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特許拒絶査定不服審判

2022-002641

超音波流量計

審判番号
2022-002641
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-149814外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年02月22日
審決日
2022年11月17日
公報発行日
2023年02月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (G01F) / P18 .121-Z (G01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
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特願2018-149814号「超音波流量計」拒絶査定不服審判事件〔令和2年2月13日出願公開、特開2020-24180号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年8月9日に出願された特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和3年 4月 1日付け:拒絶理由通知書 同年 6月 2日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月18日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月30日 :原査定の謄本の送達) 令和4年 2月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和4年2月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年2月22日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和4年2月22日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「 【請求項1】 被計測流体が流れる計測流路と、 前記計測流路上の同一面の上流と下流に配置され、超音波信号の送受信が可能な一対の超音波センサと、 前記超音波センサの一方から送信された超音波信号が前記被計測流体を伝搬して、対向する面に少なくとも1回反射して他方の超音波センサが受信するまでの伝搬時間に基づいて、前記被計測流体の流量を検出する流量演算手段と、を備え、 前記計測流路は、前記超音波センサから放射される音波を取り込む開口部を前記一対の超音波センサに対応して上流側と下流側に備え、 前記計測流路と前記開口部は一体に成型されており、 少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵を複数の凹凸形状に形成して、音波を乱反射するようにした不要音波抑制部を設けた超音波流量計。」 (2) 本件補正後 「 【請求項1】 被計測流体が流れる計測流路と、 前記計測流路上の同一面の上流と下流に配置され、超音波信号の送受信が可能な一対の超音波センサと、 前記超音波センサの一方から送信された超音波信号が前記被計測流体を伝搬して、対向する面に少なくとも1回反射して他方の超音波センサが受信するまでの伝搬時間に基づいて、前記被計測流体の流量を検出する流量演算手段と、を備え、 前記計測流路は、前記超音波センサから放射される音波を取り込む開口部を前記一対の超音波センサに対応して上流側と下流側に備え、 前記計測流路と前記開口部は一体に成型されており、 少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵に開口の内側に向けて複数の凹凸形状を形成して、音波を乱反射するようにした不要音波抑制部を設けた超音波流量計。」 2 本件補正の目的 本件補正は、請求項1の「音波を乱反射するようにした不要音波抑制部」において、「上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵」の「複数の凹凸形状」について、「開口の内側に向けて」形成されたものであることを限定したものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件についての当審の判断 本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。 (1) 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された文献である特開2013-186031号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。 a 段落【0001】~【0012】、【図5】、【図6】 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ガスなどの流量を計測する超音波流量計測に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来のこの種の超音波流量計は、図5(a)に示すように、計測流路9と、計測流路9の上流側には流体を流入する開口部10を有する。また、計測流路9に隣接するセンサ取付け部11を備え、センサ取付け部11には一対の超音波センサ12a、12bが取付けられ、その上部に超音波センサ12a、12bで計測される伝播時間から計測流路9に流れる流体の流量を算出する流量演算回路13が設置されている。 【0003】 図5(b)は図5(a)のC-C’矢視断面図で、計測流路9の超音波センサ取付け側の流路壁面を示しており、超音波センサ12a、12bの送受信用に矩形状の超音波伝播開口窓14a、14bを有している。 【0004】 そして、一対の超音波センサの一方から発信された超音波信号は、対向する壁面で反射して他方の超音波センサで受信されるように構成され、所謂、V字型の超音波伝播路15を形成している(例えば、特許文献1参照)。 【0005】 このように超音波伝播路15をV字型とし超音波の壁面反射を利用する場合は同じ流路幅構成でも反射を利用しない場合の倍の距離を超音波が伝播するため、計測における時間分解能が上がるメリットがあり、流量計形状の小型化を図ることができる。 【0006】 一方、図6(b)に示すように受信波形は、V字型の超音波伝播路15による超音波の伝播で生じる正規の受信波17と、これとは別に図6(a)で示す超音波伝播開口窓間の回折による伝播路16により直接伝播する不要な受信波18が生じる。 【0007】 受信波18は計測には必要無いものであり、正規の受信波17と到達時間が近接している場合は、ノイズとなり計測に影響するため、直接伝播する不要な受信波18に対しては、正規の受信波17と時間的に分離できるよう時間差を生じるように構成するか、できるだけ小さくするかの必要がある。 【0008】 従来においては、時間差を持たせるために超音波伝播開口窓の位置を調整し、正規の受信波に影響しないように超音波伝播開口窓の位置等を工夫している。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開平11-201791号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 しかしながら、前記従来の構成では、前記した不要な受信波を避けようとしても、計測流路の超音波伝播開口窓の位置や大きさ、或いは、超音波センサの特性や計測流路の仕様に制限が生じ、例えば、伝播経路を長くする必要がある場合には、超音波センサの感度アップや、計測回路の消費電力の増加などの課題があった。また、計測流路部の小型化や計測システムとしての最適化を行う上でも制限を受けるという課題を有していた。 【0011】 また、上記の課題を解決しようとして、超音波入出口の超音波伝播開口窓の流れ方向の長さを著しく大きくすると、流体の流れが、この超音波伝播開口窓より入り込んで、流速分布に影響を与え、測定が不安定になっていた。 【0012】 本発明は、前記従来の課題を解決するもので、超音波伝播開口窓間の直接伝播波(不要な受信波)の影響を少なくし、構成の簡易化・小型化を図り、かつ低コストの超音波流量計を提供することを目的とする。」 「【図5】 [図:0001393802000001.jpg] 」 「【図6】 [図:0001393802000002.jpg] 」 b 段落【0023】~【0026】、【図1】 「【0023】 (実施の形態1) 図1は、本発明の第1の実施の形態である超音波流量計の断面図を示す。 【0024】 図1(a)は側面断面図、(b)は流体の流入側からみた側面図であり、図において、超音波流量計1は、計測流路2と、計測流路2の上流側に流体を流入する流入路1aで構成された開口部3を有する。また、計測流路2に隣接するセンサ取付け部4を備え、センサ取付け部4には一対の超音波センサ5a、5bが取付けられ、その上部に超音波センサにより得られた伝播時間から流量を算出する流量演算手段としての流量演算回路6が設置されている。 【0025】 また、図(b)に示すように、計測流路2の流体が流れる流路断面は矩形に構成されている。 【0026】 なお、流量演算回路6に関しては計測流路及びセンサ取付け部に隣接されない構成でも構わない。」 「【図1】 [図:0001393802000003.jpg] 」 c 段落【0027】~【0031】、【図2】 「【0027】 次に、超音波による流量計測動作を説明する。図2に示すように本発明においては一対の超音波センサ5a、5bを計測流路2の矩形断面の同一面上(図1では、矩形断面の短辺側)に配置する構成とするため、超音波の送受信の伝播経路は対向壁面で反射させたV字型の伝播路となり、この上流、下流の超音波センサ間で超音波の送受が行われる。 【0028】 この構成において、上流側の超音波センサ5aから発せられた超音波が下流側の超音波センサ5bで受信されるまでの伝播時間T1を計測する。また一方、下流側の超音波センサ5bから発せられた超音波が上流側の超音波センサ5aで受信されるまでの伝播時間T2を計測する。 【0029】 このようにして測定された伝播時間T1およびT2を基に、以下の演算式により流量演算回路6で流速が算出される。 【0030】 いま、計測流路の流動方向の被計測流体の流速Vと超音波伝播路とのなす角度をθとし、超音波センサ間の距離を2×L、被測定流体の音速をCとすると、流速Vは以下の式にて算出される。 【0031】 式(1) T1=2×L/(C+Vcosθ) 式(2) T2=2×L/(C-Vcosθ) T1の逆数からT2の逆数を引き算する式より音速Cを消去して 式(3) V=(2×L/2cosθ)((1/T1)-(1/T2)) θおよびLは既知なので伝播時間T1およびT2の値より流速Vが算出できる。いま、空気の流量を計ることを考え、角度θ=45度、距離L=35mm、音速C=340m/s、流速V=8m/sを想定すると、T1=2.0×10-4秒、T2=2.1×10-4秒であり、瞬時計測ができる。」 「【図2】 [図:0001393802000004.jpg] 」 d 段落【0032】~【0036】、【図3】 「【0032】 図3は本発明の特徴である超音波の入出口である超音波伝播開口窓の形状を示す図で、図1の計測流路の超音波センサ取付け側の壁面のA-A’矢視図であり、7a、7bは図1の超音波センサ5a、5bの超音波送受信のための超音波伝播開口窓である。 【0033】 従来例で前述したように、V字の伝播路の流路では、一方の超音波センサから発信された超音波はセンサ取付け部と対向する壁面で反射し、もう一方の超音波センサで受信される伝播経路を構成するが、2つの超音波伝播開口窓間において、一部の超音波が回折して超音波センサからの信号がもう一方の超音波センサに直接伝播する経路を有する。この直接伝播の受信波が正規の伝播路(即ち、V字の伝播路)を経て来た受信波と時間的に近接する場合、計測ロジックの誤動作や、受信波のノイズとなり計測性能に悪影響をもたらす可能性がる。 【0034】 本実施の形態では、図3(a)に示すように2つの超音波伝播開口窓7a、7bで回折を起こす流路短編側の外形状が曲線で構成されているため、従来例(図5,6)で示したように一定方向に回折せず、回折による伝播波は、曲線に対し法線状に拡散することでその伝播経路が分散されるため、他方の超音波センサが受ける不要な受信波のレベルは大きく低減される。 【0035】 これによって、従来の超音波伝播開口窓形状ではV字の伝播路や超音波伝播開口窓の位置や大きさにより直接伝播の受信波が正規の伝播路を経て来た受信波と時間的に近接しないように、流量計測部の仕様に落とし込む必要があったが、回折による直接伝播波のレベルを小さくすることができ、流量計の設計自由度が上がるため、例えば、計測流路を小型化する、計測性能を上げるなど目的に応じた流路設計の最適仕様に落とし込むことが可能となる。 【0036】 なお、計測に悪影響を及ぼす回析波は超音波伝播開口窓の互いに近い側で発生する為、図3(b)に示すように、超音波伝播開口窓7a’、7b’の輪郭形状において、円弧に形成するのは、互いに近い側に位置する方のみでよく、他方は従来のように直線としても同様の効果を得ることができる。」 「【図3】 [図:0001393802000005.jpg] 」 e 段落【0037】~【0041】、【図4】 「【0037】 (実施の形態2) 図4は本発明の第2の実施の形態を示す図で、図4(a)は図1のA-A’方向の流路壁の矢視図、図4(b)は図4(a)のB-B’方向の計測流路(F)の断面図を示す。図4に示すように2つの超音波伝播開口窓の間の壁面8の流体流れに対して垂直な断面を波型形状8aにすることで、超音波伝播開口窓で回折の起こる位置が波型の高さで変わるため伝播距離が変わり分散が更に助長されるため、直接伝播波の影響がより小さくなる。 【0038】 なお、本実施の形態では図4(b)示すよう波型を三角形状で構成しているが、凸凹状のものであれば特に減されるものではなく、また凸凹の間隔が均等なものでなくても構成は可能である。 【0039】 また、本実施の形態では、波型の高さh1を、超音波伝播開口窓7aの上流側の流路(E)の流路断面積と波型を有する計測流路(F)の流路断面積が同じとなるようにしている。なお、超音波伝播開口窓7bの下流側の計測流路(G)の流路断面積とも同じであることは言うまでもない。 【0040】 例えば、本実施の形態においては、波型が三角波でありその山と谷の位置の平均h2を超音波伝播開口窓7aの上流側(E)の流路高さh3と同じとすることで、流量断面積が同じになるように構成している。 【0041】 なお、超音波センサ取付け側の壁面が全面波型を有する構成でも構わない。」 「【図4】 [図:0001393802000006.jpg] 」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「 計測流路2と、計測流路2の上流側に流体を流入する流入路1aで構成された開口部3を有する超音波流量計1であって、(【0024】) 計測流路2に隣接するセンサ取付け部4を備え、センサ取付け部4には一対の超音波センサ5a、5bが取付けられ、その上部に超音波センサにより得られた伝播時間から流量を算出する流量演算手段としての流量演算回路6が設置されており、(【0024】) 一対の超音波センサ5a、5bを計測流路2の矩形断面の同一面上に配置する構成とし、超音波の送受信の伝播経路は対向壁面で反射させたV字型の伝播路となり、この上流、下流の超音波センサ間で超音波の送受が行われるものであり、(【0027】) 上流側の超音波センサ5aから発せられた超音波が下流側の超音波センサ5bで受信されるまでの伝播時間T1を計測する一方、下流側の超音波センサ5bから発せられた超音波が上流側の超音波センサ5aで受信されるまでの伝播時間T2を計測し、(【0028】) このようにして測定された伝播時間T1およびT2を基に、流量演算回路6で流速が算出されるものであり、(【0029】) 超音波センサ5a、5bの超音波送受信のための超音波伝播開口窓7a、7bがあり、(【0032】) 2つの超音波伝播開口窓7a、7bで回折を起こす流路短編側の外形状が曲線で構成されているため、一定方向に回折せず、回折による伝播波は、曲線に対し法線状に拡散することでその伝播経路が分散されるため、他方の超音波センサが受ける不要な受信波のレベルは大きく低減され、(【0034】) 2つの超音波伝播開口窓の間の壁面8の流体流れに対して垂直な断面を波型形状8aにすることで、超音波伝播開口窓で回折の起こる位置が波型の高さで変わるため伝播距離が変わり分散が更に助長されるため、直接伝播波の影響がより小さくなり、(【0037】) 波型は、凸凹状のものであればよく、凸凹の間隔が均等なものでなくても構成は可能であり、(【0038】) 超音波センサ取付け側の壁面が全面波型を有する構成でも構わない、(【0041】) 超音波流量計1。」 イ 引用文献3に記載された事項と引用文献3技術事項の認定 (ア) 引用文献3記載された事項 当審において新たに引用する文献である特開2006-324889号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0027】 図1および図3に示すように、この超音波探触子は、バッキング部材1と、振動子2と、位置決め部材の一例としてのガイド部材3と、板状のマスキング部材4とを備える。 【0028】 上記バッキング部材1は、樹脂から成り、球面形状の凹面5を有している。上記振動子2は、一体の超音波送受信面8を有している。上記振動子2は、湾曲した長板形状を有している。上記振動子2は、振動子2が球面形状の凹面5の大円上を延在するように、バッキング部材1の凹面5に固定されている。上記超音波送受信面8は、超音波の送信機能と超音波の受信機能の両方を有している。上記超音波送受信面8は、仮想球面の大円上を延在している。 …(中略)… 【0034】 上記マスキング部材4は、図1に示すように、長方形の表面を有している。また、上記マスキング部材4は、マスキング部材4の表面およびマスキング部材4の長手方向の縁に垂直で、かつ、マスキング部材4の中心を通る平面に対して、面対称な二つの同一の略長方形形状の長穴20,21を有している。上記マスキング部材4の長穴20,21以外の部分は、超音波の通過を遮断する本体部になっている。上記長穴20,21の長手方向の縁22,23,24,25は、マスキング部材4の幅方向の縁と略平行になっている。図1に示すように、上記長穴20の長穴21側の縁23、長穴20の長穴21側と反対側の縁22、長穴21の長穴20側の縁24、および、長穴21の長穴20側と反対側の縁25には、マスキング部材4の幅方向に山と谷とが交互に形成されたのこぎり波状の波目が形成されている。詳しくは、上記山はマスキング部材4の長手方向に延びている。 …(中略)… 【0038】 次に、振動子2から超音波を発振して、振動子2から発振されて上記軌道底で反射して振動子2に到達した超音波を振動子2で検出し、振動子2が超音波を発振した時刻から超音波が最初に振動子2に到着した時刻までの時間を測定する。そして、この時間に基づいて振動子2と上記軌道溝との距離を測定し、振動子2と上記軌道溝との距離を、振動子2と凹部5の大円の中心P(図4参照)との距離よりも短い所定距離に設定する。 【0039】 次に、マスキング部材4を手動でガイド部材3に挿入し、マスキング部材4を固定位置に固定する。そして、振動子2から超音波を発振して、振動子2から発振されてマスキング部材4の一方の穴20を通過して、上記軌道底を周方向にそって所定距離伝播し、その後、マスキング部材4の他方の穴21を通過して振動子2に到達する超音波を検出する。 …(中略)… 【0042】 また、上記第1実施形態の超音波探触子によれば、マスキング部材4を有し、かつ、そのマスキング部材4が振動子2から発振された超音波の一部が通過する穴20,21を有するので、マスキング部材4で振動子2から発振された超音波のうちで必要な部分だけを容易に取り出すことができると共に、振動子2から発振された超音波のうちの不必要でノイズとなる部分を容易に遮断することができる。したがって、被疲労度測定部材を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。 【0043】 また、上記第1実施形態の超音波探触子によれば、マスキング部材4の穴20,21の縁の一部22,23,24,25に、波目が形成されているので、穴20,21の縁の一部22,23,24,25を通過する複数の超音波が互いに重なることにより弱め合って、穴22,23の縁の一部22,23,24,25から発生する回折波(ノイズ超音波)を格段に抑制できる。したがって、上記軌道底を伝播する超音波の伝播速度を更に正確に測定できる。 …(中略)… 【0047】 また、上記第1実施形態の超音波探触子では、マスキング部材4の長穴20,21に、のこぎり波状の波目を形成した。しかしながら、この発明では、マスキング部材の穴に例えば正弦波状の波目等のこぎり波状の波目以外の波目を形成しても良い。 【0048】 また、上記第1実施形態の超音波探触子では、図1に示すように、マスキング部材4の長穴20,21の長手方向の縁22,23,24,25に、のこぎり波状の波目を形成した。 【0049】 しかしながら、この発明では、マスキング部材4の代わりに、図8に示すように、マスキング部材4と比較して、長穴40の長手方向の長穴41側と反対側の縁の波目を省略すると共に、長穴41の長手方向の長穴40側と反対側の縁の波目を省略したマスキング部材45を採用しても良い。 【0050】 また、マスキング部材4の代わりに、図9に示すマスキング部材64を採用しても良い。このマスキング部材64は、丸穴60,61を有し、この丸穴60,61の縁の全てには、マスキング部材64の長手方向に略延びる山と谷とが、マスキング部材4の幅方向に交互に形成されたのこぎり波状の波目が形成されている。 【0051】 また、マスキング部材4の代わりに、図10に示すマスキング部材75を採用しても良い。このマスキング部材75は、D字状の穴70,71を有し、穴70および穴71の円弧部分は対向配置されている。また、D字状の穴70,71の縁の全てには、マスキング部材75の長手方向に略延びる山と谷とが、マスキング部材75の幅方向に交互に形成されたのこぎり波状の波目が形成されている。 【0052】 また、上記第1実施形態の超音波探触子では、バッキング部材1とガイド部材3が別体であったが、バッキング部材とガイド部材は一体であっても良い。 【0053】 また、上記第1実施形態の超音波探触子では、穴20,21の縁に形成されたのこぎり波の波目の寸法には制限を設けなかった。しかしながら、のこぎり波の波目の互いに隣接する山の間の幅wを、山の高さhよりも小さくし、山の間の幅wを、振動子2から発振される超音波の水中での波長の1/2よりも小さく設定すると、波目が形成された縁からの回折波(ノイズ波)の発生を確実に防止できる。例えば、振動子2から発振される超音波の周波数を、5×106[Hz]とすると、水温が26.3[℃]のときの音波の水中の音速が1500[m/s]であるので、水温が26.3[℃]の場合では、振動子2から発振される超音波の水中での波長は、略3×10-4[m]となる。したがって、wを、(3×10-4)/2=1.5×10-4[m]よりも小さく設定すると、波目が形成された縁からの回折波(ノイズ波)の発生を確実に防止できる。尚、水温の変動による水中の音速の変動は非常に小さいので、水中の音速として、1500[m/s]を用いることができる。」 「【図1】 [図:0001393802000007.jpg] 」 「【図2】 [図:0001393802000008.jpg] 」 「【図3】 [図:0001393802000009.jpg] 」 「【図8】 [図:0001393802000010.jpg] 」 「【図9】 [図:0001393802000011.jpg] 」 「【図10】 [図:0001393802000012.jpg] 」 (イ) 引用文献3技術事項の認定 前記(ア)に摘記した事項から、引用文献3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3技術事項」という。)。 [引用文献3技術事項] 「 バッキング部材1と、振動子2と、ガイド部材3と、板状のマスキング部材4を備える超音波探触子であって、(【0027】) 上記振動子2は、一体の超音波送受信面8を有し、上記超音波送受信面8は、超音波の送信機能と超音波の受信機能の両方を有しており、(【0028】) 上記マスキング部材4は、長方形の表面を有しており、マスキング部材4の表面およびマスキング部材4の長手方向の縁に垂直で、かつ、マスキング部材4の中心を通る平面に対して、面対称な二つの同一の略長方形形状の長穴20,21を有しており、上記長穴20の長穴21側の縁23、長穴20の長穴21側と反対側の縁22、長穴21の長穴20側の縁24、および、長穴21の長穴20側と反対側の縁25には、マスキング部材4の幅方向に山と谷とが交互に形成されたのこぎり波状の波目が形成されており、(【0034】) 振動子2から超音波を発振して、振動子2から発振されて軌道底で反射して振動子2に到達した超音波を振動子2で検出し、振動子2が超音波を発振した時刻から超音波が最初に振動子2に到着した時刻までの時間を測定するものであり、(【0038】) 振動子2から超音波を発振して、振動子2から発振されてマスキング部材4の一方の穴20を通過して、上記軌道底を周方向にそって所定距離伝播し、その後、マスキング部材4の他方の穴21を通過して振動子2に到達する超音波を検出するものであり、(【0039】) マスキング部材4を有し、かつ、そのマスキング部材4が振動子2から発振された超音波の一部が通過する穴20,21を有するので、マスキング部材4で振動子2から発振された超音波のうちで必要な部分だけを容易に取り出すことができると共に、振動子2から発振された超音波のうちの不必要でノイズとなる部分を容易に遮断することができ、(【0042】) マスキング部材4の穴20,21の縁の一部22,23,24,25に、波目が形成されているので、穴20,21の縁の一部22,23,24,25を通過する複数の超音波が互いに重なることにより弱め合って、穴20,21の縁の一部22,23,24,25から発生する回折波(ノイズ超音波)を格段に抑制でき、(【0043】) 穴20,21の縁に形成されたのこぎり波の波目の寸法には制限を設けないが、のこぎり波の波目の互いに隣接する山の間の幅wを、山の高さhよりも小さくし、山の間の幅wを、振動子2から発振される超音波の水中での波長の1/2よりも小さく設定すると、波目が形成された縁からの回折波(ノイズ波)の発生を確実に防止できる、(【0053】) 超音波探触子。」 ウ 引用文献4に記載された事項と技術常識1の認定 (ア) 引用文献4に記載された事項 当審において新たに引用する文献である国際公開第2012/137489号(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。 a 段落[0032]~[0033]、[図4] 「[0032] 図4は、本発明の実施の形態における流量計測ユニット26の構成を示す分解斜視図である。 [0033] 図4に示すように、流量計測ユニット26は、センサ取付け筐体7および計測流路1の、二つの成型部品によって構成されている。」 「[図4] [図:0001393802000013.jpg] 」 b 段落[0053] 「[0053] 従来のように、別途、金網等の流れ込み抑制部材を必要とする場合には、計測流路1およびセンサ取付け筐体7の二部品構成が必須である。しかしながら、各実施の形態で述べたような成型加工を用いる場合には、別体の抑制部材を設ける必要がないので、センサ取付け筐体7および計測流路1の一体加工も可能となる。つまり、センサ取付け筐体7および計測流路1を一体構成とすることができる。よって、さらなる組立工数の低減が図れ、コストダウンが可能であるとともに、一体で加工できるため、組立による精度ばらつきが無くなり、より高精度の計測が可能となる。」 (イ) 技術常識1の認定 前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という)。 [技術常識1] 「組立工数の低減等によるコストダウンのため、流量計測ユニットのセンサ取付け筐体と計測流路を一体加工して、一体構成にできること。」 エ 引用文献5に記載された事項と技術常識2、3の認定 (ア) 引用文献5に記載された事項 当審において新たに引用する文献である特開2001-311636号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。 a 段落【0028】~【0033】、【図1】、【図2】 「【0028】(実施例1)図1は本発明の実施例1を示す超音波流量計測装置の構成断面図である。図1において、6は流路壁7に囲まれた計測流路であり、8および9はこの計測流路6を挟んで互いに対向するように計測流路の上流側および下流側に設けた超音波送受信器である。この超音波送受信器8、9は防振と気密シールを行う支持体10を介して流路壁7に取付けられ、上流側の超音波送受信器8と下流側の超音波送受信器9は距離Lを隔てるとともに計測流路6の長手方向に対して角度θ傾けて設置されている。11、12は超音波送受信器8、9を計測流路6を流れる被測定流体に臨ませる上流側および下流側の開口穴であり、流路壁7に対して窪みとなっている。13は対向する超音波送受信器8および9間で送信された超音波が壁面に反射すること無く直接相手側の超音波送受信器に伝搬する超音波伝搬路(二点鎖線で領域を示す)である。14は計測流路6に設けた第一の不要伝搬波減衰手段であり、この第一の不要伝搬波減衰手段14は超音波伝搬路13の上流側の近傍で計測流路6の幅W方向を分割するように配置するとともに流れ方向に延びる吸音材料で形成した第一の吸音手段15を設けている。この第一の吸音手段15は通気性の有る発泡体としての樹脂や金属の多孔質吸音材やフェルト、グラスウールなどの不織布などが利用でき、図2に示すように計測流路6の高さH方向にわたり全域に形成して配置している。特に、第一の吸音手段の材質としては、アルミニウム系などの金属多孔質発泡材は剛体であるので計測流路6に設置が容易であるとともに、フェルト、グラスウールのような不織布で起こる繊維の離散が生じにくいため被測定流体を汚さず信頼性を高くでき、さらに経年劣化が少ないため長期間にわたり安定して使用でき耐久性に優れる。 【0029】16は計測流路6の入口側に設けた流入抑制体であり、流路壁7に設けた窪み部に嵌め込むようにして設置し流路壁7との段差が無いようにしている。この流入抑制体16は被測定流体の流れ方向を整える方向規制部16aと流速分布の均一化あるいは流れの脈動を低減する変動抑制部16bを有している。この方向規制部16aは計測流路6の横断面を分割する仕切壁が設けられており、変動抑制部16bは流れ方向の長さが短く計測流路6の横断面に対して多数の微細形状の連通路を有している。17は計測流路6の上流側に設けた開閉弁(図示せず)に連通する屈曲部、18は計測流路6の下流側の屈曲部であり、屈曲部17、18により流路がコンパクトに構成されている。19は超音波送受信器8、9に接続され超音波の送受信をさせる計測制御部であり、20は計測制御部19での信号を基に流速を計算し流量を算出する演算部である。 【0030】次に超音波による流量計測動作を説明する。計測流路6の超音波伝搬路13では、流れに対して計測制御部19の作用により超音波送受信器8、9間で計測流路6を横切るようにして超音波の送受が行われる。すなわち、上流側の超音波送受信器8から発せられた超音波が下流側の超音波送受信器9で受信されるまでの伝搬時間T1を計測する。また一方、下流側の超音波送受信器9から発せられた超音波が上流側の超音波送受信器8で受信されるまでの伝搬時間T2を計測する。 【0031】このようにして測定された伝搬時間T1およびT2を基に、以下の演算式により演算部20で流量が算出される。 【0032】いま、計測流路5の長手方向の被計測流体の流速Vと超音波伝播路とのなす角度をθとし、超音波送受信器7、8間の距離をL、被測定流体の音速をCとすると、流速Vは以下の式にて算出される。 【0033】T1=L/(C+Vcosθ) T2=L/(C-Vcosθ) T1の逆数からT2の逆数を引き算する式より音速Cを消去して V=(L/2cosθ)((1/T1)-(1/T2)) θおよびLは既知なのでT1およびT2の値より流速Vが算出できる。いま、空気の流量を計ることを考え、角度θ=45度、距離L=70mm、音速C=340m/s、流速V=8m/sを想定すると、T1=2.0×10-4秒、T2=2.1×10-4秒であり、瞬時計測ができる。ここで、計測流路5の流れ方向に直交する横断面積sより、流量Qは Q=kVs ここで、kは横断面積sにおける流速分布を考慮した換算係数である。」 「【図1】 [図:0001393802000014.jpg] 」 「【図2】 [図:0001393802000015.jpg] 」 b 段落【0044】~【0047】、【図6】 「【0044】図6は第一の不要伝搬波減衰手段の他の実施例を示す構成図であり、図1~図5の実施例と同一部材、同一機能は同一符号を付し詳細な説明は省略し、異なるところを中心に説明する。図6において、23は計測流路6の幅Wを決めている流路壁7の内壁面に設けた乱反射手段であり、計測流路6の内壁面から突出しないように配置して流れを乱さないようにしている。この乱反射手段23は表面の凹凸の高さHsが超音波の波長λの1/4より大きくした(Hs>λ/4)ものであり、例えば超音波の周波数が200kHzで被測定流体を常温の空気(音速340m/s)とした場合では超音波の波長λ=1.7mmとなり、乱反射手段23には表面の凹凸の高さHsは0.425mmより大きくすることになる。 【0045】ここで、超音波伝搬路13を外れた不要伝搬波が乱反射手段23に衝突すると、不要伝搬波は一定の方向ではなく全方向に乱反射されるため受信側の超音波送受信器に到達する不要伝搬波を弱めることができ、直接波の割合を高めた受信波形の計測ができる。また、乱反射手段23を吸音材料で形成することにより乱反射の効果と吸音による減衰効果の両方により、受信側の超音波送受信器に到達する不要伝搬波を一層低減できる。 【0046】さらに、乱反射手段23と第一の吸音手段15あるいは21、あるいは第二の吸音手段22を第一の不要伝搬波減衰手段14として組合わせることで、受信波形のノイズをさらに低減してS/N特性を高めて計測精度の向上と低消費電力化の向上ができる。 【0047】このように、計測流路内で正規の超音波伝搬路を外れた不要波が発生しても、その不要波は計測流路の内面に設けた乱反射手段により一定の方向ではなく全方向に乱反射されるため、不要波の一部が受信側に到達する場合でも不要波が乱反射により弱められているため受信側のノイズを低減でき、S/N特性に優れた高感度な超音波の送受信が可能となり計測精度を高めることができる。」 「【図6】 [図:0001393802000016.jpg] 」 (イ) 技術常識2の認定 前記(ア)に摘記した事項(特に段落【0044】)に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という)。 [技術常識2] 「超音波流量計においては、超音波の周波数が200kHz程度のものが使用されることがあり、被測定流体を常温の空気(音速340m/s)とした場合には、超音波の波長λはλ=1.7mm程度であること。」 (ウ) 技術常識3の認定 前記(ア)に摘記した事項に例示されるように、次の事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識3」という)。 [技術常識3] 「凹凸の高さHsが超音波の波長λの1/4より大きくした(Hs>λ/4)、凹凸のある表面で超音波が乱反射されること、及び、超音波流量計において、不要伝搬波を乱反射させて受信側のノイズを低減すること。」 (3) 対比・判断 ア 対比 (ア) 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 a(a) 引用発明の「超音波流量計1」は、本件補正発明の「超音波流量計」に相当する。 (b) 引用発明の「計測流路2」は、本件補正発明の「被計測流体が流れる計測流路」に相当する。 (c) 引用発明の「一対の超音波センサ5a、5b」は、「計測流路2の矩形断面の同一面上に配置する構成」であり、「上流、下流の超音波センサ間で超音波の送受が行われるもの」であるから、本件補正発明の「前記計測流路上の同一面の上流と下流に配置され、超音波信号の送受信が可能な一対の超音波センサ」に相当する。 (d) 引用発明では、「超音波の送受信の伝播経路は対向壁面で反射させたV字型の伝播路となり」、「上流側の超音波センサ5aから発せられた超音波が下流側の超音波センサ5bで受信されるまでの伝播時間T1」と「下流側の超音波センサ5bから発せられた超音波が上流側の超音波センサ5aで受信されるまでの伝播時間T2」を基に「流量演算回路6で流速が算出される」から、引用発明の「流量演算回路6」は、本件補正発明の「前記超音波センサの一方から送信された超音波信号が前記被計測流体を伝搬して、対向する面に少なくとも1回反射して他方の超音波センサが受信するまでの伝搬時間に基づいて、前記被計測流体の流量を検出する流量演算手段」に相当する。 (e) (a)から(d)までの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、次の点で一致する。 「被計測流体が流れる計測流路と、 前記計測流路上の同一面の上流と下流に配置され、超音波信号の送受信が可能な一対の超音波センサと、 前記超音波センサの一方から送信された超音波信号が前記被計測流体を伝搬して、対向する面に少なくとも1回反射して他方の超音波センサが受信するまでの伝搬時間に基づいて、前記被計測流体の流量を検出する流量演算手段と、を備えた、超音波流量計」という点。 b(a) 引用発明の「超音波センサ5a、5bの超音波送受信のための超音波伝播開口窓7a、7b」は、本件補正発明の「前記一対の超音波センサに対応して上流側と下流側に備え」た「前記超音波センサから放射される音波を取り込む開口部」に相当する。 (b) よって、本件補正発明と引用発明は、「前記計測流路は、前記超音波センサから放射される音波を取り込む開口部を前記一対の超音波センサに対応して上流側と下流側に備え」る点で一致する。 c(a) 引用発明の「2つの超音波伝播開口窓7a、7b」の間の「壁面8」は、「凸凹状」の「波型形状8a」になっているところ、「超音波センサ取付け側の壁面が全面波型を有する構成でも構わない」としているから、引用発明の「超音波センサ取付け側の壁面」は全面が凸凹状に形成されているといえる。 ここで、「超音波センサ取付け側の壁面」には「2つの超音波伝播開口窓7a、7b」が設けられているから、上流側の超音波伝播開口窓7aの上流に位置する淵(以下「上流淵」という。)、及び、下流側の超音波伝播開口窓7bの下流に位置する淵(以下「下流淵」という。)において、超音波センサ取付け側の壁面の全面に形成された凸凹状の部材が存在しているといえる。 そうすると、引用発明の上流淵及び下流淵は、それぞれ本件補正発明の「複数の凹凸形状」が「形成」された「上流側の前記開口部の上流に位置する淵」及び「下流側の前記開口部の下流に位置する淵」に相当する。 (b) 引用発明において、凸凹状の波型は、「2つの超音波伝播開口窓の間の壁面8の流体流れに対して垂直な断面を波型形状8aにすることで、超音波伝播開口窓で回折の起こる位置が波型の高さで変わるため伝播距離が変わり分散が更に助長されるため、直接伝播波の影響がより小さくな[る]」という作用を奏するものであるから、凸凹状の波型は、超音波の波長と比較し得る程度のサイズを持つものであって、超音波の波長の1/10よりも大きいと考えるのが常識的である。そして、「凹凸の高さHsが超音波の波長λの1/4より大きくした(Hs>λ/4)、凹凸のある表面で超音波が乱反射されること、及び、超音波流量計において、不要伝搬波を乱反射させて受信側のノイズを低減すること」は技術常識であるから(技術常識3を参照)、上流淵において反射する成分は、上流淵における凸凹状の部材により乱反射され、上流淵における凸凹状の部材により乱反射される超音波は、直接伝播波として超音波センサ5bにおいて受信されにくくなることも自明である。 (c) 同様に、引用発明の超音波センサ5bから送信される超音波のうち、下流淵に到達した超音波の一部が当該下流淵において反射されることも自明であり、下流淵において反射する成分は、下流淵における凸凹状の部材により乱反射され、直接伝播波として超音波センサ5aにおいて受信されにくくなることも自明である(引用文献1の【図1】に示された超音波伝播開口窓7bの下流淵の断面形状が下流から上流に沿って左斜め下に延びていることを参照。)。 そうすると、引用発明における上流淵及び下流淵にある凸凹状の部材は、本件補正発明の「音波を乱反射するようにした不要音波抑制部」に相当する。 (d) 前記(a)から(c)までの検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は「少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵に複数の凹凸形状を形成して、音波を乱反射するようにした不要音波抑制部を設けた」という点で一致する。 (イ) 一致点及び相違点の認定 前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。 a 一致点 「被計測流体が流れる計測流路と、 前記計測流路上の同一面の上流と下流に配置され、超音波信号の送受信が可能な一対の超音波センサと、 前記超音波センサの一方から送信された超音波信号が前記被計測流体を伝搬して、対向する面に少なくとも1回反射して他方の超音波センサが受信するまでの伝搬時間に基づいて、前記被計測流体の流量を検出する流量演算手段と、を備え、 前記計測流路は、前記超音波センサから放射される音波を取り込む開口部を前記一対の超音波センサに対応して上流側と下流側に備え、 少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵に複数の凹凸形状を形成して、音波を乱反射するようにした不要音波抑制部を設けた超音波流量計。」 である点。 b 相違点 (a) 相違点1 本件補正発明では、「前記計測流路と前記開口部は一体に成型されて[いる]」のに対して、引用発明では、計測流路2と超音波伝播開口窓7a、7bが一体に成型されたものであるか明らかではない点。 (b) 相違点2 「音波を乱反射するようにした不要音波抑制部」が、本件補正発明では、「少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵に開口の内側に向けて複数の凹凸形状を形成して」設けられているのに対して、引用発明では、超音波センサ取付け側の壁面の全面が凸凹状に形成されており、上流淵及び下流淵にも凸凹状の部材があるものの、超音波伝播開口窓7a、7bの内側まで凸凹状にはなっていない点。 イ 判断 (ア) 相違点1について 「組立工数の低減等によるコストダウンのため、流量計測ユニットのセンサ取付け筐体と計測流路を一体加工して、一体構成にできること」は技術常識であるから(技術常識1を参照)、引用発明において、「計測流路2」と「超音波伝播開口窓7a、7b」が一体に成型されたものとすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、相違点1に係る構成は、格別のものではない。 (イ) 相違点2について a 引用発明は、超音波伝播開口窓において回折する不要な受信波のレベルを低減することを課題としている。 b 引用文献3も、穴の縁の一部から発生する回折波(ノイズ超音波)を抑制することを課題としており、そのための解決手段である引用文献3技術事項として、振動子2から発振した超音波がマスキング部材4の一方の穴20を通過し、その後、マスキング部材4の他方の穴21を通過して振動子2に到達する超音波を検出する際に、振動子2から発振された超音波のうち不必要でノイズとなる部分を遮断するために、マスキング部材4の穴の縁に、マスキング部材4の幅方向に山と谷とが交互にあり、山の間の幅wを、山の高さhよりも小さくし、山の間の幅wを、振動子2から発振される超音波の波長の1/2よりも小さく設定する、のこぎり波状の波目を形成することが、開示されている。 c ここで、引用文献3技術事項のマスキング部材4の穴の縁に形成されたのこぎり波状の波目は、マスキング部材4の厚み方向に沿って延びていると認められる。 d そうすると、引用文献3技術事項の開示内容に倣って、超音波センサ取付け側の壁面の全面に形成された凸凹形状を超音波伝播開口窓7a、7bの内側まで延長するように構成し、山の間の幅wを、山の高さhよりも小さくし、山の間の幅wを、振動子2から発振される超音波の波長の1/2よりも小さく設定することは、当業者が容易に想到し得たことである。 すなわち、具体的には、「超音波流量計においては、超音波の周波数が200kHz程度のものが使用されることがあり、被測定流体を常温の空気(音速340m/s)とした場合には、超音波の波長λはλ=1.7mm程度であること」という技術常識2から、引用発明の超音波の波長をλ=1.7mmと認識し、製造上の容易性やコスト等を考慮して、例えば、w(<h)を波長の半分以下の0.8mmから0.5mm程度の値(λ/4より大きい値)に設定することは、当業者にとっては自明の設計事項というべきである(このように設定すると、λ/4<w<h<λ/2が成立するから、回折波を抑制できるとともに、乱反射によりノイズ低減も可能になる。)。 e したがって、引用発明に引用文献3技術事項を適用することにより、前記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ) 総合評価 前記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果としては、引用発明、引用文献3技術事項及び技術常識1~3から当業者が予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献3技術事項及び技術常識1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 請求人の主張について (ア) 審判請求書の主張内容 請求人の主張は、概略次のとおりである。 主張a 引用文献1は、超音波伝播開口窓の間の壁面の流体流れに対して垂直な断面を波型形状にすることで、超音波伝播開口窓で回折の起こる位置が波型の高さで変わるため伝播距離が変わり分散が更に助長されるため、直接伝播波の影響がより小さくなるものである。 主張b 引用文献1には、超音波センサ取付け側の壁面が全面波型を有する構成でも構わないとの記載があるが、図4に示されているように、この波型形状は、超音波伝播開口窓の間の壁面、即ち、流路の内側に向かって凹凸が形成されているものであり、開口部の淵において、流路の内側に向かって凹凸が形成されるが、開口の内側に向けた凹凸は形成されていないから、本願発明の特徴である、開口部の下流に位置する淵に開口の内側に向けて複数の凹凸形状が形成されたものではない。 (イ) 請求人の主張についての検討 a 主張aについての検討 引用発明の超音波センサ5aから送信される超音波のうち、上流淵において反射する成分が、上流淵における凸凹状の部材により乱反射され、直接伝播波として超音波センサ5bにおいて受信されにくくなることも自明である(前記ア(ア)c(b)を参照)。 同様に、引用発明の超音波センサ5bから送信される超音波のうち、下流淵において反射する成分が、下流淵における凸凹状の部材により乱反射され、直接伝播波として超音波センサ5aにおいて受信されにくくなることも自明である(前記ア(ア)c(c)を参照)。 よって、引用発明においても、反射波が直接伝播することを低減していることは自明であって、本件補正発明が対象とする不要音波についても対処していると考えるべきであるから、前記主張aにより、当審の判断が左右されることはない。 b 主張bについての検討 引用発明において、超音波センサ取付け側の壁面の全面に形成された凸凹状を超音波伝播開口窓7a、7bの内側まで延長するように構成することは、前記イ(イ)において検討したとおり、当業者が容易に想到し得たことであるから、前記主張bを採用することはできない。 エ 小括 以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~3に係る発明は、令和3年6月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての進歩性欠如の理由は、次のとおりである。 理由2(進歩性欠如) 本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2013-186031号公報 3 引用文献に記載された事項 上記引用文献1には、第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 また、技術常識1~3は、前記第2の3(2)ウ(イ)及びエ(イ)(ウ)において認定したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の「音波を乱反射するようにした不要音波抑制部」において、「上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵」の「複数の凹凸形状」が、「開口の内側に向けて」形成されたものであるという限定を省き、「少なくとも、上流側の前記開口部の上流に位置する淵と下流側の前記開口部の下流に位置する淵を複数の凹凸形状に形成」したとするものである(前記第2の2参照)。 そうすると、本願発明と引用発明の相違点は、前記相違点1(前記第2の3(3)ア(イ)b(a)参照)の点のみである。 ここで、前記相違点1に係る構成は、前記第2の3(3)イ(ア)において示したとおり、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、格別のものではないから、引用発明及び技術常識1~3に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の奏する作用効果としては、引用発明及び技術常識1~3からは予測困難で、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-002641

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