2022-006154
地図、車両状態、および環境に合わせたセンサ放射電力の調整
- 審判番号
- 2022-006154
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-544472外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年04月22日
- 審決日
- 2022年11月25日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウェイモ エルエルシー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】佐藤 睦
- 分類
- P18 .113-Z (G01S) / P18 .121-Z (G01S) / P18 .575-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2019年(平成31年)3月1日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2018年3月9日、米国)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
(同月23日 :原査定の謄本の送達)
第2 令和4年4月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月22日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和4年4月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】システムであって、車両であって、前記車両に結合された光検出測距(LIDAR)センサまたは前記車両に結合されたレーダーセンサのうちの少なくとも1つを備える、車両と、動作を行うように命令を実行するように構成されたコントローラであって、前記動作が、前記車両の動作状況を示す情報を受信することであって、前記動作状況が、少なくとも前記車両のターンシナリオを含むことと、複数のセンサ電力構成から、少なくとも前記ターンシナリオに基づいて所望のセンサ電力構成を選択することと、前記少なくとも1つのLIDARセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従って光パルスを放射させることか、または前記少なくとも1つのレーダーセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従ってレーダーエネルギーを放射させることのうちの少なくとも1つと、を含む、システム。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】システムであって、車両であって、前記車両に結合された光検出測距(LIDAR)センサまたは前記車両に結合されたレーダーセンサのうちの少なくとも1つを備える、車両と、動作を行うように命令を実行するように構成されたコントローラであって、前記動作が、前記車両の動作状況を示す情報を受信することであって、前記動作状況が、少なくとも前記車両のターンシナリオを含み、前記ターンシナリオは、対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオを含むことと、複数のセンサ電力構成から、少なくとも前記ターンシナリオに基づいて所望のセンサ電力構成を選択することと、前記少なくとも1つのLIDARセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従って光パルスを放射させることか、または前記少なくとも1つのレーダーセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従ってレーダーエネルギーを放射させることのうちの少なくとも1つと、を含む、システム。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の、コントローラが受信する「車両の動作状況を示す情報」における「前記動作状況」に含まれる「車両のターンシナリオ」について、「対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオ」を含むものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された特開2007-139594号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したものであり、以下同様である。
a 【0001】~【0026】
「【技術分野】【0001】この発明は、検知領域に電磁波を送信して、物体からの反射波を受信することで、当該物体を検出する物体検出装置に関するものである。【背景技術】続きを表示(全21行)【0002】従来、自動車に搭載する物体検出装置としては、レーザレーダ装置が各種存在する。そして、このようなレーザレーダ装置は、例えば近赤外光を水平方向の所定範囲内で走査しながらレーザビームを照射して、物体からの反射光を受信することで、物体の位置、速度等の検出を行う。ところが、レーザレーダ装置から送信されるレーザビーム強度は無制限ではなく、歩行者等の人の目に直接照射された場合でも、目に障害が発生しないように、単位時間当たりのエネルギー量が所定値に制限されている。…(中略)…【課題を解決するための手段】【0008】この発明は、自車周囲の所定の検知領域に対して少なくとも水平方向へ走査を行いながら電磁波を送信する送信手段と、電磁波の反射波を受信する受信手段と、検知領域をそれぞれが所定方位角範囲からなる基準領域に区分して設定する基準領域設定手段と、各基準領域それぞれにおいて、少なくとも反射波に基づく物体の有無を検出する物体検出手段と、を備えた物体検出装置において、自車周囲の状況を検知する周囲状況検知手段と、自車周囲状況の検知結果に基づいて、特定の基準領域に送信する電磁波の強度を高く設定し、且つ、他の基準領域に送信する電磁波の強度を、前記特定基準領域の電磁波強度よりも低くして、単位時間当たりの電磁波強度総量を一定量以下に設定する送信強度設定手段と、を備えたことを特徴としている。【0009】この構成では、周囲状況検知手段は、レーダ装置や画像処理装置により自車周囲(特に自車前方)の検知領域に存在する物体の推定検知を行う。送信強度設定手段は、物体の推定検知結果に基づいて物体の存在する基準領域を特定基準領域に設定し、当該特定基準領域に対する電磁波強度を高くし、他の基準領域に対する電磁波強度を低く設定する。この際、送信強度設定手段は、単位時間当たりの電磁波の強度総量(総エネルギー量)が予め設定されている規定値以内になるように、各基準領域に対する電磁波強度を設定する。送信手段は、この設定された強度の電磁波を、方位角方向への走査にしたがって順次送信し、受信手段は、物体からの反射波を受信する。物体検出手段は、基準領域設定手段で設定された基準領域毎に反射波強度や送信タイミングと受信タイミングとの差から物体の有無や自車から物体までの距離を検知する。そして、一旦物体の検知が行われれば、この結果に基づいて、次の1走査に対する電磁波強度の分布を設定する。この発明によれば、動的に変化する自車周囲の状況に応じて、最適な電磁波強度の分布が得られるとともに、強度総量の規定が遵守される。【0010】また、この発明の物体検出装置は、周囲状況検知手段に自車前方の道路形状を認識する道路形状認識手段を備え、送信強度設定手段は、道路形状認識手段が検知した前方道路の範囲内に対応する基準領域を特定基準領域に設定することを特徴としている。【0011】この構成では、周囲状況の検知の具体例として道路形状を検知する場合を示し、道路形状認識手段は、自車前方の道路形状、すなわち、前方道路が直線であるか、曲線であるか、勾配があるか等を検知する。送信強度設定手段は、この検知された道路状況に応じて、自車前方道路を含む基準領域を特定基準領域に設定し、当該特定基準領域に対する電磁波強度を他の基準領域よりも高く設定する。これにより、主に検知を行いたい前方道路に強い電磁波が送信されて、先行車の検知能力・検知精度が向上する。さらに、通常、人は道路(車道)内を歩行しないので、人に強い電磁波を照射することが抑制される。…(中略)…【発明の効果】【0026】この発明によれば、動的に変化する自車周囲の状況に応じて、最適な電磁波強度の分布が得られて、先行車に対しては高強度の電磁波でレーダ検知を行い、人に対しては殆ど電磁波を照射させることがない。これにより、人の目に対する障害保護等により規定される強度総量を確実に遵守しながら、所望の物体に対する高精度な物体検知能力を実現することができる。」
b 【0027】~【0041】、【図2】
「【発明を実施するための最良の形態】【0027】本発明の第1の実施形態に係る物体検出装置について、図1~図4を参照して説明する。図1は本実施形態の物体検出装置の主要構成を示すブロック図である。続きを表示(全11行)図2は本実施形態の送信ビームの設定方法を説明する図であり、(A)は全走査区間を基準領域S1~S9に分割した状態と、各基準領域S1~S9の送信ビーム強度Ba1~Ba9を示した図であり、(B)は各送信ビーム強度Ba1~Ba9の強度分布を示した図である。図3(A)は初期の送信ビーム強度Ba1~Ba9の分布を示し、図3(B)は先行車102検知後の送信ビーム強度Ba11~Ba91の分布を示した図である。…(中略)…【0032】次に、基準領域毎の送信ビーム強度を設定方法について、図2、図3を参照して説明する。まず、レーダ制御部1は、所定範囲で広がる検知領域を、それぞれが所定の方位角範囲からなる基準領域に分割する。この際、各基準領域の方位角範囲は、全て同じに設定しても、それぞれ個別に設定してもよい。例えば、図2の例であれば、検知領域を同じ方位角範囲で設定された9つの基準領域S1~S9に分割し、自車101の真正面方向の基準領域S5を特定基準領域に設定する。通常このようなレーダによる物体検出装置では、主たるターゲットとして先行車を設定する。このため、初期状態では、自車101の真正面方向の検知を重要視して、真正面方向の基準領域S5に含まれる方位角方向の送信ビーム強度Ba5を、他の基準領域S1~S4,S6~S9の送信ビーム強度Ba1~Ba4,Ba6~Ba9よりも高強度に設定する。そして、これら他の基準領域の送信ビーム強度Ba1~Ba4,Ba6~Ba9を同じビーム強度に設定する。この際、単位時間当たりのビーム照射エネルギー量は規定されているので、この規定により設定される1走査分のビーム閾値Bthを1走査分の送信ビーム強度平均値Bavgが超えないように、送信ビーム強度Ba5と送信ビーム強度Ba1~Ba4,Ba6~Ba9とが設定される。すなわち、前記規定を遵守して同じ送信ビーム強度平均値Bavgであれば、全基準領域S1~S9に対して同じ送信ビーム強度に設定した場合と比較して、送信ビーム強度Ba5のみを高強度にし、送信ビーム強度Ba1~Ba4,Ba6~Ba9を低強度に設定する。…(後略)…」
「【図2】[図:0001396911000001.jpg]」
c 【0042】~【0046】、【図5】
「【0042】次に、第2の実施形態に係る物体検出装置について図5~図8を参照して説明する。図5は本実施形態の物体検出装置の主要構成を示すブロック図である。図6は本実施形態の物体検出装置の処理フローを示すフローチャートである。続きを表示(全14行)図7は本実施形態の物体検知フローの説明に用いる概念図である。【0043】図5に示すように、本実施形態の物体検出装置は、レーザレーダ装置10と、道路形状認識部30と、制御部20とを備える。【0044】レーザレーダ装置10は、第1の実施形態の図1に示したものと同じであるので、構成および概略処理動作については説明を省略する。制御部20は、物体検出装置全体の制御を行うものであり、レーザレーダ装置10と道路形状認識部30との間のデータ通信も制御する。【0045】道路形状認識部30は、ヨーレートセンサ31および車速センサ32を少なくとも含み、より詳細で正確な道路形状情報を取得する場合には、道路形状画像処理装置33やGPS装置34を備える。ヨーレートセンサ31と車速センサ32との組み合わせの場合、道路形状認識部30は、検出した自車のヨーレートと車速とから道路の曲率半径を算出して、前方の道路形状を推定する。さらに、道路形状画像処理装置33を備えている場合、道路形状画像処理装置33は、自車前方に設置されたCCDカメラから取得した自車前方の画像データを解析して、前方の道路形状を検出する。また、さらに、GPS装置34を備えている場合には、自車位置に対してGPS測位を行うとともに、自車位置周辺の地図情報を取得して、自車前方の道路形状を取得する。【0046】レーザレーダ装置10は、この道路形状情報に基づいて初期の送信ビーム強度分布を設定するとともに、これ以降の処理において先行車を検知できなかった場合の送信ビーム強度分布を設定する。」
「【図5】[図:0001396911000002.jpg]」
d 【0047】~【0053】、【図6】、【図7】
「【0047】次に、本実施形態の物体検知フローについて図6、図7を参照して説明する。なお、以下の説明では、道路形状認識部30をヨーレートセンサ31と車速センサ32とを備える構成とした場合について説明する。まず、物体検出装置のセット電源SWがONされる等により、物体検出開始制御が実行されると、道路形状認識部30は、前述の方法を用いて、自車前方の道路形状を取得する(S101)。【0048】続きを表示(全14行)道路形状認識部30のヨーレートセンサ31は自車101のヨーレートθy[rad/s]を検出し、車速センサ32は自車101の車速v[m/s]を検出する。道路形状認識部30は、これらの情報を用いて、自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]を、R=v/θyで算出し、制御部20を介してレーダ制御部1に与える。【0049】レーダ制御部1は、レーザレーダ装置10で検出したい位置、言い換えれば、自車101からの距離D[m]を、車速vと設定時間Tとを用いてD=v×Tで算出する。ここで、設定時間Tは、自車101の走行性能(制動特性等)に基づき予め設定された値であり、事故回避可能な最低条件等から設定される。次に、レーダ制御部1は、得られた検知距離Dと、道路形状認識部30から与えられた曲率半径Rとから、自車101を通る半径Rの円弧上で、自車101からの距離がDとなる点を検出して検知点300に設定する。そして、レーダ制御部1は、基準領域S1~S9から検出点300が対応する基準領域S6を検出して、基準領域S6を特定基準領域に設定する(S102)。レーダ制御部1は、特定基準領域S6の送信ビーム強度Bc6を高強度に設定し、他の基準領域S1~S5、S7~S9に対応する送信ビーム強度Bc1~Bc5、Bc7~Bc9を低強度に設定する(S103)。この際、レーダ制御部1は、送信ビーム強度Bc6の強度を、検知点300が最低限検知可能な程度の位置で、或る程度のマージンを持つ強度に設定し、且つ、送信ビーム強度Bc1~Bc9を単位時間当たりの総エネルギー強度が前述の規定を準じる強度に設定する。なお、道路形状認識部30にて、前方道路形状が直線状であると検知されると、この情報はレーダ制御部1に与えられ、レーダ制御部1は、前述の説明のように特定基準領域を設定するとともに、各基準領域の送信ビーム強度を設定する。【0050】レーザレーダ装置10は、この送信ビーム強度設定に基づき、第1の実施形態に示したように物体検知を行う(S104)。ここで、物体が検知されなければ(S105)、レーザレーダ装置10は、前述の道路形状認識処理を再度実行し(S106)、この道路形状認識結果に基づいて再度特定基準領域の設定を行う(S107)。一方、物体が検知されれば(S105)、検知物体の存在する方位が対応する基準領域を特定基準領域に設定する(S111)。【0051】次に、レーザレーダ装置10は、新たに設定された特定基準領域に基づいて、送信ビーム強度Bc1~Bc9を再設定し(S108)、物体検知を実行する(S109)。この一連処理は、終了処理(例えば、セット電源OFFの検出等)が行われるまで実行され(S110→S105~S109)、終了処理が実行されれば、物体検知を終了する。【0052】このような構成および処理を行うことで、予め道路形状を認識して特定基準領域を設定した状態でレーダによる物体検知を行うことができるので、自車が走行中の道路形状に最適な条件で最初からレーダによる物体検知を行うことができる。…(後略)…」
「【図6】[図:0001396911000003.jpg]」
「【図7】[図:0001396911000004.jpg]」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「レーザレーダ装置が搭載された自動車であって(【0002】)、レーザレーダ装置は、近赤外光を水平方向の所定範囲内で走査しながらレーザビームを照射して、物体からの反射光を受信することで、物体の位置、速度等の検出を行い、レーザレーダ装置から送信されるレーザビーム強度は無制限ではなく、単位時間当たりのエネルギー量が所定値に制限されており(【0002】)、道路形状認識部30は、自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]を算出し、レーダ制御部1に与え(【0048】)、レーダ制御部1は、所定範囲で広がる検知領域を、それぞれが同じ方位角範囲で設定された9つの基準領域S1~S9に分割し(【0032】)、レーダ制御部1は、レーザレーダ装置10で検出したい位置、言い換えれば、自車101からの距離D[m]を算出し、得られた検知距離Dと、道路形状認識部30から与えられた曲率半径Rとから、自車101を通る半径Rの円弧上で、自車101からの距離がDとなる点を検出して検知点300に設定し、基準領域S1~S9から検出点300が対応する基準領域S6を検出して、基準領域S6を特定基準領域に設定し、特定基準領域S6の送信ビーム強度Bc6を高強度に設定し、他の基準領域S1~S5、S7~S9に対応する送信ビーム強度Bc1~Bc5、Bc7~Bc9を低強度に設定し(【0049】)、レーザレーダ装置10は、この送信ビーム強度設定に基づき、物体検知を行い(【0050】)、動的に変化する自車周囲の状況に応じて、規定される強度総量を確実に遵守しながら、所望の物体に対する高精度な物体検知能力を実現する(【0026】)、自動車。」
イ 引用文献3に記載された事項
本願の優先日前に発行された米国特許出願公開第2017/0115387号明細書(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。翻訳文は当審において付したものである。
「[0102] Example scenarios in which example embodiments may be implemented will now be described in greater detail. Illustrative scenarios described herein include a scenario where a vehicle is performing a left turn maneuver. However, other scenarios in which example embodiments may be implemented are possible as well, such as scenarios where a vehicle is performing other autonomous driving maneuvers (e.g., U-turn, right turn, lane change, driveway exit, merge onto a road, etc.). Further, in line with the discussion above, other scenarios are possible as well that involve systems or devices other than vehicles.」
([0102] 次に、例示的な実施形態を実施することができる例示的なシナリオをより詳細に説明する。本明細書で説明される例示的なシナリオは、車両が左折操縦を実行しているシナリオを含む。しかしながら、車両が他の自律運転操作(例えば、Uターン、右折、車線変更、ドライブウェイからの退出、道路への合流等)を実行しているシナリオ等、例示的実施形態が実装され得る他のシナリオも可能である。さらに、上記の説明に沿って、車両以外のシステム又は装置を伴う他のシナリオも可能である。)
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「レーザレーダ装置」は、近赤外光を水平方向の所定範囲内で走査しながらレーザビームを照射して、物体からの反射光を受信することで、物体の位置、速度等の検出を行うものであるから、本件補正発明の「光検出測距(LIDAR)センサ」に相当する。
したがって、引用発明の「レーザレーダ装置が搭載された自動車」は、本件補正発明の「車両であって、前記車両に結合された光検出測距(LIDAR)センサまたは前記車両に結合されたレーダーセンサのうちの少なくとも1つを備える、車両」に相当する。
(イ)a 本件補正発明の「車両のターンシナリオ」という語句の意味について検討する。
(a) まず、「turn」(ターン)の意味には、「change of direction」(向きを変える)が含まれており(「オックスフォード現代英英辞典」最新・新訂版第1刷、株式会社開拓社、1985年、930頁)、「scenario」(シナリオ)の意味には、「〔考えられる〕状況、計画」が含まれている(英辞郎 on the WEB、https://eow.alc.co.jp/search?q=scenario)。
したがって、これらを総合すると、「車両のターンシナリオ」とは、「〔予め想定される〕車両の向きを変えながら走行する状況」を意味するものと理解される。
(b) 次に、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」に含まれる「合流シナリオ」について、本願明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0102】図4Dは、例示的な実施形態による、感知シナリオ480における車両300を例証する。感知シナリオ480は、車両300が所定のルート482に従ってオンランプ488から右車線484に合流する操作を実行することを計画している合流シナリオを含み得る。そのような事情の下で、運転状況は、右車線484の後方から接近する別の車両、右車線484に車線を変更する別の車両(例えば、車両483)、または右車線484で停止またはゆっくりと移動し得る別の車両(例えば、車両481)から衝突の最も高いリスクが来得ることを示し得る。」
「【図4D】[図:0001396911000005.jpg]」
【0102】には、「車両300が所定のルート482に従ってオンランプ488から右車線484に合流する操作を実行することを計画している合流シナリオ」と記載されており、図4Dには、「合流シナリオ」として、道なりに緩いカーブで車両の向きを変えながら、本線に合流する状況が示されている。
(c) そうすると、上記(a)及び(b)から、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」が含む「合流シナリオ」には、上記のような、道なりに緩いカーブで車両の向きを変えながら、本線に合流する状況のものが含まれているといえる。
b(a) 本件補正発明の「車両のターンシナリオ」は、上記a(a)で示したように、「〔予め想定される〕車両の向きを変えながら走行する状況」を意味し、また、上記a(c)で示したように、道なりに緩いカーブを走行する状況を排除していない。
(b) 引用発明において、レーダ制御部1に「自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]」の情報が与えられるのは、自車101が曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行している時であることは明らかであるから、引用発明の「自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]」の情報は、〔その情報が与えられた時点において〕自車101がカーブを曲がりながら走行している状況にあることを示す情報でもある。
また、引用発明においては、曲率半径Rの値次第では緩いカーブも含まれることになるところ、上記(a)のとおり、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」は、緩いカーブを走行する状況を排除するものではない。
そうすると、引用発明において、自車101が曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行する状況は、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」に相当することになり、引用発明の「自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]」の情報は、自車101の動作状況が、曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行する状況にあることを示すものであるから、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」に相当する状況にあることを示す情報に相当する。
c よって、本件補正発明と引用発明は、「前記車両の動作状況を示す情報を受信することであって、前記動作状況が、少なくとも前記車両のターンシナリオを含む」点で共通する。
(ウ) 引用発明の「レーダ制御部1」は、レーザレーダ装置10で検出したい位置、言い換えれば、自車101からの距離D[m]を算出し、得られた検知距離Dと、道路形状認識部30から与えられた曲率半径Rとから、自車101を通る半径Rの円弧上で、自車101からの距離がDとなる点を検出して検知点300に設定し、基準領域S1~S9から検出点300が対応する基準領域S6を検出して、基準領域S6を特定基準領域に設定し、特定基準領域S6の送信ビーム強度Bc6を高強度に設定し、他の基準領域S1~S5、S7~S9に対応する送信ビーム強度Bc1~Bc5、Bc7~Bc9を低強度に設定するものである。
そうすると、引用発明は、検出したい位置である特定基準領域を、自車101が曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行する状況、すなわち、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」に相当する状況に基づいて設定しており、さらに、特定基準領域の送信ビーム強度を他の基準領域より高強度に設定する、すなわち、特定基準領域の走査時に消費する電力を他の基準領域の走査時より高くするように設定するものであるから、本件補正発明と引用発明は、「複数のセンサ電力構成から、少なくとも前記ターンシナリオに基づいて所望のセンサ電力構成を選択」し、「前記少なくとも1つのLIDARセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従って光パルスを放射させる」ものである点で一致する。
(エ) 引用発明の「レーダ制御部1」は、動作を行う命令を実行するものであることは明らかであるから、上記(イ)及び(ウ)の検討を踏まえると、本件補正発明の「動作を行うように命令を実行するように構成されたコントローラ」に相当する。
(オ) 「車両」及び「コントローラ」からなる「システム」の発明である本件補正発明と、「レーダ制御部1」及び「自動車」の発明である引用発明は、「システム」の発明である点で一致する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
システムであって、
車両であって、前記車両に結合された光検出測距(LIDAR)センサまたは前記車両に結合されたレーダーセンサのうちの少なくとも1つを備える、車両と、
動作を行うように命令を実行するように構成されたコントローラであって、前記動作が、
前記車両の動作状況を示す情報を受信することであって、前記動作状況が、少なくとも前記車両のターンシナリオを含むことと、
複数のセンサ電力構成から、少なくとも前記ターンシナリオに基づいて所望のセンサ電力構成を選択することと、
前記少なくとも1つのLIDARセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従って光パルスを放射させることか、または前記少なくとも1つのレーダーセンサに、前記所望のセンサ電力構成に従ってレーダーエネルギーを放射させることのうちの少なくとも1つと、を含む、
システム、である点。
(イ) 相違点
コントローラが受信する車両の動作状況が、
本件補正発明においては、少なくとも車両のターンシナリオを含み、前記ターンシナリオは、対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオを含むものであるのに対して、
引用発明においては、自車101が曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行する状況を含むものであるが、当該状況に、交通を横切る状況や、合流する状況が含まれているか不明である点。
(4) 判断
ア 相違点についての判断
(ア) 引用発明の「自車101が走行中のカーブの曲率半径R[m]」は、「道路認識部30」により算出されるものであるところ、そのカーブが合流を伴うカーブかどうかに依存するものでないから、合流時であってもカーブを曲がっていれば、曲率半径R[m]の値は、レーダ制御部1に与えられているものである。
(イ) 引用文献3の[0102]に記載されているように(前記(2)イ参照)、車両の向きを変える操作には、左折に限らず、Uターン、右折、車線変更、ドライブウェイからの退出、道路への合流等も含まれることは一般常識であること、また、引用発明の課題は、引用文献1の【0026】に記載されているように、動的に変化する自車周囲の状況に応じて、所望の物体に対する高精度な物体検知能力を実現することであるところ、合流時は、単にカーブを曲がっているだけの走行時に比べて、他車両に衝突する危険性が著しく上がることも、よく知られた事項であることを踏まえると、引用発明において、曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行している状況に、合流しながらカーブを曲がる状況を含ませないようにすることは不自然であり、むしろ、積極的に含ませるようにするはずであるから、引用発明において上記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ) したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張内容
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請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。
審査官が本願請求項1の「前記車両のターンシナリオ」に相当すると指摘された引用文献1の道路形状と道路種は、それぞれ、前方道路の形状(直線であるかカーブであるか)、一般道路であるか高速道路であるか、であり、本願請求項1の「対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオを含」む「ターンシナリオ」とは異なる。特に、引用文献1の段落0075における「道路種検出部40により自車100が走行中の道路が一般道であると検出されると、レーダ制御部1は、道路形状認識部30から得られる道路形状を参照して、自車101前方の道路形状に準じて、自車101の走行車線、対向車線、自車走行車線側の側道での物体検知を行いやすいように、特定基準領域を設定する。」との記載からも、引用文献1が、本願請求項1の「対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオを含」む「ターンシナリオ」を想定していないことは明らかである。
したがって、少なくとも上述の点において、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1とは異なり、さらに引用文献1に対して進歩性を有する。
(イ) 請求人の主張についての検討
前記アで検討したとおり、引用発明において、自車101が曲率半径R[m]のカーブを曲がりながら走行する状況に、カーブを曲がりながら本線に合流するような状況を含ませることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の上記主張は認められず、前記アの結論を左右するものではない。
ウ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3(4)において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年10月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
(1) 新規性の欠如
本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
(2) 進歩性の欠如
本願発明は、下記引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2007-139594号公報
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
前記引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)アにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「車両のターンシナリオ」について、「対向する交通を横切るターンシナリオ、または合流シナリオを含む」との限定を省いたものであるところ(前記第2の2参照)、当該限定を省いた構成は、前記第2の3(3)イ(ア)で示したとおり、引用発明の構成と全ての点で一致するものである。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である又は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-006154