2022-007191
水産養殖エビ及び水産養殖エビの養殖方法
- 審判番号
- 2022-007191
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-534416外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年05月13日
- 審決日
- 2023年02月20日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (A01K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
本願は、2017年8月16日(優先権主張 平成28年8月16日)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし23に係る発明は、令和4年5月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載され事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、以下のとおりのものである。(なお、請求項1は、上記手続補正書により補正されていない。)
「カロテノイドを含み、第2触覚が折れていない、水産養殖エビ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由1(新規性)、理由2(進歩性)の概要は次のとおりである。
(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である。)。
ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はハマチ、タイ、サケ、マス、エビ、カニ、コイ、アユ、キンギョ、ニワトリ、に投与されるカロチノイド類を含有する飼料又はビタミンプレミクス等栄養組成物に関する。
【0002】特に、カロチノイド類を含有する栄養組成物にアスコルビン酸-2-グルコシドを配合することによりハマチ、タイ、サケ、マス、エビ、カニ、コイ、キンギョ、ニワトリ、の生態組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を顕著に増大させるための栄養組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】カロチロイド類は、ハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、エビ、カニ、コイ、キンギョ、ニワトリ、等の上皮細胞、筋肉、卵などの生態組織中に存在しこれらカロチノイド類の濃度の増大が組織において赤色、黄色などの色調を強調し、これらの生物、及び卵の高付加価値化に寄与している。
【0004】例えば、エビ、カニなど甲殻類には、アスタキサンチンが、ハマチ、タイ、サケ、マス、類等魚類にはアスタキサンチン、サルモキサンチン、ツナキサンチン、ゼアキサンチン、ドラデキサンチンが、又ニワトリの卵黄などには、ゼアキサンチン、β-カロチン、等が蓄積される。
【0005】これらの、生物組織中のカロチノイド類は、組織の赤色や黄色などの色調を強めることにより、消費者に対し美しく、フレッシュな感覚を与え、消費者の購買意欲を刺激するため、カロチノイド類を高濃度に含むこれら生物の市場における高付加価値化に寄与している。
【0006】又、これらのカロチノイド類は、単なる発色効果を与えるだけでなく、重要な栄養素の一つであり、動物の健全な成長を維持するために重要な働きを担っていることが報告されている。
・・・
【0009】これらの効果を期待し、現在多くのカロチノイド類が生物の飼料やビタミンプレミクスなどの栄養組成物中に添加されている。
【0010】例えばエビ、カニ類などの甲殻類の飼料等には、アスタキサンチン、β-カロチン、ゼアキサンチン、ルテインなどが、サケ類,マス類にはアスタキサンチン、サルモキサンチンなどが、ハマチ、タイなどにはアスタキサンチン,ツナキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、β-カロチンなどが、コイ、金魚などには、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ツキサンチン、ドラデキサンチン、ルテイン、β-カロチン、ニワトリにはカプサンチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、β-アポ-8’-カロテン酸エチルエステルが栄養組成物中に添加されている。
【0011】しかし、これら飼料などの栄養組成物に添加されているカロチノイド類は、酸化されやすく不安定であり飼料の製造工程中や流通過程で分解されてしまう,水産用飼料などでは生物に摂取される前に、飼料中から水中に溶出し養殖生物に十分に吸収されないという問題もある。これらの問題に対し、従来よりカロチノイド類を飼料に配合するいくつかの技術が用いられてきた。
【0012】もっとも一般的なのは、カロチノイド類を含む天然物を飼料等の栄養組成物中に大量に投与する方法である。これはエビ殻やパフィア酵母、ヘマトコッカスなどの藻類、又はキチン質やセルロースなどの天然素材に保護されたカロチノイド含有天然物を栄養組成物中に大量に投与する方法である。」
イ「【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、栄養組成物中のカロチノイド類が少量でも生物体内で最大限の効果を発揮するカロチノイド類の活性化剤を模索し検討を行った結果、カロチノイド類とともにアスコルビン酸-2-グルコシドを栄養組成物中に添加することにより、カロチノイド類が生物組織中に高率で蓄積し発色することを見出し、本発明を完成した。
【0020】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明における栄養組成物とはハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、エビ、カニ、コイ、キンギョ、ニワトリ、に投与されるモイスト飼料、ペレット飼料、多孔質ペレット飼料、ビタミンプレミクス、動物用薬剤、又はこれらの混合物であるが、栄養組成物が100℃以上200℃以下の温度でエクストゥルーダー等で製造された多孔質ペレットである場合、特に大きな効果が期待できる。
【0021】本発明における栄養組成物に添加されるカロチノイド類とは、アスタキサンチン,β-カロチン,ゼアキサンチン,ルテイン,サルモキサンチン,ツナキサンチン,ドラデキサンチン,レチナール、ハロシンチアキサンチン、フコキサンチン、カプサンチン、カンタキサンチン、β-アポ-8’-カロテン酸エチルエステル、又はその立体異性体から選ばれる一種又は二種以上の混合物から選ばれる。又、これらのカロチノイド類は、合成物、天然物のどちらでも使用可能であるが、天然物の場合はカロチノイド類を0.01重量%以上を含有する天然物が望ましい。」
ウ「【0027】(1)実施例1
魚粉60%(以下%は重量%)、ポテトスターチ25%、大豆油5%、マッカラム塩3%、ハルーバービタミンプレミックス1.4%、合成アスタキサンチン0.01%、カニ殻0.01%、オキアミ粉末0.01%、マリーゴールド粉末0.01%、パフィア酵母0.01%、ヘマトコッカス緑蕩粉末0.01%、L-アスコルビン酸-2-グルコシド0.05%、に大豆粉を添加して100%としこれを原料に常法によりウエンガー社製エクストゥルーダー(内部温度110-122℃)により多孔質ペレット化しハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、コイ、キンギョ用飼料とした。
【0028】(2)実施例2
魚粉35%、イカミール25%、アサリミール10%、エビカニ末5%、マッカラム塩3%、ハルーバービタミンプレミックス1.4%、合成アスタキサンチン0.01%、カニ殼0.01%、オキアミ粉末0.01%、パフィア酵母0.01%、ヘマトコッカス緑藻粉末0.01%、L-アスコルビン酸-2-グルコシド0.05%、に大豆粉を添加して100%としこれを原料に常法によりウエンガー社製エクストゥルーダーによりペレット化しクルマエビ用飼料とした。
【0029】(3)実施例3
トウモロコシ粉30%、小麦粉30%、魚粉5%、アルファルファミール4%、キャッサバミール5%、ライムストン粉末5%、フスマ6%、河合製薬社製ミネラルミックス3%、ニッチク薬品工業社製産卵鶏用ビタミンプレミックス1.4%、合成アスタキサンチン0.01%、パプリカ0.1%、パフィア酵母0.01%、カニ殻0.01%、オキアミ粉末0.01%、ヘマトコッカス緑藻粉末0.01%、L-アスコルビン酸-2-グルコシド0.05%、に大豆粉を添加して100%としこれを原料に常法によりウエンガー社製エクストゥルーダーによりペレット化しニワトリ用飼料とした。
【0030】(4)比較例1
試験区として実施例1、2、3の飼料用い、又比較区として実施例1、2、3の飼料からL-アスコルビン酸-2-グルコシド0.05%のみを除いた飼料を用いてハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、コイ、キンギョ、クルマエビ、ニワトリを飼育し組織中のカロチノイド類をアセトンで抽出し、高速液体クロマトグラフィーにより組織中の総カロチノイド含量を測定し各生物の比較区を1.0とした時の総カロチノイド量の存在比を求め表1、2にまとめた。この結果L-アスコルビン酸-2-グルコシドを添加した試験区の組織中の総カロチノイドの存在比は、比較区に比べ高くなっており生物組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を増大させることが確認された。
・・・
[図:0001396939000001.jpg]
【0031】
【発明の効果】本発明により、得られたカロチノイド類とL-アスコルビン酸-2-グルコシドを含有する栄養組成物は、ハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、コイ、キンギョ、エビ、カニ、ニワトリの生態組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を顕著に増大させ生産効率、品質向上、高付加価値化に寄与でき、産業上有用な技術である。」
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「カロチノイド類である合成アスタキサンチン0.01重量%、L-アスコルビン酸-2-グルコシド0.05%等に大豆粉を添加して100%としこれを原料にクルマエビ用飼料とし、この飼料を用い、飼育されたクルマエビにおいて、組織中のカロチノイド類を抽出したところ、L-アスコルビン酸-2-グルコシドを添加した試験区の組織中の総カロチノイドの存在比は、L-アスコルビン酸-2-グルコシドのみを除いた飼料を用いた比較区に比べ高くなっており、生物組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を増大させることが確認された飼育されたクルマエビ。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「クルマエビ」は、「飼育された」ものであって、引用文献1には、これら飼料などの栄養組成物に添加されているカロチノイド類は、・・・水産用飼料などでは生物に摂取される前に、飼料中から水中に溶出し養殖物に十分に吸収されないという問題もある。」(上記第4の1(1)ア【0011】)と記載されていることから、水産養殖されたものを対象としていることは明らかである。よって、引用発明の「クルマエビ用飼料」を「用い」て「飼育されたクルマエビ」は、本願発明の「水産養殖エビ」に相当する。
2 引用発明の試験区及び比較区の両方において、「カロチノイド類である合成アスタキサンチン0.01重量%」「を添加し」た「原料をクルマエビ用飼料とし、この飼料を用い、」「クルマエビ」を「飼育」していることから、上記1を踏まえると、引用発明の試験区及び比較区の両方の条件において飼育された「クルマエビ」は、本願発明の「カロテノイドを含」む「水産養殖エビ」に相当する。
3 以上のことから、本願発明と引用発明とは、「カロテノイドを含む、水産養殖エビ。」で一致するものの、文言上、次の点(以下「相違点」という。)で相違している。
<相違点>
「水産養殖エビ」について、本願発明は、「第2触覚が折れていない」のに対して、引用発明は、そのような構成を有しているか否か不明である点。
第6 判断
以下、相違点について検討する。
1 相違点について
(1)本願発明の「水産養殖エビ」において、「第2触覚が折れていない」ことの技術的意義について
ア 本願発明の「水産養殖エビ」について、明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおり記載されている。
「【0011】1.水産養殖エビ本明細書は、カロテノイドを含み、第2触覚が折れていない水産養殖エビに関する。【0012】続きを表示(全11行)本明細書の対象となる「エビ類」は、大きさに制限はなく、食品としての分類ではいわゆるロブスター(lobster)、プローン(prawn)、シュリンプ(shrimp)が含まれる。また、学術的な分類において本明細書の対象となるエビとしてはエビ目とすることができ、エビ目のなかではクルマエビ上科とすることができる。クルマエビ上科のなかではクルマエビ科とすることができる。・・・【0015】「カロテノイド」は、緑色植物とある種のカビ、酵母、キノコ、細菌などのつくる黄色ないし赤色また紫色の水不溶のポリエン色素をいう。「カロテノイド」は、カロテンやキサントフィル等の黄色~赤色色素に分類される任意の分子が含まれる。この中でも、アスタキサンチン、特には人工的に合成された合成アスタキサンチンは本明細書の対象となるカロテノイドのひとつである。合成アスタキサンチンの詳細については後述する。本明細書の1の実施態様では水産養殖エビでは、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.8%以上、1%以上のカロテノイドを含む。【0016】「第2触覚」とは、一般にひげと呼ばれている触覚である(図1参照)。「第2触覚が折れていない」とは、第2触覚に折損がないことを意味する。この場合、左右の2本の第2触覚の長さが同程度である。本明細書の水産養殖エビは、第2触覚の長さが体長より長い場合が含まれる。この第2触覚が欠損してしまうと、商品としての価値を減じてしまう。また、第2触覚が欠損すると、エビの健康状態にも影響が考えられる。通常第2触覚は折損がないと体長以上になるため、本明細書においては体長以下の長さとなる第2触覚をもつ個体は、第2触覚に折損ありとした。第2触覚は根元から定規により測定した。」
イ 本願発明に関する「水産養殖エビの養殖方法」について
本願発明に関する「水産養殖エビの養殖方法」ついて、明細書の発明の詳細な説明に次の記載がある。
「【0025】養殖対象のエビの種類は上述の通りである。本明細書の養殖方法の対象となるエビは制限なく、稚エビから親エビを含む。・・・また、「親エビ」とは上記幼エビより成長したエビを意味する。親エビは、例えば、バナメイエビの場合、通常、15g以上程度まで成長させて出荷される。【0026】本明細書の養殖方法では、カロテノイドを含有する飼料をエビに給餌する。このように給餌されたカロテノイドはエビに蓄積させることができる。カロテノイド源は特に制限はない。カロテノイドとしては、アスタキサンチン、特には合成アスタキサンチンがあげられる。・・・【0027】好適な飼料としては、アスタキサンチン(特には合成アスタキサンチン)を50ppm以上、60ppm以上、70ppm以上、80ppm以上、90ppm以上、100ppm以上含有する飼料である。・・・養殖対象のエビに、所定の濃度のアスタキサンチン含有する飼料の給餌量は、体重に対し1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、飽食給餌の場合がある。毎日1回給餌、2回給餌、3回給餌、4回給餌、5回給餌の場合がある。残餌料をモニターしながら継続的に給餌を行うこともできる。養殖対象のエビに、所定の濃度のアスタキサンチン含有する飼料を与える期間は、例えば、7日以上、14日以上、28日以上、35日以上、42日以上、49日以上、56日以上、63日以上、70日以上、77日以上、84日以上、90日以上である。このように陸上養殖で過密にエビを養殖する場合には、第2触覚の多くが折損を避けることができないところ、アスタキサンチン等のカロテノイドを多く含む飼料で飼育することにより第2触覚を比較的よく保持した状態の外観のよいエビを生産することができる。また、エビの第2触覚の折損が少ないことは、エビにとっても負担が少なく、健康な状態で飼育させることが可能となる。【0028】水質は定期的に確認し、適切な範囲に収まるように調整する。pHを5~10、または6~9、または7~8で飼育する。・・・水温は、23~32℃、または25~30℃、または27~29℃を維持するようにして飼育する。・・・」
ウ 実施例
「【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本明細書をより具体的に説明するが、本明細書はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]飼料の作成
アスタキサンチンはDSMニュートリションジャパン株式会社から購入した。製品は製品名 カロフィルピンクを購入して使用した。この商品は、化学合成によって生産されたものである。基本飼料は、表1の組成を3パスコンディショナーでペレットミルのために処方した。ペレットサイズは2.4mmで製造した。
基本飼料は測定したところ、アスタキサンチン2.5ppm含む。これは魚油にアスタキサンチンが含まれているためと考えられる。
アスタキサンチンを含む実験飼料は、基本飼料にアスタキサンチンを補填することによりアスタキサンチン50ppm、100ppmとなるように調製した。アスタキサンチンを魚油に溶解させ、基本飼料と一緒にビニール袋に入れてよく混合した。飼料は4℃で3日以上保管後使用した。
【0034】
【表1】
[図:0001396939000002.jpg]
エ 本願発明の「水産養殖エビ」において、「第2触覚が折れていない」ことの技術的意義についてのまとめ
前記アないしウから、本願発明の「水産養殖エビ」は、主として、合成アスタキサンチン50ppm以上含有する飼料を与えることにより、「第2触覚を比較的よく保持した状態の外観のよいエビを生産することができる」ものと理解できる。
また、飼料について、通常は育成を促したり、健康を維持するために、各種のビタミンやミネラル等が添加されているところ、本願明細書においても表1のとおりのものが添加されており、特定の物質を排除する記載も見当たらない。
なお、体重に対する給餌量や、1日の給餌回数、給餌期間について、相当広い範囲が示されていることから、「第2触覚を比較的よく保持」するために特に適するものが存在するとも認められず、水質や水温についても同様であるから、これらの条件については、本願発明において、必須なものではなく、通常の条件を例示した程度のものと認められる。
(2)相違点の判断
前記(1)をふまえると、引用発明の「クルマエビ」も、特に飼料について着目すると、試験区及び比較区の両方において、上記(1)エの「合成アスタキサンチン50ppm以上」に相当する「カロチノイド類である合成アスタキサンチン0.01重量%(当審注:「0.01重量%」は「100ppmである。)」「を原料にクルマエビ用飼料とし、この飼料を」「与え」たものであり、特に試験区においては、飼料に「L-アスコルビン酸-2-グルコシド」を添加させることで、「生物組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を増大」されたものであることも踏まえると、比較区を含め、試験区においても、引用発明の飼料を与えた「クルマエビ」は、「第2触覚を比較的よく保持した状態の外観のよいエビ」といえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。
そうすると、本願発明と引用発明とに相違点は存在せず、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
第7 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「4」本願発明と引用発明との対比」において、「(4)一方、引用文献1には、本願発明1等のように具体的な水産養殖エビや水産養殖エビの育成方法を特定し得る記載はない。上記「3)引用発明の説明」で述べたように、単に「栄養組成物」が記載されているだけである。そして、本願明細書の段落0002,0003にも記載しているとおり、引用文献1に記載されている技術では、水産養殖エビの色の改善が一応認められるが、水産養殖エビにおける色以外の外観(形状など)は改善できていないことは明らかである。(5)例えば、引用文献1において、引用発明1をハマチやクルマエビ等に投与することで、生産効率や品質向上に寄与し得るとだけ記載されている(引用文献1の段落0031)。そして、クルマエビの記載も、ハマチやタイ、サケ等といった魚類や、ニワトリといった鳥類を含めた生物の一例として単に記載されているに過ぎない。そのため、引用発明1がもしクルマエビの「品質向上」に寄与し得ると解釈できた場合、クルマエビの「味の向上」に寄与し得ると解釈されるのが一般的であり、本願明細書の段落0002,0003にも記載しているとおり、水産養殖エビにおける色以外の外観(形状など)は改善できていないと考えられる。」と主張し、さらに審判請求書に実験証明書(手続補足書)を添付し、アスタキサンチン50ppm以上含有する飼料を給餌し、水温21℃に設定して育成し、飼育から8日後の時点では第2触覚がLである個体数はゼロとなった水産養殖エビの育成方法の実験結果を示している。
しかしながら、引用文献1の【0006】に、「カロチノイド類は、単なる発色効果を与えるだけでなく、重要な栄養素の一つであり、動物の健全な成長を維持するために重要な働きを担っていることが報告されている。」と記載されているように、カロチノイド類は動物の健全な成長維持に重要な働きを担っていることが従来より知られており、さらに、【0031】に発明の効果として、「本発明により、得られたカロチノイド類とL-アスコルビン酸-2-グルコシドを含有する栄養組成物は、ハマチ、タイ、サケ、マス、アユ、コイ、キンギョ、エビ、カニ、ニワトリの生態組織中のカロチノイド類の蓄積濃度を顕著に増大させ生産効率、品質向上、高付加価値化に寄与でき、産業上有用な技術である。」と記載されているように、引用発明は、生産効率や品質向上を目的としているのであるから、引用発明の課題を、「味の向上」のみに寄与し得ると限定的に解釈することはできない。
しかも、引用文献1において、「クルマエビ」について試験を行っている(上記第4の1(1)ウ)ことからみても、引用文献1は、単に「クルマエビ」を例示した程度のものではないから、引用発明は、「クルマエビ」の改良に係る発明であることは明らかである。
また、実験証明書の試験結果における飼料についてみても、アスタキサンチンの含有量である50ppm以上は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲のものであって、その水温も、同記載された範囲の下限付近の値であるから、発明の詳細な説明に記載された条件に近似するこれらの条件によって行われた試験結果が、第2触覚が折れていないエビを育成することができないことを示唆するものではないし、少なくとも実験証明書には、その他の条件が記載されておらず、引用発明1の条件と完全に同一かどうか不明であるから、実験証明書の結果をもって、引用発明1の「クルマエビ」が、第2触覚が折れていないものではないと認めることはできない。
したがって、請求人の上記主張について検討しても、本願発明の新規性について、上記の対比及び判断を変更すべき事情は見いだせない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-007191