特許拒絶査定不服審判
2023-016763
インターミッテント・エナジ・イナーシャ移動体及び移動方法
- 審判番号
- 2023-016763
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-572136
- 請求日
- 2023年10月03日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ドクター中松創研
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 倉橋 紀夫
- 審判官 河端 賢
- 分類
- P18 .113-Z (F02D) / P18 .121-Z (F02D) / P18 .537-Z (F02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-572136「インターミッテント・エナジ・イナーシャ移動体及び移動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月29日国際公開、WO2021/149114〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)1月20日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 2月 2日 :手続補正書の提出
令和5年 3月29日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年4月11日)
令和5年 6月12日 :意見書及び手続補正書の提出
令和5年 6月20日付け:拒絶査定(発送日:同年7月4日)
令和5年10月 3日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和5年10月31日付け:前置報告書
令和6年 6月 7日 :上申書の提出
第2 令和5年10月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年10月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用することを特徴とし、前記間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加えることを特徴とし、エネルギを節約し得る自動車、船、航空体等の移動体システム。
【請求項2】
請求項1に於いて、前記間歇的なエネルギは、複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギである事を特徴とする自動車、船、航空体等の移動体システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年6月12日に手続補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
慣性力を間歇的に使用することを特徴とし、前記間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加えることを特徴とし、エネルギを節約し得る自動車、船、航空体等の移動体システム。」
2 補正の適否
2-1 本件補正の目的
(1)請求項1に係る補正について
本件補正における請求項1に関する補正の内容について検討する。
本件補正後の請求項1において追加された「発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に」という事項については、本件補正前の請求項1に係る発明の「慣性力を間歇的に使用すること」について限定を付加するものであって、補正後の請求項1に係る発明は補正前の請求項1に係る発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。
(2)請求項2に係る補正について
本件補正における請求項2に関する補正の内容について検討する。
本件補正後の請求項2については、本件補正前の特許請求の範囲は請求項1のみであったのに対し、請求項を新たに追加して増加させるものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
2-2 新規事項の追加
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記1(1)のとおり補正された。
(2)しかしながら、本件補正により特許請求の範囲の請求項1に追加された「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用する」(下線部は、補正箇所である。)なる事項のうち、「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに」なる事項は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等)という。)には、本件補正と同時に提出された審判請求書において補正の根拠とされている段落[0005]、[0007]及び[0008]のほか当初明細書等全体のいずれにおいても、記載も示唆もされていない。
(3)そして、上記補正により追加された「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用する」なる事項は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2-3 独立特許要件
上記2-1(2)の本件補正における請求項2に関する補正が、仮に特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当し、かつ、本件補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとして、本件補正後の請求項1及び2に係る発明(以下 、「本件補正発明1」及び「本件補正発明2」という。)が同条6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)明確性要件
ア 本件補正発明1について
(ア)「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用する」なる事項は、以下の各点において明確でない。
a 「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに」について
「慣性力を」「発電機やバッテリに使用」するということは、「慣性力」という力を「発電機やバッテリ」のような電気的な機器にどのような態様で「使用」することを意味するのか不明であるため、「慣性力を」「発電機やバッテリに使用せず」の意味内容は不明である。
b 「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用する」について
「慣性力を」「間歇的に」「移動体全部の移動に使用する」ものと解されるところ、「慣性力」は、物理法則からみて、「移動体全部の移動」において、常に作用しているものであることから、これを「間歇的に」「使用する」ことの意味内容が不明である。
(イ)「前記間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加える」なる事項は、以下の各点において明確でない。
a 上記(ア)bと同様に、「慣性力」は、物理法則からみて、「移動体全部の移動」において、常に作用しているものであることから、「間歇的な慣性力」の意味内容が不明である。
b 「間歇的なエネルギを加える」とは、どのような形態の「エネルギ」を何に対してどのように「加える」ものを意味しているのかが不明である。
(ウ)「エネルギを節約し得る」なる事項は、以下の点において明確でない。
すなわち、「エネルギ」をどのような態様と比較して「節約し得る」ものを意味しているのかが不明であるため、かかる事項の意味内容は不明である。
(エ)以上より、上記(ア)ないし(ウ)の各事項を発明特定事項として含む本件補正発明1は明確でない。
イ 本件補正発明2について
(ア)「前記間歇的なエネルギ」及び「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」なる事項は、以下の点において明確でない。
すなわち、上記ア(イ)bと同様に、「間歇的なエネルギ」及び「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」とは、どのような形態の「エネルギ」を意味しているのかが不明である。
(イ)「自動車、船、航空機等の移動体システム」なる事項は、以下の点において明確でない。
すなわち、上記ア(エ)と同様に、「自動車、船、航空機等」とは、「自動車、船、航空機」以外にどのようなものを包含するのか、すなわち、その外延が不明であるため、そのような外延が不明な「自動車、船、航空機等」の「移動体システム」の外延も不明であるため、かかる事項の範囲が明確でない。
(ウ)以上より、上記(ア)及び(イ)の各事項を発明特定事項として含む本件補正発明2は明確でない。
ウ 小括
したがって、本件補正発明1及び2は、明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(2)新規性・進歩性
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
なお、上記(1)の各点については、字句通りに解することとする。
イ 引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1の記載事項及び引用発明1
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2018-145903号公報(平成30年9月20日公開。以下「引用文献1」という。)には、「IEI(インターミッテント・エナージー・イナーシャ)移動体及び移動体運転方法」に関し図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に慣性が働いている間はエネルギを絶ち、慣性が無くなった時にエネルギを加えることによりエネルギを節減することを特徴とする移動体。
【請求項2】
移動体に慣性が働いている間はエネルギを絶ち、慣性が無くなった時にエネルギを加えることによりエネルギを節減することを特徴とする移動体運転方法。」
(b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、車,船舶,建機,ロボット等の移動体の移動エネルギ節約に関する。
【背景技術】
【0002】
環境や資源問題から現在、車業界においては少ないエネルギでその走行距離を伸ばすために各社がしのぎを削っている。その技術としては、ガソリン1l当たりの走行距離を伸ばすために、燃料として軽油を用いたディーゼルエンジン技術を用いる方法や所謂ハイブリッド技術を用いる方法や燃料電池や電気自動車やバッテリをガソリンエンジンで充電するEパワー等が実施されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、人類の最大の課題、移動体をより少ないエネルギで移動する解決策を提供する画期的な発明である。前記した技術のうち、ハイブリッド技術は、高効率の電池を備え、下り坂を走行中や、ブレーキを踏んだ時等の回生エネルギを前記電池に蓄積し、平坦な道路ではエンジンを作動させないで、電池に蓄積されたエネルギで車を走らせるものである。近年では、電池のエネルギのみで50km程度走らせるものが開発されてきている。上り坂等では、電池のエネルギとエンジンを併用して用いる。しかしバッテリコストが高く消耗する。
一方、ディーゼルエンジンを用いる場合は、もともとエネルギ効率の高いディーゼルエンジンに更に改良を加えることにより、軽油1l当たりの走行距離数を伸ばしており、ディーゼルハイブリッドもある。しかしながら、前記の公知の方法ではその効率の限界が見えてきている。石油は日本では殆ど生産されず、またリチウムバッテリは高価である。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであって、更にエネルギ効率を向上させることができる自動車等移動体の移動エネルギ効率向上化方法を提供することが本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記した課題を解決する本発明は、移動中の自動車等の移動体が持つ「慣性力」を用いて、移動体が移動中に駆動エネルギを切り、慣性で移動体を移動させ、移動体の加速度又は速度がある値以下に低下してきたら再度駆動エネルギをオンにする動作を繰り返すことによりエネルギを節約して移動するようにした移動体の装置及び/又は運転法である。
【発明の効果】
【0005】
従来のハイブリッド車,燃料電池車,電気自動車等燃費のよい車を変更することなく、ローコストで更に燃費を良くすることができる。また、車以外の船舶、航空機、電車、建機等に活用でき、エネルギ燃費を更によくすることができる大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】移動体の運動方程式を示す図
【図2】本発明を車に適用した場合を示す図
【図3】移動中の移動体のエネルギE,加速度αの関係を示す図
【図4】本発明の移動体のエネルギE,加速度αの関係を示す図
【図5】本発明の原理構成図
【図6】本発明を船舶に適用した場合を示す図
【図7】本発明を航空機に適用した場合を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本発明の基本原理である慣性の法則について説明する。慣性の法則とはニュートンの三法則即ち、
1. 慣性の法則
2. 運動方程式
3. 作用・反作用の法則
のうちのニュートンの第1法則(Newton’s First Law)であり、「運動する物体に力が働かない時、その物体は慣性系に対し、運動状態を変えず、等速直線運動を続ける「運動の第一法則」、即ち「運動の現状をそのまま保持しようとする物体の性質」が慣性の法則である。
これに関連した「運動の第二法則」の運動方程式は、質量mの物体にかかる力Fは加速度をαとして、
F=mα
となり、また
[図:0001424071000001.jpg]
となる。
【0008】
しかしながら、「移動体に慣性を活用してエネルギを節約する発想」はいままでに全くなかった。本発明は上記の慣性を利用したもので、その式は図1の如くなる。ここで、Eは自動車等移動体を動かすエネルギ、Vは移動体の速度、αは移動体の加速度、a、bは係数である。
【0009】
図2は本発明を車に適用した場合を示す図である。Aは車1がエネルギを加え通常走行をしている状態を示している。Bはエネルギを遮断し慣性で移動している状態を示している。
【0010】
図3と4は本発明の原理を説明する図で、図3は公知移動体のエネルギEと加速度αの関係を示す図である。横軸は時間軸Tである。時刻t0においてエンジンをスタートさせると、エネルギEを加え、加速度αは時間の経過と共に、上昇していく。時刻t1で駆動エネルギEを少なくして一定にし、移動体速度Vは定速走行に移る。一方、加速度αは時刻t1までは上昇していき、t2で0になる。本発明は時刻t3で再びエネルギEを加えその加速度αは再び上昇に転ずる。
【0011】
図4は本発明を説明する図で、移動体に加えるエネルギEと速度Vと加速度αを縦軸としこれらの関係を説明する図である。横軸は時間Tで、縦軸は移動体に加えるエネルギEと移動体の加速度αである。
ところで、本発明のエネルギEは既に図1で説明した通り、次式で表される。
E=aV+bαである。ここで、Eは移動体に加えるエネルギ、aは所定の係数、Vは移動体の速度、bは所定の係数、αは移動体の加速度である。
【0012】
図4において、時刻t0において、移動体のエンジンをスタートさせエネルギを加えると、エネルギEと速度Vと加速度αは時間の経過と共に、上昇していく。本発明は時刻t1にエネルギEを0にする。即ち、移動体駆動力を切る。移動体駆動力を切っても、移動体は「慣性」のために図4のI期間移動し続けるのを利用したのが本発明であり、移動体の受ける空気抵抗や移動体の回転損耗等移動体自身の損失で速度Vは多少低下するが0にならない。
加速度αは図に示すようにt1から減少して時刻t2において加速度αが0になる。本発明は時刻t3で再びエネルギEを加え、加速度αが時刻t3で再び上昇に転じる。時刻t4で駆動力を少なくし、エネルギーEを0にする。図の時刻t1からt3の間はエネルギEの積分値(斜線)は0であり、この間、移動体は慣性のみで移動していることになる(エネルギを切って慣性のみで移動するモード)。t3でエンジンを作動させると、移動体は速度が上昇していき、加速度αは再び増加に転じる。
エネルギEが所定の値になると、移動体の速度は上昇し復帰する。移動体の動きが復帰したのを確認すると、時刻t4でエンジンやモータを切る。エンジンやモータを切ると、エネルギEは0になり、移動体は再び慣性のみで移動するモードになる。
速度や加速度は時刻t4から減少に転ずる。以下、同様の動作を繰り返し(E+E→0→E+E→0…)、移動体は移動していく。
【0013】
本発明によれば、E=0の状態でも移動体は移動するので、図3のエネルギ積分値(斜線部分)より図4のエネルギ積分値(斜線部分)が小さいのは明らかで、少ないエネルギで移動体を動作させることが本発明により可能となった。出願人は、実車を用いて東京から大阪まで実走を行ったが、エネルギセーブを行うことを確認した。このエネルギ効率は、ハイブリッド技術を用いて車を作動させる場合よりも高かったことを確認し、この発明をハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車等に例えばこれらのエネルギ効率を更に高めることができる。
ハイブリッド技術を用いて車を移動させた時の効率をK1とすると、本発明者は実験により本発明のように慣性を用いて車を移動させた時の効率は1.3K1となった。この効率の実験は、以下に示すような方法で行った。距離Lを移動させるのに要するガソリンの量をQとし、ガソリンを用いた通常の動作で、距離Lを走行するのに要するガソリンの量をQ1、本発明を用いて距離Lを走行するのに要するガソリンの量をQ2とすると、次式が成立する。
Q2=Q1/(1.3K1)
【0014】
本発明のエネルギEの制御は手動で行ってもよいが、図5は制御を自動的に行う本発明装置の原理構成図である。図において、10は移動中の車の加速度αを検出する加速度メータ(αM)、11は加速度の上下範囲の限定を可変できるコンピュータ構成のリミッタ(L)、12はリミッタ11によりバッテリ13のオンオフを行うスイッチ(SW)、14は該バッテリ13により駆動されるモータ(M)又はエンジンである。スイッチ12はバッテリ13の出力をモータ又はエンジン14に伝える動作を行うものである。つまり、スイッチがオンの時にはバッテリ13をモータ又はエンジン14に接続し、スイッチがオフの時にはバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離す。このように構成された車の動作を説明すると、以下の通りである。
【0015】
移動体を移動する時、リミッタ11はスイッチ12をオンにする。この結果、バッテリ13はモータ又はエンジン14に接続され、モータ又はエンジン14は所定の回転数で回転する。このモータ又はエンジン14で車の動輪を回転させる。動輪が回転すると車1(図2参照)は所定の速度、例えば60km/時速に加速度を上げ走行する。リミッタ11は加速度メータ10の出力を監視している。図4でt1でエネルギEを0にすると、加速度αが0になったことをリミッタ11が感知するようにしておき、リミッタ11はスイッチ12に作用してその接点をオンにする。この結果、自動的にモータ又はエンジン14が動き出し、モータ又はエンジン14には動力が与えられていないので、車の速度は漸次減少し、車は慣性で走行する。しかしやがて速度Vと加速度αが徐々に下がり加速度αはt2で0になる。
【0016】
ここで、加速度αが所定の値(例えば0)になったことをリミッタ11が検知すると、該リミッタ11はスイッチ12をオンにする。この結果、モータ又はエンジン14は車1の動輪を駆動し、走行を続ける。加速度以外に速度計をリミッタ11に結合して、速度が所定の値になると、リミッタが働きエネルギを発動するようにした場合も本発明に含まれる。
また、前記リミッタ11は下限で作動する説明をしたが、上限で作動する場合も本発明に含まれ、エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間、ガソリン等エネルギを使用せず車1は慣性力のみで走行することになる。以下、同様の動作を繰り返しながら走行する。本発明によれば、エネルギーが0で慣性力のみで車1は移動することになる。本発明によれば、車1の慣性を活用して動力エネルギを使う必要はないので、エネルギ効率が向上する。
上述の説明において、本発明は通常のガソリン自動車のみならず、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車等にも同様に適用することができる。また、上述の説明では、車(自動車)に本発明を適用した場合を例にとったが、ここで本発明が適用される移動体としては、例えば図2で前述した自動車のほか、船舶や航空機のほか、建機、ロボット等あらゆる移動体に適用できる。
図6は本発明を船舶に適用した場合を示す図である。Aは船舶2が通常走行をしている状態を示している。BはAに示す通常走行中にエンジンを切ってから慣性で移動している状態を示す。その他は図2と同じである。
図7は本発明を航空機に適用した場合を示す図である。Aは航空機3が通常飛行をしている状態を示している。BはAに示す通常走行中にエンジンを切ってから慣性で移動している状態を示す。矢印で示すように、航空機の場合は、エンジンを切ると車や船舶のように地面や水がないので、図7に示すように高度が下がるが、滑空し再び上昇して飛行を続ける。
本発明は自動車のみならず、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置として、また運転方法として使用でき、これらは全て本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、上記の如くあらゆる移動体に利用することができ、産業上の利用可能性大である。
【符号の説明】
【0018】
1 車
2 船舶
3 航空機
10 加速度メータ
11 リミッタ
12 スイッチ
13 バッテリ
14 モータやエンジン等の動力装置」
(c)「
[図:0001424071000002.jpg]
」(【図1】)
(d)「
[図:0001424071000003.jpg]
」(【図2】)
(e)「
[図:0001424071000004.jpg]
」(【図3】)
(f)「
[図:0001424071000005.jpg]
」(【図4】)
(g)「
[図:0001424071000006.jpg]
」(【図5】)
(h)「
[図:0001424071000007.jpg]
」(【図6】)
(i)「
[図:0001424071000008.jpg]
」(【図7】)
(j)上記(a)ないし(i)からみて、慣性を、スイッチ12がオフの時にバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し移動体の移動に活用することが記載されていると認められる。
(k)上記(a)ないし(i)からみて、エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間慣性力のみで走行する為にエネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すことが記載されていると認められる。
(l)上記(a)ないし(i)からみて、エネルギ効率が向上する自動車、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置が記載されていると認められる。
(m)上記(a)ないし(i)からみて、エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すことにおける加えた状態のエネルギEは、エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギEであることが記載されていると認められる。
b 引用発明1
上記aの記載及び図面の図示内容から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 慣性を、スイッチ12がオフの時にバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し移動体の移動に活用し、エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間慣性力のみで走行する為にエネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返し、エネルギ効率が向上する自動車、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置であって、エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すことにおける加えた状態のエネルギEは、エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギEである自動車、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置。」
(イ)引用文献2の記載事項及び引用発明2
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007-187090号公報(平成19年7月26日公開。以下「引用文献2」という。)には、「速度維持制御装置」に関し図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標速度を設定する目標速度設定手段を有し、
エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車を前記目標速度設定手段によって設定された目標速度に維持させる速度維持制御を実行する速度維持制御装置において、
前記目標速度の上下に上限速度及び下限速度を設定する上下限速度設定手段と、
上限速度までエンジンを駆動源として加速させ、上限速度に到達後、エンジンを停止して走行させ、下限速度に到達後、エンジンを始動して上限速度までエンジンを駆動源として加速させることを繰り返す速度制御手段とを備えることを特徴とする速度維持制御装置。」
(b)「【請求項4】
前記速度制御手段は、エンジンを停止して走行させる場合、モータを回生も力行も行っていない惰性走行をさせる、請求項1から3のいずれかに記載の速度維持制御装置。」
(c)「【技術分野】
【0001】
本発明は、設定された速度を維持するように車両を走行させる速度維持制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハイブリッド車の定速走行実施時に、エンジン出力を一定に保持して燃費を向上させ、目標速度を維持するように制御する車両用定速走行制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用定速走行制御システムは、一定に保持されたエンジン出力を、車輪の直接駆動とモータに電力を供給するジェネレータの駆動との2系統に振り分け、モータの出力を増減させることによって、エンジン出力を一定に保持したまま目標車速を維持しようとするものである。
【特許文献1】特開2000-8902号公報」
(d)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車は、燃焼効率の良い最低のエンジン出力Peminを演算している。このとき、走行抵抗をPvとするならば、最低エンジン出力Peminのうち、(Pemin-Pv)がモータを駆動するための発電に振り分けられる。そして、Peminによるエンジン走行と(Pemin-Pv)によるモータ走行を交互に繰り返すことによって、エンジンの燃焼効率を常に高い状態で維持することができる。
【0004】
しかしながら、走行抵抗Pvが小さくなる車速域で走行する場合には、走行抵抗Pvは低下する一方で発電に振り分けられる(Pemin-Pv)は相対的に上昇することになるので、発電による損失が増大してしまい、燃費が低下するおそれがある。したがって、走行抵抗Pvが小さくなる車速域での定速走行では、上述の従来技術のように、エンジン出力を一定に保持して走行したとしても、燃費が最適とならないことが考えられた。
【0005】
そこで、本発明は、走行抵抗が小さくなる車速域で走行する場合に、目標速度を維持しつつ燃費を向上させることができる速度維持制御装置の提供を目的とする。」
(e)「【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行抵抗が小さくなる車速域で走行する場合に、目標速度を維持しつつ燃費を向上させることができる。」
(f)「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図7は、本発明の速度維持制御装置を適用したシステムのブロック図の一例である。
【0014】
内燃機関であるエンジン20の運転は、ECU(Electronic Control Unit)10により制御されている。ECU10は、シフトポジションセンサやアクセルポジションセンサ等からのセンサ信号に基づいてトータルトルクを算出する。ECU10は、算出されたトータルトルクに対し、所望の駆動力配分比に従い、エンジン要求回転数やエンジン要求トルクといったエンジン出力要求値などを算出して、必要に応じて、エンジン20や動力分割機構22やインバータ26などの制御を実行する。
【0015】
動力分割機構22は、エンジン20の出力をディファレンシャル32に伝達して車輪を回転させることができ、また、エンジン20の出力をジェネレータ24に伝達して発電させることができる。動力分割機構22は、エンジン20の出力を、ディファレンシャル32とジェネレータ24に所望の駆動力配分比で振り分ける。つまり、動力分割機構22は、その配分比に応じて、エンジン20のみを駆動源とする「エンジン走行」をさせたり、ジェネレータ24を介して後述するモータ30のみを駆動源とする「モータ走行」をさせたり、エンジン20とモータ30を駆動源とする「エンジン+モータ走行」をさせたりすることができる。
【0016】
ジェネレータ24は、エンジン20の出力やディファレンシャル32の運動エネルギーを使用して発電する。この発電によって、ジェネレータ24は、インバータ26を介してバッテリ28を充電したり、モータ30の駆動用の電力供給を行ったりする。
【0017】
モータ30は、インバータ26内の三相ブリッジ回路等により駆動され、エンジン20とは異なる駆動源として車輪を回転させる。また、回生ブレーキ作動時には、モータ30は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、インバータ26を介してバッテリ28を充電する。
【0018】
車速センサ5は、自車の車速を表す信号をECU10に出力する。したがって、ECU10は、車速センサ5が出力する信号に基づいて自車の車速を認識することができる。
【0019】
また、ECU10には、クルーズメインスイッチ1、セット(SET)/コースト(COAST)スイッチ2、リジューム(RES)/アクセル(ACC)スイッチ3、キャンセル(CANCEL)スイッチ4、車速センサ5、燃費優先制御スイッチ6からの情報が入力される。クルーズメインスイッチ1、セット/コーストスイッチ2、リジューム/アクセルスイッチ3、キャンセルスイッチ4、燃費優先制御スイッチ6は、ステアリングホイール周辺などのドライバーが操作しやすい場所に設置されている。
【0020】
クルーズメインスイッチ1は、設定された速度を維持するように車速を制御する速度維持制御の実行可否(ON:実行可、OFF:実行不可)を選択的に切り替える操作スイッチである。すなわち、クルーズメインスイッチ1を操作することで、速度維持制御を稼働させるか否かを選択できる。
【0021】
ECU10は、所定の車速域で走行中にクルーズメインスイッチ1がON状態で、ドライバーの操作によってセット/コーストスイッチ2のONが検知された場合、その操作時点での実車速を「クルーズ目標速度」としてメモリ11に記憶し、クルーズ目標速度を維持するように車速を制御する。」
(g)「【0025】
また、ECU10は、速度維持制御走行中に、燃費優先制御スイッチ6のONが検知された場合には、メモリ11内のクルーズ目標速度の上下に設定された上限速度と下限速度の間で、クルーズ目標速度を中心に、エンジン20を駆動源とする走行とエンジン20を停止した走行とを交互に繰り返す燃費優先制御の実行を開始する。燃費優先制御スイッチ6は、燃費優先制御の実行可否(ON:実行可、OFF:実行不可)を選択的に切り替える操作スイッチである。
【0026】
図6は、燃費優先制御における実車速とエンジン出力との関係を説明するための図である。図6において、斜線部がエンジン20の出力を表し、この区間でエンジン20を駆動源とする走行をしている。ECU10は、図6に示されるように、上限速度までエンジン20を駆動源として加速させ、上限速度に到達後、エンジン20を停止して走行させ、下限速度に到達後、エンジン20を始動して上限速度までエンジン20を駆動源として加速させることを繰り返す。
【0027】
図3は、上限速度と下限速度を設定するためのマップの一例である。ECU10は、メモリ11内のクルーズ目標速度と図3のようなマップに基づいて、上限速度と下限速度を設定する。メモリ11内のクルーズ目標速度が直線C上のc点に相当する速度の場合、上限速度は直線Cより高速側にある直線A上のa点に相当する速度に設定され、下限速度は直線Cより低速側にある直線E上のe点に相当する速度に設定される。直線Aや直線Eは、燃費優先制御を実行したときに燃費が最適となる上下限速度である。燃費は車種毎に異なるので、シミュレーション等で予め導き出した値が設定されている。
【0028】
ECU10は、速度維持制御走行中に、燃費優先制御スイッチ6のONが検知された場合には、直線Aを上限速度のデフォルトとして設定し、直線Eを下限速度のデフォルトとして設定するが、ドライバーの速度維持制御や燃費優先制御のキャンセル操作の回数を学習して、その頻度に応じて上下限速度を補正してもよい。ドライバーの速度維持制御や燃費優先制御のキャンセル操作とは、キャンセルスイッチ4のON、クルーズメインスイッチ1のOFF、アクセルペダルの踏み込み等が該当する。例えば、キャンセル操作が所定期間内に所定回数以上あった場合には、図3に示されるように、直線Aを直線Cに近づけ、直線Eを直線Cに近づける。このような補正が行われた場合には、メモリ11内のクルーズ目標速度が直線C上のc点に相当する速度の場合、上限速度は直線B上のb点に相当する速度に設定され、下限速度は直線D上のd点に相当する速度に設定される。これにより、上限速度と下限速度の速度差が小さくなり、クルーズ目標速度を中心に、エンジン20を駆動源とする走行とエンジン20を停止した走行とを交互に繰り返すことによって生じるドライバーの違和感を緩和させることができる。なお、直線Aと直線Eの関係は燃費が最適となる上限速度と下限速度との関係を示している。また、上下限速度の補正は、上限速度と下限速度を同時にクルーズ目標速度に近づけてもよいし、上限速度と下限速度を独立してクルーズ目標速度に近づけてもよい。
【0029】
また、図3に示されるように、メモリ11内のクルーズ目標速度がクルーズ設定最低速度から燃費優先制御上限速度までの車速域にある場合に、上下限速度を設定した燃費優先制御が実行可能である。クルーズ設定最低速度とは、速度維持制御において設定可能なクルーズ目標速度の最低値である。燃費優先制御上限速度とは、これ以上のクルーズ目標速度に対して上下限速度を設定した燃費優先制御を実行すると、上述の従来技術のようなエンジン出力を一定にして燃費を向上させる制御を実行した場合に比べ、燃費が低下する限界速度である。例えば、燃費優先制御上限速度は、シミュレーション等で導出した走行抵抗の小さい車速域の上限速度に設定すればよい。一方、シミュレーション等で導出した走行抵抗の小さい車速域の下限速度がクルーズ設定最低速度を下回っていても、速度維持制御で決められているクルーズ最低設定速度を優先するならば、燃費優先制御下限速度は、クルーズ最低設定速度と同じ速度に設定することになる。」
(h)「【0031】
それでは、図を参照しながら、本実施例に係る速度維持制御と燃費優先制御の動作フローについて説明する。
【0032】
図1は、速度維持制御走行中に燃費優先制御に移行する際の制御フローの一例である。ECU10は、クルーズメインスイッチ1がON状態で上述の速度維持制御走行中に、燃費優先制御スイッチ6の検知状態に基づいて燃費優先制御の実施要求があるか否かを判断する(ステップ2)。燃費優先制御の実施要求がなければ(燃費優先制御スイッチ6のON検知割込みがなければ)、クルーズ目標速度に追従するようにフィードバック制御を行って、そのまま速度維持制御走行を継続する(ステップ4)。一方、燃費優先制御の実施要求があれば(燃費優先制御スイッチ6のON検知割込みがあれば)、後述する燃費優先制御の禁止条件に該当していないか確認する(ステップ6)。燃費優先制御の禁止条件に該当している場合には、燃費優先制御は行われず、クルーズ目標速度に追従するようにフィードバック制御を行って、そのまま速度維持制御走行を継続する(ステップ4)。燃費優先制御の禁止条件に該当していない場合には、燃費優先制御の実行を開始する(ステップ10)。」
(i)「【0035】
続いて、図1のステップ10における燃費優先制御の詳細な動作について説明する。図2は、図1のステップ10における燃費優先制御のフローの一例である。ECU10は、メモリ11からクルーズ目標速度を取得して(ステップ12)、図3のようなマップに基づいて上下限速度の設定を行う(ステップ14)。次に、GPS等により特定された自車の存在地点の勾配情報をナビゲーションシステムの地図DBから取得して(ステップ16)、目標要求加速時出力と目標要求減速時出力を演算する(ステップ18,20)。」
(j)「【0037】
次に、前回の本フロー演算時に車両が加速状態であったか否かを判断する(ステップ22)。前回の演算時に車両が加速状態であると今回の演算時に実速度が上限速度を超えている可能性があるので、前回の演算時に車両が加速状態の場合には(ステップ22;Yes)、実速度がステップ14で設定した上限速度を超えているか否かを判断する(ステップ24)。実速度が上限速度を超えている場合には(ステップ24;Yes)、次回は減速する制御を行うと判定する(ステップ30)。一方、実速度が上限速度を超えていない場合には(ステップ24;No)、引き続き加速をする必要があるので、エンジン20のみを駆動源とするエンジン走行を行うと判定し(ステップ26)、ステップ18で演算した目標要求加速時出力でエンジン走行による加速を行う(ステップ28)。なお、ステップ28における加速時には、エンジン20の負荷である補機の作動を一時的に停止させて、エンジン20の効率を上げてもよい。一時的に停止可能な補機は、停止させても車両の走行に影響がないものが望ましく、例えば、エアコン、リヤデフォッガ、リヤワイパー、ミラーヒータ、シートヒータ、オーディオ、ルームランプ、シガーソケットが挙げられる。
【0038】
一方、ステップ22において、前回の演算時に車両が加速状態でないと今回の演算時に実速度が下限速度を下回っている可能性があるので、前回演算時に車両が加速状態でない場合には(ステップ22;No)、実速度がステップ14で設定した下限速度を下回っているか否かを判断する(ステップ32)。実速度が下限速度を下回っている場合には(ステップ32;Yes)、次回は加速する制御を行うと判定する(ステップ38)。一方、実速度が下限速度を下回っていない場合には(ステップ32;No)、引き続き減速をする必要があるので、エンジン20を停止した状態での走行を行うと判定し(ステップ34)、ステップ20で演算した目標要求減速時出力でモータ30のみを駆動源とするモータ走行による減速を行う(ステップ36)。なお、ステップ36における減速は、モータ30が回生も力行も行っていない状態であるフリーラン(惰性走行)で行ってもよい。モータ走行する場合は、エンジン20の停止によりジェネレータ24は停止しているので、モータ30への電力供給はバッテリ28から行われる。
【0039】
図8は、エンジン出力を一定に保持して定速走行した場合とエンジン停止とフリーランを交互に繰り返して定速走行した上述の実施例の場合において、車速とエンジン回転数についてシミュレーションした結果を示した図である。図8(a)は、走行抵抗が小さくなる低車速域(約38km/h)においてエンジン出力一定で定速走行した場合を示し、図8(b)は、走行抵抗が小さくなる低車速域(約38km/h)においてエンジン停止とフリーランを繰り返して定速走行した場合を示し、図8(c)は、走行抵抗が相対的に大きくなる中車速域(約60km/h)においてエンジン出力一定で定速走行した場合を示し、図8(d)は、走行抵抗が相対的に大きくなる中車速域(約60km/h)においてエンジン停止とフリーランを繰り返して定速走行した場合を示す。図8(c)と図8(d)を比較すると、走行抵抗が大きい中車速域では、エンジン出力一定で定速走行した場合はエンジン停止とフリーランを繰り返して定速走行した上述の実施例の場合に比べ燃費が若干上回っている。しかしながら、図8(a)と図8(b)を比較すると、走行抵抗が小さい低車速域では、エンジン停止とフリーランを繰り返して定速走行した上述の実施例の場合はエンジン出力一定で定速走行した場合に比べて燃費が上回っている。そして、図8(a)と図8(b)を比較した場合の燃費差は図8(c)と図8(d)を比較した場合の燃費差に比べ大きい。すなわち、走行抵抗が小さくなる低車速域において、エンジン停止とフリーランを繰り返して定速走行する上述の実施例は、エンジン出力一定で定速走行する場合に比べて燃費改善効果が高いといえる。
【0040】
したがって、上述の実施形態の速度維持制御装置によれば、設定されたクルーズ目標速度を中心に、エンジンを駆動源とする走行とエンジンを停止した走行とを交互に繰り返すことで、クルーズ目標速度を維持しながら燃費を向上させることができる。例えば走行抵抗の小さい車速域で走行する場合など、一定のエンジン出力に保持したまま定速走行を行っても燃費の向上を図ることができない場合には、特に効果的である。
【0041】
また、上述の実施形態の速度維持制御装置のように、燃費優先制御における図3に示した上下限速度のデフォルト値を燃費が最適となる上下限速度にすることで、上下限速度の設定が行われると、目標速度を維持した燃費が最適となる走行制御に速やかに移行できるようにすることができる。
【0042】
また、設定された上限速度と下限速度との間を往復しながら速度を維持させようとしているため、速度維持制御において設定されているクルーズ目標速度に実速度が維持されていないとユーザが感じてしまうことが考えられる。しかしながら、上述の実施形態の速度維持制御装置のように、エンジン停止とフリーラン(または、モータ走行)との繰り返し動作についてのユーザからのキャンセル操作の頻度に応じて、上限速度と下限速度の設定を補正することで、そのようなユーザの違和感を解消することができる。
【0043】
また、上述の実施形態の速度維持制御装置のように、エンジン20を停止して走行させる場合、モータ30を回生も力行も行っていない惰性走行させることで、高い燃費改善効果を期待できる。」
(k)「
[図:0001424071000009.jpg]
」(【図1】)
(l)「
[図:0001424071000010.jpg]
」(【図2】)
(m)「
[図:0001424071000011.jpg]
」(【図3】)
(n)「
[図:0001424071000012.jpg]
」(【図6】)
(о)「
[図:0001424071000013.jpg]
」(【図7】)
(p)「
[図:0001424071000014.jpg]
」(【図8】(b))
(q)上記(a)、(b)、(f)ないし(p)からみて、燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させることが記載されていると認められる。
(r)上記(a)ないし(p)からみて、燃費を向上させる車両の速度維持制御装置が記載されていると認められる。
(s)上記(a)、(b)、(f)、(g)、(j)ないし(l)、(o)からみて、燃費優先制御におけるエンジン走行による加速は、エンジン20を駆動源とすることが記載されていると認められる。
b 引用発明2
上記aの記載及び図面の図示内容から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「 燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ、燃費を向上させる車両の速度維持制御装置であって、燃費優先制御におけるエンジン走行による加速は、エンジン20を駆動源とする車両の速度維持制御装置。」
ウ 対比・判断
(ア)本件補正発明1について
a 対比・判断1(本件補正発明1と引用発明1の対比・判断)
本件補正発明1と引用発明1とを対比する。
(a)引用発明1における「慣性」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明1における「慣性力」に相当し、以下同様に、「スイッチ12がオフの時に」は「間歇的に」に、「バッテリ13」は「バッテリ」に、それぞれ相当する。そして、引用発明1における「バッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し」ている状態は、慣性力で走行する移動体の移動によりモータが発電機として機能してバッテリ13に蓄電することが生じないといえることから、本件補正発明1における「慣性力」を、「発電機やバッテリに使用せずに」としている状態に相当する。また、引用発明1における「移動体の移動」は本件補正発明1における「移動体全部の移動」に相当し、同様に、「活用」は「使用」に相当する。
そうすると、引用発明1における「慣性を、スイッチ12がオフの時にバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し移動体の移動に活用」することは本件補正発明1における「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」することに相当する。
(b)引用発明1における「エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明1における「間歇的な」に相当し、同様に、「慣性力」は「慣性力」に相当することから、引用発明1における「エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間慣性力のみで走行する」ことは本件補正発明1における「間歇的な慣性力を得る」ことに相当する。また、引用発明1における「エネルギE」は本件補正発明1における「エネルギ」に相当することから、引用発明1における「エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返」すことは本件補正発明1における「間歇的なエネルギを加え」ることに相当する。
そうすると、引用発明1における「エネルギEがオフにされた状態から、再度エネルギEが追加されるまでの間慣性力のみで走行する為にエネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返」すことは本件補正発明1における「間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加え」ることに相当する。
(c)引用発明1における「エネルギ効率が向上する」ことは本件補正発明1における「エネルギを節約し得る」ことに相当する。また、引用発明1における「自動車」は本件補正発明1における「自動車」に相当し、以下同様に、「船舶」は「船」に、「航空機」は「航空体」に、それぞれ相当し、さらに、引用発明1における「建機、ロボットその他あらゆる移動体」も移動体であることから、引用発明1における「自動車、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置」は本件補正発明1における「自動車、船、航空体等の移動体システム」に相当する。
そうすると、引用発明1における「エネルギ効率が向上する自動車、船舶、航空機、建機、ロボットその他あらゆる移動体の装置」は本件補正発明1における「エネルギを節約し得る自動車、船、航空体等の移動体システム」に相当する。
(d)以上のことから、本件補正発明1と引用発明1は全ての点で一致している。
したがって、本件補正発明1は引用発明1である。
b 対比・判断2(本件補正発明1と引用発明2の対比・判断)
本件補正発明1と引用発明2とを対比する。
(a)引用発明2における「ジェネレータ24」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明1における「発電機」に相当し、同様に、「バッテリ28」は「バッテリ」に相当し、さらに、引用発明2における「車両を走行」させることは本件補正発明1における「移動体全部の移動」と「移動体の移動」という限りにおいて一致する。
そして、引用発明2における「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」ることは、フリーラン(惰性走行)による減速においてエンジン20の停止によりエンジン10の出力を使用してジェネレータ24が発電してバッテリ28を充電することがなく、モータ30が運動エネルギーを電気エネルギーに変換してインバータ26を介してバッテリ28を充電することがなく車両を走行させることであり、モータ30が発電機として機能して運動エネルギーを電気エネルギーに変換してインバータ26を介してバッテリ28を充電することがなく車両を走行させるものであることから、本件補正発明1における「慣性力」を、「発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」することと、「慣性力」を、「発電機やバッテリに一部使用せずに移動体の移動に使用」することの限りにおいて一致する。
さらに、引用発明2における「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」ることは、フリーラン(惰性走行)による減速においてエンジン20の停止によりエンジン10の出力を使用してジェネレータ24が発電してバッテリ28を充電することがなく、モータ30が運動エネルギーを電気エネルギーに変換してインバータ26を介してバッテリ28を充電することがなく車両を走行させることであり、「エンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速」と「交互に繰り返」す「エンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速」を間歇的に行って「車両を走行させ」るものであると認められることから、本件補正発明1における「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」することと、「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに一部使用せずに移動体の移動に使用」することの限りにおいて一致する。
(b)引用発明2における「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」ることは、該「交互に繰り返」すことにより間歇的に行われる「エンジン走行による加速」により「エンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速」が間歇的に行われるものであると認められることから、本件補正発明1における「間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加え」ることに相当する。
(c)引用発明2における「燃費を向上させる」ことは本件補正発明1における「エネルギを節約し得る」ことに相当する。また、引用発明2における「車両」は本件補正発明1における「自動車」に相当することから、引用発明2における「車両の速度維持制御装置」は本件補正発明1における「自動車」「の移動体システム」に相当する。
そうすると、引用発明2における「燃費を向上させる車両の速度維持制御装置」は本件補正発明1における「エネルギを節約し得る自動車」「の移動体システム」に相当する。
(d)以上のことから、本件補正発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに一部使用せずに移動体の移動に使用し、間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加え、エネルギを節約し得る自動車の移動体システム。」
【相違点1】
「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに一部使用せずに移動体の移動に使用」することに関して、本件補正発明1は、「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」するものであるのに対し、引用発明2は、「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」(慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに一部使用せずに)車両(移動体)を走行させる(の移動に使用する)ものである点。
【相違点2】
「移動体システム」に関して、本件補正発明1は、「自動車、船、航空体等」の移動体システムであるのに対し、引用発明2は、「車両」の速度維持制御装置(移動体システム)であるものの、本件補正発明1のような「船、航空体等」の移動体システムについては例示されていない点。
相違点1について検討する。
引用発明2は、燃費優先制御におけるエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速では、「エンジン20を停止して走行させる場合、モータ30を回生も力行も行っていない惰性走行させることで、高い燃費改善効果を期待できる。」(段落【0043】)ものであることから、モータ30と同様に車輪を回転させる他の駆動源であるエンジン20の出力を車輪に伝達する「ディファレンシャル32の運動エネルギーを使用して発電する」(段落【0016】)「ジェネレータ24」(段落【0016】)が「インバータ26を介してバッテリ28を充電」(段落【0016】)することについても、モータ30が回生を行わないのと同様に、行わずに(慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに)、より一層の「フリーラン(惰性走行)」を行って、さらに高い燃費改善効果を図る、すなわち、慣性力をもって、車両(移動体)全部を走行させる(の移動に使用する)ようにすることにより、相違点1に係る本件補正発明1の発明特定事項に想到することは、当業者であれば容易になし得るものである。
そして、本件補正発明1の効果は、引用文献2の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件補正発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
相違点2について検討する。
本件補正発明1において「移動体システム」について例示する「自動車、船、航空体等」のうち、「船、航空体等」については、引用発明2の「車両」と同様に、慣性力が作用しエネルギを加えて移動する移動体であって例を挙げるまでもなく周知の移動体(以下、「周知技術」という。)であり、引用発明2の速度維持制御装置(移動体システム)を、同様に慣性力が作用しエネルギを加えて移動する周知技術の移動体において採用することに格別の困難性は認められず、該「船、航空体等」の「移動体システム」に係る本件補正発明1の発明特定事項は引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本件補正発明1の効果は、引用文献2の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件補正発明1は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)本件補正発明2について
a 本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置」の理解
本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置」は、本件補正により特許請求の範囲において追加された事項であり、本件補正と同日に提出された審判請求書において補正の根拠とされる本願明細書の段落【0012】には「複数の駆動力装置とはn=2以上である。」と記載されていることから、以下の2通りの理解ができる。
(a)実質的に「複数個(n≧2)の駆動力装置」を意味するもの。(b)同段落【0012】に記載されたもののうち、本件補正発明2に記載された字句通り「複数個(n>2)の駆動力装置」を意味するもの。
これを踏まえて、以下、本件補正発明2と引用発明1及び引用発明2とを対比する。
b 対比・判断1(本件補正発明2と引用発明1の対比・判断)
本件補正発明2と引用発明1とを対比する。
(a)上記a(a)の場合
引用発明1における「エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すこと」における「加えた状態」の「エネルギE」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明2における「間歇的なエネルギ」に相当する。また、引用発明1における「エンジンやモータ」は本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置」に相当することから、引用発明1における「エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギE」は本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」に相当する。
以上のことから、本件補正発明2と引用発明1は全ての点で一致している。
したがって、本件補正発明2は引用発明1である。
(b)上記a(b)の場合
引用発明1における「エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すこと」における「加えた状態」の「エネルギE」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明2における「間歇的なエネルギ」に相当する。また、引用発明1における「エンジンやモータ」は本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置」と「複数個の駆動力装置」の限りにおいて一致することから、引用発明1における「エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギE」は本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」と「複数個の駆動力装置によるエネルギ」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件補正発明2と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用し、間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加え、エネルギを節約し得る自動車、船、航空体等の移動体システムであって、間歇的なエネルギは、複数個の駆動力装置によるエネルギである自動車、船、航空体等の移動体システム。」
【相違点3】
「間歇的なエネルギ」である「複数個の駆動力装置によるエネルギ」に関して、本件補正発明2は、「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」であるのに対し、引用発明1は、「エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギE」である点。
相違点3について検討する。
引用発明1において、エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すことにおける加えた状態のエネルギE(間歇的なエネルギ)である「エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギE」(複数個の駆動力装置によるエネルギ)は、「モータ又はエンジン14には動力が与えられていないので、車の速度は漸次減少し、車は惰性で走行する。しかしやがて速度Vと加速度αが徐々に下がり加速度αはt2で0になる。」(段落【0015】)ことを踏まえて、「加速度αが所定の値(例えば0)になったことをリミッタ11が検知すると、該リミッタ11はスイッチ12をオンにする。この結果、モータ又はエンジン14は車1の動輪を駆動し、走行を続ける。」(段落【0016】)ためのエネルギであることから、車1の動輪を駆動する駆動力装置の個数については何ら限定が付されるものではなく、むしろ、走行を続けるために車1の動輪を駆動するという趣旨に沿うべく、その個数をより多くすること、周知のインホイールモータのように各車輪にモータを設けること、すなわち、相違点3に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
また、慣性力の大きさは物体の質量の大きさに呼応するものであることは物理法則から明らかであり、引用発明1において、自動車が慣性力のみで惰性で走行する際に、その走行をもたらす慣性力を所望の程度の大きさとするべく、自動車の質量に関わる駆動装置の重量ないし数を設計時において適宜定め、自動車の走行を続ける中で惰性で走行することも考慮に入れて、その選択肢の1つとして、相違点3に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることも、当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして、本件補正発明2の効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件補正発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
c 対比・判断2(本件補正発明2と引用発明2の対比・判断)
本件補正発明2と引用発明2とを対比する。
(a)上記a(a)及び(b)の場合
引用発明2における「燃費優先制御におけるエンジン走行による加速」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明2における「間歇的なエネルギ」に相当する。また、引用発明1における「エンジン20を駆動源とする」ことは本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」と「駆動力装置によるエネルギ」」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件補正発明2と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「 慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに一部使用せずに移動体の移動に使用し、間歇的な慣性力を得る為に間歇的なエネルギを加え、エネルギを節約し得る自動車の移動体システムであって、間歇的なエネルギは、駆動力装置によるエネルギである自動車の移動体システム。」
【相違点4】
「間歇的なエネルギ」である「駆動力装置によるエネルギ」に関して、本件補正発明2は、「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」であるのに対し、引用発明2は、「エンジン20を駆動源とする」ものである点。
相違点4について検討する。
引用発明2において、燃費優先制御におけるエンジン走行による加速(間歇的なエネルギ)である「エンジン20を駆動源とする」こと(駆動力装置によるエネルギ)は、「エンジンを20を停止して走行させ、下限速度に到達後、エンジン20を始動して上限速度までエンジン20を駆動源として加速させることを繰り返す。」(段落【0026】)際に車両を加速させるためのエネルギであることから、車両を加速させる駆動源の個数については何ら限定が付されるものではなく、また、「エンジン20とモータ30を駆動源とする「エンジン+モータ走行」をさせたりすることができる。」(段落【0015】)ものでもあることから、むしろ、車両を加速させるという趣旨に沿うべく、その個数をより多くすること、周知のインホイールモータのように各車輪にモータを設けること、すなわち、相違点4に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
また、慣性力の大きさは物体の質量の大きさに呼応するものであることは物理法則から明らかであり、引用発明2において、車両がエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(慣性走行)による減速で走行する際に、その走行をもたらす慣性力を所望の程度の大きさとするべく、車両の質量に関わる駆動装置の重量ないし数を設計時において適宜定め、車両の走行を続ける中でエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(慣性走行)による減速で走行することも考慮に入れて、その選択肢の1つとして、相違点4に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることも、当業者であれば容易に想到し得るものである。
そして、本件補正発明2の効果は、引用文献2の記載事項から、又は、引用文献2の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本件補正発明2は、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 審判請求人の主張の検討
(ア)審判請求人の審判請求書における主張の検討
a 審判請求人の審判請求書における主張の内容
審判請求人は、審判請求書において、原査定において、引用文献1として拒絶の理由に引用された上記特開2018-145903号公報に記載された発明からみた本件補正発明1及び2の新規性及び進歩性(下記(a))並びに同引用文献2として拒絶の理由に引用された上記特開2007-187090号公報に記載された発明からみた本件補正発明1及び2の新規性及び進歩性(下記(b))について、以下のように主張する。
(a)引用文献1に記載された発明からみた本件補正発明1及び2の新規性及び進歩性について
「3-1)引用文献1の記載事項と本願発明との対比
引用文献1には、間歇的な慣性力をエネルギをオンオフして活用する手段が記載されている。
しかしながら、本願発明の、慣性力を間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用すること、及び、間歇的なエネルギは複数の駆動力装置に分散させたエネルギであることは開示も示唆もない。」(審判請求書第3ページの「3.本願発明が特許されるべき理由」欄)
(b)引用文献2に記載された発明からみた本件補正発明1及び2の新規性及び進歩性について
「 3-2)引用文献2の記載事項と本願発明との対比
引用文献2は、燃費向上を目的とし、エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車で、エンジンを停止したフリーラン(惰性走行)と走行を効率よくするための所定上下限速度で制御する技術である。
しかし、引用文献2は、モーターの発電や駆動は、[0016]に開示されるように、わざわざエンジンを停止した時の慣性力のエネルギを再度電気にするという慣性力の使用ロスをあえて行う技術なのであります。
さらに、慣性力を回生ブレーキで発電し、バッテリに蓄えモータを駆動する設備を設けた[0017]移動体であって、慣性力を効率的に活用していないのであります。
具体的には、
(ア)引用文献2は、慣性力により発電機を回し、発電機が電気を発生してバッテリーに蓄えられ([0016])、この電気で車が走行するので慣性力が切れても未だ走行する。
これに対し本願発明は慣性力で発電機を動かすのではなく、移動体全部の移動に使用する。そして慣性力が切れた時にエンジンにより走行する。
つまり慣性力の使い方が本願発明と引用文献2では、全く違う。すなわち引用文献2は慣性力で発電機を回し、本発明は慣性力で車体全体を動かすという違いがあり構成は全く異なるものです。
(イ)また、引用発明2は慣性力が切れてもバッテリが切れるまで走行でき、その後、エンジンで走行する。すなわち引用発明2は慣性力が無くても走行でき、その後エンジンで走行する技術であります。それに対し、本発明は慣性力を間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用し動かすので、引用発明2と構成が全く異なります。
(ウ)さらに、本願発明は慣性力がある間走行し、慣性力が無くなるとエンジンで走行する。これにより発電機もバッテリも必要ない。
これに対し引用文献2は発電機もバッテリも必要である。
以上より、引用文献2とは(ア)~(ウ)に記載の如く、思想も構造も具体的部品も全く違う構成であり、また、引用文献2より本発明に容易に想到いたしません。」(審判請求書第4ページないし第5ページの「3.本願発明が特許されるべき理由」欄)
b 上記aの主張に対する検討
(a) 上記a(a)の主張に対する検討
(a)-1 本件補正発明1について
上記「ウ 対比・判断」の(ア)「a 対比・判断1(本件補正発明1と引用発明1の対比・判断)」(a)のとおり、引用発明1における「慣性を、スイッチ12がオフの時にバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し移動体の移動に活用」することは本件補正発明1における「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」することに相当するものである。
そして、同(d)のとおり、本件補正発明1と引用発明1は全ての点で一致していることから、本件補正発明1は引用発明1である。
(a)-2 本件補正発明2について
上記「ウ 対比・判断」の(イ)「b 対比・判断1(本件補正発明2と引用発明1の対比・判断)」(a)のとおり、引用発明1における「エネルギEを加えた状態とオフにされた状態を繰り返すこと」における「加えた状態」の「エネルギE」は本件補正発明2における「間歇的なエネルギ」に相当し、引用発明1における「エンジンやモータにより移動体に加えるエネルギE」は本件補正発明2における「複数個(n>2)の駆動力装置によるエネルギ」に相当するものである。
そして、同(a)のとおり、本件補正発明2と引用発明1は全ての点で一致していることから、本件補正発明2は引用発明1である。
さらに、同(b)のとおり、相違点2に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものであることから、本件補正発明2は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(b) 上記a(b)の主張に対する検討
(b)-1 本件補正発明1について
上記「ウ 対比・判断」の(ア)「b 対比・判断2(本件補正発明1と引用発明2の対比・判断)」(d)のとおり、相違点1に係る本件補正発明1のように、「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用」することは、当業者であれば容易に想到し得るものであることから、本件補正発明1は引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(b)-2 本件補正発明2について
上記「ウ 対比・判断」の(イ)「c 対比・判断2(本件補正発明2と引用発明2の対比・判断)」(a)のとおり、相違点3に係る本件補正発明2のように、「複数個(n>2)の駆動力装置」とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものであることから、本件補正発明2は、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
c したがって、上記aの審判請求人の審判請求書における主張は失当であって採用することはできない。
(イ)審判請求人の令和6年6月7日提出の上申書における主張の検討
a 審判請求人の同上申書における主張の内容
審判請求人は、同上申書において、令和5年10月31日付けの前置報告書に対して、以下のように主張する。
(a)本件補正発明1及び2に関して
「3.(第36条第6項第2号)関して
(a)審査官殿がご指摘の、請求項1の「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体全部の移動に使用することを特徴とし」なる記載は、「慣性力のみで移動することを特徴とし」とし、
(b)請求項1の「前記間歇的な慣性力を得る為に」なる記載は削除し、
(c)請求項1の「エネルギを節約し得る」なる記載は削除し、
(d)請求項1,2の「等」なる記載は、「自動車、船」とし、
補正の機会を頂きたくお願いいたします。」(同上申書第1ページ)(※審決注:「(d)請求項1,2の「等」なる記載は、「自動車、船」とし」は「(d)請求項1,2の「自動車、船、航空機等」なる記載は、「自動車、船」とし」の誤記と認める。)
(b)本件補正発明2に関して
「2.請求項2に係る発明に関して
しかしながら、本出願人は、請求項2に係る発明において、間歇的(すなわち一定の時間であります)にエネルギを加えたり、切断する移動体の制御方法を、複数個(n>2)の駆動力装置にて実施する事は進歩性を有するものであると思料します。
即ち周知複数の駆動力を持つ移動体であっても、複数個の駆動力装置の出力および重量も勘案し、重量×速度が影響する慣性力を間歇的使用する技術が、公知であるとは言えないものと思料致します。そして、引用文献1~7に示唆されているとはおもわれません。
特にインホイルモータが公知であっても、駆動装置が4つを超え設けられるもので、総重量及び速度及びそれぞれの駆動力装置の重量を考慮した間歇的な時間を設定し慣性力のみで移動する本願特徴を有する自動車、船は容易に想到するものではありませんので、複数個の駆動力装置に関して補正の機会を頂きたくお願いいたします。」
b 上記aの主張に対する検討
(a) 上記a(a)の主張に対する検討
(a)-1 本件補正発明1に関して
上記a(a)の「3.(第36条第6項第2号)に関して」欄における(a)ないし(d)の補正の内容について検討する。
上記「(1)明確性要件」については、上記(a)ないし(d)の補正により、上記(1)ア(ア)、(イ)a、(ウ)及び(エ)で指摘した点については、指摘した各事項が削除されているため、解消するものと認められる。
次に、上記「(2)新規性・進歩性」について検討する。
まず、引用発明1からみた新規性・進歩性について検討する。
本件補正発明1は、上記ウ(ア)aのとおり、引用発明1と上記(a)ないし(d)の補正により削除されている各事項について相違するものではなく、引用発明1と全ての点で一致していることから、本件補正発明1は引用発明1である。
次に、上記(a)の補正により、請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動することを特徴とし」なる事項について検討する。
引用発明1における「慣性を、スイッチ12がオフの時にバッテリ13をモータ又はエンジン14から切り離し移動体の移動に活用」することは、上記(a)の補正により請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動すること」に相当する。
そうすると、上記(a)ないし(d)の補正により補正される請求項1に係る発明は、引用発明1と全ての点で一致していることから、同補正される請求項1に係る発明は引用発明1である。
続いて、引用発明2からみた新規性・進歩性について検討する。
本件補正発明1は、上記ウ(ア)b(a)及び(d)のとおり、引用発明1と上記(a)の補正により削除されている事項に関して相違する(相違点1)ものであるところ、上記(a)の補正により、請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動することを特徴とし」なる事項について検討する。
引用発明2における「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」ることにおいて「エンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速」は、エンジン20とモータ30のいずれも駆動源とされていないことから、車両は慣性力のみで走行しているといえ、上記(a)の補正により請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動すること」に相当する。
そうすると、上記(a)ないし(d)の補正により補正される請求項1に係る発明は、引用発明2と全ての点で一致していることから、同補正される請求項1に係る発明は引用発明2であり、また、同補正される請求項1に係る発明は、引用発明2に基いて、又は、上記ウ(ア)b(d)を踏まえると、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(a)-2 本件補正発明2について
上記a(a)の「3.(第36条第6項第2号)に関して」欄における(d)の補正の内容について検討する。
上記「(1)明確性要件」については、上記(d)の補正により、上記(1)イ(イ)で指摘した点については、指摘した事項が削除されているため、解消するものと認められる。
(b) 上記a(b)の主張に対する検討
(b)-1 本件補正発明2について
上記「(2)新規性・進歩性」について検討する。
まず、引用発明1からみた新規性・進歩性について検討する。
本件補正発明2は、上記ウ(イ)bのとおり、引用発明1と上記(a)ないし(d)の補正により削除されている各事項について相違するものではなく、本件補正発明2は、引用発明1である。
そして、上記(a)の補正により、請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動することを特徴とし」なる事項を含む上記(a)ないし(d)の補正により補正される請求項2に係る発明についても、引用発明1であるか、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
続いて、引用発明2からみた新規性・進歩性について検討する。
本件補正発明2は、上記ウ(イ)c(a)のとおり、引用発明2と上記(a)ないし(d)の補正により削除されている各事項に関して相違するものではなく、本件補正発明2は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、上記(a)の補正により、請求項1の新たな発明特定事項とされることになる「慣性力のみで移動することを特徴とし」なる事項を含む上記(a)ないし(d)の補正により補正される請求項2に係る発明についても、引用発明2に基いて、又は、上記ウ(ア)c(a)を踏まえると、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、上記上申書には「複数個の駆動力装置に関して補正の機会を頂きたくお願いいたします。」とあるが、どのような補正を意図しているのか不明であり、この点を除く上記a(b)の主張については、上記のとおりである。
オ 小括
したがって、本件補正発明1は、引用発明1であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、本件補正発明1は、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
さらに、本件補正発明2は、引用発明1であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
さらにまた、本件補正発明2は、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり(上記2-1)、また、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり(上記2-2)、さらに、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり(上記2-3)、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年6月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
●理由1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2018-145903号公報
引用文献2:特開2007-187090号公報
引用文献3:特開2006-322322号公報
引用文献4:特開2004-44800号公報
引用文献5:特開昭63-121528号公報
引用文献6:特開昭62-61833号公報
引用文献7:特開昭56-22113号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項並びに引用発明1及び2は、前記第2の[理由]2-3(2)イ(ア)及び(イ)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明1における「慣性力を、間歇的に発電機やバッテリに使用せずに移動体の全部の移動に使用すること」について「発電機やバッテリに使用せずに移動体の全部の移動に」という事項を削除し、同本件補正発明2を削除したものである。
ア 対比・判断1(本願発明と引用発明1の対比・判断)
本願発明と引用発明1は、上記第2の[理由]2-3(2)ウ(ア)aに記載した対比と同様に対比すると、上記第2の[理由]2-3(2)ウ(ア)a(d)に記載したとおり、全ての点で一致している。
イ 対比・判断2(本願発明と引用発明2の対比・判断)
本願発明と引用発明2は、上記第2の[理由]2-3(2)ウ(ア)bに記載した対比と同様に対比すると、同2-3(2)ウ(ア)b(a)については、引用発明2における「燃費優先制御においてエンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速とエンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速とを交互に繰り返して車両を走行させ」ることは、「エンジン20を駆動源とするエンジン走行による加速」と「交互に繰り返」す「エンジン20を停止させモータ30が回生も力行も行っていないフリーラン(惰性走行)による減速」を間歇的に行って「車両を走行させ」るものであると認められることから、本願発明における「慣性力を間歇的に使用」することに相当し、そうすると、本願発明と引用発明2は、全ての点で一致している。
また、仮に相違する点があったとしても、該相違する点に係る本願発明の発明特定事項は引用発明2に基いて当業者が容易に想到し得るものであり、また、上記第2の[理由]2-3(2)ウ(ア)b(d)に記載したとおり、本願発明において「移動体システム」について例示する「自動車、船、航空体等」のうち、「船、航空体等」の「移動体システム」に係る本願発明の発明特定事項は引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。
さらに、本願発明の効果の予測性についても、引用文献2の記載事項から、また、上記第2の[理由]2-3(2)ウ(ア)a(d)に記載したとおり、引用文献2の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(2)小括
したがって、本願発明は、引用発明1又は引用発明2である。
また、本願発明は、引用発明1に基いて、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明1又は引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明2に基いて、又は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-016763