特許異議申立
2021-700458
包装袋
- 審判番号
- 2021-700458
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-114431
- 登録番号
- 6786891
- 請求日
- 2021年05月14日
- 審決日
- 2022年04月27日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 佐野特許事務所
- 【異議申立人】浜 俊彦
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.537-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6786891号発明「包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6786891号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第6786891号の請求項2~6に係る特許を維持する。
特許第6786891号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6786891号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年6月8日の出願であって、令和2年11月2日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和2年11月18日)がされたものであり、その特許について、令和3年5月14日に特許異議申立人浜俊彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において令和3年10月20日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である令和3年11月11日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その訂正を「本件訂正」という。)がされたものである。
なお、本件訂正請求における訂正事項は、以下に述べるように、実質的に、特許請求の範囲の請求項1の削除と、それに伴う、他の請求項の引用関係の記載の訂正のみであり、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められるため、申立人に、意見書を提出する機会は与えなかった。
第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6786891号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線は、当審が訂正箇所に付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記光吸収層が前記波長域のレーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。」と記載されているのを、
「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け、
前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し、
前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに、前記光吸収層を前記基材層上に形成し、前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され、
前記光吸収層が前記波長域のレーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキにより形成されることを特徴とする包装袋。」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3、5及び6も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記光吸収材が炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の包装袋。」と記載されているのを、「前記光吸収材が炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有することを特徴とする請求項2に記載の包装袋。」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記光吸収材が三酸化モリブデン及び酸化チタンを含むことを特徴とする請求項3に記載の包装袋。」と記載されているのを、
「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け、
前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し、
前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに、前記光吸収層を前記基材層上に形成し、前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され、
前記光吸収材が炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有し、三酸化モリブデン及び酸化チタンを含むことを特徴とする包装袋。」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記光吸収層が前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋。」と記載されているのを、「前記光吸収層が前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記前面部の前記切断部と前記背面部の前記切断部とが左右方向の中央部で上下方向に異なる位置に配され、前記光吸収層が前記前面部の前記切断部及び前記背面部の前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋。」と記載されているのを、「前記前面部の前記切断部と前記背面部の前記切断部とが左右方向の中央部で上下方向に異なる位置に配され、前記光吸収層が前記前面部の前記切断部及び前記背面部の前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋。」に訂正する。
2.訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~6が、それぞれ請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。
(3)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項3で「請求項1または請求項2に記載の包装袋」としていたものを、「請求項2に記載の包装袋」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が、請求項1または請求項2の記載を引用する請求項3を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用する請求項3を引用する請求項4について、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項5で「請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋」としていたものを、「請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項6で「請求項1~請求項4のいずれかに記載の包装袋」としていたものを、「請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項6は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.小括
したがって、訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~6〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項2~6に係る発明(以下「本件発明2」等といい、本件発明2~6を「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2~6に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項2】
基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け、
前記光吸収材がレーザー光の吸収により発熱し、
前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに、前記光吸収層を前記基材層上に形成し、前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され、
前記光吸収層が前記波長域のレーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキにより形成されることを特徴とする包装袋。
【請求項3】
前記光吸収材が炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有することを特徴とする請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け、
前記光吸収材がレーザー光の吸収により発熱し、
前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに、前記光吸収層を前記基材層上に形成し、前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され、
前記光吸収材が炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有し、三酸化モリブデン及び酸化チタンを含むことを特徴とする包装袋。
【請求項5】
前記光吸収層が前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋。
【請求項6】
前記前面部の前記切断部と前記背面部の前記切断部とが左右方向の中央部で上下方向に異なる位置に配され、前記光吸収層が前記前面部の前記切断部及び前記背面部の前記切断部に重なる細帯状に形成されることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の包装袋。」
2.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、3、5及び6に係る発明に対して、特許権者に通知した令和3年10月20日付け取消理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1、3、5及び6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第4号証:特開平8-183133号公報
甲第1号証:特開2002-370749号公報
甲第6号証:特開2016-8066号公報
以下「甲第4号証」を「甲4」という。他も同様。
3.取消理由についての判断
(1)甲4の記載事項、甲4に記載された発明
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 波長が0.4~1.2μmのレーザ光を吸収して発熱する少なくとも1層以上の発熱層と、この発熱層の発熱により切断される少なくとも1層以上の切断層と、上記発熱層の発熱によっては切断されない少なくとも1層以上の非切断層とを有することを特徴とする易開封性積層包装材料。」
イ「【0002】
【従来の技術】一般に、包装材料は保存を目的とすることから、強度、ガス遮断性、水蒸気遮断性といった密封性と、開封を容易に行なう目的から易開封性といった相反する特性が要求されている。かかる目的を達成すべく、包装材料の一部に切溝を設けるようにしたものが従来より提案されている(USP3,790,744号、実開昭60-110629号)。」
ウ「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述のような構造では、積層体を構成する各層のレーザ光吸収の強弱を利用するものであるために、積層体の層構成の組合わせが限定されるといった問題点がある。また、バリヤ性、強度を維持すべく酸素遮断性を有する、例えば無機物蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム等が一般的に使用されるが、これらは赤外線波長域のレーザ光の吸収が高いために、例えば炭酸ガスレーザ光を使用した場合には、酸素遮断性を有する層にも切溝が形成されてしまい、酸素遮断性が著しく低下するといった問題点がある。
【0006】本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、積層体に開封用の切溝を形成することができ、易開封性を有するとともに、確実に密封することのできる易開封性積層包装材料を提供することを目的とする。」
エ 実施例
「【0010】図2は本発明における易開封性積層包装材料の層構造の他の実施例を示す断面図である。本実施例は、層構造を 透明高分子フィルム1/インキ層2/透明高分子フィルム1/レーザ光によっては加工されない層5 とし、波長0.4~1.2μmのレーザ光線を照射し、透明高分子フィルム1をレーザ光が透過し、インキ層2を発熱させる。すると、このインキ層2の発熱により両側の透明高分子フィルム1,1が溶融し、切溝4が形成される。なお、このような層構造とすれば、透明積層包装材料へ切溝4を形成することができる。」
「【0012】本発明において、波長0.4~1.2μmの可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱する層としては、該波長に吸収を有する顔料・染料・高分子等を用いることが可能であり、特に制限されないが、特に印刷インキが好適に用いられる。通常積層体における該インキ層は印刷基材となるフィルムに裏刷りとされることが多く、印刷層を波長0.4~1.2μmの可視・近赤外線レーザ光吸収層とすることにより新たに吸収層を設ける必要がなく、層構造が複雑化しない。この場合、印刷インキの種類は照射するレーザの波長0.4~1.2μmに併せて任意に選択することができる。・・・・
【0013】また、酸素遮断性を有するために中間層として、以下のような酸素遮断性を有する中間層を形成しても良い。酸素遮断層としては、例えばアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、各種無機物蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等がある。
【0014】本発明に用いられるレーザ光としては、波長が0.4~1.2μmの可視、近赤外線レーザ光であれば良く、特にアルゴンイオンレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ等である。また、レーザ光はパルス発振、連続発振のどちらでも良く、その単位照射面積あたりの照射出力は包装材料の加工速度に応じて適宜選択できる。レーザ照射はレーザを固定して包装材料を移動させて、一直線上に加工する方法、レーザをスキャニングしながら包装材料を移動させて任意の形状に加工する方法、いずれの方法であっても良く、直線、曲線はもちろん、連続線およびミシン目等の不連続線も自由に加工可能である。」
オ「【0023】実験例3
従来、周知の方法である共押出ラミネーション法を用いて下記仕様の包装材料を作成した。
【0024】2軸延伸ポリプロピレン20μm/青インキ/ポリエチレン15μm/アルミ蒸着ポリプロピレン25μm
これに発振波長515nmのアルゴンイオンレーザ(NEC製GLG3260)を出力1W、スポット径70μmとなるように集光照射し、包装材料を4cm/秒で移動して2軸延伸ポリプロピレン20μmのみに幅100μmの開封用の切溝を設けた。
【0025】次に上記包装材料を切り溝が表裏一致するように3方シールで製袋して切溝より引き裂いた結果切り溝に沿って容易に開封が可能であった。また、3方パウチの酸素透過度を測定した結果、レーザ加工前、レーザ加工後共に酸素透過後は0.5cc/m2・24hrs・atm以下であり、酸素バリヤーの低下は認められなかった。」
カ「図2
[図:0001387476000001.jpg]
」
キ 実験例3の「アルミ蒸着ポリプロピレン」は、ポリプロピレンとアルミ蒸着した層からなり、製袋する際には、ポリプロピレンの側同士を対面させて熱接着性樹脂層としてシールすることは明らかである。
また、これにより、ポリプロピレンのアルミが蒸着された面側が、アルミ蒸着層としてポリエチレンとポリプロピレンとの間の位置し、この蒸着されたアルミが袋内部への酸素透過をバリアする機能を有するといえる。
ク 上記エ(段落【0010】)より、「青インキ」がレーザ光線により発熱して、「2軸延伸ポリプロピレン」に切溝が形成されるといえるから、「青インキ」と「切溝」の領域は重なるものといえる。また、同じく上記エ(段落【0014】)より、切溝は、ミシン目等の不連続線とし得るものである。
また、上記エ(段落【0012】)より、「青インキ」は、基材である「2軸延伸ポリプロピレン」の層に裏刷りされる。
ケ 以上より、甲4には、実験例3に示す包装材料を製袋した袋に係る「甲4発明」が記載されているといえる。
「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン、アルミ蒸着層、ポリプロピレンの順に積層した包装材料を製袋した袋であって、
青インキは、2軸延伸ポリプロピレンに裏刷りされ、可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱し、
青インキと重なる領域の2軸延伸ポリプロピレンのみに幅100μmの開封用のミシン目等の不連続線の切溝を設け、
包装材料を切溝が表裏一致するように3方シールで製袋し、
3方パウチの酸素透過度は、レーザ加工前、レーザ加工後共に、0.5cc/m2・24hrs・atm以下である、袋。」
(2)本件発明2について
ア 本件発明2と甲4発明を対比する。
甲4発明の「2軸延伸ポリプロピレン」は本件発明2の「基材層」に、甲4発明の「ポリプロピレン」は本件発明2の「熱接着性樹脂層」に、それぞれ相当し、甲4発明の「3方シールで製袋」した「袋」は、本件発明2の「「周縁を熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋」に相当する。
また、甲4発明の「袋」は、「切溝が表裏一致するように3方シールで製袋」されるから、2軸延伸ポリプロピレンに形成された「幅100μmの開封用の切溝」は、本件発明2の「対向する前面部及び背面部の基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部」に相当する。
甲4発明の「ポリエチレン、アルミ蒸着層」と、本件発明2の「ガスバリア性を有する中間層」とは、「中間の層」という限りで一致する。
甲4発明の「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン、アルミ蒸着層、ポリプロピレンの順に積層した包装材料」と、本件発明2の「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シート」であって、「前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに」、「前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され」ることとは、「基材層と熱接着性樹脂層との間に中間の層を備え、所定のガスに対するガスバリア性を有する樹脂シート」という限りで一致する。
甲4発明の「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン」の順に積層され、「切溝」と重なる領域に設けられた「可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱」する「青インキ」と、本件発明2の「前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含」み、「前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し」、「前記波長域のレーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキにより形成される」「光吸収層」とは、「切断部に重なる領域の基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層」という限りで一致する。
甲4発明の「青インキ」が「2軸延伸ポリプロピレンに裏刷りされ」ることは、本件発明2の「光吸収層を基材層上に形成した」ことに相当する。
イ そうすると、本件発明2と甲4発明とは、
「基材層と熱接着性樹脂層との間に中間の層を備え、所定のガスに対するガスバリア性を有する樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層を設け、
前記光吸収層を前記基材層上に形成した、包装袋。」で一致し、
次の相違点1及び相違点2で相違する。
《相違点1》
基材層と熱接着性樹脂層との間に中間の層を備え、所定のガスに対するガスバリア性を有する樹脂シートに関して、本件発明2が「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シート」であって、「前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに」、「前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され」るのに対し、甲4発明は透明であるか特定されておらず、「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン、アルミ蒸着層、ポリプロピレンの順に積層した包装材料」である点。
《相違点2》
切断部に重なる領域の基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層に関して、本件発明2が「前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含」み、「前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し」、「前記波長域のレーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキにより形成される」「光吸収層」であるのに対し、甲4発明は、「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン」の順に積層され、「切溝」と重なる領域に設けられた「可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱」する「青インキ」である点。
ウ まず、上記相違点2について検討する。
甲4には、「青インキ」を、レーザー光を吸収して発色するレーザーマーキング用インキとする記載ないし示唆はない。
申立人が提出した甲2(特開2015-66723号公報)及び甲3(特開2015-67286号公報)には、レーザー光により印字可能なレーザー発色インキについて記載されているが、このインキにより、レーザー光により発熱して重なる領域に切断部を形成できるとは記載されていない。
このように、レーザー光により発熱し、切断部を形成できるとは記載されていない甲2及び甲3のレーザー発色インキを、発熱材料として切溝を形成する甲4発明の「青インキ」に敢えて換える動機付けはない。また、提出された他の証拠(甲1、甲6、甲5:特開2010-76835号公報、甲7:特開2011-148197号公報、甲8:特開2015-20796号公報)にも、甲4発明の「青インキ」をレーザー発色インキに換え得ることを示す記載はない。
そうすると、本件発明2の上記相違点2に係る構成は、甲4発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ よって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明及び甲1~8に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明4について
ア 本件発明4と甲4発明を対比する。
甲4発明の「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン」の順に積層され、「切溝」と重なる領域に設けられた「可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱」する「青インキ」と、本件発明4の「前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含」み、「前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し」、「炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有し、三酸化モリブデン及び酸化チタンを含む」「光吸収層」とは、「切断部に重なる領域の基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層」という限りで一致する。
本件発明4と甲4発明の他の事項の相当関係は、上記(2)で本件発明2と甲4発明について述べたとおりである。
イ そうすると、本件発明4と甲4発明とは、
「基材層と熱接着性樹脂層との間に中間の層を備え、所定のガスに対するガスバリア性を有する樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し、前記切断部に重なる領域の前記基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層を設け、
前記光吸収層を前記基材層上に形成した、包装袋。」で一致し、
次の相違点3及び相違点4で相違する。
《相違点3》
基材層と熱接着性樹脂層との間に中間の層を備え、所定のガスに対するガスバリア性を有する樹脂シートに関して、本件発明4が「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シート」であって、「前記中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成るとともに」、「前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して前記蒸着膜を前記熱接着性樹脂層側に配され」るのに対し、甲4発明は透明であるか特定されておらず、「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン、アルミ蒸着層、ポリプロピレンの順に積層した包装材料」である点。
《相違点4》
切断部に重なる領域の基材層と中間の層との間に設けられた所定の波長域のレーザー光を吸収して発熱する光吸収層に関して、本件発明4が「前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含」み、「前記光吸収材がレーザ光の吸収により発熱し」、「炭酸ガスレーザー光の波長域に吸収帯を有し、三酸化モリブデン及び酸化チタンを含む」「光吸収層」であるのに対し、甲4発明は、「2軸延伸ポリプロピレン、青インキ、ポリエチレン」の順に積層され、「切溝」と重なる領域に設けられた「可視・近赤外線レーザ光を吸収して発熱」する「青インキ」である点。
ウ まず、上記相違点4について検討する。
上記甲2及び甲3には、レーザー光により発色する材料として、三酸化モリブデン(甲2の【0044】、【0046】)、酸化チタン(甲3の【0027】)が記載されているが、これらの金属酸化物を、樹脂に切断部を形成する発熱材料にし得ること、あるいは、それらの材料を発熱材料に含ませることについては、記載も示唆もされていない。
レーザー光による発熱する材料として記載されていない三酸化モリブデンと酸化チタンを、発熱材料としての甲4発明の「青インキ」に換える、あるいは含ませる動機付けはない。
また、提出された他の証拠にも、甲4発明の「青インキ」を三酸化モリブデンと酸化チタンに換える、あるいは含ませることを示す記載はない。
そうすると、本件発明4の上記相違点4に係る構成は、甲4発明に基づき、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ よって、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明4は、甲4発明及び甲1~8に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明3、5及び6について
本件発明3、5及び6は、本件発明2又は本件発明4のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであり、上記(2)及び(3)で述べたように、本件発明2及び本件発明4は、いずれも甲4発明及び甲1~8に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの発明特定事項を全て備える本件発明3、5及び6も、甲4発明及び甲1~8に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)サポート要件に係る申立理由
ア 申立人は、請求項1には、光吸収層と蒸着膜との間に配置される中間層又は蒸着フィルム(透明樹脂フィルム15aに相当する部分)の厚さや材料(熱伝導率等)、接着層の厚さや材料(熱伝導率等)について何ら規定されておらず、請求項1~6に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである旨主張し、サポート要件に係る理由を申し立てている。
イ 本件特許明細書の記載によれば、「従来の包装袋によると、樹脂シートの中間層がアルミニウム箔から成るため、使用者は包装袋の内部を視認することができない。また、内容物が収納された包装袋を検査する際に、包装袋の内部に混入した金属片を金属探知機で探知することが困難になる。このため、包装袋の利便性が悪い問題があった。」(段落【0005】)ことから、本件発明の解決しようとする課題は、それらの問題を解決して「利便性を向上できる包装袋を提供すること」(段落【0006】)を目的とするものである。
ウ 他方、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、
「【0049】
本実施形態によると、ハーフカット線から成る切断部60に重なる領域R1の基材層11と中間層15との間に炭酸ガスレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層13を設けている。このため、レーザー光を照射して基材層11に切断部60を形成する際にレーザー光が光吸収層13で吸収され、ガスバリア性を有する中間層15の損傷が防止される。これにより、ガスバリア性を確保しながら包装袋1を透明に形成して内部を視認することができる。したがって、包装袋1の利便性を向上させることができる。
【0050】
また、中間層15に従来例のようなアルミニウム箔を含まないため、包装袋1の内部に混入した金属片等を金属探知機で容易に検知することができる。
【0051】
また、中間層15はシリカまたはアルミナの蒸着フィルムから成る。これにより、ガスバリア性を有する透明な包装袋1を容易に実現することができる。」
と記載されており、本件発明の「中間層がシリカまたはアルミナの蒸着膜を有した蒸着フィルムから成る」ことで、包装袋の内部に混入した金属片等を金属探知機で容易に検知することができ、透明な包装袋を容易に実現できることが認識できる。
また、本件発明の「基材層と中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け」ることで、ガスバリア性を有する中間層の損傷が防止され、これにより、ガスバリア性を確保しながら包装袋を透明に形成して内部を視認し得ることが認識できる。
エ よって、本件発明は、申立人が主張する上記事項を規定することを要せずとも、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではないから、申立人のサポート要件に係る上記申立理由は採用できない。
(2)明確性要件に係る申立理由
ア 請求項1の「前記切断部に重なる領域の前記基材層と前記中間層との間に所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層」との記載は、切断部がこの光吸収層から形成されるものなのか不明であり、また、この光吸収層との関係で蒸着膜を離間させたとしても、既に形成されているハーフカット線から成る破断部を形成した際に蒸着膜の損傷をどのように防止したのかは不明である旨、「所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材」との記載は、いかなる範囲の波長域のレーザー光をどの程度吸収する光吸収材を示しているのか明らかでない旨主張し、明確性要件に係る理由を申し立てている。
イ 「破断部」については、本件発明の「基材層と熱接着性樹脂層との間に所定のガスに対するガスバリア性を有する中間層を配した透明な樹脂シートを重ね、周縁を前記熱接着性樹脂層により接着して形成される包装袋において、対向する前面部及び背面部の前記基材層にそれぞれ形成されたハーフカット線から成る切断部を有し」との記載から、「破断部」が、包装袋の対向する前面部及び背面部の基材層に設けられ、ハーフカット線から成ることが理解でき、本件発明は明確である。
そして、本件発明は、「切断部」が形成され「蒸着膜」を備えた「包装袋」であることを特定するもので、明確であり、切断部がこの光吸収層から形成されるものなのか否か、あるいは、蒸着膜の損傷をどのように防止したのかを特定することまで要するものではない。
ウ また、本件発明が「包装袋」に係る発明であり、技術常識も踏まえれば、「所定の波長域のレーザー光」とは、包装袋の製造に用いられるレーザー光の波長域であると理解でき、さらに、本件発明の「光吸収材がレーザー光の吸収により発熱し」との記載から、「高光吸収性」とは、レーザー光の吸収により発熱する程度の「光吸収性」であると理解できるから、本件発明は明確である。
エ よって、本件発明は明確であり、申立人の明確性要件に係る上記申立理由は採用できない。
(3)甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る申立理由
ア 申立人は、請求項1~3に係る発明は、甲1に記載された発明であり、あるいは、請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲7に記載された技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る理由を申し立てている。
イ 甲1には、甲1の記載及び特許異議申立書の主張(35~36頁)を踏まえると、次の「甲1発明」が記載されていると認められる。
「〔甲1発明〕
基材フィルム1とヒートシール性樹脂層5との間にバリア性基材4を有する透明な樹脂シートを重ね、周縁をヒートシール性樹脂層5によりヒートシールして形成される自立性袋Bにおいて、対向する前板8及び後板9の基材フィルム1それぞれに炭酸ガスレーザーにより易開封性レーザ切れ目が1本ないし複数本刻設され、
基材フィルム1の片面(裏面)には、上記のレーザー用の光吸収層、または所望の印刷模様を印刷して印刷模様層が設けられ、
バリア性基材4が無機酸化物の蒸着膜3を有する樹脂フィルム2から成るとともに、光吸収層又は印刷模様層が基材フィルム1上に形成され、樹脂フィルム2がラミネート用接着剤層6を介して光吸収層又は印刷模様層に隣接しており、蒸着膜3がヒートシール性樹脂層5側に配されている自立性袋B。」
ウ 申立人は、甲1発明の「印刷模様層」が、本件発明の「光吸収層」を構成する「レーザーマーキング用インキ」に相当する旨主張する(特許異議申立書36頁)。
しかし、甲1には、甲1発明の「印刷模様層」が、レーザー光の吸収により発熱することは記載されておらず、甲1はレーザー光の照射によるバリア性基材の損傷について着目したものではない。
本件発明と甲1発明を対比すると、甲1発明の「印刷模様層」は本件発明の「光吸収層」に相当するものではなく、甲1発明は、本件発明の「所定の波長域のレーザー光に対して高光吸収性の光吸収材を含む光吸収層を設け、前記光吸収材がレーザー光の吸収により発熱」するものを備えたものではないから、甲1発明は、本件発明の「光吸収層」に係る上記事項を備えない点で、少なくとも本件発明と相違する。さらに、甲1発明において、「印刷模様層」をレーザー光の吸収により発熱するように換える動機付けもないから、提出された甲1~甲6を参照しても、この相違点に係る構成を容易に想到し得たものとはいえない。
エ よって、申立人の甲1を主引用例とする新規性・進歩性に係る上記申立理由は採用できない。
(4)甲5を主引用例とする進歩性に係る申立理由
ア 申立人は、請求項1~6に係る発明は、甲5に記載された発明並びに甲1~甲4、甲6及び甲7に記載された技術的事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、甲5を主引用例とする進歩性に係る理由を申し立てている。
イ 甲5には、甲5の記載及び特許異議申立書の主張(49頁)を踏まえると、次の「甲5発明」が記載されていると認められる。
「〔甲5発明〕
少なくとも表面層11、レーザー反射インキ層13、中間支持層14、バリア層15、ヒートシール層16の順に積層されたフイルム状積層体の周縁をヒートシール層16により接着して形成される易開封性レトルト包装体10において、対向するフィルム状積層体1(1a、1b)の表面層11にそれぞれ形成されたハーフカット部18から成る切取り部6を有し、
切取り部6に重なる領域の表面層11とレーザー反射インキ層13との間にレーザー吸収性色素を含む印刷層12を設け、
バリア層15が酸化アルミナを蒸着したフィルムから成るとともに、印刷層12が表面層11上に形成され、バリア層15と印刷層12の間に、レーザー反射インキ層13、中間支持層14及び接着剤層17が存在する、易開封性レトルト包装体10。」
ウ 本件発明と甲5発明を対比すると、甲5(【0014】)の「本発明の易開封性レトルト包装体は、レトルトパウチにおける開封部をレーザーにより形成するに際して、レーザー照射をレーザー反射インキ層により反射できるので、中間支持層を損傷することがない。そのため、レトルトの際にレーザー照射部におけるAl箔等のバリア層の物性劣化を防止でき、また、切取り線におけるハーフカットにより、開封に際しての直進開封性に優れるものとできる。」との記載からみて、甲5発明は「レーザー反射インキ層13」を備えることを必須とするものであり、蒸着フィルムと光吸収層の配置に関して、本件発明が「前記蒸着フィルムが接着層を介して前記光吸収層に隣接して」設けられるのに対し、甲5発明は「バリア層15と印刷層12の間に、レーザー反射インキ層13、中間支持層14及び接着剤層17が存在する」点で、少なくとも相違する。
甲5発明において「レーザー反射インキ層13」は必須の構成であるから、甲5発明のバリア層15と印刷層12の間に存在する「レーザー反射インキ層13」と「中間支持層14」を省いて、甲5発明のバリア層15(本件発明の「蒸着フィルム」に相当)と印刷層12(同「光吸収層」に相当)を接着層を介して隣接させることは、容易に想到し得たものとはいえない。提出された甲1~甲4、甲6及び甲7を参照しても、容易であるとすることはできない。
エ よって、申立人の甲5を主引用例とする進歩性に係る上記申立理由は採用できない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、請求項2~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項2~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により、請求項1に係る特許は削除されたため、請求項1に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700458