特許拒絶査定不服審判
2025-006580
ロータおよびロータの製造方法
- 審判番号
- 2025-006580
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-039614
- 請求日
- 2025年04月28日
- 審決日
- 2026年02月16日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】美的集団股▲フン▼有限公司
- 【請求人代理人】及川 周
- 【請求人代理人】▲高▼橋 史生
- 【請求人代理人】橋口 明子
- 【請求人代理人】小林 淳一
- 【請求人代理人】梶井 良訓
- 審判長/審判官
- 審判長 松永 稔
- 審判官 今井 聖和
- 審判官 綿引 隆
- 分類
- P18 .121-Z (H02K) / P18 .575-Z (H02K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 39614「ロータおよびロータの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 5月 1日出願公開、特開2024- 60065〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月10日に出願された特願2020-101156号(優先権主張 令和1年12月4日)の一部を、令和6年3月14日に新たな特許出願として分割したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年11月 7日付け:拒絶理由通知書
令和6年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月16日付け:拒絶査定(原査定)
令和7年 4月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年4月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年4月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正後の請求項2の記載は、次のとおりである。(下線部は、手続補正書の記載のとおりである。)
「 【請求項2】
主マグネットと、
補助マグネットと、
を備え、
前記主マグネットと前記補助マグネットとは、周方向に交互に配置されて円環状に形成され、
前記補助マグネットは、前記周方向に着磁され、
前記主マグネットは、前記補助マグネットの着磁方向とおよそ直交する方向に着磁され、
前記主マグネットと前記補助マグネットとは、ホルダーを用いることなく、樹脂モールドのみにより固定されている、
ロータ。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年12月19日に提出された手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項2の記載は次のとおりである。
「 【請求項2】
主マグネットと、
補助マグネットと、
を備え、
前記主マグネットと前記補助マグネットとは、周方向に交互に配置されて円環状に形成され、
前記補助マグネットは、前記周方向に着磁され、
前記主マグネットは、前記補助マグネットの着磁方向とおよそ直交する方向に着磁され、
前記主マグネットと前記補助マグネットとは、樹脂モールドのみにより固定されている、
ロータ。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記主マグネットと前記補助マグネット」とを「固定」する構成について、「ホルダーを用いることなく」との限定事項を付加するものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の記載のとおりのものである。
(2) 引用発明
ア 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で、引用文献1として引用された国際公開第2013/008284号には、次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために当審において付加した。)
「発明が解決しようとする課題
・・・(中略)・・・
[0007] この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、回転電機の出力トルクを低下させることなく、主磁石の使用重量を少なくでき、高価で調達性に問題があるネオジム系焼結磁石の使用量を低減できる永久磁石型回転電機およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、磁石の加工時間を短縮でき、ロータの組立も容易となり、組立時間も短縮できると共に、組立時の磁石の割れ、欠けが低減できる永久磁石型回転電機およびその製造方法を提供することを目的とする。」
「[0016]実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における永久磁石型回転電機の構成を示す概略断面図、図2、図3は、磁束の流れの説明図である。
図1において、ロータ1は、ロータコア2と、このロータコア2の外周に装着される主磁石3と、補助磁石4で構成されている。磁石内の矢印は磁石の磁化の方向である。
主磁石3の磁化方向は径方向、補助磁石4の磁化方向は周方向を向いている。主磁石3は極性が交互に反転する。補助磁石4の極性は、N極の主磁石側がN、S極の主磁石側がS極である。主磁石3はネオジム系焼結磁石で構成され、補助磁石4はフェライト磁石で構成されている。また、主磁石3と補助磁石4はそれぞれの間にギャップを設けて固定されている。」
「[0030]実施の形態2.
図4、図5はこの発明の実施の形態2の永久磁石型回転電機のロータの構成を示す概略断面図である。図4において、15は主磁石3と補助磁石4の隙間に配置された非磁性材料である。なお、その他の構成は実施の形態1と同一であり、説明は省略する。
[0031] 図4のロータを組立てる場合、ロータコア2に主磁石3を接着で固定する。補助磁石4は、主磁石3の間に非磁性材の樹脂15を入れた上でロータコア2に接着されて固定される。
このように構成された実施の形態2のロータは、主磁石3と補助磁石4の間に樹脂が充填されているため、回転電機の組立時に磁石同士が接触することによる割れや欠けを防止することができる。また、ロータコア2への固定力を強くできる。
[0032] なお、実施の形態2の構成は、ロータコア2に主磁石3と補助磁石4を一体モールド成形することでも実現可能である。
即ち、モールド金型に、ロータコア2、主磁石3、補助磁石4を挿入し位置決めした後、モールド樹脂を注入して固めることで容易に実現することができる。
図5は主磁石3と補助磁石4をモールドで一体に成形した例であり、モールド金型内にロータコア2、主磁石3、補助磁石4を配置した後、モールド樹脂16を充填し固化する工法で製作したものである。
この一体モールド成形した実施の形態2の永久磁石発電機によれば、ロータコア2と主磁石3、補助磁石4の固定力を一層向上させることができる。」
「
[図:0001437082000001.jpg]
」
「
[図:0001437082000002.jpg]
」
イ 引用発明
(ア)上記アの[0016]の「図1は、この発明の実施の形態1における永久磁石型回転電機の構成を示す概略断面図」、「図1において、ロータ1は、ロータコア2と、このロータコア2の外周に装着される主磁石3と、補助磁石4で構成されている。磁石内の矢印は磁石の磁化の方向である。」との記載によれば、引用文献1の[0016],図1には、「実施の形態1」に係る「永久磁石型回転電機」の「ロータ1」が記載されているといえる。
(イ)上記アの図1から、主磁石3と補助磁石4とは、ロータコア2の外周に沿って、周方向に交互に配置されて円環状に形成されていることが見て取れる。
(ウ)上記アの記載及び上記(ア)、(イ)によると、引用文献1には、「実施の形態1」における「ロータ1」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内の段落番号は、引用文献1の引用箇所を示す。)
[引用発明]
ロータコア2と、このロータコア2の外周に装着される主磁石3と、補助磁石4で構成されている、ロータ1であって、([0016])
主磁石3の磁化方向は径方向、補助磁石4の磁化方向は周方向を向いており、([0016])
主磁石3と補助磁石4はそれぞれの間にギャップを設けて固定されており、([0016])
主磁石3と補助磁石4とは、ロータコア2の外周に沿って、周方向に交互に配置されて円環状に形成されている(上記(イ))
ロータ1。
(3) 対比
本件補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「主磁石3」、「補助磁石4」は、磁石は英語でマグネットというから、それぞれ本件補正発明の「主マグネット」、「補助マグネット」に相当する。
イ 引用発明の「ロータ1」は、「ロータコア2と、このロータコア2の外周に装着される主磁石3と、補助磁石4で構成されている」ことから、上記アも考慮すると、本件補正発明の「ロータ」と、「主マグネットと、補助マグネットと、を備え」ている点で共通する。
ウ 引用発明の「主磁石3と補助磁石4」は、「ロータコア2の外周に沿って、周方向に交互に配置されて円環状に形成され」ていることから、本件補正発明の「前記主マグネットと前記補助マグネット」と「周方向に交互に配置されて円環状に形成され」ている点で共通する。
エ 引用発明の「主磁石3」、「補助磁石4」は、その「磁化方向」として、それぞれ「径方向」、「周方向」を向いているところ、磁化方向は、着磁方向でもあるといえ、径方向と周方向とは、互いに直交していることから、引用発明の「補助磁石4」は、本件補正発明の「補助マグネット」と、「前記周方向に着磁され」ている点で共通し、引用発明の「主磁石3」は、本件補正発明の「主マグネット」と、「前記補助マグネットの着磁方向とおよそ直交する方向に着磁され」ている点で共通する。
オ 以上によれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
主マグネットと、
補助マグネットと、
を備え、
前記主マグネットと前記補助マグネットとは、周方向に交互に配置されて円環状に形成され、
前記補助マグネットは、前記周方向に着磁され、
前記主マグネットは、前記補助マグネットの着磁方向とおよそ直交する方向に着磁される、
ロータ。
[相違点]
本件補正発明は、「前記主マグネットと前記補助マグネットとは、ホルダーを用いることなく、樹脂モールドのみにより固定されている」のに対し、引用発明は、そのような特定がされていない点。
(4) 相違点の判断
相違点について検討する。
上記(2)アの [0032]には、引用発明と同様のロータコア2と、このロータコア2の外周に装着される主磁石3と、補助磁石4で構成されている、ロータについて、「ロータコア2に主磁石3と補助磁石4を一体モールド成形することでも実現可能である。
即ち、モールド金型に、ロータコア2、主磁石3、補助磁石4を挿入し位置決めした後、モールド樹脂を注入して固めることで容易に実現することができる。
図5は主磁石3と補助磁石4をモールドで一体に成形した例であり、モールド金型内にロータコア2、主磁石3、補助磁石4を配置した後、モールド樹脂16を充填し固化する工法で製作したものである。
この一体モールド成形した実施の形態2の永久磁石発電機によれば、ロータコア2と主磁石3、補助磁石4の固定力を一層向上させることができる。」と記載されているところ、この「一体モールド成形」では、「モールド金型内にロータコア2、主磁石3、補助磁石4を配置した後、モールド樹脂16を充填し固化する」ことから、「主磁石3、補助磁石4」は、ホルダーを用いることなく「モールド樹脂16」のみにより固定されているものといえる。
したがって、引用発明において、「ロータコア2と主磁石3、補助磁石4の固定力を一層向上させる」ために、引用文献1の[0032]における「一体モールド成形」を採用して、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(5) 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、本件補正後の請求項1に記載のロータは、後着磁工程により、主マグネットと補助マグネットとを少なくとも一部が接触した状態で樹脂モールドでき、主マグネットと補助マグネットとが高密度に配置されて、ロータの磁力を高めて、モータのトルクを向上させることができるという顕著な効果を有し、後着磁工程が記載されていない引用文献1の部分的な構成に、後着磁工程が記載されていない引用文献2の部分的な構成を適用できたとしても、そもそも後着磁工程によって実現可能な本件補正後の請求項1に記載のロータに想到せず、また、本件補正後の請求項2も本件補正後の請求項1と同様に理由により、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものに該当しない旨、主張している。
しかしながら、本件補正後の請求項2には、「主マグネットと補助マグネットとを少なくとも一部が接触した状態で樹脂モールド」する構成が特定されておらず、当該構成に基づく請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものでないから、採用できない。
(6) 小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~8に係る発明は、令和6年12月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項2に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
理由(進歩性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2013/008284号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記主マグネットと前記補助マグネット」との「固定」についての「ホルダーを用いることなく」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2[理由]2に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-006580