特許拒絶査定不服審判
2024-014387
作業車両の表示装置
- 審判番号
- 2024-014387
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-099731外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年09月09日
- 審決日
- 2025年10月08日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 分類
- P18 .121-WZ (E02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-99731「作業車両の表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和5年8月3日出願公開、特開2023-108041〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成27年5月26日(国内優先権主張 平成26年10月27日)に出願した特願2015-106874の一部を、令和2年6月2日に新たな特許出願(特願2020-96490)としたものの一部を、令和3年12月6日に新たな特許出願(特願2021-197501)としたものの一部を、令和5年6月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年12月22日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 6日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 5月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 6月11日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月 9日 :審判請求書の提出
令和7年 5月16日付け:拒絶理由通知書
同年 7月18日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年7月18日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
作業機が取り付けられ、前記作業機の作業部を昇降操作かつ回動操作できる作業車両の表示装置において、
表示部を具備し、
前記表示部は、前記昇降操作に同期して変化する前記作業部の高さと、前記回動操作に同期して変化する前記作業部の角度とを、同一画面上に同時に表示し、
前記表示部は、前記昇降操作に対応する第1位置に前記作業部の高さを表示し、前記回動操作に対応する第2位置に前記作業部の角度を表示し、
前記表示部は、
前記画面上にアーム及びバケットを含む前記作業機の画像を表示し、
前記第1位置は前記画像の前記アームの近傍位置であって、前記第2位置は前記画像の前記バケットの近傍位置である、
作業車両の表示装置。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
令和7年5月16日付けで当審において通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下の理由を含むものである。
(進歩性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、発行された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2003-119818号公報
2.国際公開第02/40783号
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1
前記当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前である平成15年4月23日に発行された刊行物である特開2003-119818号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同じ。)。
ア 「【0019】図1において、その地面上に、前進後退用のキャタピラ部12を介してパワーショベルの本体部10が設置され、本体部10の上部前方に操縦席11が配置され、操縦席11内の操作卓33(図2参照)でオペレータ(不図示)がパワーショベルの操縦を行っている。本体部10は、キャタピラ部12上に旋回駆動できるように設置され、本体部10に対して傾斜角が制御できる状態で支持部材(又は吊り下げ用の部材)としてのブーム13が連結され、ブーム13の先端部に軸31を介して回転自在にアーム14が連結され、アーム14の先端部に軸27を介して回転自在に保持部材30の一端が連結され、保持部材30に一体的に土砂を直接掘削するための先端部が開いた箱型のバケット15(本発明のバケット部に対応する)が固定されている。バケット15の先端の開口の底部に設けられた爪部の底面15aはほぼ平面に加工されており、本例ではその底面15aをバケット15の底面とみなす。
【0020】また、本体部10から伸びる第1油圧シリンダ16の一端が回転可能の軸17を介してブーム13に連結され、第1油圧シリンダ16の伸縮によって本体部10に対するブーム13の傾斜角が制御される。同様に、ブーム13及びアーム14にそれぞれ回転可能な軸19及び20を介して第2油圧シリンダ18が連結され、第2油圧シリンダ18の伸縮によってブーム13に対するアーム14の回転角が制御される。
【0021】更に、アーム14の先端部の軸27の内側の軸26に回転可能にロッド状のリンク部材25の一端が連結され、保持部材30の他端の軸29及びリンク部材25の他端の軸23の間にロッド状のリンク部材28が連結されている。この場合、アーム14の先端部の軸26及び27の間のロッド状の部分をリンク部材14aとみなすと、本例では、リンク部材14a、保持部材30、リンク部材28、及びリンク部材25をそれぞれ回転可能な軸27,29,23及び26で平行四辺形状に連結することによって、リンク機構24が構成されている。そして、アーム14に設けられた回転可能な軸22とリンク機構24の軸23との間に第3油圧シリンダ21が連結され、第3油圧シリンダ21の伸縮によってアーム14に対するリンク機構24及びバケット15の回転角が制御される。即ち、第3油圧シリンダ21の伸縮によってリンク機構24の形状が変化することによって、アーム14に対するバケット15の回転角が変化する。」
イ 「【0034】Φ=-28.6° …(11)
図2に戻り、副制御系53には、計算した出力角Φの情報を表示するバケットモニタ56及びオペレータが副制御系53に目標とする出力角等を設定するための角度設定部55も接続されている。これらの角度設定部55及びバケットモニタ56は図1の操縦席11内でオペレータが操作できる位置に設置されている。
【0035】図6は、角度設定部55及びバケットモニタ56のパネル面を示し、先ず図6の角度設定部55において、第1の表示部63には、図3(A)のバケット15の出力角Φの目標値(設定角度)が表示され、第2の表示部65には、図3(A)の傾斜センサ51,52の計測値に基づいて副制御系53によって計算されたバケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)が表示される。出力角Φは通常は例えば分解能0.1°の度(deg)で表示されるが、その他に計測範囲に対する%で表示するモード、及び計測範囲に対する割・分で表示するモードも設けられている。これらの表示モードは表示切り換えスイッチ66で切り換えることができる。更に、角度設定部55には、出力角Φの目標値に対する実測値(計算で求められた値)の誤差が+及び-のときに点灯する誤差表示ランプ73も設けられている。」
ウ 「【図6】
[図:0001429701000001.jpg]
」
エ 前記ア【0019】、及び前記イ【0035】をふまえると、前記ウ【図6】から、角度設定部55のパネル面には、バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)と共に、アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像が表示されることが看取できる。
オ 前記ア~エから、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「地面上に、前進後退用のキャタピラ部12を介して設置されたパワーショベルの本体部10に配置された操縦席11に設置された角度設定部55であって(【0019】、【0034】)、
本体部10は、ブーム13が連結され、ブーム13の先端部に軸31を介して回転自在にアーム14が連結され、アーム14の先端部に軸27を介して回転自在に保持部材30の一端が連結され、保持部材30に一体的に土砂を直接掘削するための先端部が開いた箱型のバケット15が固定されており(【0019】)、
第1油圧シリンダ16の伸縮によって本体部10に対するブーム13の傾斜角が制御され、第2油圧シリンダ18の伸縮によってブーム13に対するアーム14の回転角が制御され、第3油圧シリンダ21の伸縮によってアーム14に対するバケット15の回転角が制御され(【0020】、【0021】)、
角度設定部55のパネル面の第2の表示部65には、バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)が表示され(【0035】)、
角度設定部55のパネル面には、バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)と共に、アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像が表示される(前記エ)、
角度設定部55。」
(2)引用文献2
前記当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前である2002年5月23日に発行された国際公開第02/40783号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「図1は本発明の実施形態による表示装置を備えた油圧ショベルの運転室内の様子を示す平面図である。」(6頁7~8行)
イ 「表示装置40は表示器41、表示用制御ユニット42、操作装置43を備え、制御ユニット50からの表示データは表示用制御ユニット42に入力され、表示用制御ユニット42は入力した表示データを表示器41に表示したり、操作装置43の操作信号に基づいて制御ユニット50に要求する表示内容、演算内容の指示データあるいは自動制御のための目標掘削面の深さ、傾きなどの数値データを同じくシリアル通信ライン39を介して制御ユニット50に送信する。
・・・
表示器41は画像表示部として例えば表示用LCD41aを備えている。」(9頁23行~10頁4行)
ウ 「図5A、図6A及び図7Aは表示器41の表示用LCD41aに選択的に表示する3種類の画面を示すものであり、図5Aは車体の姿勢情報を表示する標準モニタ画面60を、図6Aは自動制御のための目標掘削面の深さ、勾配の設定状態を表示する掘削設定画面6Iを、図7Aは掘削設定画面で設定した目標掘削面とバケットの相対位置を拡大表示する掘削モニタ画面62をそれぞれ示している。
・・・
図5Aにおいて、標準モニタ画面60の主画面領域63は、制御ユニット50で計算され、送信されてくる図5Bに示すようなバケット10の先端の高さ、車体の左右傾斜角度、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する。バケット10の先端の高さのイラスト表示は、地面を示す直線及び地面を意味するGLの文字と、制御ユニット50で計算されたバケット10の先端の高さに応じて地面に対する高さ位置が変化するバケットのシンボルを表示することにより行う。車体の左右傾斜角度のイラスト表示は、制御ユニット50で計算された車体の左右傾斜角度に応じて傾く車体のシンボルを表示することにより行う。バケット角度のイラスト表示は、制御ユニット50で計算されたバケット10の角度に応じて回転するバケットのシンボルを表示することにより行う。」(11頁2行~29行)
エ 「図5A
[図:0001429701000002.jpg]
」
オ 前記ア~エから、引用文献2には下記の技術事項(以下「引用発明2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「油圧ショベルが備える表示器41であって(前記ア、イ)、
表示器41が備える表示用LCD41aに表示する標準モニタ画面60の主画面領域63は、バケット10の先端の高さ、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する(前記ウ)、
表示器41。」
2 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
(1)後者の「パワーショベル」、「アーム14」、「バケット15」、及び「「ブーム13」、「アーム14」、「保持部材30」、及び「バケット15」」を有するものは、それぞれ前者の「作業車両」、「アーム」、「バケット」、及び「作業機」に相当する。
(2)後者の「パワーショベル」は、その「本体部10」に「ブーム13が連結され、ブーム13の先端部に軸31を介して回転自在にアーム14が連結され、アーム14の先端部に軸27を介して回転自在に保持部材30の一端が連結され、保持部材30に一体的に土砂を直接掘削するための先端部が開いた箱型のバケット15が固定されて」いることから、前記(1)をふまえると、前者の「作業車両」と、後者の「パワーショベル」は、「作業機が取り付けられ」るものである点で一致する。
(3)前者の「作業機の作業部」については、明細書に何らの定義もないところ、一般に「作業部」とは、作業が行われるあらゆる部分を指すものと解される。そうすると、後者の「バケット15」は、前記(1)もふまえれば、前者の「作業機の作業部」にも相当する。
また、後者の「バケット15」は、「土砂を直接掘削するための」ものであり、かつ、「「アーム14に対する」「回転角」」が「第3油圧シリンダ21の伸縮によって」制御されるものであって、「アーム14」は、「「ブーム13に対する」「回転角」」が「第2油圧シリンダ18の伸縮によって」制御されるものであって、「ブーム13」は、「「本体部10に対する」「傾斜角」」が「第1油圧シリンダ16の伸縮によって」制御されるものであることから、上下方向に移動しつつ回転するものであるといえる。
そうすると、後者の「パワーショベル」は、オペレータによりその動作が制御されていることは明らかであるから、前記(2)をふまえると、前者の「作業車両」と、後者の「パワーショベル」は、「作業機が取り付けられ、前記作業機の作業部を昇降操作かつ回動操作できる」ものである点で一致する。
(4)後者の「角度設定部55」は、その「パネル面」に「バケット角度」、及び「アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像」が表示されるものであって、かつ、「パワーショベルの本体部10に配置された操縦席11に設置され」るものであるから、前者の「作業車両の表示装置」に相当する。
(5)後者の「パネル面」は、「角度設定部55」が有するものであるから、前記(4)をふまえると、前者の「表示部」に相当し、前者の「作業車両の表示装置」と、後者の「角度設定部55」は、「表示部を具備」するものである点で一致する。
(6)後者の「角度設定部55のパネル面の第2の表示部65」には、「バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)」が表示されること、及び前記(3)をふまえると、前者の「表示部」と、後者の「パネル面」は、「回動操作に同期して変化する作業部の角度を、表示」するものである点で一致する。
(7)後者の「第2の表示部65」は、「バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)」を表示するものであるから、後者の「第2の表示部65」の位置は、前者の「第2位置」に相当し、前記(3)をふまえると、両者は「回動操作に対応する」ものである点で一致する。
そして、このことをふまえると、前者の「表示部」と、後者の「パネル面」は、「回動操作に対応する第2位置に前記作業部の角度を表示」するものである点で一致する。
(8)後者の「アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像」は、前者の「アーム及びバケットを含む前記作業機の画像」に相当し、後者の「パネル面」には、「アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像が表示される」ことから、前者の「表示部」と、後者の「パネル面」は、「画面上にアーム及びバケットを含む前記作業機の画像を表示」するものである点で一致する。
(9)後者の「角度設定部55のパネル面」は、「バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)と共に、アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像」を表示するものであるから、「角度設定部55のパネル面の第2の表示部65」は、「バケット15」の「像」と共に、「角度設定部55のパネル面」に表示されているといえる。
本願発明の「アームの近傍位置」、「バケットの近傍位置」に関して、一般的に「近傍」とは「近くの場所」を意味するところ、前記(7)をふまえると、前者の「第2位置」と、後者の「第2の表示部65」の位置は、「前記画像の前記バケットの近傍位置である」点で一致する。
(10)したがって、本願発明と引用発明1は、
「作業機が取り付けられ、前記作業機の作業部を昇降操作かつ回動操作できる作業車両の表示装置において、
表示部を具備し、
前記表示部は、前記回動操作に同期して変化する前記作業部の角度を、表示し、
前記表示部は、前記回動操作に対応する第2位置に前記作業部の角度を表示し、
前記表示部は、
前記画面上にアーム及びバケットを含む前記作業機の画像を表示し、
前記第2位置は前記画像の前記バケットの近傍位置である、
作業車両の表示装置。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
「表示部」に関し、本願発明が「昇降操作に同期して変化する前記作業部の高さ」を、「作業部の角度」と「同一画面上に同時に表示」するのに対して、引用発明1の「パネル面」には、「バケット15」の高さに関する表示がされない点。
[相違点2]
「表示部」に関し、本願発明が「昇降操作に同期して変化する前記作業部の高さ」を、「昇降操作に対応する第1位置」であって、「アーム及びバケットを含む前記作業機の画像」の「アームの近傍位置」に表示するのに対して、引用発明1の「パネル面」には、「バケット15」の高さに関する表示がされない点。
3 判断
(1)前記相違点1及び2について併せて検討する。
ア 引用文献2技術事項の「油圧ショベル」、「表示器41」、「表示用LCD41a」、及び「バケット10」は、本願発明1の「作業車両」、「表示装置」、「表示部」、及び「作業部」に相当する。
イ 引用文献2技術事項の「バケット10の先端の高さ」は、油圧ショベルの操作により変化することは明らかであるので、本願発明1の「昇降操作に同期して変化する前記作業部の高さ」に相当する。
ウ 引用文献2技術事項の「表示用LCD41a」は、表示する「主画面領域63」に「バケット10の先端の高さ、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する」ものであって、「バケット角度」は、油圧ショベルの操作により変化することは明らかであることをふまえると、本願発明の「表示部」と、引用文献2技術事項の「表示用LCD41a」は、「昇降操作に同期して変化する前記作業部の高さと、前記回動操作に同期して変化する前記作業部の角度とを、同一画面上に同時に表示」するものである点で一致する。
エ 前記ア~ウより、引用文献2技術事項は、前記相違点1を充足するといえる。
ここで、引用発明1と引用文献2に記載の技術事項は、建設機械の技術分野に属している点で一致している。
そして、引用発明1は、操作に必要な情報を表示しており、これは、操作対象に関する情報を提示して、操作をしやすくするためのものであることは明らかであるから、「バケット15」の回転角に加え、高さについての情報を付加する動機があるといえる。
そうすると、引用発明1の「角度設定部55」に、引用文献2技術事項の「バケット10の先端の高さ、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する」技術を適用して、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
オ その際、「角度設定部55」に表示されるバケットの「高さ」の情報は、「アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像」と共に表示されることになるから、前記2(9)をふまえると、前記相違点2を充足するといえる。
カ 仮に、本願発明が「前記第1位置は前記画像の前記アームの近傍位置であって、前記第2位置は前記画像の前記バケットの近傍位置である」のに対し、引用発明1の「パネル面」における表示された部材の位置関係が審判請求人が主張する「近傍位置」といえない(以下「一応の相違点3」という。)としても、表示装置に表示される内容を、ユーザが見たときに理解しやすいように近接した位置に配置することは、例を挙げるまでもなく周知の技術であるから、引用発明1の「角度設定部55」に、引用文献2技術事項の「バケット10の先端の高さ、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する」技術を適用し、「角度設定部55」に表示される「バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)」及びバケットの「高さ」の情報をそれぞれ、「バケット15」の付近、「アーム14」の付近に表示し、前記一応の相違点3に係る構成とすることは、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない。
(2)そして、本願発明の効果も、引用発明1、及び引用文献2技術事項から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(3)令和7年7月18日に提出された意見書の主張について
審判請求人は、令和7年7月18日に提出された意見書の2.において、概略次の主張をしている。
「引用文献1の「第2の表示部65」は、「バケット15」の「像」(画像)と同一パネル面に表示されているものの、引用文献1の図6(上記参考図2)によれば、決して「バケット15」の「像」に対応すると言える位置に表示されるものではなく、「バケット15」の「像」近傍と言える位置に表示されるものではありません。
・・・引用文献2(国際公開第02/40783号)の記載を考慮したとしても、「角度設定部55」に表示されるバケットの「高さ」の情報は、「アーム14、バケット15を備えるパワーショベルを側面から見た像」と一緒に表示されるという程度にしかならず、決して「アーム14」の「像」に対応すると言える位置に表示されるものではなく、「アーム14」の「像」近傍と言える位置に表示されるものではありません。
・・・
そして、引用文献1においては、例えば「第2の表示部65」は、「バケット15」の「像」(画像)と同一パネル面に表示されるものの、「バケット15」の「像」とは無関係な(離間した)位置に配置されているのであって、このような引用文献1の記載に基づいて、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到することは到底容易とは言えません。
さらに、引用文献2の記載を考慮したとしても、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到することは到底容易とは言えません。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成により、オペレータが直感的に表示の意味を把握しやすいものとなり、ひいてはオペレータが表示装置を注視する時間が短くて済み、作業車両の操作性が飛躍的に向上するという格別の効果を奏するものです。してみれば、上記相違点に係る構成は単なる設計事項として片付けられるものでもなく、引用発明に対する有意な差異であることは明らかです。
むしろ、上記参考図2のような画面しか開示のない引用文献1の記載に基づいて、本願発明1の構成を容易に想到し得るというのであれば、これは正に、本願明細書等の記載に基づいてなされた事後分析的な非論理的思考(後知恵)というべきものであって、このような後知恵によって本願発明1の進歩性が否定されることはないものと確信しております。」
イ 審判請求人の主張についての見解
(ア)一般的に「近傍」とは「近くの場所」を意味するところ、本願明細書及び図面を参酌しても、「近傍位置」と「近傍でない位置」とを区別する基準が記載されておらず、「近傍」との記載がどの程度近い距離を意味するのか定義されていないため、引用発明1の「画像のアーム」及び「画像のバケット」と、それらの「高さ」や「角度」を、表示部の同一画面上に同時に表示したときの両者の位置関係も「近傍位置」に含まれるといえる。
そうすると、前記2(9)のとおり、「近傍」の点については実質的な相違点とはいえない。
(イ)また、この点が仮に相違点であるとしても、前記3(1)カのとおり、表示装置に表示される内容を、ユーザが見たときに理解しやすいように近接した位置に配置することは、例を挙げるまでもなく周知の技術であるから、引用発明1の「角度設定部55」に、引用文献2技術事項の「バケット10の先端の高さ、バケット角度の各情報をそれぞれの領域に数値と動くイラストで同時に表示する」技術を適用し、「角度設定部55」に表示される「バケット15の出力角Φ(実測値:バケット角度)」及びバケットの「高さ」の情報をそれぞれ、「バケット15」の付近、「アーム14」の付近に表示することは、当業者が適宜設計し得る事項にすぎず、本願明細書等の記載に基づいてなされた事後分析的な非論理的思考(後知恵)とはいえない。
そして、当該例を挙げるまでもなく周知の技術をふまえると、「オペレータが直感的に表示の意味を把握しやすいものとなり、ひいてはオペレータが表示装置を注視する時間が短くて済み、作業車両の操作性が飛躍的に向上する」という効果は格別なものではなく、当業者が予測し得る程度のものといえる。
(ウ)したがって、審判請求人の主張は、前記2、3の判断を左右するものでなく採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、及び引用文献2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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