2021-701108
地盤注入用薬液組成物
- 審判番号
- 2021-701108
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-115208外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6882940
- 請求日
- 2021年11月26日
- 審決日
- 2022年02月02日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
特許第6882940号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成29年6月12日の出願であって、令和3年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~12に係る特許に対し、令和3年11月26日に特許異議申立人高橋和秀(以下、単に「申立人」ということもある。)が、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
1 特許第6882940号の請求項1~12の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明12」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とからなる地盤注入用薬液組成物において、前記ポリオールが、開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールを、90質量%以上の割合で含有していると共に、前記A液が、金属触媒を含有しており、更にかかるA液が、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものであることを特徴とする地盤注入用薬液組成物。【請求項2】続きを表示(全25行)前記金属触媒が、前記ポリオールの100質量部に対して、0.1~5質量部の割合で含有せしめられていることを特徴とする請求項1に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項3】前記A液が、3級アミン触媒を更に含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項4】前記A液及び前記B液には、発泡剤が、実質的に配合されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項5】発泡倍率が2倍以下である硬化反応生成物を与えることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項6】前記ポリエーテルポリオールが、開始剤としての多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加したものである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項7】前記ポリオール中、開始剤としてアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポリオールの含有割合が、5質量%以下となるように、構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項8】前記A液及び前記B液のうちの少なくとも何れか一方に、難燃剤を含有せしめてなることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項9】前記難燃剤が、前記ポリオールの100質量部に対して、5~50質量部の割合で前記A液に含有せしめられていることを特徴とする請求項8に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項10】前記難燃剤が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、5~40質量部の割合で前記B液に含有せしめられていることを特徴とする請求項8に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項11】前記B液の25℃での粘度が、50~500mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。【請求項12】前記A液と前記B液とが、体積基準にて、1:0.5~1:3の割合で用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。」
第3 申立理由の概要
申立人は、下記2の甲第1~5号証を提出し、次の1について主張している(以下、甲号証は、単に「甲1」などと記載する。)。
1 特許法第29条第2項(進歩性)について(同法第113条第2号)
(1)本件発明1~8及び10~12は、甲1~甲3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~8及び10~12は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件発明9は、甲1~甲4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明9は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1)甲1:特開2015-117304号公報
(2)甲2:特開2003-147358号公報
(3)甲3:特開2002-327174号公報
(4)甲4:特開2007-197499号公報
(5)甲5:化学大辞典編集委員会、「化学大辞典5」、共立出版株式会社、昭和36年4月15日、初版第1刷、表紙、40頁、奥付
第4 当審の判断
1 甲1の記載
甲1には、「土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
「【特許請求の範囲】【請求項1】ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからなる、実質的に水を含まない、土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a1)を含有するものであり、前記アミン化合物が、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有するものである、土質の安定強化止水用注入薬液組成物。」
「【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は、土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明は、大量の漏水や湧水を止水することができる十分な強度を有し、水と触れた際の白濁がなくかつ発泡倍率も小さく、加えて、現場の装置に負担をかけないよう十分低粘度である、土質の安定強化止水用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法を提供しようとするものである。」
「【0022】ポリエーテルポリオール(a1)は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。」
「【実施例】【0062】実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。【0063】続きを表示(全46行)<使用原料>(ポリエーテルポリオール(a1))ポリオール(a1-1):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価480mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製)ポリオール(a1-2):プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD400、第一工業製薬(株)製)・・・略・・・【0065】(一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1))アミン化合物(b1-1):ジエチルトルエンジアミン(商品名:DETDA80、ロンザジャパン(株)製)・・・略・・・【0066】(3級アミノ基を有するアミン化合物(b2))アミン化合物(b2-1):トリエタノールアミン((株)日本触媒製)アミン化合物(b2-2):トリエチレンジアミン(商品名:TEDA-L33、東ソー(株)製)【0067】(イソシアネート化合物)イソシアネート化合物1:ポリメリックMDI(商品名:フォームライトNE2000B、BASF INOACポリウレタン(株)製)・・・略・・・【0068】<A剤およびB剤の調製>(A)成分からなる液をA剤、(B)成分からなる液をB剤とし、表1記載の配合に従い原料を適宜混合することにより、A剤およびB剤をそれぞれ調製した。【0069】(粘度)A剤およびB剤について、JIS K-7117-1に準じ、BL型粘度計(東機産業(株)製)にて、25℃における粘度(mPa・Sec)を測定した。【0070】<硬化物の評価>(ゲルタイム)表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤およびB剤の温度をいずれも20℃とした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し、ゲルタイム(硬化が進行し糸引きが始まる時間)を測定した。【0071】(発泡反応性・発泡倍率)表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤にのみ、A剤100質量部に対して1質量部の水を加えた。該A剤およびB剤の温度をいずれも20℃とした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し、発泡開始時間および発泡終了時間を測定した。硬化反応終了後、硬化物の体積を、原料たるA剤およびB剤の最初の体積で除することにより、発泡倍率を算出した。【0072】(圧縮強度)表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。該A剤およびB剤の温度をいずれも20℃とした後、該A剤およびB剤をハンドミキシングにより混合し硬化物を得た。該硬化物から、10mm×10mm×10mmの試験片を切り出し、JIS A 9511に準拠して、インストロン万能試験機で測定した。【0073】<水中白濁試験>表1記載の配合に従い調製したA剤およびB剤を、表1に記載の混合比で、合計30gとなるように別々に調製した。A剤およびB剤をいずれも20℃とした後、調整したA剤およびB剤を10秒間ハンドミキシングにより混合し、次いで、該混合物を速やかに300gの水を入れた容器に投入した。該容器に蓋をし、A剤およびB剤の混合開始から30秒後に、該容器全体を激しく上下に振とうし、10秒間継続した。発泡終了後、容器内から水を採取し、水の濁りを、目視および分光光度計(日立分光光度計U-3900H((株)日立ハイテクノロジーズ製)で測定した500nmにおける光の透過率(%))で測定した。透過率は50%以上であることが好ましい。【0074】結果を表1に示す。【0075】【表1】[図:0001384262000001.jpg]」
2 甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1には、「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからなる、実質的に水を含まない、土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、前記ポリオールが、ポリエーテルポリオール(a1)を含有するものであり、前記アミン化合物が、一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)を含有するものである、土質の安定強化止水用注入薬液組成物。」(請求項1)について、その具体例である実施例14の「土質の安定強化止水用注入薬液組成物」は、表1に示されるように、「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分」(A剤)の「ポリオール」は、「ポリオール(a1-1):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価480mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製)」46.5質量部と「ポリオール(a1-2):プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD400、第一工業製薬(株)製)」46.5質量部とからなり、「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分」の「アミン化合物」である「一級または二級アミノ基を有するアミン化合物(b1)」は、「アミン化合物(b1-1):ジエチルトルエンジアミン(商品名:DETDA80、ロンザジャパン(株)製)」5質量部と、「アミン化合物(b2-2):トリエチレンジアミン(商品名:TEDA-L33、東ソー(株)製)」2質量部からなるものであり、「イソシアネート化合物を含んでなる(B)成分」(B剤)は、「イソシアネート化合物1:ポリメリックMDI(商品名:フォームライトNE2000B、BASF INOACポリウレタン(株)製)」120質量部からなるものである。
そして、同表1には、「ポリオールおよびアミン化合物を含んでなる(A)成分」(A剤)の250℃における粘度は、250mPa・sであることが記載されている。
そうすると、甲1には、実施例14として、
「ポリオール(a1-1):グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価480mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:DKポリオールG480、第一工業製薬(株)製)46.5質量部と、ポリオール(a1-2):プロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加重合した平均水酸基価280mgKOH/gのポリエーテルポリオール(商品名:ハイフレックスD400、第一工業製薬(株)製)」46.5質量部とからなるポリオール、及び、
アミン化合物(b1-1):ジエチルトルエンジアミン(商品名:DETDA80、ロンザジャパン(株)製)5質量部と、
アミン化合物(b2-2):トリエチレンジアミン(商品名:TEDA-L33、東ソー(株)製)」2質量部とからなるアミン化合物を含んでなる(A)成分と、
イソシアネート化合物1:ポリメリックMDI(商品名:フォームライトNE2000B、BASF INOACポリウレタン(株)製)120質量部からなる(B)成分とからなる、実質的に水を含まない、土質の安定強化止水用注入薬液組成物であって、
(A)成分の250℃における粘度は、250mPa・sである土質の安定強化止水用注入薬液組成物」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
3 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「(A)成分」、「(B)成分」及び「土質の安定強化止水用注入薬液組成物」は、本件発明1の「ポリオールを主成分とするA液」、「ポリイソシアネートを主成分とするB液」及び「地盤注入用薬液組成物」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「(A)成分」のうち、「ポリオール(a1-2)」は、プロピレンオキサイドが付加され、水酸基価が280mgKOH/gであるから、本件発明1の「開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオール」に相当する。
また、甲1発明の「(A)成分」の250℃における粘度は250mPa・sであるから、本件発明1の「更にかかるA液が、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものである」点を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とからなる地盤注入用薬液組成物において、前記ポリオールが、開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールを、含有していると共に、更にかかるA液が、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものである地盤注入用薬液組成物」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点)
A液について、本件発明1は、「開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオール」の含有量が、90質量%以上の割合であって、金属触媒を含有しているのに対し、甲1発明の「(A)成分」は、該ポリエーテルポリオールの含有量が46.5質量部(=50質量%(=46.5質量部/(46.5質量部+46.5質量部)×100))であって、90質量%以上ではなく、しかも、金属触媒を含有していない点。
ここで、上記相違点について検討する。
本件発明1においては、「A液が、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものである」点を前提とするところ、申立人が示したいずれの文献(甲2~甲4)にも、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものであって、開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールの含有量が、90質量%以上の割合であって、金属触媒を含有している液体については、記載も示唆もされていない。
また、甲1発明において、ポリエーテルポリオールの含有比率が変わることによって粘度が変化することは明らかであり、甲1発明のポリエーテルポリオール(a1-2)の含有比率を、本件発明1のように変更した場合に、「25℃において205~500mPa・sの粘度を有するもの」となるかどうかは明らかではないことから、上記相違点に係る発明特定事項を備えることを当業者が容易になし得るものであるということはできない。
そして、本件発明1においては、上記相違点に係る発明特定事項を有する「A液」を用いることで、本件明細書の【0009】に記載されたような、「(1)薬液組成物を地盤に注入するときに、水と接触しても、水が白濁することなく、有利に施工することが出来る。(2)薬液組成物が水に希釈されて、流出することが、効果的に防止されることとなるために、水質汚染が防止される。」といった、格別顕著な作用効果を奏するものであり、その作用効果は、実施例3~5によって確認されている。
なお、申立人が主張するように、相違点について、相違点1として、開始剤に付加されたアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであり、且つ水酸基価が30~300mgKOH/gであるポリエーテルポリオールの含有量が、90質量%以上の割合であるのに対し、甲1発明の「(A)成分」は、当該含有量が90質量%以上ではない点、相違点2として、本件発明の「A液」は、金属触媒を含有しているのに対し、甲1発明の「(A)成分」は、金属触媒を含有していない点、と2つの相違点に分離することができたとしても、本件発明1においては、「A液が、25℃において205~500mPa・sの粘度を有するものである」点を前提とすることには変わりがなく、上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
(まとめ)
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)本件発明2~12について
本件発明2~12は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)で述べたとおり、申立人の申立理由には、理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-701108