特許拒絶査定不服審判
2022-003103
遊離ホルムアルデヒドの残余量が低いマイクロカプセルを製造する方法及びその方法により製造されたマイクロカプセル
- 審判番号
- 2022-003103
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-100906外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月01日
- 審決日
- 2023年10月31日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロテック・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第50条の2、特許法第159条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-100906「遊離ホルムアルデヒドの残余量が低いマイクロカプセルを製造する方法及びその方法により製造されたマイクロカプセル」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020-151713〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)8月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年8月18日、米国)を国際出願日とする特願2018-528206号の一部を、令和2年6月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 2月24日付け:拒絶理由通知書(特許法50条の2の通知を
伴う拒絶理由通知)
同年 5月31日 :意見書、誤訳訂正書の提出
同年10月29日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 1日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 3月 1日 :審判請求書、誤訳訂正書の提出
同年 6月15日付け:前置報告書
同年 6月30日 :上申書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明は、令和4年3月1日の誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の記載により特定されるものである。
「【請求項1】
カプセルを製造するための方法であって、
界面活性剤、コア物質及び水を含むエマルジョンを調製する工程;
エマルジョンへ架橋剤を添加し、選択された粒径となるようエマルジョン中に架橋剤を均質化して、全体的に均質化されたエマルジョンを形成する工程であって、
前記架橋剤は、環状尿素(U)と多官能アルデヒド(A)の反応生成物を含み、
そのヒドロキシル基は、1つまたは複数の直鎖、分枝または環状脂肪族アルコールで場合によりエステル化される、工程;
メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを、混合しながら均質化エマルジョンに添加し、その後メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを重合する工程
を含み、
前記メラミンホルムアルデヒドプレポリマーが、架橋剤に対して1:1から4:1の重量パーセント比で存在する、方法。」
なお、前記請求項1の「エステル化」は、その前の「ヒドロキシル基は」「アルコールで」との記載、本願明細書の【0059】の「ここで「エーテル化」は、以下の付加反応において生じる、アルデヒド分子のカルボニル炭素原子(太字の「C」で示される)に結合したヒドロキシル基がアルコキシ基-ORにより置換される、環状尿素へのアルデヒドの付加反応生成物を意味する。」との記載等からみて、「エーテル化」の明らかな誤記と認める。
第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に係る進歩性の欠如理由の概略は、次のとおりである。
請求項1-20に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.中国特許出願公開第103752241号明細書
2.特表2013-545830号公報
第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶理由で引用した引用文献1(中国特許出願公開第103752241号明細書)には、次の事項が記載されている。仮訳は、合議体が付した。
ア「
[図:0001408257000001.jpg]
・・・
[図:0001408257000002.jpg]
」
(仮訳)
[請求項1] ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル化相変化材料を調製する方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする方法:
ステップ1)メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーの調製
メラミンにホルムアルデヒドと溶媒を加え、トリエタノールアミンでpHを8~9に調整し、溶液が透明になるまで撹拌し、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを得る;
ステップ2)乳化コア-ドデカノールエマルジョン
乳化剤、架橋剤、溶媒、ドデカノールを混合、攪拌して乳化し、コア-ドデカノールエマルジョンを得る;
ステップ3)ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル化相変化材料の調製
ステップ1)で得られたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを、ステップ2)で得られたコア-ドデカノールエマルジョンに添加し、ギ酸でpHを3~4に調整した後、撹拌して、ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル化相変化材料懸濁液を得、洗浄、抽出、ろ過した後、乾燥して乾燥ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒドの樹脂マイクロカプセル化相変化材料粉末を得る。
・・・
[請求項7] ステップ2)において、前記架橋剤がレゾルシノールであることを特徴とする請求項1に記載のドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル化相変化材料の調製方法。
イ「
[図:0001408257000003.jpg]
」
(仮訳)
[0001] 本発明は、in-situ重合によるマイクロカプセル化相変化材料の調製に関し、特にドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル化相変化材料の調製に関する。
ウ「
[図:0001408257000004.jpg]
」
(仮訳)
[0022] 実施例1
[0023] ステップ1で、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを調製した;
[0024] メラミン5.8gを丸底フラスコに注ぎ、ホルムアルデヒド溶液11.35gと脱イオン水60mlを混合して加え、トリエタノールアミンでpHを8~9に調整し、最後に溶液が透明になるまで70℃で1時間撹拌して、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを得る;
[0025] ステップ2で、コア-ドデカノールを乳化する;
[0026] トリトンX-100 1.6g、レゾルシン7.8g、脱イオン水300mlを別の丸底フラスコに加えた後、ドデカノール10gを加え、60℃で1500rpm、0.5時間撹拌して乳化し、エマルジョンを得た;
[0027] ステップ3で、マイクロカプセル化相変化材料を形成する;
[0028] 攪拌下、ステップ1で得られたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーをすべてステップ2で形成されたエマルジョンに1ml/分の速度で滴下添加し、ギ酸でpHを3~4に調整した後、4時間攪拌し、マイクロカプセル化相変化物質の懸濁液を得、洗浄、ろ過、乾燥して乾燥マイクロカプセル粉末を得た。
(2)引用文献2
原査定の拒絶理由で引用した引用文献2(特表2013-545830号公報)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(a)環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物、並びに
(b)(b1)アミノトリアジンと、脂肪族モノアルデヒド及び構造Y(CHO)n(式中、Yは、n官能性脂肪族残基であり、nは1より大きい)を有する多官能性脂肪族アルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種のアルデヒドとの反応生成物(架橋剤(b)が(b1)である場合、Uはジヒドロキシエチレン尿素ではない)、
(b2)尿素及び/又は環状尿素とホルムアルデヒドとの反応生成物、
(b3)アルコキシカルボニルアミノトリアジン、
(b4)部分的又は完全にブロックされていてもよい多官能性イソシアネート、
(b5)フェノールと脂肪族モノアルデヒドとの反応生成物、
(b6)多官能性エポキシド、
(b7)多官能性アジリジン、
(b8)多官能性カルボジイミド
からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤
を含み、
ヒドロキシル基を有する架橋剤(a)及び(b)のいずれかが、1種又は複数種の直鎖、分岐鎖、又は環式脂肪族アルコールでエーテル化されていてもよい、架橋剤組成物。」
「【0001】
発明の分野
本発明は、架橋剤の混合物、並びに多官能性ヒドロキシ及び/又はカルボキシル基含有材料及び前記混合物を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アミノ樹脂をベースとした架橋剤及びこれらで作製されたコーティング組成物は、当技術分野において周知であり、一般的な工業コーティング、自動車コーティング、コイルコーティング、粉末コーティング、焼付エナメル、及び木材仕上げを含む多様な用途において、半世紀以上もの間使用されてきた。これらの架橋剤は、ホルムアルデヒドと、メラミン、グアナミン、尿素、及び置換尿素等のアミン又はアミド化合物との反応生成物をベースとする。これらのアミノ樹脂ベースのコーティングの大きな欠点には、硬化中のホルムアルデヒド排出がある。
【0003】
アミノプラスト形成剤及びホルムアルデヒド以外のアルデヒドの組合せをベースとした様々な架橋用組成物が開発されてきた。これらの多くは、既知のホルムアルデヒドベースの系よりも効率が低い、若しくは高価であり、又は、さもなければ安全性及び健康上の観点から好ましくない。数々の取組みがなされているにも関わらず、提案されている架橋剤樹脂は、いずれも、市場に幅広く受け入れられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、ホルムアルデヒド排出がないか又は安全性及び健康上の観点から許容され得る低いホルムアルデヒド排出を伴い、且つ既知のホルムアルデヒドベースの系と同程度であるか又は少なくともこれらの既知の系に有利に匹敵する適用性を有する、架橋用組成物を提供することである。
【0005】
発明の要約
環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAが、良好な硬化活性を提供し、ホルムアルデヒド排出をもたらさない架橋剤として使用され得ることが見出された。」
「【0007】
したがって、本発明の目的は、特定用途に合わせて調整することができ、また必要とされる仕様に適合し得る一連の架橋剤を提供することである。この目標は、環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAと、アミノ又はアミド官能性化合物と脂肪族アルデヒドとの反応生成物をベースとしたもの等の他の架橋剤との混合物を提供することにより達成されたが、この混合物は、硬化速度、最低硬化温度、必要とされる触媒の種類及び量、並びに硬化されたコーティング膜の所望の特性が、意図される応用分野に適合され得るように選択することができる。さらに、エポキシ基、酸無水物基、アルコキシメチルアリール基、アジリジン基、カルボジイミド基、並びにブロックされていない、及びブロックされたイソシアネート基からなる群から選択される2種以上の反応基を有する、ある種の他の多官能性化合物との混合物も、有利な硬化特性を提供することが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAと、アミノ又はアミド官能性化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物をベースとした他の架橋剤との混合物は、混合物中に存在するホルムアルデヒドベースの架橋剤の割合から計算されるレベルよりも低いレベルまで低減された、硬化中又は硬化後に発生するホルムアルデヒドのレベルをもたらす。この挙動は、予期され得ないものであった。
【0009】
したがって、本発明は、
(a)環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物、並びに
(b)(b1)アミノトリアジンと、脂肪族モノアルデヒド及び構造Y(CHO)n(式中、Yは、n官能性脂肪族残基であり、nは1より大きい)を有する多官能性脂肪族アルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種のアルデヒドとの反応生成物((b)が(b1)である場合、Uはジヒドロキシエチレン尿素ではない)、
(b2)尿素及び/又は環状尿素とホルムアルデヒドとの反応生成物、
(b3)アルコキシカルボニルアミノトリアジン、
(b4)部分的又は完全にブロックされていてもよい多官能性イソシアネート、
(b5)フェノールと脂肪族モノアルデヒドとの反応生成物、
(b6)多官能性エポキシド、
(b7)多官能性アジリジン、
(b8)多官能性カルボジイミド
からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤
を含み、ヒドロキシル基を有する架橋剤(a)及び(b)のいずれかが、1種又は複数種の直鎖、分岐鎖又は環式脂肪族アルコールでエーテル化されていてもよい、架橋剤組成物に関する。
【0010】
好ましくは、反応生成物UAもまた、以降で定義されるように、部分的にエーテル化されている。」
「【0025】
好ましい実施形態において、好ましくは少なくとも部分的にエーテル化された反応生成物UAが、本発明による架橋剤組成物における成分(a)として使用される。」
「【0058】
反応生成物UA及び追加的架橋剤(b)の質量の合計に対する固体結合剤樹脂の質量の比は、好ましくは99/1から50/50、特に好ましくは95/5から60/40、最も好ましくは90/10から70/30である。
【0059】
反応生成物UAと、上で詳説された架橋剤(b)の少なくとも1種とのそのような混合物を使用する場合、架橋剤(b)の質量m(b)に対する、又は、これらの架橋剤(b)の2種以上が使用される場合は混合物中の全ての架橋剤(b)の質量の合計m(b tot)に対する反応生成物UAの質量m(UA)の比は、1/99から99/1、好ましくは10/90から90/10、特に好ましくは30/70から70/30である。本明細書において使用される質量mは、別段に明示的に示されていない場合、常に活性成分の質量を表し、活性成分を含有する溶液の質量ではない。」
「【0068】
環状尿素Uと多官能性脂肪族アルデヒドAとの反応生成物UAが、ホルムアルデヒドとアミノ又はアミド又はウレタン化合物、例えば芳香族アミン、メラミン、他のアミノトリアジン、尿素及び置換尿素、カルボンアミド、スルホンアミド、シアナミド、及びグアニジンとの反応生成物をベースとした架橋剤と組み合わされる場合、予想外にも、そのような系のホルムアルデヒド排出が、この混合物の(a)に従う架橋剤及び(b)に従う架橋剤の質量比から予想されるものより低いことが見出された。この発見は、コーティング組成物用の架橋剤として最も広く受け入れられているメラミン-ホルムアルデヒド樹脂及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂の組合せにおいて特に重要であるが、それは、これによって塗料製造者が、これらの前記アミノプラスト樹脂の有利な架橋特性を維持すると同時に、硬化中に分離するホルムアルデヒドの量を低減することができるためである。
【0069】
したがって、本発明の架橋剤組成物は、そのような用途において有利に使用することができ、硬化ステップ中、及び前記架橋剤を含むコーティング組成物でコーティングされた部品の保存又は使用中のホルムアルデヒド排出が制限される。」
「0073】
例1 エチレン尿素及びグリオキサールの付加生成物をベースとした架橋剤の調製
エチレン尿素及びグリオキサールの付加生成物をベースとした架橋剤樹脂を、以下の手順により調製した。
【0074】
グリオキサール水溶液(エタンダイヤル、溶質の質量分率40%)363g(2.6mol)を、窒素パージ下で反応槽に導入し、固体の質量分率10%の重炭酸ナトリウム水溶液の添加により、pHを6.2に調整した。エチレン尿素(2-イミダゾリジノン半水和物、固体)207g(2.18mol)を添加し、得られた混合物を40℃~45℃の間の温度に加熱し、撹拌下で3時間保持した。3時間の終わりに、メタノール464g(14.5mol)を添加した。硫酸水溶液(溶質の質量分率25%)でpHを約2.5に調整し、次いで反応温度を上げ、(48±3)℃で3時間維持した。3時間のメチル化の終わりに、1-ブタノール998g(13.5mol)を添加し、上述の硫酸水溶液でpHを約2.5に再調整した。再び反応温度を(48±3)℃で1時間維持し、次いで、全反応質量の約36%から40%の質量分率が除去されるまで、減圧下(25.333kPaから直線的に徐々に16kPaに減圧、これは190mmHgから120mmHgへの傾斜に等しい)で過剰のメタノール及びブタノールを徐々に除去した。次いで、残りの反応混合物を約35℃に冷却し、次いで、25%の固体の質量分率を有する水酸化ナトリウム水溶液で、反応混合物のpHを約6.5に調整した。次いで、反応温度を(55±5)℃に上げ、約300mPa・sの動的粘度及び61.4%の固体の質量分率が得られるまで、減圧下(16kPaから直線的に徐々に6.7kPaに減圧、これは120mmHgから50mmHgへの傾斜に等しい)で過剰のメタノール及びブタノールの除去を継続した。
【0075】
得られた麦藁色の架橋剤溶液(814g)のエーテル化度は、13C-NMR分析により、n(-O-アルキル)/n(EU)=1.92mol/molと決定されたが、「EU」は、エチレン尿素を表し、そのモル質量は、HPSECにより、Mw=1553g/molと決定され、Mwは、重量平均モル質量を表す。ゲル透過クロマトグラフィーとも呼ばれる高性能サイズ排除分析において一般的に提供される屈折数差(refraction number difference)対溶出体積のグラフにおける、低モル質量範囲、すなわち1kg/molのモル質量未満の領域の割合は、34.1%であった。ハーゼン色数(DIN-ISO 6271に従い決定される)は、383であった。反応生成物におけるメトキシ基の物質量n(-O-Me)に対するn-ブトキシ基の物質量n(-O-Bu)の比は、2.7mol/molであった。
【0076】
例2 混合架橋剤を含むコーティング組成物
以下の成分を互いに混合することにより、透明膜形成組成物を調製した。ココナツ油をベースとした市販のアルキド樹脂(キシレンに溶解した60%の固体の質量分率、155mg/gのヒドロキシル価、及び12mg/gの酸価を有するBeckosol(登録商標)12-035)を、結合剤樹脂として使用した。塗料において、添加する溶媒の量は、固体の質量分率45%のコーティング調合物を提供するように選択され、架橋剤中の固体の質量に対するアルキド樹脂結合剤中の固体の質量の比は、常に70/30であった。
【0077】
塗料2.1を以下のように調製した。
【0078】
酢酸ブチル14.2g、メトキシプロパノール0.9g、及びn-ブタノール9.0gを、上述のアルキド樹脂52.5gに添加し、混合した。次いで、40%強度のパラ-トルエンスルホン酸のイソ-プロパノール溶液2.2gを、希釈されたアルキド樹脂に添加し、混合した。例1のエーテル化架橋剤19.8gをアルキド溶液に添加した。ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤(CYMEL(登録商標)MB-94樹脂、固体の質量分率:96%)1.4gを、最後に調合物に添加し、混合した。ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤中の固体の質量に対する例1のエーテル化架橋剤中の固体の質量の比は、9:1であった。
【0079】
塗料2.1と同様にして塗料2.2を調製したが、この場合では、酢酸ブチル17.4g、例1の架橋剤11.0g、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤7.0gを使用した。ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤中の固体の質量に対する例1のエーテル化架橋剤中の固体の質量の比は、1:1であった。」
2 引用発明
引用文献1の[請求項1]を引用する[請求項7](前記1(1)ア参照。)について、同[0022]~[0028]に記載された「実施例1」を参酌すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「メラミン5.8gにホルムアルデヒド溶液11.35gと溶媒である脱イオン水60mlを加え、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを得るステップ1と、
乳化剤であるトリトンX-100を1.6g、架橋剤であるレゾルシノールを7.8g、溶媒である脱イオン水を300ml、コアとなるドデカノール10gを混合、攪拌して乳化し、コア-ドデカノールエマルジョンを得るステップ2と、
ステップ1で得られたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを、ステップ2で得られたコア-ドデカノールエマルジョンに添加し、ギ酸でpHを3~4に調整した後、撹拌して、ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料懸濁液を得、洗浄、抽出、ろ過した後、乾燥して乾燥ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料粉末を得るステップ3と、
を含むドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料を調製する方法」
3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー」は、本願発明の「メラミンホルムアルデヒドプレポリマー」に相当する。
引用発明の「乳化剤であるトリトンX-100」、「溶媒である脱イオン水」及び「コアとなるドデカノール」は、それぞれ、本願発明の「界面活性剤」、「水」及び「コア物質」に相当するから、引用発明の「乳化剤であるトリトンX-100を1.6g、架橋剤であるレゾルシノールを7.8g、溶媒である脱イオン水を300ml、コアとなるドデカノール10gを混合、攪拌して乳化し、コア-ドデカノールエマルジョンを得るステップ2」は、本願発明の「界面活性剤、コア物質及び水を含むエマルジョンを調製する工程」に相当する。
引用発明の「ステップ1で得られたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを、ステップ2で得られたコア-ドデカノールエマルジョンに添加し、ギ酸でpHを3~4に調整した後、撹拌して、ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料懸濁液を得、洗浄、抽出、ろ過した後、乾燥して乾燥ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料粉末を得るステップ3」は、本願発明の「メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを、混合しながら均質化エマルジョンに添加し、その後メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを重合する工程」に相当する。
引用発明の「ドデカノール/メラミン-ホルムアルデヒド樹脂のマイクロカプセル相変化材料を調製する方法」は、本願発明の「カプセルを製造するための方法」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「カプセルを製造するための方法であって、
界面活性剤、コア物質及び水を含むエマルジョンを調製する工程;
メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを、混合しながら均質化エマルジョンに添加し、その後メラミンホルムアルデヒドプレポリマーを重合する工程
を含む、方法。」
<相違点1>
本願発明は、「エマルジョンへ架橋剤を添加し、選択された粒径となるようエマルジョン中に架橋剤を均質化して、全体的に均質化されたエマルジョンを形成する工程であって、前記架橋剤は、環状尿素(U)と多官能アルデヒド(A)の反応生成物を含み、そのヒドロキシル基は、1つまたは複数の直鎖、分枝または環状脂肪族アルコールで場合によりエーテル化される、工程」を含むのに対し、引用発明は、エマルジョンに当該架橋剤を添加する工程を含まない点。
<相違点2>
本願発明は「メラミンホルムアルデヒドプレポリマーが、架橋剤に対して1:1から4:1の重量パーセント比で存在する」のに対し、引用発明は「メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー」に対応する架橋剤を含まないものである点。
まず、相違点1について検討する。引用文献2(前記2(2)参照。)の【0004】には「ホルムアルデヒド排出がないか又は安全性及び健康上の観点から許容され得る低いホルムアルデヒド排出を伴い、且つ既知のホルムアルデヒドベースの系と同程度であるか又は少なくともこれらの既知の系に有利に匹敵する適用性を有する、架橋用組成物を提供すること」との課題が示され、この課題を解決する手段として同【0007】には「環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAと、アミノ又はアミド官能性化合物と脂肪族アルデヒドとの反応生成物をベースとしたもの等の他の架橋剤との混合物を提供することにより達成された」と記載され、同【0068】には「環状尿素Uと多官能性脂肪族アルデヒドAとの反応生成物UAが、ホルムアルデヒドとアミノ又はアミド又はウレタン化合物、例えば芳香族アミン、メラミン、他のアミノトリアジン、尿素及び置換尿素、カルボンアミド、スルホンアミド、シアナミド、及びグアニジンとの反応生成物をベースとした架橋剤と組み合わされる場合、予想外にも、そのような系のホルムアルデヒド排出が、この混合物の(a)に従う架橋剤及び(b)に従う架橋剤の質量比から予想されるものより低いことが見出された。」と記載されている。
また、「環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UA」については、同【0010】に「好ましくは、反応生成物UAもまた、以降で定義されるように、部分的にエーテル化されている」と記載され、同【0025】に「好ましい実施形態において、好ましくは少なくとも部分的にエーテル化された反応生成物UAが、本発明による架橋剤組成物における成分(a)として使用される」と記載され、同【0073】~【0075】には、環状尿素Uであるエチレン尿素と多官能性アルデヒドAであるグリオキサールとの反応生成物UAのエーテル化されたものであることが記載され、同【0077】、【0078】の塗料2.1及び同【0079】の塗料2.2において、架橋剤として、エーテル化された反応生成物UAをアルキド溶液に添加し、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤を最後に調合物に添加し、混合したことが記載されている。
これらをまとめると、引用文献2には、ホルムアルデヒドとメラミンとの反応生成物をベースとした架橋剤を、環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAであってエーテル化された反応生成物UAと組み合わせて用いることにより、ホルムアルデヒド排出がないか又は安全性及び健康上の観点から許容され得る低いホルムアルデヒド排出を伴うようになることが記載されているといえる。
そうすると、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを反応させることによりマイクロカプセルのシェルを構成する引用発明においても、ホルムアルデヒドを低減させることは周知な課題であるから、引用発明において、引用文献2に記載される技術を採用し、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーと「環状尿素Uと多官能性脂肪族アルデヒドAとの反応生成物UAであってエーテル化された反応生成物UA」を併用することは、当業者が容易になし得たことである。そしてその際、エマルジョンに当該反応生成物UAを先に添加し、最後にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを添加することは、引用文献2の【0078】のエーテル化された反応生成物UAをアルキド溶液に添加し、ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤を最後に調合物に添加するという記載を参酌すれば、当業者が適宜なし得たことである。
さらに、相違点2について検討する。引用文献2には、前記相違点1で検討したとおり、ホルムアルデヒドとメラミンとの反応生成物をベースとした架橋剤と、環状尿素Uと多官能性アルデヒドAとの反応生成物UAとを組み合わせることにより、ホルムアルデヒド排出がないか又は安全性及び健康上の観点から許容され得る低いホルムアルデヒド排出を伴うようになることが記載されているが、それらの配合比については、同【0059】に「架橋剤(b)の質量の合計m(b tot)に対する反応生成物UAの質量m(UA)の比は、1/99から99/1、好ましくは10/90から90/10、特に好ましくは30/70から70/30である。」と記載され、同【0078】には「ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤中の固体の質量に対する例1のエーテル化架橋剤中の固体の質量の比は、9:1」としたこと、及び同【0079】には「ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂架橋剤中の固体の質量に対する例1のエーテル化架橋剤中の固体の質量の比は、1:1」としたことが記載されている。
そうすると、引用発明においても、引用文献2に記載される「環状尿素Uと多官能性脂肪族アルデヒドAとの反応生成物UA」を採用するにあたり、そのメラミン-ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーに対する質量比を、1:1程度にすることは、当業者が容易になし得たことである。
この点(前記相違点2)について、出願人は、令和3年5月31日の意見書において、「(本願発明の非容易想到性及び有利な効果)
本願発明が解決しようとする技術的課題は、メラミンホルムアルデヒド樹脂がマイクロカプセルのシェルを形成する場合に、残留遊離ホルムアルデヒドを低減する一方、許容可能な熱安定性及びエンタルピー値を維持するような、改善されたマイクロカプセルを製造する方法を開発することであります(段落0012)。
本願発明において出願人は、上記の課題を、新請求項に記載された特徴を有する方法、特にメラミンホルムアルデヒドプレポリマーの量を、架橋剤に対して1:1から4:1の重量パーセント比とすることにより、解決することが可能であることを発見しました。
実際に、本願明細書図3には、40%のCYMEL(登録商標)385メラミンホルムアルデヒド樹脂と60%の架橋剤とを含むバッチ120-106において、他の比率のバッチと比較して、遊離ホルムアルデヒドの量が顕著に低く、かつ遊離ワックスの量が非常に高いカプセルが得られたことが記載されております。該バッチにおけるメラミンホルムアルデヒド樹脂の架橋剤に対する重量%比は、1.5:1であり(段落0085)、本願発明の範囲に含まれる一方、他の比較例のバッチのカプセルは、本願発明の範囲に含まれておりません。そして、当該比率でスケールアップしたバッチのカプセルが、遊離アルデヒドが顕著に低く、かつ高い安定性を有することも示されております(段落0085から0086)
このように、低い残留遊離ホルムアルデヒドと高い安定性を有するカプセルを、メラミンホルムアルデヒドプレポリマーもしくはメラミンホルムアルデヒドの量を、架橋剤に対して1:1から4:1の重量パーセント比に調節することにより取得できることは、引用文献1及び2には示唆されておらず、当業者が容易に想到できたことではありません。従って、本願優先日当時の当業者は、本願発明に容易に想到することはできなかったと思料致します。
また、本願発明のカプセルにより実現される低い残留遊離ホルムアルデヒドと高い安定性は、当業者が予測できなかった本願発明の効果であり、本願発明の進歩性を裏付ける有利な効果として参酌されるべきものであると思料致します。」と主張している。
しかしながら、請求人の主張する本願明細書の【図3】の「バッチ120-106」は、他の「バッチ120-097」などに比べ、残留遊離ホルムアルデヒド%が最も低いバッチであるが、メラミンホルムアルデヒドプレポリマーの架橋剤に対する重量%比が40:60=1:1.5の例であり、本願発明の範囲外であるため、効果の根拠とならない。
そして、同【図3】、【0083】及び【0086】をはじめとする明細書の記載を参酌しても、メラミンホルムアルデヒドプレポリマーの架橋剤に対する重量%比を1:1から4:1とすることにより、顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第5 請求人の主張について
1 審判請求書の主張
請求人は、審判請求書の「3.結語」において「本書の説明によって、不明確な記載を含むこと、実施可能要件及びサポート要件を満たさないこと、ならびに同日出願の発明と同一であることによる補正却下の決定の理由はいずれも解消し、本願発明は独立に特許を受けることができるため拒絶査定が解消されたものと思料致します。」と主張する。
しかしながら、前記第3のとおり、拒絶査定の理由は「請求項1-20に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由を含むものであるから、本審決の理由は、特許法第159条第2項に規定される査定の理由と異なる理由には該当しない。
2 上申書の主張
請求人は、令和4年6月30日の上申書において、更なる上申書を2022年9月27日までに提出することを予定している旨の主張をしたが、更なる上申書は提出されなかった。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003103