特許拒絶査定不服審判
2024-011640
センサシステム用の平面状の力センサユニット
- 審判番号
- 2024-011640
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-156672
- 請求日
- 2024年07月12日
- 審決日
- 2026年01月14日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カーヴシス ゲー・エム・ベー・ハー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】永島 秀郎
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 関口 英樹
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条、特許法第158条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-156672「センサシステム用の平面状の力センサユニット」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月26日出願公開、特開2020- 46421〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月29日を出願日とする外国語書面出願であって(パリ条約による優先権主張 2018年8月30日 独国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和元年 9月27日 :翻訳文の提出
令和5年 8月28日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月12日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月27日 :前置報告書
同年12月10日 :上申書の提出
第2 本願発明について
1 本願発明の認定
本願の請求項1~9に係る発明は、令和6年7月12日に提出された手続補正書により補正された請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。
「【請求項1】
力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニットであって、
前記力センサユニットは、第1の絶縁性の薄膜(1)および第2の絶縁性の薄膜(2)を有し、前記絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターン(3)および第2の導体路パターン(4)を担持し、前記薄膜(1,2)に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられており、前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターン(3)と前記第2の導体路パターン(4)との間に複数の接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素(7)が配置されており、
前記スペーサー要素は、第1の方向のみにおいて延在しており、
前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)のうちの少なくとも1つは、前記スペーサー要素(7)によって、多数のコンタクト領域に分けられており、前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ、
前記導体路パターン(3,4)は、少なくとも部分的に、抵抗を有するコーティングによって形成されており、前記コーティングは、所定の電気的なシート抵抗を有しており、
前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)は、それぞれ評価回路(102)に接続するための第1および第2の接続部(5,6)を有しており、
前記評価回路は、位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する平面状の力センサユニットにおいて、
前記第1および第2の接続部(5,6)は、前記第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されており、
前記評価回路は、クロック制御されたマイクロコントローラを有しており、前記マイクロコントローラは、順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部(5,6)での前記抵抗値を測定し、メモリユニット(120)に格納し、
比較器ユニット(121)が前記マイクロコントローラ(102)に接続されており、前記比較器ユニットは、現下の抵抗値を、前記メモリユニット(120)に格納されている抵抗値と比較し、各前記格納されている抵抗値から所定の値ぶん、前記現下の抵抗値が偏差している場合に、出力信号(122)を出力するように形成されている、
ことを特徴とする、平面状の力センサユニット。」
2 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。
<本願発明の分説>
X 力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニットであって、
A1 前記力センサユニットは、第1の絶縁性の薄膜(1)および第2の絶縁性の薄膜(2)を有し、前記絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターン(3)および第2の導体路パターン(4)を担持し、
A2 前記薄膜(1,2)に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられており、前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターン(3)と前記第2の導体路パターン(4)との間に複数の接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素(7)が配置されており、
B 前記スペーサー要素は、第1の方向のみにおいて延在しており、
C1 前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)のうちの少なくとも1つは、前記スペーサー要素(7)によって、多数のコンタクト領域に分けられており、前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ、
C2 前記導体路パターン(3,4)は、少なくとも部分的に、抵抗を有するコーティングによって形成されており、前記コーティングは、所定の電気的なシート抵抗を有しており、
C3 前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)は、それぞれ評価回路(102)に接続するための第1および第2の接続部(5,6)を有しており、
D1 前記評価回路は、位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する
X 平面状の力センサユニットにおいて、
C4 前記第1および第2の接続部(5,6)は、前記第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されており、
D2 前記評価回路は、クロック制御されたマイクロコントローラを有しており、前記マイクロコントローラは、順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部(5,6)での前記抵抗値を測定し、メモリユニット(120)に格納し、
E 比較器ユニット(121)が前記マイクロコントローラ(102)に接続されており、前記比較器ユニットは、現下の抵抗値を、前記メモリユニット(120)に格納されている抵抗値と比較し、各前記格納されている抵抗値から所定の値ぶん、前記現下の抵抗値が偏差している場合に、出力信号(122)を出力するように形成されている、
X ことを特徴とする、平面状の力センサユニット。
3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム用の平面状の力センサユニットに関し、これは、第1の絶縁性の薄膜と第2の絶縁性の薄膜を有し、これらの絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターンと第2の導体路パターンを担持し、これらの導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素が配置されている。(以下省略)」
「【0003】
多くの用途では、この種のセンサシステムは、外側のカバーの下に配置されているので、センサユニットが取り付けられている対象物の外観に影響を及ぼさないようにするために、センサユニットは、自身の主要表面に対して垂直に僅かな厚さしか有していないべきである。カバーは部分的に、相対的に高い機械的な応力下で、その操作が確認されるべき元来の対象物に張り付けられなければいけないので、スペーサー要素の寸法が小さい場合、または過度の圧力の作用または力の作用の場合にも、薄膜の継続した局部的な押しつぶし、ひいては誤操作の危険が生じる。例えば、このことは、革のカバーが設けられており、その下にセンサシステムが配置されている自動車内のステアリングホイールのリムの場合であるが、例えば、車両の座席の占有または他の負荷を確認するために自動車の座席内で使用される座席センサ等の別の適用ケースの場合でも生じる。既知の圧力感知センサでは、座席の覆いを通じた圧力の作用によって、多数の個々のコンタクト要素の少なくとも部分的な誤操作が生起され得る。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度の影響、経年劣化、部分的な損傷等によっても生起され得るこの種の誤操作は回避可能ではなく、特に多くの場合、一定でもないので、本発明の課題は、センサシステムの出力信号の評価がこの種の作用によって影響されないセンサシステムを実現することである。」
「【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0018】
…(中略)… 外側のカバー23の構造および製造によって生起され得る、この終端部での導体路パターン3、4の継続した押しつぶしの際にも、これによって、上述した終端部の間の領域における、検出されるべき力または圧力の作用のもとで、接続部5および6で、これらの接続部の間の抵抗値の測定可能かつ評価可能な変化が生じる。」
「【図1】
[図:0001435635000001.jpg]
」
「【0026】
スペーサー要素は相対的に僅かな厚さを有しており、弾性的に変形可能であるので、1つまたは2つの薄膜1、2に力または圧力が作用することによって、この力の作用に相当する箇所で、コーティングの間に、接触接続が生起される。これは、自身の位置に関連して、接続部5および6の間で、このようなコンタクト箇所の位置に関連して変化する抵抗を生じさせる。薄膜1、2の相互に反対の縁部に接続部をこのように配置することによって、製造に起因する接触接続の場合でも、または外部の影響によって生起される継続的な接触接続の場合でも、スペーサー要素の間に位置する1つまたは複数の領域において、薄膜の故意の押しつぶしが、別の領域において、接続部5、6の間で測定可能な抵抗の変化を生じさせる。」
第3 審査段階における拒絶理由通知の概要について
令和5年8月28日付けで通知された、請求項1に係る発明についての拒絶の理由3(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開昭60-11921号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2003-61779号公報(主たる引用文献)
<周知技術を示す文献>
引用文献3.米国特許第4350857号明細書
引用文献4.特表昭59-501487号公報
第4 当審の判断
1 当審の判断の概要について
当審において、引用文献2を主たる引用文献とする進歩性欠如の拒絶理由について改めて検討したところ、後述のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると判断した。
この拒絶の理由は、前記第3に示した審査段階の拒絶理由通知における、引用文献2を主たる引用文献とした拒絶の理由と実質的に同じである。
そして、審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においても、その効力を有するから(特許法158条)、この拒絶の理由に対して、請求人(出願人)には意見を述べる機会が既に与えられたといえる。
なお、原査定においては、「…請求項1-9に係る発明については、拒絶理由通知書に記載した理由3(進歩性)が解消しているかどうかの判断を行っていない。」として進歩性の判断を留保しており、前記第3において示した進歩性欠如の拒絶の理由が解消したと説示していない。
2 引用発明について
(1) 引用文献2の記載事項
審査段階の拒絶の理由において主たる引用文献として引用した引用文献2(特開2003-61779号公報)には、以下の記載がある。下線は当審において付与したものである。
ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スタジアム、劇場及び映画館などの多くの観客を収容する施設において、この施設を利用する観客を検知するシステムに関し、特に客席への観客の着座状況を的確に把握するための観客検知システムに関する。」
イ 段落【0014】~【0015】、【図1】
「【0014】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して、この発明の実施例を説明する。図1は、この発明の一実施例に係る観客検知システムの全体構成を示す概略図である。図1に示すように、この発明による観客検知システム50は、観客検知センサ5と、観客管理装置10と、表示装置9と、端末装置30とから構成されている。観客検知センサ5は、例えばスタジアム、劇場及び映画館などの施設に用いられる客席1に配設されている。…(中略)…着座部2の表面には、布張りや革張りなどの表皮4が形成され、この表皮4の直下には、シート状の観客検知センサ5(5a,5b,…,5n)がそれぞれ埋め込まれている。」
「【図1】
[図:0001435635000002.jpg]
」
「【0015】このように配設された観客検知センサ5で検出された検出出力(検出信号)は、映画館の管理室などに設けられた観客管理装置10に入力される。観客管理装置10は、空席判別装置6と、情報管理装置7と、通信装置8とを備えて構成されている。観客管理装置10に入力された各観客検知センサ5a~5nからの検出信号は、観客管理装置10内の空席判別装置6で、例えば客席1が空席であるか否かとか着座している人が大人であるか否かとかの着座状況の判別に用いられる。空席判別装置6で判別された着座状況は、着座状況に関する情報(着座状況データ)として、例えば管理サーバからなる情報管理装置7で管理される。情報管理装置7で管理されている着座状況データは、通信サーバ等の通信装置8を介してアンテナ110aから電波として発信され、例えば遠隔地に居る映画館内の従業員(係員)が携帯しているハンディターミナルなどの端末装置30のアンテナ110dがこの電波を受信したり、映画館の情報掲示所に設置されている電光掲示板などの表示装置9が受信したりすることで逐次表示して閲覧することができる。観客はこの表示装置9に表示される着座状況データに基づき客席(座席)を探し出したり、従業員は端末装置30に表示される着座状況データに基づき座席の誘導(案内)や指定席などの不正使用の確認をしたりすることが可能となる。このため、この観客検知システム50では、不正防止や観客誘導などの観客管理に費やす時間と労力とを軽減して省力化を図ることができる。」
ウ 段落【0020】
「【0020】また、観客検知センサ5として、上記メンブレンスイッチからなる構造の他に、感圧メンブレンスイッチからなる構造を用いるようにしても良いし、両者を混在して観客検知センサ5を形成するようにしても良い。図7は、この観客検知システム50に用いられる他の観客検知センサ5の一部を切り欠いて示す分解斜視図、図8は、この観客検知センサの構造を示す断面図である。…」
エ 段落【0021】、【図7】
「【0021】図7及び図8に示すように、観客検知センサ5は、例えば感圧メンブレンスイッチからなるもので、絶縁フィルム等からなる一対の可撓性シート21,22を、絶縁スペーサ23を接着材等を介して重合することにより構成され、一対の可撓性シート21,22のそれぞれの対向面21a,22aには、それぞれ導電材からなる導電パターン24,25がスクリーン印刷等の方法により形成されている。図7中上側の可撓性シート21に形成された導電パターン24は、この例では接点部26に対応する位置にそれぞれ形成される上電極部24aと、これら上電極部24aを、例えばVcc電源端子に共通に接続するリード部24bとからなり、図7中下側の可撓性シート22に形成された導電パターン25は、この例では接点部26に対応する位置にそれぞれ形成される下電極部25aと、各下電極部25aをそれぞれ抵抗18(図11参照)を介して接地するリード部25bとから構成されている。」
「【図7】
[図:0001435635000003.jpg]
」
オ 段落【0022】~【0023】、【図8】
「【0022】また、可撓性シート22の下電極部25aには、この下電極部25aを覆うように感圧インク(感圧層)19が形成されている。この感圧層19は、加えられる荷重(圧力)に応じて抵抗値(接触抵抗)が変化するものであり、感圧層19は、ペースト状の材料をスクリーン印刷、オフセット印刷等の方法により成形したり、予め成型した膜状電極を所定の場所に固定したりする方法により形成される。絶縁スペーサ23の接点部26に対応する位置には、上電極部24aと下電極部25aとが互いに十分接触することができるだけの開口径を有する開口部27が形成され、この開口部27を介して着座部2への荷重印加時に上電極部24aと感圧層19とが接触するような構造となっている。
【0023】この観客検知センサ5では、図8に示すように、可撓性シート21の導電パターン24の上電極部24aが形成された接点部26の上方から、押圧力(荷重F)が可撓性シート22の下電極部25a方向に加えられ、可撓性シート21が撓み、上電極部24aが感圧層19に接触すると、感圧層19に加わる荷重(即ち、圧力)に応じて(反比例して)感圧層19の抵抗値が変化することとなる。」
「【図8】
[図:0001435635000004.jpg]
」
カ 段落【0024】
「【0024】図9は、このような感圧メンブレンスイッチを用いた観客検知センサ5における荷重と抵抗との関係を示す特性図である。同図に示すように、可撓性シート21の上電極部24aの接点部26に荷重(F)が加えられていない状態(即ち、人や物が客席1の着座部2の上にない状態)では、上電極部24aと下電極部25aとが互いに絶縁スペーサ23で十分に離されているため、その抵抗値は無限大(∞)である。しかし、可撓性シート21の上電極部24aの上方(接点部26の上方)から下方向(図8の白抜き矢印方向)に荷重(F)が加えられ(図8参照)、可撓性シート21が撓んで上電極部24aが感圧層19と接触し、更に接点部26に荷重(F)が加えられていくと、感圧層19に加わる荷重値(即ち、圧力値)FがF1,F2,F3,…,Fnと増えていき、感圧層19の抵抗値RがR1,R2,R3,…,Rnとなだらかに低下していく。(以下省略)」
キ 段落【0025】、【図11】
「【0025】図11は、空席判別装置6の構成を示す回路図である。図9において、感圧メンブレンスイッチは、上述したように、接点部26の荷重値(圧力値)に応じて感圧層19の抵抗値Rが変化(荷重値Fが増えると抵抗値Rが低下)するので、等価的に可変抵抗とみなすことができる。この感圧メンブレンスイッチの接点部26A,26B,…,26nの可撓性シート21の上電極部24aは、定電圧Vccを出力する図示しない定電圧源と接続され、可撓性シート22の下電極部25aは、抵抗18A,18B,…,18nを介してそれぞれ接地されている。従って、可変抵抗の一端に定電圧Vccが供給され、可変抵抗の他端が抵抗18A~18nを介して接地されているのと等しいことになる。」
「【図11】
[図:0001435635000005.jpg]
」
ク 段落【0026】
「【0026】空席判別装置6内に設けられたA/D変換器40A,40B,…,40nは、感圧メンブレンスイッチの接点部26A~26nの他端、即ち、下電極部25aと抵抗18A~18nとの接続点XA,XB,…,Xnとそれぞれ接続されている。これらA/D変換器40A~40nは、それぞれ接続点XA~Xnの電位をアナログ信号からディジタル信号に変換する。こうしてディジタル信号に変換された観客検知センサ5からの検出出力は、CPU41にそれぞれ入力される。」
ケ 段落【0027】
「【0027】CPU41は、A/D変換器40A~40nから出力されたディジタル信号に基づいてRAM42の演算領域を使い観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し、ROM43内に予め格納してある荷重分布パターンデータを読み出してこれらを比較照合し、人や荷物などの着座対象の判別を行う。(…中略…)また、CPU41は、図示しないカウンタを備えており、観客検知センサ5からの検出出力を契機にカウンタが計時を開始し、所定時間経過してもその出力が継続してある場合に着座有りと判断し、検出出力がなくなった時点で着座無しと判断する。(以下省略)」
(2) 引用文献2から読み取れる事項
前記(1)エに摘記した段落【0021】及び【図7】から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「認定事項」という)。
<認定事項>
「観客検知センサ5の絶縁スペーサ23は、シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたものであること。」
(3) 引用発明の認定
前記(2)の認定事項と前記(1)に摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
[引用発明]
「客席への観客の着座状況を的確に把握するための観客検知システムであって、(【0001】)
観客検知システム50は、観客検知センサ5と、観客管理装置10と、表示装置9と、端末装置30とから構成されており、(【0014】)
観客検知センサ5は、例えばスタジアム、劇場及び映画館などの施設に用いられる客席1に配設されており、(【0014】)
着座部2の表面には、布張りや革張りなどの表皮4が形成され、この表皮4の直下には、シート状の観客検知センサ5(5a,5b,…,5n)がそれぞれ埋め込まれており、(【0014】)
観客検知センサ5で検出された検出出力(検出信号)は、映画館の管理室などに設けられた観客管理装置10に入力され、観客管理装置10は、空席判別装置6と、情報管理装置7と、通信装置8とを備えて構成されており、(【0015】)
観客検知センサ5として、感圧メンブレンスイッチからなる構造が用いられ、(【0020】)
感圧メンブレンスイッチからなる前記観客検知センサ5は、絶縁フィルム等からなる一対の可撓性シート21,22を、絶縁スペーサ23を接着材等を介して重合することにより構成され、一対の可撓性シート21,22のそれぞれの対向面21a,22aには、それぞれ導電材からなる導電パターン24,25が形成されており、(【0021】)
上側の可撓性シート21に形成された導電パターン24は、上電極部24aと、これら上電極部24aを、Vcc電源端子に共通に接続するリード部24bとからなり、下側の可撓性シート22に形成された導電パターン25は、下電極部25aと、各下電極部25aをそれぞれ抵抗18を介して接地するリード部25bとから構成されており、(【0021】)
可撓性シート22の下電極部25aには、この下電極部25aを覆うように、加えられる荷重(圧力)に応じて抵抗値(接触抵抗)が変化する感圧インク(感圧層)19が形成されており、(【0022】)
絶縁スペーサ23の接点部26に対応する位置には、上電極部24aと下電極部25aとが互いに十分接触することができるだけの開口径を有する開口部27が形成され、この開口部27を介して着座部2への荷重印加時に上電極部24aと感圧層19とが接触するような構造となっており、(【0022】)
この観客検知センサ5では、可撓性シート21の導電パターン24の上電極部24aが形成された接点部26の上方から、押圧力(荷重F)が可撓性シート22の下電極部25a方向に加えられ、可撓性シート21が撓み、上電極部24aが感圧層19に接触すると、感圧層19に加わる荷重(即ち、圧力)に応じて(反比例して)感圧層19の抵抗値が変化することとなり、(【0023】)
可撓性シート21の上電極部24aの接点部26に荷重(F)が加えられていない状態(即ち、人や物が客席1の着座部2の上にない状態)では、上電極部24aと下電極部25aとが互いに絶縁スペーサ23で十分に離されているため、その抵抗値は無限大(∞)であるが、可撓性シート21の上電極部24aの上方(接点部26の上方)から下方向に荷重(F)が加えられ、可撓性シート21が撓んで上電極部24aが感圧層19と接触し、更に接点部26に荷重(F)が加えられていくと、感圧層19に加わる荷重値(即ち、圧力値)FがF1,F2,F3,…,Fnと増えていき、感圧層19の抵抗値RがR1,R2,R3,…,Rnとなだらかに低下していき、(【0024】)
前記絶縁スペーサ23は、シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたものであり、(認定事項)
感圧メンブレンスイッチは、接点部26の荷重値(圧力値)に応じて感圧層19の抵抗値Rが変化(荷重値Fが増えると抵抗値Rが低下)するので、等価的に可変抵抗とみなすことができ、この感圧メンブレンスイッチの接点部26A,26B,…,26nの可撓性シート21の上電極部24aは、定電圧Vccを出力する定電圧源と接続され、可撓性シート22の下電極部25aは、抵抗18A,18B,…,18nを介してそれぞれ接地されており、従って、可変抵抗の一端に定電圧Vccが供給され、可変抵抗の他端が抵抗18A~18nを介して接地されているのと等しいことになり、(【0025】)
空席判別装置6内に設けられたA/D変換器40A,40B,…,40nは、感圧メンブレンスイッチの接点部26A~26nの他端、即ち、下電極部25aと抵抗18A~18nとの接続点XA,XB,…,Xnとそれぞれ接続されており、これらA/D変換器40A~40nは、それぞれ接続点XA~Xnの電位をアナログ信号からディジタル信号に変換し、こうしてディジタル信号に変換された観客検知センサ5からの検出出力は、CPU41にそれぞれ入力され、(【0026】)
CPU41は、A/D変換器40A~40nから出力されたディジタル信号に基づいてRAM42の演算領域を使い観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し、ROM43内に予め格納してある荷重分布パターンデータを読み出してこれらを比較照合し、人や荷物などの着座対象の判別を行うものである、(【0027】)
観客検知システム。」
3 周知技術について
(1) 引用文献4の記載事項
審査段階の拒絶理由通知において周知技術を示す文献として引用された特表昭59-501487号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 第2頁左下欄第5行~9行
「本発明は、広義の意味において、膜スイッチの技術分野に関するものである(即ち、それ自体が導電性を有するか、またはその上にスクリーン印刷された導電性回路網を有する膜を互いに係合させて回路を閉成して特定の機能を実行するスイッチである)。」
イ 第3頁右上欄第18行~左下欄第2行
「これら表面の中間にスペーサブリッジを配置し、中間距離を保持し乍ら配置することによって、一方の薄膜を他方の薄膜に対して十分に保持することができる。この結果、接点間の偶発的な係合を防止できる。」
ウ 第3頁右下欄第6行~9行
「また、他の実施例によれば、スペーサブリッジを延在させることができる。本例の場合、これらブリッジを延在方向に対して平行に配置するのが一般的である。」
エ 第4頁右上欄第9行~12行、FIG. 1
「薄膜には2個の接点が形成されており、これの各々には複数個の歯26が形成されており、これら歯26は薄膜の表面28,30上にスクリーン印刷されている。」
「FIG. 1
[図:0001435635000006.jpg]
」
オ 第5頁左上欄第7行~同頁右上欄第6行
「本発明によるスイッチ10を特定の機能を果す(即ち、飲料用自動販売機)ように装置に設置する場合、この機能とは商品を分配するもので、これはこのスイッチを閉成することによって実現できる。このスイッチ機能は、接触圧力を外部薄膜22、24の一方に与えることによって実現できる。第1外部薄膜22と中心薄膜12との間のスペーサブリッジ50を配置した位置に圧力を印加すると、第2のスイッチ回路網が作動するようになる。同様に、第2外部薄膜24と中心薄膜12と間に介挿したスペーサブリッジ52の位置に圧力を印加すると、第1スイッチ回路網が作動するようになる。どちらか一方の回路網が作動すると、スイッチ10が閉成される。その理由は、これら2個の回路網は並列構造となっているからである。
また、図面からわかるように、両方のスイッチ回路網を同時に作動させることも可能となる。このことは、第1および第2回路網のスペーサブリッジ50、52の位置の中間に沿った位置における外部薄膜22、24の一方に圧力を加えた場合に実現するものである。しかし乍ら、このような回路網が同時に作動することによって、恰もこれら回路網の一方のみが閉じたのと同様に薄膜スイッチ10を閉成する所期の目的を達成するものである。」
(2) 引用文献4から読み取れる事項
ア 引用文献4のFIG. 1から、スペーサブリッジ50,52は、矩形状のシートの長辺方向に沿って一方向に延在しており、互いに平行(ストライプ状)に配置されていることが読み取れる。
イ また、同図によれば、第1外部薄膜22及び第2外部薄膜24は、それぞれ矩形状の本体部分の短辺から突出した形状部分を有しており、当該突出した形状部分は、本体部分からみて相互に反対側の位置(図面向かって左手前側と右奥側)に配置されていることが認められる。これらの突出した形状部分は、図示された配線パターン(歯26)の収束先となっていることから、外部への接続を行うための端子部(接続部)として機能するものと認められる。
(3) 周知技術の認定
ア 周知技術1の認定
前記(1)において摘記した事項及び(2)アにおいて認定した事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
[周知技術1]
「導体パターンが形成された二つの薄膜をスペーサー部材を介して対向させ、加圧時に薄膜同士が接触することにより導体パターンを導通させる構造において、スペーサー部材を一方向のみに延在する形状とすること。」
イ 周知技術2の認定
前記(1)において摘記した事項及び(2)イにおいて認定した事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる。(以下「周知技術2」という。)
[周知技術2]
「導体パターンが形成された対向する二つの薄膜において、外部への接続を行うための端子部を、薄膜の本体部分からみて相互に反対側の位置に配置すること。」
4 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(全体構成)
(ア) 構成Xの特定
構成Xは、「力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニット」の発明であることを特定するものである。
(イ) 構成Xに係る対比
a 引用発明の「シート状の観客検知センサ5」は、「可撓性シート21の導電パターン24の上電極部24aが形成された接点部26の上方から、押圧力(荷重F)が可撓性シート22の下電極部25a方向に加えられ、可撓性シート21が撓み、上電極部24aが感圧層19に接触すると、感圧層19に加わる荷重(即ち、圧力)に応じて(反比例して)感圧層19の抵抗値が変化することとな[る]」ものであるから、引用発明の「シート状の観客検知センサ5」は、可撓性シート21、22という平面状の部材に加わる荷重(即ち、圧力)を検知するセンサであり、当該荷重(即ち、圧力)が平面状の力であることを踏まえると、本願発明の「平面状の力センサユニット」に相当する。
b 引用発明の「客席への観客の着座状況を的確に把握するための観客検知システム」は、「観客検知センサ5と、観客管理装置10と、表示装置9と、端末装置30とから構成されて[いる]」ところ、「観客検知センサ5で検出された検出出力(検出信号)は、映画館の管理室などに設けられた観客管理装置10に入力され、観客管理装置10は、空席判別装置6と、情報管理装置7と、通信装置8とを備えて構成されており」、「空席判別装置6内に設けられたA/D変換器40A,40B,…,40n」において「ディジタル信号に変換された観客検知センサ5からの検出出力」に基づいて「CPU41」が「人や荷物などの着座対象の判別を行うものである」から、引用発明の「観客検知システム」は、平面状の力である荷重(即ち、圧力)を検知する「シート状の観客検知センサ5」を含むシステムであり、本願発明の「力センサシステムおよび/または圧力センサシステム」に相当する。
c 引用発明の「シート状の観客検知センサ5」は、「観客検知システムに用いられるシート状の観客検知センサ」であるといえるから、前記a及びbを踏まえると、本願発明の「力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニット」に相当する。
(ウ) 構成Xに係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成Xの観点に関し、次の点において一致する。
「力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニット」の発明である点。
イ 構成A1の観点(薄膜と導体路パターン)
(ア) 構成A1の特定
構成A1は、「前記力センサユニットは、第1の絶縁性の薄膜(1)および第2の絶縁性の薄膜(2)を有し、前記絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターン(3)および第2の導体路パターン(4)を担持」することである。
(イ) 構成A1に係る対比
a 引用発明の「感圧メンブレンスイッチからなる前記観客検知センサ5」は、「絶縁フィルム等からなる一対の可撓性シート21,22を、絶縁スペーサ23を接着材等を介して重合することにより構成され」ているところ、上記「絶縁フィルム等からなる一対の可撓性シート21,22」は、本願発明の「前記力センサユニット」が有する「相互に重なって配置され[た]」「第1の絶縁性の薄膜(1)および第2の絶縁性の薄膜(2)」に相当する。
b 引用発明における、「一対の可撓性シート21,22のそれぞれの対向面21a,22a」に「形成」された「それぞれ導電材からなる導電パターン24,25」は、本願発明の「相互に重なって配置され[た]」「前記絶縁性の薄膜」の「自身の向かい合っている面で」「担持」された「第1の導体路パターン(3)および第2の導体路パターン(4)」に相当する。
(ウ) 構成A1に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成A1の観点に関し、次の点において一致する。
「前記力センサユニットは、第1の絶縁性の薄膜および第2の絶縁性の薄膜を有し、前記絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターンおよび第2の導体路パターンを担持」する点。
ウ 構成A2の観点(予負荷とスペーサー要素の配置)
(ア) 構成A2の特定
構成A2は、「前記薄膜(1,2)に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられており、前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターン(3)と前記第2の導体路パターン(4)との間に複数の接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素(7)が配置されて」いることである。
(イ) 構成A2に係る対比
a 引用発明においては、「可撓性シート21の上電極部24aの接点部26に荷重(F)が加えられていない状態(即ち、人や物が客席1の着座部2の上にない状態)では、上電極部24aと下電極部25aとが互いに絶縁スペーサ23で十分に離されている」とされているところ、絶縁スペーサ23は上電極部24aと下電極部25aの離間状態を形成するために機能するものであって、可撓性シート21、22自身の離間状態の形成に直接寄与すると考えるのは妥当ではないから、荷重が加えられていない状態においては、可撓性シート21、22は自身の弾性復元力等により元の離間した状態に戻ると考えるのが自然である。
b そして、可撓性シート21、22自身が弾性復元力等を発揮するためには、荷重が加えられていない状態においても可撓性シート21、22に対して所定の負荷が外部から予め与えられてシートがピンと張った状態にあることが必要であるから、可撓性シート21、22には弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられているといえる。
c そうすると、引用発明における可撓性シート21、22の荷重(F)が加えられていない状態は、本願発明の「前記薄膜(1,2)に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられて」いる状態に相当する。
d 引用発明においては、「絶縁スペーサ23の接点部26に対応する位置には、上電極部24aと下電極部25aとが互いに十分接触することができるだけの開口径を有する開口部27が形成され、この開口部27を介して着座部2への荷重印加時に上電極部24aと感圧層19とが接触するような構造」となっているところ、引用発明の「絶縁スペーサ23」は、本願発明の「前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターン(3)と前記第2の導体路パターン(4)との間に」「接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に」「配置」された「スペーサー要素(7)」に相当する。
e また、引用発明の「前記絶縁スペーサ23」は、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたものであ[る]」から、弾性に変形可能なものであると考えるのが自然であり、「開口部27」は「マトリックス状に形成され」ているため、力が作用した領域において複数の接触接続が形成されるといえる。
(ウ) 構成A2に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成A2の観点に関し、次の点において一致する。
「前記薄膜に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられており、前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターンと前記第2の導体路パターンとの間に複数の接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素が配置されて」いる点。
エ 構成Bの観点(スペーサー要素の形状)
(ア) 構成Bの特定
構成Bは、「前記スペーサー要素は、第1の方向のみにおいて延在して」いることである。
(イ) 構成Bに係る対比
引用発明の「絶縁スペーサ23」は、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたもの」であるから、第1の方向のみならず第2の方向にも延在するシート状(あるいは格子状)の部材であるといえ、「第1の方向のみにおいて延在」するものではない。
(ウ) 構成Bに係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの観点に関し、次の点において相違する。
本願発明においては、「前記スペーサー要素は、第1の方向のみにおいて延在して」いるのに対して、
引用発明においては、「絶縁スペーサ23」は、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたもの」であり、「第1の方向のみにおいて延在」するものではない点。
オ 構成C1の観点(コンタクト領域と接触接続)
(ア) 構成C1の特定
構成C1は、「前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)のうちの少なくとも1つは、前記スペーサー要素(7)によって、多数のコンタクト領域に分けられており、前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ」ることである。
(イ) 構成C1に係る対比
a 引用発明において、「上側の可撓性シート21に形成された導電パターン24」の「上電極部24a」と、「下側の可撓性シート22に形成された導電パターン25」の「下電極部25a」に形成された「感圧インク(感圧層)19」とは、「絶縁スペーサ23の接点部26に対応する位置」に「形成され」る「開口部27を介して着座部2への荷重印加時に」「接触するような構造となって[いる]」ことは、本願発明の「前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ」ることに相当する。
b また、引用発明の「上電極部24aと感圧層19とが」「前記絶縁スペーサ23」に「マトリックス状に形成された」「複数の円形状の開口部27」「を介して」「接触するような構造」は、本願発明の「前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)のうちの少なくとも1つ」が「前記スペーサー要素(7)によって多数のコンタクト領域に分けられて[いる]」ことに相当する。
(ウ) 構成C1に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成C1の観点に関し、次の点において一致する。
「前記第1の導体路パターンおよび前記第2の導体路パターンのうちの少なくとも1つは、前記スペーサー要素によって、多数のコンタクト領域に分けられており、前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ」る点。
カ 構成C2の観点(コーティングの抵抗)
(ア) 構成C2の特定
構成C2は、「前記導体路パターン(3,4)は、少なくとも部分的に、抵抗を有するコーティングによって形成されており、前記コーティングは、所定の電気的なシート抵抗を有して」いることである。
(イ) 構成C2に係る対比
a 引用発明の「下電極部25a」には、「この下電極部25aを覆うように、加えられる荷重(圧力)に応じて抵抗値が変化する感圧インク(感圧層)19」が形成されており、引用発明の「感圧インク(感圧層)19」は、本願発明の「所定の電気的なシート抵抗を有して」いる「コーティング」に相当する。
b 引用発明の「下電極部25a」は「下側の可撓性シート22に形成された導電パターン25」の一部であるから、前記aを踏まえると、引用発明の「導電パターン25」は、少なくとも部分的に「感圧インク(感圧層)19」(抵抗を有するコーティング)によって形成されているといえる。
(ウ) 構成C2に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成C2の観点に関し、次の点において一致する。
「前記導体路パターンは、少なくとも部分的に、抵抗を有するコーティングによって形成されており、前記コーティングは、所定の電気的なシート抵抗を有して」いる点。
キ 構成C3の観点(接続部の有無)
(ア) 構成C3の特定
構成C3は、「前記第1の導体路パターン(3)および前記第2の導体路パターン(4)は、それぞれ評価回路(102)に接続するための第1および第2の接続部(5,6)を有して」いることである。
(イ) 構成C3に係る対比
a 引用発明において、「観客検知センサ5で検出された検出出力(検出信号)は、映画館の管理室などに設けられた観客管理装置10に入力され、観客管理装置10は、空席判別装置6と、情報管理装置7と、通信装置8とを備えて構成されており」、「空席判別装置6」においては、「A/D変換器40A,40B,…,40n」により「ディジタル信号に変換された観客検知センサ5からの検出出力」が「CPU41」に入力されて、「人や荷物などの着座対象の判別を行う」ことにより、「客席への観客の着座状況を的確に把握する」から、引用発明の「空席判別装置6」は、本願発明の「評価回路(102)」に相当する。
b 引用発明の「上側の可撓性シート21に形成された導電パターン24」及び「下側の可撓性シート22に形成された導電パターン25」は、それぞれ「リード部24b」及び「リード部25b」を有するところ、かかる「リード部24b」及び「リード部25b」は「観客検知センサ5からの検出出力」を「空席判別装置6」に伝送しているといえる。
c そうすると、引用発明において、「導電パターン24」及び「導電パターン25」は、それぞれ「空席判別装置6」に接続するための部材を備えていることは明らかであり、かかる部材は、本願発明の「評価回路(102)に接続するための第1および第2の接続部(5,6)」に相当する。
(ウ) 構成C3に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成C3の観点に関し、次の点において一致する。
「前記第1の導体路パターンおよび前記第2の導体路パターンは、それぞれ評価回路に接続するための第1および第2の接続部を有して」いる点。
ク 構成D1の観点(評価回路の出力)
(ア) 構成D1の特定
構成D1は、「前記評価回路は、位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する」ことである。
(イ) 構成D1に係る対比
a 引用発明の「空席判別装置6」においては、「観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し」ており、かかる「荷重の分布パターン」は、「可撓性シート21の上電極部24aの上方(接点部26の上方)から下方向に荷重(F)が加えられ、可撓性シート21が撓んで上電極部24aが感圧層19と接触し、更に接点部26に荷重(F)が加えられていくと、感圧層19に加わる荷重値(即ち、圧力値)FがF1,F2,F3,…,Fnと増えていき、感圧層19の抵抗値RがR1,R2,R3,…,Rnとなだらかに低下してい[く]」ことに対応したものである。
b 前記aを踏まえると、引用発明の「空席判別装置6」は、「感圧メンブレンスイッチの接点部26A~26n」の位置に関連して、かつ、「荷重(F)」の作用と「絶縁スペーサ23」の押しつぶしによって生じる「抵抗値R」の数値「R1,R2,R3,…,Rn」に関連して、出力信号を出力するものであるといえる。
c そうすると、引用発明の「空席判別装置6」は、本願発明の「位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する」「前記評価回路」に相当する。
(ウ) 構成D1に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成D1の観点に関し、次の点において一致する。
「前記評価回路は、位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する」点。
ケ 構成C4の観点(接続部の配置)
(ア) 構成C4の特定
構成C4は、「前記第1および第2の接続部(5,6)は、前記第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されて」いることである。
(イ) 構成C4に係る対比
本願発明における「接続部」の配置は、構成C4により、「スペーサー要素」が「延在」する「第1の方向」を基準として特定されるものであるところ、前記エ(イ)において検討したとおり、引用発明の「絶縁スペーサ23」(「スペーサー要素」に相当)は「第1の方向のみにおいて延在」するものではないため、引用発明の接続部(前記キを参照)が、「第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されて」いるとはいえない。
(ウ) 構成C4に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成C4の観点に関し、次の点において相違する。
本願発明においては、「前記第1および第2の接続部(5,6)は、前記第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されて」いるのに対して、
引用発明においては、「第1および第2の接続部(5,6)」に相当する接続部を備えているものの、その配置は、構成C4のような配置であるとはいえない点。
コ 構成D2の観点(マイクロコントローラ)
(ア) 構成D2の特定
構成D2は、「前記評価回路は、クロック制御されたマイクロコントローラを有しており、前記マイクロコントローラは、順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部(5,6)での前記抵抗値を測定し、メモリユニット(120)に格納」することである。
(イ) 構成D2に係る対比
a 引用発明の「空席判別装置6」においては、「A/D変換器40A~40n」により「ディジタル信号に変換された観客検知センサ5からの検出出力は、CPU41にそれぞれ入力され」、「CPU41は、A/D変換器40A~40nから出力されたディジタル信号に基づいてRAM42の演算領域を使い観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し」ているところ、「CPU41」は所定のクロック信号により動作タイミングの制御がされていることは自明であるから、引用発明の「空席判別装置6」の「CPU41」は、本願発明の「前記評価回路」が有する「クロック制御されたマイクロコントローラ」に相当する。
b ここで、引用発明においては、「可撓性シート21の上電極部24aの上方(接点部26の上方)から下方向に荷重(F)が加えられ、可撓性シート21が撓んで上電極部24aが感圧層19と接触し、更に接点部26に荷重(F)が加えられていくと、感圧層19に加わる荷重値(即ち、圧力値)FがF1,F2,F3,…,Fnと増えていき、感圧層19の抵抗値RがR1,R2,R3,…,Rnとなだらかに低下してい[く]」ことを想定しているから、「CPU41」においては、測定データの取得に係るサンプリング周期が設定されており、かかるサンプリング周期は、本願発明の「前記第1および第2の接続部(5,6)での前記抵抗値を測定」するための「順次連続するクロック周期」に相当する。
c また、引用発明の「CPU41」は、「RAM42の演算領域を使い観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し」ているから、上記サンプリング周期において取得された「抵抗値R」に対応するデータは、「RAM42」に格納されていることは明らかである。
d 前記a~cを踏まえると、引用発明の「CPU41」は、本願発明の「前記評価回路」が有する「クロック制御されたマイクロコントローラ」であって、「順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部(5,6)での前記抵抗値を測定し、メモリユニット(120)に格納」する「マイクロコントローラ」に相当する。
(ウ) 構成D2に係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成D2の観点に関し、次の点において一致する。
「前記評価回路は、クロック制御されたマイクロコントローラを有しており、前記マイクロコントローラは、順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部での前記抵抗値を測定し、メモリユニットに格納」する点。
サ 構成Eの観点(比較器ユニット)
(ア) 構成Eの特定
構成Eは、「比較器ユニット(121)が前記マイクロコントローラ(102)に接続されており、前記比較器ユニットは、現下の抵抗値を、前記メモリユニット(120)に格納されている抵抗値と比較し、各前記格納されている抵抗値から所定の値ぶん、前記現下の抵抗値が偏差している場合に、出力信号(122)を出力するように形成されている」ことである。
(イ) 構成Eに係る対比
a 引用発明の「空席判別装置6」の「CPU41」は、「A/D変換器40A~40nから出力されたディジタル信号に基づいてRAM42の演算領域を使い観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターンを演算により割り出し、ROM43内に予め格納してある荷重分布パターンデータを読み出してこれらを比較照合し、人や荷物などの着座対象の判別を行うものである」ところ、当該「比較照合」は、「CPU41」自身が行うというよりも、「CPU41」からの命令を受けた比較ユニットが「比較照合」していると考えるのが自然であるから、引用発明においても、本願発明の「前記マイクロコントローラ(102)に接続されて[いる]」「比較器ユニット(121)」に相当する構成が備わっているといえる。
b ここで、引用発明の「観客検知ンサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターン」は、「感圧層19の抵抗値R」に由来するものであるから、本願発明の「現下の抵抗値」に相当する。
c そうすると、引用発明における「観客検知センサ5の接点部26A~26nの接点マトリックスに基づく荷重の分布パターン」と、「予め格納してある荷重分布パターンデータ」を「比較照合」する比較器ユニットは、本願発明の「現下の抵抗値」を「格納されている抵抗値と比較」する「比較器ユニット(121)」に相当する。
d 他方、引用発明は、測定値を予め設定された固定データ(ROM値)と比較するものであって、本願発明のように「現下の抵抗値」を「メモリユニットに格納されている抵抗値」(過去に測定・格納された動的な値)と比較し、その「偏差」に基づいて出力信号を出力するものではない。
(ウ) 構成Eに係る対比のまとめ
したがって、本願発明と引用発明は、構成Eの観点に関し、次の点においては一致するが、以下の点において相違する。
a 構成Eに係る一致点
「比較器ユニットが前記マイクロコントローラに接続されており、前記比較器ユニットは、現下の抵抗値を、格納されている抵抗値と比較」する点。
b 構成Eに係る相違点
「前記比較器ユニット」について、
本願発明においては、「現下の抵抗値」と「比較」する「抵抗値」が「前記メモリユニット(120)に格納されている」ものであり、「各前記格納されている抵抗値から所定の値ぶん、前記現下の抵抗値が偏差している場合に、出力信号(122)を出力するように形成されている」のに対して、
引用発明においては、測定値を予め設定された固定データ(ROM値)と比較している点。
(2) 一致点の認定
前記(1)の対比分析の結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
[一致点]
「力センサシステムおよび/または圧力センサシステム用の平面状の力センサユニットであって、
前記力センサユニットは、第1の絶縁性の薄膜および第2の絶縁性の薄膜を有し、前記絶縁性の薄膜は、相互に重なって配置されており、自身の向かい合っている面で、第1の導体路パターンおよび第2の導体路パターンを担持し、前記薄膜に、弾性的に互いに離れるように予負荷が加えられており、前記薄膜のうちの少なくとも1つに力が作用するときにのみ、前記第1の導体路パターンと前記第2の導体路パターンとの間に複数の接触接続が形成されるように、前記導体路パターンの間に弾性に変形可能なスペーサー要素が配置されており、
前記第1の導体路パターンおよび前記第2の導体路パターンのうちの少なくとも1つは、前記スペーサー要素によって、多数のコンタクト領域に分けられており、前記薄膜のうちの1つに力が作用すると、前記第1の薄膜および第2の薄膜の前記導体路パターンの間で接触接続が生じ、
前記導体路パターンは、少なくとも部分的に、抵抗を有するコーティングによって形成されており、前記コーティングは、所定の電気的なシート抵抗を有しており、
前記第1の導体路パターンおよび前記第2の導体路パターンは、それぞれ評価回路に接続するための第1および第2の接続部を有しており、
前記評価回路は、位置に関連して、かつ、力の作用と前記スペーサー要素の押しつぶしによって生じる抵抗値の数値に関連して、出力信号を出力する平面状の力センサユニットにおいて、
前記評価回路は、クロック制御されたマイクロコントローラを有しており、前記マイクロコントローラは、順次連続するクロック周期において、前記第1および第2の接続部での抵抗値に関連する値を測定し、メモリユニットに格納し、
比較器ユニットが前記マイクロコントローラに接続されており、前記比較器ユニットは、現下の抵抗値を、格納されている抵抗値と比較する、
平面状の力センサユニット。」の発明である点。
(3) 相違点の認定
前記(1)の対比分析の結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、次のア~ウの点において相違する。以下、「相違点1」~「相違点3」という。
ア 相違点1
スペーサー要素の構成について、
本願発明においては、「前記スペーサー要素は、第1の方向のみにおいて延在して」いるのに対して、
引用発明においては、「絶縁スペーサ23」は、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成されたもの」であり、「第1の方向のみにおいて延在」するものではない点。
イ 相違点2
接続部の配置について、
本願発明においては、「前記第1および第2の接続部(5,6)は、前記第1の方向に対して実質的に垂直な方向において、前記センサユニットの相互に反対の終端部に形成されて」いるのに対して、
引用発明においては、「第1および第2の接続部(5,6)」に相当する接続部を備えているものの、スペーサー要素が第1の方向のみにおいて延在するものではないため、接続部が第1の方向に対して垂直な方向において相互に反対の終端部に形成されているとはいえない点。
ウ 相違点3
比較器ユニットの構成について、
本願発明においては、「現下の抵抗値」と「比較」する「抵抗値」が「前記メモリユニット(120)に格納されている」ものであり、「各前記格納されている抵抗値から所定の値ぶん、前記現下の抵抗値が偏差している場合に、出力信号(122)を出力するように形成されている」のに対して、
引用発明においては、測定したデータ(荷重の分布パターン)を、ROM43内に予め格納してある荷重分布パターンデータと比較照合し、判別を行うものであって、現下の抵抗値を、メモリユニットに格納されている抵抗値(過去に測定された抵抗値)と比較し、その偏差に基づいて出力するものではない点。
5 判断
前記4(3)において認定した相違点1~3について検討する。
(1) 相違点1について(スペーサー要素の形状)
ア 「導体パターンが形成された二つの薄膜をスペーサー部材を介して対向させ、加圧時に薄膜同士が接触することにより導体パターンを導通させる構造において、スペーサー部材を一方向のみに延在する形状とすること」は、当業者にとって周知技術である(前記3(3)ア[周知技術1]参照)。
イ ここで、引用発明の「観客検知センサ5」もまた、対向する可撓性シート(薄膜)が加圧時に接触して導通する構成のものであるから、前記周知技術1を採用する契機はあるというべきである。
ウ また、引用発明におけるスペーサ(絶縁スペーサ23)は、通常時はシート間を離間させ、加圧時には開口部(穴27)を介して導電パターン同士の接触を許容する機能を有するものであるところ、これを一方向に延在するストライプ状のスペーサに置換したとしても、スペーサが存在する部分でシート間を離間させ、スペーサ間の空間(スリット部分)で接触を許容するという基本的な機能は維持され、着座検知という目的を阻害する事情は見当たらない。
エ したがって、引用発明において、前記周知技術1を適用し、「絶縁スペーサ23」として、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成された」ものに代えて、スペーサー要素を第1の方向のみにおいて延在する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2) 相違点2について(接続部の配置)
ア 一般に、センサユニット等の電子部品において、外部回路との接続部(端子部)をどの位置に設けるかは、ユニットの形状、配線の引き回しの効率、実装スペース等の事情に応じて当業者が適宜決定し得る設計的事項である。
イ ここで、「導体パターンが形成された対向する二つの薄膜において、外部への接続を行うための端子部を、薄膜の本体部分からみて相互に反対側の位置に配置すること」は、当業者にとって周知技術である(前記3(3)イ[周知技術2]参照)。
ウ したがって、引用発明において、相違点1に係る周知技術1の適用に伴いスペーサー要素を一方向に延在する形状とするに際し、配線の取り回し等を考慮して、前記周知技術2に倣って、接続部を当該延在方向(「第1の方向」に相当。)に対して垂直な方向において相互に反対の終端部に形成するように設計変更することは、当業者が適宜なし得たことである。
(3) 相違点3について(比較器ユニットの処理)
ア 引用発明においては、「可撓性シート21の上電極部24aの接点部26に荷重(F)が加えられていない状態(即ち、人や物が客席1の着座部2の上にない状態)では、上電極部24aと下電極部25aとが互いに絶縁スペーサ23で十分に離されているため、その抵抗値は無限大(∞)であるが、可撓性シート21の上電極部24aの上方(接点部26の上方)から下方向に荷重(F)が加えられ、可撓性シート21が撓んで上電極部24aが感圧層19と接触し、更に接点部26に荷重(F)が加えられていくと、感圧層19に加わる荷重値(即ち、圧力値)FがF1,F2,F3,…,Fnと増えていき、感圧層19の抵抗値RがR1,R2,R3,…,Rnとなだらかに低下していき」としていることを踏まえると、引用発明の「観客検知センサ5」は、荷重(F)が加えられていない状態から、荷重が次第に加えられていく状態に遷移する際の時間的な変化を検出可能なように構成されているといえる。
イ ここで、引用発明は「客席への観客の着座状況を的確に把握するための観客検知システム」であるところ、上述のとおり、「観客検知センサ5」が時間的な変化を検出可能なように構成されていることを踏まえると、上記「着座状況」の「把握」には、単に「人や荷物などの着座対象」が「客席」に存在するか否かという「着座の有無」を判別することに留まらず、例えば着座動作に伴う過渡的な変化を捉えることも想定されていると解するのが相当である。
ウ そのような過渡的な変化を検知するために、ある時点での測定値をその直前の時点での測定値と比較することや、一定時間前の測定値(メモリに格納された値)との偏差(変化分)を抽出する手法を採用することは、信号処理における常用手段の範疇にすぎない。
エ この点に関し、引用発明の「空席判別装置6」は、「CPU41」と「RAM42」(書き換え可能なメモリ)を備えていることから、「RAM42」に過去の測定データを蓄積し、これと現在の値とを比較演算するようにソフトウェアないし処理ロジックを変更することに、技術的な困難性は認められない。
オ したがって、引用発明において、「ROM43内に予め格納してある荷重分布パターンデータ」(固定データ)との比較に代えて、あるいは、かかる固定データとの比較と共に、「RAM42」(メモリ)に格納された過去の抵抗値と現下の抵抗値との偏差に基づいて出力を行うようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(4) 総合評価
本願発明は、上記構成を採用することによって、スペーサー要素の寸法が小さい場合や過度の圧力が作用した場合等においても誤操作を回避できる等の効果を奏するものと解されるが、これらの効果は、引用発明に周知技術1を適用し、かつ、周知技術2に倣って適宜設計変更を行うことによって得られる構成から当然に予測される範囲の効果にすぎず、引用発明及び周知技術1、2からは予測し得ない顕著な効果であるとは認められない。
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 請求人の主張について
(1) 審判段階における主張
ア 主張の概要
請求人は、審判請求書及び令和6年12月10日に提出された上申書において、特許法36条6項2号に規定する明確性要件違反、及び、同条4項1号に規定する委任省令要件違反の拒絶理由が存在しないことを主張する。
イ 主張の検討
しかしながら、原査定においては、「…請求項1-9に係る発明については、拒絶理由通知書に記載した理由3(進歩性)が解消しているかどうかの判断を行っていない。」として進歩性の判断を留保しており、進歩性欠如の拒絶の理由が解消したと説示していないにもかかわらず、請求人は、この点について何ら反論していない。
そして、本願発明には、上述したとおり、審査段階で通知された特許法29条2項の拒絶の理由と実質的に同じ拒絶理由が依然存在するものであるから、特許法36条6項2号、及び、同条4項1号の拒絶理由の有無にかかわらず、本願は拒絶されるべきである。
(2) 審査段階における主張
ア 主張の概要
念のため、令和6年2月29日に提出された意見書の主張についても検討しておくと、請求人は、上記意見書において以下のとおり主張している。
「引例2では、図7に示す絶縁スペーサ23は、四角形の縦方向および横方向に延在しています。このように、絶縁スペーサ23が縦方向および横方向に延在することにより、図6に示すように、マトリックス状の荷重分布パターンが形成されます。引例2では、マトリックス状の荷重分布パターンにおいて、図6(a)のように上部電極および下部電極の接触箇所が多い場合、体重83kgの大人が着座部2に着席したと判断し、図6(c)のように上部電極および下部電極の接触箇所が少ない場合、体重22kgの子供が着座部2に着席したと判断します(段落0019)。引例2において、マトリックス状の荷重分布パターンを形成するために、絶縁スペーサ23を縦方向および横方向に延在させることは必須の構成のため、絶縁スペーサ23が縦方向および横方向の一方向のみに延在させる構成に変更することには阻害要因があります。」
イ 主張の検討
(ア) 引用文献2の図6に示された荷重分布パターンは、それぞれ以下の着座状況に対応するものである(引用文献2の段落【0019】を参照)。
図6(a):体重83kgの大人の着座状況
図6(b):体重48kgの大人の着座状況
図6(c):体重22kgの子供の着座状況
図6(d):体重 8kgの子供の着座状況
「【図6】
[図:0001435635000007.jpg]
」
(イ) 引用発明の「絶縁スペーサ23」について、「マトリックス状に形成されたもの」から、縦方向あるいは横方向の一方向のみに延在させる構成に変更したとしても、当該延在方向に沿った接触面積に応じた出力信号の大小関係に基づいて大人と子供の判別がなお可能であるといえる。
そうすると、引用発明において、絶縁スペーサ23を縦方向および横方向に延在させることが必須の構成であるとまではいえず、絶縁スペーサ23が縦方向および横方向の一方向のみに延在させる構成に変更することに阻害要因があるとはいえない。
そして、前記5(1)において、相違点1について検討したとおり、引用発明に前記周知技術1を適用し、「絶縁スペーサ23」として、「シート状の部材に複数の円形状の開口部27がマトリックス状に形成された」ものに代えて、スペーサー要素を第1の方向のみにおいて延在する構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるから、前記アの主張を採用することはできない。
(3) まとめ
前記(1)及び(2)を踏まえると、請求人の主張によっても、前記5において示した当審の判断が左右されることはない。
第5 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-011640