特許異議申立
2019-700048
離型剤除去方法、及びタイヤ
- 審判番号
- 2019-700048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-097722
- 登録番号
- 特許第6364228号(P6364228)
- 請求日
- 2019年01月24日
- 審決日
- 2020年03月06日
- 公報発行日
- 2020年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ブリヂストン
- 【権利者代理人】宮園 靖夫
- 【異議申立人】泉 美幸
- 審判長/審判官
- 審判長 須藤 康洋
- 審判官 大島 祥吾
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-YAA(B29D) / P1651.536-YAA(B29D) / P1651.537-YAA(B29D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6364228号発明「離型剤除去方法、及びタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6364228号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について訂正することを認める。
特許第6364228号の請求項1ないし3、5ないし7に係る特許を維持する。
特許第6364228号の請求項4に係特許についての特許異議の申し立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6364228号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成26年5月9日の出願であって、平成30年7月6日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、平成31年1月24日に特許異議申立人 泉美幸(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、平成31年4月16日付けで取消理由が通知され、令和1年6月17日に特許権者 株式会社ブリヂストン(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年7月12日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、同年8月8日に訂正請求取下書が提出がされ、同年同月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月1日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がされ、その訂正の請求に対して、同年12月25日に特許異議申立人から意見書が提出がなされたものである。
第2 訂正の許否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「加硫成型後のタイヤ表面において被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、前記被着領域におけるタイヤ表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成することを特徴とする離型剤除去方法。」
とあるのを、
「加硫成型後のタイヤサイド部の外表面において被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、前記被着領域における前記外表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成することを特徴とする離型剤除去方法。」
に訂正する。
併せて、訂正前の請求項1を引用する請求項2ないし6についても、その引用部分について同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記各凹部における凹部形成前のタイヤ表面から、凹部形成後の最深部までの深さが10μmよりも浅いことを特徴とする請求項1記載の離型剤除去方法。」
とあるのを、
「前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さが10μmよりも浅いことを特徴とする請求項1記載の離型剤除去方法。」
に訂正する。
併せて、訂正前の請求項2を引用する請求項3ないし6についても、その引用部分について同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「前記各凹部における凹部形成前のタイヤ表面から、凹部形成後の最深部までの深さを8μm以下に形成することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の離型剤除去方法。」
とあるのを、
「前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さを8μm以下に形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の離型剤除去方法。」
に訂正する。
併せて、訂正前の請求項5を引用する請求項6についても、その引用部分について同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「前記レーザー光を前記タイヤ表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の離型剤除去方法。」
とあるのを、
「前記レーザー光を前記外表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射することを特徴とする請求項5に記載の離型剤除去方法。」
に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の表面に離型剤を有するタイヤであって、
前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有することを特徴とするタイヤ。」
とあるのを、
「サイド部の外表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の前記外表面に離型剤を有するタイヤであって、
前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有することを特徴とするタイヤ。」
に訂正する。
(7) 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0006】に記載された
「上記課題を解決するための離型剤除去方法として、加硫成型後のタイヤ表面において被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、前記被着領域におけるタイヤ表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成するので、被着領域に付着した離型剤がゴムごと除去されるため、タイヤ表面の上記被着領域から離型剤を簡単かつ確実に除去することができ、離型剤の除去作業の効率を向上させることができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記各凹部における凹部形成前のタイヤ表面から、凹部形成後の最深部までの深さが10μmよりも浅いので、タイヤの性能に影響を及ぼすことなく離型剤を除去することができる。
また、前記各凹部の深さを最深部から周縁に向かって浅くなるように形成するので、タイヤ使用時のたわみによる繰り返しひずみが凹部に作用しても、凹部の形成に起因したクラックの発生を防止することができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記隣接する各凹部における前記最深部の間隔を、インクジェット方式により吐出され、前記被着部を形成するインク滴の直径よりも大きく、かつ、100μm以下となるように形成するので、被着領域を形成する各凹部にインク滴を確実に侵入させて、タイヤ表面にインク層を確実に密着させることができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記各凹部における凹部形成前のタイヤ表面から、凹部形成後の最深部までの深さを8μm以下に形成するので、タイヤ使用時に凹部に繰り返しひずみが作用しても、凹部の形成に起因するクラックの発生をより効果的に防止することができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記レーザー光を前記タイヤ表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射するので、凹部の最深部がタイヤ表面の低い側に位置するため、インク滴の液だれを防止できる。
上記課題を解決するためのタイヤの構成として、表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の表面に離型剤を有するタイヤであって、前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するので、被着領域に対して印刷工程やシーリング工程などの後工程を行えば、被着領域以外の領域に比べて被着領域の表面積が広いため、インクやシーリング材のタイヤ表面への密着力を向上させることができる。」
との記載を、
「上記課題を解決するための離型剤除去方法として、加硫成型後のタイヤサイド部の外表面において被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、前記被着領域における前記外表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成するので、被着領域に付着した離型剤がゴムごと除去されるため、前記外表面の上記被着領域から離型剤を簡単かつ確実に除去することができ、離型剤の除去作業の効率を向上させることができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さが10μmよりも浅いので、タイヤの性能に影響を及ぼすことなく離型剤を除去することができる。
また、前記各凹部の深さを最深部から周縁に向かって浅くなるように形成するので、タイヤ使用時のたわみによる繰り返しひずみが凹部に作用しても、凹部の形成に起因したクラックの発生を防止することができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さを8μm以下に形成するので、タイヤ使用時に凹部に繰り返しひずみが作用しても、凹部の形成に起因するクラックの発生をより効果的に防止することができる。
また、他の離型剤除去方法として、前記レーザー光を前記外表面に対して、当該外表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射するので、凹部の最深部が外表面の低い側に位置するため、インク滴の液だれを防止できる。
上記課題を解決するためのタイヤの構成として、サイド部の外表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の前記外表面に離型剤を有するタイヤであって、前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するので、被着領域に対して印刷工程やシーリング工程などの後工程を行えば、被着領域以外の領域に比べて被着領域の表面積が広いため、インクやシーリング材の外表面への密着力を向上させることができる。」
に訂正する。
なお、本件訂正請求における明細書に係る訂正は、一群の請求項[1-7]について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 請求項1に係る訂正(訂正事項1)について
請求項1に係る訂正は、「タイヤ表面」を「タイヤサイド部の外表面」に変更し、それに伴い、後の「タイヤ表面」を「前記外表面」に変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「タイヤサイド部の外表面」については、段落【0009】に、「タイヤ表面のうち外周側の表面であるサイド面2a」との記載とともに【図2】、【図5】が示されていることから、請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
請求項1の記載を引用する請求項2ないし6も同様である。
(2) 請求項2に係る訂正(訂正事項2)について
請求項2に係る訂正は、「タイヤ表面」を「前記外表面」に変更するものであるが、これは、請求項1に係る訂正の「タイヤサイド部の外表面」を引用する形式で「前記外表面」に変更するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項2に係る当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
請求項2の記載を引用する請求項3ないし6も同様である。
(3) 請求項4に係る訂正(訂正事項3)について
請求項4を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(4) 請求項5に係る訂正(訂正事項4)及び請求項6に係る訂正(訂正事項5)について
請求項5、6に係る訂正は、いずれも、請求項1における「タイヤサイド部の外表面」を引用する形式で表現を改めるとともに、請求項4が削除されたことに伴い引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(5) 請求項7に係る訂正(訂正事項6)について
請求項7に係る訂正は、タイヤの「表面」を「サイド部の外表面」に変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「サイド部の外表面」については、段落【0009】に、「タイヤ表面のうち外周側の表面であるサイド面2a」との記載とともに【図2】、【図5】が示されていることから、請求項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(6) 段落【0006】の訂正(訂正事項7)について
段落【0006】の訂正は、上記(1)ないし(5)の特許請求の範囲の訂正に伴い明細書の記載を特許請求の範囲に整合させるものである。そうすると、段落【0006】の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(7) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-7]について訂正することを認める。
第3 本件発明
請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
加硫成型後のタイヤサイド部の外表面において被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、前記被着領域における前記外表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成することを特徴とする離型剤除去方法。
【請求項2】
前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さが10μmよりも浅いことを特徴とする請求項1記載の離型剤除去方法。。
【請求項3】
前記各凹部の深さを最深部から周縁に向かって浅くなるように形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の離型剤除去方法。
【請求項4】削除
【請求項5】
前記各凹部における凹部形成前の前記外表面から、凹部形成後の最深部までの深さを8μm以下に形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の離型剤除去方法。
【請求項6】
前記レーザー光を前記外表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射することを特徴とする請求項5に記載の離型剤除去方法。
【請求項7】
サイド部の外表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の前記外表面に離型剤を有するタイヤであって、
前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有することを特徴とするタイヤ。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が、訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
申立理由1-1(進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由1-2(進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第5号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由1-3(進歩性) 本件特許の訂正前の請求項1ないし7に係る特許は、甲第6号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・甲第1号証:特開2005-350057号公報
・甲第2号証:特開2011-105913号公報
・甲第3号証:特開2006-289441号公報
・甲第4号証:特開2011-062650号公報
・甲第5号証:特表2013-528492号公報
・甲第6号証:特開平07-178842号公報
・甲第7号証:特開2011-185611号公報
申立理由2(明確性) 本件特許の訂正前の請求項4ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
そして、申立理由2の具体的理由の概略は次のとおりである。
(申立理由2-1)
訂正前の請求項4には、「前記隣接する各凹部における前記最深部の間隔を、インクジェット方式により吐出され、前記被着部を形成するインク滴の直径よりも大きく、かつ、100μm以下となるように形成する」と記載されている。
しかしながら、インク滴の直径は、インクジェット装置により異なるものであり、インクジェット装置が特定されていない以上、インク滴の直径が特定できず、最深部の間隔の下限値が明確ではない。また、インク滴の直径は、インクが吐出されて空中にあるときの球体状の直径か、被着部に被着したときの円形体の直径であるのか明らかではない。
(申立理由2-2)
訂正前の請求項6には、「前記レーザー光を前記タイヤ表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射する」と記載されている。
しかしながら、「タイヤ表面の傾斜方向がどの方向を意味しているのか不明であり、その結果、タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向がタイヤ表面に対して直交する方向を除く全ての方向を含んでいるのか、特定の方向を意図しているのかが明確ではない。なお、前者であれば、「インク滴の液だれを防止する」との課題を解決できないものも含まれる蓋然性が高く、後者であれば、どの方向に特定しようとしているのか、依然として不明確である。
(申立理由2-3)
訂正前の請求項7には、「前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有することを特徴とするタイヤ」と記載されている。
しかしながら、訂正前の請求項7に係る発明は、「タイヤ」という物の発明であるところ、複数の凹部が間欠的に形成されると、各凹部が離間していることになり、重複部を有することがないため、矛盾が生じる。
また、「間欠的」が時間的な要素であったとしても、各凹部の形状が特定されておらず、どの部分を重複部とするのかが明確ではない。すなわち、複数の凹部が重複部を有して間欠的に形成された物と、複数の凹部が連続的に形成された物との違いが、物の発明において明確ではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
本件特許の訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和1年8月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1-1
本件特許の訂正前の請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由1-2
本件特許の訂正前の請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証ないし甲第5号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2005-350057号公報
甲第2号証:特開2011-105913号公報
甲第3号証:特開2006-289441号公報
甲第4号証:特開2011-62650号公報
甲第5号証:特表2013-528492号公報
3 取消理由2
本件特許の訂正前の請求項4ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
すなわち、
訂正前の請求項4には、
「前記隣接する各凹部における前記最深部の間隔を、インクジェット方式により吐出され、前記被着部を形成するインク滴の直径よりも大きく、かつ、100μm以下となるように形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の離型剤除去方法。」
と、隣接する各凹部における最深部の間隔の下限値について、「インクジェット方式により吐出され、前記被着部を形成するインク滴の直径よりも大き」いことが記載されている。
そこで、この点について検討するに、インクジェット方式の印刷機器におけるインク滴の直径は、その機器により異なる(機器における解像度の違い自体、インク滴の直径に影響する)ことは明らかである。
しかもこの点について、明細書には、「例えば、後工程における処理が、インクジェット方式によりサイド面2aにインク滴を被着させてインク層を形成する場合には、図9に示すように、隣接する凹部Mの最深部m1同士の間隔Dが、インクジェット方式の印刷ヘッド90から吐出されるインク滴90aの直径dよりも大きく、例えば100μmよりも小さくなるようにタイヤの回転速度に応じてパルス幅を制御する。」(段落【0038】)との記載はあるものの、インク滴の直径dがどの程度なのか何ら記載されていない。
そして、明細書中には、具体的なインクジェット方式の印刷機器が示されてもいないため、インク滴の直径がどの程度であるのかを把握することはできない。
してみると、隣接する各凹部における最深部の間隔の下限値が、当業者にとって明確であるとはいえない。
請求項4の記載を引用する請求項5、6に係る発明においても同様である。
なお、取消理由1-1、取消理由1-2は、特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち、申立理由1-1、申立理由1-2と同旨である。
また、取消理由2は、特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち、申立理由2-1と同旨である。
第6 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1) 取消理由1-1(特許法第29条第2項)について
ア 甲第1号証、甲第2号証の記載事項
(ア) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。証拠について以下同様。)
「【請求項1】
トランスポンダハウジングとアンテナとを有する種類のトランスポンダ装置を取付けるために、タイヤ表面の前処理をおこなう方法において、
前記トランスポンダ装置を受け入れるようにされた設置面を有する、タイヤの目標表面を定めるステップと、
前記タイヤの目標表面を、クリーニング装置に接近可能な位置に設置するステップと、
望ましくない表面物質を前記タイヤの目標表面から実質的に除去するように、前記クリーニング装置を動かすステップと、
を有することを特徴とする方法。」
「【0001】
本発明は、一般的には、タイヤのセンサまたは監視システムのタイヤへの取付け方法に関し、特に、センサやタグやアンテナを取付けるためのタイヤ表面の前処理方法、およびその装置に関する。」
「【0004】
タイヤ硬化サイクルの厳しい環境から電子部品を保護するため、アンテナとトランスポンダ装置を、硬化後の工程で、接着剤によってタイヤの指定領域に取付けることが提案されている。しかし、アンテナ・トランスポンダ集合体をタイヤのサイドウォール内壁に接着剤によってしっかりと取付けることは、多くの理由から問題であることがわかっている。タイヤの指定された目標部位に存在する剥離剤や他の汚染物は、トランスポンダ集合体とタイヤとの接着固定を弱め、あるいは抑えるように作用することがある。タイヤとトランスポンダ集合体との接着固定の品質が低下すると、タイヤの耐用年数中のある時点でトランスポンダ集合体が取れてしまうこともある。すなわち、表面剥離剤に起因してトランスポンダ集合体のタイヤへの固定が損なわれることは、長期的な関連で重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、目標タイヤ面の前処理プロセスを通じて、タイヤインナーウォールとトランスポンダ集合体とを接着剤によってしっかりと確実に接合する必要性が存在している。タイヤサイドウォールの内壁の指定された目標部位から、目標部位以外の他の部位を除き、剥離剤および/または汚染物を除去する、適切な方法および装置が望まれている。この目標タイヤ面を前処理する方法および装置は、効率的に、好ましい態様で、かつ自動化されて機能しなければならない。この処理は、望ましい場合あるいは望まれる場合には、別のタイヤ面前処理技術や材料を利用できる柔軟性が必要である。さらに、いかに適切な方法や装置であっても、コスト的に有利で、信頼できるものでなければならず、作動時の環境への影響は最小でなければならない。」
「【0012】
図1をさらに参照すると、装置10は、タイヤ12のライナー22に、好ましくは製造後の組立て工程で取付けられる。取付けには、接着剤、または、装置をゴム合成物に固定する公知の従来の方法を用いることができる。インナーライナー22は通常、製造工程中に、タイヤ製造分野における従来タイプのライナーセメントで覆われる。このような物質は、タイヤを型から容易に取外すのには有用であるが、装置10とライナー22との間の信頼性の高い接着の実現には有害となる可能性がある。このような物質をタイヤの目標表面から除去し、あるいは、このような物質がタイヤ表面に付着しないよう表面を遮蔽するために、本発明は、好ましい方法および装置、ならびに代替の方法および装置について示しており、以下に説明する。」
「【0017】
図6は、剥離剤を含んだゴムの表面を焼いて除去するために十分な強度を備えたレーザービーム64によってライナーの表面が照射される、レーザークリーニング法を示している。焼かれて残ったゴム層は、例えば、溶剤やバフ研磨や他の公知の技術を用いて除去することが望ましい。」
「
」
これらの記載から見て、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認める。
「硬化後のタイヤのインナーライナー表面においてトランスポンダ装置が取り付けられる指定領域から剥離剤を除去する剥離剤除去方法であって、
前記指定領域における剥離剤を含んだゴムの表面を焼いて除去するために十分な強度を備えたレーザービームを照射する、剥離剤除去方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
「硬化後のタイヤのインナーライナー表面において、トランスポンダ装置が取り付けられる指定領域から剥離剤をレーザービームにより除去したタイヤ。」(以下、「甲1物品発明」という。)
(なお、「甲1方法発明」と「甲1物品発明」を総称して、「甲1発明」という場合がある。)
(イ) 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には次の事項が記載されている。
「【請求項2】
ゴム基材の表層部を、レーザ照射装置からのレーザ照射によって、剥離除去することを特徴とするゴム表面の加工方法。」
「【0015】
第一の発明における第二態様に係るゴム表面の加工方法においては、レーザ照射装置からのレーザ照射によって、ゴム基材の表層部を、簡易に剥離除去することができる。従って、この加工方法による加工処理を、第二の発明のように、ゴム基材からなるシール部材のシールリップ部における前記相手部材に対する摺接面に施すようにすれば、ゴム表面の所謂スキン層が除去されることになるから、ゴム表面を撥水性及び親油性に改質することができる。これによって、使用環境による泥水等によるアタック防止効果が得られると共に、グリス等の油性の潤滑剤の濡れ性が良くなり、相手部材との間に介在される潤滑剤が摺接面に均等に行き渡り、相手部材との摺接抵抗が小さく、摩擦或いは摩耗性等が改善される。
そして、前記レーザ照射装置を前記ゴム基材に沿って所定の速度で走査させながら、前記レーザを連続的に照射することにより、ゴム基材の表層部を簡易に除去することができる。この場合、レーザの照射条件(周波数、時間等)、レーザ照射の走査速度を適宜設定することによって、潤滑剤の濡れ性(撥水性、親油性)を、適用条件に応じて任意に適正化することができる。この場合、レーザをパルス発振により照射することで、連続(CW)発振に比べゴムの熱損傷を少なくすることが可能となる。」
「【0027】
表層部の除去を行う場合において、連続(CW)モードでレーザを照射する場合は、レーザを所定の速度で走査照射することによって、レーザが照射された部位の表層部の剥離を行う。また、パルスモードでレーザを照射する場合は、前記と同様に周波数でコントロールするか、時間でコントロールしたパルスパターンのレーザを所定の速度で走査照射することによって、レーザが照射された部位の表層部の剥離を行う。更に、Qスイッチモードでレーザを照射する場合、パルス間隔の小さな短パルスをQスイッチによって発振させるようにし、これを所定の速度で走査照射することによって、レーザが照射された部位の表層部の剥離を行う。」
イ 本件発明1ないし3及び5ないし7と甲1発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲1方法発明とを対比する。
甲1方法発明の「硬化後のタイヤ」、「トランスポンダ装置」、「取り付けられる」、「指定領域」、「剥離剤」、「除去するために十分な強度」、「レーザービーム」はそれぞれ、本件発明1の「加硫成型後のタイヤ」、「被着物」、「被着される」、「被着領域」、「離型剤」、「除去可能な強度」、「レーザー光」に相当する。
そこで、本件発明1と甲1方法発明とを対比すると、両者は、
「加硫成型後のタイヤにおいて被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法であって、
前記被着領域におけるタイヤ表面のゴムを除去可能な強度を有するレーザー光を照射する離型剤除去方法。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
離型剤除去方法の対象表面が、本件発明1は「タイヤサイド部の外表面」であるのに対し、甲1方法発明は「インナーライナー表面」であること。
(相違点2)
本件発明1は、「レーザー光を移動させながら間欠的に照射し、前記被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成する」ものであると特定するのに対し、甲1方法発明はそのような特定事項を有しない点。
まず、相違点1について検討するに、甲1方法発明は、インナーライナー表面にトランスポンダを設けることを前提に、インナーライナー表面の処理を行うものである。
そして、対象表面が異なればその性状は通常異なるものであること、さらには、甲第2号証を見ても、インナーライナー表面にトランスポンダを設けるための処理を、タイヤサイド部の外表面に適用することを記載あるいは示唆する記載もないことから、インナーライナー表面を対象とした処理である甲1方法発明を、インナーライナー表面ではない、タイヤサイド部の外表面の処理に適用しようとすることは、当業者といえども容易になし得ることとはいえない。
なお、この点に関し、特許異議申立人は、令和1年12月25日付け意見書において、トランスポンダ装置の配置について参考資料1~6を、タイヤサイド部にも離型剤が存在することについて参考資料7~8を提出し、甲1方法発明をタイヤサイド部の外表面に適用しようとすることは容易である旨主張する。
参考資料1:特開2014-54978号公報
参考資料2:特表2010-508417号公報
参考資料3:特開2005-8001号公報
参考資料4:特開2004-90775号公報
参考資料5:特開平5-169931号公報
参考資料6:特開昭52-110682号公報
参考資料7:特開2012-148558号公報
参考資料8:特開2011-220687号公報
しかしながら、上述のとおり、甲1方法発明は、あくまで、インナーライナー表面にトランスポンダを設けることにおける課題を解決するためのものであって、しかもタイヤサイド部の外表面はその性状がインナーライナー表面と異なるものであるのは技術常識であるから、参考資料1~8の記載を参酌しても、甲1方法発明を直ちにタイヤサイド部の外表面に適用することができるとはいえない。
してみれば、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3、5及び6も同様に、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明7について
本件発明7と甲1物品発明とを対比する。
甲1物品発明の「剥離剤」、「指定領域」はそれぞれ、本件発明7の「離型剤」、「被着領域」に相当する。そして、甲1物品発明において、指定領域から剥離剤を除去するものであるから、指定領域外には剥離剤は当然有するものといえる。
そこで、本件発明7と甲1物品発明とを対比すると、両者は、
「離型剤が除去された被着領域を有し、当該被着領域以外の部分に離型剤を有するタイヤ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点3)
離型剤除去の対象表面が、本件発明7は「タイヤサイド部の外表面」であるのに対し、甲1物品発明は「インナーライナー表面」であること。
(相違点4)
被着領域について、本件発明7は「深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する」ものであると特定するのに対し、甲1物品発明には、そのような特定事項を有しない点。
(相違点5)
本件発明7は、複数の凹部が「間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有する」ものであると特定するのに対し、甲1物品発明はそのような特定事項を有しない点。
まず、相違点3について検討する。
甲1物品発明は、離型剤除去の対象表面が「インナーライナー表面」であり、甲第1号証全体の記載を見ても、「タイヤサイド部の外表面」の離型剤を除去することについては記載も示唆もない。
そして、相違点1についての検討のとおり、甲第1号証は、インナーライナー表面にトランスポンダ装置を設けることを前提とした技術を開示するものであるから、甲1発明がインナーライナー表面の剥離剤を除去したものであるとしても、タイヤサイド部の外表面の処理をし、相違点3に係る構成を導くことはできない。
してみれば、相違点4、5について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1物品発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 取消理由1-2(特許法第29条第2項)について
ア 甲第1号証、甲第3-5号証の記載事項
(ア) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明については、上記(1)ア(ア)に記載のとおりである。
(イ) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
パルス幅が10ピコ秒未満のパルスレーザ光を走査照射することにより、被加工部材を、少なくとも一部、前記パルスレーザ光の集光スポットに比して広い範囲に渡って除去する
ことを特徴とするレーザ加工方法。」
「【請求項8】
前記走査照射を、前記集光スポットの各々を、互いに少なくとも一部重複させて行う
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。」
「【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱溶融及び熱拡散の発生を抑制しながらも、被加工部材の所定箇所に対する選択的な除去や整形、すなわち微細加工を行うことが可能なレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することにある。」
「
」
(ウ) 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
レーザ光を走査して有機EL用マスクに付着した蒸着物質を除去する有機EL用マスククリーニング方法であって、
前記有機EL用マスクに対して前記レーザ光を間欠的に照射して走査を行うときに、前記レーザ光を照射することにより除去される前記蒸着物質の円形の除去領域を部分的に重ねることでクリーニングエリアの全面に前記除去領域が及ぶようになし、且つ1つの除去領域の中心と他の除去領域とが重ならないように走査したこと
を特徴とする有機EL用マスククリーニング方法。」
「【0012】
そこで、本発明は、パルスレーザを用いて有機EL用マスクを走査してレーザクリーニングを行う場合に、有機EL用マスクに過剰なエネルギーを作用させることなく高い洗浄度でクリーニングを行うことを目的とする。」
「
」
(エ) 甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
スクライビング、ダイシング、切削、又は加工して、異なる光学特性を有する少なくとも2つの非金属材料を含む複合材料を有する加工物のある領域から材料を除去する方法であって、
前記加工物の前記複合材料の方へレーザパルスを誘導するステップであって、前記レーザパルスが数十フェムト秒から約500ピコ秒の範囲内の少なくとも1つのパルス幅、及び数十kHzから約10MHzの範囲内のパルス繰返し率を有する、誘導するステップ、
数ミクロンから約100μmの範囲内のスポット寸法(1/e2)を有するレーザスポット内に前記レーザパルスを集束させるステップであって、少なくとも1つの前記レーザパルスが、前記少なくとも1つのレーザパルスの波長で、前記複合材料内の非線形吸収に対する閾値を上回るパワー密度を提供する、集束させるステップ、並びに
前記複合材料を除去するための隣接する集束スポット(1/e2)間の空間的重複が、前記波長、パルス幅、繰返し率、及びパワー密度で前記加工物をスクライビング、ダイシング、切削、又は加工するのに十分になるように、前記加工物に対して前記レーザスポットを位置決めするステップ
を備え、
前記加工物領域の1つ以上の材料内の蓄熱を制御しながら、前記領域の周りの望ましくない材料の蓄積を制限する、方法。」
「【0014】
1つの概括的な態様では、複合材料を有する加工物をレーザ加工する方法が提供される。この方法は、十分に短いパルス幅で加工物の複合材料のある領域にレーザパルスを集束させて誘導し、従ってこの領域からの迅速な材料除去材料を実現するように1つ若しくは複数の材料内の蓄熱を制御し、並びに熱影響域(HAZ)を低減若しくは最小化し、且つ/又はこの領域内若しくはその近傍の炭化材料の量を、より長いパルスで得られる量に対して低減させるステップを含むことができる。例えば、この方法の幾つかの実施例では、パルス幅は、約10フェムト秒から約500ピコ秒の範囲内とすることができる。」
「
」
イ 本件発明1ないし3及び5ないし7と甲1発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲1方法発明との対比における一致点、相違点については、上記(1)イ(ア)に記載のとおりである。
そして、甲第3号証ないし甲第5号証の記載をあわせて見ても、上記(1)イ(ア)で検討のとおりであるから、本件発明1は、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5、6について
本件発明2、3、5及び6はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3、5及び6も同様に、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明7について
本件発明7と甲1物品発明との対比における一致点、相違点については、上記(1)イ(ウ)に記載のとおりである。
そして、上記(1)イ(ウ)で検討のとおりであるから、本件発明7は、甲1物品発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 取消理由2(明確性)について
訂正により、請求項4は削除された。
そして、請求項5、6は請求項4を引用しないものとなったため、取消理由2は、解消した。
2 採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 申立理由1-3(甲第6号証に記載された発明を主たる引用発明とする進歩性)について
ア 甲第6号証、甲第7号証の記載事項
(ア) 甲第6号証の記載事項及び甲第6号証に記載された発明
甲第6号証には次の事項が記載されている。
「【請求項1】 タイヤへ情報及び/又は装飾構成を伝えるためのアブレーションシステムにおいて、タイヤと、光エネルギーのレーザービームを発生させるために該タイヤに併置したレーザー手段と、該タイヤの特定部分に該レーザービームを指向させるために該レーザー手段に連結された制御手段とを具備し、該レーザービームは、所定構成において該特定部分を融除するアブレーションシステム。
【請求項2】 タイヤへ情報及び/又は装飾構成を伝えるための方法において、タイヤに多層ワークピースを固着することと、該タイヤに伝えられる構成を選択することと、該多層ワークピースの選択領域にレーザービームを照射させ、該構成は該選択領域を規定することと、該選択領域への該レーザービームのドエル時間を規制し、該レーザービームは、選択層に対して該ワークピースを融除することとを含む方法。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気入りタイヤ及び同等物の如くエラストマー製品の製造の技術に存する。詳細には、発明は、エラストマー製品における装飾及び/又は情報デザインと構成の発生に関する。具体的には、発明は、製品の基板においてそうした装飾及び/又は情報デザインを発生させるためにエラストマー材料を融除(ablate)するためのレーザーの使用を設ける。」
「【0007】
【課題を解決するための手段】前述に鑑みて、側壁の如くエラストマー製品における高精細装飾及び/又は情報デザインと構成の形成に与えられる、エラストマー製品の融除用処理のための方法と装置を提供することが、発明の第1見地である。」
「【0018】図面を参照し、さらに詳細に図1を参照すると、レーザーアブレーションシステムが、一般に番号10によって示されるのが見られる。そのようなシステムにおいて、ワークピース12、ここではゴム又は同等物のエラストマー製品は、融除部位16が影響される如く、レーザービーム14を照射される。ここで使用された形式のレーザーは、技術における当業者には、Nd:YAG、CO2、エキシマ又は他の適切な形式であると理解される。また、レーザー動作の形態は、連続波とパルスビーム発生の両方を含み、可変であることが理解される。CO2及びYAGレーザーは、それぞれ、10μmと3μmの次元において特性波長を有する、赤外線範囲において動作し、一方、エキシマレーザーは、300nmよりも小さな特性波長を有する、紫外線範囲において動作する。一般に、エキシマレーザーは、YAG又はCO2レーザーが使用される時の如く、照射された媒体の気化、蒸発、又は溶融等の熱活動によるよりもむしろ、アブレーションによって材料を除去することができる。多くの場合に、エキシマレーザーを使用する融除用処理は、YAG又はCO2レーザー処理、あるいはそれに関して、一般に他の形式の処理で達せられるよりも高精度を達成する。もちろん、発明の文脈内で、使用された特定形式のレーザーは、一般に、処理される特定材料の関数である。Nd:YAG及びCO2レーザーは、ここで対象のエラストマー材料で極めて良好に作動することが見いだされた。さらに、それらのレーザーは、費用と処理時間に関して付加的利益を設ける。
【0019】空気入りタイヤの製造において使用された形式のエラストマー材料は、一般に、紫外線範囲において非常に高い吸収係数を示す。結果的に、そのような材料がエキシマレーザーによって照射される時、レーザーからのエネルギーの多くは、非常に薄い表面層において吸収される。融除されるのは、一般に0.1~0.5ミクロンの次元における厚さを有するこの表面層である。アブレーションプロセスは、エラストマー媒体の分子結合の破壊によって達成され、そうした破壊は、吸収光子エネルギーの結果である。図1のプロセスにおいてエキシマレーザーを使用して、融除部位16における材料は、照射レーザービーム14のパルス毎ベースにおいて層毎に除去される。各層は、ほんの約0.1~0.5ミクロンの深さを有するために、カットの深さの非常に微細な制御が、このプロセスによって達せられる。エキシマレーザービーム14のパルスのエネルギーは結合破壊とワークピース又は基板12からの融除材料の排出のために使用されるために、周囲領域への熱拡散はほとんど生ぜず、融除部位16の隣接領域の溶融、焦げ付き又は劣化を除去する。結果的に、高精度が、熱処理に付随した一般副作用なしに、融除材料の除去において達せられる。上記の如く、レーザービーム14は、好ましくは、Nd:CO2又はYAG形式である。そのような場合に、部位16における材料の幾らかは、気化又は蒸発によって除去され、一方、微粒子材料がプロセス中排出される。照射される材料に対してレーザービーム14のパワーを調整し、さらに基板12の材料でレーザービーム14のドエル時間を制御することにより、非所望の溶融又は焦げ付きが除去される。パルス幅、パルス率及びビーム形状を含む他のビーム特性もまた、そうした目的のために調整される。」
これらの記載から見て、甲第6号証には以下の発明が記載されていると認める。
「タイヤへ情報及び/又は装飾構成を伝えるための方法において、タイヤに多層ワークピースを固着することと、該タイヤに伝えられる構成を選択することと、該多層ワークピースの選択領域にレーザービームのパルスを照射させ、該構成は該選択領域を規定することと、該選択領域への該レーザービームのドエル時間を規制し、該レーザービームは、選択層に対して該ワークピースを融除することとを含む方法。」(以下、「甲6方法発明」という。)
「タイヤに固着した多層ワークピースの選択領域にレーザービームのパルスを照射させ、選択層に対して該ワークピースを融除したタイヤ。」(以下、「甲6物品発明」という。)
(なお、「甲6方法発明」と「甲6物品発明」を総称して、「甲6発明」という場合がある。)
(イ) 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には次の事項が記載されている。
「【請求項4】
プライコードからなるカーカスを有する空気入りタイヤのタイヤ内面に塗料を塗布して形成された塗料面に向けてレーザ光を出射するレーザ光出射部を有し、前記塗料面に前記レーザ光を照射して前記塗料面から前記プライコードの打ち込みピッチよりも狭い間隔で前記塗料を除去し前記タイヤ内面を露出させて、前記塗料面に前記タイヤ内面からなる複数のドットを形成し、前記タイヤ内面に、前記ドットが前記プライコードの打ち込みピッチよりも狭い間隔で縦横に並ぶドットマークを作成する本体部と、
前記レーザ光の照射軌跡上に位置し、前記タイヤ内面の任意の位置を照射するように前記レーザ光の照射方向を変える反射部材と
を有するドットマーク作成装置。」
「【0001】
この発明は、ドットマーク作成方法及び装置に関し、特に、空気入りタイヤの転動時におけるタイヤ内面形状を高速度カメラで測定する際に用いられるドットマークを、タイヤ内面に作成するドットマーク作成方法及び装置に関する。」
「【0005】
しかしながら、従来の空気入りタイヤの内面にマーカを形成する方法では、ペンを用いた手書きの場合は微少ピッチでの形成ができないばかりか再現性も無く、シールやメッシュシート等を付す場合はタイヤ転動中にマーカが脱落してしまう虞がある。
この発明の目的は、微少ピッチでの形成ができると共に再現性も備え、タイヤ転動中に脱落してしまう虞のないドットマーク作成方法及び装置を提供することである。」
「【0013】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係るドットマーク作成装置によるドットマーク作成状態を概略的に示す説明図である。図1に示すように、ドットマーク作成装置10は、レーザ光Lを照射する本体部11と、レーザ光Lの照射方向を変更する照射方向変更部12を有しており、後述する空気入りタイヤのタイヤ内面に、タイヤ内面の3次元歪みを計測するための標点となるドットマークを作成する。
【0014】
本体部11は、例えば、3次元レーザマーカからなり、レーザ光Lを出射するレーザ光出射部11aを有している。レーザ光出射部11aから高エネルギー密度のレーザ光Lを照射することにより、熱エネルギとして、レーザ光Lを照射したレーザ光照射対象物を溶融・蒸発させることができる。ここでは、レーザ光Lとして、例えば、レーザ波長が10.6μmの赤外光からなる、主に微細加工用のCO2レーザを使用する。
【0015】
この本体部11は、例えば、X、Y軸方向に移動可能な移動テーブルからなる、X-Y軸平面上において位置合わせを行うことができる位置決め機構(図示しない)を備えており、レーザ光Lをレーザ光照射対象物(例えば、空気入りタイヤの内面に形成した塗料面)に照射する場合、レーザ光出射部11aをレーザ光照射対象物に対向させて、任意の位置に正確に配置することができる。
なお、本体部11は、レーザ光出射部11aから出射されるレーザ光Lの出射角度を変更することで、レーザ光照射対象物の所定の範囲内でレーザ光Lの照射位置を変更することができる(図1参照)。
【0016】
照射方向変更部12は、制御部12a、第1アーム部12b、及び第2アーム部12cを有しており、第2アーム部12cの突出先端には、突出先端に対し略360度回動自在に反射部材13が装着されている。制御部12aは、本体部11のレーザ光出射部11a近傍に設置されており、第1アーム部12bは、制御部12aに対し少なくともレーザ光L照射方向に沿って伸縮自在(図中、矢印参照)に、第2アーム部12cは、第1アーム部12bの突出先端に対し連結部を介して少なくとも略水平方向に伸縮自在(図中、矢印参照)に、それぞれ装着されている。
【0017】
即ち、第1アーム部12bと第2アーム部12c及び反射部材13は、反射部材13を、本体部11から出射されてレーザ光照射対象物を照射するレーザ光Lの照射軌跡上で、照射軌跡に対し任意の角度で位置させることができるように、伸縮動作や回動動作等の各種動作可能に構成されている。従って、反射部材13により、レーザ光出射部11aから出射されたレーザ光Lを、出射方向に対し真横(略90度)を含む略180度の角度範囲に、レーザ光Lの照射方向を変更して照射範囲を変更することができる。
【0018】
これら第1アーム部12bと第2アーム部12c及び反射部材13における各種動作は、周知の伸縮機構や回動機構やアクチュエータ等の各種機能手段を用いて動作機構を形成することによって、制御部12aにより自動制御することができる。なお、手動操作によって各種動作を制御することもできる。
反射部材13は、例えば、反射ミラーからなり、出射されたレーザ光Lの照射軌跡上に照射軌跡に対し任意の角度で反射部材13を位置させることにより、反射部材13を介してレーザ光Lの照射方向を任意に変えることができる。」
イ 本件発明1ないし3及び5ないし7と甲6発明との対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲6方法発明とを対比する。
甲6方法発明の「レーザービーム」は、本件発明1の「レーザー光」に相当する。
そして、甲6方法発明のレーザービームは、多層ワークピースの選択領域にレーザービームのパルスを照射するものであるから、本件発明1の「レーザー光を移動させながら間欠的に照射」するものに相当する。
また、甲6方法発明レーザービームは、選択層に対してワークピースを融除することができるのであるから、表面を「除去可能な強度」を有するものであるといえる。
さらに、甲6方法発明の「タイヤ」も、技術常識をふまえれば、加硫成型されたもの、つまり、本件発明1における「加硫成型後」のものを指すことは明らかである。
そこで、本件発明1と甲6方法発明とを対比すると、両者は、
「加硫成型後のタイヤにおいて、
表面を除去可能な強度を有するレーザー光を移動させながら間欠的に照射する方法。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点6)
本件発明1は、「タイヤサイド部の外表面に被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法」であるのに対して、甲6方法発明にはそのような特定がない点。
(相違点7)
本件発明1は、「被着領域内に、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有するように、複数の凹部を形成する」ものであるのに対して、甲6方法発明にはそのような特定がない点。
まず、相違点6について検討する。
甲6方法発明は、多層ワークピースの選択部分をレーサービームで融除することで情報や装飾を形成するものであって、離型剤を除去するものではないし、ましてや、何かを被着するための下処理を行うためのものでもない。
そして、甲第6号証全体の記載を通じてみても、何かを被着する領域の離型剤を除去することについて何ら記載も示唆もされていない。
よって、甲6方法発明を、「タイヤサイド部の外表面に被着物が被着される被着領域から離型剤を除去する離型剤除去方法」とすることを導き出すことはできない。
また、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証及び甲第7号証の記載を参酌しても、同様である。
してみれば、相違点7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲6方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2、3、5及び6も同様に、甲6方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件発明7について
本件発明7と甲6物品発明とを対比する。
甲6物品発明の「レーザービーム」は、多層ワークピースの選択領域にレーザービームのパルスを照射させ、選択層に対して該ワークピースを融除したものであるから、表面に複数の凹部が、間欠的に形成されているものといえる。
そこで、本件発明7と甲6物品発明とを対比すると、両者は、
「表面に複数の凹部を有するタイヤであって、
前記複数の凹部は、間欠的に形成されたものであるタイヤ。」
で一致し、次の点で相違する。
(相違点8)
本件発明7のタイヤは、「サイド部の外表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の前記外表面に離型剤を有する」ものであるのに対し、甲6物品発明では、そのような特定がない点。
(相違点9)
複数の凹部について、本件発明7は、「隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有する」のに対し、甲6物品発明では、そのような特定がない点。
まず、相違点8について検討する。
甲6物品発明は、多層ワークピースの選択領域にレーザービームのパルスを照射させ、選択層に対して該ワークピースを融除したものであって、タイヤ表面の離型剤を除去するものではないし、ましてや、何かを被着するための下処理を行うためのものでもない。
そして、甲第6号証全体の記載を通じてみても、何かを被着する領域の離型剤を除去することについて何ら記載も示唆もされていない。
よって、甲6物品発明を、「サイド部の外表面に、深さが10μmよりも浅く、離型剤が除去された複数の凹部を有する被着領域を有し、当該被着領域以外の前記外表面に離型剤を有する」との特定事項を導き出すことはできない。
また、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証及び甲第7号証の記載を参酌しても、同様である。
してみれば、相違点9について検討するまでもなく、本件発明7は、甲6物品発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 申立理由2-2(明確性)について
本件発明6における、「前記レーザー光を前記タイヤ表面に対して、当該タイヤ表面の傾斜方向に沿う方向に傾斜させて照射する」との特定事項は、レーザー光を照射する位置におけるタイヤ表面の傾斜に沿う方向にレーザー光を傾斜させて照射するものであることは、当業者において明確である。
なお、特許異議申立人は、第4の(申立理由2-2)のように主張するが、レーザー光の傾斜方向は、インク滴の供給をどのようにするかにも依存するものであり、凹部からのインク滴の液だれを防止することを鑑みれば、当業者ならば、当然、レーザー光の傾斜方向を認識できる。
したがって、申立理由2-2の点について、本件発明6が明確ではないということはできない。
(3) 申立理由2-3(明確性)について
本件発明7における、「前記複数の凹部は、間欠的に形成され、隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有することを特徴とするタイヤ」との特定事項は、タイヤに設けられた複数の凹部が、「間欠的に形成され」たものであって、かつ、「隣接する各凹部同士が互いに重複する重複部を有する」ものであることは、当業者であれば当然理解できる。
なお、特許異議申立人は、第4の(申立理由2-3)のように主張するが、複数の凹部が間欠的に形成されることと、各凹部が離間することは、必ずしも一致しない。あくまで、間欠的に形成されるだけであって、凹部同士の重複部が形成される場合を排除するものではない。また、本件発明7は、凹部の形状にかかわらず、重複部を有していれば足りるものである。
したがって、申立理由2-3の点について、本件発明7が明確ではないということはできない。
第7 結論
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項4に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700048