 165, and 210 to seal body ring inner portions 115, 167, and 211 form closed paths around cavities 116, 156, and 200, respectively. First welds 110, 164, and 202, are preferably Tungsten Insert Gas (TIG) welds, laser welds or direct resistance seam welds. Second welds 112, 166, and 196 are preferably direct resistance or laser seam welds formed by passing a current or light energy through a weld area.」

(日本語訳:図3、図4及び図5の実施形態においては、シール本体リング外側部分117、171及び213へのダイヤフラムリング外側部分107、169、及び212の第1の溶接部110、164及び202は、それぞれシール本体リング部分114、154及び186の周囲に閉鎖経路を形成する。シール本体リング内側部分115、167及び211へのダイヤフラムリング内側部分105、165及び210それぞれの第2の溶接部112、166及び196は、空洞116、156及び200の周りに閉路を形成する。第1の溶接部110、164及び202は、好ましくは、タングステン・インサート・ガス(TIG)溶接部、レーザー溶接部又は直接抵抗シーム溶接部である。第2の溶接部112、166及び196は、好ましくは、溶接領域に電流又は光エネルギーを通すことによって形成される直接抵抗又はレーザーのシーム溶接である。)

(キ) [Fig.3]

「
[図:0001398972000011.jpg]
」

イ 引用発明2の認定

前記アの引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2]

「空洞116を取り囲むシール本体リング部分114を有するダイヤフラムシール本体108であって、シール本体リング部分114はダイヤフラムシール本体108の残りの部分と同じ単一材料ユニットの一部であり、空洞116の近くのシール本体リング内側部分115と、空洞116から、より離れたシール本体リング外側部分117とを含む、ダイヤフラムシール本体108と(前記アの(ウ)(オ))、
シール本体リング部分114に対応するようにサイズ決めされたダイヤフラムリング部分104によって囲まれたアクティブ領域106を有するダイヤフラム102であって、ダイヤフラムリング部分104は、シール本体リング内側部分115に対応するダイヤフラムリング内側部分105と、シール本体リング外側部分117に対応するダイヤフラムリング外側部分107を含み、ダイヤフラムリング外側部分107のシール本体リング外側部分117への第1の溶接部110は、タングステンインサートガス(TIG)溶接部であり、シール本体リング内側部分115へのダイヤフラムリング内側部分105の第2の溶接部112は、直接抵抗シーム溶接部である、ダイヤフラム102と(前記アの(ウ)(カ))、を有する
プロセス流体12の圧力を感知するためのトランスミッタアセンブリ10に結合されたプロセスダイヤフラムシール100(前記アの(ア))。」

2 対比

(1) 対比分析

本願発明と引用発明1を対比する。

ア 次の引用発明1の欄に記載した引用発明1の各構成は、それぞれ、対応する本願発明の欄に記載した次の本願発明の構成に相当する。

<引用発明1> <本願発明>

金属ブロック31 基体

空間部34 封止空洞

ダイアフラム32 ダイヤフラム

水素阻止膜 耐透過性層

イ 引用発明1における「ダイアフラム32」について「金属ブロック31との間に空間部34が形成され[た]」状態は、本願発明における「前記基体(1)との間に封止空洞(3)が画定された状態」に相当する。

したがって、引用発明1における「金属ブロック31との間に空間部34が形成され、シール液が封入されるダイアフラム32であって、ダイアフラム32は第1の溶接でリング33に気密に固着されるとともに、第2の溶接でリング33が金属ブロック31に気密に固定され、前記第2の溶接の溶接領域の半径方向内側に前記第1の溶接による溶接領域が形成される、ダイアフラム32」と、本願発明における「前記基体(1)との間に封止空洞(3)が画定された状態で周囲をTIG溶接によって前記基体(1)に固定して連結するとともに、抵抗シーム溶接によって前記基体(1)に固定して連結することで、前記TIG溶接の溶接領域の半径方向内側に位置する前記抵抗シーム溶接による溶接領域が形成されたダイヤフラム(2)」は、「前記基体との間に封止空洞が画定された状態で前記基体に固定されるダイヤフラム」である点で共通する。

ウ 引用発明1における「ダイアフラム32とリング33のシール液側に、第1の溶接の直径よりも広くコーティングされる水素阻止膜」と、本願発明における「前記封止空洞(3)に面する前記ダイヤフラム(2)の内側面(21)に配設されて、前記ダイヤフラム(2)の前記内側面(21)に連続して、少なくとも前記ダイヤフラム(2)と前記基体(1)との溶接領域を越えて延びている耐透過性層」は、「前記封止空洞(3)に面する前記ダイヤフラム(2)の内側面(21)に配設されて、前記ダイヤフラム(2)の前記内側面(21)に連続して延びている耐透過性層」である点で共通する。

エ 引用発明1の「ダイアフラムシール付差圧伝送器」は「差圧伝送器の受圧部の高圧側および低圧側に、それぞれシール液が封入されたキャピラリを介して接液部が連結され、差圧伝送器の差圧測定値に基づき液位が測定される」ように構成されるものであるから、本願発明の「測定素子」に相当する。

(2) 一致点及び相違点の認定

上記(1)の対比分析の検討結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアの一致点において一致し、後記イの相違点において相違する。

ア 一致点

「基体と、
前記基体との間に封止空洞が画定された状態で前記基体に固定されるダイヤフラムと、
前記封止空洞に面する前記ダイヤフラムの内側面に配設されて、前記ダイヤフラムの前記内側面に連続して延びている耐透過性層と、を具備する測定素子」である点。

イ 相違点

本願発明においては、

「ダイヤフラム」が「周囲をTIG溶接によって前記基体に固定して連結するとともに、抵抗シーム溶接によって前記基体に固定して連結することで、前記TIG溶接の溶接領域の半径方向内側に位置する前記抵抗シーム溶接による溶接領域が形成され[て]」「前記ダイヤフラムの、前記基体に対して連結する連結領域の内周に沿った第1溶接部と、」「前記ダイヤフラムの、前記基体に対して連結する連結領域の外周に沿った第2溶接部」を含むようにされるとともに、「耐透過性層」が「少なくとも前記ダイヤフラムと前記基体との溶接領域を越えて延びている」のに対して、

引用発明1においては、ダイアフラム32は、「第1の溶接でリング33に気密に固着されるとともに、第2の溶接でリング33が金属ブロック31に気密に固定され[る]」ものであって、ダイアフラムと金属ブロック(基体)を直接連結するTIG溶接及び抵抗シーム溶接による溶接領域を有しておらず、また、「水素阻止膜」は「第1の溶接の直径よりも広くコーティングされる」ものではあるが、「金属ブロック」との溶接領域を越えて延びるものではない点。

3 判断

(1) 相違点についての検討

ア(ア) 前記1(2)イにおいて認定した引用発明2は、「ダイヤフラムシール本体108の残りの部分と同じ単一材料ユニットの一部であ[る]」「シール本体リング部分114」に含まれる「シール本体リング内側部分115へのダイアフラムリング内側部分105の第2の溶接部112」である「直接抵抗シーム溶接部」という構成を備えており、当該構成は、前記相違点1の「ダイヤフラム」を「基体」に対して直接連結する、「抵抗シーム溶接」による「第1溶接部」に相当する。

また、引用発明2は、「シール本体リング外側部分117への」「ダイヤフラムリング外側部分107の」「第1の溶接部110」である「タングステンインサートガス(TIG)溶接部」という構成を備えており、当該構成は、前記相違点1の「ダイヤフラム」を「基体」に対して直接連結する、「TIG溶接」による「第2溶接部」に相当する。

(イ) 前記(ア)の点を踏まえると、引用発明2は、本願発明と次の点において共通するといえる。

「基体と、
前記基体との間に封止空洞が画定された状態で周囲をTIG溶接によって前記基体に固定して連結するとともに、抵抗シーム溶接によって前記基体に固定して連結することで、前記TIG溶接の溶接領域の半径方向内側に位置する前記抵抗シーム溶接による溶接領域が形成されたダイヤフラムと、を具備し、
前記ダイヤフラムの、前記基体に対して連結する連結領域の内周に沿った第1溶接部と、
前記ダイヤフラムの、前記基体に対して連結する連結領域の外周に沿った第2溶接部と、を含む
測定素子」

イ(ア)a そうすると、引用発明1及び引用発明2はいずれも、ダイヤフラムを介して検出部へ圧力を伝達する測定機器の発明であって、引用文献1の段落【0009】~【0011】に記載されているような、ダイヤフラムを水素が透過することによる出力誤差の防止という課題が引用発明2においても共通するものであることは明らかであるから、当該課題を解決するために引用発明1における、ダイアフラム32のシール液側に、水素阻止膜をコーティングする構成を引用発明2の構造の測定素子に適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。

b また、引用発明1におけるダイアフラムと金属ブロックの接続構造に引用発明2の基体とダイアフラムの接続構造を選択することは、当業者が容易になし得る設計変更である。

(イ) そして、引用文献1の段落【0015】~【0017】には、コーティング領域の外側に非コーティング部分が残る場合は、この非コーティング部分を水素が透過することについて記載されているから、当該記載に鑑みれば、引用発明2に引用発明1を適用する際に、水素阻止膜の非コーティング部分が少なくなるように、水素阻止膜が直接抵抗シーム溶接部を越えて延びるように、水素素子膜をコーティングすることは、当業者の当然の配慮事項である。

(ウ) なお、引用文献1の段落【0012】には「金やセラミックスなどのコーティング膜は電子ビーム溶接を阻害するため、図7に示すように溶接径の内側にだけコーティングを施す。」とあるが、引用発明2において内側部分の第2の溶接部は直接抵抗シーム溶接部であるから、当該記載は引用発明2への適用を阻害する事項を含むものではない。

(エ) したがって、引用発明1に基づきつつ、引用発明2も踏まえて、相違点に係る構成を備えるようにして本願発明の構成を全て有するものに想到することは、当業者にとって容易であったと認められる。

ウ そして、本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用発明2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たものである。

(2) 請求人の主張について

ア 請求人の主張内容

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、審判請求書(「(4)本願発明と各引用発明との対比」の部分参照)において、次の主張をしている。

[請求人の主張]

本願発明と引用発明(引用文献1及び引用文献2に記載された構成)は、「ダイヤフラム側と基板側とを2か所の溶接領域にシールする」構成で一致するものの、「ダイヤフラムと基板に対して直接TIG溶接及び抵抗シーム溶接を行った2か所の溶接領域によりシールする」構成で相違している。

すなわち、「基板とダイヤフラムとをTIG溶接及び抵抗シーム溶接で連結した連結領域の構成」は本願発明の独自の構成であり、ダイヤフラムに対して直接TIG溶接及び抵抗シーム溶接を行って連結するという考え方が存在しない引用文献1及び引用文献2を組み合わせて構成できるものではない。

引用文献1及び引用文献2においては、ダイヤフラムのシール構造について、二つの部材(例えば、ダイヤフラム及びリング)を使用しているので、それぞれ溶接で固定する必要が生じるのに対して、本願発明のようなシール構造では2ヵ所の溶接が必然的な構成ではない。

すなわち、そもそも引用文献1及び引用文献2において、ダイヤフラムと基板とのシール構造を得るに際して、両者同士を直接2か所の領域で溶接するという思想は存在しないものである。

したがって、引用文献1及び引用文献2から、ダイヤフラムに対して2か所の位置で直接TIG溶接及び抵抗シーム溶接を行って両者を連結する構成を導き出せるものではない。

「基板とダイヤフラムとをTIG溶接及び抵抗シーム溶接で連結した構成」は本願発明の独自の構成であり、「ダイヤフラムと基板の間に安定した固定接続が提供され、水素透過経路の可能性を確実に排除する」という効果を発揮するものであるので、ダイヤフラムに対して直接TIG溶接及び抵抗シーム溶接の双方を行うことの記載及び示唆がない引用文献1及び引用文献2から容易に想到できたものではない。

イ 請求人の主張についての検討

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請求人の主張は要するに、ダイヤフラムに対してTIG溶接及び抵抗シーム溶接をそれぞれ用いて、基体の2か所と連結するという考え方は、引用文献1及び引用文献2には示されていない本願発明の独自のものであって、引用文献1及び引用文献2から導き出せるものではない、というものである。 しかしながら、引用文献2のFIG.6には「シール本体リング部分114」が「ダイヤフラムシール本体108」とは別体の「溶接リング182」を備え、これに「ダイヤフラム102」が溶接される構成が記載されてはいるものの、前記1(2)イにおいて認定した引用発明2は、前記構成のものとは別の実施形態(FIG.3)に関する「ダイヤフラムシール本体108の残りの部分と同じ単一材料ユニットの一部であ[る]」「シール本体リング部分114」に「ダイヤフラム102」を直接溶接固定する「第1の溶接部110」及び「第2の溶接部112」を備えたものである。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

第5 むすび

以上検討のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-007790

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