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特許拒絶査定不服審判

2022-002646

巻線ヘッドを有する回転電気機械

審判番号
2022-002646
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-102568外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年02月22日
審決日
2023年09月25日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2017-102568「巻線ヘッドを有する回転電気機械」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-212874〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

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この出願は、平成29年5月4日(パリ条約による優先権主張 2016年(平成28年)5月25日、仏国)の出願であって、令和3年3月15日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年9月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、令和3年10月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものであり、その後、当審において、令和4年10月24日付けで拒絶理由が通知され、令和5年4月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明

この出願の請求項に係る発明は、令和5年4月25日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「軸Xを有する回転電気機械(100)であって、前記回転電気機械は、前記軸Xの方向に並ぶ、前方部品(16)と、中央部分と、後方部品(17)とを含むケース(1)を備え、
前記回転電気機械は、
‐冷却空気が流れることを可能とするファンブレード(26)を設けられた2つの軸方向端面(81、82)を備えた、前記軸Xを有するロータ(2)であって、前記2つの軸方向端面(81、82)は、前記回転電気機械の前記前方部品(16)の側と前記後方部品(17)の側とにそれぞれ位置している、ロータ(2)と、
‐スロット(93)を有するとともに前記ロータ(2)を取り囲むステータ本体(4)を備えたステータ(50)であって、前記ステータ(50)は前記スロット(93)に設置された巻線(5)を備え、前記巻線(5)は、前記ステータ本体(4)の軸方向端部から前記回転電気機械の前記前方部品(16)に向かって延在する前方巻線ヘッド(51)と、前記ステータ本体(4)の他の軸方向端部から前記回転電気機械の前記後方部品(17)に向かって延在する後方巻線ヘッド(53)とを形成する、ステータ(50)と、
続きを表示(全11行)
を備え、
前記ケース(1)に前記ロータと前記ステータとが配設され、前記中央部分は前記ステータ本体(4)を支持し、
前記前方部品(16)及び前記後方部品(17)は、前記中央部分に組付けられ、
前記前方巻線ヘッド(51)が前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)の前記ファンブレード(26)を前記軸Xに対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記後方巻線ヘッド(53)が前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)の前記ファンブレード(26)を前記軸Xに対して垂直な方向に沿って部分的に覆うようにして、前記スロットに設置された前記巻線(5)は前記ステータ本体(4)に対してオフセットされ、
前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)に設けられた前記ファンブレード(26)の前記軸Xに沿った寸法は、前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)に設けられた前記ファンブレード(26)の前記軸Xに沿った寸法よりも小さく、
前記ステータ本体(4)の前記前方部品(16)側の軸方向端部から前記前方巻線ヘッド(51)の前記前方部品(16)側の端までの前記前方巻線ヘッドの高さ(Ha)は、前記ステータ本体(4)の前記後方部品(17)側の軸方向端部から前記後方巻線ヘッドの前記後方部品(17)側の端までの高さ(Hb)よりも大きい、
ことを特徴とする回転電気機械。」

第3 拒絶の理由

令和4年10月24日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、理由3(進歩性)において、請求項1に係る発明に対して通知したものの概略は、次のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2~引用文献5に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平7-303351号公報
引用文献2:欧州特許出願公開第0998011号明細書
引用文献3:特開2000-102215号公報
引用文献4:特開昭60-187241号公報
引用文献5:米国特許出願公開第2015/0194861号明細書

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載及び引用発明

(1)当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様である。)。

ア「【0015】

【実施例】本発明の実施例を図1乃至5に基づいて説明する。図1は,本発明による車両用交流発電機の第1実施例を示す断面図である。発電機外郭は一対のアルミダイカスト製のプーリ側ハウジング1と反プーリ側ハウジング2から成り,複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結される。前記プーリ側ハウジング1には,吸入窓HIb,吐出窓HOdが設けられる。前記反プーリ側ハウジング2には,吸入窓HIa,HIc及び吐出窓HOa,HOb,HOcが設けられる。又,回転軸9を回転自在に支承するべく,前記プーリ側ハウジング1にはプーリ側単列ボール軸受10が,前記反プーリ側ハウジング2には,反プーリ側単列ボール軸受11が,それぞれボス1a,2aにかしめ及び圧入にて固定される。前記プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11には,エーテル系基油とウレア系増ちょう剤と有機アンチモン化合物及び有機モリブデン化合物を含有する潤滑グリース10a,11aが封入されている。前記回転軸9には,界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア(界磁鉄心)6が圧入固定されて回転子31を構成し,該ポールコア6のプーリ側端面及び反プーリ側端面に冷却ファン8及び8’がそれぞれ溶接によって固定され,前記回転子31の回転により冷却風Wが発生する。

【0016】プーリ側ハウジング1の内周面には,ポールコア6を囲むように固定子巻線4が巻回された固定子コア(電機子鉄心)5が圧入固定されて固定子32を構成する。前記反プーリ側ハウジング2内部には,整流装置16,ブラシ装置15及び電圧調整器(図示せず)等の電気部品が収納される。前記プーリ側単列ボール軸受10の内輪嵌合孔及び前記反プーリ側単列ボール軸受11の内輪嵌合孔に前記回転軸9が圧入固定され,該プーリ側単列ボール軸受10は前記プーリ側ハウジング1の前端に突設する前記ボス1a内側にかしめ固定されると共に,該ボス1a外側にプーリ3が回転自在に挿入される。そして,前記プーリ3の内側座面は前記プーリ側単列ボール軸受10の内輪端面に圧接するように,プーリロックナット12にて前記回転軸9に強固に固定され,プーリ部寸法L3と軸受部寸法L4とは寸法L1の差を持たせ一致しないようにしている。以上により,前記プーリと前記プーリ側単列ボール軸受が軸方向に重なりをもち(該軸受が該プーリに内包され),プーリ荷重中心とプーリ側単列ボール軸受の軸方向中心が一致しない発電機を構成する。」

イ「【0018】図2は,本発明による車両用交流発電機の第2実施例を示す断面図である。第2実施例は第1実施例の構成の上に,前記固定子32に図5(b)に示す電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回される。この短節多相巻線4は集中巻きにて巻回されている。そして,冷却フアン部寸法L5は固定子巻線部寸法L6よりも小さい。以上により,前記プーリ側冷却ファンのプーリ側の端部が前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4より反プーリ側へ位置する発電機を構成する。

【0019】この構成により、巻線の相間ラップがなくなり固定子コア5から巻線4の軸方向突出量が低減され,且つ巻線全長が減り電気抵抗も低減される。これは固定子の発熱量低減に帰結し,発電機の運転温度を低減し固定子の必要冷却風量を低減させる。発電機の運転温度低減により,熱膨張差で発生する軸受11とボス2aとの隙間が低減するため,回転子の回転支承が高精度になり,クリープを引起こす回転荷重を低減でき、同時に軸受10,11のグリ-スの熱劣化を防止できる。また、固定子5の必要冷却風量の低減により,軸方向に突出する固定子巻線と対向する冷却ファン8の軸方向長さを短縮できる。従って,プーリ側軸受10の耐久性,反プーリ側軸受11のクリープ防止,軸長短縮による小型化が達成できる。」

ウ 図1、図2、図5には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000001.jpg]

[図:0001407051000002.jpg]

[図:0001407051000003.jpg]

エ 前記イによると、第2実施例は、第1実施例の構成の上に、固定子32に電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回されたものであるから、第2実施例の構成は、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4などの前記イに明示された構成を除き、第1実施例の構成と同様といえる。したがって、第1実施例について記載された前記アも踏まえると、第2実施例として記載された車両用交流発電機は、回転軸9を有し、回転軸9を回転自在に支承するべく、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11がそれぞれ固定されたプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2から成る発電機外郭を備えていることが把握できる。

オ 前記アも踏まえると、第2実施例の回転子31は、冷却風Wを発生させる冷却ファン8及び冷却ファン8’がそれぞれ溶接によって固定されるランデル型ポールコア6のプーリ側端面及び反プーリ側端面を備え、回転軸9に界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア6を圧入固定して構成されるものであることが把握できる。

また、第2実施例の車両用交流発電機の断面図である前記ウの図2によると、該プーリ側端面及び該反プーリ側端面は、車両用交流発電機のプーリ側ハウジング1の側と反プーリ側ハウジング2の側とにそれぞれ位置していることが把握できる。

カ 第2実施例に係る前記ウの図5(b)によると、固定子コア5がスロットを有することは明らかであり、前記イも踏まえると、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4は、スロットに巻回されていることが把握できる。

また、前記ウの図2によると、固定子コア5は、回転子31を取り囲んでいることが把握でき(なお、図2には、固定子コア5に対応する符号「5」は示されていないが、第1実施例の車両用交流発電機の断面図である図1に示された符号「5」を参照すれば、図2においても固定子コア5を把握できる。)、さらに、前記イ、前記ウの図2及び図5(b)によると、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4は、固定子コア5の軸方向の端部からプーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部と、固定子コア5の他の軸方向の端部から反プーリ側ハウジング2に向かって突出する反プーリ側の固定子巻線部とを形成していることが把握できる。

キ 前記エに示したように、発電機外郭を構成するプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2にそれぞれ固定されたプーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11により、回転軸9を回転自在に支承することが把握できるから、発電機外郭のプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2に、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11を介して、回転軸9にランデル型ポールコア6を圧入固定して構成される回転子31(前記オ参照。)が支承されているといえる。

また、前記アに、固定子巻線4が巻回された固定子コア5が、プーリ側ハウジング1の内周面に圧入固定されることが記載されていることを踏まえると、第2実施例の車両用交流発電機においても、発電機外郭のプーリ側ハウジング1に、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回された固定子コア5が圧入固定されていることが把握できる。

さらに、前記アを踏まえると、第2実施例の車両用交流発電機においても、プーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2は、複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結されていることが把握できる。

ク 前記イ、前記ウの図2によると、ランデル型ポールコア6のプーリ側端面に固定される冷却ファン8の冷却ファン部寸法L5は、固定子コア5の軸方向の端部からプーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が、ランデル型ポールコア6のプーリ側端面に固定される冷却ファン8を回転軸9に対して垂直な方向に沿って完全に覆っていることが把握でき、同様に、反プーリ側の固定子巻線部が、ランデル型ポールコア6の反プーリ側端面に固定される冷却ファン8’を回転軸9に対して垂直な方向に沿って部分的に覆っていることが把握できる。

さらに、前記ウの図2によると、ランデル型ポールコア6のプーリ側端面に固定される冷却ファン8の回転軸9に沿った寸法は、ランデル型ポールコア6の反プーリ側端面に固定される冷却ファン8’の回転軸9に沿った寸法よりも小さいことが把握できる。

(2)引用文献1の前記ア~クの記載及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、第2実施例として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「回転軸9を有する車両用交流発電機であって、前記車両用交流発電機は、前記回転軸9を回転自在に支承するべく、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11がそれぞれ固定されたプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2から成る発電機外郭を備え、
前記車両用交流発電機は、
-冷却風Wを発生させる冷却ファン8及び冷却ファン8’がそれぞれ溶接によって固定されるランデル型ポールコア6のプーリ側端面及び反プーリ側端面を備えた、前記回転軸9に界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア6を圧入固定して構成される回転子31であって、前記プーリ側端面及び前記反プーリ側端面は、前記車両用交流発電機の前記プーリ側ハウジング1の側と前記反プーリ側ハウジング2の側とにそれぞれ位置している、回転子31と、
-スロットを有するとともに前記回転子31を取り囲む固定子コア5と、前記スロットに巻回された電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4を備え、前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4は、前記固定子コア5の軸方向の端部から前記プーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部と、前記固定子コア5の他の軸方向の端部から前記反プーリ側ハウジング2に向かって突出する反プーリ側の固定子巻線部とを形成する、前記固定子コア5及び前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4と、
を備え、
前記発電機外郭の前記プーリ側ハウジング1及び前記反プーリ側ハウジング2に、前記プーリ側単列ボール軸受10及び前記反プーリ側単列ボール軸受11を介して、前記回転子31が支承され、前記発電機外郭の前記プーリ側ハウジング1に、前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回された前記固定子コア5が圧入固定され、
前記プーリ側ハウジング1及び前記反プーリ側ハウジング2は、複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結され、
前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8の冷却ファン部寸法L5は、前記固定子コア5の軸方向の端部から前記プーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部寸法L6より小さく、前記プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記反プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って部分的に覆い、
前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8の前記回転軸9に沿った寸法は、前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’の前記回転軸9に沿った寸法よりも小さい、
車両用交流発電機。」

2 引用文献2の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「
[図:0001407051000004.jpg]
」[当審訳:[0001]本発明は、概して回転機械、特に自動車用オルタネータに関するものである。]
(2)「
[図:0001407051000005.jpg]
[図:0001407051000006.jpg]
」[当審訳:[0015]ステータのフレーム141は、従来の方法で鋼板を積層して作られており、複数の刻み目(図示せず)を有し、その中にステータコイルが巻かれる。従来の方法で、これらのコイルは、フレームの軸方向の両側に2つの延出ワイヤ、すなわち前部延出ワイヤ140および後部延出ワイヤ142を形成している。

[0016]これらの延出ワイヤがステータのフレーム141の中央横断面に対して非対称な形状を採用した場合、空気力学的由来の、オルタネータ全体のノイズ発出が顕著な規模で減少することが判明した。この現象を分析した結果、この延出ワイヤ140、142の非対称性により、12次高調波に対応するノイズ成分が著しく減少することが判明した。これは、低?中次数の高調波成分(12次を中次数とみなす)を低減すれば、人間の耳には特に敏感に全体のノイズを低減できることを完全に裏付けている。]

(3)「
[図:0001407051000007.jpg]
」[当審訳:[0017]本発明の好ましい実施形態によれば、この延出ワイヤの非対称性は、比較的コンパクトで剛性の高いコイル構造を、フレームに関して多少の軸方向の遊びを持たせつつ実現するために、ステータ巻線を通常の方法で巻くことにより実現され、また、次に、一方の側に位置する延出ワイヤに対して、したがって、反対側の延出ワイヤを含むコイル構造全体に対して、オルタネータの回転軸に平行な方向に移動の推力を与えることによって実現され、これによって、前記反対側に位置する延出ワイヤ、この場合、後部延出ワイヤ142は、前部延出ワイヤ140の前部側面との関係よりも、フレームの後部側面との関係において、さらに突出する。したがって、FIG.1は、この移動の後、フレーム141の後面に対する後部延出ワイヤ142の延長部(距離A)が、反対側の前部延出ワイヤの延長部(距離B)よりも長くなっていることを示している。

[0018]具体的には、距離Aと距離Bの差が4mm程度になるとノイズ低減の面で大きな成果が得られ始め、この差が8mm以上になると特に顕著なノイズ低減効果が得られる。これは、2mmと4mmの間の距離でのコイル構造の実質的な移動に相当する。]

(4)「
[図:0001407051000008.jpg]
」[当審訳:[0019]また、コイル構造を反対方向、すなわち機械の前方側(プーリー側)に移動させることでも、興味深い結果が得られる。]

(5)FIG.1には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000009.jpg]

3 引用文献3の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は乗用車、トラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。」
(2)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点に鑑み、固定子巻線の冷却性向上とファン騒音低減を両立させ、小型・高出力で低騒音な車両用交流発電機を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明によれば、複数のスロットを持つ固定子鉄心と前記スロットに巻装され前記固定子鉄心の軸方向両端にコイルエンド群を形成する固定子巻線を備える固定子と、前記固定子の内周側に対向配置される磁極爪を持つ界磁鉄心と前記界磁鉄心の少なくとも一方の軸方向端部に配置される冷却ファンを備える回転子を有する車両用交流発電機において、前記冷却ファンの径方向外側に配置される前記コイルエンド群は、その軸方向高さの70%以上が径方向に関して前記冷却ファンと重複して配置されており、前記コイルエンド群の内部には、前記冷却ファンによる冷却風が通過する通風路が形成されていることを特徴としている。これにより、冷却ファンの回転による風はコイルエンド群の内部を広い範囲に渡って通過するので、冷却効率を高めることができ、且つ、コイルエンド群の内周面と冷却ファン外周との間に生じる圧力変動が抑制される。よって、固定子巻線の冷却性向上とファン騒音低減を達成できる。」

(3)「【0025】このように、両コイルエンド群31a、31bは、主として一定形状のコイルエンドを配列して構成される。しかも、周方向に関してほぼ一様の密度でコイルエンドを配置して構成されている。このため、周方向に関してコイルエンドの疎密がほとんどない。両コイルエンド群31a、31bの軸方向端部は、冷却ファン12、13の軸方向端部とほぼ一致している。そして、各コイルエンド群31a、31bの内周面の軸方向寸法のうち約80%は、その内周に配置された冷却ファン12、13と径方向に関して重複して配置されている。特に、この実施形態では、各コイルエンド群31a、31bの内周面の軸方向寸法のうち約80%は、その内周側に配置された冷却ファン12、13の最外径部分と、径方向に関して直接に対向している。しかも、冷却ファン12、13の最外径部分の辺は、そのほぼ全体がコイルエンド群31a、31bの内周面と対向している。このようなコイルエンド群と冷却ファンとの対向関係は、コイルエンド群の全周に渡って確保されている。このため、各コイルエンド群31a、31bの内周面のうち約80%の面積は、回転する冷却ファン12、13から遠心方向外側に送られる冷却風を直接に受ける。」

(4)「【0026】この実施形態では、コイルエンド群31aの軸方向寸法L1に対して冷却ファン13の最外径部分の軸方向寸法L2は約80%である。また、コイルエンド群31bの軸方向寸法L3に対して冷却ファン12の最外径部分の軸方向寸法L4は約80%である。
〔第一実施形態の作用効果〕図6は、本実施形態の固定子巻線の冷却性向上効果を示すグラフである。固定子巻線のコイルエンド群の内周面の冷却ファン対向部分の割合をパラメータとして固定子巻線の温度を抵抗法により測定した。固定子巻線のコイルエンド群の内周面の70%以上が冷却ファンに対向していれば、固定子巻線の温度が低く抑えられ、良好な冷却性が得られることが分かる。
【0027】図7は、本実施形態のファン騒音低減効果を示すグラフである。測定は無響室にておこない、車両用交流発電機のリア側端部から後方45度30cmの位置にマイクを設置し、無負荷状態にてオーバーオール値を測定した。本実施形態では、固定子巻線のコイルエンド群の内周面の80%が冷却ファンに対向しており、しかもコイルエンド群の各コイルエンド間には隙間が形成されているので、図6、図7に示すように、冷却性向上とファン騒音低減の両立を図ることができる。」

4 引用文献4の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「〔発明の利用分野〕
本発明は車輛用交流発電機に係り、特に周囲温度の高いエンジンルーム内に装着されるに好適な車輛用交流発電機に関する。」(第2ページ左上欄第5行~第8行)
(2)「次に本発明の特徴である電機子コイル5は、リヤブラケツト側のコイルエンド高さをH2とするならばフロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1はH2の約1.2倍であり、フロントブラケツト側にあつてはコイルエンドの直下に冷却フアンが位置し、リヤブラケツト側にあっては冷却フアンはコイルエンドの先端部に多少かかり、大部分はデイフユーザ17にかかるよう構成されている。
今図示しない内燃機関により、プーリ22が駆動され、回転軸1と共に回転磁極8が回転するとフロントブラケツト2側では冷却フアン15により外気が導入孔18から導入され、コイルエンド部全体を包み込む如く矢印方向にそつて流れ、排出孔20より排気される。又リヤブラケツト3側では冷却フアン16により外気が防塵カバー24の外気導入孔(図示せず)より導入され、半導体部品や刷子装置11の空間部をとおりその周囲を冷却すると共に導入孔19をとおしてコイルエンド部を冷却する。このときの風量はデイフユーザ17で整流され、デイフユーザ17の無い物に比較して約10%の増大となる。
次に上記構成において、コイルエンドの温度低下率〔I〕のコイルエンドの高さH1,H2の関係を第2図に基づいて説明するとH2/H1は、約1.2倍付近がフロント側風量減少率も小さく一番好適であるが、その範囲は1.1~1.35倍付近まで有効である。
しかしコイルエンド部の高さH1は過大に突出すると電機子コイル5の全長が長くなり、結果的に通気抵抗が増大し、発熱も増大するので好ましくない。
なお、前記デイフユーザはブラケツトの成形時に同時に成形するのが生産上から好ましく、更にはフロントブラケツト側に同様に設ければ、同様にフロント側の冷却風量も増大できる。
〔発明の効果〕
以上本発明によれば冷却性能の優れた車輛用発電機が容易に提供できる。」(第2ページ右下欄第14行~第3ページ右上欄第12行)

(3)第1図には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000010.jpg]

5 引用文献5の記載

当審拒絶理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、前記引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「[0001]The invention relates in particular to a rotary electrical machine, in particular an alternator or alternator-starter for a motor vehicle.」[当審訳:[0001]本発明は、特に、回転電気機械、特に自動車用のオルタネータ又はオルタネータスタータに関する。]

(2)「[0023]By means of the invention, it is possible to obtain a rotary electrical machine with improved performance, which can supply high output currents, whilst ensuring that the temperature of the rotor remains within the limits tolerated, as a result of the reinforced axial flow of air obtained by means of the aforementioned asymmetries.In particular, for the production of the rotor, the invention makes it possible to avoid having to use materials resistant to high temperatures, which are costly.」[当審訳:[0023]本発明によれば、上述の非対称性によって得られる強化された軸方向の空気流の結果として、ロータの温度が許容限度内に留まることを保証しながら、高い出力電流を供給することができる改善された性能を有する回転電気機械を得ることが可能である。特に、ロータの製造のために、本発明は、高価な高温に耐える材料を使用しなければならないことを回避することを可能にする。]

(3)「[0026]The presence of a plurality of asymmetries makes it possible to create an axial flow of air with an intensity which is satisfactory for the cooling.」[当審訳:[0026]複数の非対称性の存在は、冷却にとって満足できる強度を有する空気の軸方向の流れを作り出すことを可能にする。]

(4)「[0078]In the example described, the height Ha of the front chignon 5a, measured according to the axis of rotation X, is higher than that Hb of the rear chignon 5b.
[0079]The difference between the height Ha of the front chignon 5a and that Hb of the rear chignon 5b is at least 2.5 mm, and is for example 3 mm.
[0080]The front 16 and rear 17 bearings comprise substantially lateral front 50 and rear 51 openings for the passage of the air, in order to permit the cooling of the alternator by circulation of air generated by the rotation of a fan 23 on the front frontal surface of the rotor, and another fan 24 on the rear dorsal surface of the rotor, each fan being provided with a plurality of blades 26.
[0081]The front 50 and rear 51 lateral openings are opposite respectively front 5a and rear 5b chignons, the total surface area of the front openings 50 being smaller than the total surface area of the rear openings 51.
[0082]As a variant, in another embodiment of the invention, the surface area of the front openings 50 can be larger than that of the rear openings 51.
[0083]In the example described, the front opening surface area can be smaller than 90% of the rear opening level.
[0084]These asymmetries, i.e. the difference between Ha and Hb and the difference between the front and rear levels of opening, make it possible to generate a pressure difference between the front of the housing and the rear of the housing, which can generate a reinforced axial flow of air F which is substantially parallel to the axis of rotation, and circulates in the air gap E between the rotor and the stator, and between the inter-claw spaces of the magnet wheels, thus sweeping the winding of the rotor.」[当審訳:[0078]記載された例では、回転軸Xに従って測定された前部ヘアピース体5aの高さHaは、後部ヘアピース体5bの高さHbよりも高い。

[0079]前部ヘアピース体5aの高さHaおよび後部ヘアピース体5bの高さHbとの間の差は、少なくとも2.5mm、例えば3mmである。

[0080]前部ベアリング16および後部ベアリング17は、ロータの前部前面上のファン23およびロータの後部背面上の別のファン24の回転によって生成される空気の循環によってオルタネータの冷却を可能にするために、空気の通過のための実質的に横方向の前部開口50および後部開口51を備え、各ファンは複数のブレード26を備える。

[0081]前方開口部50および後方開口部51は、それぞれ前部ヘアピース体5aおよび後部ヘアピース体5bに対向しており、前方開口部50の総表面積は、後方開口部51の総表面積よりも小さい。

[0082]変形例として、本発明の別の実施形態では、前方開口部50の表面積は、後方開口部51の表面積よりも大きくてもよい。

[0083]記載された例では、前方開口部表面積は、後方開口部レベルの90%未満であり得る。

[0084]これらの非対称性、つまりHaとHbとの間の差、および開口の前方レベルと後方レベルとの間の差は、ハウジングの前方とハウジングの後方との間に圧力差を生成することを可能にし、これは、回転軸に実質的に平行であり、回転子と固定子との間、および磁石ホイールの爪間空間の間の空隙E内を循環する、強化された軸方向の空気流Fを生成することができ、したがって、回転子の巻線を掃引する。]

(5)Fig.1には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000011.jpg]

6 引用文献6の記載

この出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭51-50404号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「本発明は車輛用交流発電機に係り、特に自動車等のように耐振性が要求される車輌用交流発電機に関するものである。」(第1ページ右欄第8行~第10行)

(2)「以下本発明の実施例を図面に基き説明するならば、図において1は積層鋼板よりなる電機子鉄心で電機子コイル2を巻装して固定子を形成している。3は回転子で、対向する一対の爪形磁極31,32と継鉄33と界磁コイル34とから構成され回転軸4に嵌着されている。5は、導環51,52を嵌合したスリツプリングで前記回転子3と同様に回転軸4に嵌着される。6,7は夫々通風孔61,71を有するエンドカバーで軸受8,9を介して前記回転軸4を支承している。10は円筒状ケーシングで前記エンドカバー6,7間に位置し通しボルト11により加締固定されている。12はエンジン側取付金具13に対応する取付台である。Fは冷却ファンである。」(第2ページ右上欄第5行~第18行)

(3)「すなわち溶接部Pは電機子鉄心1、円筒状ケーシング10、取付台12を一体化する数ケ所および単に電機子鉄心1と円筒状ケーンング10を一体化するように任意の数ケ所を溶接することにより一体化している。」(第2ページ右下欄第4行~第8行)

(4)「又夫々構成部品である電機子鉄心、円筒状ケーシング、取付台が一体に溶接されるため固定子側が剛体となり、電機子鉄心の弛みもなくなりエンジンから伝達されてくる振動エネルギーに対して過大な共振を避けることができるため鋼板製品でも安定したものとなる。」(第3ページ左上欄第15行~右上欄第1行)

(5)第1図には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000012.jpg]

7 引用文献7の記載

この出願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-243658号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車などの車両に搭載されるオルタネータに関し、特に液冷式冷却方法にかかわる。」
(2)「【0026】固定子鉄心7の外周にはハウジング10が配置されており、ハウジング10内には、冷却水流路17が存在する。固定子鉄心7はハウジング10に圧入され、固定子鉄心7外周部とハウジング10内周部とは接触している。
【0027】固定子鉄心7が支持されたハウジング10は、前ブラケット9と後ブラケット18によって篏合支持される。また、前ブラケット9に設けられた前軸受11と、後ブラケット18に設けられた後軸受12とにより、回転軸1は回転可能な状態に支持される構成となっている。」

(3)「【0049】以上のように本発明における液冷式オルタネータは構成される。このときハウジング10と前ブラケット9が一体となっていても良い。またハウジング10と後ブラケット18が一体となっていても良い。また前ブラケットと固定ディスク20aが一体となっていても良く、後ブラケット18と固定ディスク20bが一体となっていても良い。また、固定子21と回転ディスク19a,19bが一体となっていても良い。」

(4)図1には、次の事項が図示されている。

[図:0001407051000013.jpg]

第5 対比・判断

1 対比

以下、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「車両用交流発電機」は、本願発明の「回転電気機械(100)」あるいは「回転電気機械」に相当し、引用発明の「回転子31」は、本願発明の「ロータ(2)」に相当する。

また、引用発明の「回転軸9」は、ランデル型ポールコア6が圧入固定されて回転子31を構成するものであり、さらに、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11により、回転自在に支承されるものであるから、該回転軸9における軸方向に延びる中心線は、回転子31の軸、あるいは車両用交流発電機の軸ということができる。すると、引用発明の「回転軸9を有する車両用交流発電機」、「前記回転軸9に界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア6を圧入固定して構成される回転子31」、「前記回転軸9に対して垂直な方向」及び「前記回転軸9に沿った寸法」は、それぞれ本願発明の「軸Xを有する回転電気機械(100)」、「前記軸Xを有するロータ(2)」、「前記軸Xに対して垂直な方向」及び「前記軸Xに沿った寸法」に相当する。

さらに、引用発明の「プーリ側ハウジング1」、「反プーリ側ハウジング2」及び「発電機外郭」は、それぞれ本願発明の「前方部品(16)」、「後方部品(17)」及び「ケース(1)」に相当し、引用発明の「プーリ側ハウジング1」及び「反プーリ側ハウジング2」は、それぞれに固定されたプーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11により、回転軸9を回転自在に支承するものであるから、回転軸9の前記中心線の方向に並んでいるといえる。すると、引用発明の「前記回転軸9を回転自在に支承するべく、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11がそれぞれ固定されたプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2から成る発電機外郭を備え」るという事項と、本願発明の「前記軸Xの方向に並ぶ、前方部品(16)と、中央部分と、後方部品(17)とを含むケース(1)を備え」るという事項とは、「前記軸Xの方向に並ぶ、前方部品と、後方部品とを含むケースを備え」る点において共通する。

(2)引用発明の「冷却風Wを発生させる」という事項は、本願発明の「冷却空気が流れることを可能とする」という事項に相当し、引用発明の「冷却ファン8」及び「冷却ファン8’」は、いずれも本願発明の「ファンブレード(26)」に相当する。また、引用発明の「プーリ側端面」及び「反プーリ側端面」は、冷却ファン8及び冷却ファン8’がそれぞれ溶接によって固定されるランデル型ポールコア6の端面であり、引用文献1の図2(前記第4 1(1)ウ参照。)によると、その法線が回転軸9の前記中心線の方向に延びる端面であるから、いずれも本願発明の「軸方向端面(81、82)」に相当する。

すると、引用発明の「冷却風Wを発生させる冷却ファン8及び冷却ファン8’がそれぞれ溶接によって固定されるランデル型ポールコア6のプーリ側端面及び反プーリ側端面を備えた、前記回転軸9に界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア6を圧入固定して構成される回転子31であって、前記プーリ側端面及び前記反プーリ側端面は、前記車両用交流発電機の前記プーリ側ハウジング1の側と前記反プーリ側ハウジング2の側とにそれぞれ位置している、回転子31」は、本願発明の「冷却空気が流れることを可能とするファンブレード(26)を設けられた2つの軸方向端面(81、82)を備えた、前記軸Xを有するロータ(2)であって、前記2つの軸方向端面(81、82)は、前記回転電気機械の前記前方部品(16)の側と前記後方部品(17)の側とにそれぞれ位置している、ロータ(2)」に相当する。

(3)引用発明の「スロット」、「固定子コア5」、「巻回」、「電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4」、「固定子コア5の軸方向の端部」、「突出」、「プーリ側の固定子巻線部」、「固定子コア5の他の軸方向の端部」及び「反プーリ側の固定子巻線部」は、それぞれ本願発明の「スロット(93)」、「ステータ本体(4)」、「設置」、「巻線(5)」、「ステータ本体(4)の軸方向端部」、「延在」、「前方巻線ヘッド(51)」、「ステータ本体(4)の他の軸方向端部」及び「後方巻線ヘッド(53)」に相当し、引用発明の「固定子コア5」と「電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4」とを合わせたものは、本願発明の「ステータ(50)」に相当する。

すると、引用発明の「スロットを有するとともに前記回転子31を取り囲む固定子コア5と、前記スロットに巻回された電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4を備え、前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4は、前記固定子コア5の軸方向の端部から前記プーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部と、前記固定子コア5の他の軸方向の端部から前記反プーリ側ハウジング2に向かって突出する反プーリ側の固定子巻線部とを形成する、前記固定子コア5及び前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4」は、本願発明の「スロット(93)を有するとともに前記ロータ(2)を取り囲むステータ本体(4)を備えたステータ(50)であって、前記ステータ(50)は前記スロット(93)に設置された巻線(5)を備え、前記巻線(5)は、前記ステータ本体(4)の軸方向端部から前記回転電気機械の前記前方部品(16)に向かって延在する前方巻線ヘッド(51)と、前記ステータ本体(4)の他の軸方向端部から前記回転電気機械の前記後方部品(17)に向かって延在する後方巻線ヘッド(53)とを形成する、ステータ(50)」に相当する。

(4)引用発明の「回転子31」は、発電機外郭のプーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2に、プーリ側単列ボール軸受10及び反プーリ側単列ボール軸受11を介して、支承されるから、発電機外郭に配設されているといえる。また、引用発明の「電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回された前記固定子コア5」は、発電機外郭のプーリ側ハウジング1に圧入固定されるから、「電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4」及び「固定子コア5」は、発電機外郭に配設されているといえ、「固定子コア5」は、プーリ側ハウジング1に支持されているといえる。

すると、引用発明の「前記発電機外郭の前記プーリ側ハウジング1及び前記反プーリ側ハウジング2に、前記プーリ側単列ボール軸受10及び前記反プーリ側単列ボール軸受11を介して、前記回転子31が支承され、前記発電機外郭の前記プーリ側ハウジング1に、前記電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が巻回された前記固定子コア5が圧入固定され、前記プーリ側ハウジング1及び前記反プーリ側ハウジング2は、複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結され」るという事項と、本願発明の「前記ケース(1)に前記ロータと前記ステータとが配設され、前記中央部分は前記ステータ本体(4)を支持し、前記前方部品(16)及び前記後方部品(17)は、前記中央部分に組付けられ」るという事項とは、「前記ケースに前記ロータと前記ステータとが配設され、前記ケースを構成する部材は前記ステータ本体を支持し、前記前方部品及び前記後方部品は、組付けられ」るという点において共通する。

(5)引用発明の「前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8」は、本願発明の「前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)の前記ファンブレード(26)」あるいは「前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)に設けられた前記ファンブレード(26)」に相当する。また、引用発明の「前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’」は、本願発明の「前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)の前記ファンブレード(26)」あるいは「前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)に設けられた前記ファンブレード(26)」に相当する。

すると、引用発明の「前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8の冷却ファン部寸法L5は、前記固定子コア5の軸方向の端部から前記プーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部寸法L6より小さく、前記プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記反プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って部分的に覆」うという事項と、本願発明の「前記前方巻線ヘッド(51)が前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)の前記ファンブレード(26)を前記軸Xに対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記後方巻線ヘッド(53)が前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)の前記ファンブレード(26)を前記軸Xに対して垂直な方向に沿って部分的に覆うようにして、前記スロットに設置された前記巻線(5)は前記ステータ本体(4)に対してオフセットされ」るという事項とは、「前記前方巻線ヘッドが前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面の前記ファンブレードを前記軸Xに対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記後方巻線ヘッドが前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面の前記ファンブレードを前記軸Xに対して垂直な方向に沿って部分的に覆うように」する点において共通する。

そして、引用発明の「前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8の前記回転軸9に沿った寸法は、前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’の前記回転軸9に沿った寸法よりも小さい」という事項は、本願発明の「前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面(81)に設けられた前記ファンブレード(26)の前記軸Xに沿った寸法は、前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面(82)に設けられた前記ファンブレード(26)の前記軸Xに沿った寸法よりも小さ」いという事項に相当する。

(6)そうすると、本願発明と引用発明とは、

「軸Xを有する回転電気機械であって、前記回転電気機械は、前記軸Xの方向に並ぶ、前方部品と、後方部品とを含むケースを備え、
前記回転電気機械は、
‐冷却空気が流れることを可能とするファンブレードを設けられた2つの軸方向端面を備えた、前記軸Xを有するロータであって、前記2つの軸方向端面は、前記回転電気機械の前記前方部品の側と前記後方部品の側とにそれぞれ位置している、ロータと、
‐スロットを有するとともに前記ロータを取り囲むステータ本体を備えたステータであって、前記ステータは前記スロットに設置された巻線を備え、前記巻線は、前記ステータ本体の軸方向端部から前記回転電気機械の前記前方部品に向かって延在する前方巻線ヘッドと、前記ステータ本体の他の軸方向端部から前記回転電気機械の前記後方部品に向かって延在する後方巻線ヘッドとを形成する、ステータと、
を備え、
前記ケースに前記ロータと前記ステータとが配設され、前記ケースを構成する部材は前記ステータ本体を支持し、
前記前方部品及び前記後方部品は、組付けられ
前記前方巻線ヘッドが前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面の前記ファンブレードを前記軸Xに対して垂直な方向に沿って完全に覆いつつ、前記後方巻線ヘッドが前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面の前記ファンブレードを前記軸Xに対して垂直な方向に沿って部分的に覆うようにし、
前記回転電気機械の前側に位置する前記軸方向端面に設けられた前記ファンブレードの前記軸Xに沿った寸法は、前記回転電気機械の後側に位置する前記軸方向端面に設けられた前記ファンブレードの前記軸Xに沿った寸法よりも小さい、
回転電気機械。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

ケースについて、本願発明は、「中央部分」を備え、「前記中央部分は前記ステータ本体(4)を支持し」、「前記前方部品(16)及び前記後方部品(17)は、前記中央部分に組付けられ」るのに対し、引用発明は、プーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2から成り、プーリ側ハウジング1に固定子コア5が圧入固定され、プーリ側ハウジング1及び反プーリ側ハウジング2は、複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結されるものであり、中央部分を備えない点。

<相違点2>

本願発明は、「前記スロットに設置された前記巻線(5)は前記ステータ本体(4)に対してオフセットされ」、「前記ステータ本体(4)の前記前方部品(16)側の軸方向端部から前記前方巻線ヘッド(51)の前記前方部品(16)側の端までの前記前方巻線ヘッドの高さ(Ha)は、前記ステータ本体(4)の前記後方部品(17)側の軸方向端部から前記後方巻線ヘッドの前記後方部品(17)側の端までの高さ(Hb)よりも大きい」のに対し、引用発明は、スロットに巻回された電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が、固定子コア5の軸方向の端部からプーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部と、固定子コア5の他の軸方向の端部から反プーリ側ハウジング2に向かって突出する反プーリ側の固定子巻線部とを形成するものの、該電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4が固定子コア5に対してオフセットされているか否か明らかでなく、プーリ側の固定子巻線部と反プーリ側の固定子巻線部との寸法関係も明らかでない点。

2 判断

(1)相違点について

以下、<相違点1>、<相違点2>について検討する。

ア <相違点1>について

引用発明の発電機外郭は、プーリ側単列ボール軸受10及び固定子コア5が固定されたプーリ側ハウジング1と、反プーリ側単列ボール軸受11が固定された反プーリ側ハウジング2の2つの部材から成るものであるが、車両用交流発電機を実際に製造するにあたり、発電機外郭をどのように分割し、いくつの部材で構成するかは、必要とされる車両用交流発電機の大きさや、加工、組立ての容易性、仕様変更の可能性等を考慮の上、当業者が任意に設計し得る事項である。

また、回転電機機械のケースを、引用発明のように2つの部材で構成することの他、軸受けがそれぞれ固定される2つの部材と、これらの部材の中間に組み付けられ固定子コアが固定される部材とから成る3つの部材で構成することも、例えば、引用文献6(前記第4 6(1)~(5)参照。)及び引用文献7(前記第4 7(1)~(4)参照。)等に記載されているようにこの出願の優先日前より周知の事項である。すると、引用発明の発電機外郭を、前記周知の事項にならい、3つの部材で構成し、プーリ側単列ボール軸受10が固定されるプーリ側ハウジング1と、反プーリ側単列ボール軸受11が固定される反プーリ側ハウジング2の間に、固定子コア5を固定する別の部材を組み付け、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることに格別の困難性はない。

イ <相違点2>について

(ア)引用文献2には、回転機械、特に自動車用オルタネータにおいて(前記第4 2(1)参照。)、ステータのフレーム141の中に巻かれるステータコイルの前部延出ワイヤ140及び後部延出ワイヤ142を、前記フレーム141の中央横断面に対して非対称な形状とすることにより、空気力学的由来のオルタネータ全体のノイズ(12次高調波に対応するノイズ成分)を減少させることができる点(前記第4 2(2)参照。)が記載されている。そして、実施形態として、後部延出ワイヤ142の延長部(距離A)を、反対側の前部延出ワイヤ140の延長部(距離B)よりも長くすることが記載されているが(前記第4 2(3)及び(5)参照。)、このコイル構造を反対としてもよいこと、つまり前部延出ワイヤ140の延長部(距離B)を、後部延出ワイヤ142の延長部(距離A)よりも長くしてもよいことが示されている(前記第4 2(4)参照。)。

そして、車両用の交流発電機の技術分野において、騒音を低減するという課題が、例えば、引用文献3(前記第4 3(1)、(2)、(4)参照。)等に記載されているようにこの出願の優先日前より周知の課題であることを踏まえると、車両用交流発電機についての引用発明において、前記周知の課題を解決するために、自動車用オルタネータ(車両用交流発電機)のノイズを減少させる引用文献2に記載された事項(前部延出ワイヤ140及び後部延出ワイヤ142を、フレーム141の中央横断面に対して非対称な形状とすること)を適用する動機はあるといえ、このような適用は当業者が容易に想到し得たものである。

また、引用発明の「前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8の冷却ファン部寸法L5は、前記固定子コア5の軸方向の端部から前記プーリ側ハウジング1に向かって突出するプーリ側の固定子巻線部寸法L6より小さく、前記プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って完全に覆」うという構成が、引用文献1の段落【0018】、【0019】(前記第4 1(1)イ参照。)に記載された、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4を集中巻きにて巻回することにより、該巻線4の固定子コア5からの軸方向突出量が低減されるとともに、該巻線4の全長が減り電気抵抗が低減することで固定子の発熱量が低減し、固定子の冷却に必要な風量が低減し、冷却ファン8の軸方向長さが短縮されるため、軸長短縮による小型化を達成できるという技術思想に対応するものであることや、引用発明の「前記反プーリ側の固定子巻線部が、前記ランデル型ポールコア6の前記反プーリ側端面に固定される前記冷却ファン8’を前記回転軸9に対して垂直な方向に沿って部分的に覆」うという構成が、車両用の交流発電機において、冷却ファンからステータのコイルエンドに直接冷却風を送るべく、該冷却ファンを該コイルエンドと対向させる一般的な配置を示すものであること(例えば、引用文献3についての前記第4 3(3)参照。)を踏まえると、前記したように、引用発明において、騒音を低減させるべく、引用文献2に記載された事項(前部延出ワイヤ140及び後部延出ワイヤ142を、フレーム141の中央横断面に対して非対称な形状とすること)を適用するにあたり、引用発明の前記技術思想に反しないように、前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8を完全に覆う構成を維持でき、かつ、前記した一般的な配置である、反プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8’を部分的に覆う構成を維持できる範囲で、プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法と、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法とを非対称とすることは当業者が当然に考慮する事項である。そして、プーリ側の固定子巻線部又は反プーリ側の固定子巻線部の寸法をより長くして非対称にすると、電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4の全長が長くなるから、引用発明の前記技術思想に反することとなり、プーリ側の固定子巻線部の寸法をより短くして非対称にすると、引用発明の前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さいという構成を維持し難くなることを踏まえると、反プーリ側の固定子巻線部の寸法を、冷却ファン8’を部分的に覆う構成を維持できる程度に短くすることで、プーリ側の固定子巻線部の寸法と、反プーリ側の固定子巻線部の寸法とを非対称なものとし、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることに格別の困難性はない。

(イ)また、引用文献4には、前記第4 4(1)~(3)によると、車輌用交流発電機において、冷却性能を優れたものとするために、フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1と、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2との関係を好適化し、フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1を、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2の約1.2倍付近とすることが記載されている。

そして、引用発明は、冷却風Wを発生させる冷却ファン8及び冷却ファン8’を備えることからみて、その冷却性能を優れたものにするという課題を当然に内在しているものであり、車両用交流発電機についての引用発明において、前記内在する課題を解決するために、車輌用交流発電機(車両用交流発電機)の冷却性能を優れたものにする引用文献4に記載された事項(フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1と、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2との関係を好適化し、フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1を、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2の約1.2倍付近とすること)を適用する動機はあるといえ、このような適用は当業者が容易に想到し得たものである。

また、前記(ア)で示したように、引用発明のプーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法と、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法とは、引用発明の前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8を完全に覆う構成、及び反プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8’を部分的に覆う構成を維持できる範囲で調整されるべきものであることや、プーリ側の固定子巻線部の寸法をより長くすると、軸方向突出量が増加するとともに、巻線4の全長が長くなり、引用発明の前記技術思想に反することになることを踏まえると、前記したように、引用発明において、冷却性能を優れたものにするべく、引用文献4に記載された事項(フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1と、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2との関係を好適化し、フロントブラケツト側のコイルエンドの高さH1を、リヤブラケツト側のコイルエンドの高さH2の約1.2倍付近とすること)を適用し、プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法と、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法との関係を好適化するにあたり、前者が後者の約1.2倍付近という事項を参考に、前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8を完全に覆いつつ、反プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8’を部分的に覆った状態を維持できる範囲で調整し、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法を、プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法より短くし、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることに格別の困難性はない。

(ウ)さらに、引用文献5には、前記第4 5(1)~(5)によると、自動車用のオルタネータにおいて、ハウジングの前方とハウジングの後方との間に圧力差を生成して、回転子と固定子との間等に軸方向の空気流Fを生成することにより、回転子の巻線を掃引し冷却するために、回転軸Xに沿った前部ヘアピース体5aの高さHaを、後部ヘアピース体5bの高さHbよりも高くすることが記載されている。

そして、引用発明は、冷却風Wを発生させる冷却ファン8及び冷却ファン8’を備えること、界磁巻線7が巻装されたランデル型ポールコア6を含む回転子31を備えることからみて、回転子31の界磁巻線7を冷却するという課題を当然に内在しているものであり、車両用交流発電機についての引用発明において、前記内在する課題を解決するために、自動車用のオルタネータ(車両用交流発電機)の回転子の巻線を冷却する引用文献5に記載された事項(回転軸Xに沿った前部ヘアピース体5aの高さHaを、後部ヘアピース体5bの高さHbよりも高くすること)を適用する動機はあるといえ、このような適用は当業者が容易に想到し得たものである。

また、前記(ア)で示したように、引用発明のプーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法と、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法とは、引用発明の前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8を完全に覆う構成、及び反プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8’を部分的に覆う構成を維持できる範囲で調整されるべきものであることや、プーリ側の固定子巻線部の寸法をより長くすると、軸方向突出量が増加するとともに、巻線4の全長が長くなり、引用発明の前記技術思想に反することになることを踏まえると、前記したように、引用発明において、回転子の巻線を冷却するべく、引用文献5に記載された事項(回転軸Xに沿った前部ヘアピース体5aの高さHaを、後部ヘアピース体5bの高さHbよりも高くすること)を適用するにあたり、前記冷却ファン部寸法L5が前記固定子巻線部寸法L6より小さく、プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8を完全に覆いつつ、反プーリ側の固定子巻線部が冷却ファン8’を部分的に覆った状態を維持できる範囲で、反プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法を、プーリ側の固定子巻線部の回転軸9に沿った寸法より短くし、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることに格別の困難性はない。

(エ)前記(ア)~(ウ)によると、引用発明において、引用文献2に記載された事項、引用文献4に記載された事項、又は引用文献5に記載された事項を適用し、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本願発明の作用効果について

本願発明の作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び前記周知の事項から、引用発明、引用文献4に記載された事項及び前記周知の事項から、又は引用発明、引用文献5に記載された事項及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)請求人の主張について

請求人は、令和5年4月25日に提出した意見書の「<4-2>進歩性」において、本願発明が、前方部品と中央部分と後方部品とを含むケースを備えることにより、巻線がオフセットされた場合であっても、前方部品及び/又は後方部品を交換することにより、ケースと巻線との位置関係を所望の状態に容易に調整できるという作用効果を奏するから、本願発明は特許され得る旨を主張している。

しかしながら、引用発明は、「前記プーリ側ハウジング1及び前記反プーリ側ハウジング2は、複数のスタッドボルト13及びナット14によって締結され」るものであるから、プーリ側ハウジング1及び/又は反プーリ側ハウジング2は、それぞれ交換可能であると解され、発電機外郭と電気角2π/3ピッチ短節多相巻線4との位置関係等に仕様変更があっても容易に調整できるという、本願発明の作用効果と同様の作用効果を奏するものである。

また、請求人の前記の主張が、中央部分を備えることにより、ステータ本体(4)を支持する部分を交換することなく、前方部品及び/又は後方部品のみを交換できることの利点を作用効果として主張するものだとしても、ケース等の部材を、多くの部材に分割して構成すれば、組立てが煩雑になる一方で、装置の仕様変更に対し、必要な部材のみを交換でき、柔軟に対応できることは、当業者にとって自明な作用効果であって、格別なものではない。

なお、この出願の願書に添付した外国語書面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)には、ケースが前方部品と中央部分と後方部品からなることについて、【背景技術】の欄に、「【0026】或いは、ケースは3つの部分からなり、フランジ16、17はステータ本体を支持する中央部分の両側に配設される。フランジは、例えばねじ留めにより、中間部材に組み付けられる。」と記載されているにとどまり、ケースを前方部品と中央部分と後方部品から構成することによる作用効果は何ら記載されておらず、巻線をオフセットさせることと、ケースを前方部品と中央部分と後方部品から構成することとの関係についても、一切記載されていない。そうすると、請求人の主張する本願発明の作用効果が、仮に当業者にとって自明な事項でないとすれば、当該作用効果は、翻訳文の記載から当業者が把握できるものではなく、請求人の主張は、翻訳文の記載に基づかない後付けのものであるから、当該作用効果を根拠に、本願発明の進歩性を肯定することはできない。

したがって、請求人の前記主張は採用できない。

3 まとめ

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、引用発明、引用文献4に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、又は引用発明、引用文献5に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-002646

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