特許拒絶査定不服審判
2024-011880
軸力センサアセンブリ、ロボットグリッパー及びロボット
- 審判番号
- 2024-011880
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-571244
- 請求日
- 2024年07月18日
- 審決日
- 2026年02月25日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャンハイ・フレクシブ・ロボティクス・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人】フレクシブ・リミテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 井海田 隆
- 分類
- P18 .121-Z (G01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-571244号「軸力センサアセンブリ、ロボットグリッパー及びロボット」拒絶査定不服審判事件〔令和4年1月6日国際公開、WO2022/000117、令和5年6月27日国内公表、特表2023-527179号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月28日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年11月18日 :翻訳文の提出
令和5年11月22日付け:拒絶理由通知書
令和6年 2月27日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月18日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 8月29日付け:前置報告書
同年 9月12日 :上申書
同年12月16日 :上申書
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月18日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
軸力を検出するための軸力センサアセンブリであって、
内側取り付け部、外側取り付け部、および前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された多層接続部材を含む取り付けブラケットであって、前記多層接続部材は、前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含み、前記多層接続部材は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順であるものと、
前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサと、を含み、
前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である
ことを特徴とする軸力センサアセンブリ。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】を掲載する。
<本願発明の分説>
X 軸力を検出するための軸力センサアセンブリであって、
A 内側取り付け部、外側取り付け部、および前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された多層接続部材を含む取り付けブラケットであって、前記多層接続部材は、前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含み、前記多層接続部材は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順であるものと、
B 前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサと、を含み、
C 前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である
ことを特徴とする
X 軸力センサアセンブリ。
<参考図>
【図3】
[図:0001437780000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「 【0002】
既存の力センサは、主にひずみゲージを使用して、荷重下で変形した構造の局所的なひずみを検出する。これらのセンサは、抵抗器の抵抗変化に基づいて構造の変形を検出するために、変形可能な構造に取り付けられた接触型抵抗ひずみトランスデューサーを使用する。ただし、変形可能な構造は、本質的に温度変化、接着材料、全方向の複雑な歪み、応力集中、衝撃荷重などに敏感である。非接触型の力センサは、容量性、誘導性、または光学トランスデューサーを使用して、荷重下での構造変形による全体的な変位を検出し、したがって、抵抗感知、局所応力、接着の問題に関連するひずみゲージセンサのいくつかの欠点を排除する。ただし、ほとんどの非接触型の力センサは、軸外荷重によって引き起こされる検出ノイズの影響を受けやすい可能性があり、これは、特定の荷重(例えば、軸力)でのみ変形する一方で、他の荷重(例えば、曲げモーメント)に対しては非常に耐性のある構造を作成するのは難しいためである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、軸力を検出するための軸力センサアセンブリを提供する。前記軸力センサアセンブリは、取り付けブラケットと第1のセンサとを含む。前記取り付けブラケットは、内側取り付け部と、外側取り付け部と、前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された多層接続部材と、を含む。前記多層接続構造は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順である。前記第1のセンサは、前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2020/0001472号明細書
引用文献2.特開平3-96828号公報
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である米国特許出願公開第2020/0001472号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付し、また原文の後に、括弧書きで日本語訳を記載した。)。
ア 段落[0002]
「TECHNICAL FIELD
[0002] The present disclosure generally relates to sensor structure and technology, and in particular to an axial force sensor, a robot gripper, and a robot having the axial force sensor.」
(技術分野
[0002] 本開示は一般的にセンサー構造及び技術に関連し、特に軸力センサー、ロボットグリッパー及び軸力センサーを備えたロボットに関連する。)
イ 段落[0019]、Fig.1~Fig.2
「[0019] Referring to FIG. 1, an axial force sensor 100 is illustrated according to certain embodiments of the present disclosure. The axial force sensor 100 may include a sensing diaphragm 10, a holding structure 30, a shielding structure 40, and a hard stop 50. As shown in FIG. 2, the sensing diaphragm 10 may include an inner ring 11, an outer ring 12, a connecting element 13, and a center hole 14. The connecting element 13 may be connected between the inner ring 11 and the outer ring 12. In certain embodiments, the sensing diaphragm 10 may be made of one or more highly robust materials, such as aluminum alloy, titanium alloy, and stainless-steel alloy. The connecting element 13 is more compliant in a direction of the axial force to be detected than in other loading directions. For example, the connecting element 13 may be moderately compliant in the axial direction of the sensing diaphragm 10 but considerably stiff in other loading directions (e.g., stiff against both forces and moments in other loading directions). Therefore, forces and moments in directions other than the force in the axial direction cannot significantly deflect the structure to change the sensor output.」
([0019] 図1を参照すると、特定の実施形態に従った軸力センサー100が示されている。軸力センサー100は、センサーダイヤフラム10、保持構造30、シールド構造40及びハードストップ50を含むことができる。図2に示すように、センサーダイヤフラム10は、内リング11、外リング12、接続要素13及び中心穴14を含むことができる。接続要素13は、内リング11と外リング12の間に接続される場合がある。特定の実施形態では、センサーダイヤフラム10は、アルミニウム合金、チタン合金、ステンレス鋼合金などの1つ以上の高強度材料で作られる場合がある。接続要素13は、検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟である。例えば、接続要素13は、センサーダイヤフラム10の軸方向において適度に柔軟であるが、他の荷重方向(例えば、他の荷重方向における力やモーメントに対して堅牢)においてはかなり硬い。したがって、軸方向の力以外の方向における力やモーメントは、構造を大きく変位させてセンサー出力を変えることはできない。)
「
[図:0001437780000002.jpg]
」
「
[図:0001437780000003.jpg]
」
ウ 段落[0020]、Fig.3
「[0020] FIG. 3 illustrates an example cross-sectional view of an axial force sensor 100 showing a signal pair 20. Each signal pair 20 may include a signal emitter 21 and a signal receiver 22. The signal emitter 21 and the signal receiver 22 may be connected to different parts of the sensing diaphragm 10. That is, in some examples, if the signal emitter 21 is coupled to the inner ring 11 of the sensing diaphragm 10, the signal receiver 22 may be coupled to the outer ring 12 of the sensing diaphragm 10. In other examples, if the signal emitter 21 is coupled to the outer ring 12 of the sensing diaphragm 10, the signal receiver 22 may be coupled to the inner ring 11 of the sensing diaphragm 10. When an axial load is applied to the outer ring 12 (or the inner ring 11) of the sensing diaphragm 10, the outer ring 12 deflects from the inner ring 11, which changes the readings of the signal receiver 22.」
([0020] 図3は、信号対20を示す軸力センサー100の断面図の例を示している。各信号対20は、信号発信器21と信号受信器22を含むことができる。信号発信器21と信号受信器22は、センサーダイヤフラム10の異なる部分に接続される場合がある。つまり、いくつかの例では、信号発信器21がセンサーダイヤフラム10の内リング11に接続されている場合、信号受信器22はセンサーダイヤフラム10の外リング12に接続されることになる。別の例では、信号発信器21がセンサーダイヤフラム10の外リング12に接続されている場合、信号受信器22はセンサーダイヤフラム10の内リング11に接続されることになる。外リング12(又は内リング11)に軸荷重が加わると、外リング12は内リング11から変位し、信号受信器22の読み取り値が変化する。)
「
[図:0001437780000004.jpg]
」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「軸力センサー100であって、([0019])
軸力センサー100は、センサーダイヤフラム10、保持構造30、シールド構造40及びハードストップ50を含み、([0019])
センサーダイヤフラム10は、内リング11、外リング12、接続要素13及び中心穴14を含み、([0019])
接続要素13は、内リング11と外リング12の間に接続され、検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟であり、([0019])
各信号対20は、信号発信器21と信号受信器22を含み、信号発信器21と信号受信器22は、センサーダイヤフラム10の異なる部分に接続され、([0020]) 外リング12又は内リング11に軸荷重が加わると、外リング12は内リング11から変位し、信号受信器22の読み取り値が変化する、([0020])
軸力センサー100。」
5 引用文献2~5の記載事項並びに引用文献2技術事項及び周知技術1の認定
(1) 引用文献2に記載された事項及び引用文献2技術事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開平3-96828号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「[産業上の利用分野]
本発明は、面に作用する圧力を検出する圧力検出器の製造方法に関する。」(第2ページ左上欄16~18行)
「第11図は平行平板構造を用いた圧力検出器の側面図である。図で、20は棒状体、21a,21b,21c,21dは棒状体20と下厚板6との間に連結されたたわみ部である。各たわみ部21a~21dは薄い平板で形成され、たわみ部21a,21cは互いに同一方向に平行に配置され、かつ、たわみ部21b,21dも互いにたわみ部21a,21cと同一方向に平行に配置されている。たわみ部21a~21dより成る平行平板構造は、図で上下方向の力には弾性を有するが、他の方向の力に対しては高い剛性を有する。22,23はたわみ部21a~21dを形成するためにあけられた穴である。24は弾性を有するパッキングを示す。なお、17は第10図(b)に示すものと同じ変換部である。下厚板6にはこのような圧力検出器がマトリクス状に多数配置されている。
棒状体20の上端面に圧力が作用すると、棒状体20は下方へ押圧されるが、このとき、たわみ部21a~21dは棒状体20の押圧力により変形し、棒状体20の下方への変位を可能にする。たわみ部21a~21dは棒状体20に対して、下厚板6の表面に垂直な方向(図で上下方向)の変位のみを許し、他の方向の変位を抑える特性を有する。したがって、棒状体20は第10図(b)に示すように穴15に案内されなくても垂直方向に変位する。変換部17からは棒状体20の変位に応じた信号が出力される。棒状体20の上端面に作用している圧力が除去されると、棒状体20はたわみ部21a~21dにより原位置に復帰せしめられる。」(第3ページ右上欄5行~同左下欄14行)
「
[図:0001437780000005.jpg]
」
イ 引用文献2技術事項の認定
前記アに摘記した引用文献2の記載事項から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2技術事項]
「圧力検出器の平行平板構造であって、棒状体20と下厚板6との間に連結されたたわみ部21a~21dを備え、
たわみ部21a~21dは薄い平板で形成され、たわみ部21a,21cは互いに同一方向に平行に配置され、かつ、たわみ部21b,21dも互いにたわみ部21a,21cと同一方向に平行に配置され、
たわみ部21a~21dより成る平行平板構造は、上下方向の力には弾性を有するが、他の方向の力に対しては高い剛性を有する、
平行平板構造。」
(2) 引用文献3に記載された事項
前置報告書において引用された、本願の出願前に発行された文献である特公昭50-8345号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「本発明はひずみゲージによって構成した受感部に加わる荷重の大きさを電気的に測定する荷重変換器のうち低荷重の測定に使用し、高い精度で測定する変換器に関するものである。」(第1ページ左欄22行~25行)
「本発明を図によって詳細に説明すれば第3図、第4図に於いてひずみゲージを接着する感知片1,2,3,4と5,6,7,8はそれぞれ十文字を形成し、ひずみゲージをリング10のつけ根又は中間連絡部材9のつけ根に接着し(図示しない)、いずれも曲げひずみ最大の位置に接着する。感知片1,2,3,4,5,6,7,8(以下1~8と示す)のそれぞれの端部をリング10に十文字状に剛結し、更に上部十文字部分1,2,3,4(以下1~4と示す)と下部十文字部分5,6,7,8(以下5~8として示す)を任意の間隔をもって連結し、リング間隔方向の中央部分にステー11をリング状に配する。一方感知片1~4、同じく5~8の十文字梁集合点に於いてそれぞれを連結する中間連絡部材9を配す。いまひずみゲージをリング10と連結する側の感知片のつけ根に接着したとすれば測定荷重WによってひずみゲージS1,S2,S3,S4は引張ひずみを、S5,S6,S7,S8のひずみゲージは圧縮ひずみを検出する。又ひずみゲージをそれぞれ中間連絡部材9とのつけ根に接着すれば(図示しない)S1,S2,S3,S4は圧縮ひずみ、S5,S6,S7,S8は引張ひずみを検知する。この構造は一体構造であるほか、第3図に示すO-O’面で分割して上部感知片1~4とリング10、下部感知片5~8とリング10とを加工し、そのあとO-O’面で溶接して構成されるものも含む。
本発明の第1の改良点は回転モーメントによっても感知片の撓みの形状が不変であり、従って測定荷重対ひずみの関係が全く直線となることである。この理由は、感知片1~4と5~8がリング10によつてある距離をもっており抵抗モーメントが高くなりそのため感知片の撓み形状が測定荷重による梁に直角な力が加わった理論的な撓みに近くなる。そして1~4と5~8の感知片の距離が長くなればなる程効果が上ることも明白である。」(第1ページ右欄32行~第2ページ左欄30行)
「
[図:0001437780000006.jpg]
」
(3) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において先行技術文献として提示された、本願の出願前に発行された文献である特開2017-58337号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、ロボットの脚部や手先に作用する複数軸方向の並進力およびモーメントを測定するための力覚センサに関する。」
「【0018】
次に、図3は、力覚センサ16のセンサ本体18の構造を示す斜視図である。
力覚センサ16では、脚先部15からかかる力(荷重)、モーメントの方向を特定するために、X軸、Y軸、Z軸からなる3次元の座標系が図3に示されるように設定されている。この場合、脚部14の長さ方向にZ軸が延び、脚部14の長さ方向に垂直な平面がX-Y平面である。
【0019】
力覚センサ16のセンサ本体18は、その中心にある柱状の中心軸部21と、中心軸部21の一端部側から放射状に延び、歪の測定面を有する測定梁部22a乃至22dと、中心軸部21の他端部側から放射状に延びる支持梁部24a乃至24dと、測定梁部22a乃至22dの各々と支持梁部24a乃至24dの各々を連結する連結部23a乃至23dと、から構成されている。このようなセンサ本体18の材料は、例えば、アルミニウムやアルミ合金などが用いられている。」
「【0032】
図2、図3において、X軸回りのモーメントが、脚先部15から荷重作用部20を介してセンサ本体18に作用したとする。このとき、測定梁部22b、22dが変形するだけでなく、連結部23b、23dによって連結されている支持梁部24b、24dも同時に変形することになる。つまり、モーメントによる荷重は、測定梁部22b、22dと支持梁部24b、24dに分散されるので、相対的に、測定梁部22b、22dのモーメントに対する剛性を高めることができる。X軸方向の並進力が作用した場合も同様である。
【0033】
本実施形態では、このようにモーメントや並進力による荷重を分散させるために、測定梁部22a乃至22dとともに、支持梁部24a乃至24dとが4本設けられているので、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りの全ての方向のモーメントや並進力が作用した場合も、剛性を高めることが可能である。」
「【図3】
[図:0001437780000007.jpg]
」
(4) 引用文献5に記載された事項
当審が新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2015-55473号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、力覚センサに関し、特に、XYZ三次元座標系における所定座標軸方向の力および所定座標軸まわりのモーメントを検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットをはじめとする産業機器では、XYZ三次元座標系における所定座標軸方向の力もしくは所定座標軸まわりのモーメントを検出する力覚センサが、広く利用されている。また、このような力覚センサは、人間の指による操作入力を検知する用途にも利用できるため、様々な電子機器用の入力装置としても組み込まれている。」
「【0044】
図4(a)は、本発明に係る力覚センサに用いられる基本構造体200の側断面図、図4(b)は、その上面図である。ここでも、説明の便宜上、図示のようなXYZ三次元座標系を定義して、以下の説明を行うことにする。なお、XYZ三次元座標系の原点Oの位置は、この基本構造体200に外力として加えられるモーメントMyの中心軸となるY軸およびモーメントMxの中心軸となるX軸の交点として定義されるべきものである。図では、便宜上、基本構造体200のほぼ中心位置に原点Oをプロットしているが、必ずしも正確な位置を示すものではない。
【0045】
図4(a)は、この基本構造体200をXZ平面で切断した側断面図であり、その中心部に原点Oを定義し、図の右方向にX軸、上方向にZ軸、紙面垂直奥方向にY軸が定義されている。一方、図4(b) は、この基本構造体200を上方から見た状態を示す上面図であり、図の右方向にX軸、上方向にY軸、紙面垂直手前方向にZ軸が定義されている。
【0046】
図4(b)の上面図に示されているとおり、基本構造体200の構造は、図1に示した従来の基本構造体100の構造に類似している。すなわち、基本構造体200は、全体的にZ軸を中心軸とした円柱形の外形をなし、円筒形状をした筒状部材210と、円柱形状をした中心部材230と、ワッシャ形状をした可撓性接続部材221,222と、を有している。基本構造体100との大きな違いは、中心部材230の少なくとも一部分(図示の例の場合は、下半分の部分)が円筒部材210内に収容されており、円筒部材210と中心部材230との間が、2枚の可撓性接続部材221,222によって接続されている点である。」
「【図4】
[図:0001437780000008.jpg]
」
(5) 周知技術1の認定
前記(1)~(4)で摘記した引用文献2~5の記載に例示されているように、次の技術事項は、周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。
[周知技術1]
「外側部材と内側部材、及びこれらを接続する接続部材を有するダイヤフラム支持構造において、剛性の向上などのために前記接続部材を多層構造とすること。」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(軸力センサアセンブリ)
引用発明の「軸力センサー100」が軸力を検出することは当然であるから、本願発明にいうところの「軸力を検出するための軸力センサアセンブリ」に相当するものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「軸力を検出するための軸力センサアセンブリ」の発明である点。
イ 構成Aの観点(取り付けブラケット)
(ア) 引用発明の「内リング11」、「外リング12」及び「センサーダイヤフラム10」は、それぞれ本願発明の「内側取り付け部」、「外側取り付け部」及び「取り付けブラケット」に相当する。
(イ) 引用発明の「内リング11と外リング12の間に接続され、検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟であ[る]」「接続要素13」と、本願発明の「前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された多層接続部材」であって、「前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含み、」「検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順である」「多層接続部材」は、「前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された」「接続部材」であって、「検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順である」「接続部材」である点で共通する。
(ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Aの観点における一致点
「内側取り付け部、外側取り付け部、および前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された」「接続部材を含む取り付けブラケットであって、」「接続部材は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順であるもの」を含む点。
b 構成Aの観点における相違点
本願発明においては、接続部材は「多層接続部材」であって、「前記多層接続部材」が「前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含[む]」のに対して、
引用発明においては、「接続要素13」は二つのダイヤフラムを含む多層構造を有していない点。
ウ 構成Bの観点(センサ)
前記イを踏まえると、引用発明の「信号発信器21と信号受信器22を含み、信号発信器21と信号受信器22は、センサーダイヤフラム10の異なる部分に接続され、」「外リング12または内リング11に軸荷重が加わると、外リング12は内リング11から変位し、信号受信器22の読み取り値が変化する」ように構成された「各信号対20」は、本願発明の「前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサ」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサ」を含む点。
エ 構成Cの観点(ダイヤフラム間の距離)
引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を備えていないから、本願発明と引用発明は、次の点において相違する。
本願発明においては、「前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である」のに対し、
引用発明においては、二つのダイヤフラムを有していない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「軸力を検出するための軸力センサアセンブリであって、
内側取り付け部、外側取り付け部、および前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された接続部材を含む取り付けブラケットであって、前記接続部材は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順であるものと、
前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサと、を含む、
軸力センサアセンブリ。」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明においては、接続部材は「多層接続部材」であって、「前記多層接続部材」が「前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含[む]」のに対して、
引用発明においては、「接続要素13」は二つのダイヤフラムを含む多層構造を有していない点。
(イ) 相違点2
本願発明においては、「前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である」のに対し、
引用発明においては、二つのダイヤフラムを有していない点。
7 判断
相違点1及び2は、いずれも接続部材のダイヤフラムに関するものであって関連性が高いものであるから、両者を併せて検討する。
(1) 引用文献2技術事項に基づく容易想到性
ア 引用文献2技術事項
前記5(1)イにおいて引用文献2技術事項として認定したように、引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「圧力検出器の平行平板構造であって、棒状体20と下厚板6との間に連結されたたわみ部21a~21dを備え、
たわみ部21a~21dは薄い平板で形成され,たわみ部21a,21cは互いに同一方向に平行に配置され、かつ、たわみ部21b,21dも互いにたわみ部21a,21cと同一方向に平行に配置され、
たわみ部21a~21dより成る平行平板構造は、上下方向の力には弾性を有するが、他の方向の力に対しては高い剛性を有する、
平行平板構造。」
イ 二つのダイヤフラムを含む多層接続部材の導出
(ア) 上記引用文献2技術事項における「平行平板構造」の「たわみ部21a~21d」は「棒状体20と下厚板6との間に連結された」ものであるから、「棒状体20と下厚板6」を接続する接続部材であり、また「たわみ部21a~21dは薄い平板で形成され,たわみ部21a,21cは互いに同一方向に平行に配置され、かつ、たわみ部21b,21dも互いにたわみ部21a,21cと同一方向に平行に配置され[る]」ものであるから、「たわみ部21a,21c」及び「たわみ部21b,21d」は、それぞれ棒状体20の軸方向に異なる位置に重ねて配置されて「多層接続部材」を形成する二つのダイヤフラムであるといえる。
(イ) そして、引用発明と引用文献2技術事項は、いずれも力測定に関するものであり、また引用発明の「センサーダイヤフラム10」は「検出される軸力の方向において他の荷重方向よりも柔軟であ[る]」という特性を備える支持構造であるから、同様に「上下方向の力には弾性を有するが、他の方向の力に対しては高い剛性を有する」という特性を備える引用文献2技術事項の「平行平板構造」を引用発明の「センサーダイヤフラム10」に採用する契機はあるというべきである。
(ウ) そうすると、引用発明において、「接続要素13」が二つのダイヤフラムを含む多層構造を有するようにして、前記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ ダイヤフラム間の距離の設定
(ア) 内側取り付け部の直径が、接続される部材の幅を制限し、剛性に影響を与えることや、多層接続部材のダイヤフラム間の距離が全体の剛性などの特性に影響を与えることなどは、当業者にとって自明の範囲内の事項であるから、これらの「直径」と「距離」との間の関係を所望の剛性、柔軟性などが実現されるように相互に調整する程度のことは、設計事項の範囲内のものといえる。
(イ) ここで「前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である」とすることにより、当業者が容易に予想し得ない程の特段の効果が奏されるとも認められない。
(ウ) そうすると、引用発明において、「接続要素13」が二つのダイヤフラムを含む多層構造を有するように構成した際に、二つのダイヤフラム間の距離を「内リング11」の直径を基準にして「6倍以上」になるように設定することは、当業者ならば適宜なし得た設計事項にすぎない。
(2) 周知技術に基づく容易想到性
前記(1)において説示した引用文献2技術事項に基づく容易想到性の判断とは別に、以下に示すように、引用発明において、周知技術1を採用することにより、前記相違点1、2に係る本願発明の構成とすることも当業者ならば容易に想到し得たことである。
すなわち、前記5(5)で認定したように、
「外側部材と内側部材、及びこれらを接続する接続部材を有するダイヤフラム支持構造において、剛性の向上などのために前記接続部材を多層構造とすること。」(周知技術1)
は周知技術であるから、剛性の向上という自明の課題を解決するために、引用発明の「センサーダイヤフラム10」の構造に周知技術1のダイヤフラム支持構造を採用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、前記(1)ウで説示したと同様に、その際に内側取り付け部の直径や、ダイヤフラム間の距離を所望の剛性、柔軟性などが実現されるように相互に調整する程度のことは、設計事項の範囲内のものである。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、あるいは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、あるいは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
ア 主張1
審判請求書の「4.補正による審査官殿が指摘された事項の解消」、及び令和6年12月16日提出の上申書の「2.本願発明が特許されるべき理由」において、請求人は、おおよそ次のような主張をしている。
本願発明と引用発明とには、少なくとも以下の相違点が存在する。
相違点:本願発明では、前記多層接続部材は、前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含み、前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上である。
引用発明は、一層の接続部材13を含むものであり、引用文献1には、上記の技術特徴について記載も示唆もされていない。
また、引用文献2及び引用文献3にも、ダイヤフラム間の距離が内側取り付け部の直径の6倍以上であることに相当する構成に関する記載も示唆もない。
したがって、前記相違点に係る発明特定事項は、引用文献1~3には記載も示唆もされていない。
また、引用文献1~3のそれぞれに記載された発明の構成から、引用発明に引用文献2、3の技術特徴を組み合わせることは、当業者にとって容易なものではない。
イ 主張2
令和6年12月16日提出の上申書において、請求人は、次のような補正案を提示している。
[請求項1案]
「軸力を検出するための軸力センサアセンブリであって、
内側取り付け部、外側取り付け部、および前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間に接続された多層接続部材を含む取り付けブラケットであって、前記多層接続部材は、前記検出される軸力方向において異なる位置に配置された第1のダイヤフラムおよび第2のダイヤフラムを含み、前記多層接続部材は、検出される軸力方向において他の荷重方向よりも柔順であるものと、
前記取り付けブラケット上に組み立てられ、前記検出される軸力方向における前記内側取り付け部と前記外側取り付け部との間の相対変位を検出するように構成される第1のセンサと、を含み、
前記検出される軸力方向において前記第1のダイヤフラムと前記第2のダイヤフラムとの間の距離は、前記内側取り付け部の直径の6倍以上であり、
前記第1のダイヤフラムは、前記内側取り付け部の周りに円周方向に配置された複数の第1の接続部材を含み、
前記第2のダイヤフラムは、前記内側取り付け部の周りに円周方向に配置された複数の第2の接続部材を含み、
前記第1の接続部材および前記第2の接続部材はそれぞれ、前記内側取り付け部および前記外側取り付け部を接続する
ことを特徴とする軸力センサアセンブリ。」(下線は本願発明からの変更箇所。)
(2) 請求人の主張についての検討
ア 主張1についての検討
主張1の前記相違点は、前記6(2)イで認定した相違点1及び相違点2に相当するものである。
そして、前記7(1)で検討したように、引用発明と引用文献2技術事項は、いずれも力測定に関するものであるから、引用発明の「センサーダイヤフラム10」と同様の特性を備える引用文献2技術事項の「平行平板構造」を引用発明に採用することは、当業者が容易になし得たものであり、また内側取り付け部の直径や、ダイヤフラム間の距離を所望の剛性、柔軟性などが実現されるように相互に調整する程度のことは、設計事項の範囲内のものである。
あるいは、前記7(2)で検討したように、前記周知技術1を引用発明に採用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものであり、その際に内側取り付け部の直径や、ダイヤフラム間の距離を所望の剛性、柔軟性などが実現されるように相互に調整する程度のことは、設計事項の範囲内のものである。
したがって、前記主張1を採用することはできない。
イ 主張2についての検討
(ア) 請求人の提示する請求項1案は、要するに外側取り付け部が円周方向に配置された複数の部材からなるものであることを本願発明からさらに限定した案である。
(イ) しかしながら、外側取り付け部に要求される本質的な機能が接続部材の支持固定機能であることを考慮すれば、これを複数の部材により構成するか一体とするかは設計事項の範囲内のものといえる。具体的に引用発明の「外リング12」を見ても、これを「接続要素13」が接続される部位を避けて複数の部材に分割することを妨げる要因は特段見いだせない。
また、前記5(3)で引用した引用文献4の【図3】に例示されているように、外側取り付け部が円周方向に配置された複数の部材からなるダイヤフラム支持構造は周知であり、これを引用発明へ採用することに困難性は認められない。
(ウ) したがって、前記請求項1案に係る発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、あるいは、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記主張2も採用することはできない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-011880