特許異議申立
2021-700363
パターンを有する基材の製造方法、物品、及びパターンを有する基材
- 審判番号
- 2021-700363
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-117688
- 登録番号
- 6774620
- 請求日
- 2021年04月21日
- 審決日
- 2023年02月15日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】セメダイン株式会社
- 【権利者代理人】今 智司
- 【異議申立人】平居 博美
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 石田 智樹
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.121-ZAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6774620号発明「パターンを有する基材の製造方法、物品、及びパターンを有する基材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6774620号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、8、9について訂正することを認める。
特許第6774620号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6774620号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成28年6月14日の出願であって、令和2年10月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月28日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年4月21日 :特許異議申立人平居博美(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て
同年8月3日付け :取消理由通知書
同年10月4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
同年12月8日付け :訂正拒絶理由通知書
令和4年1月7日 :特許権者による意見書の提出及び手続補正
同年3月31日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年5月31日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、訂正そのものを「本件訂正」という。)
同年7月19日 :申立人による意見書の提出
同年10月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
なお、本件訂正請求がされたので、上記令和3年10月4日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6774620号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~7、8、9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面に、バインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくは導電性組成物を用いてパターンを形成するパターン形成工程」
と記載されているのを、
「前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面に、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物を用いてパターンを形成するパターン形成工程」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8に
「前記熱可塑性フィルムの一方の面に設けられ、バインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくは導電性組成物からなるパターン」
と記載されているのを、
「前記熱可塑性フィルムの一方の面に設けられ、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物からなるパターン」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に
「前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面にパターンを形成するパターン形成工程」
と記載されているのを、
「前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面に
、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物を用いてパターンを形成するパターン形成工程」
に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項2~7は、本件訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものである。
また、本件訂正前の請求項8、9は、それぞれ、他の請求項を引用するものではなく、また他の請求項から引用されるものでもなく、本件訂正前の請求項8は訂正事項2によって、本件訂正前の請求項9は訂正事項3によって、それぞれ訂正されるものである。
よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の「導電性ペースト」を、「バインダと導電性材料とを含有する」ものから、「周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する」ものに限定し、「導電性組成物」を、「バインダと導電性材料とを含有する」ものから、「ソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許の明細書には、
「【0025】
パターンに導電性を発揮させる場合、パターン形成工程は、バインダとして用いられるエラストマーと導電性材料とを含有する導電性ペーストを用いてパターンを形成する。導電性ペーストは、例えば、所定量のエラストマーと所定量の導電性材料とを混合することで調整できる。また、パターン形成工程は、バインダとして用いられる所定のブロック共重合体と導電性材料とを含有する導電性組成物を、パターンを構成する材料として用いることもできる。ブロック共重合体を含有する導電性組成物は、例えば、所定量のブロック共重合体と所定量の導電性材料とを混合することで調製できる。」
「【0028】
(導電性ペーストのエラストマー)
エラストマーは、硬化した状態において十分な弾性を有する化合物が好ましい。また、エラストマーは、熱可塑性フィルムに導電性ペーストを塗布、硬化させる場合における熱可塑性フィルムへのダメージを抑制する観点からは、23℃以上120℃以下程度の比較的低温で硬化する化合物が好ましい。そして、エラストマーは、当該エラストマーが接触する熱可塑性フィルム、及び基材の伸縮等の変形に対応して伸縮できる範囲の弾性率を有することが好ましい。弾性率は、例えば、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満であることが好ましく、1MPa以上500MPa以下であることがより好ましい。」
「【0035】
換言すれば、ブロック共重合体は、ソフトセグメント及びハードセグメントを含むことが好ましい。ソフトセグメントは、柔軟で屈曲性の高い高分子鎖からなるブロックであり、ハードセグメントは、結晶化若しくは凝集化しやすく、ソフトセグメントより剛性の高い高分子鎖からなるブロックである。そして、ブロック共重合体においては、ソフトセグメントがハードセグメントで挟まれた構成(すなわち、「ハードセグメント-ソフトセグメント-ハードセグメント」のトリブロック構造)を有することが好ましい。」
「【0036】
ソフトセグメント及びハードセグメントを含むブロック共重合体としては、下記式(1)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
X-Y (1)
式中、Xはガラス転移点Tgx>30℃のブロック(ハードセグメント)であり、Yはガラス転移点Tgy<0℃のブロック(ソフトセグメント)を示す。式(1)で表されるブロック共重合体を用いることにより、導電性組成物の硬化物が強靭性を発揮する。なお、ガラス転移点Tgは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定できる。」
という記載があるから、訂正事項1に係る訂正は、明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8に係る発明の「導電性ペースト」を、「バインダと導電性材料とを含有する」ものから、「周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する」ものに限定し、「導電性組成物」を、「バインダと導電性材料とを含有する」ものから、「ソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件訂正前の本件特許明細書等には、上記【0025】、【0028】、【0035】及び【0036】の記載があるから、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項9に係る発明の「パターン」を、「周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物を用いて」形成することに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件訂正前の本件特許明細書等には、上記【0025】、【0028】、【0035】及び【0036】の記載があるから、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項3は、本件訂正前の請求項9に係る発明の発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
上記のとおり、訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~7]、8、9について訂正することを認める。
第3 本件特許に係る発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱可塑性フィルムに剥離用基材を貼り付ける貼り付け工程と、
前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面に、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物を用いてパターンを形成するパターン形成工程と、
前記熱可塑性フィルムの前記パターンが形成されている面に基材を接触させ、前記熱可塑性フィルムの少なくとも一部を融解させることで前記熱可塑性フィルムを前記基材に貼り合せ、前記熱可塑性フィルムと前記基材との間に前記パターンを挟む貼り合せ工程と
を備えるパターンを有する基材の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性フィルムが、熱可塑性ポリウレタンフィルムである請求項1に記載のパターンを有する基材の製造方法。
【請求項3】
前記基材が、伸縮性及び屈曲性を有する柔軟性基材である請求項1又は2に記載のパターンを有する基材の製造方法。
【請求項4】
前記柔軟性基材が、布、皮革、紙、及びエラストマー素材からなる群から選択される少なくとも1つの材料から形成される請求項3に記載のパターンを有する基材の製造方法。
【請求項5】
前記貼り合せ工程後、前記剥離用基材を前記熱可塑性フィルムから取り外す取り外し工程を更に備える請求項1~4のいずれか1項に記載のパターンを有する基材の製造方法。
【請求項6】
前記パターン形成工程によって形成された前記パターン上に電子素子を搭載する素子搭載工程を更に備える請求項1~5のいずれか1項に記載のパターンを有する基材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のパターンを有する基材の製造方法で得られるパターンを有する基材を備える物品。
【請求項8】
熱可塑性フィルムと、
前記熱可塑性フィルムの一方の面に設けられ、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物からなるパターンと、
前記パターンが設けられている前記一方の面に設けられる基材と
を備え、
前記熱可塑性フィルムを構成する材料の少なくとも一部であって、溶解した前記材料が前記基材の表面の凹凸に応じて接着してなっており、
前記熱可塑性フィルムと前記基材との間に前記パターンが挟まれている、パターンを有する基材。
【請求項9】
熱可塑性フィルムに剥離用基材を貼り付ける貼り付け工程と、
前記熱可塑性フィルムの前記剥離用基材に接触している面の反対側の面に、周波数1Hzでの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が0.1MPa以上1GPa未満のエラストマーを含むバインダと導電性材料とを含有する導電性ペースト若しくはソフトセグメント及びハードセグメントからなるブロック共重合体並びに導電性材料を含み、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が0℃未満であり、前記ハードセグメントのガラス転移温度が30℃を超える導電性組成物を用いてパターンを形成するパターン形成工程と、
前記熱可塑性フィルムの前記パターンが形成されている面側に基材を接触させ、前記熱可塑性フィルムの少なくとも一部を融解させることで前記熱可塑性フィルムを前記基材に貼り合せる貼り合せ工程と、
前記パターン形成工程によって形成された前記パターン上に電子素子を搭載する素子搭載工程と
を備えるパターンを有する基材の製造方法。」
第4 当審の判断
本件特許の請求項1~9に係る特許に対して、令和4年10月25日に取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に特許権者からの応答はなかった。
そして、上記の取消理由(決定の予告)は妥当なものと認められるので、本件請求項1~9に係る特許は、この取消理由(決定の予告)によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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