特許拒絶査定不服審判
2024-013890
スイッチドリラクタンスモータ
- 審判番号
- 2024-013890
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-092893
- 請求日
- 2024年08月29日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】現代自動車株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 【請求人】起亞株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人共生国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 大橋 達也
- 審判官 中野 浩昌
- 分類
- P18 .121-Z (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 92893「スイッチドリラクタンスモータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月13日出願公開、特開2021-191065〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年5月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年11月24日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 4月25日付け:拒絶査定(原査定)
令和6年 8月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年8月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(下線部は、手続補正書の記載のとおりである。)。
「コイルが巻き付けられた複数の磁極突起(10)を備えるステータ(1)と、
複数の磁極突起(5)を備え、磁性部材からなるロータ(3)と、
屋根部(4a)と脚部(4b)と足部(4c)とからなる略T字形の断面形状に形成され、前記ロータ(3)に前記足部(4c)と前記屋根部(4a)の両端の3箇所で支持された状態で、前記ロータ(3)の前記磁極突起(5)の間の空隙(9)を埋めるブリッジ部材(4)と、
前記ロータ(3)の軸方向の両端を閉じる側板(6)と、が備えられ、
前記ブリッジ部材(4)の前記足部(4c)が、前記ロータ(3)の足固定用溝(8)に嵌め込まれており、
前記ロータ(3)が軸方向に長い場合、前記ブリッジ部材(4)は複数の分割片(7)に分割し、前記ロータ(3)に嵌め込まれ、
前記屋根部(4a)は、前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状であることを特徴とするスイッチドリラクタンスモータ。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年3月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「コイルが巻き付けられた複数の磁極突起(10)を備えるステータ(1)と、
複数の磁極突起(5)を備え、磁性部材からなるロータ(3)と、
屋根部(4a)と脚部(4b)と足部(4c)とからなる略T字形の断面形状に形成され、前記ロータ(3)に前記足部(4c)と前記屋根部(4a)の両端の3箇所で支持された状態で、前記ロータ(3)の磁極突起(5)の間の空隙(9)を埋めるブリッジ部材(4)と、
前記ロータ(3)の軸方向の両端を閉じる側板(6)と、が備えられ、
前記ブリッジ部材(4)の足部(4c)が、前記ロータ(3)の足固定用溝(8)に嵌め込まれており、
前記ロータ(3)が軸方向に長い場合、前記ブリッジ部材(4)は複数の分割片(7)に分割し、前記ロータ(3)に嵌め込まれることを特徴とするスイッチドリラクタンスモータ。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「屋根部(4a)」について、「前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状である」と限定し、さらに「前記ロータ(3)の磁極突起(5)」を「前記ロータ(3)の前記磁極突起(5)」に限定し、「前記ブリッジ部材(4)の足部(4c)」を「前記ブリッジ部材(4)の前記足部(4c)」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1について
(ア)原査定の拒絶理由で引用された特開2015-027253号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気機械に関し、より詳細には、高速での遠心力に耐えることのできる機械的に頑丈な回転子組立体を提供しながら、機械の摩擦損失および風損を低減するために電気機械の突出回転子(salient rotor)を滑らかにするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業での電気機械の使用は、多くの工業、商業および輸送産業において徐々に広がり続けている。そのような電気機械の内、例えばリラクタンスモータや固定子永久磁石モータなどのいくつかのタイプでは、回転子に突極すなわち突出した歯を使うことが必要となる。これらのタイプの回転子は、一般に受動的で頑丈であるので、高速用途に適している。しかしながら、このような回転子の突出構造は、回転子が回転するときに突出部が空気を捉えやすくなるために過大な風損を生じさせる一因となることが認識されている。
【0003】
突出回転子の使用に伴う風損の問題に対処する一つの方法は、回転子歯の間の極間の空間を埋めることによって、回転子の外表面を「滑らか」にすることである。極間の空間を埋めるための従来技術の機構の一つに、隣接する回転子極の先端をつなげるように回転子極の間に配置する磁気ブリッジがあり、それによって回転子を滑らかにする。しかしながら、そのような磁気ブリッジは、磁気の突極性にマイナスの影響を与え、したがって、電気機械の性能を下げる働きをする。極間の空間を埋めるための別の従来技術の機構としては、米国特許第4,916,346号に記載されているように、回転子を滑らかにし、かつ磁気の突極性に影響を与えない非磁性体(例えば、ステンレス鋼)のセグメントを回転子極の間に配置することである。しかしながら、この従来技術では、そのような非磁性のセグメントは、中実で単一材料の金属インサートとして形成され、それは、電気機械の全体質量を大きく増大させる。さらに、そのような非磁性のセグメントは、回転子極に溶接されるか、または単に切欠きを形成することによって回転子極に固定されるが、それらは共に、回転子極の間のセグメントを保持するためには理想的ではないかもしれないし、および/または、回転子組立体に対して所望の頑丈さを与えないかもしれない。さらに、金属製インサートおよびそれに関係する溶接部は、機械の効率を低下させる渦電流損を受けやすい。
【0004】
それゆえ、突出回転子を滑らかにするためのインサートを備えて、磁気性能に影響することなく風損の問題に対処することが望ましい。そのようなインサートが、回転子に加えられる質量を最小化しつつ、高速での遠心力に耐えることができる機械的に頑丈な方法で突出回転子とともに組立てられることがさらに望ましい。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電気機械は、固定子と、固定子内に配置され、固定子に対して回転するように構成された回転子組立体とを含み、回転子組立体は、突出回転子極の各隣接対の間に極間空隙が形成されるように内側ハブの回りに互いに離間した複数の突出回転子極を含む回転子鉄心であって、回転子鉄心によって開口が各極間間隙に画定される、回転子鉄心と、複数の突出回転子極の間に形成された空隙内に配置され、非導電性および非磁性材料で形成された複数のインサートとを含む。複数のインサートのそれぞれは、回転子鉄心によって画定された各開口と嵌合するように構成された、インサートの軸方向内側端に形成された嵌合機構を含み、それによってインサートは、回転子組立体の回転中に受ける遠心力に抗して回転子鉄心に固定される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、電気機械の製造方法は、固定子を提供するステップと、固定子内に配置可能で、中心軸回りの回転のために取付け可能な回転子組立体を提供するステップとを含み、回転子組立体を提供するステップは、極間空隙が突出回転子極の各隣接対の間に形成されるように内側ハブの回りに互いに離間した複数の突出回転子極を含む突出回転子鉄心であって、ダブテール形の開口が回転子鉄心によって各極間空隙に画定された突出回転子鉄心を提供するステップを含む。回転子組立体を提供するステップは、非導電性および非磁性材料で形成された複数のインサートを提供するステップと、複数のインサートを、複数の突出回転子極の間に形成された極間空隙に固定するステップとをさらに含み、複数のインサートのそれぞれを、突出回転子極の隣接対の間に形成された極間空隙内に固定するステップにおいて、インサートの嵌合機構が、回転子鉄心によって画定される各開口と嵌合し、それによってインサートは、回転子組立体の回転中に受ける遠心力に抗して、回転子鉄心に固定される。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態によれば、電気機械用の回転子組立体は、極間空隙が突出回転子極の各隣接対の間に形成されるように、内側ハブの回りに互いに離間した複数の突出回転子極を含む突出回転子と、複数の突出回転子極の間に形成された極間空隙内に配置され、複数の突出回転子極と組み合わさって回転子組立体に滑らかな外表面を形成するように構成された複数のインサートとを含む。複数のインサートは、非導電性および非磁性材料で形成されたT形インサート、非導電性および非磁性材料で形成された外殻を有する中空インサート、または非導電性および非磁性材料で形成されたダブテール形インサートのうちの1つを含む。複数のインサートのそれぞれは、回転子組立体の回転中に受ける遠心力に抗して、突出回転子にインサートが固定されるように、突出回転子と嵌合するように構成される。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、磁気性能に影響することなく摩擦損失と風損の問題に対処するように、回転子を滑らかにするためにインサートを備えた突出回転子を組み込んだ電気機械を対象とする。本発明の実施形態は、回転子と固定子が半径方向の磁場によって相互作用する電気機械に関して説明されるが、本発明の実施形態は、インサートが半径方向を向き、回転子/固定子相互作用のための軸方向磁場を用いる電気機械にも用いることができるのは、当業者には理解されよう。
【0013】
図1を参照すると、本発明の実施形態から恩恵を受けることができる典型的な電気機械1が示されている。電気機械1は、半径方向に回転子3を取り囲み、回転子3に沿って軸方向に延びる固定子2(例えば、積層鉄固定子)を含む。固定子2は、複数の固定子極4をさらに含み、各固定子極4は半径方向に対向する固定子極と合わさって1つの固定子極対を形成する。固定子極対4a、4bは、離れた電源(図示せず)から従来の方法で駆動されることができる相巻線5で巻かれている。別の相巻線(図示せず)もまた、同様な方法で他の固定子極4に含まれる。
【0014】
図1に示すように、回転子3は、複数の突極部6を有する突出回転子として形成される。1つの実施形態によれば、図2の回転子3を見ると分かるように、回転子3は一体積層体7のスタックで構成されているが、回転子鉄心は単一ピースとしても形成され、例えば鋼鉄から機械加工して作られるか、または焼結磁性材から形成されることができることが認識されている。回転子3は、突出磁極として作用する複数の突起/歯6を含む。回転子3の中央部は、駆動軸が挿入され回転子3がその回りを回転できる回転子穴8を含む。
【0015】
本発明の実施形態によれば、電気機械の正確な構造は、多くの形態のうちの1つを取ることができる。例えば、電気機械は、固定子3の相巻線5が所定の順序で駆動されて回転子3を回転させる、非永久磁石磁極を誘導するリラクタンスモータとして構成されることができる。このリラクタンスモータは、固定子極と回転子極が同じ数の同期リラクタンスモータであってもよいし、固定子の極対の数が回転子の極対の数より1つだけ多いスイッチトリラクタンスモータであってもよい。別の例としては、電気機械は、固定子に埋め込まれた永久磁石9(仮想線で示す)を含む固定子永久磁石機械(例えば、永久磁石磁束スイッチング機械、永久磁石磁束反転機械、または二重突極永久磁石機械)として構成されてもよい。そのような固定子永久磁石機械では、巻線5の電流は磁石9に関係した磁場と相互作用して回転子3を回転させる。
【0016】
図1および図2は、本発明の実施形態を利用して恩恵を受けることができる電気機械の例を単に図示したことを意味していることが分かる。すなわち、本発明の実施形態は、回転子の突極、すなわち突出した歯を利用することが必要な複数の異なったタイプの電気機械で実施することができる。このように、本発明の実施形態は、本明細書に示し説明されるタイプの電気機械にのみ限定されることを意味しない。
【0017】
ここで図3および図4を参照すると、本発明の実施形態を適用することのできる突出回転子の実施形態が示されている。まず図3を参照すると、歯付き回転子10の構造が示されており、ここでは、複数の回転子歯すなわち極12が、歯12と一体で形成された内側ハブ14または回転子の一部から半径方向外向きに延びている。図4を参照すると、セグメント回転子20の構造が示されており、ここでは、各突出回転子極22は他の回転子極とは独立した部品として形成されている。図4に示すように、独立した回転子極は、非磁性の回転子ハブ26の回りに周方向に配置されており、各回転子極22は、回転子極の最下部に(すなわち、各回転子極積層体に)形成された嵌合機構28によって回転子ハブ26と嵌合している。セグメント回転子20の各回転子極22の間の凹部30は、以下の詳述するように、インサートをその中に受け入れて、回転子の回転によって生じる遠心力に抗してインサートを回転子極22の間で半径方向に保持するように構成されている。
【0018】
本発明の実施形態によれば、図3および図4に示すような突出回転子10、20は、回転子極の間の極間の空間を部分的に埋め、回転子極と組み合わさって機械的に「滑らか」な外表面を回転子上に形成する非導電性および非磁性のインサートを備えることによって、機械的に滑らかに作られることができる。本明細書で使用する「滑らか」は、必ずしも回転子組立体の外表面が丸い、または完全に滑らかであることを要求せず、単に、インサートが、隣接する回転子極の間を横断し、それらの間を本質的に閉じた表面とすればよい、と理解される。したがって、例えば、これらのインサートが、(より安価なインサートを提供するために)隣接する回転子極を橋渡しする円弧状のセグメントよりはむしろ直線状の外面/セグメントを有するように構成され、これによっても回転子に機械的に滑らかな外表面を与えると見られることが想像される。非導電性および非磁性の回転子インサート片は、磁気性能に影響することなく突出回転子に関連する風損の問題に対処する。非導電性および非磁性のインサートは、回転子に加えられる質量を最小化しつつ、高速での遠心力に耐えることができる機械的に頑丈な方法で、突出回転子とともに構成され組立てられる。例示的な実施形態によれば、インサートのそれぞれは、突出回転子の全長にわたって軸方向に延びる中実の一体部分として形成される。
【0019】
ここで図5~7を参照すると、本発明の様々な実施形態による回転子組立体の部分が示されている。各実施形態の回転子組立体は、歯付き回転子、および歯付き回転子の隣接する回転子歯の各対の間の極間の空間に挿入された非導電性、非磁性のインサートを含む。図示のように、回転子インサートは、本発明の実施形態に従った様々な形状/断面をもつことができ、インサートの形状は、使用される個々の突出回転子の回転子極の形状、および回転子の速度を支えるために必要な遠心強度に適合する。
【0020】
図5に示すように、回転子組立体32は、回転子歯36のそれぞれの半径方向の最も外側の部分にフランジ状の突起38を有する回転子歯36を含む歯付き回転子34を有して提供され、その突起38は、歯36の各側面に歯36に垂直に延びている。非導電性、非磁性のインサート40は、隣接する歯36の間の極間の空間41内に配置されたT形インサートとして形成され、このT形インサート40は、軸方向に延びる縦方向部材42および2つの隣接する回転子歯36の間を直角方向に延びる横方向部材44を有し、この横方向部材44は、一対の隣接する回転子歯36と組み合わさって歯付き回転子34に滑らかな外表面を形成する。横方向部材44は、回転子歯の各突起38に当接する横方向部材44の各端部の肩部46を含むように形成され、突起38はT形インサート40の肩部46と嵌合して、回転子の回転中に受ける遠心力に抗してインサートを所定位置に保持する。縦方向部材42の内側端に形成された嵌合機構48もまたT形インサート40に含まれる。嵌合機構48は、歯付き回転子34のバック鉄心/内側ハブ52に形成された開口50と嵌合するように構成され、それにより、インサート40と歯付き回転子34との嵌合はさらに補強され、回転子組立体32はそれに働く遠心力に対してより頑丈になる。例示的な実施形態によれば、嵌合機構48は、ダブテール形の開口50と嵌合するダブテール機構として構成され、遠心力に対する頑丈さを強化する。しかしながら、他の形状/構成の嵌合機構が使用されることも想像されることを認識される。
【0021】
図6は、図5の回転子組立体と同様な回転子組立体54を(類似の要素は図5と同様の番号を付して)示すが、歯付き回転子58の歯56およびT形インサート60に形成された機構は異なる。すなわち、回転子歯56は、それぞれが各回転子歯56の半径方向の最も外側の部分の近くに、軸方向に延びる切欠き62を含むように形成されている。T形インサート60の横方向部材64は、隣接する歯56の切欠き62と嵌合する横方向部材64の各端部の肩部66を含むように形成され、回転子の回転中に受ける遠心力に抗してインサート60を所定位置に保持する。縦方向部材42の内側端に形成された嵌合機構48もまたT形インサート60に含まれる。嵌合機構48は、歯付き回転子58のバック鉄心/内側ハブ52に形成された開口50と嵌合するように構成され、それにより、インサート60と歯付き回転子58との嵌合はさらに補強され、回転子組立体54はそれに働く遠心力に対してより頑丈になる。
【0022】
ここで図7Aを参照すると、回転子組立体68は、図6の歯付き回転子と同じ歯付き回転子58を有して示され、歯付き回転子58は、それぞれが各回転子歯56の半径方向の最も外側の部分の近くに、軸方向に延びる切欠き62を含むように形成されている回転子歯56を有する。しかしながら、回転子組立体68の非導電性、非磁性のインサート70は、隣接する回転子歯56の間の極間の空間すなわち空隙41の一部を空けて残すT形よりむしろ空隙41のすべてを埋めるように構成されている点で、回転子組立体54(図6)のインサート60とは異なる。インサート70は、T形インサート40、60(図5および図6)より大きなサイズなので、その質量はT形インサートよりも大きく、そのことは、回転子の回転中にインサートによって生じる遠心力に関しては望ましくないことは認識される。インサート70の質量を可能な限り最小化するために、高密度の材料で形成されない内部領域を含む、ここでは「中空」インサートと称する、非導電性、非磁性のインサートが形成される。「中空」インサートは、非導電性、非磁性材料で形成される外殻72を含み、外殻72はある区域すなわち開口73を画定する。例示的な実施形態によれば、外殻72は、高い機械的強度および剛性をインサートに与える非導電性、非磁性材料で形成される。本発明の1つの実施形態によれば、開口73は、外殻72を形成するのに使用される材料とは異なる非導電性、非磁性材料で形成される内部充填体74を含み、その結果、インサート70は複数材料のインサートとして形成される。内部充填体74は、外殻材料よりも低密度の非導電性、非磁性材料で形成され、例えば、非常に軽量である誘電発泡体で形成されてもよい。外殻72の内部にインサート70の内部充填体74を包含することは、インサート70の全体重量を大きく低減し、その結果、インサート70によって生じる遠心力を大きく低減する働きがあり、それによって回転子組立体68の機能および寿命は改善される。さらに、外殻72内に内部充填体74を包含することは、回転子組立体68の動作中に空気の撹拌および歪みを防ぎ、それによって、回転子組立体の効率が改善される。」
(イ)引用文献1に記載された発明
a 上記(ア)の【0019】の「ここで図5~7を参照すると、本発明の様々な実施形態による回転子組立体の部分が示されている。」との記載、及び、同【0020】の「図5に示すように、回転子組立体32」との記載における「回転子組立体」、「回転子組立体32」は、同【0018】の「非導電性および非磁性のインサートは、回転子に加えられる質量を最小化しつつ、高速での遠心力に耐えることができる機械的に頑丈な方法で、突出回転子とともに構成され組立てられる。」との記載を踏まえると、「突出回転子と非導電性および非磁性のインサートとの組立体」を指すといえる。
b 上記aのとおり、上記(ア)の【0020】の「回転子組立体32」は、突出回転子と非導電性および非磁性のインサートとの組立体を指すといえるから、同【0020】の「回転子組立体32」が有する「回転子歯36を含む歯付き回転子34」における「歯付き回転子34」は突出回転子といえる。
また、「歯付き回転子34」が含む「回転子歯36」は、同【0019】の「図示のように、回転子インサートは、本発明の実施形態に従った様々な形状/断面をもつことができ、インサートの形状は、使用される個々の突出回転子の回転子極の形状、および回転子の速度を支えるために必要な遠心強度に適合する。」との記載によれば、「回転子極」といえる。
c 上記(ア)の【0014】の「回転子3は、突出磁極として作用する複数の突起/歯6を含む。」との記載における「複数の突起/歯6」は、同段落の「回転子3は、複数の突極部6を有する突出回転子として形成される。」との記載によれば、「複数の突極部6」といえる。
d 上記(ア)及び上記a~cによれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電気機械1であって、
半径方向に回転子3を取り囲み、回転子3に沿って軸方向に延びる固定子2(例えば、積層鉄固定子)を含み、
固定子2は、相巻線5で巻かれ、半径方向に対向する固定子極が合わさって形成された固定子極対4a、4bを含み、
回転子3は、一体積層体7のスタックで構成されているが、回転子鉄心は単一ピースとしても形成され、例えば鋼鉄から機械加工して作られるか、または焼結磁性材から形成されることができ、突出磁極として作用する複数の突極部6を有する突出回転子として形成され、
非導電性および非磁性のインサートは、突出回転子とともに構成されて組立てられ、回転子極の間の極間の空間を部分的に埋め、回転子極と組み合わさって機械的に滑らかな外表面を回転子上に形成し、
回転子組立体32は、突出回転子と非導電性および非磁性のインサートとの組立体であり、回転子極である回転子歯36のそれぞれの半径方向の最も外側の部分にフランジ状の突起38を有する回転子歯36を含む突出回転子である歯付き回転子34を有して提供され、
非導電性、非磁性のインサート40は、隣接する歯36の間の極間の空間41内に配置されたT形インサートとして形成され、このT形インサート40は、軸方向に延びる縦方向部材42および2つの隣接する回転子歯36の間を直角方向に延びる横方向部材44を有し、
横方向部材44は、回転子歯の各突起38に当接する横方向部材44の各端部の肩部46を含むように形成され、突起38はT形インサート40の肩部46と嵌合して、インサートを所定位置に保持し、
縦方向部材42の内側端に形成された嵌合機構48もまたT形インサート40に含まれ、嵌合機構48は、歯付き回転子34に形成された開口50と嵌合するように構成され、それにより、インサート40と歯付き回転子34との嵌合はさらに補強され、
スイッチトリラクタンスモータであってもよい、
電気機械1。」
イ 周知技術について
(ア)原査定の拒絶理由で引用された特開2014-036461号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「【0014】
図1~6は、本発明の一実施形態であるロータを含む回転電機10を示す図である。図1は、回転電機10のステータ12及びロータ14の周方向一部を示す概略断面図である。図1に示すように、回転電機10は、電動機または発電機として機能するものであり、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える。なお、「径方向」とは、特に断らない限り、ロータ14の回転中心軸に直交する放射方向をいう。また、「周方向」とは、特に断らない限り、ロータ14の回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう。また、「軸方向」とは、特に断らない限り、ロータ14の軸方向をいう。」
「【0017】
ロータ14は、複数の磁性鋼板の積層体や圧粉磁心等の磁性材により形成される略円柱状のロータコア24を含む。ロータコア24の軸方向両側には、2つのエンドプレート(図示せず)を設置することもできる。ロータコア24の中心部にはシャフト穴26が軸方向に延伸して形成されている。シャフト穴26には、図示しないシャフトが挿入されて固定される。このように固定されたシャフトは、ケーシング等において軸受部材によって回転可能に支持されている。これにより、ロータ14は、ステータ12に対して回転可能に設けられている。
【0018】
図2は図1のロータ14の一部を拡大して示す図である。図3は図2におけるA部を更に拡大して示す図である。ロータコア24は複数のロータ突極32n,32sを有する。各ロータ突極32n,32sは、それぞれ径方向外側へ向けて突出するとともに、周方向に間隔をおいて形成されている。ここで、ロータ突極32nは、後述するようにロータコイルによってN極に磁化されるN極形成突極である。また、ロータ突極32sは、後述するロータコイルによってS極に磁化されるS極形成突極である。ロータ突極32nとロータ突極32sとは周方向に交互に配置されている。また、各ロータ突極32n,32s間には、略台形状の軸方向断面をなす空間からなるスロット34が形成されている。」
(イ)原査定の拒絶理由で引用された特開2016-001973号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
「【0011】
図1は、本発明の実施形態にかかるSRモータ(スイッチドリラクタンスモータ)1を示す断面図である。本発明に係るSRモータ1は、ケーシング10内に、ブラケット11を介してボルトを含む締結部材12によって固定されている。このSRモータ1は、主として、ステータ2と、ロータ3と、挿入部材4と、側板5とを備えている。
【0012】
ステータ2は、ロータ3と同軸上で、ロータ3の外周に離接して配設されている。ステータ2の内周面には、図示しない複数の突極が等間隔で形成されている。各突極にはコイルが巻かれており、コイルに通電することによって、ステータ2の内側の空間部に軸心回りの磁界が形成される。より詳しくは、通電するコイルを所定の順番で切り替えることで、ステータ2の突極とロータ3の突極31(図2等参照)との間に生じる吸引力を変化させて、ロータ3を回転させる。このようなステータ2は、ブラケット11に圧入されて固定されている。また、ブラケット11は、ボルトを含む締結部材12によってケーシング10内に固定されている。
【0013】
ロータ3は、ケーシング10に対して回転自在に取り付けられたシャフト30の略中央部に取り付けられており、軸心回りに回転自在となるように、ステータ2の内周側にステータ2と当接しない状態、すなわち、ギャップGを有する状態で収容されている。ロータ3は、ステータ2の突極に巻きつけられたコイルに通電されて形成される磁界によって、軸心回りに回転する。また、ロータ3の外周面には、図2に示すように、複数の突極31が等間隔で形成されている。ここでは、12個の突極31が形成されている。」
「【0017】
このような側板5は、図2に示すように、挿入部材4をロータ3の溝部32に挿入した状態で、図1、図3、図5に示すように、ロータ3の軸方向における両端部にロータ3と同軸上に配設される。このように配設された側板5は、図3に示すように、ロータ3と挿入部材4の軸方向における両端部を、シャフト30(図1参照)の貫通部分を除いて閉塞する。また、図1に示すように、側板5は、ステータ2とロータ3との間のギャップGの側方に配設されるため、側方からギャップGへの空気の流入や、ギャップGから側方への空気の排出を規制する。」
「【0020】
図1に示すように、ロータ3の溝部32(図2参照)が挿入部材4によって埋められて
おり、ロータ3と挿入部材4の軸方向における両端部は、ステータ2の内径より大きな径の側板5によって閉塞される。このため、ステータ2とロータ3との間のギャップGへの空気の流入や、ギャップGからの空気の排出が規制されて、風切音が抑制される。すなわち、側板5によって空気の流れが規制されることで、ステータ2とロータ3との間の空気はロータ3とともに軸心回りに回転するので、風切音が低減される。」
(ウ)a(a)上記(ア)の【0014】には、「回転電機10」は「ロータ14とを備える」との記載があり、当該ロータ14は、回転電機用ロータといえる。
(b)同【0017】には、「ロータコア24の軸方向両側には、2つのエンドプレート(図示せず)を設置することもできる。」との記載があり、当該記載における「エンドプレート」が、ロータコア24の軸方向の移動を規制することを目的として設けられたものであることは技術常識である(必要であれば、特開2010-207021号公報の【0003】の「回転子11は、回転子軸14と、この回転子軸14の軸方向に円環状平板からなる磁性鋼板15を複数積層して形成される積層鉄心16と、回転子軸14の軸方向両側から積層鉄心16を挟持した状態で回転子軸14に対して固定されて積層鉄心16の軸方向の移動を規制する2つのエンドプレート18とから構成されている」との記載を参照されたい。)。
(c)同【0017】には、「ロータ14は」「略円柱状のロータコア24を含む」、「ロータコア24の軸方向両側には、2つのエンドプレート(図示せず)を設置することもできる。」との記載、同【0018】には、「ロータコア24は複数のロータ突極32n,32sを有する」及び「ロータ突極32nは、後述するようにロータコイルによってN極に磁化されるN極形成突極である。また、ロータ突極32sは、後述するロータコイルによってS極に磁化されるS極形成突極である。」との記載があり、N極またはS極に磁化される複数のロータ突極32n、32sは複数の磁極突起といえるから、ロータコア24を含むロータ14は複数の磁極突起を備えるといえる。また、2つのエンドプレートは、ロータ14に含まれる略円柱状のロータコア24の軸方向の両側に設置されるものであるから、ロータ14の両端を閉じる側板といえる。
(d)以上のとおり、引用文献2には、ロータコアの軸方向の移動を規制することを目的として、回転電機用ロータにおいて、複数の磁極突起を備えたロータと、ロータの軸方向の両端を閉じる側板とを備えることが記載されているといえる。
b(a)上記(イ)の【0011】には、「SRモータ(スイッチドリラクタンスモータ)1」及び「SRモータ1は、主として、ステータ2と、ロータ3と、挿入部材4と、側板5とを備えている。」との記載があり、スイッチドリラクタンスモータであるSRモータ1
、SRモータ1が備えるロータ3はそれぞれ、回転電機、回転電機用ロータといえる。
(b)同【0013】には、「ロータ3の外周面には、図2に示すように、複数の突極31が等間隔で形成されている。」との記載、同【0012】には、「ステータ2の内周面には、図示しない複数の突極が等間隔で形成されている。各突極にはコイルが巻かれており、コイルに通電することによって、ステータ2の内側の空間部に軸心回りの磁界が形成される。より詳しくは、通電するコイルを所定の順番で切り替えることで、ステータ2の突極とロータ3の突極31(図2等参照)との間に生じる吸引力を変化させて、ロータ3を回転させる」との記載があり、ステータ2の突極とロータ3の突極31との間に生じる吸引力の変化は磁界の形成によるものであるから、ロータ3の複数の突極31は複数の磁極突起といえる。
(c)同【0017】には、「側板5は」「ロータ3の軸方向における両端部に配設される。」及び「側板5は」「ロータ3と挿入部材4の軸方向における両端部を」「閉塞する」との記載があるから、側板5はロータ3の軸方向の両端を閉じる側板といえる。
(d)同【0012】には、「より詳しくは、通電するコイルを所定の順番で切り替えることで、ステータ2の突極とロータ3の突極31(図2等参照)との間に生じる吸引力を変化させて、ロータ3を回転させる。」との記載、同【0020】には、「すなわち、側板5によって空気の流れが規制されることで、ステータ2とロータ3との間の空気はロータ3とともに軸心回りに回転するので、風切音が低減される。」との記載があり、風切音は突極を有するロータ3の回転に伴って発生するものといえ、また、側板5により風切音を低減することは、側板を風の影響を抑えることを目的として設けることといえる。
(e)以上のとおり、引用文献3には、突極を有するロータの回転に伴って発生する風の影響を抑えることを目的として、回転電機用ロータにおいて、複数の磁極突起を備えたロータと、ロータの軸方向の両端を閉じる側板とを備えることが記載されているといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、引用文献2及び3に記載されているように、ロータコアの軸方向の移動を規制することや、突極を有するロータの回転に伴って発生する風の影響を抑えることを目的として、「回転電機用ロータにおいて、複数の磁極突起を備えたロータと、ロータの軸方向の両端を閉じる側板とを備えること」は本願出願日における周知技術といえる。
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「固定子2」は、「固定子極対4a、4bを含み」、当該固定子極対4a、4bは、「相巻線5で巻かれ、半径方向に対向する固定子極と合わさった」ものである。ここで、「相巻線5」はコイル、「半径方向に対向する固定子極と合わさった」「固定子極対4a、4b」は複数の磁極突起、「固定子2」はステータといえるから、引用発明の「固定子2」は、コイルが巻き付けられた複数の磁極突起を備えるステータといえ、本願補正発明の「コイルが巻き付けられた複数の磁極突起(10)を備えるステータ(1)」に相当する。
イ 引用発明の「回転子3」は、「一体積層体7のスタックで構成されているが、回転子鉄心は単一ピースとしても形成され、例えば鋼鉄から機械加工して作られるか、または焼結磁性材から形成されることができ、突出磁極として作用する複数の突極部6を有する突出回転子として形成され」るものである。ここで、「鋼鉄」または「焼結磁性材」は磁性体であるから、磁性部材といえる。また、「突出磁極として作用する複数の突極部6」は複数の磁極突起、「回転子3」はロータといえる。
そうすると、引用発明の「回転子3」は、本願補正発明の「複数の磁極突起(5)を備え、磁性部材からなるロータ(3)」に相当する。
ウ(ア)引用発明の「T形インサート40」は、「横方向部材44を有」し、「横方向部材44は、回転子歯の各突起38に当接する横方向部材44の各端部の肩部46を含むように形成され、突起38はT形インサート40の肩部46と嵌合して、インサートを所定位置に保持」するものであるから、T形インサート40は、2つの隣接する回転子歯36の間をブリッジするブリッジ部材といえ、本願補正発明の「ブリッジ部材(4)」に対応する。また、「T形インサート40」は、形状がT形であるから、断面形状が略T字形に形成されたものといえる。
(イ)引用発明の「T形インサート40」が有する「横方向部材44」、「縦方向部材42」、「縦方向部材42の内側端に形成された嵌合機構48」は、それぞれT形における屋根部、脚部、足部といえる。
(ウ)引用発明の「T形インサート40」は、「隣接する歯36の間の極間の空間41内に配置されたT形インサートとして形成され」るものであり、当該歯36は、「歯付き回転子34」が含まれる「回転子歯36」であるから、T形インサート40は、歯付き回転子34の回転子歯36の間の空隙を埋めるものといえる。
また、引用発明の「T形インサート40」が有する「横方向部材44」は、「回転子歯の各突起38に当接する横方向部材44の各端部の肩部46を含むように形成され、突起38はT形インサート40の肩部46と嵌合して、インサートを所定位置に保持し」、「T形インサート40」が有する「縦方向部材42」の「内側端に形成された嵌合機構48」は、「歯付き回転子34に形成された開口50と嵌合するように構成され、それにより、インサート40と歯付き回転子34との嵌合はさらに補強され」るから、T形インサート40は、歯付き回転子34に嵌合機構48と横方向部材44の両端の3箇所で支持された状態であるといえる。
さらに、上記(イ)で検討したとおり、嵌合機構48は足部といえることを踏まえると、T形インサート40の嵌合機構48が、歯付き回転子34に形成された開口50と嵌合するように構成されることは、T形インサート40の嵌合機構48は、歯付き回転子34の足固定用溝に嵌め込まれることといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)の検討によれば、引用発明の「T形インサート40」は、本願補正発明の「屋根部(4a)と脚部(4b)と足部(4c)とからなる略T字形の断面形状に形成され、前記ロータ(3)に前記足部(4c)と前記屋根部(4a)の両端の3箇所で支持された状態で、前記ロータ(3)の前記磁極突起(5)の間の空隙(9)を埋めるブリッジ部材(4)」であって、「前記ブリッジ部材(4)の前記足部(4c)が、前記ロータ(3)の足固定用溝(8)に嵌め込まれ」る「ブリッジ部材(4)」に相当する。
エ 引用発明の「電気機械1」は、「スイッチトリラクタンスモータであってもよい」ものであるから、本願補正発明の「スイッチドリラクタンスモータ」に対応する。
オ 上記ア~エによれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「コイルが巻き付けられた複数の磁極突起(10)を備えるステータ(1)と、
複数の磁極突起(5)を備え、磁性部材からなるロータ(3)と、
屋根部(4a)と脚部(4b)と足部(4c)とからなる略T字形の断面形状に形成され、前記ロータ(3)に前記足部(4c)と前記屋根部(4a)の両端の3箇所で支持された状態で、前記ロータ(3)の前記磁極突起(5)の間の空隙(9)を埋めるブリッジ部材(4)と、
前記ブリッジ部材(4)の前記足部(4c)が、前記ロータ(3)の足固定用溝(8)に嵌め込まれている、
スイッチドリラクタンスモータ。」
[相違点1]
本件補正発明は、「前記ロータ(3)の軸方向の両端を閉じる側板(6)」を備えるのに対し、引用発明は当該構成を備えない点。
[相違点2]
ブリッジ部材(4)について、本件補正発明は、「前記ロータ(3)が軸方向に長い場合、前記ブリッジ部材(4)は複数の分割片(7)に分割」されるのに対し、引用発明のT形インサート40は当該構成を備えない点。
[相違点3]
本件補正発明は、ブリッジ部材(4)の「前記屋根部(4a)は、前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状である」のに対し、引用発明は、非導電性および非磁性のインサートであるT形インサート40は、突出回転子とともに構成されて組立てられ、回転子極の間の極間の空間を部分的に埋め、回転子極と組み合わさって機械的に滑らかな外表面を回転子上に形成するものである点。
(4)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明の「回転子3」を備える「電気機械1」は「スイッチトリラクタンスモータであってもよい」ものであり、スイッチトリラクタンスモータは回転電機といえるから、「電気機械1」、「回転子3」は回転電機、回転電機用ロータといえる。
また、引用発明の「回転子3」の「突出磁極として作用する複数の突極部6」は、上記(3)イの検討によれば、複数の磁極突起といえる。
(イ)複数の磁極突起を備えたロータを備える回転電機用ロータにおいて、ロータコアの軸方向の移動を規制することや、突極を有するロータの回転に伴って発生する風の影響を抑えることは自明の課題であり、複数の磁極突起を備えたロータを備える回転電機用ロータといえる引用発明においても当該課題は内在しているといえる。
そこで、当該課題の解決を目的として、引用発明において、上記(2)イ(エ)に記載した周知技術を採用し、回転子3の軸方向の両端を閉じる側板を備えることとし、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点2について
部材を一体として構成するか分割して構成するかは、当業者が製造や組立等の条件に応じて適宜選択し得る事項であり、その際に製品の形状を考慮することも一般に行われていることである。
引用発明の「回転子組立体32」は、「突出回転子と非導電性および非磁性のインサートとの組立体」であり、「T形インサート40」は組立体を構成するものといえるところ、回転子3が軸方向に長い場合、T形インサート40を複数の分割片に分割し、回転子3に嵌め込まれて組み立てられるようにして相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 相違点3について
(ア)引用文献1の【0018】には、「本発明の実施形態によれば、図3および図4に示すような突出回転子10、20は、回転子極の間の極間の空間を部分的に埋め、回転子極と組み合わさって機械的に「滑らか」な外表面を回転子上に形成する非導電性および非磁性のインサートを備えることによって、機械的に滑らかに作られることができる。本明細書で使用する「滑らか」は、必ずしも回転子組立体の外表面が丸い、または完全に滑らかであることを要求せず、単に、インサートが、隣接する回転子極の間を横断し、それらの間を本質的に閉じた表面とすればよい、と理解される。したがって、例えば、これらのインサートが、(より安価なインサートを提供するために)隣接する回転子極を橋渡しする円弧状のセグメントよりはむしろ直線状の外面/セグメントを有するように構成され、これによっても回転子に機械的に滑らかな外表面を与えると見られることが想像される。非導電性および非磁性の回転子インサート片は、磁気性能に影響することなく突出回転子に関連する風損の問題に対処する。」との記載がある。
(イ)上記(ア)の記載は、風損の問題に対処するために、非導電性および非磁性のインサートが、隣接する回転子極の間を横断し、それらの間を本質的に閉じた表面とすればよい、というものである。その上で、より安価なものとするためにはむしろ、隣接する回転子極を橋渡しする直線状のセグメントを有するように構成するとしているにすぎず、より滑らかなものを志向して円弧状のセグメントを有するように構成することも想定されているといえる。
そうすると、当該示唆に基づき、引用発明の「T形インサート40」が有する「回転子歯36の間を直角方向に延びる横方向部材44」を、回転子歯36の間を橋渡しする円弧状に構成し、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
エ 本願補正発明が奏する効果について
本願補正発明が奏する効果は、引用発明と周知技術が奏する効果から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。
(5)小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「【請求の理由】3(4)において、「引用文献1に記載の発明は、その明細書段落[0018]に「これらのインサートが、(より安価なインサートを提供するために)隣接する回転子極を橋渡しする円弧状のセグメントよりはむしろ直線状の外面/セグメントを有するように構成され、これによっても回転子に機械的に滑らかな外表面を与えると見られることが想像される。」と記載されていますようにインサートは、屋根部が直線で構成されており、本願の磁極突起の最外周部の形状に合わせた円弧状であるブリッジ部材により、風損がより小さくなる構成とは異なります。」と主張する。
しかしながら、上記2(4)ウのとおり、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用文献1の【0018】の記載に基づき当業者が容易に想到し得るものであるから、請求人の主張は採用できない。
4 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年8月29日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年3月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~4に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2015-027253号公報
引用文献2.特開2014-036461号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2016-001973号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載、引用発明及び引用文献2及び3に記載された技術事項は、上記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「前記屋根部(4a)は、前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに「前記屋根部(4a)は、前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状である」との限定事項を付加し、さらに「前記ロータ(3)の磁極突起(5)」を「前記ロータ(3)の前記磁極突起(5)」に限定し、「前記ブリッジ部材(4)の足部(4c)」を「前記ブリッジ部材(4)の前記足部(4c)」に限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(3)~(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明は「前記屋根部(4a)は、前記磁極突起(5)の最外周部の形状に合わせた円弧状である」との限定事項を有しないから、本願発明は、第2の2(3)~(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-013890