特許異議申立
2021-701157
内外装工法
- 審判番号
- 2021-701157
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-167652
- 登録番号
- 6883379
- 請求日
- 2021年12月08日
- 審決日
- 2022年10月20日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】セメダイン株式会社
- 【権利者代理人】渡邉 聡
- 【権利者代理人】藤田 和子
- 【異議申立人】佐藤 彰芳
- 審判長/審判官
- 審判長 住田 秀弘
- 審判官 長井 真一
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.537-YAA(E04F) / P1651.121-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第126条、特許法第120条の5第2項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6883379号発明「内外装工法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6883379号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
特許第6883379号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6883379号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成27年8月27日に出願され、令和3年5月12日にその特許権の設定登録がされ、同年6月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月8日に特許異議申立人 佐藤 彰芳(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年3月25日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年5月30日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
当審より、申立人に対して、同年6月20日付けで期間を指定して本件訂正請求に対する意見を提出する機会を与えたところ、申立人からは何らの応答もなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「 前記酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムの含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、不陸調整用組成物。」と記載されているものを、「 前記酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムの含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であり、
JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であり、
前記回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、
JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有する、不陸調整用組成物。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2に記載の「不陸調整用組成物」について、粘度及びチクソ性、並びにその硬化物の皮膜物性の最大引張強さ及び伸び率について特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の段落【0017】に「不陸調整用組成物は、JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であり、前記回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有する組成物である。」との記載に基づくものであるから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
なお、請求項2に係る特許について特許異議申立ての対象とされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する特許法126条7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
地面に対して略垂直な下地材の面の少なくとも一部に不陸調整用組成物を塗布し、少なくとも一部で厚さが5mmを超える不陸調整層を、一度の塗布で形成する不陸調整層形成工程と、
前記不陸調整層が形成された面に、反応硬化型接着剤を用いて、内装材又は外装材を貼り付ける貼付工程とを含み、
前記不陸調整用組成物は、
JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であり、
前記回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、
JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有する組成物であって、
かつ前記不陸調整用組成物は、
(A)加水分解性シリル基を有し、一般式 -SiR1n(X)3-nで表される硬化性樹脂、
(B)エポキシ化合物、
(C)無機系充填材、
(D)非反応性液状成分、およびアミノシランとケトンとの反応物であるケチミン基含有シラン化合物、
水分吸収剤として、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム、とを含有し、
前記一般式において、Xは加水分解性基を示し、R1は、炭素数が1以上20以下のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示し、
前記(C)無機系充填材は、(C1)平均粒子径が20nm以上200nm以下である表面処理された無機系充填材を含み、
前記(C1)表面処理された無機系充填材の含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して100質量部より多く、
前記(D)非反応性液状成分の含有量は、前記(A)硬化性樹脂及び前記(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して10質量部以上150質量部以下であり
前記酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムの含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、内外装工法。
【請求項2】
(A)加水分解性シリル基を有し、一般式 -SiR1n(X)3-nで表される硬化性樹脂、
(B)エポキシ化合物、
(C)無機系充填材、
(D)非反応性液状成分、およびアミノシランとケトンとの反応物であるケチミン基含有シラン化合物、
水分吸収剤として、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウム、とを含有し、
前記一般式において、Xは加水分解性基を示し、R1は、炭素数が1以上20以下のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示し、
前記(C)無機系充填材は、(C1)平均粒子径が20nm以上200nm以下である表面処理された無機系充填材を含み、
前記(C1)表面処理された無機系充填材の含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して100質量部より多く、
前記(D)非反応性液状成分の含有量は、前記(A)硬化性樹脂及び前記(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して10質量部以上150質量部以下であり、
前記酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムの含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であり、
JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であり、
前記回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、
JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有する、不陸調整用組成物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項2に係る特許に対して、当審が令和4年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
【理由1】特許法36条6項1号違反(サポート要件違反)
訂正前の請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められないし、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められないから、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項2の記載は明細書のサポート要件に適合しておらず、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 当審の判断
(1)特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(2)発明の詳細な説明の記載について
ア 発明が解決しようとする課題
本件発明1及び2に共通する課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、次のとおりのものと認められる。
コンクリート壁にタイルを後張りする場合、従来、セメントモルタルを用いる工法があるが、ドライアウト(硬化不良)が生じ得るなどの課題があるため、下地調整材として接着剤を用いることが提案されており、弾性を有し、歪み追従性に優れるため、接着性及び弾性を維持しながら、作業性にも優れ、コンクリート等の下地の応力によるタイルの剥落や割れを防止することができる(【0002】~【0004】)。
しかし、従来公知の下地調整材は、一度に5mmを超えて塗付すると、垂れが生じたり、硬化に時間がかかるため、一度の作業で10mm程度の厚みをもって硬化可能な下地調整材が望まれていたところ、垂れを防止するために単に充填剤の添加量を増やした場合、コテ等を用いて壁面に塗布する際の抵抗が大きくなり、作業性が悪化するだけでなく、接着剤の硬化物の皮膜物性が劣ることになり、接着剤としての機能を発揮できないことが懸念されたことから、下地調整材として接着剤を使用することの利点を残しつつ、壁面への厚塗りを可能にし、施工者の負担をさらに軽減することである(【0006】~【0008】)。
イ 発明の課題を解決する手段
本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明は、上記アの課題を解決するために、特定の接着材料からなる不陸調整用組成物を用いることで、接着剤を不陸調整材として使用することの利点を残しつつ、厚さが5mmを超える不陸調整層を一度の塗布で好適に形成できるようにしたものであり(【0009】)、不陸調整用組成物は、本件明細書の【0012】に記載の組成を有するものであり、かつ、JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であり、前記回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有するようにしたものである(【0011】)。
そして、上記の構成を採用した意義について、本件明細書には、回転数1rpmでの粘度を3000Pa・s超えにすることで、垂れが生じ難く、均一な層厚で形成し易くでき、粘度が6000Pa・s以下であることで、下地材表面にコテ等を用いて塗布する際の抵抗が大きくなり過ぎず、チクソ性を5.0以上にすることで、コテで塗り広げる際の施工性を高めることができ、最大引張強さを0.6N/mm2以上にすることで、接着力の低下を抑えられ、破断時の伸び率を35%以上にすることで内装材や外装材の剥離、剥落を低減できることが記載されている(【0024】~【0031】)。
以上によれば、上記構成を採用することにより、不陸調整用組成物として弾性接着材料を使用することの利点を残しつつ、弾性接着材料の壁面への厚塗りを可能にし、施工者の負担をさらに軽減することができるものと認められる(【0013】)。
本件明細書の【0146】の【表1】に、モルタル板に厚さ7mm以上になるように一度に塗布して、不陸調整用組成物層を形成した場合(【0155】)について、実施例1~3及び比較例1、2が示されている。
[図:0001393076000001.jpg]
表1に示される結果から、実施例1~3の不陸調整用組成物は、先に示した粘度、チクソ性、皮膜物性の物性にかかる数値範囲を満たしており、塗付性について、塗り広げ作業性が良好であり、垂れの有無について、塗布した不陸調整用組成物に垂れが生じなかったことが示され、作業性が良好であることが理解できる。
他方、粘度が6000Pa・sを超える比較例1は、塗付性について、塗り広げ作業性が良好でないことが示され、粘度が3000Pa・s以下である比較例2は、垂れの有無について、塗布した不陸調整用組成物に垂れが生じることが示され、いずれも作業性が良好なものでないことが理解できる。
そうすると、上記アに示した本件発明に共通する課題を解決できるためには、不陸調整用組成物が、本件明細書の【0012】に記載の組成を有するものであるだけでは足りず、先に示した粘度等の物性に係る数値範囲を満たしている必要があるものと認められる。
ウ 特許請求の範囲の記載について
本件発明2は、不陸調整用組成物について、本件明細書の【0012】に記載の組成を有することを特定しているとともに、不陸調整用組成物が、上記イに記載した粘度等の物性が特定の数値範囲を有することについても特定しているから、上記アに記載した課題を解決することができる。
したがって、本件発明2は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
エ まとめ
以上のとおりであるから、本件特許に係る特許請求の範囲の請求項2の記載は明細書のサポート要件に適合するものであり、特許法36条6項1号の要件を満たすものである。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法29条2項(同法113条2号)
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、本件発明1、2は、甲第1号証(特開2013-32675号公報。以下「甲1」という。)、周知技術(公知技術)及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきである旨申し立てている。
2 甲1について
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、・・・不陸を有する下地材に対して、外装材を優れた密着性及び追従性にて張ることができ、且つ、施工が簡易な外装工法を提供することを課題とする。 」
「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の外装工法・・・は、不陸を有する下地材表面に、B形粘度計を用いて、JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、回転数1r/minで測定した粘度Aが、1000Pa・s~3000Pa・sの範囲であり、該粘度Aと回転数10r/minで測定した粘度Bとの粘度比(A/B)が6以上であり、且つ、硬化して得られた硬化物が示すJIS A5557に準拠して測定したダンベル物性が、最大引張強さが0.4N/mm2~2.0N/mm2であり、破断時の伸び率が40%~200%である不陸調整用組成物(以下、単に「不陸調整用組成物」と称する場合がある。)を塗布して不陸調整層を形成する工程Xと、
該不陸調整層が形成された下地材上に、反応硬化型接着剤を用いて外装材を張り付ける工程Yと、を含むことを特徴とする。
【0018】
前記の各工程を有する本発明の外装工法は、不陸を有する下地材表面に対して、外装材を優れた密着性及び追従性にて張ることが可能となり、施工性にも優れる。
・・・
【0022】
〔工程X〕
工程Xでは、下地材表面の少なくとも一部に不陸調整用組成物を塗布して不陸調整層を形成する。
・・・
【0027】
(不陸調整用組成物)
・・・
【0028】
不陸調整用組成物は、下地材及び工程Yにおいて用いられる反応硬化型接着剤の双方との密着性に優れ、下地材の歪み追従性に寄与する優れた弾性を有する不陸調整層を形成でき、且つ、不陸調整層を形成する際に容易に塗布できる作業性にも優れた組成物である。
・・・
【0031】
<粘度、粘度比>
不陸調整用組成物が有する粘度及び粘度比は、不陸調整層形成における作業性の観点から、B形粘度計を用いて、JIS K6833-1(2008年度版)に準拠し、23℃の温度条件下、回転数1r/minで測定した粘度Aが、1000Pa・s~3000Pa・sの範囲であり、該粘度Aと回転数10r/minで測定した粘度Bとの粘度比(A/B)が6以上であることが必要である。
【0032】
不陸調整用組成物の粘度Aが、1000Pa・sより小さいと、垂直面に施工する場合おいて垂れが生じ易くなり、不陸調整層を均一な層厚で形成することが困難となる。一方、粘度Aが3000Pa・sより大きいと、下地材表面にコテ等を用いて不陸調整用組成物を塗布する際の抵抗が大きくなり、作業性が悪化する。
・・・
【0033】
不陸調整用組成物における粘度比(A/B)が、6より小さいと、不陸調整用組成物を鏝で塗り広げる際の施工性が悪化し、且つ、垂直面に施工する際に不陸調整用組成物に垂れが生じ易くなる。
・・・
【0035】
<ダンベル物性>
不陸調整用組成物を硬化して得られた硬化物が示すJIS A5557に準拠して測定したダンベル物性は、最大引張強さが0.4N/mm2~2.0N/m2であり、破断時の伸び率が40~200%である。
【0036】
不陸調整用組成物を硬化して得られた硬化物が示す最大引張強さが0.4N/mm2より小さいと、硬化物の凝集力が弱く外力による歪み等が生じた場合に不陸調整層が破壊され易くなる。一方、2.0N/mm2より大きいと硬化物が硬くなり過ぎるため、下地の歪み等で外装材が割れ易くなる。
・・・
【0037】
不陸調整用組成物を硬化して得られた硬化物が示す破断時の伸び率が40%より小さいと、ディファレンシャルムーブメント等による歪みに追従できず、外装材が剥離、剥落し易くなる、一方、200%より大きいと重量の大きな外装材等を張付けた場合に不陸調整層が伸びてしまい、寸法安定性に欠けるため好ましくない。・・・
【0038】
本発明の工法に用いられる不陸調整用組成物が有する粘度A及び粘度比(A/B)、並びに、不陸調整用組成物を硬化して得られた硬化物の物性(ダンベル物性)は、下地材と外装材との間の歪を緩和し、長期に亘り外装材の浮きや割れを防止する観点、施工品質を高めるために施工時の作業性を向上させる観点から、特に効果的な特性である。不陸調整用組成物が有するかかる特性は、不陸調整用組成物に含有される各成分の種類及び含有量の調整、等により調整することができる。例えば、不陸調整用組成物の好適な態様として後述する組成物の場合であれば、硬化性樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、非反応性液状成分(C)、無機系充填材(D)の種類と、硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)と、非反応性液状成分(C)及び無機系充填材(D)との含有比により調整することができる。
・・・
【0040】
不陸調整用組成物Aは、硬化性樹脂(A)、エポキシ化合物(B)、非反応性液状成分(C)、及び、無機系充填材(D)の他、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。
以下、不陸調整用組成物Aに含有される必須及び任意の成分について詳細に説明する。
【0041】
[硬化性樹脂(A)]
不陸調整用組成物は、下記一般式(1)で表される加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂(A)を含有する。
-SiR1n(X)3-n ・・・(1) (一般式(1)中、Xは、加水分解性基を示し、R1は炭素数1~20のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示す。)
【0042】
一般式(1)中、Xで表される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。加水分解性基の例としては、ハロゲン基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの加水分解性基の中でも、加水分解性が穏やかで取扱い易いという点で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
【0043】
一般式(1)中、R1は炭素数1~20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。中でも、反応性の点からは、R1としてはメチル基が特に好ましい。
【0044】
硬化性樹脂(A)において、前記一般式(1)で表される加水分解性シリル基が結合する主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、シリル化ウレタン樹脂などの樹脂において一般的に用いられている主鎖骨格が挙げられる。主鎖骨格としては、入手の容易さ、硬化物の皮膜物性等の点から、ポリオキシアルキレンであることが好ましい。
・・・
【0048】
[エポキシ化合物(B)]
不陸調整用組成物は、エポキシ化合物(B)を含有する。
エポキシ化合物(B)は、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物である。
不陸調整用組成物において、硬化性樹脂(A)とエポキシ化合物(B)とが併用されることにより、不陸調整用組成物により形成された不陸調整層と下地材及び反応硬化型接着剤により形成された層との密着性、不陸調整層の耐水性が向上する。
【0049】
エポキシ化合物(B)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミンをエポキシ化したエポキシ樹脂、複素環を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂等の一分子中に一個以上のオキシラン環を含有する化合物等の従来公知のエポキシ基含有化合物が挙げられる。
・・・
【0053】
[非反応性液状成分(C)]
不陸調整用組成物は、非反応性液状成分(C)を含有する。
非反応性液状成分(C)は、不陸調整用組成物により得られる硬化物(不陸調整層)の硬さ、伸び等の物性の調整や、不陸調整層形成時における良好な作業性を維持するための粘度及び粘度比を調整する目的で含有される成分である。
・・・
【0055】
不陸調整用組成物における非反応性液状成分(C)の含有量は、硬化性成分である加水分解性シリル基含有硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して、70質量部~150質量部で・・・ある。
【0056】
非反応性液状成分(C)の含有量が70質量部よりも少ないと、不陸調整用組成物により形成される不陸調整層(硬化物)が硬くなり、下地材と外装材との間に生じる歪みを緩和できなくなる。また、不陸調整用組成物の粘度が高くなり過ぎ、不陸調整の作業性が低下する。
非反応性液状成分(C)の含有量が150質量部よりも多いと、不陸調整用組成物により形成される不陸調整層(硬化物)が脆くなり、長期に亘って外装材の浮き等を防止できない。また、不陸調整用組成物を壁面などに塗布した際において、液垂れが生じてしまい作業性が低下すると共に、形成された不陸調整層についても不陸調整に必要な所望の層厚が得られない。
・・・
【0070】
[無機系充填材(D)について]
不陸調整用組成物は、無機系充填材(D)を含有する。
無機系充填材(D)は、不陸調整層(硬化物)に強靱性を与えたり、硬化物の物性を調整して接着強さを向上させたり、不陸調整用組成物に揺変性(粘度比)を付与する効果がある。
【0071】
不陸調整用組成物においては、揺変性(粘度比)が高いほど、低せん断における粘度が高くなり、高せん断における粘度が低くなる。つまり、低せん断における粘度が高くなることによって、該不陸調整用組成物を垂直面に施工した際においても、不陸調整用組成物の液垂れ等が起き難くなり、さらには高せん断における粘度が低くなることによって、コテで不陸調整用組成物を下地材表面に塗り広げる際における抵抗が少なくなり作業性が向上する。
【0072】
無機系充填材(D)としては、例えば、炭酸カルシウム系、炭酸マグネシウム系、クレー系、タルク系、シリカ系、フュームドシリカ系、ガラスバルーン系、水酸化アルミニウム系、水酸化マグネシウム系等の充填材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
揺変性を付与する効果は、無機系充填材の粒子径が細かいほど(比表面積が大きいほど)向上することから、粒子径が細かい無機系充填材(D)を用いることで、より大きな揺変性を付与した不陸調整用組成物が得られる。
【0074】
また、粒子径が細かい無機系充填材(D)としては、表面処理剤により表面処理されたものを用いるとより揺変性が高まる。・・・
【0075】
無機充填材の表面を表面処理剤により処理することによって、無機充填材の粒子同士の凝集が低減され、分散性が向上することで揺変性が高まる。
・・・
【0078】
不陸調整用組成物における無機系充填材(D)の含有量は、硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して、150質量部~400質量部で・・・ある。
【0079】
無機系充填材(D)の含有量が150質量部よりも少ないと、不陸調整用組成物の揺変性が低くなり、不陸調整用組成物を垂直面に施工した際において液垂れ等が起きやすくなる。また、無機系充填材(D)の含有量が400質量部よりも多いと、不陸調整用組成物により形成された不陸調整層(硬化物)が脆くなり、長期に亘って外装材の浮き等を防止できない。また、不陸調整用組成物の粘度も高くなり、不陸調整層を形成する際における作業性が低下する。
【0080】
無機系充填材(D)は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
無機系充填材(D)としては、粒子径が20nm~60nmであり表面処理された無機系充填材(d1)、及び、粒子径が150μm~350μmであり表面無処理の無機系充填材(d2)を含むことが好ましい。
【0081】
[粒子径が20nm~60nmの表面処理された無機系充填材(d1)]
粒子径が20nm~60nmの表面処理された無機系充填材(d1)は、不陸調整用組成物に揺変性を付与するために用いられる。
【0082】
無機系充填材(d1)の粒子径は、20nm~60nmで・・・ある。表面処理された無機系充填材の粒子径が20nmよりも小さいと、充填材の凝集が起こりやすく、不陸調整用組成物を製造する際に充填材が舞ってしまうため好ましくない。一方、表面処理された無機系充填材の粒子径が60nmよりも大きいと、揺変性を付与する効果が小さいことから、組成物中に大量に配合しなければならなくなるため好ましくない。
【0083】
無機系充填材(d1)としては、無機系充填材(D)として適用しうる充填材として挙げた充填材の表面を、表面処理剤を用いて処理したもののうち、粒子径が、20nm~60nmであるものが挙げられる。
・・・
【0086】
無機系充填材(d1)を含有する場合、その含有量としては、硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して、好ましくは100~300質量部で・・・ある。無機系充填材(d1)の配合量が100質量部よりも少ないと、揺変性を付与する効果が小さくなる場合ある。一方、無機系充填材(d1)が配合量300質量部よりも多いと、揺変性は高くなるが粘度も高くなり作業性が低下する場合ある。
・・・
【0098】
[酸化カルシウム、水酸化カルシウム:成分(E)]
不陸調整用組成物は、更に、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムから選択される少なくとも1種の成分(E)を、前記硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対し、1質量部~100質量部含有することが好ましい。不陸調整用組成物に、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも1種を含有することにより、不陸調整層の耐水接着性を向上させることができる。
【0099】
不陸調整用組成物に、成分(E)を含有させる場合、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの一方のみを含有させてもよいし、双方を含有させてもよい。不陸調整用組成物の貯蔵安定性の観点からは、酸化カルシウムを含有することが好ましい。
【0100】
成分(E)を含有する場合、その含有量としては、前記硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対し、好ましくは1質量部~100質量部であり、より好ましくは3質量部~50質量部、特に好ましくは5質量部~40質量部である。
成分(E)の含有量が1質量部よりも少ないと添加したことによる耐水接着性向上の効果が充分に発揮されない場合がある。一方、成分(E)の含有量が100質量部よりも多いと、不陸調整層(硬化物)が脆くなる場合がある。
【0101】
[その他成分]
本発明に係る不陸調整用組成物中には、前記以外の他の成分として、従来公知の任意の化合物を配合することができる。・・・」
(2)甲1発明
上記(1)で摘記したところによれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
【甲1発明】
一般式 -SiR1n(X)3-n(Xは、加水分解性基を示し、R1は炭素数1~20のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示す。)で表される加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂(A)(【0041】)、
エポキシ化合物(B)(【0048】)、
無機系充填材(D)として、粒子径が20nm~60nmの表面処理された無機系充填材であり、含有量が硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して100~300質量部である無機系充填材(d1)(【0070】、【0081】、【0086】)、
含有量が硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して70質量部~150質量部である非反応性液状成分(C)(【0053】、【0055】)、
更に、酸化カルシウムを、前記硬化性樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対し、1質量部~100質量部含有し(【0098】、【0099】)、
B形粘度計を用いて、JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、回転数1r/minで測定した粘度Aが、1000Pa・s~3000Pa・sの範囲であり、該粘度Aと回転数10r/minで測定した粘度Bとの粘度比(A/B)が6以上であり、且つ、硬化して得られた硬化物が示すJIS A5557に準拠して測定したダンベル物性が、最大引張強さが0.4N/mm2~2.0N/mm2であり、破断時の伸び率が40%~200%である(【0017】)、
不陸調整用組成物A(【0040】)。
3 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
(A)加水分解性シリル基を有し、一般式 -SiR1n(X)3-nで表される硬化性樹脂、
(B)エポキシ化合物、
(C)無機系充填材、
(D)非反応性液状成分、とを含有し、
前記一般式において、Xは加水分解性基を示し、R1は、炭素数が1以上20以下のアルキル基を示し、nは0、1又は2を示し、
前記(C)無機系充填材は、(C1)平均粒子径が20nm以上200nm以下である表面処理された無機系充填材を含み、
前記(C1)表面処理された無機系充填材の含有量は、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して100質量部より多く、
前記(D)非反応性液状成分の含有量は、前記(A)硬化性樹脂及び前記(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して10質量部以上150質量部以下であり、
JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度の回転数10rpmで測定した粘度に対する比で規定されるチクソ性が5.0以上であり、
JIS A5557に準拠して測定した硬化物の皮膜物性が、0.6N/mm2以上の最大引張強さを有し、35%以上の破断時の伸び率を有する、不陸調整用組成物。
【相違点1】
本件発明2は、「アミノシランとケトンとの反応物であるケチミン基含有シラン化合物」を含有するのに対し、甲1発明はそのようなものを含有していない点。
【相違点2】
本件発明2は、水分吸収剤として、(A)硬化性樹脂及び(B)エポキシ化合物の合計100質量部に対して1質量部以上100質量部以下の含有量である酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムを含有するのに対し、甲1発明は酸化カルシウムを含有するが、酸化マグネシウムは含有しはない点。
【相違点3】
本件発明2は、JIS K6833-1に準拠し、23℃の温度条件下、B形粘度計を用いて回転数1rpmで測定した粘度が3000Pa・sを超え6000Pa・s以下であるのに対し、甲1発明は1000Pa・s~3000Pa・sの範囲である点。
(2)判断
事案にかんがみ、相違点2について判断する。
甲1発明において、酸化カルシウムに加えて、酸化マグネシウムを含有するようにすることが当業者が容易に想到し得たものといえるかについて検討するに、甲1の段落【0098】には、「不陸調整用組成物に、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも1種を含有することにより、不陸調整層の耐水接着性を向上させることができる。」との記載があり、甲1の上記記載によれば、酸化カルシウムを含有させるのは、不陸調整層の耐水接着性を向上させるためであるから、甲1発明においては、酸化カルシウムに加えて何らかの成分を加える場合には、酸化カルシウムと同様に不陸調整層の耐水接着性を向上させる作用を有する水酸化カルシウムを想定していると理解できるから、甲1発明において、酸化カルシウムに水酸化カルシウムを含有させるのに代えて、酸化マグネシウムを含有させるようにする動機付けはない。
申立人は、申立書において、同申立書に添付して提出した甲第6号証(特開2012-219191号公報。以下「甲6」という。)、甲第7号証(特開2006-241259号公報。以下「甲7」という。)、甲第8号証(特開2005-213445号公報。以下「甲8」という。)、甲第9号証(国際公開第2012/057281号。以下「甲9」という。)の各記載から、各種の樹脂(硬化性樹脂)をベース樹脂とする硬化性樹脂組成物において、酸化カルシウム等の脱水剤(水分吸収剤)を配合することにより、かかる脱水剤(水分吸収剤)が組成物中に存在する水分と反応(若しくは水分を吸着)して、組成物の貯蔵安定性(保存性)を向上させることが本件特許の出願時において公知又は周知であったという旨主張する(申立書34頁8行~35頁8行)。
しかし、甲6の段落【0034】には、シール用硬化性組成物中の水分を吸着する吸湿剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウムが例示され、甲7の段落【0001】、【0048】には、シーリング材表面に塗布して形成される塗膜が下地であるシーリング材の変位に対して追従可能な性質を有するシーリング材上塗り塗料組成物における貯蔵安定性改良剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウムを使用することが例示され、甲8の段落【0001】、【0041】及び甲9の[0001]、[0202]には、シロキサン結合を形成することによって架橋する硬化性樹脂組成物において、貯蔵安定性向上に有効な脱水剤として酸化カルシウム、酸化マグネシウムを使用することが例示されているが、不陸調整層の耐水接着性に着目するものでないし、甲6ないし甲9のいずれにも、酸化カルシウム、酸化マグネシウムと並んで水酸化カルシウムは例示されておらず、甲1発明において、酸化カルシウムに水酸化カルシウムを含有させるのに代えて、酸化マグネシウムを含有させるようにすることを示唆するものではない。
以上検討したところによれば、甲1発明において、酸化カルシウムに水酸化カルシウムを含有させるのでなく、酸化マグネシウムを含有させるようにする動機付けはない。
申立人が申立書に添付して提出した甲第2号証(特開2013-23429号公報。以下「甲2」という。)、甲第3号証(特開昭52-91045号公報。以下「甲3」という。)、甲第4号証(特許第5164942号公報。以下「甲4」という。)、甲第5号証(特開2003-307034号公報。以下「甲5」という。)は、いずれも甲1発明において、酸化カルシウムに水酸化カルシウムを含有させるのでなく、酸化マグネシウムを含有させるようにすることを示唆するものではなく、こられの証拠を参酌しても上記判断は左右されない。
したがって、相違点2に係る本件発明2の構成は、甲1発明及び甲2ないし甲9に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2ないし甲9に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明1について
本件発明1は、本件発明2の不陸調整用組成物を用いることを前提とする内外装工法の発明であるから、本件発明2が当業者が容易に発明をすることができたものではないのと同様の理由により、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲9に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-701157