特許異議申立
2021-701049
軟質ポリウレタンフォームとその製造方法
- 審判番号
- 2021-701049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-022919
- 登録番号
- 6893794
- 請求日
- 2021年11月05日
- 審決日
- 2023年10月23日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社イノアックコーポレーション
- 【異議申立人】株式会社 東洋クオリティワン
- 【異議申立人代理人】弁理士法人真明センチュリー
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 海老原 えい子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6893794号発明「軟質ポリウレタンフォームとその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6893794号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。
特許第6893794号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲
1 本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6893794号に係る出願(特願2017-22919号、以下「本願」ということがある。)は、平成29年2月10日に出願人イノアックコーポレーション(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和3年6月4日に特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、令和3年6月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
2 本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和3年11月5日に特許異議申立人株式会社東洋クオリティワン(以下「申立人」という。)により、「特許第6893794号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」という。)
3 審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6893794号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、審理の対象外とすべきものはない。
4 申立て以降の手続の経緯
令和4年 4月21日付け 取消理由通知
同年 6月23日 意見書の提出・訂正請求
同年 8月 1日付け 通知(申立人宛)
(なお、上記申立人宛の通知に対する申立人からの意見書の提出はなかった。)
同年12月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和5年 2月21日 意見書の提出・訂正請求
同年 3月 6日付け 通知(申立人宛)
同年 3月23日 意見書(申立人)の提出
同年 6月26日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 8月18日 面接記録
同年 8月24日 意見書の提出
第2 取消理由
申立人が主張する取消理由及び当審が通知した令和5年6月26日付け取消理由(決定の予告)はそれぞれ以下のとおりである。
1 申立人が主張する取消理由
申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の理由が存するとしている。
●本件特許第6893794号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「申立理由1」という。)
●本件特許第6893794号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「申立理由2-1」という。)
●本件特許第6893794号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明は、いずれも、甲第4号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(以下「申立理由2-2」という。)
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:米国特許出願公開第2014/0182063号明細書
(部分訳(甲第1号証の2)添付)
甲第2号証:今井嘉夫著、「ポリウレタンフォーム」、1993年4月20日(第1版第3刷)、株式会社高分子刊行会発行、第55、67~68頁
甲第3号証:東洋曹達研究報告、第28巻、第1号(1984年)、第23~34頁
甲第4号証:特開2004-191451号公報
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第4号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲4」と略す。)
・申立人が令和5年3月23日提出の意見書に添付した証拠方法
参考資料1:特開2013-95866号公報
参考資料2:「MDI(モノメリックおよびポリメリックMDI)輸送管理指針」(第5版)、ウレタン原料工業会、2015年5月
2 当審が通知した令和5年6月26日付け取消理由(決定の予告)
当審が通知した令和5年6月26日付け取消理由(決定の予告)は、次のとおりである。
●本件特許の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、甲1に記載された事項及び周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第3 令和5年2月21日付け訂正請求について
1 訂正請求の内容
令和5年2月21日付け訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許に係る特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、すなわち、訂正前の請求項1ないし3(以下項番に従い「旧請求項1」などという。)を一群の請求項ごとに訂正することにより、訂正後の請求項1ないし3(以下項番に従い「新請求項1」などという。)にするものであり、以下の訂正事項1ないし3を含むものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。」と記載されているものを、「前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含み、25%硬さ(JISK6400-2)が22N以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームを備える物品であって、寝具、枕、マットレス、座布団、座椅子用パッド、衣料用パット、ブラジャー用パット、車両用座席のパット、クッションから選択される物品。」と記載されているものを、「ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、
前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォームを備える物品であって、
衣料用パット、ブラジャー用パットから選択される物品。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合され、前記添加剤がグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含む軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。」と記載されているものを、「ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合され、
前記添加剤がグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含み、
前記添加剤が整泡剤を含み、
前記ポリオールとして、
水酸基価(OHV)が25~70mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が2000~7000であるポリオールと、
水酸基価(OHV)が50~840mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が200~2000であるポリオールを併用し、
前記イソシアネートとして、ポリメリックポリイソシアネートを用いた、
軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。」に訂正する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし3について、請求項2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし3に対応する訂正後の請求項1ないし3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(5)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項2及び3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。
2 各訂正事項に係る訂正の適否について
なお、各訂正事項に係る訂正の適否につき検討するにあたり、本件申立ては、本件の旧請求項1ないし3、すなわち全請求項に係る発明についての特許に対してされたものであるから、申立てが行われていない請求項に係る特許は存するものでなく、独立特許要件につき検討すべき請求項は存するものではない。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1において本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0030】及び実施例5の記載に基づき、「25%硬さ(JISK6400-2)が22N以下である」と物性に係る事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮しているものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
訂正事項1に係る訂正は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許に係る旧請求項1につき、明細書の記載に基づいて物性に係る事項を直列的に付加しているものであるから、本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正では、旧請求項1を引用する旧請求項2において、旧請求項1に記載された事項を書き下すことにより、旧請求項1を引用しないものとした上で、旧請求項2に記載された物品種別に係る並列的選択肢の一部(寝具、枕、マットレス、座布団、座椅子用パッド、車両用座席のパット、クッション)を削除して特許請求の範囲を減縮しているものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の特許請求の範囲の減縮及び同第4号に規定の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
訂正事項2に係る訂正は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、本件特許に係る旧請求項2につき、並列的選択肢の一部を削除して新請求項2としているものであるから、本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正では、旧請求項1を引用する旧請求項3において、旧請求項1に記載された事項を書き下すことにより、旧請求項1を引用しないものとした上で、旧請求項3に記載された添加剤として、本件特許明細書の【0023】及び実施例1~6の記載に基づき「整泡剤を含」むものに減縮し、旧請求項3に記載されたポリオールとして、本件特許明細書の【0017】及び実施例1~7の記載に基づき「水酸基価(OHV)が25~70mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が2000~7000であるポリオールと、水酸基価(OHV)が50~840mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が200~2000であるポリオールを併用」するものに減縮し、旧請求項3に記載されたイソシアネートとして、本件特許明細書の【0018】及び実施例1~7の記載に基づき「ポリメリックポリイソシアネートを用いた」ものに減縮しているものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の特許請求の範囲の減縮及び同第4号に規定の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無
訂正事項3に係る訂正は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、本件特許に係る旧請求項3につき、添加剤、ポリオール及びイソシアネートについて減縮し、新請求項3としているものであるから、本件特許明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で訂正されたことが明らかであって、また、本件訂正の前後で特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されたものでないことも明らかである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものといえる。
3 本件訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、各訂正事項に係る訂正が、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は同第4号に掲げる目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件も満たすものであるから、本件訂正を認める。
第4 本件特許の特許請求の範囲に記載された事項
上記本件訂正により適法に訂正された本件特許の特許請求の範囲には、以下のとおりの請求項1ないし3が記載されている。
「【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、
前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含み、
25%硬さ(JISK6400-2)が22N以下であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、
前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォームを備える物品であって、
衣料用パット、ブラジャー用パットから選択される物品。
【請求項3】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された軟質ポリウレタンフォーム組成物から得られた軟質ポリウレタンフォームにおいて、前記添加剤としてグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合され、
前記添加剤がグラフェンを、前記ポリオール100重量部に対して15~60重量部含み、
前記添加剤が整泡剤を含み、
前記ポリオールとして、
水酸基価(OHV)が25~70mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が2000~7000であるポリオールと、
水酸基価(OHV)が50~840mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が200~2000であるポリオールを併用し、
前記イソシアネートとして、ポリメリックポリイソシアネートを用いた、
軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させる軟質ポリウレタンフォームの製造方法。」
(以下、上記請求項1ないし3に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明3」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)
第5 当審の判断
当審が通知した令和5年6月26日付け取消理由(決定の予告)(以下「取消理由」という。)、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1ないし3についての特許は取り消すことができない。
以下、詳述する。
1 甲号証に記載されている事項及び甲号証に記載された発明
各甲号証に記載された事項を確認し、甲1又は甲4に記載された事項に基づき甲1又は甲4に記載された発明を認定する。
ア 甲1
(ア)甲1に記載された事項
なお、以下の摘示において、訳文は申立人が添付した甲1の2の部分訳文を基に当審が行った仮訳である。
(a)「1. A thermally conductive foam (TC Foam) comprising: flexible cellular foam, and graphite material dispersed in the flexible cellular foam, where the graphite material is selected from a group consisting of natural flake graphite, powder graphite, graphene sheets, graphene, synthetic graphite, graphite-based particulates, and combinations thereof.
・・(中略)・・
3. The TC Foam of claim 1 where the TC Foam is produced by a method comprising: introducing graphite material into a mixture of flexible cellular foam-forming components comprising a polyol and an isocyanate; and polymerizing the polyol and the isocyanate to form the flexible cellular foam.」(第6頁左欄第12行~第18行)
(請求項1. 黒鉛材料が分散した柔軟な多孔質フォームからなる熱伝導性フォーム(TCフォーム)であって、当該黒鉛材料が天然フレーク状黒鉛、黒鉛粉体、グラフェンシート、グラフェン、合成黒鉛、黒鉛系微粒子及びこれらの組合せからなる群から選択されるものであるフォーム。
・・(中略)・・
請求項3. 請求項1記載のTCフォームであって、以下を含む方法で製造されるTCフォーム。
黒鉛材料を、ポリオール及びイソシアネートを含む柔軟なセルラーフォーム形成成分の混合物に導入する工程、及び、前記ポリオールと前記イソシアネートを重合して前記セルラーフォームを形成する工程。)
(b)「12. An article of manufacture selected from the group consisting of medical cushioning foams, mattresses, pillows, bedding products, mattress pillow toppers, quilted mattress toppers, mattress topper pads, indoor cushioning foams, outdoor cushioning foams, outdoor bedding pads, outdoor pillows, and combinations thereof, where the article of manufacture further comprises at least one layer comprising the TC Foam of claim 1.」(第6頁左欄第50行~第57行)
(請求項12. 医療用クッションフォーム、マットレス、枕、寝具製品、マットレスピロートッパー、キルティングマットレストッパー、マットレストッパーパッド、屋内用クッションフォーム、屋外用クッションフォーム、屋外用寝具パッド、屋外用枕、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される物品であって、前記物品が、請求項1記載のTCフォームからなる少なくとも1つの層をさらに含む物品。)
(c)「17. An article of manufacture comprising at least one layer comprised of the TC Foam of claim 1 and produced by a method selected from the group consisting of molding, free-rise, and combinations thereof, where the article is selected from the group consisting of a seat cushion, back support and combination thereof.」(第6頁右欄第6行~第11行)
(請求項17. 請求項1に記載のTCフォームで構成された少なくとも1つの層を含み、成形、フリーライズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって製造される物品であって、前記物品がシートクッション、バックサポート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される物品。)
(d)「[0006] There is provided, in one non-limiting form, methods of forming an enhanced thermally-conductive graphite-containing foam (referred as “TC Foam” or thermally-conductive foam) comprised of a flexible cellular foam and a graphite material.」(第1頁左欄)
([0006] 非限定的な一形態として、柔軟な多孔性のフォームと黒鉛材料で構成された熱伝導性の高い黒鉛含有フォーム(「TCフォーム」又は熱伝導性フォームという)を形成する方法を提供する。)
(e)「[0038] It is useful to develop improved heat transfer in a cushion or mattress to provide cooler and more comfortable sleep by the addition of highly thermally conductive material graphite or alternatively graphene.
With thermal conductivities in the range of 4,000-5,000 W/(m K), graphene layers have about 100,000 times the thermal conductivity of foam. Graphite may be understood as a material made of layers of graphene. Graphite exhibits thermal conductivities in the direction parallel to the graphene layers of about 140-500 W/(m K). In the direction perpendicular to the layers the thermal conductivity is lower, on the order of 3-10 W/(mK).
・・(中略)・・
[0041] The TC Foam may contain graphite material in the range of about 0.1% independently to about 75% by weight based on the final net weight of the foam after gas loss. In one non-limiting embodiment the TC Foam may contain graphite material in the range of about 3% independently to about 75% by weight, and alternatively in the range of from about 5% independently to about 60% by weight, and another non-restrictive version in the range of from about 7% independently to about 40%.
・・(中略)・・
[0043] The graphite material to be used in the compositions and methods herein should be selected from a list of the following, non-limiting, functional materials: natural flake graphite, powder graphite, graphene sheets, graphene, synthetic graphite, graphite-based particulates, and combinations thereof.」(第2頁右欄~第3頁左欄)
([0038] 高熱伝導性材料である黒鉛やグラフェンを加えてクッションやマットレスの熱伝導を改善し、より涼しく快適な睡眠を提供することが有用である。熱伝導率が4000-5000W/mKの範囲にあるグラフェンはフォームの約10万倍の熱伝導率を有する。黒鉛はグラフェン層からなる材料として理解される。黒鉛は、グラフェン層に平行な方向の熱伝導率は約140-500W/mKであるが、グラフェン層に垂直な方向の熱伝導率は3-10W/mK程度と低い。
・・(中略)・・
[0041] TCフォームは、ガス損失後のフォームの最終正味重量を基準にして、独立して約0.1質量%から約75質量%の範囲で黒鉛材料を含んでもよい。非限定的な一実施形態では、TCフォームは、独立して約3質量%から約75質量%の範囲で黒鉛材料を含んでもよく、代替的に、独立して約5質量%から約60質量%の範囲で黒鉛材料を含んでもよく、別の非限定的な形態では、独立して約7質量%から約40質量%の範囲で黒鉛材料を含んでもよい。
・・(中略)・・
[0043] 本明細書の組成物および方法で使用する黒鉛材料は、以下の非限定的な機能性材料のリストから選択されるべきである:天然薄片状黒鉛、粉末黒鉛、グラフェンシート、グラフェン、合成黒鉛、黒鉛ベースの粒子、およびそれらの組み合わせ。)
(f)「EXAMPLE I
[0072] Graphite TC Foam. A two component system was obtained from Peterson Chemical Technology. The system consisted of a “B” side (PCT-8205B) containing polyols, surfactants, blowing and gelation catalysts and water, and the “A” side (PCT-8205A) consisted of an isocyanate compound.
A pre-blend was made by combining 100 parts of the “B” side with 10 parts of HC-95, a graphite additive obtained from Peterson Chemical Technology, in a 32 oz. (0.95 L) mix cup. The components were mixed for approximately 45 seconds before adding 43.21 parts of the “A” side component, mixed an additional 10 seconds and poured into a 9″×9″ (23 cm×23 cm) cake box and allowed to rise and cure in a room temperature environment. This produced a foam block with a random dispersion of graphite material throughout the foam structure. It will be appreciated that the graphite material may be randomly or uniformly dispersed in the TC Foams described herein. Physical properties such as density, IFD, and airflow were measured. Additionally, measurements of the static thermal conductivity were obtained by following ASTM E1225 standards.
[0073] A second foam block was produced by an identical procedure but with the omission of the 10 parts of HC-95. This foam was tested by the same procedures and used as a comparative control for the TC Foam.
Discussion of Results
[0074] Table 1 shows the formula and test results for the two foams produced by following the procedure of Example I. The results indicate an increase in the thermal conductivity (Static TC) of the control foam by 50.5%, from 0.0507 W/(m K) to 0.0763 W/(m K). Density was slightly increased (6.1%) as would be expected from the addition of solids (7.0% by weight based on the final foam net weight after gas loss). There was only a slight loss in IFD (12.1%), and there was no significant difference in the airflow (4.7%) between the control and the experimental TC Foam.
[図:0001405769000001.jpg]
・・(中略)・・
[0076] Shown in FIG. 17 is a schematic illustration of uncompressed viscoelastic (visco) foam which depicts that heat flow depends on open cells to leave the foam through convection. FIG. 18 shows a schematic illustration of compressed visco foam depicting that compression (such as when a person lies on a visco mattress) closes the foam cells thereby hindering air flow and not allowing heat to escape. FIG. 19 is a schematic illustration of uncompressed, graphite-infused visco foam depicting that heat is rapidly dissipated through open cells of the visco and the highly conductive graphite material, schematically illustrated by the spheres.
Further, FIG. 20 is a schematic illustration of compressed, graphite-infused visco foam schematically depicting that compression forces the graphite particles or material together, touching or in close proximity, providing a highly conductive pathway for heat to move toward uncompressed adjacent foam where heat may be liberated by convection.
[0077]
・・(中略)・・
HG-95 Graphite Flake is available from Peterson Chemical Technology, Inc.」(第4頁右欄~第5頁右欄)
(実施例1
[0072] 黒鉛TCフォーム。 ピーターソンケミカルテクノロジー社から2成分系を入手した。この系は、ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を(中味の全体として)含むBサイド(PCT-8205B)と、イソシアネート化合物からなるAサイド(PCT-8205A)と、からなる。32オンス(0.95L)のミックスカップに、Bサイド100部と、ピーターソンケミカルテクノロジー社から入手した黒鉛添加剤である10部のHC-95と、配合した。成分を約45秒間混合した後、Aサイドの成分を43.21部加え、さらに10秒間混合した後、9”×9”(23cm×23cm)のケーキボックスに流し込み、室温環境下で膨らませて硬化させた。これによりフォーム構造全体に黒鉛材料がランダムに分散したフォームブロックが得られた。本明細書に記載されているTCフォームにおいて、黒鉛材料がランダム又は均一に分散されていてもよいことが理解されるであろう。密度、IFD、通気性などの物理的特性を測定した。さらにASTM E1225に準拠して静的な熱伝導率を測定した。
[0073] 第2のフォームブロックを、10部のHC-95を使用することを除き、同一の方法で製造した。このフォームを、TCフォームに対する対照例として同様の測定方法により試験を行った。
[0074] 表1は実施例1の手順に沿って製造された2つのフォームの配合および試験結果を示す。結果は熱伝導率(静的熱伝導率)が、0.0507W/mKから0.0763W/mKまで、対照フォームに対して50.5%増加することを示している。密度は、固体(ガス損失後のフォームの最終正味重量に対して7質量%)を添加することから予想されるように、僅かに(6.1%)増加した。対照フォームと実験TCフォームとの間でIFDは僅かに(12.1%)低下し、通気性に有意な差はなかった(4.7%)。
[図:0001405769000002.jpg]
・・(中略)・・
[0076] 図17に示されているのは、圧縮されていない粘弾性(粘性)フォームの概略図であり、熱流は、対流によってフォームから離れるため、開いたセルに依存していることを示している。図18は、圧縮された粘性フォームの概略図であり、圧縮(粘性マットレスに人が寝るときなど)によってフォームセルが閉じ、それによって空気の流れが妨げられ、熱が逃げないことを示している。
図19は、黒鉛が注入された圧縮されていない粘性フォームの概略図であり、粘性の開いたセルと、球で模式的に示された熱伝導性の高い黒鉛材料と、を通して、熱が急速に放散されることを示している。図21は、圧縮された黒鉛入り粘性フォームを模式的に示す図であり、圧縮により黒鉛粒子または黒鉛材料が接触または近接して一緒になり、圧縮されていない隣接するフォームに向かって熱が移動する高伝導性の経路が提供され、対流により熱が解放される可能性があることを示している。
[0077]
・・(中略)・・
HC-95黒鉛フレークは、ピーターソンケミカルテクノロジー社から入手できる。)
(イ)甲1に記載された発明
甲1における「EXAMPLE I(実施例I)」の記載に着目すると、甲1には、
「ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を含むBサイド100重量部に黒鉛添加剤であるHC-95の10部を混合した組成物と、イソシアネート化合物からなるAサイド43.21重量部とを混合してなる組成物を発泡硬化させてなるTC(熱伝導性)フォーム。」
に係る発明(以下、「甲1発明1」という。)及び
「ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を含むBサイド100重量部に黒鉛添加剤であるHC-95の10部を混合した組成物と、イソシアネート化合物からなるAサイド43.21重量部とを混合してなる組成物を発泡硬化させてなるTC(熱伝導性)フォームの製造方法。」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されている。
イ 甲2
甲2に記載された事項
(g)「汎用スラブフォームの基本的処方の例を表21に示す。
[図:0001405769000003.jpg]
」(55ページ)
(h)「ホットキュアフォームモールド品製造における原料処方の例を表26に示す。
[図:0001405769000004.jpg]
」(67ページ)
(i)「コールドキュアフォームモールド品製造における原料処方の例を表28に例示する。
[図:0001405769000005.jpg]
」(68ページ)
ウ 甲3
甲3に記載された事項
(j)「
[図:0001405769000006.jpg]
」(第23ページ左欄)。
エ 甲4
(ア)甲4に記載された事項
(k)「【請求項1】
熱伝導率が0.1~0.5W/mKである多孔質体からなることを特徴とする吸音材。
【請求項2】
前記多孔質体は基材がウレタンフォームであることを特徴とする請求項1記載の吸音材。
【請求項3】
前記ウレタンフォーム基材に熱伝導性付与材が配合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸音材。
・・・
【請求項6】
前記熱伝導性付与材は黒鉛であることを特徴とする請求項5記載の吸音材。
【請求項7】
前記黒鉛の添加量はウレタンフォームを形成するポリオール100重量部に対して10~150重量部であることを特徴とする請求項6記載の吸音材。」
(l)「【0010】
本発明はエンジン類等の音源の周囲に取り付けられ、エンジン類から発生する空気伝搬音、固体伝搬音、振動の低減に効果的な性能を有するとともに周囲の温度が上昇しても劣化が促進されず寿命の長い吸音材を提供するものである。」
(m)「【0019】
本発明の実施の形態においては、ディーゼル発電機(ヤンマー(株)製YDG200A-5)を収納したアルミニウム製防音ボックス(縦1m × 横0.7m× 高さ0.8m)の内壁面に図1に示すように厚さ50mmのウレタンフォームを貼り付けた。そして、ディーゼル発電機を1時間運転した後の防音ボックス内の吸音材内側表面における温度を測定した。なお、図1には比較例も併せて示している。
【0020】
図1において、実施例1は熱伝導性付与材として黒鉛をポリオール100重量部に対して20重量部添加したもので、熱伝導率が0.125W/mKである。この実施例1の吸音材内側表面の温度は52℃であった。また、実施例2は熱伝導性付与材として黒鉛をポリオール100重量部に対して150重量部添加したもので、熱伝導率が0.486W/mKである。この実施例1の吸音材内側表面の温度は47℃であった。
【0021】
ここで、本発明において熱伝導率が0.1~0.5W/mKである理由は、0.1W/mK未満では多孔質体の温度上昇を抑制することが難しく、多孔質体の劣化を防止する効果が見られないためである。一方、0.5W/mKを超えても多孔質体の温度上昇を抑制する効果に差異が見られなくなるからである。
【0022】
また、ウレタンフォームに熱伝導性付与材を添加するのはより熱伝導性を高めるためであり、その材料としては本発明の目的に適うものならば特に限定されるものではないが、例えば炭化珪素粉、アルミナ粉、アルミ粉、黒鉛、銅粉、ステンレス粉等のセラミックスや金属材料が好ましく、特に本発明の目的のためには黒鉛がより好ましい。
【0023】
ところで、熱伝導性付与材としての黒鉛の添加はウレタンフォームを形成するポリオール100重量部に対して10~150重量部が望ましい。10重量部未満では熱伝導性付与材の添加の効果があまり見られないからであり、150重量部を超えても効果が飽和状態になり、コスト的にも高くなってしまうからである。」
(イ)甲4に記載された発明
甲4の【0023】には、「熱伝導性付与材としての黒鉛の添加はウレタンフォームを形成するポリオール100重量部に対して10~150重量部が望ましい。」ことが記載されていることから、当該記載に着目すると、甲4には、
「ポリオールを含む原料から得られたウレタンフォームにおいて、添加剤はウレタンフォームに熱伝導性を付与する黒鉛であり、ポリオール100重量部に対して黒鉛が10~150重量部含まれるウレタンフォーム。」
に係る発明(以下、「甲4発明1」という。)及び
「ポリオールを含む原料から得られたウレタンフォームにおいて、添加剤はウレタンフォームに熱伝導性を付与する黒鉛であり、ポリオール100重量部に対して黒鉛が10~150重量部含まれるウレタンフォームの製造方法。」
に係る発明(以下「甲4発明2」という。)が記載されている。
オ 参考資料1
参考資料1に記載された事項
(n)「【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させた軟質ポリウレタンフォームからなる寝具用クッションにおいて、
前記軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性(JIS K 6400-3準拠)が50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400-2 D法準拠)が20N以下であることを特徴とする寝具用クッション。
【請求項2】
前記ポリオールが以下のA~Dの4種類からなり、
A:水酸基価20~40mgKOH/g、分子量4000~9000、官能基数3、
エチレンオキサイド含有量10~25%のポリオール
B:水酸基価20~115mgKOH/g、分子量1000~4000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量5%以下のポリオール
C:水酸基価20~60mgKOH/g、分子量2000~5000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量25~70%のポリオール
D:水酸基価40~80mgKOH/g、分子量2000~5000、官能基数3、
エチレンオキサイド含有量50~90%のポリオール
A~Dの配合量(重量部)が、
Aの配合量=40~65、Dの配合量=5~30
(A+D)/(A+B+C+D)×100=60~80(重量%)
Bの配合量=10~20、Cの配合量=10~20
(B+C)/(A+B+C+D)×100=20~40(重量%)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の寝具用クッション。」
(o)「【0016】
本発明において使用されるイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォーム用のものが使用可能であり、1種類の単独でも2種類以上の併用であってもよい。前記イソシアネートとしては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のイソシアネート化合物、及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0017】
芳香族系イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソジアネート(TMXDI)、トリジンイソシアネート(TODI)等が挙げられる。・・(略)・・」
2 取消理由、申立理由1及び申立理由2-1についての検討
取消理由は、申立理由2-1の一部を含むものである。
そして、甲1を主引例とする理由という点で、申立理由1と申立理由2-1を、取消理由と併せて、以下検討する。
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「ポリオール」、「泡化及びゲル化触媒」、及び「イソシアネート化合物」は、本件発明1における「ポリオール」、「触媒」、及び「イソシアネート」にそれぞれ相当する。
甲1発明1における「水」は、ポリウレタンフォームを形成する際に発泡剤として機能することは明らかであるから、本件発明1における「発泡剤」に相当する。
また、甲1発明1における「界面活性剤」は、添加剤の一種であることが当業者に自明であり、本件特許明細書の【0023】にも添加剤として「公知の界面活性剤」が記載されていることから、本件発明1における「添加剤」に相当する。
さらに、甲1発明1における「組成物を発泡硬化させてなるTC(熱伝導性)フォーム」は、ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を含むBサイドに黒鉛添加剤であるHC-95を混合した組成物に対してイソシアネート化合物からなるAサイドを混合してなる組成物を原料として発泡(反応)硬化させて形成されるポリウレタンフォームであることが当業者に自明であるから、本件発明1における「ポリウレタンフォーム組成物から得られた」「ポリウレタンフォーム」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明1とは、
「ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られたポリウレタンフォーム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-1:本件発明1では「添加剤としてグラフェン」を含むのに対して、甲1発明1では「黒鉛添加剤であるHC-95」を含む点。
相違点1-2:本件発明1では「グラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含」むのに対して、甲1発明1では「Bサイド100重量部に黒鉛添加剤であるHC-95の10部を混合」する点
相違点1-3:フォームの25%硬さについて、本件発明1では「25%硬さ(JISK6400-2)が22N以下である」のに対して、甲1発明1では特定されていない点
相違点1-4:「ポリウレタンフォーム」について、本件発明1では「軟質」であるのに対して、甲1発明1ではそのような特定はない点
(イ)検討
上記相違点1-1について検討すると、甲1には「黒鉛添加剤であるHC-95」が「グラフェン」であることについての記載はなく、甲1発明1の「黒鉛添加剤であるHC-95」が「グラフェン」であることを示す他の具体的な証拠もない。
そうすると、相違点1-1は実質的な相違点である。
また、甲1には、黒鉛材料が分散した柔軟な多孔質フォームからなる熱伝導性フォーム(TCフォーム)において、黒鉛材料としてグラフェンが例示されており(摘示(a)の請求項1)、高熱伝導性材料である黒鉛やグラフェンを加えてクッションやマットレスの熱伝導を改善し、より涼しく快適な睡眠を提供することが有用であること(摘示(e)の[0038])、が記載されている。
しかしながら、甲1には高熱伝導材材料としてグラフェンが例示されるにとどまり、グラフェンが「HC-95」なる黒鉛添加剤と比べて熱伝導性等に優れることは何ら示されておらず、さらに、本件発明は圧縮時の熱伝導率を非圧縮時の熱伝導率よりも大きくするという観点からグラフェンを選択したものといえるところ、甲1にはこのような観点についても記載されていないことから、甲1発明1において、黒鉛材料として種々の形態が例示された中から「HC-95」に代えてグラフェンを採用することが動機付けられるとはいえない。
次に、効果について検討する。
本件特許明細書の【0033】ないし【0041】及び【図1】には、ポリオール100重量部に対してグラフェンを15重量部配合した実施例3の「(50%圧縮)-(非圧縮)差」が0.0027W/mKであるのに対し、ポリオール100重量部に対して膨張黒鉛を15重量部配合した比較例2の「(50%圧縮)-(非圧縮)差」が0.0003W/mKであり、実施例3の「(50%圧縮)-(非圧縮)差」が比較例2のそれに対して顕著に大きい値であることが示されている。
そうすると、本件発明1において、相違点1-1に係る事項を採用することにより奏される「軟質ポリウレタンフォーム組成物にグラフェンを配合したことにより、得られる軟質ポリウレタンフォームは熱伝導性が良好となり、その良好な熱伝導性によって熱のこもりを防ぎ、蒸れ難くできる。」(【0011】)及び「本発明の軟質ポリウレタンフォームは、圧縮時の熱伝導率が大であるのが好ましく、具体的には50%圧縮時の熱伝導率が非圧縮時の熱伝導率よりも大であるのが好ましく、50%圧縮時の熱伝導率が非圧縮時の熱伝導率が0.0006W/mK以上大きいのが効果的で好ましい。」(【0029】)という効果は、甲1発明1並びに甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項からみて、本件発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、令和5年3月23日提出の意見書において、「請求項1に係る発明(以下「請求項1」と称す)と甲1発明1との間に、取消理由通知書(令和4年12月28日起案)に記載された相違点1,2,4に加え、以下の相違点Aが新たに生じた。
相違点A:請求項1は軟質ポリウレタンフォームの25%硬さ(JIS K6400-2)が22N以下であるのに対し、甲1発明1はTCフォームの25%硬さが不明な点。
・・・
参考資料1には相違点Aに係る25%硬さ(JIS K6400-2)が20N以下の軟質ポリウレタンフォームが記載されている。相違点Aに係る事項は本願出願日前に周知であるから、相違点1,2,4及び相違点Aに係る事項を含む請求項1は、甲1発明1に基づいて、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項を組み合わせ、さらに参考資料1に記載された周知の技術を単に寄せ集めることにより、容易に発明をすることができたものである。」(2ページ3行~3ページ6行)と主張している。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、甲1発明1において、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないことから、上記(ア)の相違点1-3についての当該主張は、上記(イ)の判断に影響するものではない。
(エ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1ではないし、甲1発明1並びに甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「ポリオール」、「泡化及びゲル化触媒」及び「イソシアネート化合物」は、本件発明2における「ポリオール」、「触媒」及び「イソシアネート」にそれぞれ相当する。
甲1発明1における「水」は、ポリウレタンフォームを形成する際に発泡剤として機能することは明らかであるから、本件発明2における「発泡剤」に相当する。
甲1発明1における「界面活性剤」は、添加剤の一種であることが当業者に自明であるから、本件発明2における「添加剤」に相当する。
また、甲1発明1における「組成物を発泡硬化させてなるTC(熱伝導性)フォーム」は、ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を含むBサイドに黒鉛添加剤であるHC-95を混合した組成物に対してイソシアネート化合物からなるAサイドを混合してなる組成物を原料として発泡(反応)硬化させて形成されるポリウレタンフォームであることが当業者に自明であるから、本件発明2における「ポリウレタンフォーム組成物から得られた」「ポリウレタンフォーム」に相当する。
してみると、本件発明2と甲1発明1とは、
「ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られたポリウレタンフォーム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-5:本件発明2では「添加剤としてグラフェン」を含むのに対して、甲1発明1では「黒鉛添加剤であるHC-95」を含む点。
相違点1-6:本件発明2では「グラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含」むのに対して、甲1発明1では「Bサイド100重量部に黒鉛添加剤であるHC-95の10部を混合」する点
相違点1-7:「ポリウレタンフォーム」について、本件発明2では「軟質」であるのに対して、甲1発明1ではそのような特定はない点
相違点1-8:本件発明2では「軟質ポリウレタンフォームを備える物品であって、衣料用パット、ブラジャー用パットから選択される物品」であるのに対して、甲1発明1では「TC(熱伝導性)フォーム」であり、物品に係る用途につき特定されていない点
(イ)検討
上記相違点1-5について検討すると、上記2 ア(ア)の相違点1-1と同旨であるから、上記2 ア(イ)と同様に判断される。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、令和5年3月23日提出の意見書において、「請求項2に係る発明(以下「請求項2」と称す)と甲1発明1との間に、上記の取消理由通知書に記載された相違点1’,2’,4’に加え、以下の相違点Bが新たに生じた。
相違点B:請求項2は衣料用パット、ブラジャー用パットから選択される物品であるのに対し、甲1発明1はTCフォームの物品に係る用途が特定されていない点。
甲1の請求項12や請求項17にTCフォームを適用した様々な物品が記載されている。相違点Bに係る衣料用パットやプラジャー用パットは甲1に明記されていないが、甲1発明1のTCフォームを衣料用パットやブラジャー用パットの用途に供することは、所望に応じて当業者が適宜なし得ることである。」(3ページ8~17行)と主張しているが、上記(イ)で検討したとおり、甲1発明1において、相違点1-5に係る本件発明2の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないことから、上記(ア)の相違点1-8についての当該主張は、上記(イ)の判断に影響するものではない。
(エ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明1ではないし、甲1発明1、甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「ポリオール」、「泡化及びゲル化触媒」及び「イソシアネート化合物」は、本件発明3における「ポリオール」、「触媒」及び「イソシアネート」にそれぞれ相当する。
甲1発明2における「水」は、ポリウレタンフォームを形成する際に発泡剤として機能することは明らかであるから、本件発明3における「発泡剤」に相当する。
甲1発明2における「界面活性剤」は、添加剤の一種であることが当業者に自明であるから、本件発明3における「添加剤」に相当する。
また、甲1発明2における「組成物を発泡硬化させてなるTC(熱伝導性)フォーム」は、ポリオール、界面活性剤、泡化及びゲル化触媒、水を含むBサイドに黒鉛添加剤であるHC-95を混合した組成物に対してイソシアネート化合物からなるAサイドを混合してなる組成物を原料として発泡(反応)硬化させてポリウレタンフォームを形成していることが当業者に自明であるから、本件発明3における「ポリウレタンフォーム組成物を発泡させるポリウレタンフォームの製造方法」に相当する。
してみると、本件発明3と甲1発明2とは、
「ポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合された」「ポリウレタンフォーム組成物を発泡させるポリウレタンフォームの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1-9:本件発明3では「添加剤としてグラフェン」を含むのに対して、甲1発明2では「黒鉛添加剤であるHC-95」を含む点。
相違点1-10:本件発明3では「グラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含む」のに対して、甲1発明2では「Bサイド100重量部に黒鉛添加剤であるHC-95の10部を混合」する点
相違点1-11:「添加剤」について、本件発明3では「整泡剤」を含むのに対して、甲1発明2ではそのような特定がない点
相違点1-12:「ポリオール」について、本件発明3では、「水酸基価(OHV)が25~70mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が2000~7000であるポリオールと、水酸基価(OHV)が50~840mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が200~2000であるポリオールを併用」するのに対し、甲1発明2ではそのような特定がない点
(イ)検討
上記相違点1-9について検討すると、上記2 ア(ア)の相違点1-1と同旨であるから、上記2 ア(イ)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明2ではないし、甲1発明2、甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の意見について
申立人は、令和5年3月23日提出の意見書において、「請求項3に係る発明(以下「請求項3」と称す)と甲1発明2との間に、上記の取消理由通知書に記載された相違点1”、2”、4”に加え、以下の相違点C,D,Eが新たに生じた。
・・・
相違点D:請求項3はポリオールとして水酸基価が25-70mgKOH/g、官能基数が2-4、重量平均分子量が2000-7000であるポリオールと、水酸基価が50-840mgKOH/g、官能基数が2-4、重量平均分子量が200-2000であるポリオールを併用するのに対し、甲1発明2はポリオールの水酸基価などが不明な点。
・・・
参考資料1には・・・、相違点Dに係る水酸基価などの範囲が重複するポリオールAないしDが記載されている。
・・・
相違点C,D,Eに係る事項は参考資料1に記載されているため、相違点C,D,Eに係る事項は本願出願日前に周知である。従って相違点1”、2”、4”及び相違点C,D,Eに係る事項を含む請求項3は、甲1発明2に基づいて、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項を組み合わせ、さらに参考資料1に記載された周知の技術を単に寄せ集めることにより、容易に発明をすることができたものである。」(3ページ22行~6ページ1行)と主張している。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、甲1発明2において、相違点1-9に係る本件発明3の発明特定事項を採用することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないことから、上記(ア)の相違点1-12についての当該主張は、上記(イ)の判断に影響するものではない。
(エ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明2ではないし、甲1発明2、甲1及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 取消理由、申立理由1及び申立理由2-1についての検討のまとめ
上記2のとおりであるから、取消理由、申立理由1及び申立理由2-1はその理由がない。
3 申立理由1及び申立理由2-1以外の特許異議申立理由
取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は次のとおりである。
・申立理由2-2(甲4を主引例とする進歩性)
以下検討する。
(1)申立理由2-2(甲4を主引例とする進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明1とを対比すると、甲4発明1における「ポリオール」、「黒鉛」、「原料」及び「ウレタンフォーム」は、本件発明1における「ポリオール」、「添加剤」、「ポリウレタンフォーム組成物」及び「ポリウレタンフォーム」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明1と甲4発明1とは、
「ポリオール、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られたポリウレタンフォーム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4-1:本件発明1では「添加剤としてグラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含」むのに対して、甲4発明1では「黒鉛」を含むものの、「グラフェン」を含むことについて特定されていない点
相違点4-2:本件発明1では「イソシアネート」、「発泡剤」及び「触媒」が配合されているのに対し、甲4発明1ではそのような特定がない点
相違点4-3:フォームの25%硬さについて、本件発明1では「25%硬さ(JISK6400-2)が22N以下である」のに対して、甲4発明1では特定されていない点
相違点4-4:本件発明1では「軟質ポリウレタンフォーム」であるのに対して、甲4発明1では「軟質」であることについて特定されていない点
(イ)検討
上記相違点4-1について検討する。
甲4は、エンジン類等の音源の周囲に取り付けられ、エンジン類の伝搬音や振動を低減するとともに周囲の温度が上昇しても劣化が促進されず寿命の長い吸音材の提供を課題とするものである(摘示(l))。一方、甲1は、柔軟な多孔性のフォームと黒鉛材料で構成された熱伝導性の高い黒鉛含有フォームを提供することを課題とするものであり(摘示(d))、クッションやマットレスの熱伝導を改善することが記載されているから(摘示(e)の[0038])、甲4とは課題も技術分野も相違している。そして、甲1には、黒鉛材料として、各種形態の黒鉛材料の他、グラフェンが例示されているが、そもそも黒鉛とグラフェンは別異の炭素材料であり、甲1にはグラフェンを適用した具体例も記載されておらず、グラフェンが黒鉛よりも優れた熱伝導材であることも示されていないから、黒鉛と同程度に甲4の上記課題を解決できる熱伝導材であることまでは示されていない。
よって、甲4に記載の黒鉛に代えて甲1に記載のグラフェンを採用することが動機付けられるとはいえないし、甲1以外の他の提出された証拠にも甲4発明1と組み合わせる動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4発明1において、相違点4-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1において、相違点4-1に係る事項を採用することにより奏される効果については、上記2 ア(イ)と同様の理由により、甲4発明1並びに甲4及びその他の提出された証拠に記載された事項からみて、本件発明1の構成から当業者が予測できる範囲の効果を超える顕著なものである。
(ウ)申立人の特許異議申立書における主張について
申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明も甲4発明も軟質ポリウレタンフォームの技術分野に属する。甲1発明も甲4発明も軟質ポリウレタンフォームの熱伝導性を向上するという共通の課題を有する。甲1発明の黒鉛材料(黒鉛やグラフェン)も甲4発明の黒鉛も、軟質ポリウレタンフォームに熱伝導性を付与する機能・作用を有する。よって甲4発明に甲1発明を適用する動機付けがある。
甲4発明に甲1発明を適用して、黒鉛を含む軟質ポリウレタンフォームの熱伝導性をさらに向上させるため、熱伝導率が高いグラフェンに黒鉛を置き換えると、相違点1及び2に係る発明特定事項に到達できる。」(16ページ10~17行)と主張している。
しかしながら、甲4は吸音材に関するものであるのに対し、甲1はクッションやマットレス等に用いる柔軟な多孔質のフォームに関するものであるから、両者は技術分野が異なっており、また、甲4には、熱伝導率が0.1~0.5W/mKである理由として、「0.5W/mKを超えても多孔質体の温度上昇を抑制する効果に差異が見られなくなるからである。」(摘示(l)【0021】)と記載されているように、熱伝導率をさらに向上させる動機付けがあるとはいえず、さらに、甲4には、ウレタンフォームが「軟質」であることについての記載もないことから、甲1及び甲4が直ちに「軟質ポリウレタンフォームの熱伝導性を向上するという共通の課題を有する」ともいえない。
したがって、上記主張は上記(イ)の判断に影響を与えるものではない。
(エ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明1、甲4及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
.イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲4発明1とを対比すると、甲4発明1における「ポリオール」、「黒鉛」、「原料」及び「ウレタンフォーム」は、本件発明2における「ポリオール」、「添加剤」、「ポリウレタンフォーム組成物」及び「ポリウレタンフォーム」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明2と甲4発明1とは、
「ポリオール、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られたポリウレタンフォーム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4-5:本件発明2では「添加剤としてグラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含」むのに対して、甲4発明1では「黒鉛」を含むものの、「グラフェン」を含むことについて特定されていない点
相違点4-6:本件発明2では「イソシアネート」、「発泡剤」及び「触媒」が配合されているのに対し、甲4発明1ではそのような特定がない点
相違点4-7:本件発明2では「軟質ポリウレタンフォーム」であるのに対して、甲4発明1では「軟質」であることについて特定されていない点
相違点4-8:本件発明2では「軟質ポリウレタンフォームを備える物品であって、衣料用パット、ブラジャー用パットから選択される物品」であるのに対して、甲4発明1では「TC(熱伝導性)フォーム」であり、物品に係る用途につき特定されていない点
(イ)検討
上記相違点4-5について検討すると、上記ア(ア)の相違点4-1と同旨であるから、上記ア(イ)と同様に判断される。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明1並びに甲4及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲4発明2とを対比すると、甲4発明2における「ポリオール」、「黒鉛」、「原料」及び「ウレタンフォーム」は、本件発明3における「ポリオール」、「添加剤」、「ポリウレタンフォーム組成物」及び「ポリウレタンフォーム」にそれぞれ相当する。
してみると、本件発明3と甲4発明2とは、
「ポリオール、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られたポリウレタンフォームの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4-9:本件発明3では「添加剤としてグラフェンを、ポリオール100重量部に対して15~60重量部含」むのに対して、甲4発明2では「黒鉛」を含むものの、「グラフェン」を含むことについて特定されていない点
相違点4-10:本件発明3では「イソシアネート」、「発泡剤」及び「触媒」が配合されているのに対し、甲4発明2ではそのような特定がない点
相違点4-11:「添加剤」について、本件発明3では「整泡剤」を含むのに対して、甲4発明2ではそのような特定がない点
相違点4-12:「ポリオール」について、本件発明3では、「水酸基価(OHV)が25~70mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が2000~7000であるポリオールと、水酸基価(OHV)が50~840mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が200~2000であるポリオールを併用」するのに対し、甲4発明2ではそのような特定がない点
相違点4-13:「イソシアネート」について、本件発明3では「ポリメリックイソシアネートを用い」るのに対し、甲4発明2ではそのような特定がない点
相違点4-14:本件発明3では「軟質ポリウレタンフォーム」であるのに対して、甲4発明2では「軟質」であることについて特定されていない点
(イ)検討
上記相違点4-9について検討すると、上記ア(ア)の相違点4-1と同旨であるから、上記ア(イ)と同様に判断される。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲4発明2並びに甲4及びその他の提出された証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 申立理由2-2(甲4を主引例とする進歩性)に係る検討のまとめ
上記アないしウのとおりであるから、申立理由2-2(甲4を主引例とする進歩性)はその理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、上記本件訂正は、適法であるから、これを認める。
そして、本件訂正後の請求項1ないし3に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)の取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701049