特許異議申立
2024-701088
散光式警光灯システムおよびそれを備える車両
- 審判番号
- 2024-701088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-028630
- 登録番号
- 7488841
- 請求日
- 2024年11月08日
- 審決日
- 2025年08月25日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社パトライト
- 【権利者代理人】弁理士法人あい特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 大阪サイレン製作所
- 【異議申立人代理人】城村 邦彦
- 【異議申立人代理人】田中 秀佳
- 審判長/審判官
- 審判長 倉橋 紀夫
- 審判官 稲垣 彰彦
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.121-YAA(B60Q) / P1651.536-YAA(B60Q) / P1651.537-YAA(B60Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7488841号発明「散光式警光灯システムおよびそれを備える車両」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7488841号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
特許第7488841号の請求項1~7、9~14に係る特許を維持する。
特許第7488841号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7488841号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和4年2月25日に出願され、令和6年5月14日にその特許権の設定登録がされ、同年5月22日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年11月 8日 :特許異議申立人株式会社大阪サイレン製作
所(以下「申立人」という。)による請求
項1~14に係る特許に対する特許異議の
申立て
同年12月12日 :特許異議申立書及び証拠説明書に対する手
続補正書(方式)の提出
令和7年 2月 3日付け :取消理由通知書
同年 3月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
なお、当審において令和7年4月17日付けで、申立人に対して意見書提出の期間を指定して、同年3月25日提出の訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、
サイレンを吹鳴するサイレン装置と、
前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置と、
前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置と、を含む、散光式警光灯システム。」
と記載されているのを、
「警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、
サイレンを吹鳴するサイレン装置と、
前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置と、
前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置と、を含み、
前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである、散光式警光灯システム。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~7、9~14も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に
「前記光量波形は、前記立ち上がり区間に前記立ち下がり区間が連なり、前記立ち下がり区間に連なり、前記最小光量が維持される最小光量区間をさらに含む、請求項8に記載の散光式警光灯システム。」と記載されているのを、「前記光量波形は、前記立ち上がり区間に前記立ち下がり区間が連なり、前記立ち下がり区間に連なり、前記最小光量が維持される最小光量区間をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」に訂正する。(請求項9を引用する請求項10~14も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に
「前記警告灯ユニット制御装置は、前記モード設定装置によって前記第1モードが設定されると、少なくとも一つの警告灯ユニットから警告光を回転放射する回転照射制御を実行する、請求項1~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」と記載されているのを、「前記警告灯ユニット制御装置は、前記モード設定装置によって前記第1モードが設定されると、少なくとも一つの警告灯ユニットから警告光を回転放射する回転照射制御を実行する、請求項1~7、9~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」に訂正する。(請求項13を引用する請求項14も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。」と記載されているのを、「請求項1~7、9~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、「前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」との記載により、本件訂正前の請求項1の「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」を具体的に特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件訂正前の請求項8の記載及び本件特許の明細書の段落【0017】に基づくものであり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8を削除するというものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項9の「請求項8に記載の散光式警光灯システム。」との記載を「請求項1~7のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」とすることにより、削除された請求項8の引用という不明瞭な状態を解消するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、削除された請求項8を請求項9の記載から削除するためのものであるので、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項13の「請求項1~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」との記載を、「請求項1~7、9~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。」とすることにより、削除された請求項8の引用という不明瞭な状態を解消するもの、及び引用先の請求項の数を減少させるものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもの、及び同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、削除された請求項8を請求項13の記載から削除するものであるので、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項14の「請求項1~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。」との記載を、「請求項1~7、9~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。」とすることにより、削除された請求項8の引用という不明瞭な状態を解消するもの、及び引用先の請求項の数を減少させるものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするもの、及び同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、削除された請求項8を請求項14の記載から削除するものであるので、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は、それぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1~14に対応する本件訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~5に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
前記「第2」で説示したように本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、
サイレンを吹鳴するサイレン装置と、
前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置と、
前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置と、を含み、
前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである、散光式警光灯システム。
【請求項2】
前記ホタル光照射制御は、前記警告灯ユニットの全周方向に対して同時に光を照射する全周同時照射制御を含む、請求項1に記載の散光式警光灯システム。
【請求項3】
前記全周同時照射制御は、前記警告灯ユニットから前記散光式警光灯の中央部の方向を除く全周方向に対して同時に光を照射する制御である、請求項2に記載の散光式警光灯システム。
【請求項4】
前記警告灯ユニットは、第1警告灯ユニットと第2警告灯ユニットとを含み、前記ホタル光照射制御は、前記第1警告灯ユニットおよび前記第2警告灯ユニットの光量を前記光量増減パターンに従って異なる位相で増減させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項5】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量の立ち下がり区間と、前記第2警告灯ユニットの光量の立ち上がり区間とが部分的に重複する、請求項4に記載の散光式警光灯システム。
【請求項6】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量と前記第2警告灯ユニットの光量とが等しくなる交差ポイントにおける当該光量は、前記第1警告灯ユニットまたは前記第2警告灯ユニットの最大光量の50%未満である、請求項5に記載の散光式警光灯システム。
【請求項7】
前記ホタル光照射制御において、前記第1警告灯ユニットの光量が前記最大光量となる時刻から前記交差ポイントまでの第1経過時間が、前記交差ポイントから前記第1警告灯ユニットの光量が最小光量となるまでの第2経過時間よりも長い、請求項6に記載の散光式警光灯システム。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記光量波形は、前記立ち上がり区間に前記立ち下がり区間が連なり、前記立ち下がり区間に連なり、前記最小光量が維持される最小光量区間をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項10】
前記最小光量区間の長さである最小光量時間が、前記立ち上がり時間よりも長く、前記立ち下がり時間よりも短い、請求項9に記載の散光式警光灯システム。
【請求項11】
前記立ち下がり時間は、前記光量波形の1周期のほぼ半分である、請求項9または10に記載の散光式警光灯システム。
【請求項12】
前記立ち下がり時間は、前記立ち上がり時間および前記最小光量時間の和にほぼ等しい、請求項10に記載の散光式警光灯システム。
【請求項13】
前記警告灯ユニット制御装置は、前記モード設定装置によって前記第1モードが設定されると、少なくとも一つの警告灯ユニットから警告光を回転放射する回転照射制御を実行する、請求項1~7、9~12のいずれか一項に記載の散光式警光灯システム。
【請求項14】
請求項1~7、9~13のいずれか一項に記載の散光式警光灯システムを備える車両。」
第4 取消理由通知で通知した取消理由について
本件訂正前の請求項1~7、13及び14に係る特許に対して、当審において令和7年2月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1:(サポート要件)本件特許の請求項1~7、13及び14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2:(明確性要件)本件特許の請求項1~7、13及び14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
1 理由1(サポート要件)について
前記第3で示したように、本件訂正後の請求項1(以下、単に「請求項1」という。)には、「前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置」「を含み、」「前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」との記載がある。
そして、前記記載によって、請求項1に係る発明においては、「警告灯ユニット制御装置」が「実行する」「ホタル光照射制御」の「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」が、「最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」ことが特定されていると認められる。
一方、本件特許の明細書等には、「ホタルの発光」を「模擬」した「光量波形」に関して、段落【0053】~【0054】及び図6の記載があるところ、請求項1の前記記載は、該段落【0053】~【0054】及び図6の記載と整合するものである。
また、本件特許の課題は、本件特許の明細書等の段落【0008】に、「散光式警光灯が照射する光を活動状況の伝達のために利用」することと記載されている。
そして、当該課題、及び、その解決に関して、本件特許の明細書等には、段落【0049】の「すなわち、警告灯ユニット制御装置12は、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って警告灯ユニット4による光照射を制御するホタル光照射制御を実行する。それにより、警告光とは異なる柔和な光が警告灯ユニットから照射される。このような柔和な光は、車両100の存在を明確に表しながら、緊急性または重大性のニュアンスを緩和した情報を周囲の者に視覚を通じて伝達する伝達媒体となり得る。」との記載、段落【0054】の「自然界で観測されるホタルの発光は、急峻に立ち上がり、緩慢に立ち下がる光量波形を有することが知られている(非特許文献1および非特許文献2参照)。これを模擬して、図6に示す光量波形WA,WBの一例は、立ち上がり区間Saの長さである立ち上がり時間Taが、立ち下がり区間Sbの長さである立ち下がり時間Tbよりも短い三角波形状を有している。」及び「このような光量波形WA,WBを用いて警告灯ユニット4を制御することにより、ホタルの発光(明滅)を模擬したホタル光照射を行うことができる。」との記載、段落【0057】の「交差ポイントCPでの光量が大きいと、隣り合う二つの警告灯ユニット4A,4Bが交互に点灯しているような印象の光り方に近くなり、ホタルの光のような余韻のある光り方の印象が少なくなる。」との記載、並びに、段落【0062】の「たとえば、立ち下がり時間Tbは立ち上がり時間Taの約3倍であってもよい。これにより、余韻のある光を看者に視認させることができる。」との記載などに詳述されている(なお、下線は、当審において付与したものである。)。
すなわち、これら各段落の記載から、本件特許の発明の詳細な説明には、緊急性または重大性のニュアンスを緩和した情報を周囲の者に視覚を通じて伝達するという課題を解決するために、ホタルの光の明滅を模擬した、急峻に立ち上がり、緩慢に立ち下がる光量波形を有する光量増減パターンに従って光照射を制御するホタル光照射制御を実行することで、ホタルの光のような余韻のある光を看者に視認させることを可能とする、という課題解決手段が記載されていると認められる。
そうすると、本件発明1の「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」が、「最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」ことは、ホタルの光の明滅を模擬した、急峻に立ち上がり、緩慢に立ち下がる光量波形を有する光量増減パターンに従って光照射を制御するホタル光照射制御を実行しているといえるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された課題解決手段を反映したものであるといえる。
したがって、本件発明1、並びに本件発明1を引用する本件発明2~7及び9~14は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
よって、取消理由1(サポート要件)によって、本件特許の請求項1~7及び9~14に係る特許を取り消すことはできない。
2 理由2(明確性要件)について
前記1で述べたように、請求項1には、「前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する警告灯ユニット制御装置」「を含み、」「前記光量増減パターンは、最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」との記載があり、当該記載によって、請求項1には、「警告灯ユニット制御装置」が「実行する」「ホタル光照射制御」の「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」が、「最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」ことが明確に示されているといえる。
そして、請求項1の前記記載は、本件特許の明細書等の該段落【0053】~【0054】及び図6の記載と矛盾するものでもない。
したがって、本件発明1、並びに本件発明1を引用する本件発明2~7及び9~14は、明確であり、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
よって、取消理由2(明確性)によって、本件特許の請求項1~7及び9~14に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、以下の特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
1 申立理由
(1)請求項1~14に係る発明に関する実施可能要件違反[特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)]
(2)請求項8~12に係る発明に関するサポート要件違反[特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)]
(3)請求項1~14に係る発明の進歩性について[特許法第29条第2項(同法第113条第2号)]
2 申立理由についての検討
(1)申立理由(1)について
ア 申立理由(1)の概要
本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 検討
前記第5の2で述べたように、請求項1の記載においては、「警告灯ユニット制御装置」が「実行する」「ホタル光照射制御」の「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」が、「最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」ことが明確に示されているといえる。
一方、本件特許の明細書等において、「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」による「ホタル光照射制御」については、段落【0052】~【0054】及び図6に、その一例が記載されているところ、段落【0052】の記載では、「ホタル光照射制御」に関して、「警告灯ユニット制御装置12のメモリ12bには、」「ホタル光照射制御を実行するための光量増減パターン(すなわち、光量波形)を表すデータ(光量増減パターンデータ、光量波形データ)が格納され」ること、「光量増減パターンデータ(光量波形データ)は、具体的には、時間経過に伴う光量の増減を表すデータであり、典型的には時系列に従う光量データの列」であること、及び「警告灯ユニット制御装置12のプロセッサ12aは、メモリ12bに格納された光量増減パターンデータ(光量波形データ)を読み出」し、「光量増減パターンデータ(光量波形データ)に基づいて、たとえばPWM制御によって、各警告灯ユニット4の発光部7における複数の光源9を制御」することで、「ホタル光照射が実現される」ことが示されている。
また、段落【0054】及び図6の記載では、「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」に関して、「自然界で観測されるホタルの発光は、急峻に立ち上がり、緩慢に立ち下がる光量波形を有することが知られている」こと、「これを模擬」した「光量波形WA,WBの一例」として、「立ち上がり区間Saの長さである立ち上がり時間Taが、立ち下がり区間Sbの長さである立ち下がり時間Tbよりも短い三角波形状を有」し、「立ち上がり区間Sa、これに連なる立ち下がり区間Sb、およびこれに連なる最小光量区間Scを1周期として、最小光量区間Scに次の周期の立ち上がり区間Saが連なる繰り返しパターン」であって、「最小光量区間Scの長さである最小光量時間Tcは、立ち上がり時間Taよりも長く、立ち下がり時間Tbよりも短」いものが示されている。
そうすると、請求項1においては、「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」は、明確に記載されており、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1において明確に示された「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」を用いた「ホタル光照射制御」の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(2)申立理由(2)について
ア 申立理由(2)の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 検討
前記第5の1で述べたとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであり、当該本件発明1を引用する本件発明9~12も、同様に発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)申立理由(3)について
ア 申立理由(3)の概要
申立理由(3)は、要するに、本件発明1は、本件特許出願前に日本国内において頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到することができたものであり、本件特許発明2~14も、本件特許出願前に日本国内において頒布された甲第1号証~甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものであるから、請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 検討
(ア)提示された証拠
申立人が提示した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2011-121385号公報
甲第2号証:特開2007-294128号公報
甲第3号証:特開2017-222259号公報
甲第4号証:特開2008-171669号公報
甲第6号証:特開平9-306208号公報
甲第7号証:実願平1-89998号(実開平3-30306号)のマイクロフィルム
以下、甲第○号証、甲第○号証に記載された発明を、それぞれ甲○、甲○発明という。
(イ)甲1発明
甲1(特に、段落【0013】~【0022】、【0030】、図5、図6、及び図8参照)には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。なお、括弧内に主な参照箇所を示した。
「中央に配置されたスピーカ室11と、その両側に配置された左右の各灯室12を構成するグローブ体1を有する警告灯WLと、点滅切替スイッチ65が接続された点灯制御装置6を備えた警告灯システムであって(段落【0013】、【0019】、及び図5)、
前記スピーカ室11にはスピーカ2が内蔵され、前記スピーカ2は、警告音スイッチを操作したとき所定の警告音を発音し(段落【0014】)、
前記左右の灯室12にはそれぞれ回転灯ユニット3と点滅灯ユニット4が内装され(段落【0015】)、
前記点灯制御装置6は、前記点滅灯ユニット4の各LED42をそれぞれ点滅発光させるための点滅制御部62を有し(段落【0019】)、
前記点滅制御部62は、前記点滅切替スイッチ65が切り替えられたときに前記各点滅灯ユニット4を警ら又は緊急の各点滅動作させるための点滅パターンをパターン信号として出力し(段落【0021】)、
警らパターンP1は、基準パターンP0のON時の立ち上がり傾き特性とOFF時の立ち下がり傾き特性をそれぞれ緩和させたパルス形状であり、点滅を開始する際には、最小光度Lm1に達するまでは急峻な立ち上がり傾き特性で発光させ、最小光度Lm1に達した後に緩和した立ち上がり傾き特性で発光させ、消灯する際には最小光度Lm1に達するまでは緩和した立ち下がり傾き特性で減光させて行き、最小光度Lm1まで減光した後は急峻な傾き特性で消灯させる(段落【0022】、【0030】、図6、及び図8)、警告灯システム。」
(ウ)甲2に記載された事項
甲2(特に、段落【0030】、【0031】、【0035】、【0038】、【0041】、【0047】、【0048】、【0050】、及び図11参照)には、以下の事項が記載されていると認められる。
「ビーコン14を通常時の点灯パターン、緊急時の点灯パターン、及び停車時の点灯パターンの3種類の点灯パターンで点灯する散光式警告灯装置10において、主サイレンスイッチ22がオンの場合に、以下の点灯パターンでの点灯を行う。
シフトレバーがパーキングレンジでなく、副サイレンスイッチ30がオフのときには、車幅方向に沿って車両中心側から外側に向かってLED群16を順次点灯させて、車両左右側でそれぞれ回転して見える通常時の点灯パターンによる点灯を行い、
シフトレバーがパーキングレンジでなく、副サイレンスイッチ30がオンのときには、LED群16を点滅させて扇状に点灯する緊急時の点灯パターンによる点灯を行い、
シフトレバーがパーキングレンジであり、副サイレンスイッチ30がオフのときには、車幅方向に沿ってLED群16を順次点灯させて車幅方向全域で回転して見える停車時の点灯パターンによる点灯を行い、停車時の点灯パターンの点灯時に、主サイレンスイッチ22のビーコン14による点灯のみを行うスイッチがオンされている場合には、主サイレン20を鳴らさずにビーコン14の点灯のみを行う。」
(エ)甲3に記載された事項
甲3(特に、段落【0009】、【0020】~【0026】、【0036】、及び図3参照)には、以下の事項が記載されていると認められる。
「車両の方向指示器の光源2を点灯制御する1周期の光度変化パターンをA、B、C、Dの4つの区間を含んで構成し、区間Aを、1周期中の始点から実質的に瞬時に光度が0%から100%へ変化する区間とし、区間Aに続く区間Bを、光源の出射光の光度が100%へ達した後、その状態が維持される区間とし、区間Bに続く区間Cを、光源の出射光の光度が100%から0%へ漸減する区間とし、区間Cに続く区間Dを、光源の出射光が0%に達した後、その状態が維持される区間として、光度が急峻に立ち上がりその後の一定期間は最高値に保たれることで観測者による視認性の向上を図り、かつ、その後の光度が一定期間で漸減してから最低値で保たれることで観測者による違和感の軽減を図ること。」
(オ)甲4に記載された事項
甲4(特に、段落【0020】~【0022】、【0028】、及び図6参照)には、以下の事項が記載されていると認められる。
「実際に人の目で認識できるホタル型の発光パターン(図6上段の破線)で緩やかに点灯および消灯を繰り返すホタル型の点滅発光パターンにより点灯させる車両用灯具1を、車両の室内に設置し、乗員に与えるリラックス効果向上させること。」
また、図6に示されるヒメボタル型発光パターンは、以下のとおりである。
「
[図:0001429013000001.jpg]
」
(カ)甲6に記載された事項
甲6(特に、段落【0004】、【0010】~【0014】、及び図3参照)には、以下の事項が記載されていると認められる。
「左右外側にそれぞれ配設された第1の警告灯ユニット10、40と、これら第1の警告灯ユニット10、40の内側に配設された第2の警告灯ユニット20、30とを備えた閃光式警告灯システムにおいて、第1の警告灯ユニット10、40を、それぞれ同期して交互に点滅させるとともに、第2の警告灯ユニット20、30の点滅周期を、外側の警告灯ユニット10、40の点滅周期に比較して短くし、速い点滅を行うようにして、高い視認性を得るようにしたこと。」
(キ)甲7に記載された事項
甲7(特に、明細書第18ページ2行~17行、第5図、第11図~第13図参照)には、以下の事項が記載されていると認められる。
「複数の回転自在な反射鏡と、これら反射鏡に光を供給する複数の電球とを備えた散光式警告灯装置において、電球の点滅パターンの一周期間において、隣り合う2つの電球がともに点灯する期間が生じるように、各々の電球を周期的に点滅させる電球点滅回路を設けて、省電力化を図り、視認性の悪化を防ぐこと。」
(ク)本件発明1について
a 対比
(a)本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「回転灯ユニット3」及び「点滅灯ユニット4」が前者の「警告灯ユニット」に相当し、以下同様に、後者の「警告灯WL」が前者の「散光式警光灯」に、後者の「所定の警告音」が前者の「サイレン」に、後者の「発音」が前者の「吹鳴」に、後者の「スピーカ2」が前者の「サイレン装置」に、後者の「警告灯システム」が前者の「散光式警光灯システム」に、それぞれ相当する。
そして、以上の相当関係から、以下のことがいえる。
(b)後者の「左右の各灯室12を構成するグローブ体1を有する警告灯WL」「を備え」、「前記左右の灯室12にはそれぞれ回転灯ユニット3と点滅灯ユニット4が内装され」ることは、前者の「警告灯ユニットを含む散光式警光灯」「を含」むことに相当する。
(c)後者の「中央に配置されたスピーカ室11」「を備え」、「前記スピーカ室11にはスピーカ2が内蔵され、前記スピーカ2は、警告音スイッチを操作したとき所定の警告音を発音」することは、前者の「サイレンを吹鳴するサイレン装置」「を含」むことに相当する。
(d)後者の「前記各点滅灯ユニット4を」「緊急の各点滅動作させる」ことは、前者の「前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ」ることに相当し、後者の「前記各点滅灯ユニット4を警ら」「の各点滅動作させる」ことは、前者の「前記警告灯ユニットにより光を発生させる」ことに相当する。
そうすると、後者の「前記各点滅灯ユニット4を警ら又は緊急の各点滅動作させるための点滅パターンをパターン信号として出力」するために「切り替えられ」る「点滅切替スイッチ65」と前者の「前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない第2モードとを設定するモード設定装置」は、「前記警告灯ユニットにより警告光を発生させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる第2モードとを設定するモード設定装置」で共通する。
そして、後者の「点滅切替スイッチ65が接続された点灯制御装置6を備え」ることは、前者の「モード設定装置」「を含む」ことに相当する。
(e)前記(d)を踏まえると、後者の「前記点灯制御装置6は、前記点滅灯ユニット4の各LED42をそれぞれ点滅発光させるための点滅制御部62を有し、前記点滅制御部62は、前記点滅切替スイッチ65が切り替えられたときに各点滅灯ユニット4を警ら」「の各点滅動作させるための点滅パターンをパターン信号として出力」することは、「点滅制御部62を有」する「点灯制御装置6」が「前記点滅切替スイッチ65」の「切り替え」によって「警ら」の「点滅パターンをパターン信号として出力」しているといえるので、前者の「警告灯ユニット制御装置」が「前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御するホタル光照射制御を実行する」こととは、「警告灯ユニット制御装置」が「前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、前記第2モードの光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御する」ことで共通する。
そして、上記の限りにおいて、後者の「点滅制御部62を有」する「点灯制御装置6」は前者の「警告灯ユニット制御装置」に相当する。
したがって、後者の「点灯制御装置6を備え」ることは、前者の「警告灯ユニット制御装置」「を含む」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「警告灯ユニットを含む散光式警光灯と、
サイレンを吹鳴するサイレン装置と、
前記警告灯ユニットにより警告光を発生させる第1モードと、前記警告灯ユニットにより光を発生させる第2モードとを設定するモード設定装置と、
前記モード設定装置によって前記第2モードが設定されると、前記第2モードの光量増減パターンに従って前記警告灯ユニットによる光照射を制御する警告灯ユニット制御装置と、を含む、散光式警光灯システム。」
との点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
モード設定装置で設定される第1モードと第2モードに関して、本件発明1は、前記警告灯ユニットにより警告光を発生させ、「かつ前記サイレン装置によりサイレンを吹鳴させる」第1モードであり、前記警告灯ユニットにより光を発生させる「一方、前記サイレン装置によるサイレンの吹鳴は行わない」第2モードであるのに対して、甲1発明は、警らの点滅動作及び緊急の点滅動作と、スピーカ2の発音の関係が定かではない点。
(相違点2)
第2モードの光量増減パターン及び光照射の制御に関して、本件発明1は、「警告灯ユニット制御装置」が「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターンに従って」前記警告灯ユニットによる光照射を制御する「ホタル光照射制御を実行」し、「前記光量増減パターン」が「最小光量から最大光量までの立ち上がり区間と、前記最大光量から最小光量までの立ち下がり区間とを含み、前記立ち上がり区間の長さである立ち上がり時間が、前記立ち下がり区間の長さである立ち下がり時間よりも短い光量波形の繰り返しパターンである」のに対して、甲1発明は、「警らパターンP1」が、かかる「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」ではなく、「基準パターンP0のON時の立ち上がり傾き特性とOFF時の立ち下がり傾き特性をそれぞれ緩和させたパルス形状であり、点滅を開始する際には、最小光度Lm1に達するまでは急峻な立ち上がり傾き特性で発光させ、最小光度Lm1に達した後に緩和した立ち上がり傾き特性で発光させ、消灯する際には最小光度Lm1に達するまでは緩和した立ち下がり傾き特性で減光させて行き、最小光度Lm1まで減光した後は急峻な傾き特性で消灯させる」ものであり、点灯制御装置6が「ホタル光照射制御」を実行しない点。
b 相違点についての検討
事案に鑑み相違点2について検討する。
前記(ウ)、(カ)、及び(キ)で示したように、甲2、甲6、及び甲7には、相違点2に係る「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」にしたがって、警告灯を点滅させることについては、記載も示唆もされていない。
また、前記(オ)で示したように、甲4には、ホタル型の点滅発光パターンで車両用灯具1を点灯させることが記載されているが、このホタル型の点滅発光パターンは、図6の破線で示される人の目で認識できる発光パターンであるので、相違点2に係る「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」とは異なる形状のものである。そして、甲4の車両用灯具1は車両の室内に配置されるものであり、警告灯とは異なるものである。
そうすると、甲4にも、相違点2に係る「ホタルの光の明滅を模擬した光量増減パターン」にしたがって、警告灯を点滅させることについては、記載も示唆もされていないといえる。
一方、前記(エ)で示したように、甲3には、光度が急峻に立ち上がりその後の一定期間は最高値に保たれ、その後の光度が一定期間で漸減してから最低値で保たれるような1周期の光度変化パターンで光源21の点灯を行うことが記載されているが、甲3の光度変化パターンは、車両の方向指示器の光源21の点灯制御を行うためのものであり、その制御対象が、甲1発明の警告灯とは全く異なるものである。
そうすると、甲3にも、「警告灯ユニット制御装置」の制御態様に関する相違点2に係る本件発明1の発明特定事項は、記載も示唆もされていないといえる。
また、甲3には、甲3で示される点灯制御を車両の方向指示器以外の車両用灯具へ適用することについての記載も示唆もない。
そして、甲3の光度変化パターンによる点灯制御は、方向指示器の点灯時の視認性の向上と、消灯時における観測者の違和感の軽減を図るためのものであり、甲3の光度変化パターンによる点灯制御により解決しようとする課題は、方向指示器に特有のものであると認められる。
そうすると、仮に、甲3に記載された方向指示器が警告灯であるとしても、その点滅による警告と、甲1発明の警告灯の警らにおける警告とは、その意味する内容が明らかに異なるものであり、甲1発明の警告灯の警らの点滅動作に対して、甲3で示される光度変化パターンによる点灯制御を適用することに、動機は認められない。
さらに、甲1発明が、警らパターンP1を基準パターンP0のON時の立ち上がり傾き特性とOFF時の立ち下がり傾き特性をそれぞれ緩和させたパルス形状とすることによって、視認者に対する刺激を緩和してまぶしさを低減させるものであることに鑑みれば、甲3における光度が急峻に立ち上がる光度変化パターンを適用することには、阻害要因があるともいえる。
以上のとおりであるから、甲1発明において、甲2~甲4、甲6及び甲7に記載された事項を踏まえ、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明並びに甲2~甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ケ)本件発明2~7、9~14について
本件発明2~7、9~14は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、前記(ク)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~7、9~14について当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
したがって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
また、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであり、当該本件発明1を引用する本件発明9~12も、同様に発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
さらに、本件発明1~7、9~14は、甲1発明並びに甲2~甲4、甲6及び甲7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件特許の請求項1~7、9~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、申立理由(1)~(3)によっては、本件特許の請求項1~7、9~14に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~7、9~14に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項1~7、9~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項8に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項8が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701088