特許拒絶査定不服審判
2021-005843
水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備
- 審判番号
- 2021-005843
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-536612
- 請求日
- 2021年05月06日
- 審決日
- 2022年01月06日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エバートロン ホールディングス ピーティーイー リミテッド
- 【請求人代理人】米山 毅
- 【請求人代理人】特許業務法人 東和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 川端 修
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P18 .121-Z (B01J) / P18 .575-Z (B01J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-536612「水分制御装置、水分制御方法、プログラム、記憶媒体、生成された物質、製品、装置及び設備」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月4日国際公開、WO2019/132046〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月31日(優先権主張 平成29年12月31日、平成30年2月9日、平成30年7月30日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和元年8月26日付で拒絶理由が通知され、令和2年3月2日に手続補正がされ、令和2年3月3日に意見書が提出され、令和3年1月29日付で拒絶査定がなされ、その後、同年5月6日に審判請求と同時に手続補正がされ、同年11月4日に上申書が提出されたものである。
第2 令和3年5月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させることにより、前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年3月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを発生させ、
前記電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とするか、又は、
前記電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分が連珠配列となるように結合状態とするか、
の少なくともいずれか一方の状態とすることを特徴とする水分制御装置。」
2 独立特許要件について
本件補正は、「電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分」の状態について、補正前の界面張力を低下させた状態」又は「連珠配列となるように結合状態」の「少なくともいずれか一方の状態とする」ものであったものから、「連珠配列となるように結合状態とする」ものを削除し、「物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする」ものに限定したものである。
また、本件補正は、「電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つ」について、補正前は単に「発生」させる対象であったものを、「発生」させて、さらに「制御する」ものであることを限定する補正も含む。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、進歩性(特許法第29条第2項)の観点から、以下、検討する。
3 当審の判断
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用例3及び技術常識を示す文献の記載事項
ア 引用例3の記載事項
原査定において引用例3として引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-129672号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
食用油をためて食物を加熱調理するための貯油槽と、
貯油槽に対向して立設される対向平板アンテナと、
対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平板アンテナを駆動する駆動部と、
貯油槽にためられた食用油を摂氏120度から摂氏200度に加熱して食物を調理するための加熱部と、
を有するフライヤー。
【請求項2】
電磁波の出力を投入される食物の種類、量の変化に対しても所定の出力に安定させるために駆動部を制御する出力安定部をさらに有する請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
駆動部の出力の大小を制御する出力制御部をさらに有する請求項1又は2に記載のフライヤー。
【請求項4】
駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載のフライヤー。
【請求項5】
貯油槽の食用油の温度を計測する温度計測部と、
温度計測部によって計測される温度が投入される食物の種類、量の変化に対しても所定の温度となるように加熱部を制御する加熱制御部をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載のフライヤー。」
(イ)「【0038】
以下、本件発明について図面と共に説明する。なお、本件発明は明細書や図面の記載に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
≪実施形態1≫
<機能的構成>
【0039】
図1は、本件発明のフライヤーの概要を示す側面図である。例えば本件発明のフライヤーは、主に貯油槽(0101)と、対向平板アンテナ(0102)と、駆動部(0103)と、加熱部(0104)と、から構成される。
【0040】
貯油槽(0101)は、食用油(0105)をためて食物を加熱調理するために設けられる。すなわち、貯油槽内の加熱された食用油中に食物を投入することにより、食物がフライ調理(揚げ調理)される。貯油槽には食物が投入され、さらに貯油槽の内面は高温の油と接触するため、貯油槽は人体に害がなく、高温・長期の使用でも劣化の少ない材質(例えばステンレス等)を用いて構成されることが好ましい。なお、貯油槽の容積や形状については、フライヤーの設置場所やフライヤーで一度に加熱調理を行う食物の分量等に応じて任意に設定される。
【0041】
対向平板アンテナ(0102)は、貯油槽に対向して立設される。対向平板アンテナ間に所定の範囲の周波数の電磁波を発生させ、電磁波が発生している空間内で食物が調理される。対向平板アンテナはその表面が絶縁性の物質により被覆されていることが好ましい。本構成とすると、例えば対向平板アンテナに供給された交流電圧が貯油槽へと伝わり、フライヤーの使用者の感電やフライヤー付近の装置の故障等の恐れを防止することができる。」
(ウ)「【0045】
図2に本件発明のフライヤーを用いた食物(0201)の加熱調理の概要を示す。例えば対向平板アンテナに所定の範囲の周波数の交流電圧が供給されると、対向平板アンテナ間に所定の範囲の周波数の電磁波(0202)が形成される。所定の範囲の周波数の電磁波が発生している空間内で食物の加熱調理を行うと、食物内への油分の浸透の抑制、食物内の水分による油はねの抑制、調理時の油温度の減少、食物の調理時間の減少とそれに伴う食用油の酸化の抑制等、優れた効果を得ることができる。また、調理された食物は、食味が非常に優れたものとなる。
【0046】
なお、本件発明のフライヤーは、電磁波の出力を投入される食物の種類、量の変化に対しても所定の出力に安定させるために駆動部を制御する出力安定部をさらに有していても良い。例えば貯油槽内に食物を投入すると、食物の水分含有量や食物の投入量によって電磁波の吸収量が異なるため、電磁波の出力が変化してしまう場合がある。電磁波の出力が変化してしまうと、調理された食物の食味を損ねてしまう場合があるため、電磁波の出力が当初設定されていたものに対して変化した場合に、出力安定部がその変化を察知して、出力を安定させる構成とすると、どのような食物であっても、またどのような分量の食物を調理する際にも安定して食物を調理し、調理された食物の優れた食味を得ることができる。
【0047】
また、本件発明のフライヤーは、駆動部の出力の大小を制御する出力制御部をさらに有していても良い。例えば調理する食物によって、調理に適切な電磁波の強度が異なる場合がある。そこで、フライヤーに出力制御部を設けることにより、どのような食物であってもその食物に適した電磁波の強度で調理を行うことができる。なお、駆動部の出力として、例えば対向平板アンテナの底面部の長さと対向平板アンテナ間の距離をそれぞれ5cmから20cmとした時に、両電極の電位差を1ボルトから50ボルト程度とすることができる。」
(エ)「【0076】
・・・
<実施例1>
【0077】
本実施例は、実施形態1の発明を基礎とし、特に実施形態1に記載の加熱調理方法を実施する場合に、さらに前記食用油には長鎖脂肪酸塩が含まれている加熱調理方法である。長鎖脂肪酸塩としては、炭素数12以上のものがあげられ、特にラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ペンタデシル酸塩、パルチミン酸塩、パルミトレイン酸塩、マルガリン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、バクセン酸塩、リノール酸塩、αリノレン酸塩、γリノレン酸塩、アラキジン酸塩、アラキドン酸塩、エイコサペンタエン酸塩(EPA塩)、ドコサヘキサエン酸塩(DHA塩)などが含まれる。長鎖脂肪酸塩はカルボキシル鎖が親水基、炭化水素鎖の部分が親油基として機能する。つまり食用油中の油成分と、食用油に投入される食物の表面に存在する水成分とをなじませる働きがある。特に食物の表面に粒状に水が存在する場合にはこれらの長鎖脂肪酸塩が水の表面に整列し、さらに電磁波発生ステップにて与えられる電磁波によって長鎖脂肪酸塩が水の表面近傍で振動する。
【0078】
例えば図15に示すラウリン酸ナトリウムの場合には親水基の部分に電磁波が働き食用油中にて振動する。
【0079】
そうすると粒状の水に接した親水基が振動するために徐々に水粒が細粒化されてゆく。この現象のためにたとえ食物を高温の食用油に投入した直後にその食物表面に粒状の水が存在したとしても瞬間的に細粒化されてゆくのでいわゆる油はね現象が生じない。さらに長鎖脂肪酸塩が食物の表面にも食物側を親水基、食用油側を親油基として配列し、食用油が食物の内部に浸透することをある程度妨げるものと考えられる。したがって、油の侵入によって食物が脂濃くなったり、食物の内部から水分が排出されることもある程度防止できていると考えられる。これらの複合作用によって、加熱調理は、食物の表面をパリッと仕上げ、食物内部の水分も保ったジューシーな仕上がりになるものと考えられる。」
(オ)「<実施例5>
【0083】
本実施例は、実施形態1の発明や実施形態2の実施例1から4の発明を基礎として、加熱調理の対象となる食物は、前記脂肪酸塩を構成する原子である、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄のいずれか一以上を含有する食物である加熱調理方法を提供する。
【0084】
さらに、前記食用油は、加熱調理の対象となる食物として、前記脂肪酸塩を構成する原子である、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄のいずれか一以上を含有する食物の調理を少なくとも過去に一度以上行ったことがある再利用の食用油加熱調理方法である。
【0085】
食物中のこららの原子が加熱された食用油中の脂肪酸の加水分解とともに塩を生成するように仕向けるためである。例えばカリウムを多く含む食物としてはイモ類、でんぷん類をあげることができる。
【0086】
カルシウムを多く含む食物としては、砂糖や野菜類をあげることができる。野菜としては、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、サヤインゲン、ササゲ、オクラ、スイカ、メロン、シロウリ、カボチャ、トマト、トウガラシ、完熟ピーマン、イチゴ、実エンドウ、ソラマメ、エダマメ、スイートコーン、インゲンマメ、ソラマメ、タイサイ、コマツナ、タカナ、ホウレンソウ、キクナ、ネギ、ワケギ、セロリ、ハクサイ、キャベツ、メキャベツ、レタス、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス、ウド、コールラビ、タケノコ、ブロッコリー、マツタケ、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、マッシュルーム、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ、サツマイモ、ヤマイモ、ジネンジョ、ジャガイモ、サトイモ、レンコン、クワイ、チョロギ、オニユリ、ヤマユリなどをあげることができる。
【0087】
鉄を多く含む食物としては、貝類をあげることができる。赤貝、あさり、アワビ、かき、シジミ、タニシ、はまぐり、ほたて、などである。
【0088】
リンは魚介類、きのこ類に多く含まれている。
【0089】
亜鉛も貝類に多く含まれている。特にかきには多く含まれている。」
(カ)図面
a 「【図1】
[図:0001396603000001.jpg]
」
b 「【図2】
[図:0001396603000002.jpg]
」
c 「【図13】
[図:0001396603000003.jpg]
」
d 「【図15】
[図:0001396603000004.jpg]
」
イ 技術常識を示す文献の記載事項
当審が、本願の優先日前の技術常識を示す文献として示す、次の(ア)~(エ)の文献には次の記載がある。
(ア)特開昭48-23044号公報(前置報告書における引用例9)には、次の記載がある。
a 1頁左下欄2~6行
「1.発明の名称
電気乳化方法
2.特許請求の範囲
油水界面に電圧を印加してエマルジョンを生成させることを特徴とする電気乳化方法。」
b 1頁左下欄11行~2頁左上欄4行
「乳化法の一つとして電気乳化法があることは周知である。しかし周知の電気乳化法は主としてエアロゾルを対象に行なわれており、又数万ポルトにも及ぶ電圧を必要とするなどおよそ実用的な面から掛け離れたものである。
本発明は簡単な手段でしかも低い電圧でエマルジョンを作る方法を提供するもので、以下その芙施の態様を例示図面および訊験研究の結果に基づいて詳細に説明する。
第1図は本発明を実施する装置の一例を原理的に示したものであり、該装置に基づきO/W型エマルジョン(連続相である水に不連続相となる油を滴下する)調製の場合について説明する。すなわちこの装置は先端を毛細管にした滴下電極(1)を水相(2)に満した水相(A)に浸漬し、又前記滴下電極(1)は油相(B)で満たしてある。そして油相(B)の流速はレギュレータ(3)で調整できるようにしてあり、流速と流量はミクロビユレット(4)で直接測定できるようにしている。(5)および(6)は油水両相にそれぞれ浸した白金電極であり、両白金電極は例えば直流電源(7)に接続している。
上記のような装置において白金電極(5)(6)間に電圧をかけると、適当な条件のもとで毛細管つまり滴下電極(1)の先端で乳化が起り、滴下極側の液相である油相か霧状に分散してここにO/W型エマルジョンができるのである。・・・前記乳化は連続相と不連続相となる2つの液体の界面に適当な電圧が加わると、連続相に向つて1つ又はそれ以上の不連続相の液体の突起が生じ、この突起の尖端から分散が開始し拡大する。」
c 2頁左上欄11~20行
「まずW/O型エマルジョンの場合における界面張力との関係について説明すると次のとおりである。すなわち界面活性前(以下SAAという)を含む油水界面に電圧をかけると、そのイオン性にしたがって正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくなってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小さくなり、ついには霧状に分散し始める。」
d 第1図関連
(a)図面の簡単な説明
「第1図は本発明方法の実施の態様を例示した説明図」
(b)
「
[図:0001396603000005.jpg]
」
e 第2図関連
(a)図面の簡単な説明の項
「第2図はDTACを含むMIBK相にKCl水溶液を滴下する場合の電圧と界面張力の関係を示すグラフ」
(b)第2図
「
[図:0001396603000006.jpg]
」
(イ)Satoshi Nichimura外5名、"Electrocapillary Phenomena at Edible Oil/Saline Interfaces"、Journal of Oleo Science、2017年3月1日,Vol.66,No.3,P.235-249(前置報告書における引用例10)には、次の記載がある。当審訳を「[」及び「]」を用いて併記する。
a タイトル
「Electrocapillary Phenomena at Edible Oil/Saline Interfaces」
[食用油と生理食塩水の界面の電気キャピラリー現象]
b 235頁左下欄1~5行
「1 INTROUCTION
Electrocapillary phenomena are defined as the change of interfacial tension under the application of an electric potential difference between two immiscible phases due to the polarization of the interface.」
[1 前書き
電気キャピラリー現象は、2つの不混和相間に電位差を印加することによって生じる界面の分極による界面張力の変化であると定義される。]
c 235頁左下欄14行~右下欄2行
「Guastalla conducted pioneering measurements at oil/water interfaces under the application of an electric potential difference between the two phases6), while a systematic investigation of these systems was performed by Watanabe and his coworkers7-14) who demonstrated the following fundamental aspects of electrocapillary phenomena.」
[グアスタラは、油/水の界面について、その2相間に電位差をかけて先駆的な測定を行う一方、以下に述べる電気キャピラリー現象の基礎的な面を明らかにしたワタナベとその同僚は、これらの系を体系的に研究した。]
d 236頁左欄13~18行
「In this study, we investigated electrocapillary phenomena at edible oil/saline interfaces considering the nature of food ingredients, obtaining fundamental information on electrocapillary phenomena and contributing to the development of efficient and safe manufacturing processes in food industry.」
[この研究では、食品成分の特性を考慮して、電気キャピラリー現象に関する基礎的な情報を得て、食品製造業界に用いることができる効率的で安全な製造プロセスの開発に寄与する、食用油と生理食塩水の界面の電気キャピラリー現象に関する研究を行った。」
e 236頁左欄20~38行
「2 EXPERIMENTAL
2.1 Materials
The edible canola oil used in this study was supplied by evertron inc. (Tokyo, Japan)and used as received. This oil was based on triacylglycerols with the results of acyl group analysis listed in Table 1. Phosphate-buffered saline(PBS; 0.01M, Wako Pure Chemical Industries, Ltd.) with pH 7.2~7.4 and saline with pH 5.4~5.6 were used in this study, because the pH of natural foods such as vegetables, meat, and fish mostly ranges between 5 and 723) . PBS was used as received, while the saline with pH 5.4~5.6 was preparedby dissolving 9 g of NaC(l Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)that was baked at 500℃ for 6 h, into 1 L of Milli-Q water. Sodium oleate(SO, ~99% by capillary GC)and glyceryl trioleate(assay≧99%)were purchased from Sigma Aldrich Inc., and used without further purification. Oleic acid(OA, Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)was used without further purification. Methanol and chloroform (Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)used for thin-layer chromatography(TLC)were of guaranteed reagent grade.」
[2実験
2.1材料
この研究で使用された食用カノーラ油は、エバートロン株式会社(日本、東京)から提供され、受け取ったままで使用された。この油は、トリアシルグリセロールが主な成分で、アシル基の分析結果は表1に示されている。。この研究では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;0.01M、和光純薬工業株式会社)のpH7.2~7.4及びpH5.4~5.6の生理食塩水が使用された。それは、野菜や肉や魚などの自然食品のpHが5から7の範囲だからである23)。PBSはそのまま使用されたが、pH 5.4~5.6の生理食塩水については、500℃で6時間焼成した9gのNaCl(和光純薬工業株式会社)を1LのMilli-Q水に溶解することにより調製した。オレイン酸ナトリウム(SO、キャピラリーGCで99%以下)及びグリセリルトリオレエート(含有率≧99%)はSigma Aldrich Inc.から購入し、さらに精製することなく使用された。オレイン酸(OA、和光純薬工業株式会社)はさらに精製することなく使用された。薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用したメタノールとクロロホルム(和光純薬工業株式会社)は試薬グレードの保証がされたものである。]
f 240頁左欄下18~下4行
「3.3 Interfacial tension between edible oil and saline at applied electric fields
3.3.1 Additive-free edible oil
The interfacial tension between additive-free edible oil and saline was measured as a function of offset voltage under an AC electric field with a frequency of 50 kHz and a peak-to-peak voltage of 200 V(200Vpp). The interfacial tension measured under the electric field(γ*)was normalized with respect to that measured in its absence(γ )to eliminate the influences of other factors. Figure 8 shows the normalized interfacial tension(γ*/γ) for edible oil(additive-free oil). The values of γ*/γ were almost equal to unity for both PBS(pH 7.2~7.4) and saline(pH 5.4~5.6), indicating no change in the interfacial tension when electric fields were applied between the two phases.」
[3.3 印加された電界における食用油と生理食塩水の間の界面張力
3.3.1 無添加食用油
無添加食用油と生理食塩水間の界面張力は、周波数50kHzの、ピークとピークとの間の電圧が200V(200Vpp)の交流電界を印加した際の、オフセット電圧の関数として測定された。電界をかけた場合の界面張力γ*は、他の要因を排除するために、電界を掛けない時の界面張力γを用いて正規化された。図8には、食用油(無添加油)についての正規化された(γ*/γ)が示されている。γ*/γの値は、PBS(pH 7.2~7.4)と生理食塩水(pH 5.4~5.6)に対して、ほぼ等しく、2相間に電界が印加された際の界面張力に変化は示されなかった。
g 241頁左欄2~12行
「Figure 10 shows γ*/γ measured for 10-3 M SO in edible oil as a function of offset voltage. For PBS(Fig. 10(a)), γ*/γ was equal to ~1 under AC electric field in the absence of the offset voltage.
However, γ*(当審注:「γ」は「γ*」の誤記と認める。)/γ decreased to 0.8~0.9 for both positive and negative offset voltages. For saline(Fig. 10(b)), γ*/γ decreased to ~0.9 under an AC electric field in the absence of the offset voltage. Moreover, γ*/γ decreased to ~0.8 and <0.4 at offset voltages of -100 and +100 V, respectively, returning to ~1 when the electric fields were switched off after a sequence of measurements.」
[第10図は、食用油中に10-3MのSOについて、オフセット電圧の関数としての、測定されたγ*/γの値を示す。PBS(図10(a))に関しては、オフセット電圧が存在しない交流電界の場合には、γ*/γは1以下となっている。
しかしながら、γ*/γは、正オフセット電圧及び負オフセット電圧のいずれに対しても、0.8~0.9に低下する。生理食塩水(図10(b))に関しては、オフセット電圧が0であっても、γ*/γは、0.9以下に低下する。さらに、-100V及び+100Vのオフセット電圧をかけた場合には、γ*/γは、それぞれ、0.8以下や0.4以下に低下し、一連の測定後、電位がなくなった場合は1以下に戻る。]
h 244頁右欄1~9行
「3.5 Electric response of saline droplets in edible oil
Electrocapillary phenomena at edible oil/saline interfaces were closely related to the corresponding polarization to understand the relation between electrocapillary phenomena and interfacial polarization under AC electric fields. We focused on the formation of saline droplet pearl chains in edible oil that are formed by dipole-dipole attraction between individual droplets as a result of interfacial polarization.」
[3.5 食用油中の生理食塩水滴の電気的応答
食用油/生理食塩水の界面の電気キャピラリー現象は、関連した分極に密接に関係するものであり、電気キャピラリー現象と交流電界による界面の分極との関係によるものと解釈された。我々は、生理食塩水の個々の水滴が界面で分極する結果、水滴同士が双極子-双極子で互いに引きつけられて、食用油中において、生理食塩水の水滴が真珠のチェーン(当審注:数珠)を形成することに注目した。]
i 237頁上部
「Fig.1 Schematic diagram of drop weight method for interfacial tension measurement.
[第1図 界面張力の測定のための滴下について示す概念図]
[図:0001396603000007.jpg]
」
h 237頁中段
「Fig.2 Schematic diagram of electronic apparatus interfacial tension measurement.
[界面張力測定のための電気的装置の概念図]
[図:0001396603000008.jpg]
」
j 239頁上部
「Fig.4 Schematic diagram of apparatus for microscopic observations of electric response of saline droplets in edible oil.
[食用油中の生理食塩水の水滴の電気的応答を顕微鏡的に観察するための装置の概念図]
[図:0001396603000009.jpg]
」
k 240頁右上部
「Fig. 8 γ*/γ measured for edible oil as a function of offset voltage under an AC electric field with a frequency of 50 kHz and a peak-to-peak voltage of 200 V(200Vpp).
[50kHzの周波数でピーク間電圧200Vの交流電界中でのオフセット電圧に対する食用油についてのγ*/γの測定値]
[図:0001396603000010.jpg]
」
l 241頁右上部
「Fig.10 γ*/γ measured for SO-oil as a function of offset voltage under an AC electric field with a frequency of 50 kHz and a peak-to-peak voltage of 200 V(200 Vpp).
[50kHzの周波数でピーク間電圧200Vの交流電界中でのオフセット電圧に対するSO-油についてのγ*/γの測定値]
[図:0001396603000011.jpg]
」
(ウ)特開平4-260751号公報には次の記載がある。
a 「【0008】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例に従って説明すると、図1において、11は発振器で、 100KHz以上(好ましくは 900MHz以上)の電磁波を出力する。12は電磁波を伝送する同軸ケーブルで、図2に示すように銅あるいはアルミ製の金属中空管13の内部に、電磁波伝送用の金属線14がポリエチレン等の電気絶縁材15によって非接触に保たれて成る。金属中空管13は電磁波シールならびにアース作用目的のものである。金属線14の先端部には、伝送される電磁波周波数の1/4波長に相当する長さの棒状金属体により構成したアンテナ16が接続されている。同軸ケーブル12のアンテナ16とは反対側は発振器11に接続され、発振器11からの電磁波を同軸ケーブル12の金属線14を通してアンテナ16側に伝送するようになっている。
【0009】19は密閉された金属容器で、金属容器19内に誘電加熱される液体20がパイプ21を介して供給され、加熱後液体20はドレン口22より外部へ排出されるようになっている。金属容器19の底部には、図2に示すように外側の小孔部25と内側の大孔部26とを階段状に有するアンテナ挿通孔27が設けられ、小孔部25に同軸ケーブル12の金属中空管13の先端部が内嵌されている。アンテナ16は大孔部26側に突出され、石英、テフロン等の電磁波吸収性の低い材質で構成した中実の柱状体31の軸芯中心部に凹孔部29を介して差し込まれている。柱状体31のアンテナ16側は大孔部26に内嵌され、柱状体31は金属容器19の底部に垂直に設置されている。この場合、柱状体31の先端部は容器19内に注入した液体20の液面より下方に位置している。柱状体31と金属容器19の底部との間に、シール用のOリング33,34 が大孔部26の側面と底面とに対応して設けられている。また、容器19の底部と同軸ケーブル12の金属中空管13はその先端部がアースとの取合いで溶接固着34されている。」
b 図面
「
[図:0001396603000012.jpg]
」
(エ)特開平6-230325号公報には次の記載がある。
a「【0015】・・・なお、水の表面張力は、20~100℃の範囲でγ=a-bt-ct2の式で近似されることが知られている(ただし、t:液温度(℃)、a:76.24、b:0.1379、c:3.124×10-4で、Wilhelmy法による)。また、上述の純水には、通常の水質のものが用いられる。例えば、これは、比抵抗10MΩ・cm以上、純水中の0.2μm径の粒子数は100個/ml以下、そして、総有機炭素量1mg/l以下である。」
(3)引用発明の認定
前記(2)ア(ア)に摘記した引用例3の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4から次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
「食用油をためて食物を加熱調理するための貯油槽と、
貯油槽に対向して立設される対向平板アンテナと、
対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平板アンテナを駆動する駆動部と、
貯油槽にためられた食用油を摂氏120度から摂氏200度に加熱して食物を調理するための加熱部と、
駆動部の出力の大小を制御する出力制御部を有し、
駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部をさらに有するフライヤー。」
(4)対比、一致点・相違点
ア 対比
引用発明は、「対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために対向平板アンテナを駆動する駆動部」、「駆動部の出力の大小を制御する出力制御部」及び「駆動部によって形成される電磁波の周波数を制御するための周波数制御部」を有することによって、「対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波」の出力及び周波数が制御されるものである。
そうすると、技術常識によれば、引用発明では、「対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を発生させるために」、対向平板アンテナ間に10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の交流電圧を印加し、対向平板アンテナ間に交流電圧による電界を生じさせて、10キロヘルツから150キロヘルツの周波数の電磁波を生じさせ、交流電圧の大きさや周波数を制御するものであると解される。
また、引用例3の【0041】の「電磁波が発生している空間内で食物が調理される」という記載及び図1からみて、「食物」は、調理の際には、対向平板アンテナ間に配置されるものであることは明らかであり、引用発明の「食物」は、本件補正発明の「電極に対向して配置された物質」に相当する。
そうすると、引用発明が上記「駆動部」、「出力制御部」及び「周波数制御部」を有することは、本件補正発明の「少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御」すること及び「前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させる」ことに相当する。
そして、本件補正発明における「装置」と引用発明のフライヤーとは、「装置」である点で共通する。
イ 一致点・相違点
(ア)一致点
そうすると、本願発明と引用発明との一致点は以下のとおりである。
「少なくとも1つの電極に対して直流成分及び/又は交流成分を有する所定の電圧ないし電流を印加することにより、前記電極から発生させる電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを制御し、
前記電極に対向して配置された物質に対して、前記電極から発生された電場、磁場、電磁場、及び、電磁波の中の少なくともいずれか1つを作用させる装置」である点。
(イ)相違点
本件補正発明と引用発明とは次の点で相違する。
本件補正発明は、「物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置」であるのに対して、引用発明は、「フライヤー」である点。
(5)相違点についての判断
相違点について次のア及びイの2つの観点から検討する。
ア(ア)前記(2)ア(エ)に摘記したように引用例3の段落【0079】には、引用発明に係るフライヤーが「そうすると粒状の水に接した親水基が振動するために徐々に水粒が細粒化されてゆく。」という作用を有することが記載されている。
(イ)前記(ア)の説明は、前記(2)イ(ア)bに摘記した特開昭48-23044号公報に「前記乳化は連続相と不連続相となる2つの液体の界面に適当な電圧が加わると、連続相に向つて1つ又はそれ以上の不連続相の液体の突起が生じ、この突起の尖端から分散が開始し拡大する。」という記載と符合するものである。
(ウ)また、界面活性剤が水/油の界面の界面張力を低下させることで、エマルションを形成するものであることは技術常識である。
(エ)そして、エマルションの小滴化が界面張力の低下を原因とすることは、前記(2)イ(ア)cに摘記した特開昭48-23044号公報の「正又は負の電圧を加えたときに界面張力の減少が認められる。この現象は滴下電極から流下した滴の大きさが小さくなってゆくのですぐわかるが、更に電圧を上げると滴の大きさはますます小さくなり、ついには霧状に分散し始める。」という記載及び前記(2)イ(イ)bに摘記した[電気キャピラリー現象は、電界をかけることで、界面の分極によって生じる2つの不混和相間の電位差により界面張力が変化することと定義される。]という記載から、本件優先日前の技術常識であったと認められる。
(オ)そうすると、引用例3の段落【0079】に接した当業者は、引用発明は、「前記物質の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とすることを特徴とする水分制御装置。」でもあることは容易に想到できるといえる。そして、相違点による作用効果上の差異も予測を超えるものであるということはできない。
(カ)本件補正発明は、引用発明及び本願の優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
イ(ア)引用発明における「食物」は、具体的にどのようなものかは規定されていないところ、引用発明は「フライヤー」であり、「食物」が食用油で加熱調理されるものであるから、食物としては、内部に水分を含むものであると解される。また、引用例3の【0086】には、キュウリ等の野菜、【0087】には、貝類として赤貝等が例示され、これらは、いずれも内部に水分を含むものであるから、引用発明の「食物」には、内部に水分を含むものが想定されているといえる。
(イ)ここで、引用発明において、対向平板アンテナによる電磁波によって、「食物」の内部の水が加熱されることは当業者にとって明らかである(例えば、前記(2)イ(ウ)で摘示した文献には、発振器11に、金属線14と金属中空管13とを備えた同軸ケーブル12が接続され、金属線14はアンテナ16に接続され、金属中空管13の先端部は金属容器19に接続されて、アンテナ16と金属容器19との間で100KHz以上の電磁波を発生させることで、金属容器19の内部の液体を加熱するものが記載されている。そして、引用発明においては、「親水基の部分に電磁波が働き食用油中にて振動する」(【0078】)程度の強さの電磁波が「食物」に対して照射されているのであるから、「食物」の内部に電磁波が侵入して、「食物」の内部の水が振動して、加熱されることは明らかであり、引用発明においては、電磁波によって「食物」の内部の水の温度が上昇するものであるといえる。)。
(ウ)そして、水の温度が上昇すると界面張力が低下することは、当業者にとって周知である(たとえば、(2)イ(エ)で摘示した文献には、「水の表面張力は、20~100℃の範囲でγ=a-bt-ct2の式で近似されることが知られている(ただし、t:液温度(℃)、a:76.24、b:0.1379、c:3.124×10-4で、Wilhelmy法による)。」と記載されており、水の温度が上昇すると界面張力が低下することは、技術常識である。なお、「界面張力」と「表面張力」とは同義である(広辞苑第六版DVD-ROM版の「ひょうめん‐ちょうりょく【表面張力】」の項には、「液体または固体の表面が、自ら収縮してできるだけ小さな面積をとろうとする力。表面に沿って働く。界面張力。」と記載されている。)。
(エ)そうすると、当業者は、引用発明において、電磁波によって、「食物」内部の水の温度が上昇し、水の界面張力が低下するものであることを認識するというべきである。
そして、電磁波は、「駆動部」及び「周波数制御部」によって、その強さや周波数が制御され、電磁波の強さや周波数によって、「食物」の内部の水の温度の上昇の程度が異なるものであることは明らかであるから、引用発明のフライヤーを、「食物の内部に存在する水分の界面張力を低下させた状態とする水分制御装置」としても用いることは、当業者は容易に想到し得ることである。
(オ)以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び本願の優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(6)請求人の主張に対して
請求人は、審判請求書において、「また、本願発明1は発明特定事項(A)を有することより次の(イ)~(ハ)のような優れた効果を奏します。
(イ)界面張力と電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値と関連性を利用して、電極に印加される交流電圧の周波数及び電圧値を調整することにより、界面張力の最適化が可能となる。
(ロ)水分制御装置の効果と、界面張力との関係が明らかになったことにより、フライヤーの場合だけは無く、他の適用対象、例えば保冷や保蔵等に用いる場合にも、界面張力との関係からその効果の最適化を図ることが可能となる。
(ハ)界面張力の測定は比較的容易であるため、本実施形態の水分制御装置1の最適化を、界面張力との関係から分析できることにより、電極に印加する電圧の制御をより適切に、かつ、より容易に行うことができる。」と主張している。
しかしながら、本件補正発明においては、界面張力の最適化をはかる構成までも特定されているとはいえず、このような効果の主張は、特許請求の範囲の記載に基づいた主張とはいえないから、採用できない。
(7)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年5月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年3月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし54に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の概要
令和3年1月29日付の拒絶査定(以下「原査定」という。)は、次の理由を含むものである。
本願発明は、本願の優先日前に頒布された引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3及びその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「電極に対向して配置された物質の内部に存在する水分」の状態について、選択肢を付加し、「制御」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3(3)、(4)に記載したとおり、引用例3及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-005843