特許拒絶査定不服審判
2022-004725
マトリックス及びカプセル化材料を有し、電子デバイスに使用される組成物
- 審判番号
- 2022-004725
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-543046外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月31日
- 審決日
- 2022年12月26日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2018-543046「マトリックス及びカプセル化材料を有し、電子デバイスに使用される組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月11日国際公開、WO2017/079495、平成30年11月22日国内公表、特表2018-534791〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月4日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年(平成27年)11月5日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年11月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月26日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 3月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年3月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年3月31日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、補正後の請求項23の記載は、次のとおりである。(下線部は、手続補正書の記載のとおりである。)
「【請求項23】
マトリックス;及び
カプセル化相変化材料粒子
を含み、
前記マトリックスは、(メタ)アクリレート、マレイミド-、イタコンイミド-、又はナジイミド-含有化合物のうちの1又は複数を含むラジカル硬化性組成物を含む、組成物。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項23の記載は次のとおりである。
「【請求項23】
マトリックス;及び
カプセル化相変化材料粒子
を含み、
前記マトリックスは、ラジカル硬化性組成物又はその硬化生成物を含む、組成物。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項23に記載された発明を特定するために必要な事項であるマトリックスについて、「ラジカル硬化性組成物又はその硬化生成物を含む」とあるものを「ラジカル硬化性組成物を含む」と限定し、さらに、そのラジカル硬化性組成物について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項23に記載された発明と補正後の請求項23に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項23に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1の記載、及び引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2015/095107号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付した。)
(ア) 「[0001] Provided herein are compositions made from a matrix and encapsulated phase change material particles dispersed therein, and electronic devices assembled therewith.」(当審訳:「[0001] 本明細書では、マトリックス、及びその中に分散されたカプセル化された相変化材料粒子から作られた組成物、および該組成物が組み込まれた電子デバイスが提供される。」)
(イ) 「[0020] FIG. 6 shows a representation of the compositional layers of a thermal absorbing film, where (A) a composition including a matrix within which is dispersed a plurality of encapsulated phase change material particles (61) is placed in contact with a conductive support (62) and (B) a composition including a matrix within which is dispersed a plurality of metal-coated encapsulated phase change material particles (63) is placed in contact with a conductive support (64), to form an EMI shielding thermal absorbing film.」(当審訳:「[0020] 図6は熱吸収フィルムの組成物の層の説明を示し、電磁シールド熱吸収フィルムを形成するために、(A)は、複数のカプセル化相変化材料粒子(61)が分散されたマトリックスを含む組成物が導電支持体(62)と接して配置され、(B)は、複数の金属被覆されたカプセル化相変化材料粒子(63)が分散されたマトリックスを含む組成物が導電支持体(64)と接して配置される。」)
(ウ) 「[0046] Here, that solution is a heat absorbing and/or thermally insulating composition, which more specifically is a phase change material ("PCM") that has been encapsulated within a shell, dispersed within a matrix, such as a pressure sensitive adhesive.・・・」(当審訳:「[0046] ここで、そのソリューションは、熱吸収、及び/又は断熱組成物であり、より詳しくは、シェルの中にカプセル化され、マトリックスに分散されている、感圧粘着剤などの、相変化材料(PCM)である。・・・」)
(エ) 「[0057] The PCMs are dispersed in a matrix, which may be a pressure sensitive adhesive ("PSA") or an acrylic emulsion. The PSA is ordinarily made from acrylic polymers, such as those having the following composition or those that can be prepared by polymerizing (i) an acrylic monomer which is an acrylic or methacrylic acid derivative (e.g. methacrylic acid ester) of the formula CH2=CH(R1)(COOR2), where R1 is H or CH3 and R2 is a C1-20, preferably C1-8, alkyl chain and (ii) a monomer with a pendant reactive functional group, which is described in more detail herein below, and the amount of the monomer (ii) is from about 0.001 to about 0.015 equivalent per 100g of the acrylic polymer. See e.g. C. Houtman et al., "Properties of Water-based Acrylic Pressure Sensitive Adhesive Films in Aqueous Environments", 2000TAPPI Recycling Symposium, Washington, DC (5-8 March 2000).
[0058] For the polymerization process, the monomers of components (i) and (ii), where appropriate, are converted by radical polymerization into acrylic polymers. The monomers are chosen such that the resulting polymers can be used to prepare PSAs in accordance with D. Satas, "Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology", van Nostrand, NY (1989).
[0059] Examples of acrylates and/or methacrylates useful as components of monomer mixture (i) include methyl acrylate, ethyl acrylate, ethyl methacrylate, methyl methacrylate, n-butyl acrylate, n-butyl methacrylate, n-pentyl acrylate, n-hexyl acrylate, n-heptyl acrylate, and n-octyl acrylate, n-nonyl acrylate, lauryl methacrylate, cyclohexyl acrylate, and branched (meth)acrylic isomers, such as i-butyl acrylate, i-butyl methacrylate, n-butyl methacrylate, 2-ethylhexyl acrylate, stearyl methacrylate, and isooctyl acrylate.
[0060] The exemplary acrylic monomer mixture (i) has a Tg value less than 0℃ and a weight average molecular weight from about 10,000 to about 2,000,000 g/mol, such as between 50,000 and 1,000,000 g/mol and desirably between 100,000 and 700,000 g/mol. The mixture (i) may be a single monomer provided that it has a homopolymer Tg of less than 0℃.
[0061] Examples of suitable monomer (ii) are those capable of providing green strength to the adhesive films, include cycloaliphatic epoxide monomers M100 and A400 (Daicel), oxetane monomer OXE-10 (available commercially from Kowa Company), dicyclopentadienyl methacrylate epoxide (CD535, available commercially from Sartomer Co., Exton, PA), and 4-vinyl-1-cyclohexene-1 ,2-epoxide (available commercially from Dow).」(当審訳:「[0057] PCMは、感圧粘着剤(PSA)又はアクリルエマルジョンであってよいマトリックス内に分散される。PSAは、通常、以下の成分、又は、以下を重合することにより用意されるアクリルポリマーから作られる。
(i) 式CH2=CH(R1)(COOR2)、ここで、R1は、H又はCH3であり、R2は、C1-20、好ましくはC1-8アルキル鎖の、アクリルまたはメタクリル酸誘導体(例えば、メタクリル酸エステル)であるアクリルモノマー。
(ii) 以下に詳述される、モノマー(ii)の量が、アクリルポリマー100g当たり約0.001から約0.015当量である、ペンダント反応性官能基を持つモノマー。
例えば、C.Houtmanら、「Properties of Water-based Acrylic Pressure Sensitive Adhessive Films in Aqueous Environments」、2000TAPPI Recycling Symposium、ワシントン、DC(5-8 2000年3月)を参照。
[0058] 重合プロセスについて、成分(i)及び(ii)のモノマーは、必要に応じて、ラジカル重合によってアクリルポリマーに変換される。モノマーは、結果として生じるポリマーが、D.Satas、「Handbook of Pressure Sensitive Adhessi ve Technology」、van Nostrand、ニューヨーク州(1989年)に従ってPSAを得るのに使用できるように選択される。
[0059] モノマー混合物(i)の成分として有効なアクリレート及び/又はメタクレートの例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n -ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、およびメタクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ノニル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、およびアクリル酸i-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸イソオクチルなどの分岐(メタ)アクリル異性体を含む。
[0060] 典型的なアクリルモノマー混合物(i)は、Tg値が0℃未満であり、かつ、重量平均分子量が、約1万から200万g/mol、例えば5万から100万g/molの間、望ましくは10万から70万g/molの間である。混合物(i)は、0℃ 未満のホモポリマーTgを有する、単一のモノマーであってもよい。
[0061] 適切なモノマー(ii)の例は、粘着フィルムに生強度を提供できるモノマーであり、脂環式エポキシドモノマーM100及びA400(ダイセル)、オキセタンモノマーOXE-10(Kowa社より市販)、メタクリル酸ジシクロペンタジニエルエポキシド(CD535、ペンシルベニア州エクストンのSartomer社より市販)、及び4-ビニル-シクロヘキセン-1,2-エポキシド(Dow社より市販)を含む。」)
イ 引用発明
段落0046(上記ア(ウ))の記載によると、引用文献1において、「PCM」は「相変化材料」(phase change material)を意味し、また、段落0057(上記ア(エ))の記載によると、引用文献1において「PSA」は感圧粘着剤(pressure sensitive adhesive)を意味する。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「マトリックス、及びその中に分散されたカプセル化された相変化材料(PCM)粒子から作られた組成物(段落0001)であって、
相変化材料(PCM)は、感圧粘着剤(PSA)であってよいマトリックス内に分散され(段落0057)、
感圧粘着剤(PSA)は、
成分(i)及び(ii)をラジカル重合により重合することにより用意されるアクリルポリマーから作られ(段落0057、0058)、
モノマー混合物(i)の成分として有効なアクリレート及び/又はメタクレートは、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどを含む(段落0059)、
組成物。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「カプセル化された相変化材料(PCM)粒子」は本件補正発明の「カプセル化相変化材料粒子」に相当する。そうすると、「マトリックス、及びその中に分散されたカプセル化された相変化材料(PCM)粒子から作られる」組成物である引用発明は、「マトリックス;及び
カプセル化相変化材料粒子」を含む組成物である点で本件補正発明と共通する。
イ 引用発明のマトリックスである、「成分(i)及び(ii)をラジカル重合により重合することにより用意されるアクリルポリマーから作られ(段落0057、0058)、
モノマー混合物(i)の成分として有効なアクリレート及び/又はメタクレートは、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどを含む(段落0059)」感圧粘着剤(PSA)は、(メタ)アクリレートを含み、ラジカル重合によってアクリルポリマーに変換される。
また、本願明細書の「また、(メタ)アクリレート、及び/又はマレイミド-、イタコンイミド-、若しくはナジイミド-含有化合物などのラジカル硬化性成分をマトリックスとして使用してもよい。」(段落0063)との記載のとおり、(メタ)アクリレート含有化合物はラジカル硬化性である。
そうすると、引用発明のマトリックスである感圧粘着剤(PSA)は、「(メタ)アクリレート含有化合物を含むラジカル硬化性組成物」といえる点で本件補正発明のマトリックスと一致する。
ウ 一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明は次の点で一致し、相違点はない。
<一致点>
「マトリックス;及び
カプセル化相変化材料粒子
を含み、
前記マトリックスは、(メタ)アクリレート含有化合物を含むラジカル硬化性組成物を含む、組成物。」
エ したがって、本件補正発明は、引用発明であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項、また、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年3月31日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年6月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~35に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項23に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項23に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~26、29~35に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、及び同法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、また、請求項27、28に係る発明は、引用文献1及び、引用文献2として引用した特表2002-509178号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、「ラジカル硬化性組成物又はその硬化生成物」という発明特定事項のうち、「ラジカル硬化性組成物」を選択した場合において、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、マトリックスが含むラジカル硬化性組成物に係る「(メタ)アクリレート、マレイミド-、イタコンイミド-、又はナジイミド-含有化合物のうちの1又は複数を含む」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明であり、又は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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