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特許異議申立

2021-701136

半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法

審判番号
2021-701136
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-087987
登録番号
6880567
請求日
2021年12月02日
審決日
2022年10月31日
公報発行日
2023年02月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ベークライト株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】平位 和也
審判長/審判官
  • 審判長 杉江 渉
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 橋本 栄和
分類
P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6880567号発明「半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6880567号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6880567号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6880567号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年4月26日に出願された特願2016-87987号であって、令和3年5月10日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月2日に特許異議申立人 平位 和也(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後、令和4年3月25日付けで取消理由通知が通知され、同年5月27日付けで特許権者 住友ベークライト株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年6月3日付けで特許法第120条の5第5項の通知された後に、同年7月11日に特許異議申立人により意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年5月27日付けの本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の形態が、粉粒状、顆粒状またはタブレット状である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」 とあるのを、 「前記エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含み、 前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の形態が、粉粒状、顆粒状またはタブレット状である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(ただし、下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。)。 【化1】 [図:0001393991000001.jpg] (上記一般式(5)中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは二価の有機基である。k、mは0≦k≦100、0<m≦100、0<k+m≦200を満たす正数であり、nは0≦n≦400を満たす整数である。)」 に訂正する。 (2)一群の請求項 訂正前の請求項2ないし5は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、請求項1の訂正に連動して訂正されたものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1の訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、エポキシ樹脂について、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含」むものに限定するものであり、「260℃で測定した半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率」の測定方法について、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法」であることを特定するとともに、「半導体封止用エポキシ樹脂組成物」から、「下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く」ものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0015】、【0023】、【0053】、【0070】に記載されており、「下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く」ことは、特許請求の範囲の一部を除外するものであって新たな技術的事項を導入するものでもないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様である。 3 むすび 以上のとおり、請求項1ないし5についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし5を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含み、 前記エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含み、 前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の形態が、粉粒状、顆粒状またはタブレット状である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(ただし、下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。)。 【化1】 [図:0001393991000002.jpg] (上記一般式(5)中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは二価の有機基である。k、mは0≦k≦100、0<m≦100、0<k+m≦200を満たす正数であり、nは0≦n≦400を満たす整数である。) 【請求項2】 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が125℃以上であり、 前記充填材の平均粒径が0.5μm以上4.5μm以下である、請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項3】 前記エポキシ樹脂に由来するエポキシ基数をEPとし、前記フェノール樹脂硬化剤に由来するフェノール性水酸基数をOHとしたとき、EP/OHの値が、1以上2以下である、請求項1または2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項4】 前記エポキシ樹脂の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、3質量%以上20質量%以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程とともに、 前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止する工程を含む、半導体装置の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法等及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年12月2日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲第5号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証及び甲第1号証ないし甲第4号証に記載された技術的事項に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由により特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由の概略は以下のとおり。 本件請求項1において、エポキシ樹脂等はあらゆるエポキシ樹脂等を含みうるのに対し、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率、及び175℃の溶融粘度が所定の範囲内にあることが実現されているのは、実施例で示されている組成のみであり、それ以外にどのような組成であれば上記熱時弾性率、及び溶融粘度が所定の範囲であることが実現できるのか理解できない。現に本件明細書の比較例1,3、4が請求項1で特定されている「エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を含み、前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり」という構成を満たしているにもかかわらず、上記熱時弾性率、及び溶融粘度が所定の範囲であることが実現できていない。 このため、当業者が本件特許発明1ないし5を実施するにあたって過度の試行錯誤を要する。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、以下の理由により特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は、上記(3)の理由と同旨。 2 証拠方法等 (1)証拠方法 本件特許異議申立書による証拠方法は、以下のとおり。 甲第1号証:特開2016-44208号公報 甲第2号証:特開2004-307645号公報 甲第3号証:特開2006-233149号公報 甲第4号証:特開2008-235669号公報 甲第5号証:国際公開第2016/047539号 以下、順に「甲1」ないし「甲5」という。 (2)参考文献 特許異議申立人は、令和4年7月11日付けの意見書に添付して、以下の参考文献を提示している。 参考文献A:特開2012-224706号公報 参考文献B:特開2003-064142号公報 参考文献C:特開2003-064151号公報 参考文献D:国際公開第2016/047539号 参考文献E:特開2004-307646号公報 参考文献F:特開2007-217708号公報 参考文献G:国際公開第2013/157424号 以下、順に「参A」ないし「参G」という。 3 取消理由の概要 令和4年3月25日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は、申立理由3(実施可能要件)の具体的理由と同旨である。 (2)取消理由2(甲3に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、方法の発明の場合には、その方法を使用することができる程度の記載があるか、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (2)発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 近年、半導体パッケージの小型化および薄型化に係る要求は、ますます高くなってきている。このような事情に鑑みて、バンプ高さが所定の高さ(数10μm程度)を上回る大きな半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを封止してなる半導体装置が提案されている。かかる半導体装置によれば、半導体パッケージにおける実装面積を削減できるだけでなく、半導体チップと基板とを離間して配置しているため、両者の熱膨張係数差により生じる応力の影響を低減することができる。しかし、本発明者らは、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置が、電気的接続信頼性という観点において以下のような課題を有していることを見出した。 第1の課題は、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置を加熱した場合に、該半導体装置に僅かな反りが生じ、結果として、電気的接続不良が発生することである。 第2の課題は、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置を加熱した場合に、半田フラッシュが発生し、結果として、電気的接続不良が発生することである。 【0006】 以上を踏まえ、本発明は、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いる半導体装置の製造方法を提供する。」 「【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いる半導体装置の製造方法を提供することができる。」 「【0011】 <半導体封止用エポキシ樹脂組成物> 本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう。)は、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いるものである。そして、かかる本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を含み、充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下である構成を採用したものである。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを封止してなる半導体装置の電気的接続信頼性を改善できる。 【0012】 すなわち、本樹脂組成物は、以下の3つの条件をすべて満たす構成を採用したものである。 第1の条件は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、を封止するために用いることを想定していることである。 第2の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、充填材の含有量が、かかる樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下となるようにされたものである。 第3の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、260℃で測定した該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるようにされたものである。 本発明者らは、上述した3つの条件をすべて満たす構成を備えた本樹脂組成物を用いて半導体装置を作製した場合、得られた半導体装置に反りや半田フラッシュなどの不都合が生じることを抑制できるため、結果として、電気的接続信頼性を改善できることを見出した。 この点については、後述の実施例において、実施例1~6と比較例1~4の比較データを示す。」 「【0015】 また、本樹脂組成物は、上述した配合組成とすることを前提とした上で、260℃で測定した当該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるように制御したものである。こうすることで、半導体チップ30と基板10との熱膨張係数の違いにより生じる応力(界面熱応力)により、封止材40の界面剥離やクラックが生じることを効果的に防ぐことができる。そのため、本樹脂組成物によれば、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。なお、従来の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、1GPaを超えるものがほとんどであった。また、本樹脂組成物に係る上記熱時弾性率は、60MPa以上500MPa以下であるが、好ましくは、70MPa以上480MPa以下であり、さらに好ましくは、100MPa以上450MPa以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を備える半導体装置の電気的接続信頼性に加えて、機械的耐久性をも向上させることができる。なお、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率は、JIS K -6911に準じた3点曲げ法により測定することができる。 【0016】 ここで、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における本樹脂組成物の硬化物の線膨張係数は、好ましくは、20ppm/℃以下であり、より好ましくは、18ppm/℃以下であり、さらに好ましくは、15ppm/℃以下である。こうすることで、本樹脂組成物を封止成形して得られた封止材40の冷却に伴う収縮量(ひずみ)自体を低減することができるため、結果として、当該封止材40と、半導体チップ30および基板10との線膨張係数の違いにより生じる応力による影響を低減し、電気的接続信頼性に優れた半導体パッケージを得ることができる。 【0017】 また、本樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、120℃以上であり、さらに好ましくは、125℃以上であり、より好ましくは、130℃以上である。これにより、半導体装置の電気的接続信頼性を向上させることができる。一方、上記ガラス転移温度(Tg)の上限値は、たとえば、200℃以下としてもよいし、195℃以下としてもよいし、190℃以下としてもよいし、145℃以下としてもよい。これにより、半導体装置の機械的耐久性を向上させることができる。 【0018】 また、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度は、好ましくは、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、さらに好ましくは、3Pa・S以上9.5Pa・S以下であり、より好ましくは、4Pa・S以上9Pa・S以下であり、特に好ましくは、5.5Pa・S以上9Pa・S以下であり、最も好ましくは、5.5Pa・S以上7Pa・S以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を基板10上に搭載した半導体装置についても、未充填領域やボイドが生じることなく、本樹脂組成物により封止成形することができる。つまり、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度が上記数値範囲内である場合、より一層樹脂充填性を向上させることができる。 【0019】 また、本樹脂組成物は、エポキシ樹脂に由来するエポキシ基数をEPとし、フェノール樹脂硬化剤に由来するフェノール性水酸基数をOHとしたとき、EP/OHの値が、好ましくは、1以上2以下であり、さらに好ましくは、1.1以上1.7以下である。こうすることで、反りが小さく、難燃性、耐湿信頼性および接続信頼性という観点において優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。 また、上記EP/OHの値は、以下の式により算出することができる。 式:EP/OH=(A/B)÷(C/D) A:樹脂組成物全量に対するエポキシ樹脂の含有量 B:樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基当量 C:樹脂組成物全量に対するフェノール樹脂硬化剤の含有量 D:樹脂組成物中に含まれるフェノール樹脂硬化剤の水酸基当量 【0020】 ここで、本樹脂組成物を用いた半導体装置の封止成形方法としては、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等が挙げられる。中でも、本樹脂組成物の充填性を良好にする観点から、トランスファー成形法または圧縮成形法を採用することが好ましい。そのため、本樹脂組成物の形態は、作業性の観点から、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。 【0021】 また、本実施形態に係る半導体装置に備わる封止材40は、本樹脂組成物を用いて、半導体チップ30を封止することにより所望の構造体(半導体パッケージ)を作製してから(一次封止)、上記構造体とともに、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を封止することにより(二次封止)、形成されたものであってもよいし、上述した一次封止を行うことなく、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを一括封止することにより形成されたものであってもよい。 【0022】 次に、本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物の配合組成について説明する。本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、上述した通り、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含むものである。 【0023】 (エポキシ樹脂) 本実施形態に係るエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。これにより、半導体パッケージの低線膨張化を図ることもできる。また、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能である。 【0024】 エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。 【0025】 (フェノール樹脂硬化剤) 本樹脂組成物中には、上述した通り、フェノール樹脂硬化剤が必須成分として含まれている。これにより、当該樹脂組成物の流動性およびハンドリング性を向上させることができる。かかるフェノール樹脂硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂硬化剤を配合させることにより、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスを良好なものとすることができる。特に、硬化性の点から、フェノール樹脂硬化剤の水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下であることが好ましい。 【0026】 また、本樹脂組成物には、エポキシ樹脂と反応して硬化させる硬化剤であれば、後述する重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等の硬化剤を、フェノール樹脂硬化剤と併用することができる。 【0027】 上記重付加型の硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドララジド等を含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマー等のポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類などが挙げられる。 【0028】 上記触媒型の硬化剤の具体例としては、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;BF3錯体等のルイス酸などが挙げられる。 【0029】 上記縮合型の硬化剤の具体例としては、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂等が挙げられる。 【0030】 本樹脂組成物中にフェノール樹脂硬化剤と上述した他の硬化剤とを併用する場合、フェノール樹脂硬化剤の含有量は、すべての硬化剤に関する合計含有量に対して、好ましくは、20質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは、30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは、50質量%以上95質量%以下である。こうすることで、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。 【0031】 また、本樹脂組成物全量に対するすべての硬化剤に関する合計含有量は、好ましくは、0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、1.5質量%以上8質量%以下である。こうすることで、硬化特性と耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。 【0032】 (充填材) 本樹脂組成物中には、上述した通り、充填材が必須成分として含まれている。かかる充填材としては、公知の半導体封止材料中に配合されている無機充填材または有機充填材であれば使用可能である。具体的には、上記無機充填材として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。また、かかる有機充填材としては、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましい。また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その平均粒径d50は、半導体チップ30周辺領域に対する樹脂充填性を良好なものとする観点から、0.01μm以上150μm以下であることが望ましい。こうすることで、樹脂組成物の流動性が良好な状態となるように制御することができる。 なお、無機充填材の平均粒径d50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)を用いて測定することが可能である。 【0033】 (その他の成分) 本樹脂組成物は、たとえばシアネート樹脂を含有させてもよい。これにより、当該樹脂組成物の硬化物からなる封止材について、低線膨張化や、弾性率および剛性の向上を図ることができる。また、得られる半導体装置の耐熱性や耐湿性の向上に寄与することも可能である。 シアネート樹脂は、たとえばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、封止材の低線膨張化や、弾性率および剛性を向上させる観点からは、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことがとくに好ましい。 【0034】 シアネート樹脂の含有量は、本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材のより効果的な低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。また、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、シアネート樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。 【0035】 本樹脂組成物には、硬化促進剤を含有させてもよい。この硬化促進剤は、エポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよい。具体的には、上記硬化促進剤として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 【0036】 本樹脂組成物には、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、低応力剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤等から選択される一種または二種以上の添加物を添加してもよい。カップリング剤としては、たとえばエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。イオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト等が挙げられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。 【0037】 <半導体装置の製造方法> 本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程と、準備した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップ30または上記半導体チップ30を封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、を封止する工程を含むものである。 【0038】 半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止する半導体チップ30としては、たとえば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。 【0039】 図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示した図である。 図1に示す半導体装置は、基板10上に半田バンプ20を介して搭載した半導体チップ30と、基板10上に半田バンプ20を介すことなく表面実装した複数の素子50とを、上述した半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体により形成された封止材40によって封止してなるものである。そして、図1に示す半導体装置において半導体チップ30は、基板10上にバンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を介して電気的に接続されている。 【0040】 本実施形態に係る封止材40は、本樹脂組成物を用いて、半導体チップ30を封止することにより所望の構造体(半導体パッケージ)を作製してから(一次封止)、上記構造体とともに、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を封止することにより(二次封止)、形成されたものであってもよいし、上述した一次封止を行うことなく、半導体チップ30と、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20とを一括封止することにより形成されたものであってもよい。 【0041】 以下、本樹脂組成物を用いた封止材40の形成方法の一例について、まずは、顆粒状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形することにより封止材40を形成する場合を例に挙げて説明する。 【0042】 まず、圧縮成形金型の上型と下型の間に、顆粒状の本樹脂組成物が収容された樹脂材料供給容器を設置する。次いで、封止対象物を搭載した基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、封止対象物を搭載した側の面が樹脂材料供給容器に対面するように該基板10を圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。ここで、上記封止対象物としては、以下のものが挙げられる。第1の封止対象物は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半田バンプ20を介して基板10上に搭載されている半導体チップ30である。第2の封止対象物は、上記第1の封止対象物を本樹脂組成物を用いて封止成形することによって得られた構造体と、複数の素子50とを含む半導体パッケージである。第3の封止対象物は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半田バンプ20を介して基板10上に搭載されている半導体チップ30とともに、複数の素子50を含む半導体パッケージである。 【0043】 次に、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めながら、樹脂材料供給容器の底面を構成するシャッター等の樹脂材料供給機構により、秤量された顆粒状の本樹脂組成物を下型が備える下型キャビティ内へ供給する。これにより、顆粒状の本樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。次いで、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の本樹脂組成物を上型に固定された基板10に搭載された封止対象物に対して押し当てる。こうすることで、封止対象物と基板10との間の領域を溶融状態の本樹脂組成物で埋めることができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて本樹脂組成物を硬化させる。ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下で行うとさらに好ましい。これにより、封止対象物と基板10との間の領域については本樹脂組成物の未充填部分を残さずに良好に充填することができる。 【0044】 また、顆粒状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形する場合における成形温度は、特に限定されるわけではないが、50~250℃が好ましく、50~200℃がさらに好ましく、80~180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5~12MPaであることが好ましく、1~10MPaが特に好ましい。成形温度および圧力を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂組成物が充填されない部分が発生することと封止対象物が位置ずれしてしまうことの両方を防止することができる。 【0045】 次に、本樹脂組成物を用いて封止材40を形成する方法の一例について、シート状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形することにより封止材40を形成する場合を例に挙げて説明する。 【0046】 まず、封止対象物を搭載した基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、封止対象物を搭載した側の面が樹脂材料供給容器に対面するように該基板10を圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。 【0047】 次に、金型の上型に固定した封止対象物に対応する位置となるように、金型の下型キャビティ内にシート状の本樹脂組成物を配置する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めることにより、シート状の本樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の本樹脂組成物を上型に固定された基板10に搭載された封止対象物に対して押し当てる。こうすることで、封止対象物と基板10との間の領域を溶融状態の本樹脂組成物で埋めることができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて本樹脂組成物を硬化させる。ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下で行うとさらに好ましい。これにより、少なくとも封止対象物と基板10との間の領域については本樹脂組成物の未充填部分を残さずに良好に充填することができる。 【0048】 また、シート状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形する場合における成形温度は、特に限定されるわけではないが、50~250℃が好ましく、50~200℃がさらに好ましく、80~180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5~12MPaであることが好ましく、1~10MPaが特に好ましい。成形温度および圧力を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂組成物が充填されない部分が発生することと半導体素子が位置ずれしてしまうことの両方を防止することができる。」 「【実施例】 【0051】 以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0052】 各実施例及び各比較例で用いた原料成分を下記に示した。 【0053】 (エポキシ樹脂) ・エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000、エポキシ当量276g/eq、軟化点58℃) ・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000L、エポキシ当量276g/eq、軟化点53℃) ・エポキシ樹脂3:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂と4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(三菱化学社製、YL6677、エポキシ当量163g/eq、軟化点59℃) 【0054】 (硬化剤) ・硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS、水酸基当量203g/eq、軟化点65℃) ・硬化剤2:トリフェノールメタン型樹脂とフェノールノボラック樹脂との共重合体型フェノール樹脂(エア・ウォーター社製、HE910-20、水酸基当量101g/eq、軟化点88℃) 【0055】 (硬化促進剤) ・硬化促進剤1: 下記式(1)で表される硬化促進剤 【0056】 【化1】 [図:0001393991000003.jpg] 【0057】 ・硬化促進剤2:下記式(2)で表される硬化促進剤 【0058】 【化2】 [図:0001393991000004.jpg] 【0059】 (充填材) ・充填材1:溶融球状シリカ(デンカ社製、FB-5SDC、平均粒径d50:4.5μm) ・充填材2:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E2、平均粒径d50:0.5μm)100重量部をミキサーに投入し、攪拌しながら窒素気流下で、ヘキサメチルジシラザン0.1重量部を噴霧添加して処理した後、γ一グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403)1重量部を噴霧添加して得た処理粉体。 ・充填材3:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E2、平均粒径d50:0.5μm)100重量部をミキサーに投入し、攪拌しながら窒素気流下で、ヘキサメチルジシラザン0.1重量部を噴霧添加して処理した後、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-573)1重量部を噴霧添加して得た処理粉体。 ・充填材4:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E5、平均粒径d50: 1.6μm) 【0060】 (離型剤) ・離型剤1:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ社製、ニッコウカルナバ) ・離型剤2:酸化ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン社製、リコワックスPED191) 【0061】 (低応力剤) ・低応力剤1:下記式(3)で表わされるシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730) 【0062】 【化3】 [図:0001393991000005.jpg] 【0063】 ・低応力剤2:両末端にカルボキシル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体(ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、CTBN1008SP) ・低応力剤3:ブタジエン・アクリロニトリル・2,3-エポキシプロピル=メタクリラート・ジビニルベンゼン重合化合物とタルクの混合物(JSR社製、XER-81P) 【0064】 (難燃剤) ・難燃剤1:水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BE043) ・難燃剤2:水酸化アルミニウム(住友化学社製、CL-303) 【0065】 (カップリング剤) ・カップリング剤1:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF4083) ・カップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、GPS-M) 【0066】 (その他) ・シリコーンオイル:カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、F2-211-69) ・着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、MA600) ・イオン捕捉剤:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(共和化学社製、DHT-4H) 【0067】 <半導体封止用エポキシ樹脂組成物の調製> 各実施例および比較例について、次のように半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕することにより、粉粒状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は上記のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。 【0068】 <半導体装置の作製> 図1に示す半導体装置を、以下の方法で作製した。 まず、半導体チップ30と、複数の素子50とが電気的に接続するように搭載された基板10を、ストリップ基板として作製した。かかる基板において、上記半導体チップ30は、バンプ高さが100μmの半田バンプ20を介して電気的に接続されており、上記複数の素子50は、半田バンプを介することなく電気的に接続されている。次に、得られたストリップ基板を金型内に配置し、成形機(TOWA社製、PMC1040)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、30秒の条件で、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を金型内に注入し封止成形した。次いで、175℃、120秒間硬化処理を行った後、成形機から取りだして、175℃の高温槽にて、4時間のポストキュア処理を施した。その後、ストリップ基板のアライメントに沿って、個片化することで、図1に示す半導体装置を作製した。ただし、比較例2の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた場合にのみ、封止材40を形成することができず、所望の半導体装置を得ることはできなかった。 【0069】 得られた各半導体封止用エポキシ樹脂組成物および各半導体装置について、下記に示す測定及び評価を行った。 【0070】 ・260℃で測定した硬化物の熱時弾性率:硬化物の熱時弾性率は、JIS K -6911に準じて以下の方法で測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、この試験片をDMA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲0℃~300℃,5℃/minで昇温測定し、260℃での硬化物の熱時弾性率を測定した。なお、単位は、MPaである。 【0071】 ・ガラス転移温度および線膨張係数:各実施例および各比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)、線膨張係数を、以下のように測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS-15)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度(Tg)、25℃以上ガラス転移温度以下における線膨張係数を算出した。結果を表1に示す。なお、線膨張係数の単位は、ppm/℃である。 【0072】 ・樹脂組成物の175℃での溶融粘度:各実施例および各比較例の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関し、高化式フローテスター(島津製作所社製、CFT-500)を用いて、175℃、圧力40kgf/cm2、キャピラリー径0.5mmの条件で溶融粘度を測定した。なお、単位は、Pa・sである。 【0073】 ・成形後半田フラッシュ:各実施例および各比較例で製造した半導体装置について、自動研磨機(Struers社製、Tegramin-25)を用いて、基板10の封止材40が形成されていない側の面から研磨することで、該半導体装置における半田バンプ20の形状を確認し、半田フラッシュの有無を評価した。なお、本実施例における上記半田フラッシュとは、得られた半導体装置において、半田バンプ20の溶融膨張によって、該半田バンプ20を構成する材料が飛散する現象のことを指す。 【0074】 ・ボイドの有無:各実施例および各比較例で製造した半導体装置について、走査型超音波探傷機(SAT)を用いて、封止材40の内部にボイドが存在しているか否か、その有無を評価した。 【0075】 ・熱時反り:まず、各実施例および各比較例で製造した半導体装置の25℃でのパッケージ反り量を測定した。次いで、各実施例および各比較例で製造した半導体装置をShadow moire(akrometrix社製)を用いて25℃から260℃へ昇温し、該半導体装置の260℃でのパッケージ反り量を測定した。得られた半導体装置の熱時反りを、以下の基準で評価した。 ◎:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、50μm未満である。 ○:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、100μm未満である。 ×:少なくとも、25℃でのパッケージ反り量と260℃でのパッケージ反り量の、いずれか一方が、100μm以上である。 【0076】 ・リフロー後半田フラッシュおよびリフロー後バンプ変形:まず、各実施例および各比較例で製造した半導体装置を、30℃、相対湿度60%の条件下で、192時間放置した。次に、かかる半導体装置を、JEDECが規定するリフロー条件に従い、260℃でのIRリフロー処理を実施した。その後、各半導体装置について、自動研磨機(Struers社製、Tegramin-25)を用いて、基板10の封止材40が形成されていない側の面から研磨することで、該半導体装置における半田バンプ20の形状を確認し、リフロー処理後における半田フラッシュの有無および半田バンプの変形の有無を評価した。 【0077】 上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。 【0078】 【表1】 [図:0001393991000006.jpg] 【0079】 上記表1からも分かるとおり、各実施例の半導体装置はいずれも、耐リフロー性に優れ、かつ260℃の高温条件下においても反りが発生しにくい、電気的接続信頼性に優れたものであった。 また、実施例1~6と比較例1~4を比較すると分かるように、バンプ高さが100μm以上である半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを備える半導体装置の電気的接続信頼性を改善するためには、樹脂組成物の全量に対する充填材の含有量と、260℃で測定した該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率とに係る条件を共に制御した構成を採用することが有用であることが分かった。」 (3)判断 ア 本件特許明細書の一般的な記載 本件特許発明1における「260℃で測定した半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率」、「175℃での溶融温度」、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数」と関連するエポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、充填剤の好ましい含有量について、以下の記載がある(下線は、当審で付与した。)。 「【0014】 そして、本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、必須成分として含み、上記充填材の含有量が、当該樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下である配合組成となるように制御した構成を採用するものであるが、好ましくは、78質量%以上92質量%以下であり、さらに好ましくは、79質量%以上91質量%以下である。こうすることで、本樹脂組成物を用いて形成された封止材40の低吸湿性および低熱膨張性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置の電気的接続信頼性を向上させることができる。また、充填材の含有量を上記数値範囲内とすることにより、成形時の流動性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置への樹脂充填性を良好なものとすることができる。」 「【0023】 (エポキシ樹脂) 本実施形態に係るエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂・・・から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。これにより、半導体パッケージの低線膨張化を図ることもできる。また、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能である。 【0024】 エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。」 「【0025】 (フェノール樹脂硬化剤) 本樹脂組成物中には、上述した通り、フェノール樹脂硬化剤が必須成分として含まれている。これにより、当該樹脂組成物の流動性およびハンドリング性を向上させることができる。かかるフェノール樹脂硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂硬化剤を配合させることにより、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスを良好なものとすることができる。特に、硬化性の点から、フェノール樹脂硬化剤の水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下であることが好ましい。 ・・・ 【0031】 また、本樹脂組成物全量に対するすべての硬化剤に関する合計含有量は、好ましくは、0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、1.5質量%以上8質量%以下である。こうすることで、硬化特性と耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。」 「【0032】 (充填材) 本樹脂組成物中には、上述した通り、充填材が必須成分として含まれている。かかる充填材としては、公知の半導体封止材料中に配合されている無機充填材または有機充填材であれば使用可能である。具体的には、上記無機充填材として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。また、かかる有機充填材としては、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましい。また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その平均粒径d50は、半導体チップ30周辺領域に対する樹脂充填性を良好なものとする観点から、0.01μm以上150μm以下であることが望ましい。こうすることで、樹脂組成物の流動性が良好な状態となるように制御することができる。 なお、無機充填材の平均粒径d50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)を用いて測定することが可能である。」 「【0036】 本樹脂組成物には、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、低応力剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤等から選択される一種または二種以上の添加物を添加してもよい。・・・低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。」 上記記載より、本件特許発明1を実施するための以下の一般的事項を読み取ることができる。 ・本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、必須成分として含み、上記充填材の含有量が、当該樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下である配合組成となるようにすることし、これにより低吸湿性および低熱膨張性を向上させることができる点 ・エポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能であり、中でも、金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、これにより、半導体パッケージの低線膨張化を図ることもでき、また、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能であることや、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましい点 ・フェノール樹脂硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではなく、フェノール樹脂硬化剤を配合させることにより、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスを良好なものとすることができ、本樹脂組成物全量に対するすべての硬化剤に関する合計含有量は、好ましくは、0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、1.5質量%以上8質量%以下とすること、また、特に、硬化性の点から、フェノール樹脂硬化剤の水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下であることが好ましい点 ・充填材としては、公知の半導体封止材料中に配合されている無機充填材または有機充填材であれば使用可能であるが、特に溶融球状シリカが好ましく、また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましいことや、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その平均粒径d50は、半導体チップ30周辺領域に対する樹脂充填性を良好なものとする観点から、0.01μm以上150μm以下であることが望ましい点 ・必要に応じて低応力剤を添加してもよいことが記載され、低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等を用いることができる点 イ 実施例 実施例には個別の具体的な組成物と上記各物性について記載されており、当該記載によれば実施例1~6の6例及び比較例1~4の4例の特定の組成物と各物性について直ちに把握することができる。 そして、すべての実施例で、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」が用いられている。 実施例5は、エポキシ樹脂として、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」であるエポキシ樹脂2を6.83重量部含有するものであるが、当該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂3:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂と4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(三菱化学社製、YL6677、エポキシ当量163g/eq、軟化点59℃)を2.93重量部配合しているところ、本件特許発明1で特定される各物性を満足している。 すなわち、エポキシ樹脂として、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」以外のエポキシ樹脂を配合した場合にも、各物性が本件特許発明1の範囲にある組成物を得ることができることが示されている。 また、比較例4は、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」であるエポキシ樹脂2を3.62重量部含有し、当該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂3を3.62重量部配合するものであるが、硬化物の熱時弾性率が2000MPaと大きくなり、本件特許発明1の硬化物の熱時弾性率が60MPa以上500MPa以下の範囲から外れている。 すなわち、実施例5と比較例4の対比から、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」以外のエポキシ樹脂を用いた場合に、その配合量或いは配合割合により、硬化物の熱時弾性率が影響されることを把握することができる。 さらに、比較例3は、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」であるエポキシ樹脂2を2.67重量部含有し、当該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂3を2.67重量部配合するものであるが、低応力剤1:式(3)で表わされるシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730)を3重量部配合するもので、硬化物の熱時弾性率が50MPaと小さくなり、本件特許発明1の硬化物の熱時弾性率が60MPa以上500MPa以下の範囲から外れている。 すなわち、実施例5と比較例3の対比から、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」以外のエポキシ樹脂を用いた場合に、低応力化剤を使用することにより、硬化物の熱時弾性率を調整することができることが把握できる。 そうすると、本件特許発明1の各物性を満足させるために、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」以外のエポキシ樹脂を配合させる場合においては、実施例5を基点に、上記アで検討した本件明細書の一般的事項からの示唆を参考にして、その配合量或いは配合割合を適宜変更したり、低応力化剤の配合量を適宜変更すれば良いとの一応の指針を読み取ることができる。 ウ まとめ 上記第2、第3に示したように、本件特許発明1は、本件訂正により、エポキシ樹脂が「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」を含むことが特定された。 そして、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された組成物の上記アに示される一般的事項を参照するとともに、上記イで示した実施例・比較例の対比から、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1の各物性を制御し、本件特許発明1に該当する組成物を得ることができるものである。 また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし5も同様である。 (4)特許異議申立人の主張について ア 主張 特許異議申立人は、令和4年7月11日付けの意見書の第4及び5ページにおいて、以下の主張をしている。 「比較例1-4においてもいずれもがビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂に該当するエポキシ樹脂1又は2を用いるものである。そのうち、特に、エポキシ樹脂3の比率が異なるとされている実施例5と比較例4とを対比すると、エポキシ樹脂2に対するエポキシ樹脂3の比率が変更されているだけではなく、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体に対するエポキシ樹脂全体、及び硬化剤の比率も変更されている。このため、実施例等の間での熱時弾性率の相違が、エポキシ樹脂2に対するエポキシ樹脂3の比率を変更したことによるものであるのか、組成物全体に対するエポキシ樹脂、及び硬化剤の割合を変化させたことによるものであるのか、あるいはこれらが複合的に影響しているのか理解することができず、複合的に影響するのであれば、個々の要素がそれぞれどの程度影響しているのか理解することができない。また、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂以外のエポキシ樹脂としてエポキシ樹脂3に代えて、別のエポキシ樹脂を使用した場合には、その別のエポキシ樹脂の比率が熱時弾性率、溶融粘度、線膨張係数にどのように影響しているのか理解することができない。また、低応力剤の比率が異なるとされている実施例5と比較例3とを対比すると、低応力剤1が実施例5に配合されずに比較例3には配合されているというだけでなく、エポキシ樹脂2に対するエポキシ樹脂3の比率、並びに組成物全体に対するエポキシ樹脂全体、及び硬化剤の比率も変更されているため、実施例5と、比較例3との熱時弾性率の相違が、低応力剤1を加えたことによるものであるのか、エポキシ樹脂2に対するエポキシ樹脂3の比率を変更したものによるものであるのか、組成物全体に対するエポキシ樹脂及び硬化剤の割合を変更したものによるのか、あるいはこれらが複合的に影響しているのかを理解することができず、複合的に影響するのであれば、個々の要素がそれぞれどの程度影響しているのか理解することができない。また、低応力剤1及び2ではなく、別の低応力剤を使用した場合に、そのことが熱時弾性率、溶融粘度、及び線膨張係数という3つの物性にどのように影響しているのかも理解することができない。」 イ 検討 そこで、上記主張について検討する。 本件特許発明1は、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」である3つの物性を特定するものであり、かつ「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」を必須成分として含有するものである。 実施例、比較例を見てみると、実施例5、比較例3、4は、いずれもエポキシ樹脂が「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含」むものであるところ、うち比較例3、4は上記「175℃での溶融温度」、「線膨張係数」は本件発明1を満足するものであるが、「熱時弾性率」は満足していない。そして、比較例3、4は、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」と当該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の割合、硬化剤、低応力剤の量が実施例5と異なっている。 ところで、本件特許明細書には、上記アで述べたとおり、段落【0024】に「エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。」と記載され、段落【0031】に「本樹脂組成物全量に対するすべての硬化剤に関する合計含有量は、好ましくは、0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、1.5質量%以上8質量%以下である。こうすることで、硬化特性と耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。」、段落【0036】に「低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。」と、硬化剤や低応力化剤についての一般的な記載がある。 そうすると、上記(3)イで述べたように、本件特許発明1の物性、特に「熱時弾性率」を満足させるために、「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」以外の他のエポキシ樹脂を配合させる場合、特に、実施例5で用いられている他のエポキシ樹脂3に代えて、別のエポキシ樹脂を使用した場合においては、実施例5と同じ分量で試行し、仮に本件特許発明1の範囲外となった場合には、その配合量或いは配合割合のいずれかを適宜変更したり、硬化剤、低応力化剤の種類や配合量を適宜変更して本件特許発明1のものを得ることは、多少の試行錯誤はするものの、過度の試行錯誤を伴うとまではいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。 (5)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由1によっては、取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲3に基づく進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項及び甲3発明 (ア)甲3に記載された事項 甲3には、「低誘電膜形成素子封止用樹脂組成物及び半導体装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 なお、下線は、当審により付与した。以下、同様。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 低誘電膜形成素子用封止材料であって、硬化物の150℃における貯蔵弾性率が2,100MPa以下、260℃における貯蔵弾性率が700MPa以下、-55℃~50℃までの線膨張係数が1.0×10-5/℃以下、150~200℃までの線膨張係数が5.0×10-5/℃以下であり、175℃で成形したときの成形収縮率が0.15%以下であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。 【請求項2】 (A)下記一般式(1)又は(2)で表されるエポキシ樹脂、又はその併用物、 【化1】 [図:0001393991000007.jpg] (式中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Q=0~10の数である。) 【化2】 [図:0001393991000008.jpg] (式中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基、Grはグリシジル基である。)(B)下記一般式(3)又は(4)で表されるフェノール樹脂、又はその併用物、 【化3】 [図:0001393991000009.jpg] (式中、R2は水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、r=0~10の数である。) 【化4】 [図:0001393991000010.jpg] (s=1~5の整数である。)(C)無機質充填剤、(D)下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂 【化5】 [図:0001393991000011.jpg] (式中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは二価の有機基である。k、mは0≦k≦100、0<m≦100、0<k+m≦200を満たす正数であり、nは0≦n≦400を満たす整数である。)を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項3】 (C)成分である無機質充填剤がシリカであり、(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の硬化剤の合計量100質量部に対し、700~1,100質量部配合されてなることを特徴とする請求項2項記載の半導体封止用樹脂組成物。 【請求項4】 低誘電膜形成素子が請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体封止用樹脂組成物で封止された半導体装置。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低誘電膜が形成された素子を封止する際、素子表面との接着性に著しく優れ、耐半田クラック試験、耐温度サイクル試験を施した際の信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物、及びその硬化物によって封止された半導体装置を提供することを目的とする。」 「【0010】 本発明の樹脂組成物の硬化物の150℃における貯蔵弾性率が2,100MPaより大きかったり、260℃における貯蔵弾性率が700MPaより大きい場合は、温度サイクル時、あるいは260℃での半田実装時に、低誘電素子へ加わる応力が大きくなり、チップ表面のクラックが発生することがある。また、本発明の樹脂組成物の硬化物の-55℃~50℃までの線膨張係数が1.0×10-5/℃より大きく、また150~200℃までの線膨張係数が5.0×10-5/℃以下より大きく、また175℃で成形したときの成形収縮率が0.15%より大きい場合は、成形時や、-55℃~200℃での温度サイクル試験時にチップを締め付ける応力が大きくなり、チップ表面の低誘電膜にクラックが入ったり、剥離が発生することがある。 【0011】 より好ましくは、硬化物の150℃における貯蔵弾性率が2,100MPa以下、特に2,000MPa以下であり、260℃における貯蔵弾性率が700MPa以下、特に600MPa以下である。その下限は、特に制限されるものではないが、通常、150℃における貯蔵弾性率が400MPa以上、特に600MPa以上であり、260℃における貯蔵弾性率が100MPa以上、特に200MPa以上である。また、-55℃~50℃までのより好ましい線膨張係数は1.0×10-5/℃以下、特に0.9×10-5/℃以下、150~200℃までのより好ましい線膨張係数が5.0×10-5/℃以下、特に4.5×10-5/℃以下である。その下限は、特に制限されないが、通常-55℃~50℃までの線膨張係数が0.4×10-5/℃以上、特に0.5×10-5/℃以上、150~200℃までの線膨張係数が3.0×10-5/℃以上、特に3.5×10-5/℃以上である。更に、175℃で成形したときのより好ましい成形収縮率は0.15%以下、特に0.12%以下であり、その下限は、通常0.05%以上、特に0.06%以上であるが、これに制限されるものではない。」 「【0024】 本発明に用いる(C)無機質充填剤としては、通常、樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。具体的には、例えば、球状の溶融シリカ、破砕状の溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、特には球状の溶融シリカが望ましく、その平均粒径が5~30μmで、湿式篩い法で測定した75μmを超える粒径が0.2質量%以下であるものが、成形性、流動性の面からより望ましい。 【0025】 なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による粒度分布測定により得ることができ、重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。 【0026】 この無機質充填剤の配合量としては、(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の合計量100質量部に対し、700~1,100質量部とすることが好ましい。700質量部未満では樹脂の割合が高く、線膨張係数が目的とする値にならないことがある。また1,100質量部を超える量では粘度が高くなるために成形できなくなるおそれがある。」 「【0042】 本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂硬化剤、無機質充填剤、シリコーン変性エポキシ樹脂及び必要に応じて硬化触媒、その他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。 【0043】 このようにして得られる本発明の半導体封止用樹脂組成物は、低誘電膜が形成された素子を有する各種の半導体装置の封止用として有効に利用でき、この場合、封止の最も一般的な方法としては低圧トランスファー成形法が挙げられる。なお、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成形温度は160~185℃で30~180秒、好ましくは40~90秒、後硬化は150~185℃で2~20時間行うことが望ましい。」 「【実施例】 【0044】 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。 【0045】 [実施例1~5、比較例1~4] 表1に示す組成からなり、表2に示す硬化物特性を有する半導体封止用樹脂組成物で、低誘電膜形成素子を封止し、半導体部品を得た。半導体部品の評価結果を表3に示した。組成物の特性及び半導体部品の評価は下記方法で実施した。 なお、表1に示した組成物の成分は、これを連続混練機で100℃の条件で溶融混合し、半導体封止用組成物を得た。 【0046】 《貯蔵弾性率》 温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で100×10×4mmの硬化物を成形し、180℃で4時間ポストキュアした。その後、セイコーインスツルメンツ(株)製のDMS6100で150℃、260℃の貯蔵弾性率を測定した。昇温スピード10℃/min、測定周波数5Hz、曲げモード支点間距離20mm。 《線膨張係数》 温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で5×5×15mmの硬化物を成形し、180℃で4時間ポストキュアした。その後、理学(株)製TMA8140Cで-55℃~50℃、及び150~200℃の線膨張係数を測定した。昇温スピード5℃/min。 《成形収縮率》 温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で100×10×4mmの硬化物を成形し、室温に冷却した時の長手方向の長さ(a)を測定した。室温での金型のキャビティ長さ(b)を測定した。((a-b)/a)×100の式から収縮率を測定した。なお、測定装置としては、ノギスを使用した。 《スパイラルフロー》 EMMI規格に準じた金型を使用して、温度175℃、圧力70kgf/cm2、成形時間90秒の条件で測定した。 【0047】 《ゲル化時間》 175℃に加熱された熱板上に組成物を薄く広げ、スパチュラで樹脂を掻き取り、熱板面から樹脂が剥がれる点をゲル化時間とした。 《溶融粘度》 (株)島津製作所製の高化式フローテスターを用い、1mmφ×10mmのダイスを用いて、175℃で5kgfの荷重をかけて測定した時の最低溶融粘度を求めた。 《接着性》 10×10mmの低誘電膜形成素子を、上記樹脂組成物で温度175℃、成形圧力70kgf/cm2、成形時間60秒の条件で成形し、接着用テストピースを作製した。これを180℃、4時間で後硬化した後、室温、260℃での接着力を測定した。なお、テストピースのフレームと樹脂の接着面積は10mm2である。低誘電形成素子は、Siチップ上にSiO2:200nm、ブラックダイアモンド400nmを4層、更にSiO2:150nm、SiN:100nmを施したものである。 【0048】 《耐リフロークラック試験》 Pdメッキされたリードフレームに10×10×0.3mmの低誘電膜形成素子をマウントし、温度175℃、圧力70kgf/cm2、成形時間45秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアし、14×20×1.4mmのLQFPパッケージを得た。このパッケージをそれぞれ10個85℃/85%RHの恒温恒湿器に168時間放置して吸湿させた後、260℃のIRリフロー炉に通した時の素子表面が剥離しているものを超音波探傷機を用いて観察した。 《耐温度サイクル試験》 エポキシレジストがコートされたBTレジンに12×12×0.3mmの低誘電膜形成素子をマウントし、温度175℃、圧力70kgf/cm2、成形時間60秒の条件で成形し、180℃で4時間ポストキュアし、35×35mmのPBGAパッケージを得た。このパッケージそれぞれ10個に対し、260℃の半田浴/30秒及び-196℃/60秒の冷熱衝撃を100サイクル行い、チップ表面のクラックが発生したものを調べた。使用した原材料を下記に示す。 【0049】 ・シリコーン変性エポキシ樹脂 下記式で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量510 【化20】 [図:0001393991000012.jpg] 【0050】 ・エポキシ樹脂 (イ):下記式で表されるエポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272) 【化21】 [図:0001393991000013.jpg] (ロ):ビフェニル型エポキシ樹脂:YX4000HK(油化シェル社製、エポキシ当量190) (ハ):多官能型エポキシ樹脂:EPPN501(日本化薬(株)製、エポキシ当量16 5) 【0051】 ・硬化剤 (ニ):下記式(8)で表されるフェノール樹脂:MEH7851L(明和化成(株)製 、フェノール性水酸基当量199、150℃におけるICI溶融粘度80mPa ・s) 【化22】 [図:0001393991000014.jpg] (ホ):フェノールアラルキル樹脂:MEH7800SS(明和化成(株)製、フェノー ル性水酸基当量175、150℃におけるICI溶融粘度100mPa・s) 【0052】 ・無機質充填剤 平均粒径10μm、粒径53μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ ・硬化触媒:テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート ・カーボンブラック:電化ブラック(電気化学工業(株)製) ・イオントラップ剤:KW2200(協和化学工業(株)製) ・離型剤:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製) ・シランカップリング剤:KBM803(信越化学工業(株)製、メルカプト基含有トリメトキシシラン) 【0053】【表1】 [図:0001393991000015.jpg] 【0054】 【表2】 [図:0001393991000016.jpg] 【0055】 【表3】 [図:0001393991000017.jpg] 【0056】 上表の結果より、本発明の樹脂組成物で封止された半導体部品は、低誘電膜形成素子との接着性に優れ、優れた半田リフロー性、温度サイクル性を示すことが分かる。」 (イ)甲3発明 甲3に記載された事項について、特に実施例2ないし5([表1])を、請求の範囲(請求項1ないし3、9及び10)の記載にならって整理すると、甲3には次の発明が記載されているといえる。 「(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)無機質充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する低誘電膜形成素子用封止材料であって、 (A)エポキシ樹脂が(イ)エポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272) 【化21】 [図:0001393991000018.jpg] 48.1質量部 (B)フェノール樹脂が、(ニ)フェノール樹脂:MEH7851L(明和化成(株)製 、フェノール性水酸基当量199、150℃におけるICI溶融粘度80mPa ・s) 39.9質量部 (C)無機質充填剤として、平均粒径10μm、粒径53μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ 850質量部 (D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、下記式で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量510 12.0質量部 【化20】 [図:0001393991000019.jpg] であり、硬化物の260℃における貯蔵弾性率が300MPa、-55℃~50℃までの線膨張係数が0.7×10-5/℃、175℃溶融粘度が8Pa・sである半導体封止用樹脂組成物。」(以下、「甲3実施例2発明」という。) 「(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)無機質充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する低誘電膜形成素子用封止材料であって、 (A)エポキシ樹脂が(イ)エポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272) 【化21】 [図:0001393991000020.jpg] 47.9質量部 (B)フェノール樹脂が、(ニ)フェノール樹脂:MEH7851L(明和化成(株)製 、フェノール性水酸基当量199、150℃におけるICI溶融粘度80mPa ・s) 46.1質量部 (C)無機質充填剤として、平均粒径10μm、粒径53μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ 850質量部 (D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、下記式で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量510 6.0質量部 【化20】 [図:0001393991000021.jpg] であり、硬化物の260℃における貯蔵弾性率が400MPa、-55℃~50℃までの線膨張係数が0.8×10-5/℃、175℃溶融粘度が7Pa・sである半導体封止用樹脂組成物。」(以下、「甲3実施例3発明」という。) 「(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)無機質充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する低誘電膜形成素子用封止材料であって、 (A)エポキシ樹脂が(イ)エポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272 【化21】 [図:0001393991000022.jpg] 43.7質量部 (B)フェノール樹脂が、(ニ)フェノール樹脂:MEH7851L(明和化成(株)製 、フェノール性水酸基当量199、150℃におけるICI溶融粘度80mPa ・s) 44.3質量部 (C)無機質充填剤として、平均粒径10μm、粒径53μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ 850質量部 (D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、下記式で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量510 12.0質量部 【化20】 [図:0001393991000023.jpg] であり、硬化物の260℃における貯蔵弾性率が295MPa、-55℃~50℃までの線膨張係数が0.7×10-5/℃、175℃溶融粘度が8Pa・sである半導体封止用樹脂組成物。」(以下、「甲3実施例4発明」という。) 「(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)無機質充填剤、(D)シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する低誘電膜形成素子用封止材料であって、 (A)エポキシ樹脂が(イ)エポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272)(当審注:構造式は省略する。) 【化21】 [図:0001393991000024.jpg] 25.0質量部、(ロ):ビフェニル型エポキシ樹脂:YX4000HK(油化シェル社製、エポキシ当量190) 25.0質量部 (B)フェノール樹脂が、(ニ)フェノール樹脂:MEH7851L(明和化成(株)製 、フェノール性水酸基当量199、150℃におけるICI溶融粘度80mPa ・s) 22.0質量部、(ホ)フェノールアラルキル樹脂:MEH7800SS(明和化成(株)製、フェノール性水酸基当量175、150℃におけるICI溶融粘度100mPa・s) 22.0質量部 (C)無機質充填剤として、平均粒径10μm、粒径53μmを超える粗粒が0.1質量%である球状溶融シリカ 850質量部 (D)シリコーン変性エポキシ樹脂として、下記式で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂:エポキシ当量510 12.0質量部 【化20】 [図:0001393991000025.jpg] であり、硬化物の260℃における貯蔵弾性率が450MPa、-55℃~50℃までの線膨張係数が0.7×10-5/℃、175℃溶融粘度が8Pa・sである半導体封止用樹脂組成物。」(以下、「甲3実施例5発明」という。) また、同時に、甲3の段落【0045】の「表1に示す組成からなり、表2に示す硬化物特性を有する半導体封止用樹脂組成物で、低誘電膜形成素子を封止し、半導体部品を得た。」との記載から、甲3には、「甲3実施例2発明ないし甲3実施例5発明の半導体封止用樹脂組成物を準備する工程とともに、当該半導体封止用樹脂組成物を用いて、半導体封止する工程を含む、半導体装置の製造方法。」が記載されているといえる。(以下、「甲3実施例2発明ないし甲3実施例5製造方法発明」のようにいう。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)甲3実施例5発明との対比・判断 本件特許発明1と甲3実施例5発明とを対比する。 甲3実施例5発明の「(A)エポキシ樹脂」、「(B)フェノール樹脂」、「(C)無機充填材」は、各々、本件特許発明1の「エポキシ樹脂」、「フェノール樹脂硬化剤」、「充填剤」に相当する。甲3実施例5発明の「(A)エポキシ樹脂」に含まれる「(イ)エポキシ樹脂:NC3000P(日本化薬(株)製、エポキシ当量272)」は、下記構造 [図:0001393991000026.jpg] を有するものであるから、本件特許発明1の「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」に相当する。甲3実施例5発明の「半導体封止用樹脂組成物」は、「(A)エポキシ樹脂」を含有するものであるから、本件特許発明1の「半導体封止用エポキシ樹脂組成物」に相当する。 また、甲3実施例5発明の「(C)無機充填材」の含有量は、当該半導体封止用樹脂組成物の全量に対して、87.8質量%(=850/968.5×100)となるから、本件特許発明1の「充填剤の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下」である範囲を満足する。 そして、甲3実施例5発明の樹脂組成物の175℃での溶融粘度は8Pa・sであるから、本件特許発明1の「半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・s以上10Pa・s以下」である範囲を満足する。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含み、 前記エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含み、 前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃溶融粘度が、2Pa・s以上10Pa・s以下である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物 <相違点3-1-1> 半導体封止用のさらなる用途が、本件特許発明1は「半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる」ものであるのに対し、甲3実施例5発明は「低誘電膜形成素子用」である点 <相違点3-1-2> エポキシ樹脂組成物の形態が、本件特許発明1は「粉粒状、顆粒状またはタブレット状」であるのに対し、甲3実施例5発明はその点が不明な点 <相違点3-1-3> エポキシ樹脂組成物の物性が、本件特許発明1は「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」であるのに対し、甲3実施例5発明は「硬化物の260℃における貯蔵弾性率が450MPa、-55℃~50℃までの線膨張係数が0.7×10-5/℃」である点 <相違点3-1-4> 本件特許発明1は「(ただし、下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂(以下、「一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂」という。)を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。)。 【化1】 [図:0001393991000027.jpg] (上記一般式(5)中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、Xは二価の有機基である。k、mは0≦k≦100、0<m≦100、0<k+m≦200を満たす正数であり、nは0≦n≦400を満たす整数である。)」であるのに対し、甲3実施例5発明は当該シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する点 そこで、上記相違点について検討する。 事案に鑑み、<相違点3-1-4>から検討する。 甲3が解決しようとする課題は、甲3の段落【0004】等よりみて、「低誘電膜が形成された素子を封止する際、素子表面との接着性に著しく優れ、耐半田クラック試験、耐温度サイクル試験を施した際の信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物、及びその硬化物によって封止された半導体装置を提供すること」である。 そして、かかる課題を解決するための手段について、甲3には、その段落【0005】に「本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、硬化物の150℃における貯蔵弾性率が2,100MPa以下、260℃における貯蔵弾性率が700MPa以下、-55℃~50℃までの線膨張係数が1.0×10-5/℃以下、150~200℃までの線膨張係数が5.0×10-5/℃以下であり、175℃で成形したときの成形収縮率が0.15%以下である半導体封止用樹脂組成物が、低誘電膜形成素子用の封止材として接着性、成形性、高温での信頼性、耐リフロークラック性、耐クラック性に優れることを見出した。また、この場合、かかる硬化物を与える樹脂組成物として、(A)下記一般式(1)又は(2)で表されるエポキシ樹脂、(B)硬化剤、特に下記一般式(3)又は(4)で表されるフェノール樹脂、(C)無機質充填剤に加え、(D)下記一般式(5)で示されるシリコーンポリマーを含有する樹脂組成物を使用することが有効であることを見出し、本発明をなすに至った。」と記載されている。 そして、甲3の【実施例】について見てみると、「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を含有する実施例1~5は、甲3の段落【0005】に記載される物性を満足しているのに対し、「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を含有しない比較例1~3は、上記物性を満足していない。また、甲3の他の記載を見ても、「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を含まない樹脂組成物においてまで、甲3における上記課題が解決することをうかがわせる記載はない。 すなわち、甲3には、甲3の解決しようとする課題に照らし、「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を必須の成分として含有する樹脂組成物しか開示されていないといえる。 そうすると、甲3実施例5発明において、必須の成分である「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を含まないものとする動機付けはない。 よって、甲3実施例5発明において、<相違点3-1-4>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3実施例5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明1は、耐リフロー性に優れ、かつ260℃の高温条件下においても反りが発生しにくい、電気的接続信頼性に優れた効果(本件特許明細書の段落【0009】、【0079】)を奏するものである。 (イ)甲3実施例2ないし4発明との対比・判断 本件特許発明1と甲3実施例2ないし4発明とを対比すると、上記(ア)で対比したのと同様、少なくとも、下記<相違点3-1-4’>の点で相違する。 <相違点3-1-4’> 本件特許発明1は「(ただし、下記一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。」のに対し、甲3実施例2ないし4発明は当該シリコーン変性エポキシ樹脂を含有する点 <相違点3-1-4’>は、上記(ア)の<相違点3-1-4>と同じ相違点であるから、上記(ア)と同じ理由により、甲3実施例2ないし4発明において、<相違点3-1-4>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3実施例2ないし4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3実施例2ないし5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和4年7月11日付けの意見書の第21及び22ページにおいて、以下の主張をしている。 「甲3は、「低誘電膜が形成された素子を封止する際、素子表面との接着性に著しく優れ、耐半田クラック試験、耐温度サイクル試験を施した際の信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物、及びその硬化物によって封止された半導体装置を提供」することを目的とするものであり(甲3の段落0004)、その技術的手段として、低誘電膜形成素子用の封止用樹脂組成物において、「硬化物の150℃における貯蔵弾性率が2,100MPa以下、260℃における貯蔵弾性率が700MPa以下、-55℃~50℃までの線膨張係数が1.0×10-5/℃以下、150~200℃までの線膨張係数が5.0×10-5/℃以下であり、175℃で成形したときの成形収縮率が0.15%以下である」ことを特徴とするものである(甲3の請求項1)。そして、この特性を満たすため、特に貯蔵弾性率を調整するために、式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を使用した組成物を開示するのであって、所望の貯蔵弾性率を実現するために式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を使用する手段を採用することを妨げるものではない。」 しかしながら、上記(2)ア(ア)で示したように、甲3に記載される発明において、「一般式(5)で示されるシリコーンポリマー」を含まないものとする動機付けはない。 よって、審判請求人の主張は首肯できない。 (4)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし5は、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(甲1に基づく進歩性)、申立理由2(甲第5号証に基づく進歩性)、申立理由4(サポート要件)である。 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「モールドアンダーフィル用樹脂組成物及び電子部品装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)マレイミド化合物、及び(E)無機充填剤を含有し、前記(C)硬化促進剤が下記一般式(I-1)で示される化合物を含む、モールドアンダーフィル用硬化性樹脂組成物。 【化1】 [図:0001393991000028.jpg] 〔式(I-1)中、R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数1~18の炭化水素基であり、R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R4~R7は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭素数1~18の有機基であり、R4~R7のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕 【請求項2】 (E)無機充填剤は、平均粒径が4.5μm以下である請求項1に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項3】 (E)無機充填剤は、比表面積が2.5m2/g以上である請求項1又は請求項2に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項4】 粒子径が10μm以下である無機充填剤の割合が全体の95質量%以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項5】 (C)硬化促進剤が、下記一般式(I-2)で示される化合物を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【化2】 [図:0001393991000029.jpg] 〔式(I-2)中、R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数1~18の炭化水素基であり、R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R4~R7は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~18の有機基であり、R4~R7のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕 【請求項6】 (C)硬化促進剤が、下記一般式(I-3)で示される化合物を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【化3】 [図:0001393991000030.jpg] 〔式(I-3)中、R1~R3は、それぞれ独立して、炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり、R1~R3のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、R4~R6は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~18の有機基であり、R4~R6のうち2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕 【請求項7】 (D)マレイミド化合物が、1分子中に2つ以上のマレイミド基を有する化合物を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項8】 (A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ樹脂を含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項9】 (B)フェノール樹脂が、アラルキル型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、又はノボラック型フェノール樹脂からなる群より選ばれる1以上のフェノール樹脂を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項10】 (D)マレイミド化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン及び1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンからなる群より選ばれる1種以上のマレイミド化合物を含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物。 【請求項11】 素子と、前記素子を封止している請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のモールドアンダーフィル用樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置。」 「【0003】 近年、コスト低減の観点から固形タイプの封止用エポキシ樹脂成形材料を使用した真空方式の新規な成形技術がフリップチップのアンダーフィル用に開発されてきた。しかし、従来の固形タイプの成形材料では充填性が低く、未充填、ボイド、剥離等の不良を発生させずに封止することが困難な場合がある。例えば、ファインピッチのはんだバンプ等を備える次世代フリップチップ型電子部品装置の製造において、従来の固形タイプの封止用エポキシ樹脂を用いて封止する場合、アンダーフィル部の充填性に改善の余地がある。さらに、フリップチップ実装型電子部品装置におけるバンプ高さの低減、バンプピッチの狭小化等のファイン化の進展、入出力増大に伴うバンプ数及びチップ面積の増大といった動向によって、今後はさらに高い充填性が要求されると予想される。 【0004】 さらに、エポキシ樹脂組成物を用いて半導体チップを封止する方法として、モールドアンダーフィル(Molded Underfill;MUF)と呼ばれる方法の開発が進められている。モールドアンダーフィルとは、半導体チップと基板の間のギャップを液状アンダーフィル材で封止した後、半導体チップの上部をモールドする通常の封止方法とは異なり、アンダーフィルと半導体チップ上部のモールドを一括して行う封止方法である。モールドアンダーフィル用の樹脂組成物としては、充填性に優れること、及び硬化による収縮が小さいことが重要である。 【0005】 高い充填性を達成するため、充填剤を工夫した方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2004-307645号公報 【特許文献2】国際公開第13/145608号 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1及び2では、モールドアンダーフィル用樹脂組成物としての使用に適した樹脂組成の検討はされていない。本発明は上記課題に鑑み、充填性に優れ、硬化収縮が小さいモールドアンダーフィル用樹脂組成物を提供することを目的とする。」 「【実施例】 【0156】 以下、本発明について実施例によってより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例によって制限されるものではない。 【0157】 〔モールドアンダーフィル用樹脂組成物の調製〕 エポキシ樹脂として、以下を用意した。 ・エポキシ樹脂1:エポキシ当量168g/eq、軟化点62℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名1032H60) ・エポキシ樹脂2:エポキシ当量195g/eq、軟化点60℃のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名N-500P1) 【0158】 フェノール樹脂として、以下を用意した。 ・フェノール樹脂1:水酸基当量103g/eq、軟化点84℃のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エアウォーター株式会社製、商品名HE-910-10) ・フェノール樹脂2:水酸基当量106g/eq、軟化点85℃のフェノールノボラック樹脂(日立化成株式会社製、商品名HP-850N) 【0159】 一般式(I-1)で示される構造の硬化促進剤として、以下を用意した。 ・硬化促進剤1:トリ-n-ブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物 ・硬化促進剤2:トリシクロヘキシルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物 ・硬化促進剤3:ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物 ・硬化促進剤4:シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物 【0160】 マレイミド化合物として、以下を用意した。 ・マレイミド1:ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業株式会社製、商品名BMI-2300) ・マレイミド2:4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド(大和化成工業株式会社製、商品名BMI-1000) ・マレイミド3:2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業株式会社製、商品名BMI-4000) ・マレイミド4:3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社製、商品名BMI-5100) 【0161】 無機充填剤として、以下を用意した。 ・無機充填剤1:平均粒径3.1μm、比表面積3.1m2/g、粒径が10μm以下である粒子の割合が全体の100質量%である結晶シリカ ・無機充填剤2:平均粒径15.5μm、比表面積3.42/g、粒径が39.9μm以下である粒子の割合が全体の90質量%、粒径が45μm以下である粒子の割合が全体の100質量%である球状溶融シリカ ・無機充填剤3:平均粒径5.0μm、比表面積3.1m2/g、粒径が15μm以下である粒子の割合が全体の90質量%、粒径が30μm以下である粒子の割合が全体の100質量%である結晶シリカ 【0162】 その他、各種添加剤として、以下を用意した。 ・カップリング剤:エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン) ・着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社、商品名:MA-100) ・離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA) 【0163】 上述の成分をそれぞれ表1及び表2に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1~13、比較例1~7のモールドアンダーフィル用樹脂組成物を得た。なお、実施例7~9は、マレイミド化合物を均一に分散させるためロール混練を行う前に、マレイミド化合物と硬化剤であるフェノール樹脂を120℃、30分の条件で予備混融してからその他の成分と配合した。表中の空欄は、該当する成分が含まれていないことを示す。 【0164】 【表1】 [図:0001393991000031.jpg] 【0165】 【表2】 [図:0001393991000032.jpg] 【0166】 〔モールドアンダーフィル用樹脂組成物の特性評価〕 次に、実施例1~17、及び比較例1、2によって得られたモールドアンダーフィル用樹脂組成物を、以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表3及び表4に示す。なお、モールドアンダーフィル用樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件下で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。 【0167】 (1)スパイラルフロー(流動性の指標) EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件でモールドアンダーフィル用樹脂組成物を成形した。次いで、モールドアンダーフィル用樹脂組成物の成形物の流動距離(cm)を測定した。 【0168】 (2)熱時硬度 モールドアンダーフィル用樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形した。成形後直ちにショアD型硬度計を用いてモールドアンダーフィル用樹脂組成物の成形物の硬度を測定した。 【0169】 (3)成形収縮率(硬化収縮の目安) モールドアンダーフィル用樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化した。予め測定した成形温度(175℃)での金型の長さと室温(25℃)での硬化物の長さから、下記式により成形収縮率(%)を求めた。 成形収縮率(%)=((D-d)/D)×100 D:金型のキャビティの長さ d:試験片の長さ 【0170】 (4)パッケージ充填性1 パッケージサイズ15mm×15mm、基板厚み240μm、チップサイズ10mm×10mm、チップ厚み100μm、バンプ径90μm、バンプピッチ200μm、パンプ高さ60μmの半導体素子を、チップ上のモールド厚さが100μmとなるようにモールドアンダーフィル用樹脂組成物を用いて上記条件で成形した。その後、超音波探査装置を用いて、チップ下の充填性を確認した。充填性が良好なものを○として、充填されていない部分があるものを×とした。 【0171】 (5)パッケージ充填性2 パッケージサイズ15mm×15mm、基板厚み240μm、チップサイズ10mm×10mm、バンプ径90μm、バンプピッチ200μm、パンプ高さ90μmの半導体素子を、チップ上のモールド厚さが100μmとなるようにモールドアンダーフィル用樹脂組成物を用いて上記条件で成形した。その後、超音波探査装置を用いて、チップ下の充填性を確認した。充填性が良好なものを○として、充填されていない部分があるものを×とした。 【0172】 (6)パッケージ充填性3 モールドアンダーフィル用樹脂組成物を上記条件でパッケージサイズ15mm×15mm、基板厚み240μm、チップサイズ10mm×10mm、バンプ径90μm、バンプピッチ200μm、パンプ高さ120μmの半導体素子を、チップ上のモールド厚さが100μmとなるようにモールドアンダーフィル用樹脂組成物を用いて上記条件で成形した。その後、超音波探査装置を用いて、チップ下の充填性を確認した。充填性が良好なものを○として、充填されていない部分があるものを×とした。 【0173】 【表3】 [図:0001393991000033.jpg] 【0174】 【表4】 [図:0001393991000034.jpg] 【0175】 表3及び表4に示す結果からわかるように、実施例1~17のモールドアンダーフィル用樹脂組成物は、いずれも硬化収縮の指標である成形収縮率の値が小さく、パッケージ充填性も優れる結果となった。また、いずれも、スパイラルフロー及び熱時硬度に優れ、良好に成形可能であった。無機充填剤1を含む実施例1~13は、バンプ高さの低いパッケージの充填性も良好であった。 【0176】 これに対して、マレイミド化合物を含有しない比較例1は、硬化収縮の指標である成形収縮の値が大きい結果であった。また、無機充填剤を含まない比較例2では、成形ができなかった。」 (イ)甲1発明 甲1の実施例10に着目し、【請求項1】の記載にならって整理すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。 「(A)エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量168g/eq、軟化点62℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名1032H60))100重量部、 (B)フェノール樹脂(フェノール樹脂1:水酸基当量103g/eq、軟化点84℃のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エアウォーター株式会社製、商品名HE-910-10))61.3重量部、 (C)硬化促進剤(硬化促進剤1:トリ-n-ブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加反応物)3.5重量部、 (D)マレイミド化合物(マレイミド1:ポリフェニルメタンマレイミド(大和化成工業株式会社製、商品名BMI-2300))161.3重量部、及び (E)無機充填剤(無機充填剤1:平均粒径3.1μm、比表面積3.1m2/g、粒径が10μm以下である粒子の割合が全体の100質量%である結晶シリカ)843重量部(無機充填剤含有率71.4質量%)、 カップリング剤(エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン))8重量部、 着色剤(カーボンブラック(三菱化学株式会社、商品名:MA-100))2.6重量部、 離型剤(カルナバワックス(株式会社セラリカNODA))1重量部 からなる、モールドアンダーフィル用硬化性樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。) イ 甲2に記載された事項 甲2には、「封止用エポキシ樹脂成形材料及び半導体装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を少なくとも含む封止用エポキシ樹脂成形材料であって、 前記無機充填剤(C)は、平均粒径が12μm以下で、且つ比表面積が3.0m2/g以上である封止用エポキシ樹脂成形材料。 ・・・ 【請求項5】 (a1)~(f1)の構成を1以上を備える半導体装置に用いる請求項1~4のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。 (a1)フリップチップのバンプ高さが150μm以下である (b1)フリップチップのバンプピッチが500μm以下である (c1)半導体チップの面積が25mm2以上である (d1)封止材の総厚さが2mm以下である (e1)フリップチップのバンプ数が100個以上である (f1)成型時のエアベント厚みが40μm以下である」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料及び半導体装置に関する。 さらに詳しくは、本発明はフリップチップ実装用のアンダーフィル材として好適な充填性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料及びこれにより封止されたボイド等の成形不良や耐リフロー性、耐湿性等の信頼性が良好なフリップチップ実装型の半導体装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。また近年、電子部品のプリント配線板への高密度実装化が進んでいる。これに伴い、半導体装置は従来のピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になっている。表面実装型のIC、LSIなどは、実装密度を高くし実装高さを低くするために、薄型、小型のパッケージになっており、素子のパッケージに対する占有体積が大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきた。また素子の多機能化、大容量化によって、チップ面積の増大、多ピン化が進み、さらにはパッド(電極)数の増大によって、パッドピッチの縮小化とパッド寸法の縮小化、いわゆる狭パッドピッチ化も進んでいる。 また、さらなる小型軽量化に対応すべく、パッケージの形態もQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)といったものから、より多ピン化に対応しやすく、かつより高密度実装が可能なCSP(Chip Size Package)やBGA(Ball Grid Array)へ移行しつつある。これらのパッケージは近年、高速化、多機能化を実現するために、フェースダウン型、積層(スタックド)型、フリップチップ型、ウェハーレベル型等、新しい構造のものが開発されている。 フリップチップ実装は従来のワイヤーボンディングに代わる接続技術であり、半導体チップのパッド上にはんだバンプを付着させ、このバンプを利用して配線板上のランドと接続させるものである。はんだバンプを付着させたチップは配線板上で位置合わせを行った後、リフローによってはんだが溶融し、セルフアライメントプロセスを経て電気的、機械的な接続が形成される。このように実装されたデバイスには各種信頼性を向上させる目的で、はんだバンプで接合されたチップ/配線板の隙間にアンダーフィル材が注入される。このはんだバンプが配列された狭い隙間をボイド等の空隙を発生させずに完全に充填させるために、アンダーフィル材には高い充填性が要求される。」 「【0010】 【発明の実施の形態】 (エポキシ樹脂)本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ-ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、充填性及び耐リフロー性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂及び硫黄原子含有エポキシ樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましく、これらのエポキシ樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。」 「【0017】 (硬化剤)本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているもので特に制限はないが、たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のジクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。 なかでも、難燃性の観点からはビフェニル型フェノール樹脂が好ましく、耐リフロー性及び硬化性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂が好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型フェノール樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率及び低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましく、これらのフェノール樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。」 「【0025】 (A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5~2の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3がより好ましい。成形性及び耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。 【0026】 (無機充填剤)本発明において用いられる(C)無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために封止用エポキシ樹脂成形材料に配合されるものであり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などが挙げられる。 これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、充填性、線膨張係数の低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、無機充填剤の形状は充填性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。 【0027】 本発明において用いられる(C)無機充填剤はその平均粒径が15μm以下、比表面積が3.0~6.0m2/gであることがファインピッチなバンプを有するフリップチップ実装のアンダーフィル用途の充填性を満足させる観点から必要である。平均粒径はより好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。15μmを超えた場合はバンプで接合されたチップ/配線板の隙間にエポキシ樹脂成形材料が注入され難くなり、充填性が低下する。また比表面積はより好ましくは3.5~5.5m2/g、さらに好ましくは4.0~5.0m2/gである。3.0m2/g未満及び6.0m2/gを超えた場合はバンプで接合されたチップ/配線板の隙間中にボイドが発生し易くなり、充填性が低下する。 また充填性の観点からは(C)無機充填剤の粗粒子分を篩にてカットしてもよい。この時53μm以上の(C)成分が0.5重量%以下であることが好ましく、30μm以上の(C)成分が0.5重量%以下であることがより好ましく、20μm以上の(C)成分が0.5重量%以下であることがさらに好ましい。 (C)無機充填剤の配合量は、充填性、信頼性の観点から封止用エポキシ樹脂成形材料に対して60~95重量%が好ましい。70~90重量%がより好ましく、75~85重量%がさらに好ましい。60重量%未満であると耐リフロー性が低下する傾向にあり、95重量%を超えると充填性が低下する傾向にある。」 「【0052】 (調製・使用方法) 本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等によって混合又は溶融混練した後、冷却し、必要に応じて脱泡、粉砕する方法等を挙げることができる。また、必要に応じて成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化してもよい。 本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を封止材として用いて、半導体装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等も挙げられる。ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を用いてもよい。充填性の観点からは減圧状態にて成形できる成形法が好ましい。 【0053】 (半導体装置) 続いて本発明の半導体装置について説明する。また、かかる半導体装置の説明を介して本発明のエポキシ樹脂成形材料の好適な用途及び使用方法について説明する。本発明の半導体装置としては、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス等の支持部材や実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したフリップチップ実装型の半導体装置などが挙げられる。ここで、封止用エポキシ樹脂成形材料としては、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いることができる。即ち、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填剤として以下の(1)及び(2)のうちの少なくともいずれか一方の条件を満たすものを含有し、 (1)平均粒径が12μm以下で、且つ比表面積が3.0m2/g以上である; (2)最大粒径が63μm以下で、且つ粒子径20μm以上の無機充填剤を5wt.%以上含有する; 所望により(D)2級アミノ基を有するシランカップリング剤、(E)硬化促進剤を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料が用いられる。前記(C)無機充填剤としては、充填性向上の観点からは前記(1)の条件を満たす無機充填剤が好ましく、バリ性の向上の観点からは前記(2)の条件を満たす無機重点剤を用いることが好ましく、両者の観点からは前記(1)及び(2)の条件を満たす充填剤が好ましい。 前記実装基板としては特に制限するものではなく、たとえば、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板等が挙げられる。 【0054】 本発明の半導体装置としては、それぞれ所定の値に規定された(a)フリップチップのバンプ高さ、(b)フリップチップのバンプピッチ、(c)半導体チップの面積、(d)封止材の総厚さ、(e)フリップチップのバンプ数、(f)成型時のエアベント厚みの構成を1以上備えるものが好ましい。具体的には、以下の(a1)~(f1)の構成を1以上備えるものが好ましい。(a1)フリップチップ実装時のバンプ高さが300μm以下である (b1)フリップチップのバンプピッチが500μm以下である (c1)半導体チップの面積が25mm2以上である (d1)封止材の総厚さが2mm以下である (e1)フリップチップのバンプ数が100個以上である (f1)成型時のエアベント厚みが40μm 以下である以下の(a2)~(f2)の構成を1以上を備える半導体装置がより好ましい。 (a2)フリップチップ実装時のバンプ高さが200μm以下である (b2)フリップチップのバンプピッチが400μm以下である (c2)半導体チップの面積が50mm2以上である (d2)封止材の総厚さが1.5mm以下である (e2)フリップチップのバンプ数が150個以上である (f2)成型時のエアベント厚みが30μm以下である 以下の(a3)~(f3)の構成を1以上を備える半導体装置がさらに好ましい。 (a3)フリップチップ実装時のバンプ高さが150μm以下である (b3)フリップチップのバンプピッチが300μm以下である (c3)半導体チップの面積が80mm2以上である (d3)封止材の総厚さが1.0mm以下である (e3)フリップチップのバンプ数が200個以上である (f3)成型時のエアベント厚みが20μm以下である 好ましい態様を挙げて半導体装置について説明したが、なかでも前記(a)~(f)の構成を以下の組み合わせで備える半導体装置が特に好ましい。 充填性の観点からは、構成(a)及び構成(b)の少なくとも一方を備える半導体装置が好ましい。より具体的には構成(a1)及び(b1)を備える半導体装置、構成(a1)及び(d1)を備える半導体装置、構成(a1)及び(c1)を備える半導体装置、構成(b)及び(d)を備える半導体装置、並びに構成(b1)及び(c1)を備える半導体装置が好ましい。さらに構成(a2)及び(b2)を備える半導体装置、構成(a2)及び(d2)を備える半導体装置、構成(a2)及び(c2)を備える半導体装置、構成(b2)及び(d2)を備える半導体装置、並びに構成(b2)及び(c2)を備える半導体装置が好ましい。さらにまた構成(a3)及び(b3)を備える半導体装置、構成(a3)及び(d3)を備える半導体装置、構成(a3)及び(c3)を備える半導体装置、構成(b3)及び(d3)を備える半導体装置、並びに構成(b3)及び(c3)を備える半導体装置が好ましい。 【0055】 このような半導体装置としては、たとえば、配線板やガラス上に形成した配線に、フリップチップボンディングで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)、COG(Chip On Glass)等のベアチップ実装した半導体装置、配線板やガラス上に形成した配線に、フリップチップボンディングで接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したハイブリッドIC、MCM(Multi Chip Module)マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で半導体チップ搭載側を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、これらの半導体装置は、実装基板上に素子が2個以上重なった形で搭載されたスタックド(積層)型パッケージであっても、2個以上の素子を一度に封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した一括モールド型パッケージであってもよい。 【0056】 本発明の半導体装置の好ましい態様を図1~図3を参照しながら説明する。尚、本発明の半導体装置はこれらに限られるものではない。 図1には、アンダーフィルタイプのフリップチップ型BGAの断面図が示されており、図2には、オーバーモールドタイプのフリップチップ型BGAの断面図が示されている。また図3にはフリップチップ型BGAの配線板1上にはんだバンプ2を介して半導体チップ3を配置した際の上面図(一部透視図)が示されている。 図1に示されるアンダーフィルタイプのフリップチップ型BGAの半導体装置10は、図3に示されるように配線板1上にはんだバンプ2を所定のバンプピッチbで配置し;そのはんだバンプ2を介してバンプ高さaで半導体チップ3を配線板1上に接続・固定し;そして配線板1と半導体チップ3間に形成されるアンダーフィル部5を封止用エポキシ樹脂成形材料(封止材)4を用いて封止することにより得られるものである。図2に示されるオーバーモールドタイプのフリップチップ型BGAの半導体装置20は、前記封止工程においてアンダーフィル部5を封止すると共に半導体チップ3全体を覆うように封止することを除いて、前記と同様にして製造されるものである。 ここで、本発明の半導体装置の製造に際しては、半導体装置のバンプ高さa、バンプピッチb、半導体チップの面積d及び封止材の総厚さeを以下のように設定することが好ましい。 はんだバンプ2の高さaは300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。 はんだバンプ2のピッチbすなわちはんだバンプの中心間隔は500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。 はんだバンプ2の数は100個以上であることが好ましく、150個以上であることがより好ましく、200個以上であることがさらに好ましい。 半導体チップ3の面積dは25mm2以上であることが好ましく、50mm2以上であることがより好ましく、80mm2以上でることがさらに好ましい。 封止材4の総厚さeは2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることがさらに好ましい。 尚、アンダーフィルタイプにあっては総厚さとバンプ高さaは同一の値となる。」 ウ 甲3に記載された事項 甲3には、上記第5 2(1)ア(ア)に示した事項が記載されている。 エ 甲4に記載された事項 甲4には、「半導体装置及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 「【0003】 最近は、家電製品や携帯電話等の小型化、高性能化が進んできており、半導体装置においても、小型化,薄型化,高性能化が要請され、TSOP(シン・スモール・アウトライン・パッケージ)やQFP(クワッド・フラット・パッケージ)、ボールやランドで導通を図るBGA(ボール・グリッド・アレイ)やLGA(ランド・グリッド・アレイ)等における金属ワイヤーファインピッチ化が進んでいる。最新の半導体装置では、金属ワイヤーのピッチが44μm弱のものもあり、将来は20μm以下になると考えられている。」 「【0013】 本発明の半導体装置は、半導体素子が金属リードフレームのインナーリード又は有機基板の回路とワイヤーで接続された半導体装置であり、ワイヤーの周囲部が(A)液状樹脂組成物の硬化物で封止され、その上から(B)固形の樹脂組成物の硬化物で封止されていることを特徴とするものである。」 「【0031】 固形の樹脂組成物(B)は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤及び無機質充填剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物であることが好ましい。 【0032】 上記エポキシ樹脂としては特に限定されるものではなく、通常用いられているものでよい。例えば、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノールA型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ナフタレン型等が挙げられる。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を併用してもよい。 【0033】 上記フェノール樹脂は、上記エポキシ樹脂の硬化剤としての作用を奏するものであり、特に限定されるものではなく、通常用いられるものでよい。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA型ノボラック、ナフトールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を併用してもよい。 【0034】 上記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中の水酸基が0.5~1.5当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.8~1.2当量である。フェノール樹脂中の水酸基量が少なすぎると所定の成形条件では十分な硬化が得られず強度の低下を起こす場合があり、多すぎると硬化物のガラス転移温度が下がる場合があり、半導体部品の信頼性に影響を及ぼす場合がある。」 「【0037】 上記無機質充填剤としては、通常、樹脂組成物に配合されるものを使用することができる。具体的には、例えば、球状の溶融シリカ、破砕状の溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、ムライト、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化チタン、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、特には球状の溶融シリカが望ましく、その平均粒径が3~30μmで、湿式篩い法で測定した75μmを超える粒径が0.2質量%以下であるものが、成形性、流動性の面からより望ましい。これらは、単独で使用できるほか、2種以上を併用してもよい。 【0038】 なお、本発明において、平均粒径は、例えばレーザー光回折法等による粒度分布測定により得ることができ、重量平均値(又はメディアン径)等として求めることができる。 【0039】 この無機質充填剤の配合量としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計量100質量部に対し、700~1100質量部とすることが好ましい。700質量部未満では樹脂の割合が高く、線膨張係数が目的とする値にならないことがある。また1100質量部を超える量では粘度が高くなるために成形できなくなるおそれがある。 本発明においては、固形の樹脂組成物(B)がワイヤーと直に接することがないために、固形の樹脂組成物(B)の成形時の粘度が低粘度である必要はなく、よって、半導体装置のそり防止のために無機質充填剤を高充填することが可能である。」 「【実施例】 【0047】 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度は25℃における値である。 【0048】 [実施例1、比較例1] まず、下記に示す各成分を準備した。 <液状樹脂組成物> エポキシ樹脂 ビスフェノールA型エポキシ樹脂RE303S-L(日本化薬社製、エポキシ当量170、粘度30Pa・s):65質量部 硬化剤 アミン系硬化剤カヤハードAA(日本化薬社製、アミン価64、粘度20Pa・s):35質量部 球状シリカ 平均粒径8μm、20μm以上の粗粒量0.1質量%未満:150質量部 イオントラップ材 DHT-4A-2(Mg、Alの複合酸化物、協和化学製):2質量部 カップリング剤 KBM403E(グリシジルタイプトリメトキシシラン、信越化学製):1質量部 【0049】 液状樹脂組成物の溶融粘度、ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数は、下記の通りである。 粘度(25℃):22Pa・s Tg:100℃ 線膨張係数1:35ppm 線膨張係数2:115ppm 【0050】 なお、これらは、下記に示す方法により測定した。 (粘度) 各組成物について、JIS Z-8803に準じ、測定温度:25℃、E型粘度計を用いて、試料をセットして2分後の値を測定した。 (ガラス転移温度、線膨張係数) 常温から10℃/分で昇温して、200~260℃の温度で、30秒以上5分以下保持して硬化物を得た。該硬化物を、常温まで冷却して、5mm×5mm×15mmの試験片を切り出して、TMA(熱機械分析装置)により、毎分5℃で昇温してTg(ガラス転移温度)を測定した。 硬化物の(Tg-30℃)が100℃未満の場合は、CTE1((Tg-30℃)以下の温度における線膨張係数)は-30~0℃で、CTE2(Tg超の温度における線膨張係数)は150180℃で測定した。 硬化物の(Tg-30℃)が100℃以上の場合は、CTE1は50~80℃、CTE2は200~230℃で測定した。 【0051】 導電性金属異物の検出: 得られた本組成物について、前述の導電性金属異物検出方法により導電性金属異物の検出を行った。 組成物1kg中の導電性金属異物量:0.5ppm 組成物1kg中に存在する20μm以上の導電性金属異物:含まず 【0052】 <固形エポキシ樹脂組成物> エポキシ樹脂 ビフェニル型エポキシ樹脂YX4000(JER製、エポキシ当量192、融点100℃):7質量部 フェノール樹脂 フェノールアラルキル樹脂MEH7800(明和化成製、水酸基当量170、融点83℃):43質量部 硬化促進剤 トリフェニルホスフィン(TPP):1質量部 無機質充填剤a 平均粒径15μm、最大径75μmの球状溶融シリカ:900質量部 無機質充填剤b 平均粒径1μmの球状溶融シリカ:50質量部 離型剤 カルナバワックス:2質量部 カップリング剤 KBM803(メルカプトタイプトリメトキシシラン、信越化学製):2質量部 顔料 デンカブラック:2質量部 【0053】 固形エポキシ樹脂組成物のスパイラルフロー、ゲル化時間、溶融粘度、ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数は、下記の通りである。 スパイラルフロー、175℃:30inch ゲル化時間、175℃:25秒 溶融粘度、175℃:8Pa・s Tg:130℃ 線膨張係数1:8ppm 線膨張係数2:30ppm 【0054】 なお、これらは、下記に示す方法により測定した。 (スパイラルフロー) EMMI規格に準じた金型を使用して、温度175℃、圧力6.9N/mm2、成形時間90秒の条件で測定した。 (ゲル化時間) 175℃に加熱された熱板上に組成物を薄く広げ、スパチュラで樹脂を掻き取り、熱板面から樹脂が剥がれる点をゲル化時間とした。 (溶融粘度) (株)島津製作所製の高化式フローテスターを用い、1mmφ×10mmのダイスを用いて、175℃で10kgfの荷重をかけて測定した時の最低溶融粘度を求めた。 (ガラス転移温度) 温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で5mm×5mm×15mmの硬化物を成形し、180℃で4時間ポストキュアした。その後、理学(株)製TMA8140Cで-55~50℃、及び150~200℃で直線を引き、その交点からガラス転移温度を求めた。昇温スピード5℃/min。 (線膨張係数) 温度175℃、成形圧力6.9N/mm2、成形時間120秒の条件で5mm×5mm×15mmの硬化物を成形し、180℃で4時間ポストキュアした。その後、理学(株)製TMA8140Cで-55~50℃、及び150~200℃の線膨張係数を測定した。昇温スピード5℃/min。 【0055】 導電性金属異物の検出: 得られた本組成物について、前述の導電性金属異物検出方法により導電性金属異物の検出を行った。 組成物1kg中の導電性金属異物量:3ppm 組成物1kg中に存在する20μm以上の導電性金属異物:30個(最大径120μm) 【0056】 上記各組成物を用いて、導電性金属異物混入による短絡不良を確認するために下記の方法に従って、半導体装置を作製して短絡不良の評価を行った。その結果を表1に示した。 【0057】 〔半導体装置の作製〕 図1に示すように、有機回路基板1と、半導体素子2上の窒化珪素パッシベーション膜4により覆われたアルミニウム配線3とを接続している直径20μmのワイヤー5が隠れるように、液状樹脂組成物6で、室温でディスペンサーを用いて覆った後、150℃×30分の条件で硬化した。その後、この上に、タブレット化した固形のエポキシ樹脂組成物7をトランスファー成形(条件:175℃×90秒)し、更に175℃×5時間の後硬化を行うことにより半導体装置を作製した。 【0058】 比較例として、液状樹脂組成物で覆わずに、直に固形エポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置を作製した。 【0059】 得られた半導体装置は、下記に示す800ピンPBGA(ボールグリッドアレイパッケージ)である。 800ピンPBGA(ボールグリッドアレイパッケージ)タイプ:大きさ35mm×35mm×厚み1.2mm 半導体素子サイズ:10mm×10mm×厚み1mm 端子ピッチ:80μm、ワイヤー間距離:60μm 【0060】 〔短絡不良評価〕 上記で得られた半導体装置それぞれ500個を用いて、短絡不良の発生の有無を測定した。結果を表1に示す。 【0061】 【表1】 [図:0001393991000035.jpg] 【0062】 上記結果から、実施例1に用いた液状樹脂組成物に含まれる導電性金属異物の量が少ないことから、短絡不良も起こらず、高信頼性の半導体装置が得られたことがわかる。これに対して、比較例1の液状樹脂組成物でコートしなかった装置においては、短絡不良が発生してしまった。」 オ 甲5に記載された事項 甲5には、「半導体封止用樹脂組成物、半導体装置および構造体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 「[0004] しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のことが分かってきた。 すなわち、近年、半導体装置は薄型化の要求が高まってきているが、このような薄型の半導体装置に対し、上記特許文献1、2に記載されているようなクリストバライトを含む封止用樹脂組成物を適用した場合においては、封止樹脂が剛性を帯び過ぎてしまい、熱時における線膨張係数が低くなる傾向にある。結果として、基板との熱膨張係数の差を生じさせてしまい、半導体装置全体として反りを発生してしまう可能性があることが分かってきた。 そこで、本発明においては、クリストバライトを含ませながらも、得られる半導体装置としての反りを抑制することができる半導体封止用樹脂組成物を提供することを課題とする。 [0005] 本発明によれば、 (A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、を含有する半導体封止用樹脂組成物であって、 前記(C)無機充填材はクリストバライトを含み、 前記半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、ガラス転移温度以上での線膨張係数α2が70ppm/K以上200ppm以下/Kであり、 前記硬化物の、ガラス転移温度が100℃以上260℃以下である、半導体封止用樹脂組成物が提供される。」 「[0012] [半導体封止用樹脂組成物] まず、半導体封止用樹脂組成物について説明する。 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、基材上に搭載された半導体素子を封止する封止樹脂を形成するために用いられる。半導体封止用樹脂組成物を用いた封止成形は、とくに限定されないが、たとえばトランスファー成形法、または圧縮成形法により行うことができる。基材は、たとえばインターポーザ等の有機基板である。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。 [0013] 半導体封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、とくに限定されないが、たとえばQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF-BGA(Lead Flame BGA)が挙げられる。また、BGAやCSPについては、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのパッケージであってもよい。また、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物は、近年これらのパッケージの成形に多く適用されるMAP(Mold Array Package)成形により形成される構造体にも係るものである。この場合、基材上に搭載される複数の半導体素子を、半導体封止用樹脂組成物を用いて一括して封止することにより上記構造体が得られる。なお、本実施形態における半導体装置の反りを抑制する効果は、BGAやCSPの中でも、封止樹脂の厚さが基板の厚さよりも薄いタイプのBGAやCSP、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのBGAやCSP等の、封止樹脂が基板の膨張収縮による変形を抑制する力が十分に及ばないパッケージにおいて特に顕著となる。 [0014] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえばモールドアンダーフィル材料として用いることができる。モールドアンダーフィル材料は、基板上に配置された半導体素子の封止と、基板と半導体素子との間の隙間の充填と、を一括して行う材料である。これにより、半導体装置の製造における工数の削減を図ることができる。また、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を基板と半導体素子の間にも充填できることから、半導体装置の反りをより効果的に抑制することも可能となる。 [0015] 本実施形態においては、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される半導体装置の一例として、有機基板の一面上に半導体素子を搭載した半導体パッケージが挙げられる。この場合、有機基板のうちの上記一面と、半導体素子と、が半導体封止用樹脂組成物によって封止されることとなる。すなわち、片面封止型のパッケージとなる。また、有機基板の上記一面とは反対の他面には、たとえば外部接続端子として複数の半田ボールが形成される。なお、このような半導体パッケージにおいては、半導体素子の上面が封止樹脂により封止されていてもよく、封止樹脂から露出していてもよい。 このような半導体パッケージにおいては、たとえば封止樹脂の厚さを0.4mm以下とすることが好ましく、0.3mm以下とすることがより好ましい。これにより、半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また、このような薄型の半導体パッケージであっても、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を用いることによって、パッケージ反りの発生を抑制することが可能となる。ここで、封止樹脂の厚さとは、有機基板の上記一面の法線方向における、上記一面を基準とした封止樹脂の厚さを指す。また、本実施形態においては、たとえば封止樹脂の厚さを、有機基板の厚さ以下とすることができる。これにより、半導体パッケージをより効率的に薄型化することができる。 「[0016] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば粉粒体またはタブレット状である。これにより、トランスファー成形法や圧縮成形法等を用いて封止成形を行うことが可能となる。半導体封止用樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。また、半導体封止用樹脂組成物がタブレット状であるとは、半導体封止用樹脂組成物の粉砕物をタブレット形状へ成形したものである場合を指す。ここでは、半導体封止用樹脂組成物を、たとえばBステージ化されたタブレット状とすることができる。」 「[0017] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、以下の特性を備える。 すなわち、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、ガラス転移温度以上での線膨張係数α2が70ppm/K以上200ppm/K以下である。 [0018] 先に述べたように、昨今、特に薄型の半導体装置について、反りの発生を抑制することへの要求が高まってきている。また、半導体装置の適用範囲を拡大する観点から、熱時における反りを抑制する要求も高い。 このような要求に対し、本発明者らが鋭意検討した結果、半導体封止用樹脂組成物の硬化物について、上記線膨張係数α2を上記特定の範囲に調整することにより、半導体素子を搭載する基板との熱膨張係数の差を緩和することができ、半導体装置全体としての反りを抑制するということを知見した。 なお、この硬化物の線膨張係数α2の下限値としては75ppm/K以上がより好ましい。また、上限値としては、より好ましくは180ppm/K以下であり、特に好ましくは150ppm/K以下である。 このような数値範囲に設定することにより、より反りが発生しづらくなる。 [0019] また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物のガラス転移温度の下限値としては、100℃以上であり、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは115℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上であり、とくに好ましくは125℃以上である。ガラス転移温度を上記温度以上とすることで、熱時であっても半導体素子を安定的に封止することができる。 また、本実施形態における当該硬化物のガラス転移温度の上限値は、260℃以下であり、また、240℃以下としてもよい。 なお、後述する硬化物の線膨張係数α1、α2およびガラス転移温度は、たとえば熱機械分析装置(セイコー電子工業株式会社製、TMA100)を用い、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下にて測定することができる。 [0020] また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物としては以下の特性を備えることが好ましい。 [0021] すなわち、半導体封止用樹脂組成物は、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、ガラス転移温度以下における線膨張係数α1が、10ppm/K以上40ppm/K以下であることが好ましく、15ppm/K以上30ppm/K以下であることがより好ましい。これにより、比較的低温条件下においても基板と封止樹脂との線膨張係数の差に起因した半導体パッケージにおける反りの発生を抑制することが可能となる。 [0022] また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、260℃における曲げ弾性率E(260)は100MPa以上であることが好ましい。260℃における曲げ弾性率E(260)をこの数値以上とすることにより、安定的に半導体装置の反りを制御することができる。 なお、260℃における曲げ弾性率E(260)の上限値は特に制限されないが、たとえば1GPa以下であり、800MPa以下が好ましく、より好ましくは600MPa以下である。このような数値以下とすることにより、封止樹脂としての適度な柔軟性を付与することができ、外部からの応力や、熱応力を効果的に緩和し、リフロー時の耐半田信頼性等を向上させることができる。 [0023] また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、25℃における曲げ弾性率E(25)が、1.0GPa以上であることが好ましく、3.0GPa以上であることがより好ましく、5.0GPa以上であることがとくに好ましい。25℃における曲げ弾性率E(25)を上記下限値以上とすることにより、室温における半導体装置の反りをより効果的に抑制することが可能となる。 一方で、硬化物の25℃における曲げ弾性率E(25)は、特に限定されないが、40GPa以下であることが好ましく、30GPa以下であることがより好ましく、20GPa以下であることがとくに好ましい。硬化物の25℃における曲げ弾性率E(25)を上記上限値以下とすることにより、外部からの応力を効果的に緩和して、半導体装置の信頼性向上を図ることができる。 なお、260℃および25℃での曲げ弾性率の測定は、JIS K 6911に準拠して行うことができる。 [0024] また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、175℃、3分で熱処理した際の収縮率S1が、0.5%以上であることが好ましく、また0.6%以上とすることがより好ましい。また、この収縮率S1の上限値としては、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。 このように半導体封止用樹脂組成物の成形時における収縮率を特定の範囲とすることによって、有機基板等の基材の収縮量と樹脂組成物の硬化時の収縮量との整合がとれて半導体パッケージの反りが抑制された形状に安定させることができる。」 「[0026] 続いて、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の組成について説明する。 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、を含有し、(C)無機充填材はクリストバライトを含む。 [0027] [(A)エポキシ樹脂] 本実施形態における(A)エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態においては、(A)エポキシ樹脂として、とくに非ハロゲン化エポキシ樹脂を採用することが好ましい。」 「[0035] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物中における(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体に対して8重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上とすることが特に好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形性のさらなる向上を図ることができる。 一方で、半導体封止用樹脂組成物中における(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体に対して50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。 [0036] [(B)硬化剤] 本実施形態における(B)硬化剤は、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、が挙げられる。これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール系硬化剤が好ましい。 [0037] <フェノール系硬化剤> フェノール系硬化剤としては、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェノールメタン骨格を有するフェノール樹脂、などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 「[0042] (B)硬化剤がフェノール系硬化剤の場合、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基モル数/フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基モル数の比は、特に制限はないが、成形性と耐リフロー性に優れるエポキシ樹脂組成物を得るために、0.5以上2以下の範囲が好ましく、0.6以上1.8以下の範囲がより好ましく、0.8以上1.5以下の範囲が最も好ましい。 [0043] [(C)無機充填材] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、(C)無機充填材を含み、この(C)無機充填材の少なくとも一部にクリストバライトを含む。 [0044] 本実施形態に用いることのできるクリストバライトは、特に形状は制限されるものではなく、球状のもの、破砕状のもの、どちらでも使用することができる。 そのなかでも、平均粒径が20μm以下のクリストバライトを用いることが好ましく、平均粒径が15μm以下のクリストバライトを用いることがより好ましい。 このような粒径のクリストバライトを用いることで、樹脂組成物全体に偏りなくクリストバライトを分散させることができ、樹脂硬化物として熱伝導性や耐吸湿性を効率的に付与することができる。 なお、本明細書において、「平均粒径」とは体積50%平均粒子径(D50)を指し、たとえば、(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD-7000を使用して測定することができる。 [0045] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物中におけるクリストバライトの含有量は、樹脂組成物の全体に対して5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上とすることが特に好ましい。クリストバライトの含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂を備える半導体装置について、耐熱性や耐吸湿性をより一層向上させることができる。 一方で、半導体封止用樹脂組成物中におけるクリストバライトの含有量は、樹脂組成物の全体に対して60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。クリストバライトの含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の高い流動性を確保することができる。 [0046] また、本実施形態において、(C)無機充填材の構成材料としては、クリストバライト以外の他の無機充填材を併用することができる。併用できる無機充填材の種類は、とくに限定されないが、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられ、これらのうちいずれか1種以上を使用できる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカを用いることがより好ましい。また、(C)無機充填材として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の難燃性を付与できる成分を含ませることも好ましい態様であるといえる。 [0047] (C)無機充填材として、シリカを併用する場合、たとえば異なる平均粒径(D50)の球状シリカを二種以上併用することができる。これにより、硬化物の線膨張係数α1、α2、25℃における曲げ弾性率E(25)や、260℃における曲げ弾性率E(260)、収縮率S1等の調整をさらに容易とすることができる。このため、半導体装置の反りの抑制に寄与することも可能となる。 また、本実施形態においては、シリカとして、平均粒径1μm以下の微粉シリカを含むことが、半導体封止用樹脂組成物の充填性を向上させる観点や、半導体装置の反りを抑制する観点から、好ましい態様の一つとして挙げられる。 [0048] (C)無機充填剤全体の含有量は、樹脂組成物の全体に対して30重量%以上であることが好ましく、45重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。一方で、(C)無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全体に対して88重量%以下であることが好ましく、85重量%以下とすることがより好ましく、82重量%以下とすることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性の低下に伴う成形性の低下や、高粘度化に起因したボンディングワイヤ流れ等を抑制することが可能となる。なお、(C)無機充填材の上記上限値については、上記に限られず、有機基板の線膨張係数等の物性や厚み等に合わせて適宜選択することが可能である。このような観点から、(C)無機充填材の含有量は、有機基板の種類にあわせて80重量%以下、または70重量%以下とすることが可能である。 また、(C)無機充填材全体の含有量をこのような範囲に制御することにより、硬化物の線膨張係数α1、α2、25℃における曲げ弾性率E(25)や、260℃における曲げ弾性率E(260)、収縮率S1等の物性値を所望の範囲とすることがより容易となる。このため、半導体装置の反りの抑制に寄与することも可能となる。」 「[0076] 本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば前述の各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕したもの、粉砕後にタブレット状に打錠成型したもの、また必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したもの等を用いることができる。」 「[0081] 次に、構造体102について説明する。 図2は、構造体102の一例を示す断面図である。構造体102は、MAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子20毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。 [0082] 構造体102は、基材10と、複数の半導体素子20と、封止樹脂30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基材10の一面上に配列されている。図2においては、各半導体素子20が、基材10に対してフリップチップ実装される場合が例示されている。この場合、各半導体素子20は、複数のバンプ22を介して基材10へ電気的に接続される。一方で、各半導体素子20は、ボンディングワイヤを介して基材10に電気的に接続されていてもよい。なお、基材10および半導体素子20は、半導体装置100において例示したものと同様のものを用いることができる。 図2に示す例では、各半導体素子20と基材10との間の隙間は、たとえばアンダーフィル32によって充填される。アンダーフィル32としては、たとえばフィルム状または液状のアンダーフィル材料を使用することができる。一方で、前述の半導体封止用樹脂組成物を、モールドアンダーフィル材料として用いることもできる。この場合、半導体素子20の封止と、基材10と半導体素子20との間の隙間の充填と、が一括して行われる。 [0083] 封止樹脂30は、複数の半導体素子20と、基材10のうちの上記一面と、を封止している。この場合、基材10のうちの上記一面とは反対の他面は、封止樹脂30により封止されない。また、封止樹脂30は、上述した半導体封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、構造体102や、構造体102を個片化して得られる半導体パッケージの反りを抑制することができる。封止樹脂30は、たとえば半導体封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。また、本実施形態において、各半導体素子20の上面は、図2に示すように封止樹脂30により封止されていてもよく、封止樹脂30から露出していてもよい。」 「[0085] 以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。 [0086] 実施例1~9、比較例1~2で用いた成分について、以下に示す。 (封止用樹脂組成物の調製) まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して封止用樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中の単位は、重量%である。 [0087] (A)エポキシ樹脂 エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC-3000) エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、YX4000) エポキシ樹脂3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製、N-660) [0088] (B)硬化剤 硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製、GPH-65) 硬化剤2:フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH-7800) 硬化剤3:フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、PR-HF-3) [0089] (C)無機充填材 無機充填材1:クリストバライト(東海ミネラル(株)製、CR-1、平均粒径(D50)5μm) 無機充填材2:球状溶融シリカ(電気化学工業(株)社製、商品名「FB560」、平均粒径(D50)30μm) 無機充填材3:球状溶融シリカ(微粉)((株)アドマテックス製、SO-C2、平均粒径(D50)0.5μm) 無機充填材4:球状溶融シリカ((株)アドマテックス製、SO-C5、平均粒径(D50)1.6μm) 無機充填材5:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL-303、平均粒径(D50)5.2μm) なお、本実施例における平均粒径は(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD-7000を使用して測定した。 [0090] (D)硬化促進剤 硬化促進剤1:下記式(13)で示される化合物 [0091] [化10] [図:0001393991000036.jpg] [0092] [上記式(13)で示される化合物の合成方法] 撹拌装置付きのセパラブルフラスコに4,4'-ビスフェノールS37.5g(0.15モル)、メタノール100mlを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mlのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mlのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1モル)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し、白色結晶の上記式(13)で示される化合物を得た。 [0093] 硬化促進剤2:下記式(17)で示される1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物 [0094] [化11] [図:0001393991000037.jpg] [0095] [上記式(17)で示される化合物の合成方法] 冷却管及び攪拌装置付きのセパラブルフラスコにベンゾキノン6.49g(0.060mol)、トリフェニルホスフィン17.3g(0.066mol)およびアセトン40mlを仕込み、攪拌下、室温で反応した。析出した結晶をアセトンで洗浄後、ろ過、乾燥し暗緑色結晶の上記式(17)で示される化合物を得た。 [0096] 硬化促進剤3:トリフェニルホスフィン [0097] (E)カップリング剤 カップリング剤:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083) [0098] (F)その他の成分 離型剤:モンタン酸エステルワックス(WE―4(クラリアントジャパン(株)製)) イオンキャッチャー:ハイドロタルサイト(DHT-4H(協和化学工業(株)製)) 着色剤:カーボンブラック(カーボン#5(三菱化学(株)製)) 低応力剤1:シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、FZ―3730) 低応力剤2:アクリロニトリル-ブタジエンゴム(宇部興産(株)製、CTBN1008SP) [0099] [評価項目] (収縮率) 各実施例および各比較例のそれぞれについて、得られた封止用樹脂組成物の収縮率を次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間3分の条件下で封止用樹脂組成物を金型キャビティ内に注入成形して円盤状の試験片を作製した。次いで、試験片を25℃まで冷却した。ここで、175℃における金型キャビティの内径寸法と、25℃における試験片の外形寸法と、から以下のようにして収縮率S1(%)を算出した。 S1={(175℃における金型キャビティの内径寸法)-(25℃における試験片の外径寸法)}/(175℃における金型キャビティの内径寸法)×100 結果を表1に示す。 [0100] (ガラス転移温度、線膨張係数(α1、α2)) 各実施例および各比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度および線膨張係数を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度、ガラス転移温度以下における線膨張係数(α1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α2)を算出した。表1中、α1とα2の単位はppm/Kであり、ガラス転移温度の単位は℃である。結果を表1に示す。 [0101] (曲げ弾性率、曲げ強度) 各実施例および各比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率および曲げ強度を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した。次いで、試験片の、25℃における曲げ弾性率E(25)と、260℃におけるおよび曲げ弾性率E(260)と、をJIS K 6911に準じて測定した。曲げ弾性率の単位はMPaである。結果を表1に示す。 [0102] (反り抑制の評価) 各実施例および各比較例について、次のように反り抑制の評価を行った。まず、次のタイプのパッケージ(以下、PKGと略す)をMAP成形用のトランスファー成形機を用いて準備した。10×10×0.15mmのSiチップをマウントした基板に、PKGサイズが14×14×0.48mm、基板厚みが0.28mm、樹脂厚みが0.20mmになるように設計したPKGを用いた。なお、本評価での基板としては、BT基板を用いており、この有機基板のガラス転移温度以下における線膨張係数α1は15ppm/K、ガラス転移温度以上における線膨張係数α2は18ppm/Kであった。 次いで、PKGの反りを測定した。反りの測定はShadow moire(akrometrix製)を用いて、25℃から260℃へ昇温して、25℃、260℃でのPKG反りを測定することにより行った。そして、25℃、260℃の両条件について、PKG反りが100μm未満であるものを○とし、100μm以上であるものを×として、反り抑制評価を行った。結果を表1に示す。 [0103] [表1] [図:0001393991000038.jpg] [0104] 表1に示されるように、各実施例の半導体封止用樹脂組成物は、硬化した際に比較的高い線膨張係数α2の値を示す。このことから、半導体パッケージを作製した際であっても、反りを抑制できるものであった。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「(A)エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量168g/eq、軟化点62℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名1032H60))」、「(B)フェノール樹脂(フェノール樹脂1:水酸基当量103g/eq、軟化点84℃のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エアウォーター株式会社製、商品名HE-910-10))」、「(E)無機充填剤(無機充填剤1:平均粒径3.1μm、比表面積3.1m2/g、粒径が10μm以下である粒子の割合が全体の100質量%である結晶シリカ)」は、各本件特許発明1の「エポキシ樹脂」、「フェノール樹脂硬化剤」、「充填剤」に相当する。 そして、甲1の段落【0004】の「モールドアンダーフィルとは、半導体チップと基板の間のギャップを液状アンダーフィル材で封止した後、半導体チップの上部をモールドする通常の封止方法とは異なり、アンダーフィルと半導体チップ上部のモールドを一括して行う封止方法である。」と記載されていることから、甲1発明の「(A)エポキシ樹脂」を含む「モールドアンダーフィル用硬化性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「半導体封止用エポキシ樹脂組成物」に相当する。 また、甲1発明の組成物は、上記成分からなるもので、「一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂」を含有するものではない。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含む、 半導体封止用エポキシ樹脂組成物(ただし、一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。)。(当審注:一般式(5)の化学式は省略する。) <相違点1-1-1> 半導体封止用のさらなる用途が、本件特許発明1は「半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる」ものであるのに対し、甲1発明はその点が不明な点 <相違点1-1-2> エポキシ樹脂組成物の形態が、本件特許発明1は「粉粒状、顆粒状またはタブレット状」であるのに対し、甲1発明はその点が不明な点 <相違点1-1-3> エポキシ樹脂組成物の物性が、本件特許発明1は「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」、であるのに対し、甲1発明はその点が不明な点 <相違点1-1-4> エポキシ樹脂が、本件特許発明1は「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含」むものであるのに対し、甲1発明は、「エポキシ樹脂1:エポキシ当量168g/eq、軟化点62℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名1032H60)」である点 <相違点1-1-5> 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対する充填剤の含有量が、本件特許発明1は「75質量%以上93質量%以下」であるのに対し、甲1発明は「71.4質量%」である点 そこで、上記相違点について検討する。 事案に鑑み、<相違点1-1-3>から検討する。 まず、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0006】等より、「電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物」を提供することを目的とするものである。 一方、甲1には、「充填性に優れ、硬化収縮が小さいモールドアンダーフィル用樹脂組成物を提供すること」(段落【0007】等)を目的とし、甲2には、「フリップチップ実装用のアンダーフィル材として好適な充填性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料」を供すること(段落【0006】等)を目的とする技術が記載されているところ、甲1及び甲2には、本件特許発明1の上記物性について一切記載されていない。 甲3には、「低誘電膜が形成された素子を封止する際、素子表面との接着性に著しく優れ、耐半田クラック試験、耐温度サイクル試験を施した際の信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物」を提供することを目的とする技術が記載されているところ、段落【0055】によれば、素子封止用樹脂組成物が、「175℃ 溶融粘度が7~8Pa・s 」であり、「-55℃~50 ℃以下の温度領域における封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が0.7~0.8×10-5/℃」である実施例が記載されている。 また、甲4には、「従来の半導体装置製造法では達成できなかった導電性異物に起因する短絡不良を起こすことの少ない半導体装置、及びその製造方法を提供すること」(段落【0009】)を目的とする技術が記載されているところ、その段落【0053】によれば、「175℃ での溶融粘度が8Pa・s」及び「-55~50℃における固形工ポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が8ppm/℃」である実施例が記載されている。 しかしながら、甲3及び甲4には、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であるエポキシ樹脂組成物は記載されていない。 甲5には、「クリストバライトを含ませながらも、得られる半導体装置としての反りを抑制することができる半導体封止用樹脂組成物を提供すること」(段落[0004])を目的とする技術が記載されているところ、段落[0103] によれば、「260℃における曲げ弾性率が101~425MPa」、ガラス転移温度以下における線膨張係数α1が、24.0~35.0ppm/℃」である実施例が記載されている。 しかしながら、甲5には、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」かつ「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であるエポキシ樹脂組成物は記載されていない。 してみると、甲2ないし5のいずれにも、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」を同時に満足する組成物は記載されていない。 ところで、組成物の物性は、成分の種類や、組成物の組成により変化するところ、一つの物性を調整するために、成分の種類や組成比を変化させると他の物性が調整前と同じ値を維持するとは限らない。 そうすると、上記全ての物性を同時に満足する組成物が甲2ないし甲5に示されていない以上、甲1発明において、その動機付けを検討するまでもなく、<相違点1-1-3>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明1は、耐リフロー性に優れ、かつ260℃の高温条件下においても反りが発生しにくい、電気的接続信頼性に優れた効果(段落【0009】、【0079】)を奏するものである。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、異議申立人の第59及60ページにおいて、以下の主張をしている。 「・・・甲1発明に係る技術分野と、甲3発明 、甲4発明、及び甲5発明に係る技術分野とは、半導体素子、半導体チップ等の電子部品を封止するために用いられる封止用の樹脂組成物に関するものである点で共通する。 また、甲1発明において、甲1号証の段落0133、及び0140には、モールドアンダーフィル用樹脂組成物の線膨張係数を調整することの記載がある。また、甲1号証の段落0134には、モールドアンダーフィル用樹脂組成物の線膨張係数、弾性率、粘度等を調整すべきことの記載がある。 このため、甲1発明において、甲3号証から甲5号証の記載を参酌して、260℃における熱時弾性率を60MPa以上500MPaとすること、175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下とすること、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下とすることは、当業者にとって数値範囲の最適化又は好適化にすぎず設計的事項である。」 しかしながら、上記(2)ア(ア)で示したように、甲3ないし5のいずれにも、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」を同時に満足する組成物については記載されていない。そして、当該物性は、本件特許発明の課題を解決するために設定されたものであり、当業者が適宜設定し得る設計的事項ともいえない。 よって、審判請求人の主張は首肯できない。 (4)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし5は、甲1発明及び甲2ないし甲5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲5に基づく進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲5に記載された事項及び甲5発明 (ア)甲5に記載された事項 上記1(1)オ(ア)に示した事項が記載されている。 (イ)甲5発明 甲5の実施例1に着目し、【請求項1】の記載にならって整理すると、以下の発明が記載されている。 「(A)エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC-3000))18.25重量部と、 (B)硬化剤(硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製、GPH-65))9.95重量部と、 (C)無機充填材(無機充填材1:クリストバライト(東海ミネラル(株)製、CR-1、平均粒径(D50)5μm)18.00重量部、無機充填材2:球状溶融シリカ(電気化学工業(株)社製、商品名「FB560」、平均粒径(D50)30μm)32.00重量部、無機充填材3:球状溶融シリカ(微粉)((株)アドマテックス製、SO-C2、平均粒径(D50)0.5μm)5.00重量部、無機充填材4:球状溶融シリカ((株)アドマテックス製、SO-C5、平均粒径(D50)1.6μm)5.00重量部、無機充填材5:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL-303、平均粒径(D50)5.2μm)10.00重量部)、と、 (D)硬化促進剤(硬化促進剤1:下記式(13)で示される化合物 [図:0001393991000039.jpg] )0.80重量部、 (E)カップリング剤(フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083))0.20重量部、 離型剤(モンタン酸エステルワックス(WE―4(クラリアントジャパン(株)製)))0.20重量部、イオンキャッチャー(ハイドロタルサイト(DHT-4H(協和化学工業(株)製)))0.15重量部、 着色剤(カーボンブラック(カーボン#5(三菱化学(株)製)))0.30重量部、 低応力剤1(シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、FZ―3730))0.10重量部、 低応力剤2(アクリロニトリル-ブタジエンゴム(宇部興産(株)製、CTBN1008SP))0.05重量部を含有する半導体封止用樹脂組成物であって、 当該半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、ガラス転移温度以下での線膨張係数α1が26.0ppm/Kであり、 JIS K 6911に準じて測定した260℃における曲げ弾性率E(260)が151MPaであり、 前記硬化物の、ガラス転移温度が134℃である、半導体封止用樹脂組成物。」(以下、「甲5発明」という。) イ 甲1ないし甲4に記載された事項 甲1、甲2及び甲4には、上記1(1)ア、イ及びエに示した事項が記載されている。また、甲3には、上記第5 2(1)ア(ア)に示した事項が記載されている。 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲5発明とを対比する。 甲5発明の「(A)エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC-3000))」、「(B)硬化剤(硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製、GPH-65))」、「(C)無機充填材」は、各本件特許発明1の「ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」、「フェノール樹脂硬化剤」、「充填剤」に相当する。そして、甲5発明の「半導体封止用樹脂組成物」は、(A)エポキシ樹脂を含むものであるから、本件特許発明1の「半導体封止用エポキシ樹脂組成物」に相当する。 甲5発明の「(C)無機充填材」の含有割合は、組成物の全量に対して、70重量%である。 甲5発明の「260℃における曲げ弾性率E(260)」は151MPaであるところ、JIS K 6911に準じて測定するものであり、3点曲げ法により測定することが通常であるから、甲5発明は、本件特許発明1の「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」の範囲と重複一致する。 また、甲5発明の組成物は、上記成分からなるもので、「一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂」を含有するものではない。 そうすると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含み、 JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(ただし、一般式(5)で示されるシリコーン変性エポキシ樹脂を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を除く。)。(当審注:一般式(5)の化学式は省略する。) <相違点5-1-1> 半導体封止用のさらなる用途が、本件特許発明1は「半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる」ものであるのに対し、甲5発明はその点が不明な点 <相違点5-1-2> エポキシ樹脂組成物の形態が、本件特許発明5は「粉粒状、顆粒状またはタブレット状」であるのに対し、甲5発明はその点が不明な点 <相違点5-1-3> エポキシ樹脂組成物の物性が、本件特許発明1は「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」であるのに対し、甲5発明は溶融粘度が不明であり、「175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、ガラス転移温度以下での線膨張係数α1が26.4ppm/K」である点 <相違点5-1-4> 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対する充填剤の含有量が、本件特許発明1は「75質量%以上93質量%以下」であるのに対し、甲1発明は「70.0質量%」である点 そこで、上記相違点について検討する。 事案に鑑み、<相違点5-1-3>から検討する。 甲5は、「クリストバライトを含ませながらも、得られる半導体装置としての反りを抑制することができる半導体封止用樹脂組成物を提供すること」(段落[0004])を目的とする技術が記載されているところ、「粘度」については、「一方で、(C)無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全体に対して88重量%以下であることが好ましく、85重量%以下とすることがより好ましく、82重量%以下とすることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性の低下に伴う成形性の低下や、高粘度化に起因したボンディングワイヤ流れ等を抑制することが可能となる。」(段落[0048])としか記載されておらず、「溶融粘度」の具体的数値については一切記載されていない。 一方、甲1及び甲2には、溶融粘度や線膨張係数について一切記載されていない。 甲3には、「低誘電膜が形成された素子を封止する際、素子表面との接着性に著しく優れ、耐半田クラック試験、耐温度サイクル試験を施した際の信頼性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物」を提供することを目的とする技術が記載されているところ、段落【0055】によれば、素子封止用樹脂組成物が、「175℃ 溶融粘度が7~8Pa・s 」であり、「-55℃~50 ℃以下の温度領域における封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が0.7~0.8×10-5/℃」である実施例が記載されている。 また、甲4には、「従来の半導体装置製造法では達成できなかった導電性異物に起因する短絡不良を起こすことの少ない半導体装置、及びその製造方法を提供すること」(段落【0009】)を目的とする技術が記載されているところ、その段落【0053】によれば、「175℃ での溶融粘度が8Pa・s」及び「-55~50℃における固形工ポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が8ppm/℃」である実施例が記載されている。 すなわち、甲2ないし5のいずれにも、「JIS K-6911に準じた3点曲げ法により、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下」であり、「当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・s以上10Pa・s以下」であり、「25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」を同時に満足する組成物は記載されていない。 ところで、組成物の物性は、成分の種類や、組成物の組成により変化するところ、一つの物性を調整するために、成分の種類や組成比を変化させると他の物性が調整前と同じ値を維持するとは限らない。 そうすると、上記全ての物性を同時に満足する組成物が甲1ないし甲4に示されていない以上、甲5発明において、<相違点1-1-3>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。 また、甲5発明と甲3及び甲4の技術は、課題が異なるし、甲5の段落【0048】の記載からすると、甲5発明において、「溶融粘度」は、ボンディングワイヤ流れ等を考慮すると、低い方が好ましいものであるが、甲3及び甲4の溶融粘度は、例えば、参考文献Aの実施例1(150℃の溶融粘度が0.28Pa・s)よりも高いものであるため、甲5発明において、甲3及び甲4の技術を適用する動機付けはない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲5発明及び甲1ないし甲4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件特許発明1は、耐リフロー性に優れ、かつ260℃の高温条件下においても反りが発生しにくい、電気的接続信頼性に優れた効果(段落【0009】、【0079】)を奏するものである。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5発明及び甲1ないし甲4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、異議申立人の第64及65ページにおいて、以下の主張をしている。 「・・・甲5号証の段落0004には、「近年、半導体装置は薄型化の要求が高まってきている」との記載があることから、半導体装置の薄型化や小型化などのために半田バンプのバンプ高さを適宜調整することは当業者にとって、数値範囲の最適化又は好適化にすぎず、甲1号証から甲4号証にも記載されているように設計的事項である。特に、甲1号証及び甲2号証には、「バンプ高さが100μm以上である半田バンプ」を封止するために用いられるものであることが開示されており、バンプ高さを100μm以上とすることも周知の事項である。このため、バンプ高さをいかなる値にするかは当業者にとって設計的事項である。また、甲5号証の段落0048 には、半導体封止用樹脂組成物の粘度を調整すべきことの記載がある。また、甲3号証には、「素子封止用樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、7~8Pa・sである」ことが開示され、甲4号証にも、「固形エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が8Pa・s」であるものが開示されている。 そして、甲5号証と、甲1号証から甲4号証とは、技術分野が共通する。 このため、当業者にとって、甲5発明において、甲1号証から甲4号証の内容を参酌すれば本件特許発明1の構成に容易に想到しうる。」 しかしながら、上記(2)アで示したように、甲5発明と甲3及び甲4の技術は、課題が異なるし、甲5発明において、「溶融粘度」は、ボンディングワイヤ流れ等を考慮すると、低い方が好ましいものであるが、甲3及び甲4の溶融粘度は、例えば、参考文献Aの実施例1(150℃の溶融粘度が0.28Pa・s)よりも高いものであるため、甲5発明において、甲3及び甲4の技術を適用する動機付けはない。 よって、審判請求人の主張は首肯できない。 (4)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし5は、甲5発明及び甲1ないし甲4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細の記載は、上記第5 1(2)のとおりである。 (4)サポート要件の判断 ア 本件特許発明の課題 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0006】等より、「電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物」を提供することである。 イ 本件特許明細書の一般的な記載の検討 本件特許明細書の段落【0011】、【0012】には、「本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう。)は、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いるものである。そして、かかる本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を含み、充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下である構成を採用したものである。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを封止してなる半導体装置の電気的接続信頼性を改善できる。 すなわち、本樹脂組成物は、以下の3つの条件をすべて満たす構成を採用したものである。 第1の条件は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、を封止するために用いることを想定していることである。 第2の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、充填材の含有量が、かかる樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下となるようにされたものである。 第3の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、260℃で測定した該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるようにされたものである。 本発明者らは、上述した3つの条件をすべて満たす構成を備えた本樹脂組成物を用いて半導体装置を作製した場合、得られた半導体装置に反りや半田フラッシュなどの不都合が生じることを抑制できるため、結果として、電気的接続信頼性を改善できることを見出した。 この点については、後述の実施例において、実施例1~6と比較例1~4の比較データを示す。」と記載されている。 また、同段落【0014】には、「そして、本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、必須成分として含み、上記充填材の含有量が、当該樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下である配合組成となるように制御した構成を採用するものであるが、好ましくは、78質量%以上92質量%以下であり、さらに好ましくは、79質量%以上91質量%以下である。こうすることで、本樹脂組成物を用いて形成された封止材40の低吸湿性および低熱膨張性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置の電気的接続信頼性を向上させることができる。また、充填材の含有量を上記数値範囲内とすることにより、成形時の流動性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置への樹脂充填性を良好なものとすることができる。」と記載され、段落【0015】には、「また、本樹脂組成物は、上述した配合組成とすることを前提とした上で、260℃で測定した当該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるように制御したものである。こうすることで、半導体チップ30と基板10との熱膨張係数の違いにより生じる応力(界面熱応力)により、封止材40の界面剥離やクラックが生じることを効果的に防ぐことができる。そのため、本樹脂組成物によれば、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。なお、従来の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、1GPaを超えるものがほとんどであった。また、本樹脂組成物に係る上記熱時弾性率は、60MPa以上500MPa以下であるが、好ましくは、70MPa以上480MPa以下であり、さらに好ましくは、100MPa以上450MPa以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を備える半導体装置の電気的接続信頼性に加えて、機械的耐久性をも向上させることができる。なお、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率は、JIS K -6911に準じた3点曲げ法により測定することができる。」と記載され、さらに、段落【0016】に、「ここで、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における本樹脂組成物の硬化物の線膨張係数は、好ましくは、20ppm/℃以下であり、より好ましくは、18ppm/℃以下であり、さらに好ましくは、15ppm/℃以下である。こうすることで、本樹脂組成物を封止成形して得られた封止材40の冷却に伴う収縮量(ひずみ)自体を低減することができるため、結果として、当該封止材40と、半導体チップ30および基板10との線膨張係数の違いにより生じる応力による影響を低減し、電気的接続信頼性に優れた半導体パッケージを得ることができる。」と記載され、段落【0018】には、「また、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度は、好ましくは、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、さらに好ましくは、3Pa・S以上9.5Pa・S以下であり、より好ましくは、4Pa・S以上9Pa・S以下であり、特に好ましくは、5.5Pa・S以上9Pa・S以下であり、最も好ましくは、5.5Pa・S以上7Pa・S以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を基板10上に搭載した半導体装置についても、未充填領域やボイドが生じることなく、本樹脂組成物により封止成形することができる。つまり、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度が上記数値範囲内である場合、より一層樹脂充填性を向上させることができる。」と記載されている。 上記記載からすると、 「半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含み、 前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」(以下、「本件特許明細書の一般的な記載から導かれる特定事項」という。)であることにより、本件特許発明の課題が解決し得ることが記載されている。 ウ 実施例の検討 本件特許明細書の実施例1~6は、「エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂」を含むものであって、充填材の含有量が79~85質量%、熱時弾性率が150~450MPa、175℃での溶融粘度が6.0Pa・S、線膨張係数が5.9~7.0ppm/℃と、上記一般的な記載から導かれる特定事項の範囲内のものであり、成形後の半田フラッシュ、ボイド、リフロー後の半田フラッシュ、リフロー後のバンプ変形が「無」となり、熱時反りが「◎:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、50μm未満である。」か「○:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、100μm未満である。」となっており、本件特許発明の課題が解決されている。 一方、本件特許明細書の比較例1、比較例3は、熱時弾性率が50MPaと、上記本件特許明細書の一般的な記載から導かれる特定事項の範囲外のものであるところ、熱時反りが「×:少なくとも、25℃でのパッケージ反り量と260℃でのパッケージ反り量の、いずれか一方が、100μm以上である。」となり、本件特許発明の課題が解決されていない。 また、同様に、本件特許明細書の比較例4は、熱時弾性率が2000MPaと、上記本件特許明細書の一般的な記載から導かれる特定事項の範囲外のものであるところ、成形後の半田フラッシュ、ボイド、リフロー後の半田フラッシュ、リフロー後のバンプ変形が「有」となり、本件特許発明の課題が解決されていない。 エ まとめ 上記イ、ウの検討をふまえると、当業者は、 「半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、 エポキシ樹脂と、 フェノール樹脂硬化剤と、 充填材と、 を含み、 前記エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含み、 前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、 260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下」という特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。 そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明2ないし5についても同様である。 よって、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書の第68及び69ページにおいて、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない旨主張しているものの、その具体的理由は、実施可能要件を満たさないとする理由に基づくものであるため、採用することができない。 また、上記(4)に示したように、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものである。 (6)申立理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては取り消すことはできない。 4 令和4年7月11日付け意見書について 特許異議申立人は、当該意見書において、参考文献Aと参考文献Bを添付し、本件特許発明1ないし5は、各参考文献A(実施例6)、参考文献B(実施例9)に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得た旨主張している。 しかしながら、当該文献に基づく主張は、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じたものではなく、特許異議申立時に主張できたものであるため、採用することができない。 仮に採用したとしても、粘度について、本件特許発明1が「175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であるのに対し、特許異議申立人が認定した参考文献Aに記載の発明は、「150℃の溶融粘度が0.23Pa・s」である点、特許異議申立人の認定した参考文献Bに記載の発明は、「175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下」であるか不明である点で相違するが、特許異議申立人はこの点を看過しており、何ら言及がされていないし、また、当該相違点に係る発明特定事項を容易に想到し得る理由もない。 よって、特許異議申立人の新たな主張は採用することができない。 第7 結語 以上、第5及び第6で示したとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701136

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