特許異議申立
2021-701061
車両用ライトスイッチ及び車両用ライトシステム
- 審判番号
- 2021-701061
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-512278
- 登録番号
- 6869424
- 請求日
- 2021年11月10日
- 審決日
- 2023年04月18日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】本田技研工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】松本 征二
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 鈴木 充
- 審判官 山本 信平
- 分類
- P1652.121-YAA(B60Q) / P1652.537-YAA(B60Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6869424号発明「車両用ライトスイッチ及び車両用ライトシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6869424号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし13〕について訂正することを認める。
特許第6869424号の請求項1ないし4及び7ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6869424号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)4月3日(優先権主張 平成30年4月6日、平成31年3月28日(JP)日本国)を国際出願日とするものであって、令和3年4月15日にその特許権の設定登録がされ、令和3年5月12日に特許掲載公報が発行され、令和3年11月10日に特許異議申立人松本征二(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1ないし4及び7ないし13に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年2月8日付け(発送日:同年2月17日) 取消理由の通知
令和4年4月18日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
令和4年6月7日 特許異議申立人より意見書の提出
令和4年6月30日(発送日:同年7月6日) 訂正拒絶理由の通知
令和4年8月4日 特許権者より意見書の提出
令和4年10月13日(発送日:同年10月19日) 取消理由(決定の予告)の通知
令和4年12月16日 特許権者より意見書及び訂正請求書の提出
令和5年2月13日 特許異議申立人より意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者が令和4年12月16日付けの訂正請求書(以下「訂正請求書」という。)によりした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)は、特許第6869424号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置及びスモール位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備えることを特徴とする車両用ライトスイッチ。」
と記載されているのを、
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さいことを特徴とする車両用ライトスイッチ。」
に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2ないし4及び7ないし13も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記ポジションとしてヘッドライト位置を有していて、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。」
と記載されているのを、
「前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。」
に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項7ないし13も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「前記ポジションとしてヘッドライト位置を有していて、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。」
と記載されているのを、
「前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。」
に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項7ないし13も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重と、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重とは異なることを特徴とする請求項3に記載の車両用ライトスイッチ。」
と記載されているのを、
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、OFF位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記OFF位置は、ロービーム及び前記ポジションライトを全て消灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記機構は、前記ポジションを前記OFF位置に回転させると、当該ポジションを前記オート位置に戻し、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができ、
前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重と、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重とは異なることを特徴とする車両用ライトスイッチ。」
に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項7ないし13も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重より大きいことを特徴とする請求項3に記載の車両用ライトスイッチ。」
と記載されているのを、
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、OFF位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記OFF位置は、ロービーム及び前記ポジションライトを全て消灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記機構は、前記ポジションを前記OFF位置に回転させると、当該ポジションを前記オート位置に戻し、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができ、
前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重より大きいことを特徴とする車両用ライトスイッチ。」
に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7ないし13も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
明細書の段落【0008】に
「本発明の車両用ライトスイッチは、回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、前記ポジションとしてオート位置及びスモール位置を備え、前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、前記スモール位置は、前記ポジションライトを点灯させる前記ポジションであって、前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備えることを特徴とする。」
と記載されているのを、
「本発明の車両用ライトスイッチは、回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、及びヘッドライト位置を備え、前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、前記スモール位置は、ロービームを消灯し、前記ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さいことを特徴とする。」
に訂正する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし13について、請求項2ないし13は、請求項1を直接又は間接的に引用している。したがって、請求項2ないし13は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1ないし13に対応する訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項である「前記ポジションとしてオート位置及びスモール位置を備え、」を、訂正後に「前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、及びヘッドライト位置を備え、」とすることで、「ポジション」として「ヘッドライト位置」も備えることを特定し、訂正前の請求項1の発明特定事項である「前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであって、」を、訂正後に「前記スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、」とすることで、「スモール位置」が「ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる」ポジションであることを特定するようにしたものである。
また、訂正後の請求項1に「前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、」及び「前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」という発明特定事項を付加して限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アの理由からも明らかなように、発明のカテゴリや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0012】、【0017】及び【0034】並びに図1、4及び6に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項3には「前記ポジションとしてヘッドライト位置を有していて、前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、」という事項が含まれていたが、当該事項は、訂正後の請求項1に含まれている。そこで、訂正後の請求項1を間接的に引用している訂正後の請求項3では、当該事項の記載を省略するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正後の請求項3と、その引用先である訂正後の請求項1との間で記載を整合させるための形式的な訂正であり、カテゴリや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、訂正後の請求項3と、その引用先である訂正後の請求項1との間で記載を整合させるための形式的な訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正前の請求項4には、「前記ポジションとしてヘッドライト位置を有していて、前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、」という事項が含まれていたが、上記事項は、訂正後の請求項1に含まれている。そこで、訂正後の請求項1を間接的に引用している訂正後の請求項4では、上記事項の記載を省略するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、訂正後の請求項4と、その引用先である訂正後の請求項1との間で記載を整合させるための形式的な訂正であり、カテゴリや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、訂正後の請求項4と、その引用先である訂正後の請求項1との間で記載を整合させるための形式的な訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載が、訂正前の請求項3を引用する形式であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
訂正事項4は特許異議申立がされていない請求項5についての訂正であるが、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項6の記載が、訂正前の請求項3を引用する形式であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるための訂正であるから、、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであること
訂正事項5は、特許異議申立がされていない請求項6についての訂正であるが、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲と明細書の記載とを整合させるための訂正であるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、カテゴリや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0012】、【0017】及び【0034】並びに図1、4及び6に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 明細書の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項6によって訂正された明細書の段落【0008】は、訂正後の請求項1に対応する記載になっている。
そして、上記1(7)で述べたように、訂正前の請求項1ないし13に対応する訂正後の請求項1ないし13は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」である。したがって、訂正後の請求項1ないし13が、訂正事項6による明細書の訂正と関係する請求項である。
よって、訂正事項6は、明細書の訂正と関係する請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正請求による訂正が認められるので、本件の請求項1ないし13に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さいことを特徴とする車両用ライトスイッチ。
【請求項2】
前記ポジションとしてOFF位置を有していて、
前記OFF位置は、ロービーム及び前記ポジションライトを全て消灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記機構は、前記ポジションを前記OFF位置に回転させると、当該ポジションを前記オート位置に戻すことを特徴とする請求項1に記載の車両用ライトスイッチ。
【請求項3】
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。
【請求項4】
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記ヘッドライト位置に切り換えることができることを特徴とする請求項2に記載の車両用ライトスイッチ。
【請求項5】
回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、OFF位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記OFF位置は、ロービーム及び前記ポジションライトを全て消灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記機構は、前記ポジションを前記OFF位置に回転させると、当該ポジションを前記オート位置に戻し、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができ、
前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重と、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重とは異なることを特徴とする車両用ライトスイッチ。
【請求項6】
回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるコンビネーションスイッチからなる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、OFF位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記OFF位置は、ロービーム及び前記ポジションライトを全て消灯する前記モードを設定する前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、
前記機構は、前記ポジションを前記OFF位置に回転させると、当該ポジションを前記オート位置に戻し、
前記ポジションを前記オート位置から一方向に回転することで前記スモール位置、その次に前記OFF位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記ヘッドライト位置に切り換えることができ、
前記オート位置から前記OFF位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重より大きいことを特徴とする車両用ライトスイッチ。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6の何れかの一項に記載の車両用ライトスイッチと、
前記ポジションが前記オート位置にあるときに車外の明るさを検出する光センサが所定値未満の明るさを検出したときは、車両の車速を検出する車速センサの検出した車速に基づいて前記車両が所定速度未満にあると判断し且つ前記ポジションを前記スモール位置に移動させる操作があると、前記ロービームを消灯して前記ポジションライトの点灯を維持し、その後、前記車速センサの検出した車速が所定速度以上になると前記ロービームを点灯する第1ライト制御部とを備えることを特徴とする車両用ライトシステム。
【請求項8】
請求項2乃至請求項6の何れかの一項に記載の車両用ライトスイッチと、
前記ポジションが前記オート位置にあるときに車外の明るさを検出する光センサが所定値未満の明るさを検出したときは、車両の車速を検出する車速センサの検出した車速が所定速度以上であり且つ前記ポジションを前記スモール位置に移動させる操作があると、前記ロービーム及び前記ポジションライトの点灯を維持する第2ライト制御部とを備えることを特徴とする車両用ライトシステム。
【請求項9】
フットブレーキ、サイドブレーキ、ブレーキホールド及びパーキングレンジのスイッチ中の少なくともひとつのオン、オフ情報を検出するスイッチセンサを備え、
前記第1ライト制御部は、前記車速センサの検出した車速が所定速度未満にあること、且つ前記スイッチのうちの少なくともひとつがオンであることに基づいて前記ロービームを消灯することを特徴とする請求項7に記載の車両用ライトシステム。
【請求項10】
前記第1ライト制御部は、前記スイッチセンサで前記スイッチの全てがオフであるときは、前記ロービームを点灯することを特徴とする請求項9に記載の車両用ライトシステム。
【請求項11】
フットブレーキ、サイドブレーキ、ブレーキホールド及びパーキングレンジのスイッチ中の少なくともひとつのオン、オフ情報を検出するスイッチセンサを備え、
前記第2ライト制御部は、前記スイッチセンサで前記スイッチの全てがオフであるときは、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯することを特徴とする請求項8に記載の車両用ライトシステム。
【請求項12】
前記第1ライト制御部は、前記車速センサ又は前記スイッチセンサの故障を検知したときは前記ロービームを点灯し、前記ポジションを前記OFF位置又は前記スモール位置に回転させても当該ロービームの点灯を維持することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の車両用ライトシステム。
【請求項13】
前記第2ライト制御部は、前記車速センサ又は前記スイッチセンサの故障を検知したときは前記ロービームを点灯し、前記ポジションを前記OFF位置又は前記スモール位置に回転させても当該ロービームの点灯を維持することを特徴とする請求項11に記載の車両用ライトシステム。」
第4 取消理由の概要
当審が令和4年2月8日付け取消理由通知書及び令和4年10月13日付け取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消理由(以下、これらを総称して「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。
取消理由1.(進歩性)本件特許の請求項1ないし4及び7ないし13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4及び7ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2.(サポート要件)本件特許出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:General Motors LLC., 2011 Chevrolet Camaro Owner Manual,2011年,p.6-1~6-8(特許異議申立人が示した甲第5号証)
引用文献2:実公昭59-25708号公報(特許異議申立人が示した甲第2号証)
引用文献3:特開2002-2370号公報(特許異議申立人が示した甲第6号証)
引用文献4:特開2014-53087号公報(特許異議申立人が示した甲第3号証、周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2010-105614号公報(特許異議申立人が示した甲第4号証、周知技術を示す文献)
第5 引用文献に記載の発明及び記載事項等
1 引用文献1
取消理由通知において引用された引用文献1(General Motors LLC., 2011 Chevrolet Camaro Owner Manual(訳:ゼネラルモーターズ合同会社,2011モデル シボレーカマロ オーナーマニュアル);甲第5号証)には、以下の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。
(1)「The exterior lamps control has four positions:
(Off): Briefly turn to this position to turn the automatic light control off or on again. When released, the control returns to the AUTO position.
AUTO (Automatic): Turns the headlamps on automatically at normal brightness, together with the following:
・Parking Lamps
・Tail lamps
・Sidemarker Lamps
・License Plate Lamps
・Instrument Panel Lights」(6-1頁右欄 1ないし16行)
〔訳〕
「外部ランプコントロールには4つのポジションがあります。
(オフ):一旦この位置に回して、自動ライトコントロールをオフまたは再びオンにします。離すと、コントロールはオート位置に戻ります。
オート(自動):下記に示すランプと共に、ヘッドランプを通常の明るさで自動的に点灯します。
・パーキングランプ
・テールランプ
・サイドマーカーランプ
・ライセンスプレートランプ
・インストルメントパネルライト」
(2)「(Parking Lamps): Turns the parking lamps on together with the following:
・Tail lamps
・Sidemarker Lamps
・License Plate Lamps
・Instrument Panel Lights」(6-2頁左欄 1行~7行)
〔訳〕
「(パーキングランプ):下記と共に、パーキングランプを点灯します。
・テールランプ
・サイドマーカーランプ
・ライセンスプレートランプ
・インストルメントパネルライト」
(3)「(Headlamps): Turns the headlamps on together with the lamps listed below.
・Parking Lamps
・Tail lamps
・Sidemarker Lamps
・License Plate Lamps
・Instrument Panel Lights」(6-2頁左欄 12行~19行)
〔訳〕
「(ヘッドランプ):以下のランプと共に、ヘッドランプを点灯します。
・パーキングランプ
・テールランプ
・サイドマーカーランプ
・ライセンスプレートランプ
・インストルメントパネルライト」
(4)「Automatic Headlamp System
When it is dark enough outside and the headlamp switch is in AUTO, the automatic headlamp system will turn on the headlamps at the normal brightness along with other lamps such as the tail lamps, sidemarker, parking lamps, license plate lamps, and the instrument panel lights.
The radio lights will also be dim.
To turn off the automatic headlamp system, turn the exterior lamps switch to the off position and then release. For vehicles first sold in Canada, the transmission must be in the P (Park) position, before the automatic headlamp system can be turned off.」(6-4頁左欄 1行~19行)
〔訳〕
「自動ヘッドランプシステム
外が十分に暗く、ヘッドランプスイッチがオートの場合、自動ヘッドランプシステムは、テールランプ、サイドマーカー、パーキングランプ、ライセンスプレートランプ、インストルメントパネルライトなどの他のランプとともに、通常の明るさでヘッドランプをオンにします。ラジオのライトも暗くなります。
自動ヘッドランプシステムをオフにするには、外部ランプスイッチをオフの位置に回してから離します。カナダで最初に販売された車両の場合、自動ヘッドランプシステムをオフにする前に、トランスミッションをP(駐車)位置にする必要があります。」
(5)6-1頁には、次の図面がある。
[図:0001399319000001.jpg]
(6)上記(1)ないし(4)を参照すると、上記(5)の図面から、ヘッドランプスイッチは、ポジションをオート位置から一方向に回転することでオフ位置に切り換えることができ、前記オート位置から他方向に回転することでパーキングランプ位置、その次にヘッドランプ位置に切り換えることができることが看取できる。
上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができるヘッドランプスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、パーキングランプ位置、オフ位置及びヘッドランプ位置を備え、
前記オート位置は、外が十分に暗い場合、テールランプ、サイドマーカー、パーキングランプ、ライセンスプレートランプ、インストルメントパネルライトなどの他のランプとともに、通常の明るさでヘッドランプをオンにするポジションであり、
前記パーキングランプ位置は、パーキングランプとともにテールランプ、サイドマーカーランプ、ライセンスプレートランプ及びインスツルメントパネルランプを点灯させるポジションであり、
前記ヘッドランプ位置は、パーキングランプ、テールランプ、サイドマーカーランプ、ライセンスプレートランプ及びインストルメントパネルライトと共に、ヘッドランプを点灯させるポジションであり、
前記オフ位置は、自動ライトコントロールをオフ又は再びオンにするポジションであり、
前記ヘッドランプスイッチを前記オフ位置に回してから離すと、オート位置に戻り、
自動ライトコントロールをオフにするには、その前に、トランスミッションをP(駐車)位置にする必要があり、
前記ポジションをオート位置から一方向に回転することで前記オフ位置に切り換えることができて、前記オート位置から他方向に回転することで前記パーキングランプ位置、その次に前記ヘッドランプ位置に切り換えることができるヘッドランプスイッチ。」
第6 当審の判断
1 取消理由1についての判断
以下、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし13に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明4」及び「本件発明7」ないし「本件発明13」という。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「ヘッドランプスイッチ」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「車両用ライトスイッチ」に相当する。
引用発明の「オート位置は、外が十分に暗い場合、テールランプ、サイドマーカー、パーキングランプ、ライセンスプレートランプ、インストルメントパネルライトなどの他のランプとともに、通常の明るさでヘッドランプをオンにする」態様は、技術常識から、外が明るい場合は、ヘッドランプをオフにすることが明らかであるから、本件発明1の「オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる」態様に相当する。
引用発明の「パーキングランプ」、「テールランプ」及び「サイドマーカーランプ」は車両の位置を他車両や他人に認識し易くさせるものであることが技術常識であることを踏まえると、本件発明1の「ポジションライト」に相当する。
引用発明の「パーキングランプ位置は、パーキングランプとともにテールランプ、サイドマーカーランプ、ライセンスプレートランプ及びインスツルメントパネルランプを点灯させる」に関して、パーキングランプ位置ではヘッドランプは点灯させない(又はヘッドランプは消灯させる)ことは技術常識から自明であるから、引用発明の「パーキングランプ位置は、パーキングランプとともにテールランプ、サイドマーカーランプ、ライセンスプレートランプ及びインスツルメントパネルランプを点灯させる」態様は、本件発明1の「スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる」態様に相当する。
引用発明における「ヘッドランプ位置は、パーキングランプ、テールランプ、サイドマーカーランプ、ライセンスプレートランプ及びインストルメントパネルライトと共に、ヘッドランプを点灯させる」態様は、本件発明1における「ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する」態様に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
〔一致点〕
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置、スモール位置、及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションである、
車両用ライトスイッチ。」
〔相違点1〕
本件発明1においては、「コンビネーションスイッチからなる」車両用ライトスイッチであるのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。
〔相違点2〕
本件発明1においては、「前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」のに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項のうち「オート位置からスモール位置へ回転させるための操作荷重は、オート位置からヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」との事項は、取消理由通知において引用された引用文献2ないし5には記載も示唆もされていない。また、特許異議申立人が提出したが、取消理由通知においては引用されなかった甲第1号証、甲第7号証及び甲第8号証にも記載も示唆もされていない。
さらに、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項が、設計的事項又は周知の技術であるという根拠も証拠もない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和5年2月13日の意見書において、次のように主張している。
(ア)「車両用ライトスイッチにおいて、ポジションの操作時(スイッチの回転時)に節度感(クリック感)を付与するため、節度機構(クリック機構)を採用することは、周知技術である。また、節度感を付与するために、付勢部材に付勢されたボールが、節度プレート等の谷(孔)および山(摺動面)を移動する構成(節度機構)を採用することも周知技術である。(たとえば、実公平1-28606号公報(参考資料3)、特開2011-210598号公報(参考資料4)、および特開2012-221665号公報(参考資料5)を参照。なお、各参考資料において、下線部は、特許異議申立人が付した。)
したがって、車両用ライトスイッチにおいて、ポジションの操作時(スイッチの回転時)に節度感を付与するため、節度機構(クリック機構)を採用することは、当業者が適宜選択し得る設計事項である。また、節度機構の構成上、ポジションの操作時に、操作荷重が一旦大きくなりその後小さくなる「荷重-変位線図」は、節度機構が当然有する機能である。
参考図1の領域β(スモール位置からヘッドライト位置への回転時)において、操作荷重が一旦大きくなりその後小さくなっている。この構成(領域βの荷重-変位線図)は、スモール位置からヘッドライト位置にポジションを操作する際、節度感を付与するために必要な構成である。
したがって、「ポジションをスモール位置に回転させると、ポジションをオート位置に戻す機構」(要件E:モーンメンタリー機構)を有する車両用ライトスイッチにおいて、節度機構を採用し、本件明細書の図6(参考図1)の「荷重-変位線図」で示すよう、「オート位置からスモール位置へ回転させるための操作荷重(モーメンタリー機構による操作荷重)は、オート位置からヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重(オート位置からスモール位置へ操作し、その後スモール位置からヘッドライト位置へ操作する際の節度感を付与する荷重)よりも小さい(要件Z)ように操作荷重を設定することは、当業者にとって設計事項である。」(5ページ)
(イ)「本件特許の優先日以前に公知となった参考資料3(実公平1-28606号公報)には、「車両用ライトスイッチにおいて、節度プレート22に、標識OFFに対応する節度孔38と標識UPに対応する節度孔40の間に節度山42を設けることによって、標識OFF位置から標識UP位置への操作力より、標識OFF位置から標識LO位置への操作力を小さくすること」が記載されています。(たとえば、第4段落21行~26行、第5段落5行~10行参照)
したがって、本件特許の優先日以前に、「車両用ライトスイッチのポジション(位置)に応じて、異なる操作荷重を設定すること」は公知であった。」(6ないし7ページ)
(ウ)「公知技術である「車両用ライトスイッチのポジション(位置)に応じて、異なる操作荷重を設定すること」を採用して、訂正後の請求項1の要件Zのように、「オート位置からスモール位置へ回転させるための操作荷重を、前オート位置からヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さく設定すること」は、当業者にとって何ら困難性はない。」(7ページ)
上記主張について検討する。
上記(ア)で主張するように、車両用ライトスイッチにおいて、ポジションの操作時(スイッチの回転時)に節度感(クリック感)を付与するため、節度機構(クリック機構)を採用することは周知技術であることを考慮したとしても、引用発明において、節度機構(クリック機構)を採用する必然性は存在しない。
そして、本件発明1は「前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」という、引用文献2ないし5のいずれにも記載されていない事項により、運転者が車両用ライトスイッチを操作してオート位置からスモール位置へ回転させる際の操作荷重をオート位置からヘッドライト位置への操作荷重よりも小さくすることで、オート位置からスモール位置へ回転させる際の操作性を高めることができるとともにオート位置からヘッドライト位置に容易に切り替わらないようにできるという、本件明細書段落【0038】の記載事項に示唆される作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、単に周知技術を適用したに過ぎないものであるとも、当業者が適宜なし得た設計的事項であるともいうことはできない。
また、上記(イ)及び(ウ)で主張するように「車両用ライトスイッチのポジション(位置)に応じて、異なる操作荷重を設定すること」が本件特許の優先日以前に公知の技術であったとしても、その根拠として示した参考資料3に記載されているのは、標識OFF位置から標識LO位置への操作荷重を、標識OFF位置から標識UP位置への操作荷重よりも小さくするもののみであって、引用発明において、オート位置からスモール位置へ回転させるための操作荷重を、オート位置からヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さいものとすることは、当業者が容易に想到できたものであるとする証拠にはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
以上によれば、引用発明において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、引用文献2ないし5に記載された発明、甲第1、7及び8号証に記載された発明並びに特許異議申立人が主張する周知技術及び同公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2ないし4及び7ないし13について
本件発明2ないし4及び7ないし13は、本件発明1の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本件発明2ないし4及び7ないし13は、引用発明、引用文献2ないし5に記載された発明、甲第1、7及び8号証に記載された発明並びに特許異議申立人が主張する周知技術及び同公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由2についての判断
発明の詳細な説明の段落【0023】ないし【0024】等の記載から、特許権者が令和4年12月16日の意見書において主張するように、本件発明1は、ポジションをスモール位置に回転させると、ポジションをオート位置に戻す「機構」を車両用ライトスイッチが備えているため(訂正後の請求項1:第6段落)、この「機構」によりスモール位置からオート位置に戻ったときのポジション等に基づき、例えば、周囲が暗いときに車両が走行する際には、制御側(車両用ライトスイッチのポジション等に基づいてライトを制御するシステム側)でヘッドライトを点灯させるといったことが可能になるという作用効果が奏されるため、本件特許の課題(明細書の段落0007)が解決されることは明らかである。
そうすると、本件発明1により、本件特許の課題(発明の詳細な説明の段落【0007】)が解決できることは、当業者であれば認識できる。
したがって、本件発明1及び本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、第1の申立理由(進歩性)として、本件発明1ないし4及び7ないし13は、甲第1号証に記載された発明と甲第2~4、6~8号証とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができない旨主張している(特許異議申立書36ないし51ページ及び61ページ)ので、これについて検討する。
<証拠一覧>
甲第1号証:米国特許出願公開第2015/0035435号明細書
甲第2号証:実公昭59-25708号公報(取消理由通知における引用文献2)
甲第3号証:特開2014-53087号公報(取消理由通知における引用文献4)
甲第4号証:特開2010-105614号公報(取消理由通知における引用文献5)
甲第5号証:General Motors LLC., 2011 Chevrolet Camaro Owner Manual,2011年,p.6-1~6-8(取消理由通知における引用文献1)
甲第6号証:特開2002-2370号公報(取消理由通知における引用文献3)
甲第7号証:特開2000-16162号公報
甲第8号証:特開昭60-1048号公報
(以下、「甲第1号証」ないし「甲第8号証」を、「甲1」ないし「甲8」という。)
なお、第1の申立理由においては、甲第5号証は用いられていないが、ここでは列挙している。
1 証拠に記載された事項
(1)甲第1号証
甲1には、次の事項が記載されている。
ア 「[0002] The invention relates to a light switch unit and to a method for controlling the exterior lighting of a motor vehicle.」
訳:
「[0002] 本発明は、ライトスイッチユニットおよび自動車の外部照明を制御するための方法に関する。」
イ 「[0014] the actuator returning automatically, after the movement into the at least one deflected position, to the home position after which the lighting mode which is assigned to the respective deflected position initially remains activated.」
訳:
「[0014] アクチュエータは、少なくとも1つの偏向位置に移動した後、自動的にホーム位置に戻り、その後、それぞれの偏向位置に最初に割り当てられた照明モードがアクティブ化されたままである。」
ウ 「[0015] In the light switch disclosed herein it is ensured that the actuator is in its home position whenever it is not actively being moved by a vehicle occupant/driver. In this context, the lighting mode assigned to this home position may be the “auto” mode in which vehicle lights are automatically switched on and off as a function of the ambient brightness. This makes it possible that after each time the vehicle electrical system or the ignition have been switched on the exterior lighting control unit (ELCU) of the motor vehicle initially activates the “auto” mode.」
訳:
「本明細書に開示されるライトスイッチでは、アクチュエータが車両の乗員/運転者によって能動的に動かされていないときはいつでも、アクチュエータがそのホーム位置にあることが保証される。これに関連して、このホーム位置に割り当てられた照明モードは、周囲の明るさに応じて車両のライトが自動的にONとOFFに切り替わる「オート」モードであってよい。これにより、車両の電子機器またはイグニッションがオンになるたびに、自動車の外部照明制御ユニット(ELCU)が最初に「オート」モードをアクティブにすることが可能になる。」
エ 「[0029] According to one embodiment, the lighting mode which is assigned to the home position is a “auto light” lighting mode in which vehicle lights of the motor vehicle are automatically switched on and off as a function of the ambient brightness.」
訳:
「[0029] 一実施形態によれば、ホーム位置に割り当てられる照明モードは、自動車の車両照明が周囲の明るさに応じて自動的にONおよびOFFに切り替わる「オートライト」照明モードである。」
オ 「[0039] According to FIG.1, a light switch unit 10 for use in a headlight control system has, in a first embodiment of the invention, a rotary actuator 11 which has three different rotational positions, these rotational positions comprising a home position 16 (center position), a first deflected position 12 (which can lie, for example, to the left of the center position or home position 16, and in the exemplary embodiment forms the “headlights OFF” corresponding to a state of the motor vehicle with switched-off headlights), and a second deflected position 14 (in the example the “on position” corresponding to the headlight lighting mode, in the exemplary embodiment to the right of the center position or home position 16).」
訳
「[0039] 図1に示すように、ヘッドライト制御システムで使用するライトスイッチユニット10は、本発明の第1の実施形態において、3つの異なる回転ポジションを有する回転アクチュエータ11を有し、これらの回転ポジションは、第1のホーム位置16(中心位置)、第1の偏向位置12(たとえば、中心位置またはホーム位置16の左側に位置し、例示的な実施形態では、ヘッドライトがオフになっている自動車の状態に対応する「ヘッドライトOFF」を形成する)、および第2の偏向位置14(例示的な実施形態では、中心位置またはホーム位置16の右側に位置し、たとえば、ヘッドライト照明モードに対応する「ON位置」)を含む。」
カ 「[0040] The light switch unit 10 further has mode indicators 13, 15 and 17 which are assigned to the counter-clockwise rotated position 12, the clockwise rotated position 14, and the home position 16 (and therefore to the corresponding lighting modes associated with the three positions), respectively. In particular, in this context illumination of the mode indicator 17 signals that the “auto light” mode is activated. In this context, the ELCU causes the mode indicator 17 to light whenever the headlights are controlled on the basis of the brightness conditions of the surroundings. Whenever the driver uses the rotary actuator 11 to change manually the current status of the exterior lighting or to deactivate the automatic presetting, the mode indicator 17 is switched off.」
訳:
「[0040] ライトスイッチユニット10は、反時計回りに回転した位置12、時計回りに回転した位置14、およびホーム位置16に(したがって、3つの位置に関連する対応する照明モードに)それぞれ割り当てられるモードインジケータ13、15および17をさらに有する。特に、この文脈では、モードインジケータ17の照明が、「オートライト」モードが起動されていることを知らせる。この文脈では、ELCUは、周囲の明るさ条件に基づいてヘッドライトが制御されるたびに、モードインジケータ17を点灯させる。運転者が回転アクチュエータ11を使用して、外装照明の現在の状態を手動で変更したり、自動プリセットを解除したりすると、モードインジケータ17は消灯される。」
キ 「[0041] The rotary actuator 11 which is rotated into one of the deflected positions in order to activate the respective lighting mode (for example headlights ON) returns to the home position after the actuator is released, and the lighting mode assigned to the deflected position initially selected remaining activated. On the other hand, when the vehicle electronics are initially switched on after having been de-energized for some period of time the lighting mode assigned to the home position 16 is activated automatically.」
訳:
「それぞれの照明モード(例えばヘッドライトON)を作動させるために偏向位置の1つに回転された回転アクチュエータ11は、アクチュエータが解放された後にホーム位置に戻り、最初に選択された偏向位置に割り当てられた照明モードが作動したままになる。一方、ある期間非電源化された後に車両電子機器が最初にスイッチオンされると、ホーム位置16に割り当てられた照明モードが自動的にアクティブ化される。」
ク 「[0042]According to the embodiment in FIG. 1, the automatic lighting mode can be reactivated (after having been previously deactivated) by rotating the rotary actuator 11 into its second deflected position 14 and holding the actuator at the second deflected position for a period of time that is somewhat longer than is required to activate the headlight-on mode. This function may be indicated by the words “ON/AUTO” being associated with the second deflected position 14 and/or the mode indicator 15, meaning that turning the actuator to the second deflected position can result in selection of either the headlight-on mode or the automatic mode, depending upon the length of time the actuator is held in the deflected position.」
訳:
「図1の実施形態によれば、自動照明モードは、回転アクチュエータ11をその第2の偏向位置14に回転させ、ヘッドライト点灯モードを起動するのに必要な時間よりも幾分長い時間、アクチュエータを第2の偏向位置で保持することによって(以前に非アクティブ化した後に)再アクティブ化することができる。この機能は、「ON/AUTO」という言葉が第2の偏向位置14及び/又はモード表示器15に関連付けられることによって示されることがあり、これは、アクチュエータを第2の偏向位置に回すと、アクチュエータが偏向位置に保持される時間の長さに応じて、ヘッドライトオンモード又は自動モードのいずれかを選択することになることを意味する。」
ケ 「[0043] Activation of the parking or side light occurs in the embodiment in FIG.1 by virtue of the fact that an axial pressure function of the rotary actuator 11 is provided. Whenever the side light or the parking light is required, the respective lighting mode can be activated by using this axial pressure function of the rotary actuator 11. Furthermore, the parking light or the side light is deactivated automatically when the rotary actuator 11 is moved into its counter-clockwise or clockwise rotated position 12 or 14, respectively.」
訳:
「図1の実施形態では、回転アクチュエータ11の軸方向押下機能が提供されることにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動する。サイドライトまたはパーキングライトが必要なときはいつでも、回転アクチュエータ11の軸方向押下機能を使用することによって、それぞれの照明モードをアクティブにすることができる。さらに、回転アクチュエータ11がその反時計回りまたは時計回りに回転した位置12または14にそれぞれ動かされると、パーキングライトまたはサイドライトは自動的に非アクティブ化される。」
コ
[図:0001399319000002.jpg]
上記記載事項及び図面の図示内容によれば、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という)が記載されている。
〔甲1発明〕
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができる回転アクチュエータ11からなるライトスイッチユニット10であって、
前記ポジションとしてホーム位置16、第1の偏向位置12及び第2の偏向位置14を備え、
前記ホーム位置16は、周囲の明るさに応じて車両のライトが自動的にONとOFFに切り替わる「オートライト」照明モードに割り当てられたポジションであり、
第2の偏向位置14は、ヘッドライト照明モードに対応する「ON位置」であり、
回転アクチュエータ11を軸方向に押下することにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動し、
第1の偏向位置12又は第2の偏向位置14に回転された回転アクチュエータ11は、前記回転アクチュエータ11が解放された後にホーム位置16に戻る、
ライトスイッチユニット10。」
2 対比、判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ライトスイッチユニット10」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1の「車両用ライトスイッチ」に相当し、以下同様に、「ホーム位置16」は「オート位置」に、「第2の偏向位置14」は「ヘッドライト位置」に、「周囲の明るさに応じて車両のライトが自動的にONとOFFに切り替わる「オートライト」照明モードに割り当てられたポジション」は「車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジション」に、「ヘッドライト照明モードに対応する「ON位置」」は「前記ロービーム及び前記ポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジション」に、「パーキングライトまたはサイドライト」は「ポジションライト」に、それぞれ相当する。
甲1発明における「回転アクチュエータ11を軸方向に押下することにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動する」ことと、本件発明1における「ポジション」として「スモール位置」を備え、「スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジションであ」ることとは、「ポジションライトを作動させる操作がある」ことという限りにおいて一致する。
甲1発明における「第1の偏向位置12又は第2の偏向位置14に回転された回転アクチュエータ11は、前記回転アクチュエータ11が解放された後にホーム位置16に戻る」ことと、本件発明1における「前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え」ることとは、「前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え」ること、という限りにおいて一致している。
〔一致点〕
「回転によりポジションを変更することで外部を照らすライトのモードを切り換えることができる車両用ライトスイッチであって、
前記ポジションとしてオート位置及びヘッドライト位置を備え、
前記オート位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させる前記ポジションであり、
前記ヘッドライト位置は、ロービーム及びポジションライトを点灯する前記モードを設定する前記ポジションであって、
前記ポジションライトを作動させる操作があり、
前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備える、
車両用ライトスイッチ。」
〔相違点a〕
本件発明1においては「コンビネーションスイッチからなる」車両用ライトスイッチであるのに対して、甲1発明においては、回転アクチュエータ11からなるライトスイッチユニット10であって、「コンビネーションスイッチからなる」との事項を備えていない点。
〔相違点b〕
本件発明1においては、「回転」により「変更」される「ポジション」として「スモール位置」を備え、「スモール位置は、ロービームを消灯し、ポジションライトを点灯させる前記ポジション」であり、「前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構を備え、前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」ものであるのに対して、甲1発明においては、回転アクチュエータ11を軸方向に押下することにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動するものである点。
事案に鑑み、上記相違点bについて検討する。
甲1発明は、「回転アクチュエータ11を軸方向に押下することにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動する」ものである、すなわち、「回転」により変更される「ポジション」に、パーキングライトまたはサイドライトが作動する位置(スモール位置)は含まれていないのであるから、上記相違点bに係る本件発明1の発明特定事項のうちの「前記ポジションを前記スモール位置に回転させると、前記ポジションを前記オート位置に戻す機構」を採用する余地はない。
「回転」により変更される「ポジション」に「スモール位置」が含まれる車両用ライトスイッチが、公知又は周知であることを考慮したとしても、甲1発明のライトスイッチユニット10を、「回転」により変更される「ポジション」に「スモール位置」が含まれるものとした上で、「ポジションをスモール位置に回転させると、前記ポジションをオート位置に戻す機構」を採用すること、及び「前記オート位置から前記スモール位置へ回転させるための操作荷重は、前記オート位置から前記ヘッドライト位置へ回転させるための操作荷重よりも小さい」ものとすることについては、甲2ないし8に記載された事項から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。
ところで、特許異議申立人は、甲1発明は、「ポジションを、スモール位置に押下すると、ポジションをホーム位置に戻す機構を備える」旨述べている(特許異議申立書37ページ)。
しかしながら、甲1には「回転アクチュエータ11の軸方向押下機能が提供されることにより、パーキングライトまたはサイドライトが作動する。サイドライトまたはパーキングライトが必要なときはいつでも、回転アクチュエータ11の軸方向押下機能を使用することによって、それぞれの照明モードをアクティブにすることができる。さらに、回転アクチュエータ11がその反時計回りまたは時計回りに回転した位置12または14にそれぞれ動かされると、パーキングライトまたはサイドライトは自動的に非アクティブ化される」(段落[0043])との記載はあるものの、回転アクチュエータ11を押下した後に押下した手を離すと、押下前の位置に戻ることまでは記載されておらず、当該記載事項から「ポジションを、スモール位置に押下すると、ポジションをホーム位置に戻す機構を備える」と解することができる根拠はない。
仮に、回転アクチュエータ11を軸方向に押下した後に、押下前の位置に戻ることが自明ないしそのように解することができたとしても、当該記載事項によれば、パーキングライトまたはサイドライトを非アクティブ化するには、回転アクチュエータ11がその反時計回りまたは時計回りに回転した位置12または14にそれぞれ動かされる必要があるから、回転アクチュエータ11を押下した後に戻った位置は、車外の明るさに応じてライトを点灯又は消灯させるポジションであるオート位置に相当するとはいえない。
したがって、特許異議申立人の、甲1発明は「ポジションを、スモール位置に押下すると、ポジションをホーム位置に戻す機構を備える」とした点には根拠がなく、これを前提に、「相違点2」を抽出し、その検討を行っている特許異議申立人の主張(特許異議申立書37ないし38ページ)は、採用できない。
よって、上記相違点aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1ないし8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2ないし4及び7ないし13について
本件発明2ないし4及び7ないし13は、本件発明1の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本件発明2ないし4及び7ないし13は、甲1ないし8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし4及び7ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、請求項1ないし4及び7ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-701061