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特許異議申立

2017-700849

空気入りタイヤ

審判番号
2017-700849
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-148041
登録番号
特許第6092534号(P6092534)
請求日
2017年09月06日
審決日
2018年12月17日
公報発行日
2019年03月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ブリヂストン
  • 【権利者代理人】本多 一郎
  • 【異議申立人】竹口 美穂
  • 【異議申立人】小林 敏樹
審判長/審判官
  • 審判長 和田 雄二
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 氏原 康宏
分類
P1651.121-YAA(B60C) / P1651.536-YAA(B60C) / P1651.851-YAA(B60C) / P1651.853-YAA(B60C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6092534号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6092534号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6092534号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6092534号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成24年6月29日に出願され、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ、平成29年3月8日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。 平成29年9月6日    :特許異議申立人竹口美穂による特許異議の申 立て 平成29年9月8日    :特許異議申立人小林敏樹による特許異議の申 立て 平成29年12月19日付け:取消理由通知書 平成30年2月23日   :意見書(特許権者) 平成30年5月21日付け :取消理由通知書(決定の予告) 平成30年7月23日   :意見書、訂正請求書(特許権者) 平成30年8月30日付け :特許法第120条の5第5項の通知 平成30年10月4日   :意見書(特許異議申立人竹口美穂) 平成30年10月4日   :意見書(特許異議申立人小林敏樹) 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成30年7月23日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であることを特徴とする空気入りタイヤ。」とあるのを、「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であり、 トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられており、 カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層であることを特徴とする空気入りタイヤ。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0008】の「すなわち、本発明の空気入りタイヤは、トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であることを特徴とするものである。」との記載を、「すなわち、本発明の空気入りタイヤは、トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であり、 トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられており、 カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層であることを特徴とするものである。」に訂正する。 (3)訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にある。 したがって、本件訂正請求のうち、特許請求の範囲の訂正(訂正事項1)は、一群の請求項1~8についてされており、また、明細書の訂正(訂正事項2)は、一群の請求項の全てについて行うものである。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について ア.訂正の目的 訂正前の請求項1に係る発明では、空気入りタイヤのトレッドのショルダー陸部、ベルト層及びベルト補強層に関しては、何ら特定されていなかった。 訂正事項1は、これらショルダー陸部、ベルト層及びベルト補強層に関し、それぞれ、「トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられており」との限定、「カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、」「を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層である」との限定、及び「該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し」との限定を付加し特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ.新規事項の追加の有無及び実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0013】、【0025】、【0027】及び【0028】の記載に基づいているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 また、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載に齟齬が生じるのを、整合させるための訂正である。 よって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当しないことは、上記(1)より明らかである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であり、 トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられており、 カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層であることを特徴とする空気入りタイヤ。 【請求項2】 前記トレッドの接地幅内が、3本の周方向溝と、該3本の周方向溝によって区画された4列の陸部と、を有し、トレッド幅方向両外側の2列の陸部をショルダー陸部、該ショルダー陸部に挟まれた2列の陸部をセンター陸部としたとき、全陸部に対する2列の前記ショルダー陸部の割合がそれぞれ20~35%であり、全陸部に対する2列の前記センター陸部の割合がそれぞれ15~30%であり、 前記センター陸部の少なくとも一方に、両側部を結ぶサイプであって、該サイプの両端部を結ぶ直線がトレッド幅方向に対して16~24°傾斜している請求項1記載の空気入りタイヤ。 【請求項3】 前記ショルダー陸部に、緩やかな湾曲を有する曲線形状の幅方向溝が設けられている請求項2記載の空気入りタイヤ。 【請求項4】 前記ショルダー陸部に、トレッド幅方向に対して傾斜を有する直線状の溝と略トレッド幅方向に延びる直線とが交わった形状の幅方向溝が設けられている請求項2または3記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 前記サイプのうち少なくとも一部が、直線形状である請求項2~4のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 前記センター陸部がリブ形状である請求項2~5のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 前記ショルダー陸部がブロック形状である請求項2~6のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。 【請求項8】 前記ショルダー陸部のタイヤ径方向内側に、レイヤー層が配置されている請求項2~7のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1.取消理由の概要 訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審が平成30年5月21日付けで特許権者に対して通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。 [取消理由]請求項1に係る発明は、下記引用文献1~6、18~29に記載された事項に基づいて(引用文献1又は6を主引例とした場合)、又は、引用文献1~6、11~29に記載された事項に基づいて(引用文献11~17を主引例とした場合)、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、請求項2~8に係る発明は、下記引用文献1~10、18~29に記載された事項に基づいて(引用文献1又は6を主引例とした場合)、又は、引用文献1~29に記載された事項に基づいて(引用文献11~17を主引例とした場合)、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、請求項1~8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 記 引用文献1:特開平7-81303号公報 引用文献2:特開平5-25327号公報 引用文献3:特開2005-8804号公報 引用文献4:特開平9-67469号公報 引用文献5:自動車用タイヤの基礎と実際 編著者:株式会社ブリヂストン 発行所:学校法人東京電機大学 東京電気大学出版局 2008年 4月10日 第1版1刷発行、283頁 引用文献6:特開2002-29215号公報 引用文献7:特開2009-161112号公報 引用文献8:特開2005-88670号公報 引用文献9:特開2005-53311号公報 引用文献10:特開2006-123705号公報 引用文献11:特開平11-91318号公報 引用文献12:特開2006-224838号公報 引用文献13:特開2011-79458号公報 引用文献14:特開2009-126250号公報 引用文献15:特開2003-54221号公報 引用文献16:特開2012-116389号公報 引用文献17:特開2011-57053号公報 引用文献18:特開2010-77415号公報 引用文献19:特開平9-77912号公報 引用文献20:特表2011-519994号公報 引用文献21:特開平10-316799号公報 引用文献22:特開2006-274046号公報 引用文献23:特開2006-274049号公報 引用文献24:特開2006-152197号公報 引用文献25:特開2011-252124号公報 引用文献26:特開2000-281833号公報 引用文献27:特開2001-89598号公報 引用文献28:国際公開第2012/073841号 引用文献29:国際公開第2012/073838号 なお、引用文献1~10は、それぞれ、特許異議申立人小林敏樹によって特許異議申立書において甲第1~10号証として提出されたものである。また、引用文献11~29は、それぞれ、特許異議申立人竹口美穂によって特許異議申立書で甲第1、3~8、10~21号証として提出されたものである。ここで、引用文献5及び引用文献6は、特許異議申立人竹口美穂によって特許異議申立書で甲第2号証及び甲第9号証として提出されてもいる。 2.当審の判断 (1)引用文献1に記載事項及び発明 引用文献1には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 ア 「【請求項1】 トレッド面の接地形状を、接地幅中心を通るタイヤ周方向の接地長を最大とし、前記接地幅中心から左右両側に向かうほど徐々に短かくなる形状にした空気入りタイヤにおいて、 前記タイヤ周方向の最大接地長Mと前記接地幅中心から左右両側へそれぞれ接地最大半幅の90%の位置におけるタイヤ周方向の接地長mとの両接地長の比m/Mを0.65~0.80にすると共に、全接地領域の全接地部溝面積率を20~50%とし、かつ接地最大幅Wの40%の幅に相当する接地中央部領域の中央部溝面積率を前記全接地部溝面積率よりも小さくした空気入りタイヤ。」 イ 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は転がり抵抗の悪化を抑制しながら、ウェット性能を向上するようにした空気入りタイヤを提供することにある。」 ウ 「【0006】 本発明において、タイヤの接地形状とはタイヤにJATMAに規定する設計常用荷重に対応する空気圧を充填し、設計常用荷重の85%の荷重を負荷したときに、トレッド面が平坦な路面に形成する形状のことをいう。以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1は本発明タイヤのトレッドパターンの一例を示し、タイヤ周方向に延びる3本の主溝1とこれら主溝1相互間及び主溝1と左右両側の接地端との間を繋ぐ副溝2が設けられ、これら主溝1と副溝2とで区分されたブロック3がタイヤ周方向に4列のブロック列をなすブロックパターンを形成している。」 エ 「【0008】・・・しかし、m/M=0.65~0.80にしただけでは、0.8~0.9の従来タイヤに比べてウェット性能の向上効果が十分ではないため、トレッド面の全接地部溝面積率を20~50%にすると共に、接地最大幅Wの40%に相当する中央部領域Eにおける中央部溝面積率を全接地部溝面積率よりも小さくすることにより一層の向上を可能にする。・・・」 オ 「【0009】・・・キャップトレッドゴムとして・・・ゴム組成物を使用することが望ましい。」 以上の記載事項、及び図示内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 〔引用発明1〕 「トレッドパターン幅内に設けられた3本のタイヤ周方向に延びる主溝1と、該主溝1相互間及び主溝1と左右両側の接地端との間を繋ぐ副溝2が設けられ、これら主溝1と副溝2とで区分されたブロック3と、該ブロック3がタイヤ周方向に4列のブロック列をなす、空気入りタイヤにおいて、 キャップトレッドゴムがゴム組成物であり、かつ、 トレッド面の全接地部溝面積率が20~50%である空気入りタイヤ。」 (2)引用文献6に記載の事項及び発明 引用文献6には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【請求項1】 タイヤのトレッドがキャップ層/ベース層の2層構造で形成され、該トレッドの踏面部に、周方向に沿って延びる複数の周方向溝が配設されたリブパターンを有する空気入りタイヤにおいて、 (1)前記トレッドの踏面パターンのネガティブ率が15~30%であり、 (2)前記トレッドのベース層ゴムの厚みが、該トレッドゴム全体の厚みの10%以上であり、 (3)前記トレッドのベース層ゴムのエネルギー損失が、キャップ層ゴムのエネルギー損失よりも低いゴム配合であり、 (4)該タイヤを標準リムに組み込み正規内圧を充填して100%荷重を負荷して接地させた時の、タイヤ幅方向中心での接地長さをLc、中心から振り分けて最大接地幅の80%の位置における左右の接地長さをLa、Lbとすると、前記トレッドの踏面の接地形状の矩形率100×(La+Lb)/2/Lcが65~95%である、ことを特徴とする空気入りタイヤ。」 イ 「【請求項4】 前記トレッドの踏面パターンのネガティブ率が、20~24%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。」 ウ 「【0025】なお、本発明の空気入りタイヤの内部(ケース)構造は、特に制限はなく、サイズと用途に応じて、通常の一般ラジアルタイヤと同様の構成とすることができるので、内部構成に関しての説明は省略する。」 エ 「【符号の説明】 1 ビードコア 2 カーカス 3 最外側ベルト 4 ベルト 5 トレッド 6 サイド 7 キャップ層 8 ベース層 9 周方向溝 D トレッド全体のゴム厚み d ベース層のゴム厚み」 オ 引用文献6には、次の【図1】がある。 カ 上記ウ~オより、引用文献6の図1には、カーカスのトレッドのタイヤ径方向外側に、2層のベルト層(ベルトと最外側ベルト)からなるベルトを有する空気入りタイヤが記載されているといえる。 以上の記載事項、及び認定事項からみて、引用文献6には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 〔引用発明2〕 「タイヤのトレッドがキャップ層/ベース層の2層構造で形成され、該トレッドの踏面部に、周方向に沿って延びる複数の周方向溝が配設されたリブパターンを有する空気入りタイヤにおいて、前記トレッドの踏面パターンのネガティブ率が20~24%であり、 カーカスのトレッドのタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトを有する、空気入りタイヤ。」 (3)引用文献11~17に記載の発明 引用文献11の段落【0005】、【0042】、【0044】等、引用文献12の【請求項1】、【請求項5】、段落【0012】等、引用文献13の【請求項1】、段落【0029】、段落【0051】の【表1】等、引用文献14の段落【0013】、【0014】等、引用文献15の段落【0014】、【0031】等、引用文献16の段落【0019】、【0022】、【0039】等、および引用文献17の段落【0011】、【0018】等の記載からすれば、引用文献11~17には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 〔引用発明3〕 「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、前記トレッドをトレッドゴムで構成し、前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%を充足する、空気入りタイヤ。」 (4)引用発明1との対比・判断 ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 a.後者の「空気入りタイヤ」は、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。b.後者の「トレッドパターン」は、トレッド面の接地形状のことであるから(摘記(1)ア、ウ)、前者の「トレッド接地面」に相当する。また、後者の「タイヤ周方向に延びる主溝1」は、機能または構造からみて、前者の「周方向主溝」に相当する。そして、後者において、主溝1が3本であるということは、主溝1が複数本あるといえるから、後者の「3本のタイヤ周方向に延びる主溝1」は、前者の「複数本の周方向主溝」に相当する。 c.後者の「主溝1と副溝2とで区分されたブロック3」が「タイヤ周方向に4列のブロック列をなす」ことで、周方向によって区画された陸部を形成しているといえるから、後者の「ブロック列」は前者の「陸部」に相当し、したがって、後者の「該主溝1相互間及び主溝1と左右両側の接地端との間を繋ぐ副溝2が設けられ、これら主溝1と副溝2とで区分されたブロック3と、該ブロック3がタイヤ周方向に4列のブロック列をなす」は、前者の「該周方向溝によって区画された陸部と、を有する」に相当する。 d.後者の、「トレッドの接地面幅内」には、「4列のブロック列」があるところ、その4列のブロック列のうちトレッド幅方両外側の2列のブロック列は、上記c.を踏まえると、前者の「ショルダー陸部」ないし「トレッド幅方向両外側の2列の陸部をショルダー陸部とした」に相当する。そして、後者は、「主溝1と左右両側の接地端との間を繋ぐ副溝2が設けられ」ているところ、当該「副溝2」はトレッド幅方向に延びるものであるといえる。したがって、後者の「主溝1と左右両側の接地端との間を繋ぐ副溝2が設けられ」ていることは、前者の「該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられて」いることに相当する。 e.キャップトレッドゴムがタイヤのトレッドを構成するものであることは当業者には明らかであるから、後者の「キャップトレッドゴムがゴム組成物であり」と前者の「前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%。動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であり」とは、「前記トレッドをトレッドゴムで構成し」の限りにおいて共通する。 f.前者の「ネガティブ率」は、「トレッドの接地面幅w内の全面積に対する全溝面積(図示例においては、周方向溝1、及び幅方向溝3a、3bの面積の合計)の割合」(本件明細書の段落【0016】)を意味するから、後者の「トレッド面の全接地部溝面積率」は前者の「トレッドの接地幅内におけるネガティブ率」に相当するところ、後者の「トレッド面の全接地部溝面積率を20~50%である」と前者の「トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%である」とは、「トレッドの接地幅内におけるネガティブ率を定める」の限りにおいて共通する。 g.そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドをトレッドゴムで構成し、かつ、 トレッド幅方向両外側の2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられており、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率を定める空気入りタイヤ。」 [相違点1] 「トレッドゴム」に関し、 本件発明1は、「0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であ」るのに対し、引用発明1は、かかるtanδの値が特定されていない点。 [相違点2] 「ネガティブ率」に関し、 本件発明1は、「20~40%」であるのに対し、引用発明1は、「20~50%」である点。 [相違点3] 本件発明1は、「カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層である」というトレッド内部構造を特定しているのに対し、引用発明1はトレッド内部構造について特定されていない点。 (イ)判断 相違点1について検討する。 a.空気入りタイヤを構成するトレッドゴムのtanδの値が転がり抵抗低減やウェット性の向上に寄与することは当業者には広く知られている事項といえるところ(引用文献21~引用文献29参照)、引用文献1の段落【0009】、引用文献2の段落【0002】、【0005】、及び、引用文献5の283ページの記載内容からすれば、空気入りタイヤにおいて、転がり抵抗の低減のためには60℃でのtanδを小さく、ウェット(ブレーキ)性能向上のためには0℃でのtanδを大きくすれば良いということは、本件出願前、当業者には周知の技術事項であったといえる。 また、引用文献4の段落【0019】、引用文献18の段落【0135】、【0136】、【0146】、及び、引用文献20の段落【0087】、【0088】の記載内容からすれば、60℃でのtanδと0℃でのtanδの差を大きくすればするほど、すなわち、60℃でのtanδはできるだけ小さくし、0℃でのtanδをできるだけ大きくすることにより、転がり抵抗低減とウェット性能向上のバランスが良くできるということが当業者における技術常識であったといえる。 そして、引用文献1、2、18及び19には、60℃でのtanδを小さくし、0℃でのtanδを大きくしたトレッドゴムが記載されており、また、引用文献3及び4には、0℃でのtanδを大きくしたトレッドゴムが記載されている。 b.しかしながら、本件発明1は、「従来よりもウェットブレーキ性能を向上させ、かつ、転がり抵抗を低減させた空気入りタイヤを提供する」ために(本件明細書段落【0006】)、特定の測定条件下でのトレッドゴムのtanδの値を発明特定事項としている。すなわち、「トレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であ」るとしている。 これに対して、引用文献1~4、18及び19のいずれにも、トレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であるとするという技術事項については記載されていない。 c.確かに、引用文献20には、ウェット性能と転がり抵抗をバランスさせたゴム配合物であっ0℃でのtanδが0.90以上でありかつ60℃でのtanδが0.12以下という条件を充足するゴム配合物が記載されている(段落【0014】、【0128】の【表5】、【0137】の【表10】)。 しかし、引用文献20のゴム配合物の0℃および60℃でのtanδの値は、周波数2Hz、0.2%の動歪率という、本件発明1におけるトレッドゴムのtanδの測定条件とは大きく異なる条件下で測定されたものである(段落【0087】、【0088】)。 ここで、ゴムのtanδを測定する条件として、ゴムを使用するタイヤの実際の走行状態を見据えた条件を設定することが通常であり(特開2011-89788号公報の段落【0003】)、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%という測定条件が本件出願前当業者によって既に採用されていた測定条件であったとしても(特開2011-190329号公報の段落【0057】、特開2009-91410号公報の段落【0055】、特開2009-91409号公報の段落【0053】、特開2011-140258号公報の段落【0054】、特開2011-84222号公報の段落【0055】、特開2010-270175号公報の段落【0177】)、ゴムのtanδの値が測定条件(周波数、歪)によって大きく変わるものであるという当業者における技術的知見(「新版 ゴム技術の基礎」(社団法人日本ゴム協会編 平成11年4月30日発行)第77頁の式(4.64及び4.65)、第82頁の図4.14、第84頁の図4.16、特開2004-115751号公報の【図2】、【図4】、特開2007-130781号公報の【図2】)からすれば、引用文献20において、トレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であるとするものが示唆されているとはいえない。 なお、引用文献6にも、相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 d.以上のとおりであるから、引用発明1に、引用文献1~6及び18~20に記載の技術事項を適用しても相違点1に係る本件発明1の構成に達し得ないし、引用発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは、引用文献1~6及び18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載の発明(引用発明1)および引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ.本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定構成を付加するものものであるから、本件発明2~8と引用発明1との間には、少なくとも、上記ア.(ア)の相違点1~3が存在する。 そうすると、上記ア.(イ)で述べたように、相違点1に係る本件発明1の構成が引用文献1に記載の発明(引用発明1)及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない以上、本件発明2~8は、引用文献1に記載の発明(引用発明1)及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)引用発明2との対比・判断 ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 a.後者の「空気入りタイヤ」は、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。b.後者の「トレッドの踏面部」は、前者の「トレッドの接地面」に相当する。また、後者の「リブパターン」の「リブ」が、周方向溝によって区画されていることは技術的に明らかであり、前者の「陸部」に相当する。したがって、後者の「トレッドの踏面部に、周方向に沿って延びる複数の周方向溝が配設されたリブパターンを有する」は、前者の「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向溝と、外周方向溝によって区画された陸部と、を有する」に相当する。 c.後者の「タイヤのトレッドがキャップ層/ベース層の2層構造で形成され」ることは、少なくともタイヤのトレッドがトレッドゴムから構成されるといえるから、後者の「タイヤのトレッドがキャップ層/ベース層の2層構造で形成され」は、前者の「前記トレッドを構成するトレッドゴムの0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であ」ることとの対比において、「前記トレッドをトレッドゴムで構成し」の限りにおいて共通する。 d.後者の「トレッドの踏面パターンのネガティブ率」は、技術的にみて、前者の「トレッドの接地幅内におけるネガティブ率」に相当する。したがって、後者の「前記トレッドの踏面パターンのネガティブ率が20~24%である」は、前者の「前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%である」に相当する。 e.後者の「カーカス」、「トレッド」、「ベルト層」及び「ベルト」は、前者の「カーカスプライ」、「クラウン部」、「ベルト層」及び「ベルト」に相当する。 したがって、後者の「カーカスのトレッドのタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトを有する」は、前者の「カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルト」「を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層であること」との対比において、「カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトを有」するという限りにおいて一致する。 g.そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりといえる。 [一致点] 「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドをトレッドゴムで構成し、かつ、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%であり、 カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトを有する、空気入りタイヤ。」 [相違点A] 「トレッドゴム」に関し、 本件発明1は、「0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であ」るのに対し、引用発明2は、かかるtanδの値が特定されていない点。 [相違点B] 本件発明1は、「トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられて」いるものであるのに対し、引用発明2は、かかる構成について特定されていない点。 [相違点C] 本件発明1は、「前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層である」のに対し、引用発明2の「ベルト層」は、かかる構成について特定されていない点。 [相違点D] 本件発明1は、「該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し」ているのに対し、引用発明2は、かかる構成について特定されていない点。 (イ)判断 相違点Aについて検討する。 相違点Aは、上記(4)ア.(ア)の相違点1と実質的に同じである。 したがって、上記(4)ア.(イ)で述べた理由と同様に理由により、引用発明2に、引用文献1~6及び18~20に記載の技術事項を適用しても相違点Aに係る本件発明1の構成に達し得ないし、引用発明2において、相違点Aに係る本件発明1の構成となすことは、引用文献1~6及び18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献6に記載の発明(引用発明2)及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ.本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定構成を付加するものものであるから、本件発明2~8と引用発明2との間には、少なくとも、上記ア.(ア)の相違点A~Dが存在する。 そうすると、上記ア.(イ)で述べたように、相違点Aに係る本件発明1の構成が引用文献6に記載の発明及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない以上、本件発明2~8は、引用文献6に記載の発明(引用発明2)及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)引用発明3との対比・判断 ア.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 後者の「トレッド」は、前者の「トレッド」に相当する。そして、後者の「トレッドの接地面幅」及び「トレッドゴム」は、前者の「トレッド接地面幅」及び「トレッドゴム」に相当する。 後者の「主溝」、「陸部」、「ネガティブ率」及び「空気入りタイヤ」は、前者の「主溝」、「陸部」、「ネガティブ率」及び「空気入りタイヤ」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「トレッドの接地面幅内に設けられた複数本の周方向主溝と、該周方向溝によって区画された陸部と、を有する空気入りタイヤにおいて、 前記トレッドをトレッドゴムで構成し、 前記トレッドの接地幅内におけるネガティブ率が20~40%である、空気入りタイヤ。」 [相違点α] 「トレッドゴム」に関し、 本件発明1は、「0℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.90以上であり、60℃、周波数52Hz、初期歪2.0%、動歪率1.0%の条件におけるtanδが0.12以下であ」るのに対し、引用発明3は、かかるtanδの値が特定されていない点。 [相違点β] 本件発明1は、「トレッド幅方向両外側に2列の陸部をショルダー陸部としたとき、該ショルダー陸部にトレッド幅方向に延びる幅方向溝が設けられて」いるものであるのに対し、引用発明3は、かかる構成について特定されていない点。 [相違点γ] 本件発明1は、「カーカスプライのクラウン部のタイヤ径方向外側に、2層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的平行に配列された有機繊維のコードのゴム引き層よりなるベルト補強層を有し、前記ベルト層が、タイヤ周方向に対し、±15~40°で傾斜して延びるコードのゴム引き層である」のに対し、引用発明3は、かかる構成について特定されていない点。 (イ)判断 相違点αは、上記(4)ア.(ア)の相違点1と実質的に同じである。 したがって、上記(4)ア.(イ)で述べた理由と同様に理由により、引用発明3に、引用文献1~6及び18~20に記載の技術事項を適用しても相違点αに係る本件発明1の構成に達し得ないし、引用発明3において、相違点αに係る本件発明1の構成となすことは、引用文献1~6及び18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献11~17に記載の発明(引用発明3)及び引用文献1~6、18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ.本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定構成を付加するものであるから、本件発明2~8と引用発明3との間には、少なくとも、上記ア.(ア)の相違点α~γが存在する。 そうすると、上記ア.(イ)で述べたように、相違点αに係る本件発明3の構成が引用文献1~6及び18~29に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない以上、本件発明2~8は、引用文献11~17に記載の発明(引用発明3)及び引用文献1~6及び18~29に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人竹口美穂は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に関し、概略次のように主張する。 「本件明細書の記載に照らしても、本件請求項1のtanδに係る事項を具備するタイヤトレッドを得るにあたり過度の試行錯誤を要するものと認められるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に記載したものではない。」(異議申立書第30頁第4行~第36頁第9行) しかしながら、本件明細書の段落【0032】には、トレッドゴムの配合成分として具体的な材料及びその配分が記載されている。また、ゴムのtanδの値は、ゴム成分中のカーボンブラックやシリカを用いて調整することができるということは当業者にはよく知られた技術事項である。 そうすると、本件明細書の記載及び出願時の当業者における技術常識を踏まえれば、本件請求項1に係るトレッドゴムを、過度の試行錯誤を要せずして得ることは可能であったといえる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に記載したものといえる。 よって、特許異議申立人竹口美穂の上記主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700849

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