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特許拒絶査定不服審判

2024-005178

電気モータで使用するためのステータ

審判番号
2024-005178
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-531410
請求日
2024年03月27日
審決日
2025年08月01日
公報発行日
2026年01月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ミルウォーキー エレクトリック ツール コーポレイション
  • 【請求人代理人】伊東 忠重
  • 【請求人代理人】伊東 忠彦
  • 【請求人代理人】宮崎 修
審判長/審判官
  • 審判長 梶尾 誠哉
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 綿引 隆
分類
P18 .121-WZ (H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-531410「電気モータで使用するためのステータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月 3日国際公開、WO2021/108140、令和 5年 1月31日国内公表、特表2023-503640〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年11月27日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。 令和 5年 5月12日付け:拒絶理由通知書 同年 8月23日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月20日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) 令和 6年 3月27日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 7年 2月17日付け:拒絶理由通知書(以下、この拒絶理由通知書で通知した拒絶理由を「当審拒絶理由」という。) 同年 5月16日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和7年5月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 ステータコアであって、 環状部と、 隣接する歯の各対間にスロットが画定されるように、前記環状部と一体的に形成され、前記環状部から半径方向内向きに延びる、複数の歯であって、前記歯のそれぞれは、反対方向に面する側面の対を含む、複数の歯と、 前記環状部の複数の内面であって、各内面は、2つの隣接する歯の対向する側面間に配置される、複数の内面と、を含む、 ステータコアと、 複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップであって、各絶縁ストリップは、前記内面及び前記2つの隣接する歯の前記対向する側面を覆うために前記スロットの1つの中に配置される、複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップと、 各々の歯の周りに巻き付けられた複数の巻線と、 前記絶縁ストリップのそれぞれを前記内面の1つ及び各々の内面に隣接する前記側面のそれぞれに接着させるように構成される接着材料と、を含む、 ステータ。」 第3 当審拒絶理由の概要 本願発明に対する当審拒絶理由は、概略、本願発明は、以下の引用文献1~3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2009-33889号公報 引用文献2.米国特許出願公開第2019/0238022号明細書 引用文献3.国際公開第2016/208555号 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載及び引用発明について (1) 引用文献1の記載 当審拒絶理由において引用した引用文献1(特開2009-33889号公報)には、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0006】 第1の発明は、ステータコアにおけるスロット内に、複数本のコイル導体を収容してなるモータ用ステータにおいて、 上記ステータコアは、その中心軸線方向に複数の電磁鋼板を積層してなり、 上記複数本のコイル導体は、可撓性及び電気絶縁性を有する絶縁フィルム基材によって包み込まれており、該絶縁フィルム基材と上記複数本のコイル導体との間と、該絶縁フィルム基材と上記スロットの内壁面との間には、上記絶縁フィルム基材の両表面に積層した半硬化状態の熱硬化性樹脂を硬化させた絶縁固着樹脂が充填されており、 上記絶縁フィルム基材と上記複数本のコイル導体との間に充填された絶縁固着樹脂は、上記複数本のコイル導体同士の間の隙間に浸透していることを特徴とするモータ用ステータにある(請求項1)。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 上述した第1~第3の発明における好ましい実施の形態につき説明する。 第1~第3の発明において、上記絶縁フィルム基材は、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、炭素繊維、ガラス繊維、紙、布等から構成することができる。また、上記熱硬化性樹脂は、半硬化状態のエポキシ樹脂等から形成することができる。絶縁フィルム基材は、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)等の樹脂から構成することができる。 【0022】 また、上記モータ用ステータは、電動機、発電機又はモータジェネレータのいずれのステータ(固定子)として用いることもできる。 第1の発明において、上記熱硬化性樹脂は、複数本のコイル導体及び絶縁フィルム基材をステータコアに固着できれば、必ずしも絶縁フィルム基材と複数本のコイル導体との間の全体と、絶縁フィルム基材とスロットの内壁面との間の全体とに充填されていなくてもよい。」 「【実施例】 【0033】 以下に、本発明のモータ用ステータ及びその製造方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。 (実施例1) 本例のモータ用ステータ1は、図1、図2に示すごとく、ステータコア2におけるスロット22に、複数本のコイル導体3(銅線等)を収容してなる。 ステータコア2は、その中心軸線方向Lに複数の電磁鋼板21(軟磁性材料からなるコアシート)を積層してなる。複数本のコイル導体3は、可撓性及び電気絶縁性を有する絶縁フィルム基材41によって包み込まれている。また、絶縁フィルム基材41と複数本のコイル導体3との間と、絶縁フィルム基材41とスロット22の内壁面との間には、絶縁フィルム基材41の両表面に積層した半硬化状態の熱硬化性樹脂42A、Bを硬化させた絶縁固着樹脂42が充填されている。 【0034】 絶縁フィルム基材41と複数本のコイル導体3との間に充填された絶縁固着樹脂42は、複数本のコイル導体3同士の間の隙間に浸透している。 なお、モータ用ステータ1の製造においては、絶縁フィルム基材41の両表面に半硬化状態の熱硬化性樹脂42A、Bを積層してなる絶縁シート4を用いることができる。 ・・・ 【0051】 (実施例2) 本例は、図7、図8に示すごとく、複数の電磁鋼板21を中心軸線方向Lに積層して円環状に形成した一体型コアとしてのステータコア2Aを用いて、モータ用ステータ1Aを製造する例である。 また、本例においては、断面略丸形状の複数本のコイル導体3(丸導体)を用いる。 そして、モータ用ステータ1Aを製造するに当たっては、図7に示すごとく、厚みの大きい一方の表面の熱硬化性樹脂42Aを内側にして(他方の表面の熱硬化性樹脂42Bをスロット22の内壁面に対向させて)、当該絶縁シート4をステータコア2Aのスロット22の内壁面に対向配置する。 【0052】 次いで、複数本のコイル導体3を、絶縁シート4の内側に配置する(絶縁シート4における一方の表面の熱硬化性樹脂42Aに対向させて配置する)。本例のコイル導体3は、ループ状に形成したループ導体部を複数連ねてなる形状に形成し、このループ導体部を各スロット22内に跨って配置した。 そして、図8に示すごとく、絶縁シート4における周方向Cの両端部を、スロット22の開口部222側において折り重ね、加圧治具等を用いて絶縁シート4の折り重ね部441から径方向Rの外方へ加圧する(加圧方向を矢印Pで示す。)。このとき、両表面の熱硬化性樹脂42A、Bは、いずれも半硬化状態にあり、スロット22内の隙間を埋めるように流動する。そして、一方の表面の熱硬化性樹脂42Aの厚みが他方の表面の熱硬化性樹脂42Bの厚みよりも大きくしてあることにより、一方の表面の熱硬化性樹脂42Aは、絶縁フィルム基材41と複数本のコイル導体3との間を埋めると共に、複数本のコイル導体3同士の間の隙間へ十分に流動することができる。これにより、複数本のコイル導体3同士を十分に固着させることができる。 【0053】 また、他方の表面の熱硬化性樹脂42Bは、絶縁フィルム基材41とステータコア2Aとの間を埋める一方、ステータコア2Aを構成する電磁鋼板21同士の間の隙間には、できるだけ流動しないようにすることができる。これにより、電磁鋼板21同士の間の隙間に不必要に熱硬化性樹脂42Bが流動して、モータ用ステータ1Aを用いて製造したモータの振動ノイズ特性に悪影響を与えることを防止することができる。 その後、熱硬化性樹脂42A、Bの全体を硬化させて、モータ用ステータ1Aを製造することができる。 本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。」 「【符号の説明】 【0055】 1 モータ用ステータ 15 コイル仮組体 2 ステータコア 21 電磁鋼板 22 スロット 23 ティース 25 コア形成ブロック 3 コイル導体 4 絶縁シート 41 絶縁フィルム基材 42 絶縁固着樹脂 42A 一方の表面の熱硬化性樹脂 42B 他方の表面の熱硬化性樹脂 L 中心軸線方向(軸方向) C 周方向 R 径方向」 「【図7】 [図:0001430578000001.jpg] 【図8】 [図:0001430578000002.jpg] 」 (2) 引用発明 ア 上記(1)の【0051】、【0055】及び【図7】によれば、ステータコア2Aは、周方向Cに沿った部分(環状部)から径方向Rの内方に延びる複数のティース23と、隣接するティース23の間にスロット22を有していることが見て取れる。 また、スロット22の内壁面は、隣接する2つのティース23の側面と、隣接する2つのティース23の対向する側面間に配置される、環状部の内面とからなるものであることが見て取れる。 イ 上記(1)の【0034】によれば、上記(1)の【0051】の「絶縁シート4」は、絶縁フィルム基材41の両表面に半硬化状態の熱硬化性樹脂42A、Bを積層してなるものであるといえる。 ウ 上記(1)の【0006】、【0021】、【0022】、【0051】、【0052】及び上記ア、イによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内の記載は、根拠箇所又は検討箇所を示す。) 「ステータコアにおけるスロット内に、複数本のコイル導体を収容してなるモータ用ステータにおいて(【0006】)、 上記複数本のコイル導体は、可撓性及び電気絶縁性を有する絶縁フィルム基材によって包み込まれており(【0006】)、 該絶縁フィルム基材と上記スロットの内壁面との間には、上記絶縁フィルム基材の両表面に積層した半硬化状態の熱硬化性樹脂を硬化させた絶縁固着樹脂が充填されており(【0006】)、 上記絶縁フィルム基材は、炭素繊維から構成され(【0021】)、 上記熱硬化性樹脂は、絶縁フィルム基材をステータコアに固着している(【0022】)、 円環状に形成した一体型コアとしてのステータコアを用いて製造されたモータ用ステータであって(【0051】)、 ステータコアは、周方向Cに沿った部分(環状部)から径方向Rの内方に延びる複数のティース23と、隣接するティース23の間にスロット22を有しており(上記ア)、 スロット22の内壁面は、隣接する2つのティース23の側面と、隣接する2つのティース23の対向する側面間に配置される、環状部の内面とからなるものであり(上記ア)、 絶縁フィルム基材の両表面に半硬化状態の熱硬化性樹脂を積層してなるものである絶縁シートをステータコア2Aのスロット22の内壁面に対向配置し(【0051】及び上記イ)、 次いで、複数本のコイル導体3、すなわち、ループ状に形成したループ導体部を複数連ねてなる形状に形成し、このループ導体部を各スロット22内に跨って配置することによって製造される(【0052】、【0053】)、 モータ用ステータ。」 2 引用文献2について (1) 引用文献2の記載 当審拒絶理由において引用した引用文献2(米国特許出願公開第2019/0238022号明細書)には、以下の記載がある。 「[0035] FIG. 4 illustrates an end view of a stator 100 for an electric motor according to one embodiment of the invention. The stator 100 includes a substantially cylindrical stator body 104 and inwardly protruding teeth 108 extending radially inward from an inner surface of the stator body 104. In the illustrated embodiment, the stator 100 includes six teeth 108 spaced equally apart about the inner surface of the stator body 104. In other embodiments, the stator 100 may include fewer or more than six teeth 108. Each tooth 108 includes a tooth body portion 112 that extends radially and a tooth crown portion 116 formed at a distal end of the body portion 112. A rotor (not shown) is supported for rotation with respect to the stator 100.」 (当審訳)「[0035] 図4は、本発明の一実施形態による電気モータ用のステータ100の端面図を示す。ステータ100は、実質的に円筒形のステータ本体104と、ステータ本体104の内面から半径方向内方に延びる内方突出歯108とを含む。図示の実施形態では、ステータ100は、ステータ本体104の内面の周りに等間隔で配置された6つの歯108を含む。他の実施形態では、ステータ100は、6つよりも少ない又は多い歯108を含むことができる。各歯108は、半径方向に延びる歯本体部分112と、本体部分112の遠位端部に形成された歯冠部分116とを含む。ロータ(図示せず)は、ステータ100に対して回転するように支持される。」 「[0040] With reference to FIG. 7, the tooth body portion 112, the tooth crown portion 116, and the inner surface of the stator body 104 together define slots 150a and 150b defined between adjacent teeth 108. As will be discussed in more detail below, the slots 150a and 150b receive wires 164 (FIG. 15) that are wound around each tooth body portion 112 to define coils or windings 166 that cooperate with the teeth 108 to define stator poles. Each slot 150a and 150b also receives a sheet 152 of insulating material (e.g., paper) that is supported by the tooth body portion 112, the tooth crown portion 116, the inner surface of the stator body 104, and the end caps 122.」 (当審訳)「[0040] 図7を参照すると、歯本体部分112、歯冠部分116、及びステータ本体104の内面は、隣接する歯108間に画定されたスロット150a及び150bを共に画定する。以下でより詳細に説明するように、スロット150aおよび150bは、各歯本体部分112の周りに巻かれたワイヤ164(図15)を受け入れて、歯108と協働してステータ極を画定するコイルまたは巻線166を画定する。各スロット150aおよび150bはまた、歯本体部分112、歯冠部分116、固定子本体104の内面、およびエンドキャップ122によって支持される絶縁材料(例えば、紙)のシート152を受容する。」 「 [図:0001430578000003.jpg] ・・・ [図:0001430578000004.jpg] ・・・ [図:0001430578000005.jpg] 」 (2) 引用文献2記載事項 上記(1)によれば、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という)が記載されているといえる。 「スロット150aおよび150bは、電気モータ用のステータ100の歯108間に画定され、各歯本体部分112の周りに巻かれたワイヤ164を受け入れて巻線166を画定するものである。」 3 引用文献3について (1) 引用文献3の記載 当審拒絶理由において引用した引用文献3(国際公開第2016/208555号)には、以下の記載がある。 「[0001] この発明は、電動機の固定子に関するものであり、特にティース部に集中巻線を施した固定子の絶縁構造に関するものである。」 「[0010]実施の形態1. 以下、実施の形態1について図を参照しながら説明する。図1は実施の形態1による絶縁工程後の積層鉄心を示す斜視図、図2は同じく分解斜視図である。積層鉄心はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂で形成された絶縁シート1、ティース毎に分割された鉄心2、絶縁端板3より構成されている。鉄心2は両側において凹状のスロット部2aを備え、スロット部2aは鉄心2の外径部と内径部との間に形成されている。絶縁シート1は内側絶縁シート1aと外側絶縁シート1bの2枚のシートを重ねた構造であり、母材から切り抜いて重ねた後、スロット部2aの形状に合わせて手で折り曲げたり、金型で加圧したりして成型する。 [0011] 図3は絶縁シート1を示す平面断面図である。折り曲げた絶縁シート1は、図3に示すようにスロット内径側絶縁部4、スロット外径側絶縁部5、スロット周方向絶縁部6、折り曲げ部7を有する。絶縁シート1を積層鉄心のスロット部2aに挿入した後、積層鉄心の積層方向の両端部に絶縁端板3を装着し、絶縁端板3の絶縁シート保持部3aで絶縁シート1を挟持することにより鉄心2と巻線を絶縁している。そしてティースにコイルを巻線後積層鉄心を環状に接合して、図4に示す固定子8が得られる。図4は完成された固定子8を示す斜視図である。」 「 [図:0001430578000006.jpg] ・・・ [図:0001430578000007.jpg] 」 (2) 引用文献3記載事項 上記(1)によれば、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3記載事項」という)が記載されているといえる。 「鉄心2は凹状のスロット部2aを備え、 絶縁シート1を積層鉄心のスロット部2aに挿入した後、積層鉄心の積層方向の両端部に絶縁端板3を装着し、絶縁端板3の絶縁シート保持部3aで絶縁シート1を挟持することにより鉄心2と巻線を絶縁し、そしてティースにコイルを巻線後積層鉄心を環状に接合して、電動機の固定子8を得る。」 第5 対比・判断 1 対比 (1) 本願発明と引用発明とを対比する ア ステータコアについて (ア) 引用発明の「円環状に形成した一体型コアとしてのステータコア」の「周方向Cに沿った部分(環状部)」は、本願発明の「ステータコア」が含む「環状部」に相当する。 (イ) a 引用発明の「周方向Cに沿った部分(環状部)から径方向Rの内方に延びる複数のティース23」は、「前記環状部と一体的に形成され、前記環状部から半径方向内向きに延びる、複数の歯」といえる。 b 引用発明は、「隣接するティース23の間にスロット22を有して」いるから、「隣接する歯の各対間にスロットが画定され」ているといえる。 c 引用発明の「スロット22の内壁面」となる「隣接する2つのティース23の側面」は、「反対方向に面する側面の対」といえる。 d そうすると、引用発明の「ステータコア」は、「隣接する歯の各対間にスロットが画定されるように、前記環状部と一体的に形成され、前記環状部から半径方向内向きに延びる、複数の歯であって、前記歯のそれぞれは、反対方向に面する側面の対を含む、複数の歯」を含む点で、本願発明の「ステータコア」と一致する。 (ウ) 引用発明の「隣接する2つのティース23の対向する側面間に配置される、環状部の内面」は、「前記環状部の複数の内面であって、各内面は、2つの隣接する歯の対向する側面間に配置される、複数の内面」といえる。 (エ) 以上を踏まえると、引用発明の「ステータコア」は、 「 環状部と、 隣接する歯の各対間にスロットが画定されるように、前記環状部と一体的に形成され、前記環状部から半径方向内向きに延びる、複数の歯であって、前記歯のそれぞれは、反対方向に面する側面の対を含む、複数の歯と、 前記環状部の複数の内面であって、各内面は、2つの隣接する歯の対向する側面間に配置される、複数の内面と、を含む、」点で、本願発明の「ステータコア」と一致する。 イ 絶縁ストリップについて (ア) 炭素繊維が熱伝導性を有することは技術常識であるから、引用発明の「炭素繊維から構成され」ている「絶縁フィルム基材」は、「熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップ」といえる。 (イ) 引用発明の「スロット22の内壁面」は、「隣接する2つのティース23の側面と、隣接する2つのティース23の対向する側面間に配置される、環状部の内面とからなるもの」であり、引用発明の「絶縁フィルム基材」は、スロットの内壁面との間に、絶縁固着樹脂を充填することによって、ステータコアに固着される。 そうすると、引用発明の「絶縁フィルム基材」は「前記内面及び前記2つの隣接する歯の前記対向する側面を覆うために前記スロットの1つの中に配置される」といえる。 (ウ) 上記ア(イ)bのとおり、引用発明は、「隣接する歯の各対間にスロットが画定され」ているといえるから、「絶縁フィルム基材」を複数含んでいるといえる。 (エ) 以上を踏まえると、引用発明の「絶縁フィルム基材」は、本願発明の「複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップであって、各絶縁ストリップは、前記内面及び前記2つの隣接する歯の前記対向する側面を覆うために前記スロットの1つの中に配置される、複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップ」に相当する。 ウ 巻線について 引用発明の「複数本のコイル導体」は、「ループ状に形成したループ導体部を複数連ねてなる形状に形成し、このループ導体部を各スロット22内に跨って配置」するものであるところ、「ループ状に形成」しているのであるから、「巻線」ということができる。 そうすると、本願発明の「各々の歯の周りに巻き付けられた複数の巻線」と、引用発明の「複数本のコイル導体」とは、「巻線」である点で共通する。 エ 接着材料について 引用発明の「熱硬化性樹脂」は、「絶縁フィルム基材をステータコアに固着」させるものであり、「該絶縁フィルム基材と上記スロットの内壁面との間には、上記絶縁フィルム基材の両表面に積層した半硬化状態の熱硬化性樹脂を硬化させた絶縁固着樹脂が充填されて」いるように用いられるものであるから、本願発明の「前記絶縁ストリップのそれぞれを前記内面の1つ及び各々の内面に隣接する前記側面のそれぞれに接着させるように構成される接着材料」に相当する。 (2) 上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 [一致点] ステータコアであって、 環状部と、 隣接する歯の各対間にスロットが画定されるように、前記環状部と一体的に形成され、前記環状部から半径方向内向きに延びる、複数の歯であって、前記歯のそれぞれは、反対方向に面する側面の対を含む、複数の歯と、 前記環状部の複数の内面であって、各内面は、2つの隣接する歯の対向する側面間に配置される、複数の内面と、を含む、 ステータコアと、 複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップであって、各絶縁ストリップは、前記内面及び前記2つの隣接する歯の前記対向する側面を覆うために前記スロットの1つの中に配置される、複数の熱伝導性の炭素繊維ベースの絶縁ストリップと、 巻線と、 前記絶縁ストリップのそれぞれを前記内面の1つ及び各々の内面に隣接する前記側面のそれぞれに接着させるように構成される接着材料と、を含む、 ステータ。 [相違点] 「巻線」について、本願発明は、「各々の歯の周りに巻き付けられた複数の」ものであるのに対して、引用発明の「複数本のコイル導体」は、「ループ状に形成したループ導体部を複数連ねてなる形状に形成し、このループ導体部を各スロット22内に跨って配置」するものである点。 2 相違点についての判断 電気モータの技術分野において、ステータのコイル導体(巻線)の巻き方は種々知られており、そのうちのどの巻き方を選択するかは、必要に応じて、当業者が適宜選択し得る事項である。 そして、上記第4の2(2)の引用文献2記載事項、上記第4の3(2)の引用文献3記載事項によれば、電気モータ用のステータにおける巻線の巻き方として、各々の歯の周りに巻き付けることは、本願の優先日における周知技術(以下、「周知技術」という)であったと認められる。 そうすると、引用発明のコイル導体の巻き方として、「ループ状に形成したループ導体部を複数連ねてなる形状に形成し、このループ導体部を各スロット22内に跨って配置」することに代えて、上記周知技術の巻き方を採用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得る事項である。 3 小括 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-005178

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