特許異議申立
2022-700565
警光灯および警光灯制御方法
- 審判番号
- 2022-700565
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-001448
- 登録番号
- 6994804
- 請求日
- 2022年06月29日
- 審決日
- 2023年03月13日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】名古屋電機工業株式会社
- 【権利者代理人】Knowledge Partners弁理士法人
- 【異議申立人】鈴木 啓文
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 藤井 昇
- 審判官 三宅 龍平
- 分類
- P1651.121-YAA(B60Q) / P1651.537-YAA(B60Q) / P1651.113-YAA(B60Q) / P1651.536-YAA(B60Q) / P1651.832-YAA(B60Q) / P1651.851-YAA(B60Q) / P1651.853-YAA(B60Q) / P1651.841-YAA(B60Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6994804号発明「警光灯および警光灯制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6994804号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7について訂正することを認める。
特許第6994804の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6994804号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年1月7日の出願であって、令和3年12月16日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月4日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 6月29日付け : 特許異議申立人鈴木啓文(以下、「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 4年10月19日付け : 取消理由通知書
令和 4年12月21日付け : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年12月28日付け : 訂正請求があった旨の通知書
上記通知書に対して、申立人からは、指定期間内に応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年12月21日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6994804号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~6について請求されている。
(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットと、」と記載されているのを、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットと、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されているのを、「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、」と記載されているのを、「連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414 を超えない時間変化となるように、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる、」と記載されているのを、「予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された順番で各点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる制御を繰り返す、」に訂正する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項7に「既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、」と記載されているのを、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、」に訂正する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項7に「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されているのを、「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」に訂正する。
2 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1-1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1においては「既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットと、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項1においては、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットと、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項1に新たな構成を付加することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0010】には、「車両の左右方向に平行な方向をx軸方向とし、x軸方向に垂直であるとともに車両の前後方向に平行な方向をy軸方向とし」と記載され、特許明細書の段落【0011】には光源ユニットが「x軸方向に平行な線に沿って並べて配置される」こと及び「前方側に光を出力する」ことが開示されている。
したがって、当該訂正事項1-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1-1は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項1-2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1においては「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項1においては、「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項1における「時間変化が基準を超えないように」という記載をより明瞭にするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0039】には、「輝度の和のが、最小値を1とした場合に1.414を超えないように、輝度の変化パターンが定義されている。」と記載されている。
したがって、当該訂正事項1-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1-2は、「時間変化が基準を超えない」という表現を、「最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となる」と訂正するものである。この訂正により、「基準」という文言に含まれ得る範囲がより明瞭に限定されている。
したがって、この訂正はカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項2においては「連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項2においては、「連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項2における「時間変化が基準を超えないように」という記載をより明瞭にするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0039】には、「輝度の和のが、最小値を1とした場合に1.414を超えないように、輝度の変化パターンが定義されている。」と記載されている。
したがって、当該訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、「時間変化が基準を超えない」という表現を、「最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となる」と訂正するものである。この訂正により、「基準」という文言に含まれ得る範囲がより明瞭に限定されている。
したがって、この訂正はカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項6においては「予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項6においては、「予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された順番で各点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる制御を繰り返す、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項6に新たな構成を付加することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0029】には、「2種類の点灯周期を順次選択し、2種類の点灯周期で順番に点灯制御が行われるように各光源ユニット22を制御する」と記載され、特許明細書の段落【0033】には「各グループに属する光源ユニット22において、非点灯と既定の最大輝度との間での輝度の変化を繰り返す」ことが記載されている。
したがって、当該訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項4-1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項7においては「既定方向に並べて配置された複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項7においては、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項7に新たな構成を付加することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項4-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0010】には、「車両の左右方向に平行な方向をx軸方向とし、x軸方向に垂直であるとともに車両の前後方向に平行な方向をy軸方向とし」と記載され、段落【0011】には、光源ユニットが「x軸方向に平行な線に沿って並べて配置される」ことおよび「前方側に光を出力する」ことが開示されている。
したがって、当該訂正事項4-1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4-1は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項4-2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項7においては「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の時間変化が基準を超えないように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されていた。これに対して、訂正後の請求項7においては、「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、」と記載されている。
この訂正は、訂正前の請求項7における「時間変化が基準を超えないように」という記載をより明瞭にするものであるから、当該訂正事項4-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であること
特許明細書の段落【0039】には、「輝度の和のが、最小値を1とした場合に1.414を超えないように、輝度の変化パターンが定義されている。」と記載されている。
したがって、当該訂正事項4-2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4-2は、「時間変化が基準を超えない」という事項を、「最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となる」という事項に訂正するものである。この訂正により、「基準」という文言に含まれ得る範囲がより明瞭に限定されている。
したがって、この訂正はカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」と、同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」とを目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、7について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットと、
前記光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備える警光灯であって、
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度が時間変化し、かつ、
連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、
警光灯。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、
非点灯と既定の最大輝度との間での輝度の変化を繰り返し、かつ、
連続して並ぶN個の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、
前記光源ユニットの輝度を制御する、
請求項1に記載の警光灯。
【請求項3】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、
輝度を徐々に変化させ、
連続して並ぶN個の前記光源ユニットの中の1個以上の前記光源ユニットにおいて輝度が低下する過程において、N個の前記光源ユニットの中の他の1個以上の前記光源ユニットにおいて輝度が増加するように、
前記光源ユニットの輝度を制御する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の警光灯。
【請求項4】
前記制御部は、
隣り合う前記光源ユニットの一方において輝度を低下させ、他方において輝度を増加させる、
請求項3に記載の警光灯。
【請求項5】
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおける点灯周期を変化させる、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の警光灯。
【請求項6】
前記制御部は、
予め決められた複数の点灯周期を順次選択し、選択された順番で各点灯周期によって複数の前記光源ユニットを点灯させる制御を繰り返す、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の警光灯。
【請求項7】
車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットを備える警光灯を制御する警光灯制御方法であって、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度を時間変化させ、かつ、
連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する、
警光灯制御方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1~7に係る特許に対して、当審が令和4年10月19日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
「<理由1>
(サポート要件)請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
<理由2>
(進歩性)本件特許の請求項1~7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
<理由1>
請求項1、2及び7において「基準」が具体的に特定されていないため、「周囲の人にまぶしさを感じさせにくい警告灯の提供」(段落【0004】)という発明が解決しようとする課題を解決できないものまで、特許請求されている。
したがって、請求項1、2、7には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1、2、7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
また、請求項1、2を直接又は間接的に引用する請求項3~6についても同様である。
よって、請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
<理由2>
・請求項 1~7
・引用文献 1
1.引用文献一覧
引用文献1:特開2011-121385号公報(異議申立人鈴木 啓文(以下「申立人」という。)が提出した甲第1号証)」
2 引用文献の記載事項、甲1発明
(1)引用文献1
引用文献1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「灯室12内の前側位置に配置されて光軸が車両の前方に向けられた2個の前方点滅灯ユニット4fと、灯室12内の内側位置に配置されて光軸が車両の斜め内側前方に向けられた2個の側方点滅灯ユニット4s等から構成された複数の点滅灯ユニット4と(段落【0018】、図2)、
前方点滅灯ユニット4fから出射された光は灯室カバー14lの前面を透光して車両の前方に向けて出射され、側方点滅灯ユニット4sから出射された光は直近の隔壁15を透光した後スピーカ室カバー14sの前面を透光し、車両の前方寄りの側方に向けて出射され(段落【0018】、図2)、
前記点滅灯ユニット4の各LED42をそれぞれ点滅発光させるための点滅制御部62と、を備える警告灯WLであって(段落【0019】)、
前記点滅制御部62は、
前記点滅灯ユニット4の前方点滅灯ユニット4f、側方点滅灯ユニット4sにおいて、光度が時間によって変化し、かつ、
前記前方点滅灯ユニット4f、前記側方点滅灯ユニット4sのうち、一方の光度の立ち上がりと他方の光度の立ち下がりはカーブを描き、両者のタイミングを同期させる(段落【0028】、図8(b)(c))、
警告灯WL。」
3 当審の判断
(1)<理由1>について
訂正後の本件特許請求項1、2、7においては、「時間変化が基準を超えないように」という構成が「最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように」という構成に訂正された。
この訂正により請求項1~7は、連続して並ぶN個の光源ユニットの輝度の和も時間変化するが、当該和は最小値を1とした場合に1~1.414の範囲で時間変化することが明示された。
本件特許は、「周囲の人にまぶしさを感じさせにくい警光灯の提供」(段落【0004】)を課題としており、輝度の和が1~1.414の範囲に制限されることにより、周囲の人にまぶしさを感じさせない程度に、コントラストの変動幅が抑制される(段落【0040】)。
このように、訂正後の請求項1~7によれば、周囲の人にまぶしさを感じさせないために、制御すべき輝度の和が明確になったことにより、段落【0004】に記載した課題を解決できることを当業者が認識できることから、サポート要件を満たしている
よって、請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)<理由2>について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 後者の「点滅制御部62」は前者の「制御部」に、以下同様に、「警告灯WL」は「警光灯」に、「2個の前方点滅灯ユニット4f」は「光源ユニットのそれぞれ」に、「時間によって変化」することは「時間変化」に、それぞれ相当する。
b 後者の「灯室12内の前側位置に配置されて光軸が車両の前方に向けられた2個の前方点滅灯ユニット4f」は前者の「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニット」に相当する。
c 後者の「各LED42をそれぞれ点滅発光させる」ことは、前者の「点灯制御を行う」ことに相当する。
後者の「前記点滅灯ユニット4」は2個の前方点滅灯ユニットを含むから、後者の「前記点滅灯ユニット4の各LED42をそれぞれ点滅発光させるための点滅制御部62と、を備える警告灯WL」は、前者の「前記光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備える警光灯」に相当する。
d 後者の「光度」と前者の「輝度」とは、「明るさの指標」という点において共通する。
e 後者の「前記点滅灯ユニット4の前方点滅灯ユニット4f、側方点滅灯ユニット4sにおいて、光度が時間によって変化」することと、前者の「前記光源ユニットのそれぞれにおいて、輝度が時間変化」することとは、「前記光源ユニットのそれぞれにおいて、明るさの指標が時間変化」することにおいて共通する。
そうすると、両者は、
「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力する複数の光源ユニットと、
前記光源ユニットの点灯制御を行う制御部と、を備える警光灯であって、
前記制御部は、
前記光源ユニットのそれぞれにおいて、明るさの指標が時間変化する、
警光灯。」
の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
本件発明1では、前記制御部は、前記光源ユニットのそれぞれにおいて、「輝度」が時間変化し、「かつ、連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する」のに対して、甲1発明では、前記点滅制御部62は、前記点滅灯ユニット4の前方点滅灯ユニット4f、側方点滅灯ユニット4sにおいて、「光度」が時間によって変化し、「かつ、前記前方点滅灯ユニット4f、前記側方点滅灯ユニット4sのうち、一方の光度の立ち上がりと他方の光度の立ち下がりはカーブを描き、両者のタイミングを同期させる」点。
(イ)判断
<相違点について>
本件発明1は、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され、前記車両の前方に光を出力」するような「複数の光源ユニット」において、「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、」制御されるものである。
甲1発明の「側方点滅灯ユニット4s」は前方点滅灯ユニット4fに対して、「車両の左右方向に平行な方向に並べて配置され」るものではない上に、「前記車両の前方に光を出力する」ものではないから、側方点滅灯ユニット4sの光度の立ち上がりと前方点滅灯ユニット4fの光度の立ち下がりはカーブを描き、両者のタイミングを同期させるものの、甲1発明として、前方点滅灯ユニット4f、側方点滅灯ユニット4sの前方に出力される光の光度の和に関して何らかの制御が行われるという技術思想を抽出することはできない。
そうすると、甲1発明において「連続して並ぶN個(Nは2以上の整数)の前記光源ユニットにおける輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えない時間変化となるように、前記光源ユニットの輝度を制御する」構成とすることの動機付けはなく、また、そのような構成とすることが設計的事項であるともいえない。
そして、本件発明1は、相違点に係る構成により、車両の前方側から一度にN個の光源ユニットを視認した場合に、まぶしさを感じさせにくい警光灯を提供することができるという作用効果を奏する。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明7について
本件発明7は、本件発明1を方法の発明にしたものであり、本件発明7と甲1発明とを対比すると、上記相違点と同様の相違点を少なくとも含むものであるから、本件発明7は本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法36条4項1号(実施可能要件)について
発明の詳細な説明には、課題を解決できる態様について記載がないから、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨主張する。
しかしながら、特許明細書には、「基準」について段落【0039】に「本実施形態においては輝度の和の最小値を1とした場合に1.414を超えないように輝度の変化パターンが定義されている。」と記載されており、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
2 特許法29条1項3号(新規性)について
第4 3(2)アに上述したように、本件発明1と甲1発明には、実質的な相違点があり、また、本件発明2~7も、甲1発明とは実質的な相違点があるから、本件発明1~7について、新規性がないとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700565