特許異議申立
2021-701128
防音材
- 審判番号
- 2021-701128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-532888
- 登録番号
- 6879369
- 請求日
- 2021年12月02日
- 審決日
- 2023年06月23日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日産自動車株式会社
- 【権利者代理人】IBC一番町弁理士法人
- 【異議申立人】宮口 喜市
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 木方 庸輔
- 審判官 樫本 剛
- 分類
- P1651.112-YAA(G10K) / P1651.113-YAA(G10K) / P1651.121-YAA(G10K) / P1651.537-YAA(G10K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6879369号発明「防音材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6879369号の明細書及び特許請求の範囲を令和5年3月30日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~21〕について訂正することを認める。
特許第6879369号の請求項1~21に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6879369号(以下「本件特許」という。)の請求項1~21に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)7月27日(先の出願(特願2017-146066号)に基づく優先権主張 平成29年7月28日、先の出願(特願2018-136411号)に基づく優先権主張 平成30年7月20日)を国際出願日とする特願2019-532888号であって、令和3年5月7日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、その異議申立期間内である同年12月2日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)宮口喜市により特許異議の申立てがされ、令和4年5月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月10日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、同年9月2日付けで申立人に特許法第120条の5第5項に基づく通知書が通知され、これに対して、その指定期間内である同年10月5日に申立人から意見書が提出され、令和5年1月24日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月30日に特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、同年4月10日付けで申立人に同項に基づく通知書が通知され、これに対して、その指定期間内である同年5月12日に申立人から意見書が提出された。
なお、令和4年8月10日付け訂正請求書による訂正の請求は、同条第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年3月30日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6879369号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正するものであり、その内容は以下の(1)~(3)のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足する、」と記載されているのを、「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されておらず、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~21も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「防音材」と記載されているのを、「面密度が3.24kg/m2未満である、防音材」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~21も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0060】に「この場合、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。なかでも、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに異なるものであることが好ましい。」と記載されているのを、「この場合、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、シートの両面に配置されるそれぞれの支持部の構成材料は互いに異なっていてもよい。なかでも、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(支持部)の形態は互いに異なるものであることが好ましい。」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項1~21について、訂正前の請求項2~21は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~21は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、上記一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであるから、同項の規定に適合するものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1の「シート」について、「それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されていない」との限定を加えるものである。そして、請求項1を引用する請求項2~21を同様に限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許に係る明細書の段落【0017】には、本発明の一実施形態に係る防音材の構成として、「このラテックスゴムシート200は、格子状構造体100の両側の開口部のうち一方の側を塞ぐように当該格子状構造体100に気密に接合されており」と記載されているから、本件特許に係る明細書に記載された実施形態として、シートに穴が穿孔されていない防音材が記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1~21の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、請求項1の「防音材」について、「面密度が3.24kg/m2未満である」との限定を加えるものである。また、請求項1を引用する請求項2~21を同様に限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
本件特許に係る願書に添付した明細書の段落【0063】には、「本形態に係る防音材は、上述したように、軽量であることが好ましい。この観点から、本形態に係る防音材の全体としての面密度は、好ましくは3.24kg/m2未満であり、より好ましくは2.0kg/m2以下であり、さらに好ましくは1.5kg/m2以下であり、特に好ましくは1.0kg/m2以下である。」との記載がある。
よって、訂正事項2は、本件特許に係る願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項1~21の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、明細書の段落【0060】に、「例えば、シートの両面に配置されるそれぞれの支持部の構成材料は互いに異なっていてもよい。」との記載を追加するものである。
ここで、訂正事項3は、本件特許の請求項10である「前記シートの両面に配置されるそれぞれの前記支持部の構成材料が互いに異なる、請求項9に記載の防音材。」の記載に基づく明細書の訂正であり、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるための訂正であるから、訂正事項3の訂正による当該記載の追加は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、一群の請求項である請求項1~21の全ての記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるために訂正するものであるから、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われている訂正である。よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
また、訂正事項3は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件
訂正事項1及び2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の全ての請求項1~21について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~21に係る訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
5 まとめ
上記1~4のとおり、本件訂正の訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1~21〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~21に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」~「本件発明21」という。)は、令和5年3月30日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その記載は次のとおりである。
なお、当審により、本件発明1~21を(1A)~(21B)に分説した。分説した各発明特定事項を、以下それぞれ「発明特定事項1A」~「発明特定事項21B」という。
【請求項1】
(1A) 弾性を有するシートと、
(1B) 前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
(1C) 前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
(1D) それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されておらず、
(1E)面密度が3.24kg/m2未満である、
(1F)防音材:
(1C)【数1】
[数式1]
[図:0001401594000001.jpg]
【請求項2】
(2A) 前記面剛性(k)及び前記面密度(m)が、下記数式2の関係を満足する、
(2B)請求項1に記載の防音材:
(2A)【数2】
[数式2]
[図:0001401594000002.jpg]
【請求項3】
(3A) 前記支持部は前記シートを複数の区画部に区画しており、
(3B)前記複数の区画部の少なくとも一部は、同一の外郭形状を有する前記複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している、
(3C)請求項1または2に記載の防音材。
【請求項4】
(4A) 前記シートの面積に占める前記規則配列構造の面積の割合が90~100%である、
(4B)請求項3に記載の防音材。
【請求項5】
(5A) 前記規則配列構造における前記区画部の外郭形状が正六角形、正方形および正三角形からなる群から選択される多角形である、
(5B)請求項3または4に記載の防音材。
【請求項6】
(6A) 前記多角形が正六角形であり、
(6B)前記正六角形における対向する平行な辺の距離が6.0mm以下である、
(6C)請求項5に記載の防音材。
【請求項7】
(7A) 前記支持部は、高さが均一な単一の構造体である、
(7B)請求項1~6のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項8】
(8A) 前記支持部の延在方向の高さが5mm以上である、
(8B)請求項1~7のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項9】
(9A) 前記支持部が、少なくとも1つの前記シートの両面に配置されている、
(9B)請求項1~8のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項10】
(10A) 前記シートの両面に配置されるそれぞれの前記支持部の構成材料が互いに異なる、
(10B)請求項9に記載の防音材。
【請求項11】
(11A) 前記シートが、少なくとも1つの前記支持部の両側に配置されている、
(11B)請求項1~9のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項12】
(12A) 前記支持部の両側に配置されるそれぞれの前記シートの構成材料が互いに異なる、
(12B)請求項11に記載の防音材。
【請求項13】
(13A) 1つの前記シートに対して少なくとも1つの前記支持部が複数の部材に分割されている、
(13B)請求項1~12のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項14】
(14A) 少なくとも1つの前記シートの構成材料がゴム材料である、
(14B)請求項1~13のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項15】
(15A) 少なくとも1つの前記シートの構成材料が樹脂材料である、
(15B)請求項1~14のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項16】
(16A) 少なくとも1つの前記シートの構成材料が金属材料である、
(16B)請求項1~15のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項17】
(17A) 少なくとも1つの前記シートの構成材料が紙材料である、
(17B)請求項1~16のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項18】
(18A) 少なくとも1つの前記シートが緩衝機能を有する材料である、
(18B)請求項1~17のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項19】
(19A) 少なくとも1つの前記支持部の構成材料が樹脂材料である、
(19B)請求項1~18のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項20】
(20A) 少なくとも1つの前記支持部の構成材料が金属材料である、
(20B)請求項1~19のいずれか1項に記載の防音材。
【請求項21】
(21A) 可撓性を有するものである、
(21B)請求項1~20のいずれか1項に記載の防音材。
第4 特許異議申立の理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立の理由の概要
理由1:(新規性・刊行物公知)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、同項の規定に違反してされたものである。
理由2:(新規性・公然実施)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、同項の規定に違反してされたものである。
理由3:(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、公然実施された発明、又は、頒布された下記の刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<各甲号証>
甲第1号証:特開2016-164642号公報
甲第2号証:石田祥子ら,有限要素法による新しい透過損失算出手法,日本機械学会論文集,Vol.80,No.813(2014年)
甲第3号証:特開2001-347900号公報
甲第4号証:特開2010-85818号公報
甲第5号証の1:スカイラインのトランクマットの写真
甲第5号証の2:スカイラインのトランクマットのシート厚みの測定結果
甲第5号証の3:報告書 受託測定 自動車室内の内装部品共振測定(レーザードップラ振動計),株式会社小野測器
上記各甲号証は、申立人の提出した甲第1号証~甲第4号証及び甲第5号証の1~3である。各甲号証を、以下それぞれ「甲1」~「甲4」及び「甲5-1」~「甲5-3」という。また、甲第5号証の1~3をまとめて、「甲5」という。
<各理由に対応する請求項>
理由1:(新規性・刊行物公知)について
・甲1に基づいて 請求項1~8及び15~20
理由2:(新規性・公然実施)
・甲5に基づいて 請求項1~4、11、13、15及び19
理由3:(進歩性)
・甲1~3に基づいて 請求項1~8、13及び15~21
・甲1~4に基づいて 請求項9~12及び14
・甲5及び2~3に基づいて 請求項1~4、11、13、15、19及び21
・甲5及び1~3に基づいて 請求項5~8、16~18及び20
・甲5及び2~4に基づいて 請求項9、10、12及び14
2 取消理由の概要
(1)令和4年5月17日付け取消理由通知の取消理由の概要
取消理由1は、上記1の理由2(新規性・公然実施)と同様である。
取消理由2は、上記1の理由1(新規性・刊行物公知)と同様である。
取消理由3は、上記1の理由3(進歩性)と同様である。
取消理由4:(サポート要件)本件特許の下記の請求項に係る発明は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備があり、特許法第36条第6項第1号に掲げる要件を満たしていないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである。
記
各甲号証は、上記1の甲1、甲4及び甲5-1~5-3と同一である。
<各取消理由に対応する請求項>
取消理由1(新規性・公然実施)
・甲5に基づいて 請求項1~4、7、11、13、15及び19
取消理由2:(新規性・刊行物公知)について
・甲1に基づいて 請求項1~5、7、15及び20
取消理由3:(進歩性)
・甲1に基づいて 請求項1~8、11及び15~21
・甲1及び4に基づいて 請求項9、11及び14~21
・甲1及び5に基づいて 請求項13及び15~21
・甲1、4及び5に基づいて 請求項13~21
・甲5に基づいて 請求項1~4、7、11、13、15、19及び21
・甲5及び1に基づいて 請求項5~8、11、13及び15~21
・甲5及び4に基づいて 請求項9、11、13~15、19及び21
・甲5、1及び4に基づいて 請求項9、11及び13~21
取消理由4(サポート要件)について
・請求項10及び13~21
(2)令和5年1月24日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
取消理由2及び3は、上記(1)の取消理由2及び3と同様である。また、各甲号証は、上記1の甲1、甲4及び甲5-1~5-3と同一である。
<各取消理由に対応する請求項>
取消理由2:(新規性・刊行物公知)について
・甲1に基づいて 請求項1、3~5、7及び15
取消理由3:(進歩性)
・甲1に基づいて 請求項1、3~8、11及び15~21
・甲1及び4に基づいて 請求項9、11及び14~21
・甲1及び5に基づいて 請求項13及び15~21
・甲1、4及び5に基づいて 請求項13~21
第5 各甲号証の記載、及び、各甲号証に記載された発明又は技術
1 甲1の記載、及び、甲1に記載された発明又は技術
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。
「【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、軽量で薄く、その穴の位置及び形状に遮蔽周波数及び大きさ等の遮音特性が依存することなく、遮音材としてのロバスト性が高く、かつ安定性があり、通気性があり、風及び熱を通すことができ、熱がこもることが無く、機器、自動車、及び一般家庭の用途に適し、製造適性に優れた防音構造、このような防音構造を確実、かつ容易に製造することができる防音構造の製造方法を提供することにある。」
「【0020】(前略)…
防音構造10において、1つの枠14と、この枠14に固定された膜18と、この膜18に設けられた開口部24とは、1つの防音セル26を構成する。このため、本発明の防音構造10は、複数、図示例では、16個の防音セル26によって構成される。…(後略)」
「【0022】(前略)…
また、枠14のサイズは、平面視のサイズであり、その貫通孔12のサイズとして定義できるが、図1、図4及び図5に示す正方形のような正多角形、又は円の場合には、その中心を通る対向する辺間の距離、又は円相当直径と定義することができ、多角形、楕円又は不定形の場合には、円相当直径と定義することができる。本発明において、円相当直径及び半径とは、それぞれ面積の等しい円に換算した時の直径及び半径である。…(後略)」
「【0030】
膜18は、枠14を節として膜振動する必要があるので、枠14に確実に抑えられるように固定され、膜振動の腹となり、音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音する必要がある。このため、膜18は、可撓性のある弾性材料製であることが好ましい。…(後略)
【0031】
ここで、図6~図11に示すように、防音セル26の枠14に固定された膜18は、最も低次の固有振動モードの周波数である共振周波数として、透過損失が最小、例えば0dBとなる第1固有振動周波数を持つものである。…(後略)」
「【0040】
膜18の材料は、膜状材料、又は箔状材料にした際に、上述した防音対象物に適用する際に適した強度を持ち、防音対象物の防音環境に対して耐性があり、膜18が音波のエネルギを吸収、もしくは反射して防音するために膜振動することができるものであれば、特に制限的ではなく、防音対象物及びその防音環境などに応じて選択することができる。例えば、膜18の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、アクリル(PMMA)、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、芳香族ポリアミド、シリコーン樹脂、エチレンエチルアクリレート、酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリブテン等の膜状にできる樹脂材料、アルミニウム、クロム、チタン、ステンレス、ニッケル、スズ、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鉄、銅、パーマロイ等の箔状にできる金属材料、紙、セルロースなどその他繊維状の膜になる材質、不織布、ナノサイズのファイバーを含むフィルム、薄く加工したウレタンやシンサレートなどのポーラス材料、薄膜構造に加工したカーボン材料など、薄い構造を形成できる材質又は構造等を挙げることができる。」
「【0070】
(実施例1)
以下に、膜18のPETフィルム厚さ50μm(=50×10-6m)、枠14のサイズ7.5mm(=7.5×10-3m)、サイズ直径200μm(=200×10-6m)の穴22を持つ実施例1の防音構造の製造方法を示す。
PETフィルム(東レ株式会社製ルミラー)50μm品を膜18として用いた。枠14としてはアルミニウム厚み3mm×幅3mmを用い、枠14の形状を正方形として、その正方形の貫通孔12の一辺を7.5mmとして加工を行ったものを用いた。枠構造の貫通孔12は15×15個の合計225個を有する。この枠構造をPETフィルムに対して接着剤で固定し、枠14と膜18とからなる枠・膜構造を作製した。」
「【0086】
(実施例32)
実施例1において、枠の素材としてアルミニウムを用いる代わりに枠状に加工したアクリルを用いた。その他は実施例1と同一条件で防音構造サンプル作製を行った。こうして得られた実施例32の測定結果を表5に示す。枠14の素材を変更しても同じ効果が得られた。」
「【表5】
[図:0001401594000003.jpg]
」
「【図1】
[図:0001401594000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001401594000005.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明及び技術
上記(1)のとおり、甲1の【図1】から、「防音構造10は、同一の幾何学形態を有する複数の防音セル26が互いに接しており、規則的に配列されている」点が読み取れる。
また、【図2】から、「防音構造10は、単一の膜18を、複数の枠14によって固定する構造である」点が読み取れる。
更に、【表5】から、膜の第1固有振動数が「2820Hz」であることが読み取れる。
よって、甲1には、実施例32として、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、当審にて甲1発明を(1a)~(1j)の発明特定事項に分説した。分説した各発明特定事項を、以下それぞれ「発明特定事項1a」~「発明特定事項1j」という。また、甲1における記載箇所を、各発明特定事項の末尾の( )内に示した。
(甲1発明)
「(1a) 防音構造10は、複数の防音セル26によって構成され(【0020】)、
(1b) 1つの防音セル26は、1つの枠14と、この枠14に固定された膜18と、膜18に設けられた開口部24とから構成され(【0020】)、
(1c) 膜18は、厚さ50μmのPETフィルムであり(【0070】)、
(1d) 枠14は、サイズ7.5mmであり(【0070】)、枠14のサイズは、対向する辺間の距離であり(【0022】)、
(1e) 枠14は、アクリルであり、厚み3mm、幅3mmであり、形状を正方形とし、その正方形の貫通孔の一辺を7.5mmとし(【0070】、【0086】、【表5】)、
(1f) 膜18の第1固有振動周波数は、2820Hz付近であり(【0086】、【表5】)、
(1g) 同一の幾何学形態を有する複数の防音セル26が規則的に配列され(【図1】)、
(1h) 単一の膜18を、複数の枠14によって固定し(【図2】)、
(1i) 通気性があり、風及び熱を通すことができ、熱がこもることが無い(【0008】)
(1j) 防音構造10(【0020】)。」
また、甲1には、甲1発明である実施例32とは異なる実施例として、以下の技術(以下「甲1技術」という。)が記載されている。なお、当審にて甲1技術を(1k)~(1m)の構成に分説した。分説した各構成を、以下それぞれ「構成1k」~「構成1m」といい、甲1における記載箇所を、各構成の末尾の( )内に示した。
(甲1技術)
「(1k) 膜18は、可撓性のある弾性材料製であることが好ましく(【0030】)、
(1l) 防音セル26の枠14に固定された膜18は、最も低次の固有振動モードの周波数である共振周波数として、透過損失が最小、例えば0dBとなる第1固有振動周波数を持つものであり(【0031】)、
(1m) 膜18の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の膜状にできる樹脂材料など、薄い構造を形成できる材質である(【0040】)
防音構造10。」
2 甲2の記載、及び、甲2に記載された技術
(1)甲2の記載
甲2の第3頁第18行~第4頁第3行には以下の記載がある。
「2・3 遮音の理論式
音波が壁面に垂直に入射し,壁のエネルギー内部損失がないとした場合,1重平板の透過損失TL0は共振周波数frを用いて次式で示される(楠田,井上,2005).
[図:0001401594000006.jpg]
(7)
ここで,fは周波数,mは遮音壁の面密度,cは音速,ρは空気の密度であり,共振周波数は次式で表される.
[図:0001401594000007.jpg]
(8)
kは遮音壁のバネ定数である.ρ=1.29[kg/m3],c=340[m/s]として,f>>frをみたす周波数域では式(7)は近似的に次式となる.
[図:0001401594000008.jpg]
(9)
式(9)は遮音壁の剛性に依らず質量と周波数のみに依存するため,質量則と呼ばれる.一方,f<<frをみたす周波数域では,式(7)は次式で表される.
[図:0001401594000009.jpg]
(10)
式(9)と比較し,式(10)には剛性k(=m(2πfr)2)の影響を表す項が付加されることから剛性則と呼ばれる.均一材料の1重平板の場合,透過損失は式(9)及び式(10)に従うことが知られている.」
(2)甲2に記載された技術
上記(1)のとおり、甲2には、遮音壁が均一材料の1重平板の場合の透過損失について、質量に依存する質量則、剛性の影響を表す剛性則から導出される式を導く際に、遮音壁の共振周波数が、上記(1)に記載の「式(8)」(以下「甲2式」という。)となることが記載されている。
[甲2式]
「共振周波数frは、mを遮音壁の面密度、kを遮音壁のバネ定数として、次式で表される。
[図:0001401594000010.jpg]
」
3 甲3の記載、及び、甲3に記載された技術
(1)甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】車両用の防音材において、車室内側より順に、第1の通気性吸音層、非通気性樹脂膜層、第2の通気性吸音層の順に接着され、第1の通気性吸音層と車室内の間には非通気層を有せず、第2通気性吸音層の反車室内側にも非通気層を有しない防音材であって、非通気性樹脂膜層は、厚み500μm以下、ヤング率0.5~5000MPa、防音材自体の1次共振周波数は200~800Hzであることを特徴とする防音材。」
「【0022】非通気性樹脂膜層3は3層構造をとっており、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンの順に積層した樹脂フィルムである。厚さは45μmである。材質としてはこの他、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなど熱可塑性樹脂が好ましい。」
(2)甲3に記載された技術
上記(1)のとおり、甲3には、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている。なお、甲3における記載箇所を末尾の( )内に示した。
(甲3技術)
「車両用の防音材において、車室内側より順に、第1の通気性吸音層、非通気性樹脂膜層、第2の通気性吸音層の順に接着され(【請求項1】)、
防音材自体の1次共振周波数は200~800Hzであり(【請求項1】)、
非通気性樹脂膜層3は3層構造をとっており、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンの順に積層した樹脂フィルムである(【0022】)
防音材。」
4 甲4の記載、及び、甲4に記載された技術
(1)甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
「【請求項1】
両面が開口した板状の格子状構造体を、非通気性のシート材を介して複数積層し、最も入射音側に位置する前記格子状構造体の表面に前記シート材を積層してなる吸音材。」
「【0015】
図1に示す本発明の一実施例に係る吸音材10は、2つの格子状構造体11A,11Bを、非通気性のシート材21Aを介して積層し、最も入射音側に位置する前記格子状構造体11Bの表面に非通気性のシート材21Bを積層した構成からなる。なお、前記吸音材10は、車両の内装材(ドアトリムや天井材等)やエンジン周り、機器のモーター周りあるいは建築物等にその一部として一体に設けられたり、別体として取り付けられたりする。」
「【0018】
前記シート材21A,21Bは、非通気性の材質からなる。非通気性の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンゴム、シリコンゴム、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂、及びこれらの材質の独立気泡構造を持つ非通気性の発泡シート、アルミ、鉄、銅、ステンレスなどの金属製フィルム、紙、セラミックス不燃紙などが挙げられる。
…(後略)」
(2)甲4に記載された技術
上記(1)のとおり、甲4には、以下の技術(以下「甲4技術」という。)が記載されている。なお、甲4における記載箇所を末尾の( )内に示した。
(甲4技術)
「車両の内装材(ドアトリムや天井材等)やエンジン周りにその一部として一体に設けられたり、別体として取り付けられたりする吸音材10であって(【0015】)、
シート材21A、21Bは、スチレンゴム、シリコンゴムなどであり(【0018】)、
両面が開口した板状の格子状構造体を、非通気性のシート材を介して複数積層した(【請求項1】)
吸音材。」
5 甲5の記載、及び、甲5に係るトランクマットにより公然実施された技術
甲5-1~甲5-3からは、以下の事項(5ア)~(5ク)が読み取れる。これらの記載事項を、以下それぞれ「記載5ア」~「記載5ク」という。
(1)甲5-1の記載事項
(5ア) 「1.撮影対象」によれば、撮影対象は、日産自動車株式会社製スカイライン(型式DBA-V36、初年度登録:平成19年3月)のトランクマットであり、日産自動車株式会社の「スカイライン」は、自動車であるから、甲5-1には、自動車のトランクマットが示されている。
(5イ) 写真1によれば、当該トランクマットにはラベルが貼付されており、写真2によれば、当該ラベルの印字は、「’07.3.23」と読み取れる。
(5ウ) 写真2によれば、当該ラベルには、第2行目に「CARPET-TRUNK FLOOR」、第3行目に「Skin>PET+PP<」、第4行目に「Core>PP-T20<」と記載されている(写真2)から、当該トランクマットは、「Skin」、すなわち、シートが、「PET+PP」、すなわち、ポリエチレンテレフタラートとポリプロピレンを構成材料としており、「Core」、すなわち、支持部が、「PP」、すなわち、ポリプロピレンを構成材料として含むものと認められる。
(5エ) 写真1~4によれば、当該ラベルが貼付されたシートは、支持部により複数の円形の区画部に区画されている。
(5オ) 写真1~4によれば、当該トランクマットの区画部において、シートには穴が穿孔されていない。
(5カ) 写真5~7によれば、当該ラベルが貼付されたシートとは別に単一のシートが、支持部の反対側にも配置されているから、支持部は、両面に配されたそれぞれ単一のシートを支持するものである。
(5キ) 写真7によれば、シートは、可撓性を有する。
(2)甲5-2の記載事項
(5ク) 写真1によれば、甲5-1のトランクマットのラベルが貼付された側のシート及びその反対側のシートの厚みは、437μm、458μm、479μm、522μmである。
(3)甲5-3の記載事項
(5ケ) 「これらの結果を踏まえると、今回の測定可能範囲200Hz~7400Hzでは、板全体のモード振動が大きく、くぼみ中心位置(B-1)固有の共振周波数を周波数応答関数の波形ピークから確認することができなかった。ただ、8.2項の図23、24から、7000Hzよりも7514Hzの方が、中心の1点での振幅が周囲よりも大きくなっている。それより、中央部分の共振周波数が7400Hz以上に存在する可能性がある。」(報告書の第21頁最終段落)
(4)甲5に係るトランクマットが公然実施された時期について
上記(1)の記載5イによれば、甲5に係るトランクマットには、「’07.3.23」の年月日の印字があるラベルが貼付されており、また、記載5アによれば、「日産動車株式会社製スカイライン(型式DBA-V36、初年度登録:平成19年3月)のトランクマット」と記載されている。
したがって、当該トランクマットは、平成19年(2007年)3月23日、すなわち、本件特許に係る出願の優先権主張日(平成29年7月28日)の前に、公然実施されていたものと認められる。
(5)甲5に係るトランマットにより公然実施された技術
上記(2)の記載5クによれば、甲5に係るトランクマットのシートの厚みは、異なる4箇所でそれぞれ437μm、458μm、479μm、522μmであるから、シートの厚さは、約500μmであるといえる。
よって、上記(1)~(4)によれば、甲5に係るトランクマットにより公然実施された技術(以下「甲5技術」という。)は、以下のとおりと認められる。なお、当審にて甲5技術を(5a)~(5h)の構成に分説した。分説した各構成を、以下それぞれ「構成5a」~「構成5h」という。なお、根拠となる甲5の記載を、各構成の末尾の( )内に示した。
(甲5技術)
「(5a) シートの厚さは、約500μmであり(記載5ク)、
(5b) シートは、ポリエチレンテレフタラートとポリプロピレンを構成材料としており(記載5ウ)、
(5c) シートは、支持部により複数の円形の区画部に区画されており(記載5エ)、
(5d) 支持部は、両面に配されたそれぞれ単一のシートを支持し(記載5カ)、
(5e) 中央部分の共振周波数が7400Hz以上に存在する可能性があり(記載5ケ)、
(5f) 区画部において、シートには穴が穿孔されておらず(記載5オ)、
(5g) シートは、可撓性を有する(記載5キ)
(5h) 自動車のトランクマット(記載5ア)。」
第6 令和5年1月24日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
令和5年1月24日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由である、甲1に基づく取消理由2及び3について検討する。
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 本件発明1の発明特定事項1Aについて
甲1発明の「膜18」は、厚さ50μmのPETフィルムである(発明特定事項1c)。
ここで、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0051】には、「弾性を有するシート」の例示として、「ポリエチレン」が挙げられている。
そして、甲1技術によれば、膜18は、可撓性のある弾性材料製であることが好ましく(構成1k)、PET(ポリエチレンテレフタラート)が、膜18の材料として例示される(構成1m)から、甲1発明の膜18も弾性材料製であると認められる。
よって、甲1発明の「膜18」は、本件発明1の発明特定事項1Aである「弾性を有するシート」に相当する。
イ 本件発明1の発明特定事項1Bについて
甲1発明は、防音構造10が、複数の防音セル26によって構成され(発明特定事項1a)、1つの防音セル26が、1つの枠14とこの枠14に固定された膜18とから構成され(発明特定事項1b)、単一の膜18を、複数の枠14によって固定する(発明特定事項1h)ものであるから、甲1発明の「防音セル26」は、膜18を区画しており、防音セルによって区画された膜18上の各部分が、本件発明1の「区画部」に相当する。
そして、甲1発明の複数の「枠14」からなる構成による発明特定事項は、本件発明1の発明特定事項1Bである「前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部」に相当する。
ウ 本件発明1の発明特定事項1Cについて
本件発明1の発明特定事項1Cは、以下のとおりである。説明のために、下記[数式1]の左辺を「左辺1」と表記する。
「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足する。
【数1】
[数式1]
[図:0001401594000011.jpg]
」
甲1発明は、膜18が防音セル26の枠14に固定されており(発明特定事項1b)、膜18の第1固有振動周波数が2820Hz付近である(発明特定事項1f)。
ここで、甲1技術によると、防音セル26の枠14に固定された膜18は、最も低次の固有振動モードの周波数である共振周波数として、透過損失が最小、例えば0dBとなる第1固有振動周波数を持つ(構成1l)ものであるから、甲1発明においても、防音セル26の枠14に固定された膜18の共振周波数は、2820Hz付近である。
一方で、甲2技術によると、共振周波数frは、mを遮音壁の面密度、kを遮音壁のバネ定数として、次の甲2式で表される。
[甲2式]
[図:0001401594000012.jpg]
したがって、甲1発明は、甲2式の値が2820Hz付近であるといえる。
ここで、一般に、ばね定数と剛性は、ともに、素材の形状が変化しにくいことを示す値であるから、甲1発明の遮音壁のバネ定数(k)と、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面剛性(k)とは、素材における、同じ物理的な特性を示す値である。よって、甲2式の遮音壁のバネ定数(k)は、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面剛性(k)に相当する。
そして、甲2式の遮音壁の面密度(m)は、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面密度(m)に相当する。
よって、甲2式の右辺と、本件発明1の発明特定事項1Cにおける左辺1とは、同じものである。
そうすると、甲1発明は、防音セル26の枠14に固定された膜18の甲2式の右辺が2820Hz付近であるから、本件発明1の発明特定事項1Cにおける[数式1]の左辺が「≧1473Hz」であるとの関係を満足するものである。
よって、甲1発明の防音セル26の枠14に固定された膜18は、本件発明1の発明特定事項1Cである「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、[数式1]の関係を満足する」ものである。
エ 本件発明1の発明特定事項1Dについて
甲1発明は、「防音セル」において「膜18に設けられた開口部24」を備えている(発明特定事項1b)。しかし、本件発明1の発明特定事項1Dである「それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されておらず」との構成を甲1発明は備えていない。よって、甲1発明と本件発明1とは、甲1発明が、本件発明1の発明特定事項1Dを備えていない点で、相違する。
オ 本件発明1の発明特定事項1Eについて
甲1発明の防音構造の面密度について検討する。
まず、アクリルの比重を1.20g/cm3とし、ポリエチレンテレフタラート(PET)の比重を1.40g/cm3とする。一般的に、アクリルやPETといった樹脂の比重には、幅があることが知られているが、ここでは、甲1発明の防音構造の面密度が発明特定事項1Eである「面密度が3.24kg/m2未満」に含まれるか否かを判断することから、甲1発明の防音構造がとるであろう最大の値を計算するために、アクリル及びPETの比重は、各素材の一般的な比重を紹介している以下の参照記事から、最も重い値を選択したものである。
(参照記事の一覧)
・プラスチック加工.lab
<https://www.plastic-kakou.net/material/plastic.html>
アクリル:1.19g/cm3、PET:1.40g/cm3
・アクリルデポ <https://www.acrylicdepot.co.jp/news/pet/>
アクリル:1.19g/cm3、PET:1.34g/cm3
・toishi.info <https://www.toishi.info/sozai/plastic/sg.html>
アクリル:1.20g/cm3、PET:1.39g/cm3
甲1発明の防音構造は、発明特定事項1gによれば、同一の幾何学形態を有する複数の防音セル26が規則的に配列されるものであるから、面方向に対して、枠と貫通孔からなる部分構造を繰り返す構造である。この防音構造の面方向に対して繰り返される最小の部分構造を、当審で「甲1単位構造」と定義し、甲1単位構造の面密度を求めることで、甲1発明の防音構造を求めることとする。
甲1発明の防音構造は、発明特定事項1dによれば、枠14の対向する辺間の距離が7.5mmであり、発明特定事項1eによれば、枠14がアクリルであり、厚み3mm、幅3mmであり、形状を正方形とし、その正方形の内側に形成される貫通孔の1辺が7.5mmである。よって、甲1単位構造は、1辺が7.5mmの正方形の貫通孔の四方を取り囲む幅3mmの枠の中心を通る正方形、すなわち、1辺が7.5[mm]+(3[mm]/2)+(3[mm]/2)の10.5mmである正方形であり、甲1単位構造の枠は、1辺が7.5[mm]+(3[mm]/2)の9mm、幅が(3[mm]/2)の1.5mm、厚さが3mmのアクリル部材を枠の4辺として配したものとみなすことができ、甲1単位構造の膜は、枠14の一方の全面に厚さ50μmのPETフィルムからなる膜18が配置された構造となる。
そうすると、甲1単位構造の面積は、10.5[mm]×10.5[mm]=110[mm2]=1.10×10-4[m2]となる。
また、甲1単位構造を構成する枠14の体積は、(9[mm]×1.5[mm]×3[mm])×4=162[mm3]=0.162[cm3]であるから、甲1単位構造のアクリルからなる枠14の質量は、0.162[cm3]×1.20[g/cm3]=0.194[g]と算出される。
そして、甲1単位構造を構成する膜18の体積は、10.5[mm]×10.5[mm]×50[μm]=5.51[mm3]=5.51×10-3[cm3]であるから、甲1単位構造のPETフィルムからなる膜18の質量は、5.51×10-3[cm3]×1.40[g/cm3]=7.72×10-3[g]と算出される。
よって、甲1単位構造の総質量は、甲1単位構造の枠14の質量と膜18の質量を積算した、0.194[g]+7.72×10-3[g]=0.202[g]=2.02×10-4[kg]となる。したがって、甲1単位構造の面密度は(2.02×10-4[kg])/(1.10×10-4[m2])=1.83[kg/m2]と算出される。
したがって、甲1発明の防音構造の面密度は、1.83kg/m2であるから、本件発明1と甲1発明は、本件発明1の防音材が、発明特定事項1Eの「面密度が3.24kg/m2未満である」に含まれるものである。
カ 本件発明1の発明特定事項1Fについて
甲1発明の「防音構造10」(発明特定事項1j)は、上記ア~ウのとおり、本件発明1の発明特定事項1A~1Cを備えていることから、材料、構造及び特性を規定するものであり、本件発明1の「防音材」もその材料、構造及び特性を備えたものである。
よって、甲1発明の「防音構造10」(発明特定事項1j)は、本件発明1の「防音材」に相当する。
キ 一致点・相違点
上記ア~カのとおりであるから、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で位置し、以下の相違点で相違する。
【一致点】
「(1A) 弾性を有するシートと、
(1B) 前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
(1C) 前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
(1E)面密度が3.24kg/m2未満である、
(1F)防音材:
(1C)【数1】
[数式1]
[図:0001401594000013.jpg]
」
【相違点】
・本件発明1は、発明特定事項1Dである「それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されておらず」との構成を備えているのに対し、甲1発明は、当該構成を備えていない点。
(2)判断
上記相違点について検討する。
甲1には、段落【0074】に比較例1として、「実施例1で作製された枠・膜構造に対して穴をあけず」に構成された比較例が記載されている。
しかし、甲1には、段落【0095】に「本発明の防音構造である実施例1~42は、比較例1~2と異なり、」「遮蔽ピーク周波数を中心とする一定の幅の周波数帯域を選択的に遮音することができる。」と記載されており、比較例1は、遮音に関して性能が劣る点が記載されている。
また、甲1発明の発明特定事項1iによれば、甲1発明の防音装置は、通気性があり、風及び熱を通すことができ、熱がこもることが無いものである。
そうすると、甲1発明においてシートに穴を空けないものとすることは、防音装置の遮音に関する性能、並びに、通気性及び熱がこもることがないという性能について、いずれについても劣化をもたらすものであるから、甲1発明において、膜に穴を空けないものとすることには、阻害要因があると認められる。
よって、甲1発明に基づいて、上記相違点に係る本件発明1の構成1Dを備える構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
よって、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
2 本件発明2~21について
請求項2~21は、いずれも請求項1を引用するものであるから、本件発明2~21は、いずれも、上記1と同様に、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものでもない。
3 甲1に基づく取消理由2及び3についてのまとめ
上記1及び2のとおりであるから、請求項1、3~9、11及び13~21に通知した甲1に基づく取消理由2及び3は、解消した。
なお、請求項2、10及び12には、甲1に基づく取消理由2及び3は、通知されていない。
第7 令和5年1月24日付け取消理由通知(決定の予告)で通知しなかった理由について
1 特許異議申立の理由1及び3、並びに、令和4年5月17日付け取消理由通知の取消理由2及び3(甲5に基づくもの)について
(1)甲5に係るトランクマットにより公然実施された発明、並びに、甲1及び甲2に記載された技術
甲1、甲2及び甲5に記載された技術は、上記「第5」の1、2及び5に記載したとおりのものである。
そして、甲5に係るトランクマットにより公然実施された発明、及び、甲1に記載された技術については、上記「第5」の5及び1において、「甲5技術」(「構成5a」~「構成5h」)及び「甲1発明」(「発明特定事項1a」~「発明特定事項1j」)としたものを、ここでは、それぞれ「甲5発明」(「発明特定事項5a」~「発明特定事項5h」)及び「甲1技術」(「構成1a」~「構成1j」)と読み替える。
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)本件発明1の発明特定事項1Aについて
甲5発明の「シート」は、ポリエチレンテレフタラートとポリプロピレンを構成材料とした(発明特定事項5b)、厚さが約500μmである(発明特定事項5a)。
ここで、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0051】には、「弾性を有するシート」の例示として、「ポリエチレン」と「ポリプロピレン」が挙げられている。
また、甲5発明の「シート」は、可撓性を有する(発明特定事項5g)。
そうすると、可撓性を有する甲5発明の「シート」は、ポリエチレンテレフタラートとポリプロピレンを構成材料とした、厚さが約500μmのシートであるから、弾性を有するものといえる。
よって、甲5発明の「シート」は、本件発明1の発明特定事項1Aである「弾性を有するシート」に相当する。
(イ)本件発明1の発明特定事項1Bについて
甲5発明の「支持部」は、シートを、複数の円形の区画部に区画しており(発明特定事項5c)、両面に配されたそれぞれ単一のシートを支持している(発明特定事項5d)から、
甲5発明の「区画部」は、本件発明1の「区画部」に相当し、
甲5発明の「支持部」は、本件発明1の発明特定事項1Bである「前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部」に相当する。
(ウ)本件発明1の発明特定事項1Cについて
本件発明1の発明特定事項1Cは、以下のとおりである。説明のために、下記[数式1]の左辺を「左辺1」と表記する。
「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足する。
【数1】
[数式1]
[図:0001401594000014.jpg]
」
甲5発明の「シート」は、共振周波数が7400Hz以上に存在する可能性がある(発明特定事項5e)ものである。
そして、甲5発明の「シート」は、共振周波数が7400Hz以上であることが合理的でないとする理由がないので、甲5発明の「シート」は、共振周波数が7400Hz以上であると認める。
一方で、甲2技術によると、共振周波数frは、mを遮音壁の面密度、kを遮音壁のバネ定数として、次の甲2式で表される。
[甲2式]
[図:0001401594000015.jpg]
したがって、甲5発明は、甲2式の値が7400Hz以上であるといえる。
ここで、一般に、ばね定数と剛性は、ともに、素材の形状が変化しにくいことを示す値であるから、甲1発明の遮音壁のバネ定数(k)と、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面剛性(k)とは、素材における、同じ物理的な特性を示す値である。よって、甲2式の遮音壁のバネ定数(k)は、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面剛性(k)に相当する。
そして、甲2式の遮音壁の面密度(m)は、本件発明1の発明特定事項1Cにおけるシートの面密度(m)に相当する。
よって、甲2式の右辺と、本件発明1の発明特定事項1Cにおける左辺1とは、同じものである。
そうすると、甲5発明は、支持部によって区画されたシートの共振周波数が7400Hz以上であるから、本件発明1の発明特定事項1Cにおける左辺1が7400Hz以上であり、[数式1]の「≧1473Hz」の関係を満足するものである。
よって、甲5発明の、支持部によって区画されたシートは、本件発明1の発明特定事項1Cである「前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、[数式1]の関係を満足する」と認められる。
(エ)本件発明1の発明特定事項1Dについて
甲5発明の防音材は、区画部において、シートには穴が穿孔されていない(発明特定事項5f)ものであるから、本件発明1の発明特定事項1Dである「それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されておらず」との構成を備えるものである。
(オ)本件発明1の発明特定事項1Eについて
甲5発明には、防音構造の面密度についての構成がない。よって、本件発明1と甲5発明は、本件発明1に係る防音材の面密度が「3.24kg/m2未満である」のに対し、甲5発明では面密度が不明である点で相違する。
(カ)本件発明1の発明特定事項1Fについて
甲5発明の「自動車のトランクマット」(発明特定事項5h)は、本件発明1の「防音材」に相当する。
(キ)一致点・相違点
上記(ア)~(カ)のとおりであるから、本件発明1と甲5発明とは、以下の一致点で位置し、以下の相違点で相違する。
【一致点】
「(1A) 弾性を有するシートと、
(1B) 前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
(1C) 前記区画部における前記シートの面剛性(k)及び前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、
(1D) それぞれの前記区画部における前記シートには穴が穿孔されていない、
(1F)防音材:
(1C)【数1】
[数式1]
[図:0001401594000016.jpg]
」
【相違点】
・本件発明1は、発明特定事項1Eである、前記シートの「面密度が3.24kg/m2未満である」との構成を備えているのに対し、甲1発明は、当該構成を備えていない点で、相違する。
イ 判断
上記アの相違点について検討する。
甲5は、防音材であるから、全体の重量を軽くすることが、一般的な課題と認められる。しかし、防音材の構成を変更すれば、その様々な特性が変化するものであり、発明特定事項1Eである「面密度が3.24kg/m2未満である」との構成を備えることには、動機がない。よって、甲5発明において、上記相違点に係る発明特定事項1Eを備える構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
(2)本件発明2~21について
請求項2~21は、いずれも請求項1を引用するものであるから、本件発明2~21は、いずれも、上記アの検討と同様に、甲5発明ではなく、また、甲5発明に基づいて当業者が容易になし得たものでもない。
(3)甲5に基づく取消理由についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおりであるから、甲5に基づく取消理由は、請求項1~21について認められない。
2 令和4年5月17日付け取消理由通知の取消理由4について
令和5年3月30日付け訂正請求書による訂正事項3により、本件特許の明細書の段落【0060】は、「例えば、シートの両面に配置されるそれぞれの支持部の構成材料は互いに異なっていてもよい。」と訂正された。これにより、請求項10の発明特定事項10Aである「前記シートの両面に配置されるそれぞれの前記支持部の構成材料が互いに異なる」との発明特定事項は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
また、請求項10を引用する請求項13~21についても同様である。
よって、当該取消理由4は、解消した。
3 まとめ
上記1~2のとおりであるから、令和4年5月17日付け取消理由通知において請求項1~4、7、11、13、15及び19に通知した取消理由1、及び、請求項1~9、11及び13~21に通知した取消理由3(甲5に基づくもの)は、解消した。
また、令和4年5月17日付け取消理由通知において請求項10及び13~21に通知した取消理由4は、解消した。
4 その他の取消理由
特許異議申立書で提示された甲1~甲5を精査しても、本件発明1~21に係る発明について、取消理由を発見しない。
また、その他の取消理由も発見しない。
第8 申立人の意見書による意見について
1 申立人による令和5年5月12日付け意見書による意見について
(1)甲5のトランクマットの面密度の実測値について
申立人は、当該意見書の3(1)(1-1)において、当該意見書と同時に提出した「甲第5号証の4」(以下「甲5-4」という。)を援用して、甲5-1~甲5-3のトランクマットの面密度の実測値として、1.6kg/m2であると主張している。
しかし、甲5-4の写真1及び2で示されたトランクマットが、甲5-1~甲5-3のトランクマットと同一のものであることを確認できる記載がないから、実測値と主張された値は、甲5のトランクマットの実測値として採用することはできない。
(2)甲5のトランクマットの面密度の計算値について
申立人は、当該意見書の3(1)(1-2)において、甲5-1~甲5-3のトランクマットの面密度の計算値として、2.199kg/m2であると主張している。
しかし、この計算の根拠となっている「支持部材の区画部」の円形の区画部の大きさを示す値について、「直径が約8mm」であること、及び、「区画部が、100cm2あたり110個配置されていること」との主張については、その根拠が、当該意見書に添付された甲5-4の写真1及び2から読み取られる事項であり、甲5-4の写真1及び2で示されたトランクマットが、甲5-1~甲5-3のトランクマットと同一のものであることを確認できる記載がないから、当該区画部の大きさを示す値は、採用できない。そうすると、トランクマットの面密度の計算値とされた値についても、甲5-1~甲5-3のトランクマットの実測値として採用することはできない。
(3)甲5のトランクマットの面密度について
甲5-1~甲5-3のトランクマットが本件発明1の発明特定事項1Eを満たすものであることは、当該意見書を参酌し、甲5-1~甲5-3の記載を総合的に勘案しても、導き出すことができない。
(4)まとめ
上記(1)~(3)のとおりであるから、甲5-4に基づく甲5-1~甲5-3のトランクマットの面密度に係る当該意見書の主張は、採用できない。
第9 むすび
以上「第1」~「第8」のとおりであるから、請求項1~21に係る特許は、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701128