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特許拒絶査定不服審判

2022-004224

内燃機関の制御装置

審判番号
2022-004224
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-033255外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年03月22日
審決日
2022年12月06日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .113-Z (F02D) / P18 .121-Z (F02D) / P18 .561-Z (F02D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-33255「内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔令和元年9月5日出願公開、特開2019-148222〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年2月27日の出願であって、令和3年10月11日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の令和3年11月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和4年3月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和4年3月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年3月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について (1)本件補正前の令和3年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得する取得部と、 前記デポジットの量が所定量以上であり、かつユーザによってイグニッションがオフにされた場合、前記燃焼室に燃料噴射弁による燃料噴射を実施した後、点火プラグによる点火を実施せずに、前記燃焼室に燃料が残留した状態で前記内燃機関を停止する制御部と、を具備する内燃機関の制御装置。」 (2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下の通り補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得する取得部と、 前記デポジットの量が所定量以上であり、かつユーザによってイグニッションがオフにされた場合、前記燃焼室内のピストンの表面に対して燃料噴射弁による燃料噴射を実施した後、点火プラグによる点火を実施せずに、前記燃焼室に燃料が残留した状態で前記内燃機関を停止する制御部と、を具備する内燃機関の制御装置。」 2.補正の適否 新規事項について検討すると、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、「燃料噴射弁による燃料噴射」に関して、次のアないしエの記載及び図示事項がある。 ア 「シリンダヘッド11には、燃焼室13に燃料を供給(筒内噴射)する燃料噴射弁30が設けられている。」(段落【0009】) イ 「エンジン100が停止するまで各気筒において燃料噴射弁30による燃料噴射は行われる。例えば気筒#1では燃料噴射後に点火が実施されず(ステップS16)、エンジン100が停止する。燃料は燃焼せずに燃焼室13内に残留する。エンジン100の停止中に、燃焼室13内に残留した燃料が例えばピストン14の表面のデポジットに浸透し、デポジットは膨潤する。」(段落【0020】) ウ 【図1】 [図:0001393842000001.jpg] エ 上記ア及びイの記載事項並びに技術常識を参酌し、図1の図示事項をみると、図1に図示される燃料噴射弁30は、その配置及び形状から燃焼室13に燃料を噴射するもので、ピストンの表面のデポジットに対する燃料の浸透は、燃焼室13内に残留した燃料が、その自重によりピストン表面に移動することによりなされるものと解するのが合理的である。 そして、当初明細書等における上記アないしエの記載及び図示事項からみて、当初明細書等には、本件補正により追加された「燃焼室内のピストンの表面に対して」、燃料噴射弁による燃料噴射を実施することは明記されていない。さらに、上記イの「燃焼室13内に残留した燃料が例えばピストン14の表面のデポジットに浸透」するとの記載を含む当初明細書等の記載及び図示事項は、「燃焼室内のピストンの表面に対して」、すなわち燃焼室内のピストンの表面に向けて燃料噴射弁による燃料噴射を実施することを意図するものでないから、「燃焼室内のピストンの表面に対して」、燃料噴射弁による燃料噴射を実施することは、当初明細書等の記載及び図示事項から自明な事項ではない。 そうすると、本件補正により追加された「燃焼室内のピストンの表面に対して」、燃料噴射弁による燃料噴射を実施することは、当初明細書等に記載がなく、当初明細書等の記載から自明な事項でもないから、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 3.むすび 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 令和4年3月22日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年11月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.(1)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、大略以下のとおりである。 この出願については、令和3年10月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-2によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 理由1. (新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2. (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、又は下記の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2005-201083号公報 引用文献2:実願昭63-99296号(実開平2-20735号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 3.引用文献 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、「内燃機関の噴射制御装置」に関して、図面とともに次の記載がある(下線は当審が付したものである。以下同様。)。 ア 「【0007】 この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気通路に燃料を噴射する吸気通路用噴射弁に加えて筒内に燃料を噴射する筒内用噴射弁を備える内燃機関において、筒内用噴射弁の噴孔部へのデポジットの堆積を好適に抑制することのできる内燃機関の噴射制御装置を提供することにある。」 イ 「【0029】 図1は、本実施の形態の噴射制御装置を示す概略構成図である。 この噴射制御装置は、内燃機関10に燃料を噴射供給する燃料供給系20と、この燃料供給系20による燃料噴射等を制御する制御系30と、この制御系30に制御データの一部として検出信号を出力する各種センサからなる検出系40とを備えて構成される。 【0030】 噴射制御装置の燃料供給系20は、内燃機関10の各気筒#1~#4(本実施の形態では例えば4気筒)に対応して設けられ、それら各気筒#1~#4の燃焼室11内に燃料を直接噴射する筒内用噴射弁21と、同じく各気筒♯1~♯4に対応して設けられ、吸気通路12に燃料を噴射する吸気通路用噴射弁22とを備えている。この吸気通路用噴射弁22は、本実施の形態においては吸気通路12の一部を構成する吸気ポート12aに燃料を噴射するポート用噴射弁として構成されているが、この構成に限らず、同吸気通路12の一部を構成するサージタンク12b内に燃料を噴射するもの(一般にはコールドスタートインジェクタと呼ばれる)であってもよい。なお、以下では、吸気通路用噴射弁22を「ポート用噴射弁22」として記載する。 【0031】 これら筒内用噴射弁21及びポート用噴射弁22には、燃料タンク23内に蓄えられた燃料が分配供給される。即ち、燃料タンク23内の燃料は、フィードポンプ24によって汲み上げられてポート用噴射弁22に供給される。また、このフィードポンプ24によって汲み上げられた燃料の一部は、サプライポンプ25で高圧に加圧された後にデリバリパイプ26を介して筒内用噴射弁21にも供給される。 【0032】 筒内用噴射弁21及びポート用噴射弁22はいずれも、その内部に電磁ソレノイド(図示略)を備えており、この電磁ソレノイドに対して入力される制御系30からの駆動信号に基づいてこれら各噴射弁21,22の燃料噴射量及び燃料噴射時期が設定される。 【0033】 また、内燃機関10には、各気筒#1~#4に対応して点火プラグ13が設けられている。この点火プラグ13は、それぞれ点火コイル(図示略)を内蔵するイグナイタ14に接続されており、その点火時期は制御系30からイグナイタ14に出力される点火信号に基づいて設定される。」 ウ 「【0035】 噴射制御装置の制御系30は、内燃機関10の各種運転制御を行う電子制御装置(以下「ECU」という)31をはじめ、このECU31を通じて駆動制御される筒内用噴射弁21及びポート用噴射弁22の電磁ソレノイド、イグナイタ14、スロットルモータ16を備えて構成される。 【0036】 ECU31は、演算処理を実行する演算部32、各種制御プログラムやその実行に際して参照されるデータが記憶される記憶部33、上記各噴射弁21,22(電磁ソレノイド)等に駆動信号を出力する出力部34、各種センサの検出信号が入力される入力部35等々により構成されている。 【0037】 出力部34には、機関始動時に内燃機関10の自立運転が可能になるまでの間、同内燃機関10のクランクシャフト(図示略)を駆動するスタータ17が接続されている。このスタータ17による始動動作(クランキング)は、イグニッションスイッチ(図示略)が始動位置に切り換えられたときに開始される。」 エ 「【0040】 ECU31は、上記アクセルセンサ41や回転数センサ44からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出する。そして、ECU31は切替手段として、筒内用噴射弁21とポート用噴射弁22とのうち少なくとも一方を駆動制御することにより、それら各噴射弁21,22による燃料噴射形態を機関運転状態に応じて切り替える。」 オ 「【0042】 ところで、筒内用噴射弁21は、燃焼室11内において高温の燃焼ガスに晒されることから、同噴射弁21の噴孔部にはデポジットが付着し易くなる。こうしたデポジットは、筒内用噴射弁21からの燃料噴射によって吹き飛ばすことも可能であるが、上記のようにポート用噴射弁22のみによる燃料噴射が行われているときには、筒内用噴射弁21からの燃料噴射も行われないことから、同噴射弁21の噴孔部の温度が上昇し、該噴孔部へのデポジットの堆積が一層進むこととなる。このデポジットは上記噴孔部からの燃料噴射を妨げ、筒内用噴射弁21を使用したときの同噴射弁21の燃料噴射量を低下させる要因となる。こうしたデポジットによって筒内用噴射弁21の燃料噴射量が低下し、同噴射量が適正値(要求量)よりも少なくなる場合には、失火、ひいては燃焼状態の悪化を招くおそれがある。 【0043】 このため、本実施の形態にかかる噴射制御装置では、ポート用噴射弁22による燃料噴射が行われる運転領域であっても、所定条件のもと筒内用噴射弁21のみによる燃料噴射が所定期間行われるように燃料噴射形態を強制的に切り替えることで、上記噴孔部へのデポジットの堆積の抑制、更には既に堆積したデポジットの除去を図るようにしている。なお、本実施の形態において、燃料噴射形態を強制的に切り替えるとは、具体的には、使用する噴射弁を筒内用噴射弁21に切り替えることを意味する。 【0044】 以下、こうしたデポジット対策にかかる燃料噴射形態の切り替え制御の詳細について、図2を参照しながら説明する。 本実施の形態においては、上記ECU31(切替手段)により実行される燃料噴射形態の切り替え制御の具体的な態様として、第1の処理モードに対応した制御ルーチンが用意されている。この制御ルーチンはECU31内の記憶部33に格納されている。 【0045】 図2は、第1の処理モードにかかる制御ルーチンを示すフローチャートである。この第1の処理モードでは、イグニッションスイッチIGがオンされた後、つまり機関始動後において、所定期間強制的に噴射弁をポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替えることにより、デポジット対策を図ることを目的としている。この制御ルーチンは、ECU31を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込み処理として実行される。なお、図示は省略するが、上記イグニッションスイッチIGがオンされると、この第1の処理モードの制御にかかる初期化処理として、ECU31は、モード制御フラグexinjdp をクリア(→“0”)する処理を実行するようになっている。 【0046】 割り込み処理として、処理がこのルーチンに移行すると、ECU31は、まず上記モード制御フラグexinjdp が“0”か否かを判断する(ステップS110)。このとき、フラグexinjdp が“1”であると判断する場合には、ECU31は本処理を終了する。 【0047】 一方、フラグexinjdp が“0”である(ステップS110:YES)と判断する場合には、ECU31は、そのときの筒内用噴射弁21の燃料噴射量QINJST(実燃料噴射量)を検出し、その噴射量QINJSTが目標値(目標噴射量)に達しているか、言い換えれば、噴射量QINJSTが低下していないかどうかを判断する(ステップS120)。 【0048】 なお、ここでの判断処理では、ECU31は噴射量検出手段として、例えば燃焼室11内に形成される混合気の空燃比(A/F)学習値の変動(具体的にはフィードバック制御における燃料噴射量の補正値)を検出することによって、上記噴射量QINJSTを検出するようにしている。 【0049】 ここで、燃料噴射量QINJSTが目標値に達している(ステップS120:YES)と判断する場合、つまり噴射量QINJSTが低下していないと判断する場合には、ECU31は、上記モード制御フラグexinjdp をセット(→“1”)した後に本処理を終了する(ステップS130)。 【0050】 一方、燃料噴射量QINJSTが目標値に達していない(ステップS120:NO)と判断する場合、つまり、デポジットにより噴射量QINJSTが低下していると判断する場合には、ECU31は、噴射弁を強制的にポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替えて、筒内用噴射弁21による燃料噴射を所定期間行う(ステップS140)。」 カ 「【0059】 (第2の実施の形態) 以下、本発明にかかる内燃機関の噴射制御装置を具体化した第2の実施の形態について上記第1の実施の形態との相違点を中心に図3及び図4に従って説明する。 【0060】 この第2の実施の形態においては、上記ECU31(切替手段)により実行される燃料噴射形態の切り替え制御の具体的な態様として、上記第1の実施の形態で説明した第1の処理モードに対応した制御ルーチンに加え、更に、第2の処理モードに対応した制御ルーチンが用意されている。これらの制御ルーチンはECU31内の記憶部33に格納されている。 【0061】 図3は、第2の処理モードにかかる制御ルーチンを示すフローチャートである。この第2の処理モードでは、上記第1の処理モードにかかるモード制御フラグexinjdp に基づいて、イグニッションスイッチIGがオフされてから機関が停止するまでの間、強制的に噴射弁をポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替えることにより、デポジット対策を図ることを目的としている。この制御ルーチンは、ECU31を通じて、上記イグニッションスイッチIGがオフされたことをトリガに例えば所定クランク角毎の角度割り込み処理として実行される。 【0062】 すなわち、イグニッションスイッチIGがオフされたことをトリガに、割り込み処理として、処理がこのルーチンに移行すると、ECU31は、まず上記モード制御フラグexinjdp が“1”か否かを判断する(ステップS210)。このとき、フラグexinjdp が“1”である(ステップS210:YES)と判断する場合には、ECU31は本処理を終了する。つまり、ECU31は、モード制御フラグexinjdp が“1”であった場合には、上記第1の処理モードによってデポジットが除去処理されている、言い換えれば、燃料噴射量QINJST(実燃料噴射量)が目標値(目標噴射量)まで回復しているものと判断して、第2の処理モードによるデポジット対策を不要とすべく本処理を終了する。 【0063】 一方、モード制御フラグexinjdp が“0”である(ステップS210:NO)と判断する場合には、ECU31は、噴射弁を強制的にポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替えて、筒内用噴射弁21による燃料噴射を所定期間行う(ステップS220)。つまりECU31は、モード制御フラグexinjdp が“0”であった場合には、デポジットが堆積している可能性があると判断して、筒内用噴射弁21による燃料噴射を行う。 【0064】 この際、本実施の形態では、筒内用噴射弁21による燃料噴射が各気筒#1~#4につきそれぞれ1サイクルずつ行われるように燃料噴射形態を切り替えるようにしている。これにより、その噴孔部に堆積しているデポジット、更にはその生成要因となるカーボン等の付着物(デポジットのような固形物でないもの)を噴射力によって吹き飛ばして、筒内用噴射弁21の燃料噴射量QINJSTを目標値まで回復させることができる。このような筒内用噴射弁21による燃料噴射を行った後、ECU31は、モード制御フラグexinjdp をセット(→“1”)して本処理を終了する(ステップS230)。 【0065】 このように、第2の処理モードでは、イグニッションスイッチIGがオフされた後の機関停止時において、噴射弁が強制的に筒内用噴射弁21に切り替えられることで、筒内用噴射弁21の噴孔部に堆積しているデポジットを除去することができる。また、このような筒内用噴射弁21による燃料噴射を行うことにより、同燃料の気化熱を噴孔部から奪い、該噴孔部の冷却を図ることができる。その結果、噴孔部にデポジットが新たに堆積することも抑制される。 【0066】 ちなみに、このような機関停止時にあっては、筒内用噴射弁21を使用することによる燃焼悪化の影響があまり問題とならない。このため、デポジット対策を図るには、こうした機関停止時を利用するのが好ましい。 【0067】 図4は、デポジット対策として、上記第1の処理モードに加え、本実施の形態で説明した第2の処理モードによる燃料噴射形態の切り替え制御が実行されるときの機関運転時間と筒内用噴射弁21の噴射量低下率との関係を示す説明図である。 【0068】 同図に示すように、筒内用噴射弁21の噴射量低下率は機関運転時間が長くなるにしたがって次第に上昇することとなるが、今、時刻t1にてイグニッションスイッチIGがオフされた後に、上記第2の処理モードが実行され、その後、機関が停止するまでの間に筒内用噴射弁21に強制的に切り替えられることで、噴射量低下率はある程度回復する。 【0069】 そして、時刻t2にて機関が始動された後に(イグニッションスイッチIGがオン)、上記のような第1の処理モードが実行され、筒内用噴射弁21に強制的に切り替えられることで、筒内用噴射弁21の噴孔部に堆積するデポジットはさらに除去され、これにより噴射量低下率はほぼ回復するようになる。 【0070】 以上記述したように、本実施の形態によれば、上記第1の実施の形態で奏する効果に加えて、更に以下の効果を奏する。 (1)イグニッションスイッチIGがオフされた後、強制的にポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替え、この筒内用噴射弁21による燃料噴射を各気筒#1~#4につきそれぞれ1サイクルずつ行って機関を停止させるようにした。これにより、筒内用噴射弁21の噴孔部に堆積するデポジット等を噴射力により吹き飛ばして、同筒内用噴射弁21の噴射量QINJSTを目標量まで回復させることができる。 【0071】 (2)また、第1の実施の形態と同様、筒内用噴射弁21による燃料噴射を行い、噴孔部の冷却を図ることで、機関停止の際にデポジットが新たに堆積することを抑制することもできる。 【0072】 (3)本実施の形態では、筒内用噴射弁21による燃料噴射に起因した燃焼悪化の影響があまり問題とならない機関停止時に、同噴射弁21への切り替え制御を行うようにしたため、デポジット対策をより好適に行うことができる。 【0073】 なお、この第2の実施の形態は、以下の態様に変更して実施してもよい。 ・第2の実施の形態では、第2の処理モードにかかる処理を、上述した第1の処理モードにおけるモード制御フラグexinjdp に連動させる制御態様としたが、このフラグexinjdp に連動させない制御態様としてもよい。つまり、イグニッションスイッチIGがオフされる場合には、上記フラグexinjdp の値に依らず、この第2の処理モードによる切り替え制御を必ず実行するようにする。このようにすれば、燃焼悪化があまり問題とならない機関停止時を有効利用してデポジット対策を行うことができる。」 キ 「【0075】 この第3の実施の形態においては、上記ECU31(切替手段)により実行される燃料噴射形態の切り替え制御の具体的な態様として、第3の処理モードに対応した制御ルーチンが用意されている。この制御ルーチンはECU31内の記憶部33に格納されている。 【0076】 図5は、第3の処理モードにかかる制御ルーチンを示すフローチャートである。この第3の処理モードでは、ポート用噴射弁22による燃料噴射が連続して行われる運転時に、筒内用噴射弁21の噴孔部に堆積するデポジットの堆積量を推定し、その推定値に基づいて、所定期間強制的に噴射弁をポート用噴射弁22から筒内用噴射弁21に切り替えることにより、デポジット対策を図ることを目的としている。この制御ルーチンは、ECU31を通じて例えば所定クランク角毎の角度割り込み処理として実行される。 【0077】 ここで、上記デポジットの堆積量を推定する方法として、本実施の形態においては、デポジットの堆積量と相関を有する内燃機関10の運転状態量(機関運転状態)に基づいて堆積量を推定する方法を用いている。 【0078】 具体的には、ECU31は推定手段として、内燃機関10の運転状態量を算出し、この算出した状態量をもとに、上記噴孔部に付着する時間当たりのデポジット付着量を推定する。そして、ECU31は、この推定したデポジット付着量を図示しない積算カウンタにより積算し、その積算値をデポジットの堆積量として記録するようにしている。 【0079】 ちなみに、こうしたデポジットの堆積量の推定に用いる運転状態量としては、噴孔部の温度や機関燃焼状態と相関を有する量、例えば、上記回転数センサ44により検出されるエンジン回数数、上記アクセルセンサ41や回転数センサ44により検出される機関負荷、水温センサ42により検出される冷却水温等々のパラメータを用いることができる。そして、この推定の際には、これらパラメータを個別に用いて推定する方法の他、これらを組み合わせて推定する方法や、これら各パラメータについてデポジットの堆積との相関度に応じて重み付けを付ける方法等々を採用することができる。」 ク 図1 [図:0001393842000002.jpg] これらの記載事項及び図面の図示内容を総合 すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断するECU31と、 前記モード制御フラグexinjdpが“0”であり、かつイグニッションスイッチIGがオフにされた場合、燃焼室11に筒内噴射弁21による燃料噴射を行い、内燃機関10を停止する制御系30と、を具備する内燃機関の噴射制御装置。」 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献2には、「内燃機関の堆積物付着判別装置」に関して、次の記載がある。 (引用文献2において○の中に数字あるいは大文字のアルファベットがあるものについては、「○1」等と記載した。) ケ 「従来例で述べたようにデポジットの付着場所によって種々の燃焼状態の変化(悪化)が生じる。したがって、運転状態検出手段29の出力に基づいてエンジンの燃焼状態の変化に対応する所定の物理量を検出するようにすれば、デポジットの付着量を判別することができる。該物理量としては、例えば○1~○3に挙げるものがある。 ○1空燃比 加速時空燃比がリーン(または減速でリッチ)となったら○A又は○B部デポジットに付着による壁流量増加とみなす。 ○2ノッキング ノッキング制御を行う際、通常よりノッキングし易い場合(例えば、点火時期Adv遅角量が大きい、あるいはノッキング発生頻度が多い等)○C部デポジット付着とみなす。 ○3回転変動および空燃比のサイクル変動 アイドリング時の回転変動が大きかったり、空燃比のサイクル変動が大きい場合、○A部デポジット付着とみなす。 すなわち、気筒内の燃焼状態のデポジット付着の有無による変化が上記○1~○3の空燃比(酸素センサ26の出力又はその出力に基づく過渡補正学習係数)、点火時期(ノックセンサ28の出力)およびエンジン回転数(クランク角センサ25の出力)等の変化として現れる。そこで、これらの情報を検出すればエンジン内部のデポジット付着の有無を判定する目安となる。」(明細書9ページ3行ないし10ページ10行) これらの記載事項を総合すると、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「エンジン内部のデポジットの付着量を判別する内燃機関の堆積物付着判別装置。」 4.本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、後者の「内燃機関11」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「イグニッションスイッチIG」は「イグニッション」に、「燃焼室11」は「燃焼室」に、「筒内噴射弁21」は「燃料噴射弁」に、「行い」は「実施し」に、「制御系30」は「制御部」に、「内燃機関の噴射制御装置」は「内燃機関の制御装置」にそれぞれ相当する。 そして、後者の「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断する」ことは、内燃機関11内において高温の燃焼ガスに晒され、その噴孔部にデポジットが付着し易くなる筒内噴射弁21(上記3.の段落【0042】)の燃料噴射量QINJSTが、デポジットにより低下している可能性があると判断する(上記3.の段落【0063】)ことであり、筒内噴射弁21に付着するデポジットは、内燃機関11の燃焼室11内のデポジットといえるから、前者の「内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得する」こととは、「内燃機関の燃焼室内のデポジットが堆積している可能性を判断する」という限りで一致する。そして、後者の「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断するECU31」は、段落【0048】及び【0050】の記載から、「燃焼室11内に形成される混合気の空燃比(A/F)学習値の変動を検出することで噴射量QINJSTを検出し、デポジットにより噴射量QINJSTが低下しているか否かを判断するECU31」といえるから、前者の「内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得する取得部」とは「内燃機関の燃焼室内のデポジットを判断する手段」という限りで一致する。同様に、後者の「モード制御フラグexinjdpが“0”であり」と前者の「デポジットの量が所定量以上であり」とは、「デポジットが堆積している可能性があり」という限りで一致する。 また、後者の「イグニッションスイッチIGがオフにされた」ことは、上記3.ウの段落【0037】の「イグニッションスイッチ(図示略)が始動位置に切り換えられたときに開始される」との記載から、ユーザにより切り換えられるイグニッションスイッチIGをオフにされたことであることが明らかであるから、前者の「ユーザによってイグニッション(イグニッションスイッチIG)がオフにされた」ことに相当するといえる。 したがって、両者は、 「内燃機関の燃焼室内のデポジットが堆積している可能性を判断する手段と、 前記デポジットが堆積している可能性があり、かつユーザによってイグニッションがオフにされた場合、前記燃焼室に燃料噴射弁による燃料噴射を実施し、前記内燃機関を停止する制御部と、を具備する内燃機関の制御装置。」 である点で一致し、次の2点で相違する。 [相違点1] 「デポジットが堆積している可能性を判断」すること及び「デポジットが堆積している可能性があ」ることに関し、前者は「内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得」し、「前記デポジットの量が所定量以上」であるのに対し、後者は「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断」し、「モード制御フラグexinjdpが“0”」である点。 [相違点2] 前者は「燃焼室に燃料噴射弁による燃料噴射を実施した後、点火プラグによる点火を実施せずに、前記燃焼室に燃料が残留した状態で前記内燃機関を停止する」ものであるのに対し、後者は「燃焼室11に筒内噴射弁21による燃料噴射を行い、内燃機関10を停止する」際に「点火プラグによる点火を実施せずに、前記燃焼室11に燃料が残留した状態」で「内燃機関10を停止する」ものであるか明らかでない点。 5.判断 上記相違点について検討する。 はじめに相違点1について検討すると、上述したとおり、「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断する」ことは、上記3.オの記載、特に段落【0047】ないし【0050】の記載から「デポジットにより噴射量QINJSTが低下しているか否かを判断する」ことである。そして、技術常識を踏まえると、噴射量QINJSTの低下はデポジットが所定量堆積することで生じることは明らかである。そうすると、「デポジットにより噴射量QINJSTが低下しているか否かを判断する」ことは、デポジットの堆積が所定量を超えることにより噴射量QINJSTが低下しているか否かを判断することであるから、「デポジットにより噴射量QINJSTが低下しているか否かを判断する」ことは、「内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得」し、「デポジットの量が所定量以上」であるか否かを判断するものといえる。この理解において、「デポジットにより噴射量QINJSTが低下しているか否か」の「判断」である「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断する」ことは「内燃機関の燃焼室内のデポジットの量を取得する」ことを含み、さらに「モード制御フラグexinjdpが“0”」であることは「デポジットの量が所定量以上」であることといえる。そうすると、相違点1に係る上記相違は実質的な相違といえず、引用発明1は、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えている。 仮にこのような理解ができないと仮定してさらに検討を進めると、引用発明2は、「エンジン内部(本願発明の「内燃機関の燃焼室内」に相当。)のデポジットの付着量(「量」に相当。)を判別(「取得」に相当。)する。」との技術事項を開示するものである。 また、上記3.キの段落【0076】には「デポジットの堆積量を推定し、その推定値に基づいて」「デポジット対策を図る」との記載がある。当該段落【0076】の記載及び引用発明2が開示する技術事項を踏まえると、 「内燃機関の燃焼室内のデポジットの付着量を判別すること」は周知技術といえるものである。 そうすると、引用発明1の「「モード制御フラグexinjdpが“0”か否かを判断する」こと及び「モード制御フラグexinjdpが“0”」であることにおいて、周知技術を踏まえ、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者の通常の創作能力の範囲で容易に想到し得たことである。 次に相違点2について検討すると、「イグニッションスイッチIGがオフにされた」場合、その後「イグニッションスイッチIGがオンされる」までの間は内燃機関を停止するのが技術常識であるから、当該技術常識を踏まえると点火プラグによる点火は実施されないと理解できる。また、上記3.カの段落【0065】に記載される効果である「同燃料の気化熱を噴孔部、該噴孔部の冷却を図ることができる。」をより効果的に奏するのであれば、筒内噴射弁21から噴射された燃料を燃焼させることとなる点火プラグによる点火は当然実施されないと解することもできる。そして、筒内噴射弁21による燃料噴射を実施した後、点火プラグによる点火を実施しないのであれば、燃焼室11に燃料が残留した状態となることは自明といえる。そうすると、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者の技術常識を踏まえると実質的な相違ではなく、引用発明1もまた備えているといえる。 仮にこのように理解できないとしても、引用発明1において技術常識を踏まえて相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、本願発明は、全体としてみても、引用発明1及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は引用発明1であるか、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は、審判請求書において、令和4年3月22日付けの手続補正における補正の根拠は当初明細書の段落【0020】等である旨主張する。そして、当該主張のとおりであるとすれば、令和4年3月22日付けの手続補正における補正は当初明細書等の記載の範囲内でなされたものとなることから、当初明細書の段落【0020】等を根拠に行った補正に係る事項についても、念のため検討を進める。 引用発明1は、上記3.(1)に記載したとおりである。そして、「燃焼室内に残留した燃料」がその自重により移動し、「例えばピストンの表面」上に残留することになることは、引用発明1に接した当業者であれば自明に理解できることである。また、燃焼室にデポジットが残留する蓋然性があることは、引用文献2の明細書2ページ2行ないし3ページ3行に記載されるように従来周知の事項であり、さらにピストンの表面が燃焼室の一部を構成することも明らかであるから、当初明細書等の段落【0020】等に記載される事項は、引用発明1及び従来周知の事項から当業者であれば容易に想起し得たことといえる。 令和4年3月22日付けの手続補正による補正は上述のとおり新規事項を含むものであるが、仮に当初明細書等の記載の範囲内であるとしても、引用発明1、周知技術及び従来周知の事項から容易に想到し得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶されるべきものである。 よって、以上のとおり審決する。

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2022-004224

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