特許異議申立
2021-701121
電池用包装材料、その製造方法及び電池
- 審判番号
- 2021-701121
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-510213
- 登録番号
- 6881298
- 請求日
- 2021年12月01日
- 審決日
- 2023年05月22日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6881298号発明「電池用包装材料、その製造方法及び電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6881298号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8、10、11〕、9について訂正することを認める。
特許第6881298号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6881298号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成28年3月31日(優先権主張 平成27年3月31日、日本)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月2日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年12月 1日 :特許異議申立人浜俊彦により請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 3月18日付け:取消理由通知
令和4年 5月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 7月 6日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和4年 9月16日 :訂正拒絶理由通知書
令和4年10月25日 :特許権者による意見書の提出
令和4年11月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和5年 1月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 3月14日 :特許異議申立人による意見書の提出
なお、令和4年5月23日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 訂正内容
令和5年1月24日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6881298号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下の訂正事項1ないし4である。(なお、下線部は訂正箇所である。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記金属層の厚みが30μm以上40μm以下であり、」とあるのを、「前記金属層の厚みが30μm以上35μm以下であり、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし8、11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に、「前記金属層として、厚みが30μm以上40μm以下のものを用い、」と記載されているのを、「前記金属層として、厚みが30μm以上35μm以下のものを用い、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項11に「少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体内に収容されている、電池。」とあるのを、「少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~8、10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体内に収容されている、電池。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「長さ100mm×幅15mmとした前記基材層は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下であり、」とあるのを、「長さ100mm×幅15mmとした前記基材層は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下であり、」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)
(5)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1ないし8、11について、請求項2ないし8、11が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項1ないし8、11は一群の請求項を構成する。
また、本件訂正前の請求項9、11は、請求項11が訂正の対象となる請求項9を直接引用しているものであるから、本件訂正後の請求項9、11は一群の請求項を構成する。
さらに、本件訂正前の請求項10、11は、請求項11が訂正の対象となる請求項10を直接引用しているものであるから、本件訂正後の請求項10、11は一群の請求項を構成する。
そして、これら一群の請求項は、共通する請求項11を有するから、請求項1ないし11は一群の請求項であり、それに対応する訂正後の請求項1ないし11は一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1及び訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項1及び訂正事項2は、請求項1及び請求項9に記載された「金属層」の「厚み」の数値範囲を「30μm以上40μm以下」から「30μm以上35μm以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許の願書に添付した明細書(以下、単に「本件特許明細書」という。)の段落【0041】には、「本発明の第1の態様の電池用包装材料において、金属層3の厚みは40μm以下である。これにより、本発明の電池用包装材料においては、薄型のものとすることができる。電池用包装材料をさらに薄型化しつつ、成形性と絶縁性とを両立させる観点からは、金属層3の厚みは、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは10μm~35μm程度とすることができる。」と記載され、同段落【0088】ないし【0092】、表1Aには、実施例2Aないし実施例6Aの電池用包装材料の金属層の厚みが「35μm」であることが記載されている。
したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項11が請求項1ないし10のいずれか1項を引用するものであったものを、請求項9の引用を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は上記(ア)のとおり、引用する請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項10に記載された「基材層」の「15MPaの引張応力が加わった際の変位」の数値範囲を「5%以下」から「2%以上5%以下」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許明細書の段落【0032】には、「本発明の第2の態様において、基材層1は、長さ100mm×幅15mmとした場合に、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下である。当該変位としては、好ましくは2%~4%程度が挙げられる。」と記載されている。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)独立特許要件について
上記「(2)ア(ア)」、「(2)イ(ア)」、「(2)ウ(ア)」で述べたように、訂正事項1ないし訂正事項4は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、全請求項について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1ないし11に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。そして、特許権者から、訂正後の請求項9については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われる求めがあったことから、本件訂正後の請求項〔1-8、10、11〕、9について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下「本件発明1ないし11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(なお、下線は訂正された箇所を示す。)。
「【請求項1】
少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体からなり、
前記金属層の厚みが30μm以上35μm以下であり、
前記基材層は、ポリエステルにより形成されており、
前記基材層の厚みが、20μm以上30μm以下である、電池用包装材料。
【請求項2】
前記積層体の厚みが、140μm以下である請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
前記基材層は、ポリエステルにより形成された1層により構成されている、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
【請求項4】
前記基材層は、ポリエステルにより形成された複数の層により構成されている、請求項1または2に記載の電池用包装材料。
【請求項5】
前記金属層の少なくとも一方の面に耐酸性皮膜層を備える、請求項1~4のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項6】
前記金属層が、アルミニウム箔である、請求項1~5のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項7】
最内層である前記熱融着性樹脂層が、ポリプロピレンにより形成されている、請求項1~6のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項8】
前記金属層と前記熱融着性樹脂層との間に、接着層を備えており、
前記接着層は、カルボン酸変性ポリプロピレンにより形成されている、請求項1~7のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項9】
少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体を得る工程を備えており、
前記金属層として、厚みが30μm以上35μm以下のものを用い、
前記基材層として、ポリエステルにより形成されており、厚みが20μm以上30μm以下のものを用いる、電池用包装材料の製造方法。
【請求項10】
少なくとも、ポリエステルを含む基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなり、
前記金属層の厚みが30μm以上40μm以下であり、
長さ100mm×幅15mmとした前記基材層は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下であり、
長さ100mm×幅15mmとした前記積層体は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、40MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下である、電池用包装材料。
【請求項11】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~8、10のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体内に収容されている、電池。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和4年11月21日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである
理由1 (新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2 (進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発 明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
●理由1(新規性)について
・請求項1、3、5ないし10
・引用文献 1
●理由2(進歩性)について
・請求項2、4、11
・引用文献 1
引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1:特開2013-196947号公報(甲第1号証)
2 引用文献1の記載、引用発明
(1)取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0013】
以下、本発明のリチウムイオン電池用外装材の一例を図1に基づいて説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用外装材1(以下、「外装材1」という。)は、図1に示すように、基材層11の一方の面側に、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。外装材1は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材1は、基材層11を電池の外部側、シーラント層16を電池の内部側にして使用される。
【0014】
[基材層11]
基材層11は、リチウムイオン電池を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
基材層11は、JIS K 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、下記引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルム(以下、「樹脂フィルム(A)」という。)からなる層である。基材層11が樹脂フィルム(A)からなることで、湿度環境に関わらず優れた成型性が得られ、また基材層11側の耐電解液性にも優れた外装材1となる。
・・・(中略)・・・。
【0019】
樹脂フィルム(A)としては、突刺強度、衝撃強度に優れる点から、ナイロンフィルム又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく、吸水率が低く、湿度環境によるフィルム特性の変化がより小さく、耐電解液性に優れる点から、PETフィルムがより好ましい。また、樹脂フィルム(A)は、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、無延伸フィルムのいずれであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルム(A)は、単層フィルムでも多層フィルムでもよいが、コスト面で有利な点から、単層フィルムが好ましい。樹脂フィルム(A)が多層フィルムの場合、多層フィルムとして、前記吸水率及び10%延伸時の応力値の条件を満たせばよい。なお、多層フィルムは、多層共押出し製法によって得られる単一基材を含む。
・・・(中略)・・・。
【0023】
基材層11の厚さは、10~40μmが好ましく、20~35μmがより好ましい。基材層11の厚さが下限値以上であれば、成型性に優れる。基材層11の厚さが上限値以下であれば、成型加工により延伸された箇所の基材層11の収縮力がそれほど大きくならず、成型加工後の形状を維持できる。
【0024】
[第1接着層12]
第1接着層12は、基材層11と金属箔層13を接着する層である。
第1接着層12を構成する接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のウレタン系接着剤が好ましい。
前記ウレタン系接着剤は、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
第1接着層12の厚さは、接着強度、追随性、加工性等の点から、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
・・・(中略)・・・。
【0026】
[腐食防止処理層14]
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。また、金属箔層13と第2接着層15との密着力を高める役割を果たす。
腐食防止処理層14としては、塗布型、又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜が好ましい。前記塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と第2接着層15の密着力をより強固にするので、電解液等の内容物に対して優れた耐性が得られる。
・・・(中略)・・・。
【0028】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、10nm~5μmが好ましく、20nm~500nmがより好ましい。
【0029】
[第2接着層15]
第2接着層15は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16を接着する層である。外装材1は、第2接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
熱ラミネート構成における第2接着層15を形成する接着成分としては、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、ポリオレフィン系樹脂フィルム等で形成した無極性のシーラント層16と、極性を有する腐食防止処理層14の両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生しても第2接着層15の劣化による密着力の低下を防止しやすい。
第2接着層15に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば 、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。また、前記したものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。
前記ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
・・・(中略)・・・。
【0033】
熱ラミネート構成の第2接着層15は、前記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成できる。
熱ラミネート構成の第2接着層15の接着成分のメルトフローレート(MFR)は、230℃、2.16kgfの条件において4~30g/10分が好ましい。
熱ラミネート構成の第2接着層15の厚さは、2~50μmが好ましい。
・・・(中略)・・・。
【0035】
[シーラント層16]
シーラント層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。
シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、又はランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられる。
・・・(中略)・・・。
【0038】
[製造方法]
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下の方法に限定されない。
外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(1)~(3)を有する方法が挙げられる。
(1)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を貼り合わせる工程。
(3)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。
・・・(中略)・・・。
【0043】
本発明の外装材を使用したリチウムイオン電池は、本発明の外装材を使用する以外は公知の方法で製造できる。例えば、以下のようにして得られる。本発明の外装材の一部に、冷間成型により凹部を形成し、該凹部の内部に、正極、セパレータ及び負極を入れ、もう一枚の本発明の外装材をシーラント層が向かい合うように重ね合わせ、その三辺をヒートシールする。その後、真空状態において、残った一辺から電解液を注入し、残りの一辺をヒートシールして密封することでリチウムイオン電池を得る。
なお、本発明の外装材を使用したリチウムイオン電池は、前記方法で製造したものには限定されない。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材層11)
基材A-1:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー8質量%含有、厚み25μm)。
基材A-2:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー16質量%含有、厚み25μm)。
基材A-3:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー1質量%含有、厚み25μm)。
基材A-4:二軸延伸ナイロン6フィルム(厚み25μm)。
基材A-4について、試料幅15mm、標点間距離50mm、引張速度100mm/秒にてTD方向の伸びを測定したところ75%であった。
【0045】
(第1接着層12)
接着剤B-1:ウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン社製)。
【0046】
(金属箔層13)
金属箔C-1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム社製、厚さ40μm)。
【0047】
(腐食防止処理層14)
処理剤D-1:酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤。
【0048】
(第2接着層15)
接着樹脂E-1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製)。
【0049】
(シーラント層16)
フィルムF-1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム。
【0050】
[外装材の作成]
金属箔層13となる金属箔C-1の一方の面に処理剤D-1を塗布、乾燥して腐食防止処理層14を形成した。次に、金属箔層13における腐食防止処理層14の反対面に、接着剤B-1を用いたドライラミネート法により、基材A-1~A-4のいずれかを貼り合せ、第1接着層12を介して基材層11を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側に押出し装置にて接着樹脂E-1を押出して第2接着層15を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることでシーラント層16を形成した。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm2、2m/分の条件で加熱圧着することで外装材を作成した。
・・・(中略)・・・。
【0052】
[引張り評価]
基材層11に使用した各フィルムについては、23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後に、23℃、40%RHの環境下で引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行い、MD方向とTD方向のそれぞれの10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値を測定して、以下の基準で分類した。
応力値H-1:応力値がMD方向、TD方向共に70MPa以上110MPa以下である。
応力値H-2:MD方向及びTD方向のうち一方の応力値が70MPa以上110MPa以下で、他方の応力値が70MPa以下である。
応力値H-3:MD方向、TD方向の少なくとも一方の応力値が110MPaより大きい。
・・・(中略)・・・。
【0055】
[実施例1、2及び比較例1、2]
前記作成方法により、表1に示す基材層構成の外装材を作成した。
耐電解液性及び成型性の評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
[図:0001400414000001.jpg]
(2)引用文献1の上記記載事項により、次のことがいえる。
ア 段落【0013】によれば、引用文献1記載された「リチウムイオン電池用外装材1」は、基材層11、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15及びシーラント層16が順次積層された積層体である。
また、同段落【0013】及び【0035】によれば、シーラント層16は、最内層であり、ヒートシールによる封止性を付与する層である。
そして、同【0026】によれば、腐食防止処理層14は、フッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。
よって、引用文献1には、基材層11、第1接着層12、金属箔層13、フッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する腐食防止処理層14、第2接着層15及び最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であるシーラント層16が順次積層された積層体であるリチウムイオン電池用外装材1が記載されているといえる。
イ 段落【0044】ないし【0049】、【0052】及び表1によれば、実施例1において、基材層11は、厚み25μmの二軸延伸PETフィルムであり、第1接着層12は、ウレタン系接着剤であり、金属箔層13は、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔であり、腐食防止処理層14は、酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤であり、第2接着層15は、無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂であり、シーラント層16は、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであり、基材層11において、23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後に、23℃、40%RHの環境下で引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行った際のMD方向とTD方向のそれぞれの10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値が90MPa、95MPaである。
(3)よって、引用文献1の実施例1に着目すると、上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「基材層11、第1接着層12、金属箔層13、フッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する腐食防止処理層14、第2接着層15及び最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であるシーラント層16が順次積層された積層体であるリチウムイオン電池用外装材1において、
基材層11は、厚み25μmの二軸延伸PETフィルムであり、
第1接着層12は、ウレタン系接着剤であり、
金属箔層13は、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔であり、
腐食防止処理層14は、酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤であり、
第2接着層15は、無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂であり、
シーラント層16は、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであり、
基材層11において、23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後に、23℃、40%RHの環境下で引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行った際のMD方向とTD方向のそれぞれの10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値が90MPa、95MPaである、リチウムイオン電池用外装材1。」
(4)また、上記(1)で挙げた引用文献1の記載事項によれば、上記(2)で述べた点に加え、次のこともいえる。
段落【0050】によれば、実施例1の製造方法では、金属箔層13の一方の面に腐食防止処理層14を形成し、腐食防止処理層14の反対面に、第1接着層12を介して基材層11を積層し、腐食防止処理層14側に第2接着層15を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてシーラント層16を形成し積層体を得る。
(5)よって、引用文献1の実施例1の製造方法に着目すると、上記(4)及び上記(2)で述べた点も踏まえれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「金属箔層13の一方の面に腐食防止処理層14を形成し、腐食防止処理層14の反対面に、第1接着層12を介して基材層11を積層し、腐食防止処理層14側に第2接着層15を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてシーラント層16を形成し積層体を得るリチウムイオン電池用外装材1の製造方法において、
基材層11は、厚み25μmの二軸延伸PETフィルムであり、
第1接着層12は、ウレタン系接着剤であり、
金属箔層13は、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔であり、
腐食防止処理層14は、酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした塗布型セリアゾール処理用の処理剤であり、
第2接着層15は、無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂であり、
シーラント層16は、最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であり、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムである、
リチウムイオン電池用外装材1の製造方法。」
3 当審の判断
(1)理由1(新規性)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1との対比
a 引用発明1の「基材層11」、「金属箔層13」は、本件発明1の「基材層」、「金属層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1の「シーラント層16」は「無延伸ポリプロピレンフィルム」であり、ヒートシールが樹脂フィルム同士を熱融着することであることは技術常識であるから、引用発明1の「最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であるシーラント層16」は、本件発明1の「熱融着性樹脂層」に相当する。
よって、引用発明1の「基材層11」、「金属箔層13」及び「最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であるシーラント層16」が「順次積層された積層体」は、本件発明1の「基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体」に相当する。
b 本件発明1の「金属層の厚み」は「30μm以上35μm以下」であるのに対し、引用発明1の「金属箔層13」の「厚さ」は「40μm」である点で相違する。
c 本件特許明細書の段落【0030】の「基材層1は、好ましくは、ポリエステルフィルム、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成することができる。」、同段落【0088】の「なお、表1Aにおいて、PET/PETは、ポリエチレンテレフタレート層が、接着剤層・・・を介して接着された2層構造を有している。」との記載によれば、本件発明1の「ポリエステル」は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を含む。
よって、引用発明1の「基材層11」は「二軸延伸PETフィルム」であることは、本件発明1の「前記基材層は、ポリエステルにより形成されて」いることに含まれる。
d 引用発明1の「基材層11」の「厚み25μm」は、本件発明1の「前記基材層の厚みが、20μm以上30μm以下」の範囲に含まれる。
e 引用発明1の「リチウムイオン電池用外装材1」は、本件発明1の「電池用包装材料」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の点で一致ないし相違する。
〈一致点〉
「少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体からなり、
前記基材層は、ポリエステルにより形成されており、
前記基材層の厚みが、20μm以上30μm以下である、電池用包装材料。」
〈相違点1〉
金属層の厚みに関し、本件発明1は「30μm以上35μm以下」であるのに対し、引用発明1は「40μm」である点。
よって、本件発明1と引用発明1は、相違点1において相違するものであって、本件発明1は引用発明1であるとはいえない。
(ウ)小括
以上から、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないから特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
イ 本件発明3、5ないし8について
本件発明3、5ないし8は、本件発明1の全ての構成を含み、さらに他の構成を付加した発明であるから、上記アと同様の理由により、引用発明1であるとはいえない。
よって、請求項3、5ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないから特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項3、5ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
ウ 本件発明9について
(ア)本件発明9と引用発明2との対比
a 引用発明2の「基材層11」、「金属箔層13」は、本件発明9の「基材層」、「金属層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明2の「シーラント層16」は「最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層であり、厚さ40μmの無延伸ポリプロピレンフィルムであ」って、ヒートシールが樹脂フィルム同士を熱融着することであることは技術常識であるから、引用発明2の「最内層でありヒートシールによる封止性を付与する層」である「シーラント層16」は、本件発明9の「熱融着性樹脂層」に相当する。
よって、引用発明2の「金属箔層13の一方の面に腐食防止処理層14を形成し、腐食防止処理層14の反対面に、第1接着層12を介して基材層11を積層し、腐食防止処理層14側に第2接着層15を形成し、フィルムF-1を貼り合わせてシーラント層16を形成する」ことは、本件発明9の「少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体を得る工程」に相当する。
b 引用発明2の「金属箔層13は、厚さ40μmの軟質アルミニウム箔であ」ることから、 引用発明2においても「金属箔層13」として、厚みが「40μm」のものを用いているといえる。
よって、引用発明2と本件発明9とは「金属層として、厚みが所定値のものを用い」ている点で共通する。
ただし、金属層の厚みに関し、本件発明9は「30μm以上35μm以下」であるのに対し、引用発明2は「40μm」である点で相違する。
c 引用発明2の「基材層11は、厚み25μmの二軸延伸PETフィルムであ」ることから、引用発明2においても、「基材層11」として、「厚み25μmの二軸延伸PETフィルム」を用いているといえる。
そして、本件特許明細書の段落【0030】の「基材層1は、好ましくは、ポリエステルフィルム、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成することができる。」、同段落【0088】の「なお、表1Aにおいて、PET/PETは、ポリエチレンテレフタレート層が、接着剤層・・・を介して接着された2層構造を有している。」との記載によれば、本件発明9の「ポリエステル」は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を含む。
さらに、引用発明2の「基材層11」の「厚み25μm」は、本件発明9の「基材層」の「厚みが20μm以上30μm以下」の範囲に含まれる。
してみると、引用発明2の「基材層11」として、「厚み25μmの二軸延伸PETフィルム」を用いることは、本件発明9の「基材層として、ポリエステルにより形成されており、厚みが20μm以上30μm以下のものを用いる」ことに含まれる。
d 引用発明2の「リチウムイオン電池用外装材1の製造方法」は、本件発明9の「電池用包装材料の製造方法」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明9と引用発明2とは、次の点で一致ないし相違する。
〈一致点〉
「少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体を得る工程を備えており、
前記金属層として、厚みが所定値のものを用い、
前記基材層として、ポリエステルにより形成されており、厚みが20μm以上30μm以下のものを用いる、電池用包装材料の製造方法。」
〈相違点2〉
金属層の厚みに関し、本件発明9は「30μm以上35μm以下」であるのに対し、引用発明2は「40μm」である点。
よって、本件発明9と引用発明2は、相違点2において相違するものであって、本件発明9は引用発明2であるとはいえない。
(ウ)小括
以上から、請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないから特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
エ 本件発明10について
(ア)本件発明10と引用発明1との対比
a 本件特許明細書の段落【0030】の「基材層1は、好ましくは、ポリエステルフィルム、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成することができる。」、同段落【0088】の「なお、表1Aにおいて、PET/PETは、ポリエチレンテレフタレート層が、接着剤層・・・を介して接着された2層構造を有している。」との記載によれば、本件発明1の「ポリエステル」は「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を含むから、引用発明1の「二軸延伸PETフィルム」である「基材層11」は、本件発明10の「ポリエステルを含む基材層」に含まれる。
また、引用発明1の「金属箔層13」、「ヒートシールによる封止性を付与する層であるシーラント層16」は、本件発明10の「金属層」、「熱融着性樹脂層」にそれぞれ相当する。
してみれば、「二軸延伸PETフィルム」である「基材層11」、「金属箔層13」、「シーラント層16」が「順次積層された積層体」は、本件発明10の「少なくとも、ポリエステルを含む基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体」に相当する。
b 引用発明1の「金属箔層13」の「厚さ40μm」は、本件発明10の「金属層の厚みが30μm以上40μm以下」の範囲に含まれる。
c 本件発明10は「長さ100mm×幅15mmとした前記基材層は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下であり、長さ100mm×幅15mmとした前記積層体は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、40MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。
d 引用発明1の「リチウムイオン電池用外装材1」は、本件発明10の「電池用包装材料」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明10と引用発明1とは、次の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「少なくとも、ポリエステルを含む基材層と、金属層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体からなり、
前記金属層の厚みが30μm以上40μm以下である、電池用包装材料。」
<相違点3>
本件発明10は「長さ100mm×幅15mmとした前記基材層は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下であり、長さ100mm×幅15mmとした前記積層体は、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、40MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下である」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点。
(ウ)相違点3に対する判断
a 引用発明1は「基材層11において、・・・引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行った際のMD方向とTD方向のそれぞれの10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値が90MPa、95MPaである」ものの、引用文献1には、実施例1(段落【0044】、【0050】、【0056】及び表1を参照)の基材層11(「基材A-1:二軸延伸PETフィルム(熱可塑性ポリエステルエラストマー8質量%含有、厚み25μm)」)について、「10%延伸時」以外の応力値について記載も示唆も見当たらない。
b また、引用発明1は、「基材層11において、23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後に、23℃、40%RHの環境下で引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行」うところ、本件特許明細書段落【0094】の「実施例1B-5B及び比較例1B-6Bの電池用包装材料に使用した各基材層を、それぞれ、長さ100mm×幅15mmの長方形に裁断して試験片とした。各試験片を、それぞれ、25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力を測定した。引っ張りには、オートグラフ(SHIMAZU AUTOGRAPH AG-X Plus)を用いた。また、チャック間距離は30mmとした。」との記載によれば、本件特許明細書に記載された引張試験の条件は、長さ100mm×幅15mm、チャック間距離30mm、引張速度50mm/分である。
してみると、引用発明1における引張試験の条件と、本件特許明細書に記載された引張試験の条件とは一致していない。そして、仮に、本件特許明細書に記載された引張試験の条件に従って引用発明1の「基材層11」の引張試験を行ったとしても、その場合どの様な応力-歪み特性(例えば、本件特許の図6に示されるグラフ等)が得られるのか不明である。
c そして、引用文献2の図8、引用文献3の図9、引用文献4のFIG13を参酌しても、各文献に示されたポリエチレンテレフタレート(PET)の応力-歪み特性が一致していないことは明らかである。
してみると、基材層同士が同じ厚みの「PETフィルム」から構成されているとしても、各基材層の応力-歪み特性が同じであるとは必ずしもいえないから、引用発明1の「基材層11」が「厚み25μmの二軸延伸PETフィルム」からなるとしても、該「基材層11」の応力-歪み特性は、本件特許明細書に記載された実施例6Bの基材層の応力-歪み特性と一致するとは限らない。
d aないしcで述べた点を踏まえれば、引用発明1の「厚み25μmの二軸延伸PETフィルムであ」る「基材層11」を、「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張」る試験を行った場合の応力-歪み特性は不明であることから、該試験において「15MPaの引張応力が加わった際の変位」が「2%以上5%以下」の範囲内であるか明らかではない。
e さらに、「基材層11」以外に、「第1接着層12」、「金属箔層13」、「腐食防止処理層14」、「第2接着層15」及び「シーラント層16」が含まれる引用発明1の「積層体」は「基材層」より硬くなると解されるものの、そもそも、引用文献1には「積層体」について引張試験を行うことは記載されておらず、「積層体」の応力-歪み特性がどの様なものであるか不明である。
してみると、上記dで述べた点も踏まえれば、引用発明1の「積層体」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張」る試験を行った場合に、「40MPaの引張応力が加わった際の変位」が「5%以下」の範囲内であるか明らかではない。
f 以上から、相違点3は実質的な相違であるから、本件発明10は引用発明1であるとはいえない。
(エ)本件発明10に係る特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立書について
(a)特許異議申立人の主張
基材層の変位が5%以下となる領域は、基材層が弾性変形の領域から降伏点を迎えるくらいの領域であるから、変位量と、応力値との関係は比例関係となり、甲1A発明の基材層は、10%延伸時の応力値が90MPa又は95MPaであるから、90MPa又は95MPaの半分以下である40MPaの引張応力が加わった際の甲1A発明の基材層の変位は、5%以下である蓋然性が高い。
また、甲第2号証には、ポリエステルフィルムの汎用品(厚さ:23μm)のF-5値(試験片が5%伸びた時の荷重値を試験片の断面積で除した値)がMDにて102MPaでありTDにて93MPaであることが開示されている。つまり、ポリエステルフィルムの汎用品は40MPaの引張応力が加わった際の甲1A発明の基材層の変位が5%以下である蓋然性が高い。なお、甲第3号証の記載事項1からルミラーS10(厚さ:23μm)は、本件特許の優先日よりも前の甲第3号証の出願日である平成16年7月30日には一般に販売されていたことが分かる。
また、40MPaの引張応力が加わった際の甲1A発明の基材層の変位が5%以下となる場合には、そのような基材層を含む外装材の40MPaの引張応力が加わった際の変位は5%以下となる。(18頁19行ないし19頁10行を参照)
(b)当審の判断
上記「(ウ)c」で述べたように、基材層同士が同じ厚みの「PETフィルム」から構成されているとしても、各基材層の応力-歪み特性が同じであるとは必ずしもいえず、また、引用文献2の図8、引用文献3の図9、引用文献4のFIG13を参酌しても、各文献に示されたポリエチレンテレフタレート(PET)の応力-歪み特性において降伏点における応力や降伏点までの傾きもそれぞれ異なることが見て取れる。してみると、引用発明1の「基材層11」の「10%延伸時の応力値が90MPa又は95MPaである」としても、該「基材層11」の応力-歪み特性が不明であることから、15MPaの引張応力が加わった際の引用発明1の基材層の変位が2%以上5%以下の範囲内である蓋然性が高いとはいえない。
また、甲第2号証には「TORAY」製の商品名「ルミラー(登録商標)#25-S10」であるポリエステルフィルムの「代表物性」が記載され、また甲第3号証の段落【0036】には「支持体としてPETフィルム(ルミラーS10、東レ製、厚み23μm)を用い」と記載されているものの、そもそも引用文献1には「基材層11」として該「ルミラー」を用いることは記載されていない。してみると、該「ルミラー」のF-5値がMDにて102MPaでありTDにて93MPaであることは、引用発明1の「基材層11」に15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下の範囲内であることを裏付ける証拠であるとはいえない。
そして、上記「(ウ)e」で述べたように、引用発明1の「積層体」における「40MPaの引張応力が加わった際の変位」も「5%以下」の範囲内であるか明らかではない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
b 令和4年7月6日提出の意見書について
(a)特許異議申立人の主張
応力-歪み特性のカーブヘの引張速度の影響が対象の基材が硬い場合には小さいことは、技術常識であるといえる。
そして、引用発明1の基材層11は、応力値が90MPa、95MPaと硬いから、引張速度の違い(300mm/分又は50mm/分)による応力-歪み特性のカーブヘの影響は殆ど無いといえる。
つまり、「10%延伸時の応力値」が「90MPa」又は「95MPa」である引用発明1の「基材層11」に、「90MPa」又は「95MPa」の略1/6である15MPaの引張応力が加えた場合、その変位は5%以下であるものと解される。(8頁下から3行ないし9頁6行を参照)
(b)当審の判断
応力-歪み特性のカーブヘの引張速度の影響が対象の基材が硬い場合には小さいことが技術常識であるとしても、上記「(ウ)d」で述べたように、引用発明1の「基材層11」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張」る試験を行った場合の応力-歪み特性が不明であることから、「15MPaの引張応力が加わった際の変位」が「2%以上5%以下」の範囲内であると解することはできない。
よって、異議申立人の上記主張は採用できない。
(エ)小括
以上から、請求項10に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるとはいえないから特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない
(2)理由2(進歩性)について
ア まず、事案に鑑みて本件発明1の進歩性について検討する。
上記「(1)ア(イ)」で述べたように、本件発明1と引用発明1とは相違点1において相違するから、相違点1について検討する。
(ア)本件特許明細書の段落【0010】、【0011】、【0015】、【0019】、【0026】、【0041】及び【0092】の記載を参酌すれば、本件発明1は、金属層の厚みを30μm以上35μm以下とし、ポリエステルにより形成された基材層の厚みを20μm以上30μm以下の範囲とすることにより、電池用包装材料を薄型化しつつ、優れた成形性と絶縁性を得るものである。
(イ)ここで、引用発明1の「金属箔層13」に関し、引用文献1の段落【0025】に「金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。」と記載されている。
しかし、引用文献1の【請求項1】、段落【0008】、【0011】、【0014】によれば、引用文献1には、湿度環境に関わらず優れた成型性を得るために、リチウムイオン電池用外装材の基材層11を、JIS K 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルムとすることが記載されているところ、「基材層11」の厚みと「金属箔層13」の厚みの関係性について着目し両者の厚みを特定する記載や示唆は見当たらず、「金属箔層13の厚さ」のみを単独で変更し、より好ましいとされている「15~100μm」の範囲内の値である40μmに代えて、あえて「30μm以上35μm以下」の範囲の値を選択すべき動機を見出すことはできない。
(ウ)してみると、引用文献1に接した当業者は、引用発明1に基づいて「金属箔層13」の厚さをあえて「30μm以上35μm以下」とすることを容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1に係る構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。
(エ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和5年3月14日付け意見書において、引用文献1の「金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9~200μmが好ましく、15~100μmがより好ましい。」との記載(段落【0025】を参照)を参酌して引用発明1において金属箔層の厚さを訂正発明1の30μm以上35μm以下という範囲とすることは、設計事項である。また、積層体の金属層の厚さを30μm以上35μm以下とした場合に、金属層の厚さのみを40μmへと変更した積層体と比較して、成形性及び絶縁性が向上することは、本件特許明細書を参酌しても認められず、このような金属層の厚さの数値範囲の内と外で効果に顕著な差があることも認められないから、本件発明1ないし9,11は引用発明1に記載の事項に基づいて容易に想到しうる程度のものである旨主張する。(5頁下から4行ないし6頁8行を参照)
b 当審の判断
上記(イ)で述べたように、「基材層11」の厚みと「金属箔層13」の厚みの関係性について着目し両者の厚みを特定する記載や示唆は見当たらず、「金属箔層13の厚さ」のみを単独で変更し、より好ましいとされている「15~100μm」の範囲内の値である40μmに代えて、あえて「30μm以上35μm以下」の範囲の値を選択すべき動機を見出すことはできないことから、引用発明1において金属箔層の厚さを30μm以上35μm以下という範囲とすることは設計事項であるとはいえない。
また、引用文献1には、引用発明1において金属箔層の厚さのみを変更することは記載されておらず、また、引用文献1の記載や技術常識を参酌しても、金属層の厚み及びポリエステルにより形成された基材層の厚みを所定範囲とすることで優れた成形性と絶縁性が得られること(本件特許明細書の段落【0011】、【0015】、【0019】、【0026】を参照)は当業者が容易に予測し得たものとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(オ)小括
したがって、本件の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
イ 本件発明2、4について
本件発明2、4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものである。
したがって、上記「ア」で検討したことと同じ理由により、本件の請求項2、4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、請求項2、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
ウ 続いて、事案に鑑みて本件発明10の進歩性について検討する。
上記「(1)エ(イ)」で述べたように、本件発明10と引用発明1とは相違点3において実質的に相違するから、相違点3について検討する。
(ア)引用発明1の基材層11は「23℃、40%RHの環境下で24時間保管した後に、23℃、40%RHの環境下で引張試験(試料幅6mm、標点間距離35mm、引張速度300mm/分。)を行った際のMD方向とTD方向のそれぞれの10%延伸時(変位量3.5mm)の応力値が90MPa、95MPaである」ものである。
してみると、引用発明1は、基材層11のMD方向とTD方向それぞれの応力-歪み特性を規定するものであるから、本件発明10に記載された「15MPaの引張応力」に対する変位が「2%以上5%以下」である一方向の応力-歪み特性をあえて採用することは当業者に動機付けられないことである。
(イ)また、上記「ア(イ)」で述べたように、引用文献1には、湿度環境に関わらず優れた成型性を得るために、リチウムイオン電池用外装材の基材層11を、JIS K 7209:2000で規定される吸水率が0.1%以上3%以下で、引張試験における10%延伸時の応力値がMD方向及びTD方向共に110MPa以下で、かつMD方向及びTD方向の少なくとも一方で70MPa以上である樹脂フィルムとすることが記載されているところ、基材層11の応力-歪み特性のみを規定して湿度環境に関わらず優れた成形性を得ることは記載されておらず、引用発明1の「基材層11」について「0.1%以上0.3%以下」の「吸水率」を維持したまま、「基材層11」の「15MPaの引張応力」に対する変位が「2%以上5%以下」となるように構成することが当業者が容易に想到し得たとまではいえない。
(ウ)さらに、引用文献1には、「基材層11」、「第1接着層12」、「金属箔層13」、「腐食防止処理層14」、「第2接着層15」及び「シーラント層16」が順次積層された「積層体」自体の応力-歪み特性を規定する記載も示唆もないことから、「積層体」に対しても「長さ100mm×幅15mm」とし、「引っ張り速度50mm/分で引張」る「引張試験」を行い、「40MPaの引張応力」に対する変位が「5%以下」となるよう構成することも当業者に動機付けられないことである。
(エ)してみると、引用文献1に接した当業者は、引用発明1に基づいて「基材層」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下」とし、さらに「積層体」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、40MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下」とすることを容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点3に係る構成は、引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。
(オ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和5年3月14日付け意見書において、引用発明1の「基材11」に、15MPaの引張応力を加えた場合、その変位が2%以上5%以下という範囲を外れていたとしても、その変位を当該範囲とすることは設計事項である。また、当該範囲の内と外で効果に顕著な差があることも認められない旨主張する。(9頁21ないし末行を参照)
b 当審の判断
上記(ア)及び(ウ)で述べたように、引用発明1において、「基材層11」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、15MPaの引張応力が加わった際の変位が2%以上5%以下」とし、「積層体」を「長さ100mm×幅15mm」とし、「25℃下において、引張速度50mm/分で引張り、40MPaの引張応力が加わった際の変位が5%以下」とする動機は見当たらないから、引用発明1の「基材層11」に、15MPaの引張応力を加えた場合、その変位が2%以上5%以下とすることは設計事項であるとはいえない。
また、引用文献1の記載や技術常識を参酌しても、金属層の厚みを所定範囲とし、ポリエステルからなる基材層及び積層体の各応力-歪み特性を所定範囲とすることで優れた成形性を備え、さらに成形後のカールが効果的に抑制すること(本件特許明細書の段落【0014】、【0015】、【0019】、【0032】を参照)は当業者が容易に予測し得たものとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(カ)小括
したがって、本件の請求項10に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえないから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
エ 本件発明11について
本件発明11は、本件発明1又は本件発明10の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1又は本件発明10を限定するものである。
したがって、上記「ア」又は「ウ」で検討したことと同じ理由により、本件の請求項11に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 訂正前の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
請求項2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(明確性)
特許請求の範囲の請求項1ないし9、11の記載に不備があるため、請求項1ないし9、11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。
2 提出された証拠
異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特開2013-196947号公報
甲第2号証:”ルミラー(登録商標)#25-S10 ポリエステルフイルム TECHNICAL DATA”、[online]、東レ株式会社[2021年11月29日検索]、インターネットくhttps://catalog,ulprospector.com/Datasheet.aspx?I=83754&FMT=PDF&E=303290&SKEY=83754.2198745.225859587%3Aaa9d8dc9-blc2-449c-895c-efl9bd62eeb8&CULTURE=ja-JP&>)
甲第3号証:特開2006-35796号公報
3 甲各号証の記載事項
甲第1号証は、取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1であり、甲第1号証に記載された事項は、上記「第4 2(1)」で述べたとおりであり、甲第1号証には、上記「第4 2(3)」で述べた「引用発明1」と同じ構成である発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
4 申立理由に対する当審の判断
(1)申立理由1(新規性)について
本件発明2は、本件発明1の全ての構成を含み、さらに他の構成を付加した発明であるから、上記「第4 3(1)ア」と同様の理由により、甲1発明であるとはいえない。
よって、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないから特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
(2)申立理由2(明確性)について
ア 特許異議申立人の主張
(ア)特許異議申立人は、異議申立書において、本件件特許請求項1では、「前記基材層は、ポリエステルにより形成されており、」とあるが、基材層がポリエステルのみからなるとの意味なのか、それとも、基材層がポリエステルを含むとの意味なのかが分からないから、不明確である。また、本件特許請求項9にも同様の点が指摘される。したがって、本件特許請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし8、11、並びに本件特許請求項9及び請求項9を引用する請求項11の記載は明確でない旨主張する。(20頁2ないし7行を参照)
(イ)ここで、本件発明1及び本件発明9では、基材層がポリエステル以外の材料も含むことを意味する「ポリエステルを含み」等の表現は使用せず、あえて「ポリエステルにより形成」と表現している。
(ウ)そして、本件特許明細書には、「基材層」に関し以下の記載がある。
「【0010】
薄型の電池用包装材料の絶縁性を高めるために、本発明者らは、基材層として、ポリエステルを用いることを検討した。ところが、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、ナイロンなどに比して、成形性に劣るため、ポリエステルにより基材層を形成した場合、例えば金属層の厚みを非常に薄くする(例えば、40μm以下、さらには35μm以下)と、電池用包装材料の成形時に金属層にピンホールなどが発生しやすいという問題が発生した。
【0011】
このような状況下、本発明の主な目的は、少なくとも、ポリエステルにより形成された基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体からなる電池用包装材料において、優れた絶縁性を備えており、さらに、成形時にピンホールやクラックが生じ難く、優れた成形性を有する電池用包装材料を提供することにある。
・・・(中略)・・・。
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、ポリエステルにより形成された基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体からなる電池用包装材料において、金属層として、厚みが40μm以下のものを用いるにもかかわらず、基材層の厚みを15μm以上30μm以下に設定することにより、優れた絶縁性を備えているだけでなく、意外にも、成形性にも優れた電池用包装材料となることを見出した。
・・・(中略)・・・。
【0019】
本発明の第1の態様の電池用包装材料は、少なくとも、基材層、金属層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体からなり、金属層の厚みが40μm以下であり、基材層は、ポリエステルにより形成されており、基材層の厚みが、15μm以上30μm以下であることを特徴とする。本発明の第1の態様の電池用包装材料は、このような構成を備えていることにより、優れた絶縁性を備えているだけでなく、成形性にも優れる。
・・・(中略)・・・。
【0025】
2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側を形成する層である。基材層1は、ポリエステルにより形成されている。前述の通り、近年、電池の小型化、薄型化の要求に伴い、電池用包装材料に対しても、より一層の薄膜化が求められている。しかしながら、電池用包装材料の厚みが薄くなると、成形時に金属層にピンホールやクラックが生じやすくなるという問題がある。さらに、絶縁性についても低下しやすくなる。
【0026】
これに対して、本発明の第1の態様においては、基材層1がポリエステルにより形成されており、かつ、当該基材層1の厚みが、15μm~30μmの範囲にあることにより、金属層3におけるピンホールやクラックの発生が効果的に抑制され、さらに、ナイロンなどにより形成する場合に比して絶縁性が飛躍的に向上する。電池用包装材料を薄型化すると、成形性が低下するため、従来、ポリエステルのように成形性に劣る樹脂を単独で基材層に使用することは考えられなかった。従って、ポリエステルにより形成された基材層1の厚みを上記特定の範囲に設定することにより、絶縁性だけでなく、成形性にも優れた電池用包装材料になることは、意外なことであった。本発明の電池用包装材料において、ポリエステルを用いているにも関わらず、優れた成形性が発揮される機序の詳細の詳細は明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、本発明においては、ポリエステルにより形成された基材層1の厚みが上記特定の範囲に設定されていることにより、成形時における金属層3の急激な伸びが基材層1によって適切に制御され、結果として、金属層3のピンホール等の発生が抑制されているものと考えられる。
・・・(中略)・・・。
【0029】
基材層1は、ポリエステルにより形成された1層により構成されていてもよいし、ポリエステルにより形成された複数の層により構成されていてもよい。基材層1が複数の層により構成されている場合、ポリエステルにより形成された2層により構成されていることが好ましい。
【0030】
基材層1は、好ましくは、ポリエステルフィルム、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムにより構成することができる。基材層1が複数の層により構成されている場合、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された2層構成が好ましい。
・・・(中略)・・・。
【0088】
実施例1A-5A及び比較例1A-6A
<電池用包装材料の製造>
基材層の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔からなる金属層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、金属層上の接着剤層と基材層を積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/金属層の積層体を作製した。なお、金属層として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の金属層の上に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、金属層上に接着層を形成した。次いで、熱融着性樹脂層としてのランダムポリプロピレンフィルムを(最内層)接着層の上に貼り付けることにより、金属層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させて、各電池用包装材料を得た。基材層、金属層、接着層、熱融着性樹脂層の厚みは、それぞれ、表1Aに記載の通りである。なお、表1Aにおいて、PET/PETは、ポリエチレンテレフタレート層が、接着剤層(2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物、厚み3μm)を介して接着された2層構造を有している。同様に、PET/ナイロンは、ポリエチレンテレフタレート層とナイロン層が、接着剤層(2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物、厚み3μm)を介して接着された2層構造を有している。基材層が2層構造を有している場合、基材層の厚みには接着剤層の厚みは含まれていない。
[図:0001400414000002.jpg]
」
以上の記載によれば、本件特許明細書に記載された「ポリエステル」以外の材料を含む基材層としては、ポリエチレンテレフタレート層とナイロン層が接着された2層構造を有する「比較例1A」の基材層のみである。
(エ)してみると、上記(イ)、(ウ)から、本件発明1の「前記基材層は、ポリエステルにより形成されており」とは、「基材層」はポリエステルのみからなると解されるものである。
よって、本件発明1、本件発明1を引用する本件発明2ないし8、11、本件発明9、及び、本件発明9を引用する本件発明11は明確である。
(オ)小括
以上から、本件請求項1ないし9、11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701121